シナリオ詳細
再現性東京2010:ホーンテッドハイスクールダンジョン!
オープニング
●呪われし夜の学校
「どうしてこんなことに……」
「ねえ、わたしたち帰れるのかな?」
ユウタとミカは、夜の学校をさまよっていた。
部活が終わって帰ろうとしたとき、ふたりは校舎の中に取り残されていた。
いつもの学校の光景とは違う――。
その異変に気づいたときには、もう遅かった。
見慣れた光景の学校は異界と化し、まるで迷宮世界のようだった。
じっとりとした空気、静寂の中に響く足音……。
夜の学校から出られないという状況は、嫌が上でも恐怖を掻き立てる。
「もしかして、これって七不思議の鏡の迷宮なのかな?」
「あれ、本当だったの? 廊下の突き当りの鏡は異界に続いているって……」
この学校には、七不思議の怪談がある。
歩く人体模型、ひとりでに鳴り出すピアノ、いつの間にか増える階段、開かずの教室、トイレに出る少女の霊、異界に続く鏡、そして誰も知らない七つ目の不思議……。
大抵の学校には、そんな話が語り継がれている。
生徒たちが面白がって膨らました話だろう、ユウタとミカも、そう思っていた。
だが、ふたりが廊下の突き当りにある鏡の前に立ったときから、こうなってしまったのだ。
そんなこと、あるはずがない。
そう思って否定しようとしても、現実にこうしていつもと違う校舎にいる。
窓の外は真っ暗で、何も見えない。
試しにサッシの窓を開けようとしても開かない。
いったいどうしたらいいかと、途方に暮れたそのときである。
「これ、ピアノの音……!」
ポロン、ポロン……。
どこからかピアノを奏でる音が聞こえる。
曲は、夜想曲第8番。『貴婦人の夜想曲』と呼ばれるこの美しい調べも、今の状況では恐怖を掻き立てるものとなる。
「ユウタくん! わ、わたし、怖い……」
「大丈夫だよ、僕がついているから」
怯えるミカを励ましつつも、ユウタもじっとりと冷たい汗が滲んでいる。
夜の校舎にふたり、この心細い中でさらに異変がふたりに迫る。
カツ、カツ、カツ――。
廊下の向こうから、足音が向かってくる。
ぼんやりとした闇に浮かぶのは、皮膚を向かれて内臓がむき出しになった人体模型だ。
「きゃああああああ!」
ミカの悲鳴が響き渡った。
ふたりは、異界の学校から脱出できるだろうか。
●集まれ、ホラー耐性の持ち主!
希望ヶ浜学園ダンジョン部――。
鏡世界の中に展開するダンジョン探索を通じて夜妖との戦いと協調性を学び、人格の健全な発達と育成を促すという目的がある。
とある学校から回収してきた姿見の鏡の中には、広大なダンジョンが広がっている。マジ卍学園祭では、部員たちがこのダンジョン攻略の経験を活かし、仮想空間――つまりVRダンジョンを構築し、部外者にもダンジョン活動を楽しんでもらった。
最近、新たな事実が判明したという。
「この鏡の中ダンジョンは、別の学校にある鏡とつながっているらしい――」
『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)はそう語る。
希望ヶ浜学園にダンジョンに繋がる鏡を持ち帰った後、R.R.はその後も鏡にまつわる噂を追っていたのだ。
「どうやらその別の学校の鏡から生徒ふたりが迷い込んでしまったようだ。鏡面世界のダンジョンは、ダンジョン部の鏡とも繋がっている。救出してやらねばな」
R.R.の調べでは、迷い込んだ生徒はユウタとミカのふたり。
一般人で鏡の中に出現する怪異――夜妖の仕業であろうが――の前には為す術もない。
このふたりが迷い込んだエリアは、都市伝説や怪談にまつわるゴーストたちが出現する。トイレに出る少女の霊の他、人体模型などに取り憑いて霊障を引き起こすのだ。
「このままだと、精神的に追い詰められてしまうかもしれん。早く救出してやらねばな」
R.R.の呼びかけに、希望ヶ丘学園ダンジョン部の精鋭部員たちが集まるのだった。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/27114/8783118abe1d12ceacf48e74fe8f9550.png)
- 再現性東京2010:ホーンテッドハイスクールダンジョン!完了
- GM名解谷アキラ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年11月01日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●呪われしハイスクールダンジョン
「呼びかけに応えてくれて感謝する。本当に他の学園にも鏡があるとはな。この分だといろいろな学園の七不思議を追う羽目になりそうだが……」
『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)の呼びかけで、ダンジョン部は部室に設置された迷宮と化したダンジョンに向かう。
R.R.の呼びかけに応じたダンジョン部員たちは、他7名。協議の結果、3班に分かれて探索に当たることになった。
学園迷宮に迷い込んだふたり、ユウタとミカは七不思議の怪異に巻き込まれたものと思われる。
であれば、一刻も早い救出が必要との判断からであった。
というわけで、さっそく三手に分かれて捜索を開始する。
●A班――R.R.、リアナル、ブレンダの場合
「では、我々A班は、ひとりでに鳴るピアノの捜索、撃破を目指す」
R.R.を中心に、『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)、『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の3名は、音楽室へ進んでいく。
「幽霊……か……」
リアナルはひと言呟いた。
今となっては、魔種のほうが恐ろしい。
怪談話に登場する幽霊も、成長とともにその恐怖を克服できるようになる。
「本の中の世界、黄泉の世界は少しばかり経験したけど、鏡の世界まであるとはねぇ」
さらには、イレギュラーズとしての活動によってさまざまな異世界、冒険を繰り返せば多少の耐性はつくというものだ。
「先頭は、私が引き受けよう」
「大丈夫か? 事前の情報では出現するのは物理攻撃が聞きにくいというゴーストだが」
「効きづらいだけで無効ではないのだろう? それならば関係ないな! 斬れるまで斬るだけだ!」
ブレンダは力強かった。思わずR.R.も感心するほどだ。
脳筋そのものの発想だが、それもまた頼もしい場面である。
そのうえ、前衛を務めてトラップ探知も引き受けるという。
罠があろうがその身を犠牲にして踏み抜くに任せるトラップ対策を、ダンジョン用語では“漢探知”と称する。
ブレンダは、まさにこの探知法で突破する気である。
女性であるので、“女探知”……あるいは“女傑探知”と言い換えたほうが適切かもしれない。
「まあ、ゴーストが相手でもビビるような人材じゃないな……。でも、ミイラ男に女狐。救助対象のほうが逃げる要素は充分だな?」
ふと、我が身を振り返るリアナルである。
R.R.は身体中に包帯を巻き、リアナルは狐のブルーブラッドであるから、インパクトはゴーストにまさるかもしれない。
救助対象であるユウタとミカが驚かないか、多少の心配もあり、獣耳と尾っぽは隠しておく。
そうして進んでいくると、ピアノの音色が一同の耳に届いた。
「さっそくか……」
まずR.R.が気づいた。
奏でられる曲は、夜の学校とも相まって物悲しく、それが聞く者を不安にさせる。
彼のレーダーは、存在が希薄なゴーストの存在も察知できるのだ。
「近いな」
ピアノは、物理で破壊できる。
先頭を行くブレンダには通用しない恐怖である。
音を辿って音楽室に向かう。
辿り着いた音楽室の扉は固く閉ざされていたが、関係はなかった。
「……いけそうだな」
言うなり、ブレンダは扉を叩き壊した。
途端、ピアノの曲調が変わり、狂騒的なものになる。
実体の薄いゴーストが数体飛び回っており、死の恐怖を張り付かせている。
音楽室の中には、女生徒が怯えて縮こまっている。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ……!!」
3人が入ってくると、ゴーストたちが同時に一斉に叫んだ。
魂を握りつぶすような絶叫だった。ピアノの旋律によって、威力は増幅している。
「ぐっ……!! うわー」
その絶叫は、精神に大きなダメージを与える。だが、効いていないふりをして対処する。
そう、ここは驚くところだ。
だが、さしものR.R.も、この叫びには精神的な負荷を追わざるを得なかった。
青き血の本能の血によってゴーストの奇襲を察知していたリアナルがこれに備えてクェーサーアナライズによる立て直しを行なう。
「皆、強いから安心したまえ。私もそこそこ強いんだがね?」
これによって、絶叫による混乱からは立ち直る。
そして、音を分析したR.R.も気づく。
「ピアノだ、そこに取り憑いている」
「わかった、まずは物理の効くものからだ!」
ブレンダは、二刀を抜いてゴーストを振り払い、ピアノに向かう。彼女の剣技、閃光娘の追走曲だ。
そして狙うのは、音源となっているピアノだ――。
「物理が効くのであれば私に怖いものなどない!」
懐から小剣を放つ修羅媛の狂詩曲をピアノに放つ。
さらに、遠距離からのR.R.のソウルストライクが命中する。
弦が弾ける音がして、ピアノに取り憑いていたゴーストたちが開放され、そして気配が消えていった。
怨念の根源は、ピアノに宿っていたらしい。
「……なんとかなかったか。おい、大丈夫か?」
R.R.はうずくまっている女生徒、ミカに声をかける。
彼女は怯えながらも、何とか答える。
「わ、わたしは大丈夫です。でも、ユウタくんが……」
どうやら、同行したユウタとははぐれたらしい。
おそらく、迷宮内に取り残されているのだろう。
ということは、他の班の探索に任せることになる。
●B班、蛍、珠緒の場合
一方、時間は少し巻き戻ってのB班である。探索は同時に行われており、時系列はA班が女生徒ミカを発見する前――。
「その子たち、どれだけ怖がってることか……すぐにでも助けに行ってあげましょう、珠緒さん!」
「はい、ダンジョン部のれすきゅー出動ですね、蛍さん!」
『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)と『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)のふたりが、深夜の迷宮となった校内を寄り添うようにして歩く。先頭は蛍が務め、珠緒はそのすぐ後ろをついて歩く。
カツ、カツ、カツ……。
ふたりの靴音が、寂しげな校内の空気に響き渡る。
この暗闇にふたりきりというのは心細いが、お互いに信頼できるパートナーであるのがこの状況だと返って心強い。
探索しているが、まだ蛍の感情探知に反応はない。
ただ、それは空振りを意味しない。迷い込んだ生徒がいない場所を捜索で判明させるのは、別の場所にいるというのを明らかにする意味がある。
「ところで珠緒さん。ゴーストたちが引き起こしてる“学校の七不思議”のお話って知ってる?」
「はい……七不思議、ですか?」
「例えば、歩く人体模型とかトイレの花子さんとか――」
蛍は、七不思議の例を語っていく。
だが、ひとつひとつ語っていくうちに、そのイメージが徐々に鮮明になってくる。
(じ、自分の話でなんか怖くなっちゃったかも……)
「……なるほど。夜の学校という非日常の場で現われる、見慣れたものの別面等でしょうか? 数が関係するのも、神秘の構成としては理にかなっていますね」
珠緒は冷静に分析した。
怪異というものは、原因が不明な非日常的な事象であることが大半だ。分析によって原因が判明すれば、恐れる理由はなくなる。
とはいえ――。
カツ カツ カツ カツ……
カツ カツ カツ カツ……
「た、珠緒さん、ちゃんと後ろにいてくれてるわよね? ふふふ振り向いたら別のナニカだったり――!?」
「はい、きちんと後ろにおりますよ 後ろに おります……」
恐怖心というのは、そう簡単に消え去るものではない。
蛍の耳に聞こえる足音が、どうもおかしいような気がする。
「よ、よかった珠緒さんで……」
振り向いて、いつもと変わらぬ可憐な珠緒の姿に、蛍はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、その珠緒の表情が「あっ」と口を開いていた。
「ん? なんでボクの後ろを見て――きゃああ!」
改めて振り返った蛍が見たものは、身体半分の皮膚が剥ぎ取られ、臓器がむき出しになった人体――七不思議のひとつ、歩く人体模型であった。
「いけません、シムーンケイジ!」
即座に珠緒が反応し、熱風の嵐を叩きつけ、人体模型の動きを封じる。
背後を取られた蛍は、恐怖から立ち直って狂咲によって反撃する。
組み付こうとした人体模型は恐怖そのものであり、大きく精神を消耗させられる。
だが、桜吹雪とともに貫通する桜技は、樹脂製の人体模型を貫通した。
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫ですか、蛍さん?」
「はい、なんとか。もし、他の生徒がこんな目に遭っていたらと思うと」
蛍でさえ、魂が凍るほどの恐怖を与えられたのだから、迷い込んだふたりが直面したらどうなるか?
珠緒とともに、捜索を再開するのであった。
●C班、メイ、ミーナ、茄子子の場合
さて、C班は『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)、『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)、『死神教官』天之空・ミーナ(p3p005003)の3名となる。
彼女たちは、開かずの間への担当となっている。
出発前、この3人を見守ったのは、ヒリュウ・シルバーだった。
その顔はミーナと瓜ふたつで、実の母だという。
千年以上前に死んでいるとのことだが、時空を超えてやってきたのだ。
「私以外の誰かがここへ戻ってきたら、この三人に電話をかけるように。後、ここを動くなよ」
「ええ、わかったよ。待っているから」
そういうわけで、ミーナは母のaPhoneにブレンダ、蛍、メイの電話番号を登録させる。
「ダンジョン部部員のメイなのですよ! 助けに来ました―」
「風紀委員の茄子子だよー! 今から助けに行くからその場から動かないでねー!!」
茄子子が、スピーカーボムで呼びかける。
校舎全体に響き渡るほどの音量だ。
「これは、お二人を助け出せれば、二人で怖いところから乗り切ったというつり橋効果で、距離がぐっと縮むのでは!!」
などとメイはませたことを考えてしまう。
自分の恋はよくわからないが、他人の恋に関しては好奇心が湧き上がり、ドキドキなのであった。
しかし、探索の最中、メイのaPhoneにA班、B班からの現状報告が入ってくる。
「A班がミカさんを見つけたとのことなのですよ!」
B班は七不思議のひとつ、歩く人体模型と遭遇して交戦したとのことだ。すると開かずの間にユウタが閉じ込められている可能性は高い。
しかし、つり橋効果で急接近という恋愛模様を目撃できないのは残念であった。
「……ところで開かずの扉ってどっち方面にあるんかね?」
ギフトの効果によって母親の位置を把握するため、、窓を開けながら進むミーナが呟いた。
今、校舎は異界化しており、通常の見取り図は役に立たない。
A班、B班が探索をしていないフロアを探し回っていく必要はあるだろう。
「きっと助けを待っているのですよ。だから、何かを感じられるんじゃないかと思うのです」
「よし、なら人助けセンサーに反応があるはずだな」
ミーナが助けを求める心を探った。
――フロア3つ分先、そこに何らかの反応がある。
「ん、大体わかった」
メイ、茄子子とともにその先に向かう。
開かずの間――。
ずっと扉が閉ざされた謎の教室だ。
「……会長はね、肝試しとかは好きだけど怖いのは嫌いだよ!」
深夜の学校というのは、静まり返って不気味極まりない。
その教室の扉も、異様な気配を漂わせている。
ダンッ――!!
開かずの間であったはずの教室の扉が、突然勢いよく開いた。
「――ぁぁあああ!!!!」
「ひゃああああ!!」
いきなりのことに、茄子子とメイはそろって悲鳴を上げる。
「中に誰かいるか!」
「た、助けて……!!」
ミーナの呼びかけに、扉の中の男子生徒が答えた。
彼がユウタあろう。
その周囲に、無数のゴーストたちが漂っている。
開かずの間に訪れた新たな獲物を、引き込もうというのだ。
「わ、罠なのですよ! 入ったら閉じ込められるのですよ」
「だが、中に入らねば彼を救出できん」
「それはそのとおりですけど……メイも行くのです!」
ミーナは迷うことなく飛び込んでいく。
時には、罠とわかっていても突入しなければならないこともある。
「しばらく物陰にでも隠れててくれ。終わったらまた声かける」
「は、はい!」
ユウタに命じると、襲いかかってくるゴーストに対処する。
まとわりついてくる生亡き者どもに、ブレイクフィアーを放った。
ゴーストたちが与える“恐怖の叫び”ごと打ち払った。
「でやああっ、ソニックエッジ! ……なのです!」
メイも、接近してゴーストに対して接近戦を挑む。
物理攻撃ゆえ、その威力は半減するも効果はあったようだ。
しかし、一撃で葬れねば反撃を受けてしまう。
「ひあああああああっ!?」
冷たい、首筋に氷を注がれたような冷気だ。
ゴーストによるデスタッチである。
「回復は会長に任せて!」
群がるゴーストに消耗させられたメイに、茄子子のクェーサーアナライズとミリアドハーモニクスで援護する。
そしてaPhoneによってA班、B班にも連絡した。
「ユウタくん!?」
A班に助けられたミカが駆けつけ、叫ぶ。
さらに珠緒のギフト桜花水月によって開かずの間を把握したB班も駆けつける。
「皆さん、ユウタくんを助けて避難しましょう」
「そうだな」
群がるゴーストからユウタを連れて逃げようとすると、今度は扉が閉まろうとする。
しかし、物理であれば恐れないブレンダがこれを破壊した。
「さあ、今のうちだ」
力強いブレンダによって、進路が確保される。
それと同時に、校舎内のゴーストたちが一斉に絶叫した。
「うう……、ボクたちを逃さない気だ」
「階段を降りて入り口に逃げるぞ」
R.R.が示す退路に向かい、ミカとユウタを連れて逃げる。
しかし、階段を降りても降りても果てがない。七不思議のひとつだ。
「あーそびましょ」
今度は女児の声が響く。トイレに出る女児の霊が、逃さじとばかりに追いかけてくる。
「……ちっ」
「まぁどう考えてもまともな世界じゃないけど……はぁ、めんどう」
このまま、追いつかれれば脱出も危うい。
階段は、地の果てまで続くようにさえ思えるほどだ。
と、そのときaPhoneから着信があった。
発信者は、ヒリュウ・シルバーである。
「出口の鏡はすぐそこだから、惑わされては駄目だよ」
耳を澄ませば、aPhoneのアラームが聞こえてくる。
この果てのない階段は、幻なのだろう。
「ま、幻なのか……!?」
物理の効かない幻の階段ということで、ブレンダが震えだした。
ピアノや人体模型と違って、幻は破壊できない。
何よりの恐怖となるのだ。
「大丈夫です、もうすぐですから」
珠緒が励まし、アラームが鳴る誘導へと誘導する。
珠緒のハイセンスとR.R.の超聴覚があれば、もう惑わされることもない。
「こっちだよ」
ヒリュウ・シルバーの誘導する声とともに、鏡が見えてくる。
全員で、その鏡に飛び込んだ――。
※ ※ ※
「鏡から元の世界に戻れば、ひとまず安心ですね」
「貴方たち、とんでもない目に遭ったわね」
弾音蛍は、無事に逃れたふたりに声をかける。
恐怖の迷宮と化した校舎から、ミカとユウタはなんとか脱出できたのである。
もうそこには幽霊や七不思議の怪異はない。
「た、助かりました。あの、あなたたちは……?」
「メイたちは希望ヶ浜学園ダンジョン部なのです!」
「ダンジョン部?」
ユウタとミカのふたりが怪訝な顔をした。
そんな部活があるのだろうか、と。
マジ卍祭で活動の一部を広報したが、やはりまだ知る人ぞ知ると言ったところである。
「では、会長が皆さんを回復しますよ」
茄子子の天使の歌によって、失われた大量も回復していく。
恐怖というのは、心身を消耗させるのだ。
「ダンジョン部の活動は今後も忙しくなりそうなのですよ!」
「ああ、ダンジョンはやはりいいな」
いろんな目に遭ったが、メイとブレンダはまだ元気なようだ。
「ふたりとも、送っていこう。精神的に限界だろうからな」
そういって、R.R.が付き添って、家まで送る。
そうして日常に返っていく光景を、蛍はどこか寂しげに見送った。
(ボクにはもう、戻ってこない日常か――)
そんなことを思い、珠緒とともに帰路につく。
「あーそびましょ」
ふと聞こえた、少女の声を背に受けて――。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
というわけで、もう冬に差し掛かろうというのに怪談風のシナリオでした。
ユウタとミカは無事救出されました。
七不思議がいくつか襲いかかって来る展開でしたが、無事帰還したことをお祝いいたします。
分離行動は描写もしやすく、恐怖演出も捗りました。
大勢で固まっていると、やっぱり難しいですからね。趣旨を汲み取っていただいて何よりです。
最後の不思議は、ご想像にお任せいたしまして、この辺で締めましょう。
またダンジョン部のシナリオを出す構想がありますので、そのときはよろしくお願いします。
GMコメント
■このシナリオについて
皆さんこんちわ、解谷アキラです。
希望ヶ丘学園ダンジョン部の部活動の一環でもあり、人助けの依頼となります。
参加する場合、特に部員に限るということはありませんし、部員であると主張すればその場で部員となります。
では、今回のシナリオについて説明しましょう。
・ダンジョン探索
ダンジョン部の部室から鏡の中に広がっているダンジョンを攻略し、迷い込んだふたりの生徒たちを救出します。
ダンジョン内は、学校のような風景となっており、廊下と各種教室、怪談など、よく見る学校の光景が異界でダンジョンになっています。
トラップは、恐怖や不安を掻き立てる精神にダメージを与えるものが中心となります。いわゆるジャンプスケアというやつですね。正気度が減ってしまうかもしれません。
・ユウタとミカ
ごく普通の高校生の男女です。
クラスメイトで、ちょっと意識しあってるみたいな関係のふたりです。基本的に無力です。
・ゴースト
学校の七不思議を引き起こしているアンデッドです。
実体を持っていませんので物理攻撃は聞きにくいです(無効化するわけではありません)。
ですが、何かに宿っている場合は実体を持っているとして扱えます。人体模型、ひとりでに鳴るピアノ、開かずの間の扉はゴーストが宿っているようです。
七不思議の怪異を引き起こしているのは、このゴーストたちです。
・脱出について
ふたりを救出すれば、学校の鏡かダンジョン部の鏡を使って脱出ができますが、迷ったらその限りではありません。ダンジョンで迷わない工夫があるといいかもしれません。
・その他
学校の怪談系ホラーのシナリオですので、ホラーっぽく盛り上げてくれるプレイング歓迎です。リアクションはアドリブでいろいろ追加する予定です。
それでは、どしどし参加してくださいませ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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