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シナリオ詳細

秋に夢を探して

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●秋空と怪盗の依頼
 夏は終わり、秋が来た。
 青空は気持ちよく晴れ渡っているのに、心はどこか隙間風が吹くようで。
 仕方ない、仕方がないこと。いつもどおり。明日はきっと、いいことが。
 今日も、『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)が折り合いを付けようとしていた時だった。
「この間の情報提供、報酬がまだなんだけど」
 いきなり隣りにいたナハン=カンナ。クールでエレファント(※エレガントではない)(誤字ではない)な覆面女怪盗である。
 先だっての妖精郷における戦闘で、セリアのアルベド――最終的に『アルセリア』という個体名を得た――を生存させる手掛かりを求めた結果、「その手段は存在しない」という情報を投げつけた本人だ。
「何よ役立たず。わたしはフェアリーシードの代わりになるものの情報が欲しかったのよ」
「『それは無い』っていう情報を提供しただろう? 『少なくとも今は』、とも付けたはずだけどね。ボクもあれから興味が湧いて、探している所さ」
「フェアリーシードを?」
「まさか。あんな、小さな命を削る石に興味はないよ」
 肩をすくめたナハンは、予告状のようなカードを取り出すとセリアに渡した。
「『微笑みの雫』?」
「妖精郷の『思い出の草原』にある雫型の宝石でね。生まれたばかりの雫に特定の感情を与え続けると、大きな宝石に成長するらしいんだ。
 綺麗な色の美しい雫型にするには、ちょっとした工夫が必要だけど」
 セリアの脳裏に過ったのは、ダジャレを聞いてくれる人がいないと叫んでいた『アルセリア』のこと。
 この雫なら、黙って聞いてくれたのでは。面白かったら成長してくれたのでは。
 この雫なら――。
「ごめんなさい、ちょっといいかしら」
 二人の会話に新たに加わったのは、偶然話が聞こえた『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。
 妖精郷、『アルセリア』、感情で成長する宝石、と聞いて。閃いたことがあったのだ。
「『アルセリア』は……私も、気になっていて。でも、彼女のフェアリーシードの核になっていた妖精は、今も生きてるんでしょう?」
 名前は聞きそびれたが、『アルセリア』を撃破した後に残っていた妖精がいたのは確かだ。ダジャレ好き妖精のあの子は、今どうしているだろうか。
「あの子のダジャレの練習に、その草原へ連れていってあげるのはどう? 私達も一緒になってダジャレ合戦なんてしたら、宝石も成長して皆幸せになれるんじゃない?」
「いいね! それは実にいい!
 実は今回、ボクのお目当てはその『微笑みの雫』でね。とびきり綺麗なのをひとつ、取ってきてくれないかな」
「自分が欲しいなら自分で取りに行きなさいよ、怪盗でしょ?」
 オデットの提案に大いに喜び、便乗とばかりに依頼をしてきたナハンにツッコむセリア。
「最初に言ったじゃないか、この間の報酬を貰ってないって。あの戦闘に駆け付けるだけでも、割と命懸けだったんだぞ?
 それを、その『微笑みの雫』で手を打とうという話さ」
「カードを投げつけるだけの簡単なお仕事だったくせに……」(まぁわかったわよ)
「本音と建前が逆になってるぞキミ」

 かくして、『微笑みの雫』にたくさんの『面白さ』を与えるべく、ダジャレ好き妖精とダジャレ合戦をすることになったイレギュラーズ。
 肝心のダジャレ好き妖精の行方については、ナハンが「こんなこともあろうかと」と調べを付けてくれているらしい。ますます「どうして自分で行かないんだろう」と疑いを深めたセリアがいたり、いなかったりしたがさておき。

 『面白い』とは、なにもダジャレの出来・不出来だけではない。
 それを考えた熱意、込めた思い。努力した時間。
 費やした時間の全てで、聞くものの心を動かせたら――それは『面白い』のだ。

●ダジャレ好き妖精? 何だじゃれ
「よし、閃いた!」
 常春の妖精郷では、一人の妖精が今日もダジャレ修行に励んでいた。
 中性的な出で立ちで、名はシーという。
 何がそこまで駆り立てるのかはわからないが、シーはとにかくダジャレ好きなのだ。
「ふとんはふっとんでない!」「闘争心を抑えて逃走!」「時間内とか時間ない!」
 ……センスや実際の技術の方は、なかなかのアレであるが。
 とにかく、ダジャレに情熱を燃やしている変わり者なのだ。

GMコメント

旭吉です。
今回はお二人から頂いたアフターアクションからの派生シナリオとなっております。
「<夏の終わりに>醒めないで、わたしのゆめ」の後日談的時系列ですが、該当シナリオをご存知なくても問題ありません。

●目標
 美しい形に成長した『微笑みの雫』を持ち帰る

●状況
 深緑の常春の国『妖精郷アルヴィオン』。
 そこに存在する『思い出の草原』には、あちこちで生まれたての宝石が朝露のように煌めいています。
 今回はダジャレ好き妖精と共にダジャレ合戦をすることで、雫に『面白い』感情をたくさん与え、美しい『微笑みの雫』に成長させましょう。

●情報
 『微笑みの雫』
  生まれたての宝石が『面白い』感情をたくさん吸収して成長した雫型の宝石。
  大きく成長し過ぎて草原の葉から落ちると砕け散ってしまうので注意。

 ダジャレ好き妖精
  名前は「シー」。自分を「シーくん」と呼ぶ。性別不明。
  出会った時に名乗ってくれるでしょう。
  妖精郷での戦いの折にはフェアリ―シードに捕らえられていましたが、今は元気。
  いつもダジャレのネタに飢えている模様。なおセンスは察し。
  捕らえられていた間のことはぼんやりとしか覚えていません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 秋に夢を探して完了
  • GM名旭吉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月01日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ

リプレイ

●ダジャレを考える

 ――なんだこの依頼。なんだこの依頼?

 妖精のシーに『思い出の草原』へ誘われながら、『マヨ外交』ラクリマ・イース(p3p004247)は脳内で二度繰り返した。大事なことなので。
 御伽噺のような常春の妖精郷。面白い感情を吸収して成長する宝石……まあそこまでは、良い。
「なんでダジャレですか! もっと違う楽しいこといっぱいあったはずでしょう?? ねえ??」
「ダジャレをナメるとやばいんだぞ! ネタに詰まると夜しか眠れないんだ!」
 ラクリマの率直な疑問に反論するシー。夜しか眠れないのは健康体なのだが。
 しかし、態度の差はあれどイレギュラーズの多くが『ダジャレ』という点に悩まされていたのは事実だ。
「なかなか難しいな……ダジャレとかそういうの作るの苦手だし……」
「言葉遊びでいいならできるのだけれど、ダジャレとなると。うーん……」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は視線を下げ、『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は少しばかり言葉を濁した。
 そんな親友ルチアに期待の眼差しを一心に注ぐ『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。彼女はいつも本を読んでいて知識があるのだから、きっと面白いダジャレを披露してくれるに違いない――と。
「シー殿は面白いダジャレが好きでありますか。笑いというものは奥が深いものでありますからにー、吾輩のセンスが少しでも参考になればはっぴーうれぴーでありますな!」
「僕らはきちんと依頼を受けて、プロとしてやってきたんだ。大船に乗ったつもりで任せてほしい」
 バイザーに親しげな笑顔の顔文字を表示させる『良い夢見ろよ!』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)。『森の善き友』錫蘭 ルフナ(p3p004350)も年相応に、シーを安心させようとしていた。何のプロなのかはこの際深く考えないとして。

(あいつホントに、なんで自分で行かないのかしら。ダジャレ考えるのが嫌だとかそんな理由だったら、後で一発蹴り入れるから)
 依頼人の女怪盗を少し忌々しげに思い出しつつ、『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)の意識は目の前の小さな妖精シーへ。
(わたしのことは……流石に覚えてなかったわね)
 今日、出会ってすぐに自己紹介をした。シーは快く迎えてくれたが、あくまで依頼を受けてくれたイレギュラーズとしてだった。何かを思い出すような素振りは、全く無かった。
 それで――よかったのかもしれない。この子は、あの子では無いのだから。
 あの子と同じく、ダジャレに命を懸けていても。あの子のように命の制約が無い。
 それだけで――十分だ。
「今度は時間内なんてない中でダジャレ合戦ができるなんて。不思議な気分だわ」
「……そうね」
 白い『あの子』を知るオデットと、少しだけ以前を思い出して。今日の出会いを思って。
「今回はルチアも一緒だもの! きっといいネタが浮かぶわ!」
 オデットの翼がきらきらと太陽のぬくもりと光を放つと、セリアの心も何だか温かくなる気がした。

 草原を少し進むと、シーがここだと示すようにぐるぐると飛んだ。『微笑みの雫』はこの辺りで採れるようだ。
「ここか……今日はよろしく頼むよ。ダジャレはそこまで得意じゃないけど、虹色になる気分で頑張らせてもらう!!」
 やる気を漲らせる『黒裂き』クロバ・フユツキ(p3p000145)。虹色になるとは、七色インコ的なあれだろうか。きっと何か、鮮やかにゲーミング発光しながらぐりんぐりんと。何を言っているのか執筆者もよくわかっていないが。
「……え、そんなネタはやめなシャレ? シャレにならない事はやめてくれ!」
 そしていきなり仕掛けてきたクロバ選手。
 クロバはやると決めたら突き進むタイプであるし、今回も至って真面目だ。大真面目にダジャレを考えているのだ。虹色な感じで。ちょっとテンションが本編から脱線気味だが。

 ところで本編ってなんだ! これも容赦なく本編ですけど!

●ダジャレ合戦:前半戦
「いきなりダジャレを言うのはダレじゃ!!!!」
 ツッコミの性から思わず脊髄反射してしまったラクリマ。戦闘依頼でもこんなに早く反応したことないのに我ながらびっくりである。
「えっ、何そういうのでいいの!? っていうかもう始まってるの!?」
「つかみに出遅れるとは不覚……! 真っ先に斬り込んで、吾輩に続けーと場を温める計画がっ!」
 ルフナが混乱し、ジョーイが悔しがる。そこまで大事にするつもりは無かったが、手柄を立ててしまったようなので、ラクリマはとりあえず背景にきらきらと白薔薇を飛ばした。ように見えた。
「ふふ……この深緑の美しき白薔薇ラクリマ・イースが、華麗な話術で、『微笑みの雫』を見事成長させてみせましょう……」
 あまりにも白薔薇がキまってしまったのと、反応に困ったのとで静まりかえる場。
「……って、今のツッコむ所です。お願いします」
「ああ、すごかったよラクリマ君! ……じゃなくてツッコミか、こういう場合は……」
「い、いけめん? か? っていう感じでいいの?」
 素直に賛辞を送ってしまってからルフナがツッコミを考える間に、シーが自信なさげにツッコんでみる。ちょっと辛くなったラクリマである。
「妖精に要請するのはよーせー!」
 そしてここぞとばかりに狙ってきたジョーイ。自信の無いシーを庇いつつ、妖精相手にようせいを3つもかけたトリプル妖精コンボ! いやこれは勝った間違いない。
「それを言うなら、妖精さんに無理をさせるのはよーせー、でいいでしょ」
「シーだって頑張ったんだから、妖精の話はよーせー、よ!」
 セリアとオデットから連鎖的にダジャレが発される。トリプルコンボまではいかずとも、似たようなネタ被りは発生していた。むしろ3人で同ネタコンボである。
「オデット……あなた、十分ダジャレの素養あるじゃない」
「いや、これ元の世界で結構言われてるのを聞いただけなんだけど……あ、いい加減だなって顔したら駄目よ! 『いい加減は良い加減』って言うでしょ。だからいいのよ!」
 (推定物知りな)ルチアから向けられる感心の眼差しが複雑なオデット心。これにはネタもヤケクソになろうというものである。そしてさらに感心していく親友。
 違う、そうじゃない。
「ありきたりなネタをするのも芸がありませんですな……とはいえ、再現性東京で仕入れたネタはチョサク神拳からの刺客に処されてしまうゆえー……」
 口にするだけで処しに来るとは、どんな世紀末的流派だろう。天使の羽して包丁とか装備してそうである。
 それはともかく、ジョーイはドリームシアターを展開するとある幻影を映し出した。
「頑張ったシー殿を看護する謎の女医……しかしてその正体は吾輩ジョーイ! そう! これぞまさにジョーイが女医!!」
 本体のメットにはドヤ顔顔文字。ついに身体を張りやがった!
「決まった……まさに吾輩しか出来ない、オリジナルな渾身のダジャレ……」
 勝ち誇った様にガッツポを掲げるジョーイ。ちょっとこれを超えられるダジャレというか、流れを考えるのは、今のイレギュラーズには難しかった。

 コーン……。

 その時、鉄を打つ澄んだ音が響く。続けて異なる音が響けば、楽しげな旋律が紡がれ始めた。
 ダジャレが苦手でどうしても思い浮かばなかったサイズが、せめて『楽しい』感情を与えられればと、鉄インゴットから鉄琴を作っていたのだ。
「良ければ、一旦休憩にしないか? 休めば、ネタも浮かぶかも知れないし……その間は、俺が雫に感情を与えておくよ」
「よかった、俺も女装すれば勝てるかもとか考えてしまってた……危ない……」
(一体何の勝ち負けなのかな……)
 クロバの社会的なパンドラが死ぬ前に、こうして休憩が挟まれることとなった。

●小休止
 常春の草原を気持ちよさそうにごろごろと転がるオデット。
「ここ、気持ちいいよね! シーくんもここ好き!」
 勝手に混ざると、シーもオデットと共にごろごろし始める。
「気持ちいいし、何だか楽しくなるわ! ダジャレを考えるのって楽しいけど難しいのよ、このままじゃ頭が煮詰まって茹で妖精になっちゃう」
「シーくんもー」
 ごろごろする二人の間に、風に乗ってサイズの音が聞こえてくる。上手な旋律というわけではないが、次の音が気になってわくわくするものだ。
「ダジャレ……正直、わからないわね。言葉遊びでよければ、こういう話があるけれど」
 その中でルチアがノートを取り出すと、二人が興味深そうに覗き込む。
「『農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事する(サトル・アレポ・テネット・オペラ・ロタース)』って。何がなんだかって? これをご覧なさい」
 ルチアのノートに書かれていたのは、次のような文字列だった。
『SATOR
 AREPO
 TENET
 OPERA
 ROTAS』
「横に読むとサトル……下に読むと……サトル? すごい! 同じね!」
「右上と左下から、縦横どちらに読んでも同じ文になるのよ。面白くない?」
「すごいわ!! さすがルチア!」
 やはり親友は物知りだった。信じていたオデットはもちろん、意味を知ったシーも大層感心していた。
「もっとたくさん考えましょうよ! 考えるのは難しいけどできると達成『感がある』わよね、なんて」
「あら、休憩中もネタ作り?」
 オデットのダジャレを聞きつけてセリアが会話に加わる。
「ふふふ。『みんなで構成して校正して後世に残す』って、アルセリアに伝えたのは私だもの」
「そうだったわね……シーさん、しんどかったりしない? 今日は楽しい?」
 シーが健康全開、元気モリモリをアピールすると、セリアはまるで家族のように安堵して。それから咳払いをひとつすると、アドバイスを送った。
「せっかくだから、ダジャレ上手くなる方法教えてあげよっか」
「教えて!」
「ダジャレ上手くなるには、ダジャレだけ考えてちゃダメなのよ。大事なのはいろんな人と話すこと。
 いろんな人といっぱい話して、その人が言ったことや、自分が言った言葉で、気に入ったのをたくさん覚えておくのよ。
 要は、楽しいことをいっぱいすること」
 あの子とはダジャレ好き以外、似ても似つかない子。あの子とは全く別の命。
 わかっていても気が付けば、あの子に伝えたかった言葉が溢れてきた。
 今のシーにも必要な言葉ではある、とは思うものの。
「後は一人で練るだけじゃなくて、いろんな人に……ううん、何でもないわ。この先は、もっとダジャレ上手くなってからね」
 残念がるシーに得意げに笑ってみせる。この先は、この子がもう少し――あの子くらいに成長した頃に。

●ダジャレ合戦:後半戦
 休憩時間の終わりに、『微笑みの雫』が成長し始めているのを見つけたイレギュラーズ達は、ひとまずその下にタオルやふかふか毛布を敷いて回った。
「いざとなったら、身体を張ってでも受け止めるから」
「見て回って回収もしておくわ」
 サイズとオデットの言葉を受けて。いざ、ダジャレ合戦後半戦――。
「『野菜をちゃんと食べやさい』……みたいなのは安直か。『近くで話しててもトーク(遠く)』みたいなのは捻りすぎ?」
「ダジャレじゃないとダメ、なら……イルカはいるか、とか。猫が寝込んだ、みたいなやつしか思い付かないのだけれども……恥ずかしい……」
 ルフナとルチアは早くも頭を悩ませていた。ルチアはそろそろ羞恥に負けそうである。
「何も、ダジャレって言うのは同じ音を持ってくるだけでなく、母音を同じくする言葉を使うってテクニックもあるみたいだからね。
 でもそんなギャグのなすり合い、まるでラップの百連発、三流以下のプレイバック……ってこれホントにチープなラップだからね、うん。迷走しちゃダメぃ……だぞう……」
 ルフナもそろそろ羞恥が限界である。
「というかね、年甲斐もなくこういうことしてるとオヤジギャグみたいで恥ずかしいんだよね。おや、自虐? ……もう! 『微笑みの雫』に面白さを教えるよりも先に羞恥心を学習させてしまいそうだ……」
 錫蘭ルフナ。見た目は少年(こども)。実年齢は56歳。心境としては若者にいまいち混ざりきれない大人(おじさん)が頑張ってる状態であり、非常にほほえま……もとい。
「そんなの困(こな)っちゃう……や、やっぱり照れが勝たないかなぁこれ!?」
 照れの前にぎりぎりチョサク神拳が掠るところだった気がするが! 微笑ましいのでいいことにしよう。
「ある日の昼にニヒルなアヒルがアルビノのヒルに怯んだ……って、これは早口言葉だね……ううん、これ以上は浮かばないかな……」
「宝石たくさんあるわね、いくつあるか、かじゅえるのも大変そうだけど。みんながかしずくような美しい雫にしないとね」
 ルフナの窮地へ、満を持してぶっ込んできたセリア。心なしか輝いて見える。
「くっ、取りあえず思い付いたのを言って行けばいいんだよな?」
「よし、じゃあ行くぞ!! ダジャレ行くぞ!!」
 それに火が付いた(のかはわからないが)クロバとラクリマ。ここに来て怒濤の追い上げを見せる。
「ふとんがふーとん(風遁)でふっとんだ。ふーとんだとんだ」
「猫がねこんだ!! あっ、さっき出ましたね! なら猫がねころんだ!!」
「塀に兵が乗っかってるんだけど。そのへいがいにはいかに? そんなのごへい? へいへい」
 ぜえはあ。何だろう、この、何かキめてそうなヒプなんとかダジャレバトル。
 この話そういう話だっけ。面白いからいいか!
「うむ、猫ネタで攻めてみましたが。しかしこれでは王道すぎますね、もっと笑いを取らなければ。次です!!」
「俺もまだまだいけるぞ! カレーを華麗に振る舞って彼にかける言葉はあれだよね、おつカレー。あ、ここカレーをかけたとも掛けてるんだけどちょっと自信あります」
「ぐ……トウモロコシを食べるのはまたコーンど!
 今度はストーリー仕立て……にしてみたけど、これは微妙すぎたか。言い方を変える所までは良い感じだったのですが」
「ストーリー仕立てなら負けない!
 やー、今日はいい天気だよね。秋の天気は気持ちが良くてあきあきしないっていうか、ゲーミング回転したくなっちゃうくらいだよね!!
 ……え、ダジャレはネタじゃないしゲーミング回転もするな? あ、きがつきませんでした……」
「カニはたしカニあずかった……さらに微妙だなおい!! こうもっと奇抜なネタを……。
 誕生日は……またんじょう……クレカのクレカ……」
 ラクリマの心のパンドラが目に見えて減っていく。
 あかん。もう殺せ。反転してしまう。
 この状態で反転するとダジャレの魔種になりそうですが本当にいいんですか。
 クロバもそろそろ心折れそうになっていたが、その目に光を取り戻す。
「いや、こんな事で諦める俺じゃない!!」
 いきなり本編キャラに戻られても。いやこれ本編ですけど!(2回目)
「センスを絞り出してでも、良いダジャレを提供してみせようじゃないか!!
 クロバ・フユツキ、特技を見せます。どうですかこの、アクロバット!!!」
 うおおおとその場でアクロバットを披露するクロバ。彼はEXAが高いため依頼でアクロバットをかます時があるが、それ以上にアクロバットさんの存在感が強いのである。検索はクロビとかシロバとかに改名するしかないと思う。何言ってるかわからないが悲しい。
「冬の湖で氷が浮いんたー! 遭難したって? そうなんだー! 雪崩に巻き込まれてうなだれるー!」
 そして、それらの頑張りをセリアのダジャレひとつが押し流していく。
 これが、天性――。

●大豊作!
「これ以上は……許してちょんまげ……これダジャレか……?」
「ダメなら今のを今度こそゲーミング回転しながら連呼しますんで!!! 推し過ぎ!? こんなんもうおしまいだあああああああ!!」
「二人とも、雫拾いを手伝って欲しいんだけど……」
 (心が)瀕死のラクリマとクロバが、サイズの言葉に正気を取り戻す。反転回避。いやダジャレの魔種とかいてたまるか。
 気が付けば、そこかしこで美しく成長した雫が草原の草葉を伝い落ちるのを、シーも巻き込んでイレギュラーズ達が回収して回っていた。
「こんな風に、宝石ってできるんですね……」
「こんな大豊作は見たことないよ! いつも一人で練習してただけだからね!」
 落ちそうな雫をサイズと共にシーが支えて、雫を集めている箱へ収める。
「いやー、今日は大変面白かったでありますな! そういえば吾輩、再現性東京にてOOGIRIなる競技を聞いたことがありましてな……」
 雫の回収を手伝いながら、次は大喜利大会の司会がしたいというジョーイ。シーは、それも面白そうだと笑っていた。

「……また会おうね、シーさん」
「うん! またダジャレ教えてね!」
 一粒どころか、たくさんの『微笑みの雫』を箱に抱えて帰る間際。
 オリジナルとは呼ばないその子の笑顔が眩しくて、セリアも笑みを返した。
 あの依頼人には、真意はどうあれ。礼の一言くらいは――言ってもいいかもしれない。

成否

成功

MVP

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補

状態異常

クロバ・フユツキ(p3p000145)[重傷]
深緑の守護者
ラクリマ・イース(p3p004247)[重傷]
白き歌

あとがき

なんやこれ……なんやこれ……(大事なことなのでry)
多分PPPに参加してから現時点で一番コメディに突っ走った内容になったと思います……なんやこれ……??
よくわからんけど楽しかったです……???
またコメディ書かせてください……????

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