PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想蜂起>悪魔の炎

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死へと向かう蜂起
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以来、レガド・イルシオンは不穏な空気に包まれていた。
 原因不明の頻発する猟奇事件の数々。徐々に人々の心は荒み、燻る不満は燃え上がりつつあった。
 それは幻想貴族コッペルゲンガー・フルハウグの治めるゴスク村でも同様だ。
 不安と不満を煽動された人々が武器を取り、ついには領主であるコッペルゲンガーに刃を向ける算段を付け始める。武装蜂起だ。
「貴族を倒せ!」「民衆を解放しろ!」
 領主への不満を爆発させ、村一丸となって立ち上がる。ある種の美しさがあるようにも思える光景だが、こと幻想においてのソレは死への行進に他ならない。
 ――ゴスク村で武装蜂起の気配有り。
 この知らせは、すぐに領主コッペルゲンガーの耳に届く。
 貴族コッペルゲンガー・フルハウグは、温厚とは真逆の性格であり、またずる賢い。ゴスク村の武装蜂起の話を聞いたコッペルゲンガーは、
「焼き尽くせ」
 と、慈悲も無く言い捨てる。
 この命令に反対する者などおらず、直ちに命令は遂行されることになる。
 ただし、その命令を遂行するのはコッペルゲンガーの私兵ではない。
「そんなもの『何でも屋』にやらせろ」
 自身の私兵の手を汚したくないコッペルゲンガーはそう告げ醜く膨らんだ腹を揺らしながら笑った。
 斯くして、ゴスク村殲滅の依頼が、ローレットに舞い込んだ。


「ローレットが――レオンちゃんが『待った』を掛けたというのに、構わず動く者はいる者ね」
 情報屋の『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が残念そうに肩を竦める。
 幻想国内で広がる惨劇、猟奇的な事件。
 原因不明の事件の数々はやがて人々の心を蝕み、燻る不満を燃え上がらせていった。
 燎原を炎が征くが如く、烈火のような激情に駆られ、人々が貴族達に楯突こうとする異常事態。
 その異常事態に直面する依頼が舞い込んできたのだ。
「クライアントのオーダーは簡単よ。武装蜂起の気配がある一つの村の住人の殲滅。焼き尽くせってことらしいわ」
 貴族コッペルゲンガーの治めるゴスク村。そこで武装蜂起の気配があると察知したコッペルゲンガーはローレットにその始末を依頼してきた。
「村人達は、村のはずれにある古い教会で決起集会を行うみたいね。全員が集まっているから狙うならそこが良いでしょうね」
 オーダーは殲滅だ。一人たりとも逃がす理由はない。
「村人は八十五人。ほとんどが戦闘経験のないただの村人ね。村人達を扇動した若者十名は武器の扱いに覚えがありそうだけれど、貴方達の敵ではないわ」
 所詮は素人。物の数ではない。どのような方法であってもクライアントのオーダーは達成可能だろう。それを肯定するようにリリィが続ける。
「やり方は一任されているわ。効率的に行うもよし、せめてもの慈悲に苦しませずに終わらせてあげても良し。あまり趣味じゃないけれど残虐な方法でも、まあ構わないでしょう」
 無感情にそう言い含めると、リリィは依頼書を差し出してくる。
「寝覚めの良い依頼とは言えないけれど、貴方達にお任せするわ。宜しく頼むわね」
 イレギュラーズは僅かに微笑むリリィに頷き返し、依頼書を手に取った。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 幻想中で起こる武装蜂起。その一つがターゲットになりました。
 全て焼き尽くしましょう。

●この依頼について
 この依頼は悪属性依頼です。
 この依頼を受けた場合は、趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。
 ローレットのルールは、依頼は必ず成功させる事です。
 
●依頼達成条件
 ・ゴスク村住人の殲滅(一人も逃さないこと)

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●村人たち
 煽動され武器をもった村人達。
 煽動されるがままに武器を振るうかもしれませんが、脅威にはならないでしょう。
 中核をなす十名のうち、五名が決起集会会場(古い教会)の外で見張りをしています。
 残り五名は中で村人達を奮い立たせています。

●想定戦闘地域
 ゴスク村はずれにある古い教会になります。長イスがある程度の広く開けた場所になり、戦闘は問題なく行えます。その他目に付く障害物はなく戦闘に支障はでないでしょう。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <幻想蜂起>悪魔の炎完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月08日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
リドツキ・J・ウィルソン(p3p000766)
群青紳士
シウ・ノクスライト(p3p000873)
空の歌声
武器商人(p3p001107)
闇之雲
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)
灯先案内人

リプレイ

●殺戮への足掛かり
 いつの時代でも、権力を持つ者に反抗心を持つ者は理不尽に磨り潰され、その存在を屠られる。
 ここ、ゴスク村の村民達もまた、権力持つ貴族に反抗心を持ったばかりに、その運命を決定づけられてしまったと言える。
 イレギュラーズがゴスク村に足を踏み入れる。
 静まりかえった村は、これから起こる惨劇の前奏曲か。土を踏む足音だけが響いている。
 前情報通り、村の家々に人はおらず、皆、決起集会が行われている教会に集まっているように思われた。
 イレギュラーズは情報収集班と罠設置班、そして教会の監視を行う班に分かれて行動を開始する。
 罠設置班は、家々を確認しながら、村に罠を張り巡らせていく。
 大通りを横切る形で二重のワイヤートラップを仕掛けるのは『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291)だ。
「教会からここが視認できるなら襲撃を優先したほうがいいかしら?」
『何かあれば監視班の者達が上手くやってくれるだろう。此方は罠の設置に邁進すべきだろうな』
 スペルヴィアの疑問にサングィスが答える。
「85人の惨殺…ははっ貴族様は残酷」
「一人残らズ皆殺しダ。ソコに慈悲はナイ」
 『群青紳士』リドツキ・J・ウィルソン(p3p000766)と、『冥灯』モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)は教会へと至る道に落とし穴を掘る。普段から使われている道を狙って、大きな穴を掘った。
 今回の依頼は時間との勝負でもある。必要最低限、効果的な場所へ罠を設置し、次へと向かう。
 情報収集班は慎重に気配を隠しながら、村はずれの墓地へと向かった。
「ふむ、ここだ」
 『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)がギフト【ソウル・リサーチ】によって魂の在処を確認すると、『空の歌声』シウ・ノクスライト(p3p000873)へと伝える。
 シウは早速一人、親戚が心配な少年を装い、霊魂疎通を試みる。
「親戚のお兄ちゃんが教会に行ったっきり戻ってこないんだ。周りには怖そうな大人達が居て入れないし……なにか抜け道とか別の入口があったりしないのかな?」
 霊魂への疎通は成功する。ゆっくりと静かに答えが返ってくる。
「…………ある」
 その答えは偽だ。ジークが魂の濃度を確認して頷く。
「入口は唯一つか。ならば事は単純だな」
  ジークがシウから話しを聞き頷いた。
 二人は入手した情報を持って、罠を仕掛けながら教会へと向かう。
 教会周辺では、残りのメンバーが教会の監視を行っていた。
「見張りなんて言うから気ィ張ったが、ありゃただ立ってるだけだな」
 鳥のファミリアーを使って教会を監視している『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が、欠伸を漏らしている見張りを見て言葉を零す。
 見張りは教会の入口扉側を半円形に囲む様に広がり立っている。だらしなく武器を下げ、見るからに油断している。
「貴族に逆らうというのに緊張感のない奴らだな」
 『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)の言うように、傍目には本気で武装蜂起を起こそうとしているようには見えない。
 教会の中はまた違った熱気に包まれているのかもしれないが……、どちらにしても仕事は容易い様に思える。
「教会は二階建てかァ。窓は……それなりにあるようだね」
 ギフト【楽園(カヴン)】によって生み出した従者を連れた『闇之雲』武器商人(p3p001107)が教会の造りを確認する。
 二階があるとすればそこに逃げ隠れるものもでてくるはずだ。見逃すこと無く二階への入口を封鎖する必要があるだろう。
 しばらく監視を続けて見ると、時折地を揺らすような歓声が沸き上がったり、見張りの交替があったりしたが、村人達が教会から出てくる様子はない。
 そう長く滞在するとは思えない。急ぎ襲撃を行いたい所だが――どうやら準備は間に合ったようだ。
 罠設置担当と、情報収集担当の面々が監視班に合流する。
 八人は情報の共有を行い、すぐにでも襲撃を行える体勢を整えた。
「いくぞ」
 イレギュラーズは顔を見合わせ頷くと、気配を殺し、足音を殺し、静かに見張りへと近づいていく。
 半円状に広がる見張りの左右から近づき、中央は遠距離攻撃によるダウンを狙う考えだ。
「ふあぁぁ……」
 大きな欠伸を漏らす見張りの背後からリドツキが近づき、刹那の呼吸で口を押さえれば、対応させる間もなく首を一突きにする。続けざまに心臓を貫けば、男は悲鳴を上げる間もなく痙攣し倒れた。
 リドツキの動きと同時に、他の見張りへも奇襲が掛けられていた。
 放たれる遠距離術式が胸に小さな穴を穿ち心臓を消失させる。武器で連続に突かれた胸と腹部から血が溢れ、贓物がはみ出した。
 奇襲は成功した。
 見張りの五名はイレギュラーズの放った凶刃の前に、一つの悲鳴すら上げることができずに、その命を散らした。
「さてと……」
 レイチェルは殺した見張りの一人の首を得物の剣で刎ねる。髪を掴み持ち上げると満足そうに頷いた。
 ジークとシウは殺した見張りの一人を使いアンデット作成を試みる。エンバーミングによる魂の埋め込みは成功したかのように思えた。
 だが、アンデットとして動き出した直後、死体はボロボロと崩れていき、肉片となって散らばってしまった。
「ふむ、失敗だな」
「これは仕方ないね」
 特殊なスキルの使い方だっただけに、上手くいかないこともあるものだ。二人は納得すると、教会周辺の罠設置を手伝った。ボロボロになった死体はその場に捨て置かれた。
 変わりではないが、上位式を生み出し、見張りの男達に似せるようにして出入口の扉を塞ぐように指示をだした。
 ことほぎは見張りの一体の身体に傷を付けたりしながら細工を施す。
 そうしてできた、まるで拷問を受けたあとのような見張りの死体を持ち上げると盾のように構える。
「っていうか、やっぱ重いなコレ……」
「すぐの辛抱よ。集会も……終わりそうだわ」
 スペルヴィアは扉に付けていた耳をはずし、仲間に状況を伝える。
 このときをもって襲撃の準備は整ったと言えた。教会内部でも決起集会が終わり、いよいよ貴族へと武器を向けるのだと熱気が渦巻いているところだった。
「さて、楽しみましょうか」
『依頼を蔑ろにしないようにな』
 教会の扉を開けて、イレギュラーズが踏み込んだ。
 殺戮の饗宴が始まる――。

●殺戮の饗宴
 教会内部では村人達が武器を振り上げ貴族への不満を上げながら、いよいよ打って出るのだという熱狂に包まれていた。
「コッペルゲンガー・フルハウグは我々の思いを聞いてくれはしない! 奴に我々の思いをぶつける時が来たのだ!」
 扇動する若者が大声を張り上げ貴族コッペルゲンガーに対する不満を言葉に代える。
 熱狂は最高潮に、民衆の不満が暴力へと変わろうとしていた。
「おい、そろそろ終わりだ、外の連中も呼んでこよう」
 村人の一人がそう言って、教会外の見張りを呼び込もうとした時、教会の扉が開かれた。
「お、丁度呼ぼうと思って……わ、わぁぁ誰だ!? あんた、それ!?」
「どーも。アンタらが探してる奴ってコイツの事か?」
 レイチェルの持つ生首に目を剥いた村人が、大声あげながら尻餅をつく。
「が、ぎゃー」
 そこをすかさず、リドツキが得物の剣で胸を一突きにする。
「な、なんだ!?」
 騒ぎを聞きつけた村人達が入り口のほうへ視線を向け、事態の把握をしようとするが理解が及ばない。
 死体を持った者達が突如乱入し、有無を言わせず手にした白刃を振るったのだ。
 サングィスの動きも素早い。呆然とする村人を貫手や下蹴で無力化する。
「な、なんだお前達は! どうしてこんな!」
 扇動していた中核の男達が、慌てふためきながら、声を上げる。物言わぬ肉の塊となった見張りの死体を見せながら、ことほぎが言葉を投げかける。
「領主様の依頼でなァ? テメェら全員焼き尽くせとの仰せだ」
「な、なんだとぉ!? ふ、ふざけるな!」
 その言葉に村人達は激昂し、武器を振り上げる。
「そんな人数で、できるものか! 貴族との前哨戦だ、こいつらを叩きのめせ!」
 中核の男が村人達の戦意を煽る。既に熱狂の渦にあったのだ、もはや人に武器を向けるなど、恐れる者はこの場にはいない。
 怒号が巻き起こり、イレギュラーズに向け武器が振るわれる。
 その未熟な一撃を躱しながら、誰よりも早く行動を開始したのはモルテだ。
 短く詠唱し、魔力の弾を生み出すと、あろう事か、中心から離れ事態を見守る子供と老人に向け放った。
「きゃあああ!」「アアァァ――!」
 吸い込まれるように子供と老人に向かった魔力弾が、小さな身体に穴を穿ち、一瞬にして絶命させる。
「うちの娘が! あぁぁぁ! よくもぉぉぉ!」
 身内を殺され逆上した男が武器を振り上げモルテに迫る。浅く斬りつけるその一撃を受けながら、魔力籠めた手を男の腕に接触させれば、生命の再生能力が逆転し、筋を見せながら破裂する。
「ぎゃああ、腕がぁぁ!」
「……恨むナラ、己の運のナサを恨メ。タマシイをワタシ達に捧げロ」
 ドラゴンを想起させる発声はこの場においては絶大な演出効果となる。恐ろしさすら感じるその声に一瞬にして村人達の戦意が失われ始めた。
 女性が子供を連れて逃げだそうと走り出す。それをシウは見逃さなかった。
「逃がすわけにはいかないんだよ――」
 逃亡を試みる女性と子供に向け、射程を伸ばした遠距離術式を放てば、魔力の塊が鋭い矢となり女性の胸部を貫いた。溢れ出る血を確認することもなく女性が血を噴いて倒れる。
 倒れた母を揺すりながら泣き叫ぶ子供に、シウは更なる術式を放つ。小さな身体で受け止めた結果、肩口から大きく抉れ飛び、子供は悲鳴を上げること無く絶命した。
 シウは逃げようとするものを優先的に攻撃する。出入口は一つだけだが、二階へと繋がる扉がある。二階へと逃げられれば、そこにある窓から逃げられる可能性もでてくるだろう。結果、二階へと逃げ延びようとする女子供を優先的に排除することになっていた。
 阿鼻叫喚が教会を支配する。
 一合、二合と斬り結べば、自分達が相手にしているこの八人が、自分達には到底敵わない相手であることがすぐわかる。
 次々と殺されていく村の仲間達の苦悶の表情が、脳裏に焼き付き思考を狂わせる。
「さてと、今のとこ五人くらいか。あと五人ちょいはいけるか?」
 狂乱する村人の振るう武器を、避けようとしながらことほぎが戦果を数える。
 村人八十五人。見張りを五人倒しているから、残りは一人頭十人殺せる計算だ。
 ことほぎは距離を意識しながら、集団の端にいる者を狙って魔力を放出する。
 純粋な破壊力の塊となった魔力が、為す術のない村人を襲う。肉が爆ぜ、人間の部品だったものが紅い糸を引きながらはじけ飛ぶ。
 当然、逃げだそうとするものにも容赦はしない。隣ではじけ飛んだ友人を見て発狂するように駆けだした若い女性を後ろから魔力弾で射る。
 薄い悲鳴をあげながら倒れる女性はまだ息があった。必死に逃げ出そうと震える手を動かして――。
「はいはい、これで七人目っと」
 よそ見しながら放たれた魔弾によってその命を散らすこととなった。
「外のあの死体使わせてもらおうか」
 武器商人はアンデッド生成に失敗した肉片の死体を使って、使い捨ての盾を生み出した。
 そして、教会の窓側を陣取り、近づく村人を殺害していた。
 窓は村人が投擲した武器によってすでに割られている。死にものぐるいで吶喊すれば窓から突破されるかもしれないが、皆出入口を第一としているのかその心配は少なそうだった。
 また一人、村人が逃げだそうと窓に走り込んでくる。
「行かせないよ」
 手を振れば、鮮やかな火花が駆ける村人を襲う。火に撒かれる前後不覚となった村人を、手にした忌鎌【無銘】で止めを刺す。
 切り裂かれた腹部から火花以上に鮮やかな血潮が華を咲かし、白く清浄な教会を真っ赤に染め上げる。
 武器商人は更にギフトによって連れ出している”従者”を二階のへ向かう扉の前に配置し、妨害する。
 これによって、二階へと逃げようとする者達が渋滞となって、そこを仲間達が攻撃を与えていった。
 レイチェルの狙いも、他のイレギュラーズ同様だった。
 まず第一に逃走を図ろうとするものを優先的に攻撃し、次に狙うのは戦闘経験の無い村人達だ。
 遠距離を維持しながら、魔術式を展開する。
 武器を捨て駆けだした女性の足元に、緋色の光を帯びた魔術式が広がり、そこから噴出する闇が、狼の牙のごとく女性を切り裂いた。
 全身を切り裂かれ鮮血を撒き散らす女性は、バランスを取れずに転ぶように、力なく倒れ絶命した。
「こ、このぉぉぉぉ!」
 女性と近しい間柄だったのだろうか、激昂した男がレイチェル目がけて走り出すと、槍を突き出す。
 その身を切り裂く痛みを感じながら、レイチェルは新たな術式を呼び覚ます。中空に舞った自身の鮮血を使って術式を描けば、奈落から紅蓮の焔を召喚する。
 苛烈に燃え上がる紅蓮の焔は、憎悪を伴い激しく燃える。
 焔に撒かれた男は、焼かれる肌の熱さと、窒息による苦しみを感じながら、しばらく彷徨うように歩いたかと思えば、遂に力尽き、膝立ちから頭を抱えるように倒れていった。
 後に残るは黒く焼け焦げた肉塊だけだ。
 イレギュラーズの容赦のない殺戮は、殆どの村人から戦意を奪っていた。
 怒号と悲鳴があがる教会内を逃げ惑う人々が駆ける。
 中にはイレギュラーズの目を盗み、出入口まで辿り着いた者も幾人かいたが、出入口を塞ぐ上位式に妨害され逃げること敵わず命を失う者や、上位式を突破したものの、その先に仕掛けられた罠に嵌まり、結果命を失う者もいた。
 事態はすべてにおいてイレギュラーズの想定通りに進んでいた。
 教会は鮮血に染まり、立ち歩む村人の数も目に見えて減っている。殺戮の饗宴はいよいよ終焉へと向かおうとしていた。
「尊い犠牲だ……僕君帰ったら吐いちゃいそう」
 恍惚に言いながら、手にした麻薬薬の入った注射器を、泣き怯える少年少女に刺していく。
 大粒の涙を流す動けなくなった子供達を見下ろせば、嗜虐的な気持ちがわき上がる。
「僕君が大好きな少年少女を僕君が殺殺僕君殺ころs――」
「や、やだぁ――!」
「泣き喚く初心で愛らしい断末魔がこびりつく離したくないねどこまでも…ッ!!
 安らかにお休み。
 死んでも僕君がずっと傍にいてあげるからね……」
 さくり、と。胸を刺し貫いて、幼き命を奪うリドツキ。その瞳はどこまでも優しくて――。
「き、きさまぁぁ――! 相手は子供だぞぉぉ――!」
「ふん、大人は醜い、惨たらしく死ね」
 武器を振り上げ駆けてくる髭面の男を手にした得物で斬りつけ、殺す。怒りの形相浮かべる髭面は、最後までその表情を崩すことはなかった。
「いやだぁ! 死にたくないよぉ!」
「大丈夫だ、父さんが必ず守ってやる!」
「あぁ――神様っ!」
 教会の隅、子供と妻を守るように立つ男がいた。
 ジークは男を見やると、手を伸ばす。
(私は抗う者の魂の輝きが見たい。せいぜい足掻いてくれ)
 それは期待にも似た想い。
 ジークの魔力が迸る。男と家族の周囲に濃密な死の気配漂う黒い瘴気が呼び起こされる。
「う、うわぁ――なんだ!?」
「やだよーお父さん-!」
「あぁ――神様っ!」
 男と家族の皮膚に、黒い髑髏の斑模様が浮かび上がれば、それは死へと至る病となる。
「あぁぁ……あががぁ――」
「苦しい……苦しいよ――」
「あぁ――かみ……さま」
 窒息と毒が、呪いと共に苦しめていく。武器を落とし、首を押さえながら泡を噴く。青ざめた三人が最後に見たのは、自分達の様子をその黒洞々とした眼窩に焼き付けようと睨めつける、髑髏の男の姿だった。
「もう少し綺麗なものが見られるかと思ったが……こんなものか」
 動かなくなった三人から興味を失ったように視線を外したジークは次の獲物を求め視線を巡らせた。
「さてと、粗方始末できたわね」
『残るは三人か』
 残るは武装蜂起を扇動していた者達三名。その三人をサングィスとスペルヴィアは見回して、
「扇動者の首をくれるなら私は許してあげてもいいわよ? って言おうと思っていたけど、扇動者しかいないわね」
「いやこいつにそそのかされたんだ! オレは助けてくれ!」
「いや、コイツが悪い、俺は悪くねぇ!」
「まて最初に言い出したのはお前だろ! 僕じゃない!」
 三人がばらばらに指をさし、命乞いをする。その様子にスペルヴィアは肩を竦め、一つ息を吐くとニコリと笑顔になって。
「な、何をする!」
「や、やめろ!」
「やだぁ死にたくない!」
 確りと拘束した三人を床に転がして、集まってくる仲間達に告げる。
「さぁ、やっちゃって?」

 殺戮の饗宴は終わりを告げた。
「外の罠に掛かってた奴を合わせて……八十五だ」
「問題なく全員仕留められたな」
「貴族へは……耳でも持っていけばいいか」
 壁中に染みこむ鮮血の水溜まりの中、イレギュラーズは後始末に向け動き出した――。

●反抗心は煙と消えて
 ――その日、一つの村が焼き払われた。
 小さな反抗の芽が、村一つを燃やす種火へと変わったのだ。
 燃える劫火を眺めながら、イレギュラーズは血濡れた服を厭うことなく、依頼達成の報せを待つ貴族の元へと帰るのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。
依頼成功となります。
詳細はリプレイをご覧下さい。

全体的にプレイングが良く想定通りに進んだと思います。
大成功まであともう少しといったところでした。
アンデッド作成は成否をダイス判定した結果となります。まぁそういうこともありますね。

寝覚めの悪い依頼となりましたが、これに懲りず悪名を高めてもらえればと思います。
依頼参加ありがとうございました。

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