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シナリオ詳細

おいでませ! 蒜山温泉郷アピール大作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「というわけで、神使様。この温泉いかがでしょうか?」
 揉み手をしながら、卑屈そうな男が湯に浸かっているいわゆる平均的な日本人サラリーマンの様相の男――新田 寛治 (p3p005073)に話しかける。
 ぷかりと湯に浮かぶ盆の上にはよく冷えたこの蒜山で醸造された酒が一献。
 芳醇な米の香りのその酒は上等なものだ。
 寛治 が髪をかきあげ、男の声に振り向いた。
「ええ、疲れた体に効きますね。隠れ湯というものでしょうか?」
 髪をかきあげた際の湯の雫が頬をつたいぽちゃりとまた湯に戻る。
「え、いえ、その、一応温泉郷ですが……」
「失礼ですが、そのわりには客が少ないといいますか……」
「そおおおおおなんです!!!!!」
 確かにいい湯だ。しかし客の姿はどうにもまばら。なんとも不自然な状況だ。だからこそ、寛治 は知る人ぞ知る……というにも客足が少なすぎるとは思うが、隠れ湯であると判断したのだ。
「この湯は肌ツヤは良くなる、病気は治る、健康第一、なんなら不幸も治るし恋の病も万事解決する湯なのです!!! なのに!! なぜか!! 客が!!! こない」
 無理もない。この温泉郷(仮)はかなりの山奥だ。事実この温泉に来るまでにとんでもない獣道を通ってきた。獣湯というのならまだしも人がそうそう踏み入ることのできる場所ではない。というか温泉郷との触れ込みであるのに温泉はこの一つだけだ。
「もともとはまあ獣湯だったのですが、せっかくですので、この温泉で一山儲けようとおもったのですが、場所柄だあれもこない! 
 ですので、こう、ぶっちゃけ神使が愛用する湯とかそういうなんていうの? 付加価値をつけちゃいたいわけですが、なんとかなりません?」
 本当にガチにぶっちゃけられた。
 とはいえ、そういうことであるのならと、プランナーでもある寛治 はいくつかのプランを思いつく。
 例えば、神使が来た湯という付加価値でいいのであれば美少女のほうがもっと付加価値がつく。
 なんなら、その呼んだ美少女のポスターを作り呼び込むのもいいだろう。
 むしろファンドマネージャーとしての手腕が問われる案件でもある。
「わかりました。私にいい案があります」
 言って寛治 は盆においておいたメガネをかけるとキラリと光らせる。
 その直後湯気でメガネは真っ白に曇ったのであった。

GMコメント

 EXからご縁をいただきました。鉄瓶温泉です。
 新田さんのサービスシーンとともに。

 温泉回です。
 この蒜山温泉郷は深い山奥にある温泉です。
 美少女の神使のみなさまに来ていただいてお湯に入ってもらうことで、温泉郷のアピールをしてもらう形になります。
 もちろん美少女じゃなくても獣道を整地したり、みなさまのアイデアでこの温泉郷を盛り上げていただけると温泉主さんは喜びます。
 温泉は自称 肌ツヤは良くなる、病気は治る、健康第一、なんなら不幸も治るし恋の病も万事解決する湯
 温度は疲労回復にぴったりの40度弱ほど。湧き出している地点は温度は少しだけ高めです。
 湯の花も浮いています。
 周囲は楓や銀杏が紅葉してとてもきれいです。ピンの背景に最適ですね!
 温泉は広め。岩場もあります。

 参加確定している温泉美女は
 ミステリアスで魅惑の黒子 彼岸会 無量 (p3p007169)さん
 ぴんとたった猫耳猫しっぽがキュート 希紗良 (p3p008628)ちゃん
 エキゾチックな褐色肌ねこのかみさま。ギザ歯がセクシー バスティス・ナイア (p3p008666)さん
 です。
 男の子で覗き体験ツアーをしたいかたはやろうとおもえばできますが、必ず失敗します。
 極単純に温泉を楽しんでいただいても構いません。
 男湯と女湯は衝立一枚で分けられています。

 温泉の中でお酒やお食事をしていただいても構いませんがお湯の中に落とさないようにきをつけてください。(未成年の方は果実水になります)
 山菜や山で取れる動物の料理になります。
 アレな温泉主さんではありますが料理の腕はかなりのものです。

 以上楽しんでいただけたらいいなと思います! よろしくおねがいします!

  • おいでませ! 蒜山温泉郷アピール大作戦完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
※参加確定済み※
彼岸会 空観(p3p007169)

※参加確定済み※
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
※参加確定済み※
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
※参加確定済み※

リプレイ


 事実、隠れ湯までの道のりは険しいものだった。
 獣道と言えるものすらない。
 道のりの舗装が提案されるがすべてを完備するには相当の時間がかかるのだ。
 そこで出されたのが<不便を楽しめ。秘湯を独り占め>というキャッチコピーだ。
 交通の便の悪さを逆手にとり、苦労をしてたどり着いたそのさきの桃源郷。カタルシスを全面に押していくというコンセプトで展開する。
 とはいえ、とはいえだ。
 ガチでそこに至るまでの道のりになんの工夫すらされてなかったことに、イレギュラーたちはげんなりする。
 
 神使が使った温泉アピールねぇ……胡散臭いほどに美味しいこの仕事、実は裏があるのでは? と思っていた『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)はまじで整備されてなかったからだよ、と納得する。
「寛治君たちは先に行っててくれ。俺はポスターでの貢献はできない分せめて入り口周辺はわかりやすいように整えてあとでそっちに向かうよ」
 そう言って、シガーはキセルからふうと煙をたなびかせて、刀を生成する。
「では看板を……」
 手作りの入り口の看板を『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)はシガーに委ねた。
「ああ、たすかるよ。 さあ、砂漠の精霊よ。少しだけお手伝いしてくれるかな? タバコは奮発するからさ」
 

 シガーを残し一行は獣道(仮)を進んでいく。
「こないに一肌脱ぐという言葉が似合うお仕事他にあらしまへんね」
 『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が商売繁盛のお守り(スキル)を手に、土地神に挨拶を終えてゆるりと微笑む。
「いかに温泉がよきものであれど、着くまでにここまでの一苦労ではお年寄りや子供には酷でありますね」
 『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)が刀で軽く伐採しながら辟易とした顔で呟いた。そのすぐ後ろで『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)が伐採された木々を削り、リンディスたちが設置する看板に立てかけていく。
「大変だけど、ここなんか開けていて景色が楽しめるよね!」
『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)は少しだけ開けた場所で手でひさしをつくって尾根側を見下ろせば色づき始めた紅葉がグラデーションを作っているのが見える。
 四季折々の木々の美しさを見せれるように提案をかんがえていた『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)はそれが杞憂であったことに気づき、ふんわりと笑んだ。
 うんうん、と『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は頷く。
 美人どころが6人にイケメン一人を呼んできた彼は満足げだ。
 イケメンの彼は温泉郷を盛り上げるポスターについてはお呼びではないと体力仕事にむかっている。
 女性ニーズはどうするか? そこまでは考えてなかっただろうファンドマネージャーはトップピンでオープニング冒頭のサービスシーンを再現しても良いと思う。そうするべきだ。シガー君もよろしく。
 閑話休題。
 キャッチーなフレーズに美しい被写体と背景。ダチコーである腕のいい写真家もつれてきている。これは期待ができる。ファンドのしがいがあると寛治はにっこりだ。
「あ、そうだ!! ここにベンチとかあれば休憩所ってわかるかもだね。シガー君にあとで作ってもらおう。伐採した木で手作りの。そういうの得意そうだしね!」
 バスティスが休憩所の看板を設置する無量たちに勝手なアイデアを提案する。
「ってわけで、刀もってるひとたちは、いい感じの木をきってきてね! 男性陣は力仕事だよ!」
 にっこりと君たち撮影班も労働力だよと笑うバスティスに写真家のダチコーがびくりとした。

「へきしゅ!……ひえてきたしな。風邪でもひいたかな?」
 バスティスの噂話に反応したのかしていないのか伐採をすすめるシガーがくしゃみする。
 ある程度の伐採箇所とかわいい『もうすぐですよ』の看板。少しはやりやすくしてくれていたことにシガーはありがたく思う。
 本当にこの作業ももう少しだったら楽なんだが。
 看板に添えられている何本かの手作りの杖は無量がつくったものだろう。クールにみえてかの御仁はなんとも心細やかなことだとおもう。
 まだ最初のひとふりの刃こぼれは大したことはない。もう少しいけるだろう。
 なんとなく砂漠の精霊にもっと煙をと催促されている気分になるが、もうすこし頑張ってくれとなだめて進む。
 ふと、開いた場所につく。
 ちょうど一服できそうなところだなと精霊につぶやいたシガーは丁寧に積まれた木々に気づいた。
 こちらは杖に加工できるような細い枝ではなくそこそこに太い木である。
 なんぞや? と思い近づくと、メモがのこされていた。
 そのメモを読んだシガーはまた苦笑する。
「精霊よ。やっぱり、ここでいったん一服するよ。思う存分に煙を吸うといい」
 そのあとは大仕事になるけどね、と付け足したシガーは積まれた木々の上に座り、キセルをとりだす。
 ふと、す尾根に目をむければ、鮮やかなグラデーション。
「なるほど。ここで一旦休憩できれば素敵だな」
 バスティスのメモに残された意図がシガーにも伝わった。
「ふう」
 紫煙がゆるりとよく晴れた天(そら)に立ち昇っていく。
 一服終えたらベンチを作り始めよう。

「なにをなさっているのです?」
 沙月は竹林にランタンをとりつけはじめたリンディスに尋ねる。
「ええ、もうすぐ着くとのことですので、わかりやすくしようと。
 幽明のあかり。幽世と現世。異世界へ誘う……なんて雰囲気をだせたら独自性があるかと……」
 事前にしこたま温泉地の宣伝の資料を検索していたリンディスの提唱する独自性であるとおずおずと答えれば沙月は素敵だと手を叩く。
 ほかの皆からも褒められたリンディスは照れて恐縮してしまう。
「ふふ、鈴の音もあったらもっとすてきかもやね」
 蜻蛉もころころと笑った。

「神使のみなさまおいでませーーーー!!! 大変だったでしょう?!!
 おっとなんとも美人のみなさま!! これはアレっすね!!!!! 効能追加です。
 入れば誰でも美人、と」
 テンションの高い温泉主が両手をあげて歓迎する。
「新田様におかれましては、本当にありがとうございます。いい豊穣酒をご用意いたしました。ささ、ご随意に!」
「ではまず、さっそく撮影をしたいのですが、かまいませんか?」
「えっ? ドキドキ温泉ぽろりもあるよ? 効能に付け加えます?」
「「「「「ありません!!」」」」」
 温泉主の声に無量以外の女性陣の声が唱和した。
「ぽろりとは、首がおちるということでしょうか?」
 こてりと首をかしげて無量が尋ねるが、みな一様に首をふるのだった。

● 昼の温泉
 担当者は沙月、リンディス、バスティスの三人。
 大和撫子とエキゾチック美女のグラデーションだ。
「別に見られて困るわけじゃないけど」
「バスティスさん、だめですよ!」
 タオルを巻きながら呟くバスティスに沙月がしっかりとバスタオルを巻く。
 事前に寛治と構図の打ち合わせをしたリンディスは髪をゆいあげながらしきりに鏡で背中をみつめている。
「大丈夫だよ、リンディスちゃん! きれいな背中!」
「ひゃう、ありがとうございます」
 バスティスにそう褒められ、リンディスが恥ずかしげに礼をいう。
 さあ、温泉だ。
 立ち上る硫黄のかすかな香り。うかぶ白い湯の花と周囲の紅葉のコントラスト。
 女子湯にはすでに寛治と撮影クルーがスタンバイしている。
「いえ、これは違います!
 断じて覗きではありませんよ。これはビジネスに必要なプロセスです」
 沙月の厳しい視線を感じたのか寛治はあわてて弁解する。
 実際そのとおりなのだ。ポスターの構図を指示することも大事な仕事なのだ。その指示通りに撮影のために立ち会う必要はある。
「まあ、約得ですけどね」
 小さく呟いた言葉を沙月は逃さない。
「てんちゅう」
 慈悲無き言葉が温泉に響き、パキンと音がして寛治のメガネが割れた。
「メガネは勘弁を~~~」
 泣きがはいる寛治に沙月はぷいとそっぽを向く。そつない彼のことだ。どうせいくつか予備のメガネはもってきているだろう。あとで犠牲になったメガネさんはきちんと埋葬しておこう。
「それにしても、紅葉きれいだねえ! 上のほうは赤いのに、下のほうはまだ緑。これって温泉のあったかさで紅葉がかわってるのかな?」
 バスティスは楽しそうにはしゃぐ。
「なるほど、そうなのかもです」
 背中を向けたリンディスは振り向きながらバスティスの考察に頷く。
「本当に良いお湯ですね」
 湯の花をすくいながら沙月が微笑む。
「温度もやわらかくて気持ちいいです」
 彼女らは各々で温泉を評価しながら湯を楽しむ。
 ぱしゃりとバスティスが二人にむかってお湯をかければ、かわいい悲鳴。
「よきかな、よきかな」
 寛治はなんども頷くのであった。

● 夜の温泉
 こちらは和風美女を取り揃えたしっとりとした画だ。
 リンディスがつくった灯籠を湯に浮かべれば昼が現世であればこちらは幽世。
 淡い明かりが美女を怪しげに灯す。
 「温かい湯が肌に心地よく、ここは極楽でありましょうか……ふう」
 希紗良のはいたため息が湯気を揺らす。
 素敵な湯だ。だが。
 艶のある残り二人とどうしても比べてしまう。おとめごころなのである。
(うう、なにを食べたらあんなふうに)
「…ほんに、ええ湯。”湯の花”が浮いてるんやったら、きっと冷え性にもええんよ」
 タオルをしっかりと巻いた蜻蛉が足先から湯に入ると湯の花をすくい上げた。
「おなごにはもってこいの天然の入浴剤やね」
 ふふと笑い胸元に湯の花をかける様子はなんとも色艶がある。
「希紗良さんは、得意運命座標……神使となって三カ月程でしたね。如何ですか」
「ひゃい?」
 突然の背後からの声に希紗良は声が裏返る。
 振り向けばタオルで前を隠しただけの無量。
 かきあげる髪から雫がおちる。こちらはこちらでまた違ったシズル感のある色気に希紗良はまた嫉妬してしまう。
「あっという間に毎日が過ぎたであります。彼岸会殿はじめ、皆様良くしてくださり感謝の毎日であります」
 それでも問にはびしっと敬礼をするかの口調で希紗良が答えれば無量は楽しげに笑う。
「キサ、なにか変なことを言いましたか?」
「いいえ申し訳ありません、希紗良さんを見ていると、妹を思い出しまして、つい」
「妹御がいらっしゃったのですか? キサと年の頃が似ているのですか?」
「ええ 可愛い妹が「おりました」」
 優しくて実直で可愛かった妹。姿が似ているわけではない。雰囲気も全く異なっている。
 それでも無量が妹にしてあげたように。
 彼女に構いたくなってしまうのだ。力になりたい。助けになりたいと。
 その理由は無量にもわからない。
「「あの」」
 二人の言葉が衝突する。
「どうぞお先に」
「いえ、そちらこそ」
 無量は希紗良には姉妹がいるのかと聞きたかった。しかし、無遠慮ともおもう。こういった家族のはなしは本人が話すのをまつものだ。
 希紗良は無量の言いように不穏なものを感じたからなんとなく続けただけだった。あの、のあとに続く言葉はきっと彼女の深いところに干渉するものだから言えるわけがない。
 二人はお互いにそれを察したか言葉がそこでとまってしまった。
「ああもう、二人だけでなかようしててずるいわぁ。
 無量さんはうちとにたような世界からきはったんかなあ? それにしても体の線きれいやわあ」
 空気を察したのか、蜻蛉がことさら明るく二人の間に入る。
「ふふ、蜻蛉さんもとても綺麗ですよ。そうですね――ローレットでお見かけしたときから同じことをおもっていました。
 ひとつひとつの所作が綺麗で……さぞ教養をつまれたんでしょうね」
「ふふ、そんなことあらへんよ?」
「あのっ、蜻蛉殿は猫憑きなのでありますか? キサとおなじで……」
 おそろいで、と続けるのはしゃぎ過ぎかも、と希紗良が口ごもれば――。
「ふふ、おそろい、黒猫ちゃんやね」
 と蜻蛉が続けてくれた。
「は、はい!」
「なあ、彼岸会さんも。こんどはお仕事関係なしに、ご一緒したいもんやね、んふふ」
 蜻蛉の怪しげな視線に希紗良がなるほどこれが色気、と学びを得る。
「ごほんごほん」
 仲睦まじい美女たちに撮影をはじめようと寛治が咳払いをする。
「んもう!」
 あの黒服のメガネ雲れ。
 蜻蛉はすこしだけ不機嫌そうに呟いて笑った。


● ワーケーション!!
 撮影は恙無く終了した。
 きっといいピンナップ。もといポスターが完成することになるだろう。
 あとは打ち上げだ。
 山の幸に川の幸を目一杯使用した料理は温泉主によるもの。
 こっそりといつの間にか紅葉酒をいっぱい引っ掛けていた寛治は今日の料理は予習済み。
 温泉主より10倍は叙情豊かに隣の湯に浸かる女性陣に説明する。
 岩魚と鱒のお作りは川魚というのに泥臭さは全く感じない。調理の巧みさの賜物であろう。甘い身がとろりと口で溶ける。
 川魚の塩焼きは良い塩を使用していることもあり対比で川魚の優しい甘さを感じることができた。
 鹿肉と猪肉の食べ比べステーキはこれでもかとジビエの力強さを感じる。
 猪肉の朴葉焼きは香ばしくも甘みのつよい朴葉味噌で味付けされ、しいたけしめじと絡めて朴の葉にのせ焼かれている。
 雉飯はこれまた旬の山菜をたっぷりと混ぜ込まれたヘルシーな一品だ。
 米に雉の味がしみわたりシンプルながらも力強いその味はくせになる。
 山菜の天ぷらは素材の味をしっかり感じる薄衣。
 濃いめの味付けに合うのは豊穣で作られた酒。
 ワインやエールとは違った甘さをもつその酒は心身にゆっくりと染み渡っていく。
「これで、美女のお酌があれば最高なんですがね」
 悲しいかな。衝立一枚とはいえ、湯船は別れている。
「美人の酌じゃなくて申し訳ないね」
 シガーが徳利を寛治のおちょこに注ぐ。
「おっとっと。いえいえ、ありがとうございます」
「こちらこそ。
 この熱すぎない湯がつかれた体に染み渡るよ。料理も美味しい。いい仕事だった」
 実際、シガーはあちらこちらと伐採して獣道未満から獣道に進化させている。
 さすがにソレ以上の整備となると厳しいが十分以上の成果だといえよう。
「まあ効能の後半は怪しいが、前半はそのとおりだとおもうね。 往来の不便さを考えると湯治客を対象とした商売も良さそうかね」
「なるほど。湯治効果も全面にアピール、なるほど」

 一方女性陣も料理に舌鼓をうつ。
「夜空を見ながら、山と川の幸を湯船につかりながら楽しむ
贅沢な楽しみ方だね。これも是非、訪れる人たちに楽しんでもらいたいよ」
 バスティスは歌うように、天ぷらをぱり、と音をたてて食べるとそういった。
「ええ、周囲を探索したのですが、本当に様々な植物が自生していまして。季節を感じることもできますし、冬には雪景色と料理なんていうこともできそうです」
 リンディスも興奮しながらそう皆に伝える。
 この景色を一色で表現するなら――、いや一色ではたりない。
 どんな文章を紡ごうとリンディスは頭を悩ませる。
「この美しい景色はお酒がすすむというもの」
 蜻蛉の酌をうけた沙月は嬉しそうにあっという間に飲み干す。
「んもう、そんな一気するとあぶないよ」
「大丈夫ですって」
 頬そめる沙月に蜻蛉は頬を膨らまして次を注ぐあたりは甘いといっていいだろう。
「なるほど、そんなふうな味付けなのですね」
「はい!」
 無量と希紗良は肩を並べて食事の品評をしている。
 なるほどその姿はほんとうの姉妹のようにもみえる。

 激しい戦いを強いられるイレギュラーたち。
 だからこそ、こういったささやかな休息も必要だろう。
 彼らはこの温泉をめいいっぱいたのしんだのであった。
 
 
● それから

「山菜の天ぷらに鹿肉のロースト、あれ、この岩魚も美味しいね。
 近くに清流があるんだ。これはいいや
 お酒も貰おうかな。あれ? このお酒、魚の骨入ってるよ?
 岩魚の骨酒? へぇ、変わった……あ、美味しいかも、これ
 月天の下で風流に月見酒……大変おいしゅうございました」

 臨場感あふれるバスティスのレポート、リンディスのキャッチコピーに添えられた「幽世への誘い」という謳い文句に、美女のセクシーなポスターの効果もあり、神使の湯(改名した)はそれなり以上に繁盛していると後に伝えられた。
 キャッチフレーズはあれど、さすがにご老人にはきつい獣道にクレームが出たこともあり、もうすこしは金をかけて道を整備する計画がたったことも風の噂でながれてきた。
 シガーがその責任者に抜擢されたのを断ったという話もある。

 とにもかくにも。
 蒜山温泉郷改め、神使の湯温泉郷においでませ。

成否

成功

MVP

シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし

状態異常

なし

あとがき

温泉整備と参加ありがとうございました。
ポスターたのしみにしております!!
ささやかな休息のひととき楽しんでいただければ幸いです。
MVPはシガーさんと砂漠の精霊さんへ。
筋肉痛になるほどいっぱいお仕事していただきました。

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