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シナリオ詳細

<FarbeReise>カーネリアンの瞳

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねぇ、アネッサ」
「なあに、アルメリア」
 酒場で軽食を摘みつつちびちび飲み物を飲む2人が話題に上らせたのはFarbeReise(ファルベライズ)だった。当然といえば当然かもしれない。周囲でも同じような話ばかりしているのだから。
「賑わってるわね」
「そりゃあ新しい遺跡だもの。しかも遺跡『群』でしょ」
 盛り上がらないわけないわよ、と告げるのはアネッサ・サンドローズ。深緑の出で傭兵として日々を暮らす幻想種だ。小さく相槌を打ったアルメリア・イーグルトン(p3p006810)は前髪に隠れた瞳でアネッサを見つめた。
「アネッサも気になるの?」
「もちろん! 宝探しもワクワクするし、少しでも日銭が稼げる方が良いわ」
 働かなければ金は入らない。それはどこも同じだろうが、傭兵に舞い込む依頼となれば報酬の高さもそれぞれだろう。アネッサは今でこそベテランと呼ばれる域にいるが、アルメリアたちと再会する前はそれなりの苦労があったに違いない。
「そうだ、アルメリア。今度、一緒に行ってみないかしら?」
「ファルベライズ?」
「そう」
 聞けば、先日ある傭兵グループがファルベライズにて壊滅したのだという。彼らもそこそこ実力のある者たちだったとはいえ、ファルベライズの罠も生半可なものではないということだろう。アネッサは今度そこへ赴くのだという。
「盗賊なんかに奪われたら大変だし、アルメリアたちが来てくれるなら心強いわ。ね?」
 彼女が示唆しているのは砂漠へ隠れ住む盗賊たちはもちろん、先日の大鴉盗賊団のこともあるだろう。まだ大々的な動きは見られないが、いつ仕掛けて来るとも限らない。
「なら、ギルドに話を通しておくわね」
 アルメリアは頷いた。ローレットも今はラサからの依頼によりファルベライズへ向かう事が多い。傭兵たちとの共闘依頼も問題なく受けられることだろう。
 かくして。この数日後、ローレットにアネッサからの共闘依頼として依頼書が出されたのだった。



「受けるにあたって、ボクのほうでも少し調べてみたのです」
 そう告げる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はテーブルに羊皮紙を広げる。覗き込んだイレギュラーズはそれを地図のようだと判断した。『ようだ』とつくのは──あまりにも空白が多すぎたから、だが。
「皆さんおさっしの通り、全然調べられてないのです。ここに書いてある以上進もうとするとボクも傭兵さんの二の舞になっちゃうのです」
 ささみにはなりたくないのです……と小さくこぼすユリーカ。つまるところ罠が仕掛けられていて進めない、という話のようだ。
 ユリーカと遺跡を調査する学者の見解として、ここには多数の罠が仕掛けられていると見られる。どのような罠かは近づき、あるいは作動させてみないとわからないだろうが──ともあれ。この先は全てイレギュラーズと傭兵たちに任せられたということだ。
「あ! でもでも、ほんのちょっとならエネミーの情報もあるのです」
 こっちなのですと別の羊皮紙を広げるユリーカ。そちらは主に学者が書き連ねたような字がびっしりと書き込まれていた。どうやら中で出没すると思しきモンスター、いやガーディアンの情報らしい。
「何があってもおかしくないのです。皆さんも誘える仲間がいたら誘って突入しては如何でしょうか?」
 罠の類は兎も角、エネミーは強力だと見られている。場合によっては数がいた方が良いのかもしれない。
 協力者に目途は立つだろうか。いやそもそも必要だろうか? などとイレギュラーズたちは思案を始めたのだった。

GMコメント

●成功条件
 遺跡の踏破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。不測の事態に気を付けてください。

●罠
 傭兵たちが撤退を余儀なくされたこと、そしてユリーカの談からこの遺跡には無数に罠が張り巡らされていると想定されています。言うなればこれは『予測ゲーム』です。
 どのような罠が仕掛けられているか、どのように突破するか。各自で備えることもあれば協力プレイだってできるでしょう。書いた分だけ皆様は罠を回避し、傷をさして追うこともなく進むことができます。これによって後の戦闘が楽になるでしょう。

●ガーディアン
 最奥には宝を守る守護者がいると文献に記されていたそうです。
 それはとても大きく、頑丈に作られているとされています。細かいことは不明ですが、別の文献ではそれを作る時に不思議な力のある宝玉を埋め込んだとされています。その先の記述からしてファルグメントとは別物のようですが、警戒が必要でしょう。

●ファルグメント
 色宝とも呼ばれます。御伽噺のような奇跡を起こす宝です。鮮やかな色が特徴ですが、その形状はさまざまであるようです。
 遺跡群『FarbeReise』で発見される宝であり、ラサではそれを悪用されないため報酬と引き換えに保護しています。

●友軍
・アネッサ・サンドローズ
 アルメリアさんと同郷の幻想種であり、ベテランの傭兵です。今回は皆さんと同行します。
 戦闘においてはそこそこに戦う事の出来る近距離アタッカー。罠もそれなりに切り抜けてくれます。

・EXプレイングによる関係者
 こちらに関しては設定を考慮しますが、いないから失敗するわけではありません。あくまで関係者と共闘したい等の演出です。
 ただし設定如何によっては登場しませんのでご注意ください。

●ご挨拶
 アフターアクションありがとうございます。愁です。
 彼女も当然ファルベライズの話は知っていましたね。さあ、冒険に行きましょう!
 ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • <FarbeReise>カーネリアンの瞳完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
咲野 蓮華(p3p009144)

リプレイ


 冬近づけどもラサは暖かく、いや場合によってはまだ暑い。そんな中でファルベライズの遺跡は闇を湛え、冷たく無機質な雰囲気を出していた。
「ふむ、ここが傭兵たちの死んだ場所ということですか」
 『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は冷静に血の痕跡を観察し、見つけた罠へ遠くから石ころを投げる。瞬間、頭上から無数の槍がついた天井がその場へ落ちてきた。カイロはそれが落ち、ゆっくり戻る様を観察してから手慣れたように罠を解除する。
(これで進めますね。さて、あちらは──)
 もう挨拶を終わった頃か、とカイロが振り向きざま、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)のテンション高い声が聞こえてきた。
「『悠久ーUQー』勢揃いじゃねーか! Foo~~~!!!」
「あら本当。勝ったわ」
 チームの1人である『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は遺跡に入る前から勝利を呟き。『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は「んん?」と首を傾げ。
「なんか俺サラッと『悠久ーUQー』正式メンバーにされてなぁい?」
 今、千尋が言ったのだ。『アルメリアにフラン、キドー』と。おかしい、正確には助っ人枠のはずである。などと呟いてはいるが──もしかしたら次には正式メンバーかもしれない。
「おい」
 そんなキドーへラゴルディアの視線が突き刺さる。近頃は多少マシになってきたものの、それでも冷たい視線だ。
「この借りはいつか返してもらうからな、腐れゴブリン」
「どうせヒマしてたんだろ? いいじゃねぇかクソエルフ」
 バチバチバチ、と2人の間で火花が散っている気もするが、まあさて置いて。
「ダンジョン攻略でアルよ!」
「ええ。知恵と勇気を試されるって感じね」
 キラキラと目を輝かせる咲野 蓮華(p3p009144)と『紫緋の一撃』美咲・マクスウェル(p3p005192)はカイロの解除した罠の痕跡を見上げる。まだここは外からの光かあるから良いが、この先は闇一色だ。この中にどれだけの罠を内包しているのだろう。
「私たちで突破罠数トップを取るよ、ヒィロ!」
「うん! 美咲さんとならきっとどんな罠だって突破できちゃうよ!」
 満面の笑みを浮かべる『咲く笑顔』ヒィロ=エヒト(p3p002503)。2人は協力して事を成さんと役割分担を決めているのである。何せ命がけで突破しなければならない罠とガーディアンが待っているのだ、すごい秘宝が待ち受けてるに違いない!
「『悠久ーUQー』も負けちゃいられねぇな」
「ええ。今回もよろしくね、アネッサ」
 アルメリアの言葉にこちらこそ、とアネッサ・サンドローズが笑みを浮かべる。勝ち負けではないが、競い合うくらいに罠を突破していけるならきっと最奥まで辿り着ける。そんな予感を誰もが感じていた。
「悪い盗賊さんもいないし、罠なんてちょちょいのちょいだね!」
「おうとも。それに大鴉盗賊団がなんぼのもんじゃい!」
 『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の言葉にキドーが拳を突き上げる。どこの馬とも知れない者たちに秘宝は渡せない。なんとしてもここで成功させるのだ。
「そろそろよろしいですかね?」
「ええ、行きましょう」
 カイロの言葉にアネッサが振り返りながら頷く。その動きに──より詳しく言うなら動きの一部分に──フランは視線を黄昏させた。
「……やっぱりアネッサちゃんとアルちゃんが並ぶと格差社会ってやつが……うっうっ」
「もー、フラン! そんなことばっかり言ってないで行くわよ!」
 容赦なく引きずっていく幼馴染に連れていかれ、フランと一同は遺跡へ足を踏み入れたのだった。



 後方のカイロが石ころを投げた先でガチン、とトラバサミが作動する。揺れるカンテラの光に照らされる壁を観察しながら進んでいた蓮華は後方へストップをかけた。
「そこ、壁が動くみたいでアル」
「これだな。しっかしまあ、よく考えつくもんだ」
 経路を記録し地図作成していたキドーが視線を巡らせ、罠のスイッチに気づく。これまでもワイヤートラップやこの手の紛らわしいスイッチは多々あった。先程はトラバサミだったか。
「クソエルフ、周囲の警戒は頼むぜ」
「言われずとも麗しきレディたちがいるんだ、当然だろう」
 キドーの言葉にラゴルディアが片眉あげる。そうかいと視線を外したキドーは光源を掲げながら再び進み始めた。
 今回光源は限られており、特段暗闇を見慣れている者もいない。故に罠へ気づくことができないこともあったが、それでも致命的なミスをすることなく地道に罠を解きながら進んでいた。
「っと! 危なかったぜ」
 千尋はキドーの罠対処をアテにしつつ前方を進んでいたが、かのゴブリンは地図作成も並行している。取りこぼすものもあるわけで、しかし千尋はその強運により致命傷を免れているのだった。
「ちょっとキドーさん! 俺の頼れる男ぶりがかかってるんすよ!」
「そう言う割にちゃんと避けてるじゃねぇか」
 小さく肩をすくめるキドー。カイロが後方から金色の光を放ち、千尋の肉体を一時的に活性化させる。
「それにしても一体、誰がこんなに罠を仕掛けたんでしょうねぇ」
「これだけ仕掛けるなら『隠し通路』が必要よね」
 美咲の言葉にカイロは頷く。そう、必ずあるはずなのだ。遺跡の──ひいては罠の設計者が安全に出るための隠し通路が。それはあらゆるところに繋がり、罠のメンテナンスができ、安全に最奥まで行けるものだと尚良い。だがそう簡単には見つからないのが現状である。
「行き止まりだ」
 千尋がそう告げ、後続が肩越しに覗き込む。アネッサは照らされた目の前の壁に首を傾げた。
「なんだか……扉、みたいな形の切れ込みはあるわね?」
「ドアノブはないみたいだけれど」
 アルメリアが視線を巡らせる間にも、罠対処の知識を持つものたちは行き止まりを調べ始める。
「幻影とか?」
「いや、ちゃんと鍵はあるみたいだぜ」
 これよ、とキドーがヒィロへ示したのはレバーのようなもの。美咲とカイロがこちらにもと扉の切れ込みから対称な場所から声を上げる。
「同時に作動させるもののようですね」
「ええ、と言うことは──」
「──出番だね!」
 美咲とヒィロがアイコンタクトを交わして笑みを浮かべる。仲良し2人組が見せた阿吽の呼吸によって壁が動き、先を塞いでいた壁がなくなった。
「コンビネーションかっこいいなぁ……! アルちゃんアネッサちゃん、あたし達もかっこよく決めたいね!」
「そうね、私たちなりに──」
 アルメリアの言葉がふと途切れる。フランが壁にあったこれみよがしなボタンをポチッとしたからである。束の間皆視線がフランへ注がれ、美咲がはっと後方を振り返る。
「道が……!?」
 静かに閉じていく壁。先程開けたそれが閉まると、今度は前方から低い音が聞こえてくる。
「ねえ、フラン?」
「アネッサちゃん怖いよ?」
「何でその見え見えのスイッチを押したの?」
「アルちゃんも怖いよ!!」
 さもありなん。皆の言葉を代表して言ったに過ぎない。そして言い合う間も低い音は次第に大きくなっていった。
「次は何が来るんでしょうね」
「これまで色々あったからなあ……あとはなんだ? デカい玉が転がってくるやつとか?」
 カイロの呟きに千尋が思案を巡らせているうちにも低い音は大きく、近づいてくる。それの正体に気づいたイレギュラーズたちは顔を引きつらせた。
 マジだ。マジで大岩が転がってきたぞ!
「もう、やっぱり!」
「どどどどーしよあたしが気合で止めておくから!」
「フラン、その棒砕けるわよ!」
「何かビームみたいな技でブッ壊してアルメリアちゃん! 早く!」
「千尋もサポートに回ってよ! フランその棒離して!」
「ボクもやるよ!」
 やるわよ、というアルメリアの声に技を放つ『悠久ーUQー』とヒィロ。派手な音を立てた大岩は半壊し、目の前を邪魔しながらもイレギュラーズを潰すことなく止まったのだった。
 はぁ、と皆のため息が漏れる。それから邪魔な岩をどうにか退けて、一同は再び奥へ向かい出したのだった。
 尚、もう一度ボタンを押すことで後方の道は開けたという。

 そしてしばし。幻影トラップや落とし穴、宝箱の偽物といった罠の数々を抜けた一同は広い場所へと踏み入れていた。
「抜けたアルね?」
 きょろきょろと見渡した蓮華は、しかし正面のどでかい岩へ視線を向けざるを得ない。だってどう考えたってアレだろう。噂のガーディアンというやつは。
「レディ、その柔肌に傷でも付いたら大変です」
 どうぞ後ろへと蓮華を背へ庇ったラゴルディアは大岩が動く様を目にする。轟音と共に動き出したそれは胸元の宝玉を光らせた。
「カーネリアン、かな?」
「あれ、終わったら私にくれませんか?」
 その光に金の匂いを感じ取ったか──カイロがそう呟いた。守護者の宝玉である。秘宝たるファルグメントほどではなくとも高く売れるはずだ。彼は守護者の元へ踏み込みながら自らの肉体を活性化させる。その後方からヒィロはあふれ出る闘志でガーディアンを挑発した。
「鬼ごっこしようよ! キミが鬼ね!」
 カイロというどこまでも迫ってくる障壁を躱し、大回りしながらもヒィロへ迫るガーディアン。そこへすかさず仲間たちが攻撃を加えていく。その様子を見ながら美咲はつと目を細めた。
(……やっぱり、再生してる)
 仲間たちにつけられた傷がじわじわと──徐々にではあるものの──塞がりつつある。宝玉の力だろうか。
「ちっ、その力ばかりは封印できねぇか」
 苦々しい顔のキドーはフォースオブウィルでガーディアンを強かに叩く。同じ箇所をすかさずラゴルディアが追撃した。
「ちゃんとやってるか?」
「ふん、家宝があればこんな敵は瞬殺だ」
「そりゃあ残念だ」
 返すつもりはないんでね、と告げるキドーとラゴルディアの視線が交錯したのは一瞬。家宝を返すでもなく奪い取るでもなく、2人は同じ敵へ向かって武器を振るう。
「アルメリア!」
 硬く頑丈な表面へ傷をつけたアネッサに頷き、アルメリアは破壊魔法を紡ぐ。次いでフランに激励された千尋が大きく跳躍した。
「千尋さんのーちょっとイイトコ見てみたい!」
「ちょっとだけじゃなく見せてやるよ! オラァ!!」
 魔力の循環効率を上げる種が千尋を助ける。その力を感じながら千尋は拳を繰り出した。皆が散々叩きのめしたそこへ、蓮華が鈍重な一撃を放つ。
「く ら え アルよ!!」
 重く、重く、音が響く。地面へ突っ伏したガーディアンに蓮華が笑みを滲ませる──が、大岩の如き体は揺れた。
「頑丈なやつでアル……!」
「でもこっちもまだまだいけるわ!」
「あたしも! 縁の下の力持ちは任せて!」
「おう、息切れ気にせずガンガン行くぜ」
 仲間たちが闘志を燃やす中、カイロはヒィロの肉体の魔力効率を上げる。ガーディアンを倒すまで倒れる訳にはいかないのだ。
 次の瞬間──カイロは。いいや、近くにいた面々は後方へと吹っ飛ばされた。大きな腕が振り回されたのだ。
「ヒィロ!」
「大丈夫!」
 奇跡に守られたのだと知って小さく息をつく美咲。見れば何人かもパンドラの力で立ち上がっている。アネッサやラゴルディアはフランが真っ先に治療へ走っている様だ。
「止まるな! 叩き込め!」
 キドーの言葉に動ける仲間たちが武器を振るう。再生されようとも、頑丈な肉体に阻まれようとも、尽きるまで殴り続けるのみ!
「美咲さん、いくよ!」
「うん、いつものように決めよう!」
 ヒィロの闘志が燃え上がらんばかりに揺らめき、ガーディアンの動きを鈍らせ、彼女の元へとその身を動かす。そうして誘導した先には力を溜めた美咲がいて──その魔眼を輝かせた。



 美咲の力を受け、轟音を立ててガーディアンが崩れ落ちる。同時に嵌め込まれていた宝玉はぴしりとひび割れて粉々に砕け散った。
「守護者もろとも、ですか」
 売れそうだったのに、と残念がるカイロ。しかし守護者の後方にあった扉は宝玉が砕けると共に開く。それを見て一同は顔を見合わせた。
「いよいよってワケだ」
「すぐネフェルストへ持って行っちゃうけれど、見るだけでも楽しみよね」
 キドーの言葉に美咲は頷き、一同は罠が仕掛けられていないか注意深く調べつつその先へ踏み込む。その光景にカイロは簡単な声をあげ、フランと蓮華はうぇっと目を剥いた。
 さして大きくもない部屋。そこに設置された棚へ所狭しと並ぶのは───宝、宝、宝。まさかこの全てがファルグメントということはないだろう。
「こ、この中から見つけるアル……?」
「当たりを見つけるまで帰れないやつ!?」
 フランの声に反応したか。先程勝手に開いた扉がまた勝手にしまった。イレギュラーズが押しても引いてもビクともせず、ドアノブも存在しないから上手く掴めやしない。
「フラン……」
「え、あたしのせい?」
「偶然……にしてはタイミング良かったわね?」
 アルメリアの呆れた声とアネッサの苦笑。しかし真実は遺跡のみが知っているというやつだ。
「本物を見つけりゃ開くんじゃないか?」
「うん、きっとそうだよ! ダミーを掴まされたら……」
 言いかけたヒィロはブンブンと首を振った。失敗した時のことを考えてはいけない。そう思ったところで、
「千尋さんが即当てだね! 間違ったら爆発するかもだけど」
「俺ぇ!?」
 フランがぽろっと零し、ぎょっと千尋が彼女を見る。だがしかし、名指しされてしまった以上ここで引き下がれば男が廃る。千尋とヒィロ、そして蓮華も本物を当てるべく部屋の中心へ立った。
(見た目の派手さに囚われちゃダメだ)
 きらびやかなそれらは視線を奪って行くけれど、それこそが本物を隠すダミーだとしたら?
 ヒィロはゆっくりと視線を巡らせ、宝のひとつひとつを視界へ収める。そして。
「──きっとコレだ!」
 ヒィロがソレを掴んだ瞬間、他の宝が掻き消えた。カイロが「お宝が!」と叫ぶも虚しく、そこにはもうヒィロが掴んだ宝玉しか残っていない。
「流石ヒィロね」
 美咲に褒められて嬉しそうに尻尾を振ったヒィロ。一同は彼女の掴んだ宝玉をまじまじと見つめた。先程までの偽物たちは宝石などが付いてキラキラと輝いていたが、この宝玉は色鮮やかであれど煌びやかというほどではない。
「扉、開いたみたいね」
 アネッサの言葉に視線を移せば、ビクともしなかった扉がいつのまにか開いている。本物を掴み取ったが故、ということだろう。
 これで依頼は達成、余計な罠を踏む前に帰還しようと踵を返す一同。フランはそうだ! と同郷の2人へ飛びついた。
「アルちゃん、アネッサちゃん! あとでおかーさんのところに遊びに行こうよ!」
 これもイレギュラーズがもたらした変化か。国家としての門扉を開いたことに加え、外へ興味を持つ幻想種もちらほらいるのだという。フランの母であるミュスカ・ヴィラネルもこの度ラサへ遊びに来ているのだとか。彼女もアネッサとの再会には喜んでくれるだろう。
 しかしまずはネフェルストへ──イレギュラーズたちは遺跡の外の日差しに目を細めながら、行先を定めたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 鮮やかな橙色の宝玉がネフェルストへ運ばれました。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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