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シナリオ詳細

<FarbeReise>アズライトと早撃ちの試練

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遺跡精霊アズライト
「ねえ、あなた。あなたが『来訪者』さんでしょう? 人間を見るのなんていったいどれくらいぶりかしら」
 うっとりと目を細め、身体を前にもたれさせるようにする褐色肌の女性。
 あなたの胸に顔を近づけ、首をかしげながらからかうように見上げてくる。
 アラビアンな服装に、シンプルなアクセサリー。
 首に掛かった藍銅色のネックレスが、ふくよかな胸の谷間にやわらかく乗っている。
 他に特徴があるとすれば、彼女の全身がうっすらと透けていることくらいだろうか。
「ようこそ、忘れられた楽園へ。なあんて」
 踊るようにあなたから離れ、手をかざして通路の奥を示す。
 彼女は――。
「自己紹介がまだだったわね。私はこの遺跡を任されてる精霊。名前は……そうね」
 少し考えてから、胸の上の宝石にトンと両手を置いて笑った。
「アズライトって呼んでちょうだいな」

 ラサの砂漠地帯に位置するファルベライズは前人未踏の遺跡群である。
 巧妙に入り乱れねじ曲がった空間の中に無数の遺跡があるとされ、それぞれがそれぞれに願いの叶う宝物こと『色宝(ファルグメント)』を収めている。
 現在これを狙う盗賊団が現れ、一つずつでは些細な力しか持たないがかき集めればどうなるか分からないほど歪んでしまう。そういった色宝が彼らの手に渡らないよう、ラサよりローレットへ遺跡の攻略と色宝の確保収容保護を依頼されていた。
 ここはそんな依頼の一環として訪れた遺跡。
 名前はないが、『彼女』に聞くなら――。
「遺跡の名前も『アズライト』でいいんじゃないかしら? だって、私がこの遺跡そのものといってもいいくらいだもの」

●遺跡を守るもの、来訪者を試すもの
 そこは石造りの大広間だった。
 正式な手順を踏んで探索に入った扉の奥に突然こんなものがあったのだから、イレギュラーズたちは入る遺跡を間違えたのかと疑ったほどだが……。
「他の遺跡群は知らないけど、少なくともここは私たち労働精霊によって作られたものよ。
 私はその中でも特別製。色宝の力のおかげでひとなみには知性を得た固体なの。他の精霊たちも元気だけど、会話ができるほど知性があるのは私だけね。
 実体も、この遺跡の中だけの幻だもの」
 石のソファに腰掛け、長く細い足を組むアズライト。
 片方の肘掛けによりかかり、頬に手を添える。
 天井からぶら下がった金色の装飾に手をかざしてみせるが、彼女の手はまるで霞のようにすりぬけてしまった。
「でもいいの。こうして『ご案内』できるんだから。そのための知性と、この姿……でしょ?」
 アズライトは胸の宝石をトントンとあらためて叩いて見せた。
「この遺跡に収められている色宝はコレよ。私が認めたひとにだけ差し出す決まりなの。無理矢理奪おうとしたってダメよ?」
 ホラ、といってあなたの手を取り、自分の胸にあてさせた。
 無論手はすり抜け、同時に宝石をもすり抜けてしまった。
 パチンとウィンクして舌を出すアズライト。
 ゆっくりと部屋の奥へ歩いて行くと、壁に立てて飾られた民族的な織物絨毯をトントンとノックした。
 すると水面に石をなげたかのように波紋が広がり、絨毯の向こうに景色が広がる。
「私からのテストはひとつ。この魔物だらけのダンジョンを突破すること。
 た、だ、し――」
 立てた人差し指を、アズライトは自分の唇にあてた。
「私を無事に守りとおして、ね?」
 さあこっちよ、とあなたの手を引いて絨毯の向こうへと入っていく。
 これから始まるのは前人未踏の遺跡に広がる大冒険と、ひとりの美女の物語である。

GMコメント

■成功条件:アズライトを守りながら試練を突破する
 アズライト遺跡で色宝を得るためには、遺跡精霊のアズライトから認められなくてはなりません。
 そのために与えられた試練とは、彼女の案内する特殊空間内で特定のミッションをクリアすることでした。
 はたしてイレギュラーズは、あなたは、彼女を守り試練を突破することができるのでしょうか!

■ミッション『荒野に銃声』
 ようこそ、特殊空間『沈まぬ暁のウェスタン』へ。
 ここは精霊たちによって作られたもうひとつのちいさな世界です。
 サボテンと転がる草、岩と砂と暁の土地にあなたは馬車を走らせています。
 ぽつんと存在する小さな街には向かい合わせに十軒の家々があるだけ。
 ホテルに酒場、服屋や諸々……。しかし街はギャングの襲撃にあって壊滅してしまいました。
 いまあるのは十家族分の死体と沢山の酒と食料、そしてそれを我が物顔にしたギャングたち。
 彼らは旅休憩に訪れた人々を襲撃しては身ぐるみを剥いでいくのです。
 しかし、彼らには計算外がありました。
 そう。
 そこへ訪れた旅人とは、『あなた』だったのです。

・フィールドデータ
 空間内には西部劇に登場するような風景が広がっています。
 十軒の二階建て家屋が向き合った小さな小さな街です。
 それぞれホテルや酒場でしたが、いまやギャングの巣窟です。

・シチュエーションデータとお勧め
 ギャングは村人を装ってあなたに近づき、全員が無防備にも酒場にはいってきた所を狙って楽に殺してしまうつもりでいるようです。
 アズライトからそれを教えられたあなたは、彼らのバレバレな演技に乗っかってやったり、逆に気配を消して背後から忍び寄ってやったりと様々な対応が可能です。

・ミッション達成条件
 あなたたちと同行した『か弱い婦人』の役となったアズライトを守り切り、ギャング達を一人残らず倒せばミッションクリアとなります。
 そのさいアズライトにどれだけ良いところを見せられるかでポイントがアップしたりしなかったり。
 場合によってはボーナス名声や追加ゴールド報酬が得られることもあるでしょう。

  • <FarbeReise>アズライトと早撃ちの試練完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月15日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
金野・仗助(p3p004832)
ド根性魂
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
鮫島 和真(p3p008994)
電子の蒼海

リプレイ

●特殊空間『沈まぬ暁のウェスタン』
 大きな鳥が空高く飛び上がる。焼け付くような太陽を一瞬だけ遮って、どこまでも遠い空へ届くような声を残していった。
 そんな荒野の大地を、一台の馬車が進んでいく。
 馬車は羽振りの良さそうな、悪く言えば成金趣味の装飾でギラギラとしていた。
 これを施したのは、ウェスタン鍛冶屋の格好をした『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)である。
 彼は馬車の御者席に座り、帽子を目深に被って陽光をしのいでいた。
「アズライト……なるほど、精霊本人の案内にして護衛とは。
 演技は苦手だが、シチュエーションは中々に面白そうだ。
 砂漠は初めてだし、依頼ではあるが楽しんでいこう」
 な、と話を振ると『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)がぬいぐるみを抱いて目を瞑っている。
 暗いグラデーションのかかったブルーのドレスを纏った年若い少女。胸に抱いたぬいぐるみは白鹿をかたどっていた。
 こうしていれば行商人の家族か、はたまた護衛の殆どいないキャラバンにでも見えるだろう。
 馬車の荷台から顔を出し、遙か遠くに見える赤い山脈に目を細める『煌希の拳』郷田 貴道(p3p000401)。
 頭や耳から羽根飾りをさげ、むき出しの上半身には白いボディペイントが施されている。こてこてなくらいインディアン風のいでたちだが、不思議と空気になじんでいた。
「面白い趣向じゃないか、ロールプレイングゲームみたいなもんかな?」
 まあなんだって構わないさ。
 そう言って荷台へ頭を引っ込めると、白いカウボーイコスチュームの『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が寝そべった身体を起こした。顔にかぶせたウェスタンハットをあげる。
「かもな。俺にとってはまさにおあつらえ向きの舞台だ。
 それに、俺好みの美女の護衛ってのも悪くない仕事だな……まあ、嫁には口が裂けても言えないが」
 苦笑する彼の横では、深い青色のドレスを着たアズライトがおっとりと微笑んでいる。
「浮気者なのね」
「そんなんじゃない」
 冗談のように笑うジェイク。
 その向かいでは、ローブに身を包んで目元を隠した『闇之雲』武器商人(p3p001107)が『ヒヒヒ!』と特徴的な笑いかたをしている。
「しかしまァ、遺跡の中にこんな風に世界を作り上げるなんて驚いたね
 色宝を手に入れる試練としてはだいぶ趣向が凝っているけど、確かに凄く面白いよねぇ」
 彼らの反応は上々なようで、身なりのいい格好をした『電子の蒼海』鮫島 和真(p3p008994)が金の懐中時計をぱたんと閉じた。
「早撃ちは得意じゃないけど、イタズラは得意なんだよねー。だってほら、俺ってハッカーだもん。もっとクールな早撃ちは他の人に任せて――俺は正々堂々不意打ちしちゃうかな?」
「得意なことをすりゃあいいんだよ。俺も、拳銃もってどかどか打ち合うってガラじゃあねえしよ」
 『ド根性魂』金野・仗助(p3p004832)が専用のクシでリーゼントを整え、スッと最後は手で撫でるようにしあげた。
「特にアズライト。あんたの安全は俺が体を張ってでも護るぜ? まぁ、他の人らが強いから出番あるかは知らねえけどよ」
「あら、謙遜するじゃない。それとも手を取ってくれないの?」
 わざと悲しそうに眉を寄せるアズライトに、仗助は照れたように笑った。ワイシャツにウェスタンハット。帽子は首の後ろにひっかけるというラフスタイルである。
 ラフといえば、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は西部の盗賊ないしは山賊のような格好でナイフをしょりしょりと研いでいた。
「俺ぁカッコよく護衛するなんて事は出来ねえからよ。直接的じゃない守り方をさせて貰うが……」
 手を止め、ちらりとアズライトのほうを見た。
「アンタ、俺らにその素敵な宝石を渡しちまってほんとにいいのかい。第一、その宝石の力で知性と位を保ってるなら、手放したあとはどうなっちまうんだ」
 問いかけるキドーの顔をのぞき込むようにして、片眉をあげるアズライト。
「気になるの?」
「そりゃあ、まあ……教えてくれんのか」
 アズライトは眉をあげたまま。
「乙女のヒミツ」
 と、唇ととがらせた。

●罠と罠
 靴屋の木製看板が、風になびいてぱたぱたと揺れている。
 馬車のとまった街は、ひどく静かだった。
 手綱を握ったままきょろきょろとする錬に、ウェスタンドアの両開くキィという音が聞こえた。
 反射的に振り返ると、あごひげのこい男が両手をかざして愛想笑いを浮かべている。
「どうした。馬に水でも飲ませに立ち寄ったクチかい」
「あぁ、行商中なんだが護衛の者たちも含めて休憩しようと立ち寄ったんだ。馬屋はあるか?」
 わざと『うすのろ』を演じて答えた錬に、男はどこか侮った笑みを浮かべて背を向ける。
「案内してやるよ。それよりアンタも喉が渇いたろ。外の話を聞かせてくれれば、一杯おごるぜ」
「まあ、ご案内くださるの? ありがとう! お兄さん、優しいのね」
 ぴょんと馬車から飛び降りるラヴ。
 彼女をちらりと見てから、男は無言で酒場の中へと消えていった。
 あえて振り返らないように、周囲に意識をめぐらせるラヴ。
 丁度キドーが酒場の反対側へ回り込んでいる頃だろうか。
 街につくまえ、馬車からあえて離れて移動していたようだが……。
 馬車を降りたジェイクがウェスタンハットを被り直して囁く。
「ファミリアーのトカゲをはしらせた。向かいの家の連中、武装を始めてるぞ。取り囲む気だろう」
「ヒヒ……なら、迎え撃つ必要があるねえ」
 あえて馬車から降りずに迎撃の準備を始める武器商人。
 目配せをすると、仗助と和真が頷いてアズライトに手をかざした。
 まるでVIPを案内するように馬車の段差から下ろすと、酒場のほうへと向き直る。
「俺は酒場までアズライトを案内する。アンタはどうする」
「じゃあ、俺は反対側を対応しよっかな。バックドアカウンターも大事でしょ?」
 和真は指を立ててひらひらと振ってみせ、『あちこちから見られてるぞ』の合図を送った。
 そして仗助の代わりに下男の格好をしたホログラムドールを起動。馬車から降りてくるように見せかけると、背伸びをしながら反対側へと回らせた。
(連中。俺の下手な演技にも乗ってくれちゃうんだろうねー、かわいそー)
 さて、一方で酒場の中。
 ウェスタンドアを通り抜けたアズライトたちを待ち受けていたのは、いかにもガラの悪い男達だった。
 不穏な空気。
 連れ添った貴道へニヤニヤ笑いながら歯の欠けた男が歩み寄り、腰のホルスターに手をかけ――ようとした瞬間。
「HAHA」
 男の鼻と上顎が貴道の拳によって砕けてへこんだ。
 ざわつく酒場。
 一斉に銃を抜いた男達の前で、貴道は歯を見せて笑いながら、ファイティングポーズをとった。
「ユー達はオモチャを持って初めてミーと対等だ、見れば分かるだろ、なあ?」

 ゴングはない。だが、それに代わるものはあった。
 和真の仕掛けたホロドールが馬車から荷物をおろそうとしてわざと転倒。ガラガラと大きな音をたて、アクシデントを疑って建物から顔を出した男めがけ――。
「誰かをハメるときは不安になるよな。わかるわかる。だって俺、ハッカーだし」
 和真がピッと指鉄砲のジェスチャーを向けていた。
 手の甲に仕掛けた電脳魔方陣が展開。エメラルドグリーンの光がゼロとイチの羅列になって男の首へと巻き付いた。
 まるで鞭でもひっかけたように強制的に屋外へ引っ張り出す和真。
 ぐええとうめく男に続いて、奇襲がバレたと察した男達が窓や扉の淵に身を隠しながらこちらを撃ちはじめた。
 馬車の裏へと素早く身を隠す武器商人たち。
「いやはや、残念だったね。鉛玉を撃ち込む程度じゃ我(アタシ)は殺せないんだよねぇ」
 くるりと身を転じて身体を晒す武器商人。
 あまりに堂々とした振る舞いについ射撃が集中するが、ヒヒと笑いながら両腕を広げて歩く武器商人をまるで止められなかった。
 どころか武器商人はレッドカーペットを歩く映画女優のように堂々と建物へと近づいていく。
 その有様に、その無体に、集中すればするほど……。
「お、おい、どこへ行く!」
 制止する仲間の声も届かず、銃を取り落としたギャングの一部がナイフを手に武器商人へと叫びをあげながら襲いかかった。
「こんちは~他急便で~す。鉛弾を届けに参りました~」
 ここぞとばかりに馬車のうえに飛び乗るジェイク。
 両腰のホルスターから抜いた二丁拳銃を突き出し、飛び出してきた男達めがけて連射。
 更に水平に薙ぐように連射すると両腕を交差させた状態でニヤリと笑った。
「さて野郎共、男の見せ場だぜ! ……おっと、失礼。淑女も居たな」
 と同時に建物の屋根から現れたキドーが特性の呪術爆弾を『武器商人めがけて』放り投げまくった。
 武器商人の強固なプロテクトの前にはほぼ無力だと知っているからだ。
 だがそれ以外にはあまりに凶悪すぎる呪術である。爆発して広がったガスを吸い、男達は持っていたナイフを互いの顔面や自らの胸に突き立て始める。
 こうして武器商人だけを綺麗によけて、ギャングたちが次々に倒れていった。
「このまま連中をミンチにしてやろうぜ。ランチはハンバーガーにでもしようか、アズライト」
 クールに囁くと、今度は屋内に立てこもろうとする男達めがけて撃ちまくる。
 そこへ追い打ちをかけるのは錬の役目だ。
「不意を突けば楽々と始末出来ると思ったか? 残念だが俺の作品を買っていってもらおうか!」
 ジェイクの射撃を弾幕にして家屋の中へと突入していく錬。
 開きっぱなしの窓を飛び越えて屋内へと着地すると、ホルスターから抜いた式符を起動させて無数の槍を床から発生させた。
 突きあがってきた槍トラップに突き刺され、その場に崩れる男達。
 更に和真が壁際まで迫り、地面に手を突くことで基板回路のようなラインを形成。
 男達にラインを繋ぐと彼らの資格情報にスパムウィンドウを大量に展開させていった。
 混乱して目を押さえる彼らに、ジェイクの銃と武器商人の鎌が添えられる。
「オーケー、後は任せたぜ……っとぉ!」
 キドーは助走をつけて屋根から跳躍。
 反対側の建物の窓を突き破る勢いで突っ込むと、腰につけていた爆弾に着火。と同時にテーブルや椅子をなぎ倒しながら不時着した。
 大爆発のおきる店内。
 テーブルを盾にして既に銃撃を始めていたギャングたちの一部が燃え上がり、悲鳴を上げながら転げ回る。
「待たせたな――っとぉ!」
 鎖分銅を放って逃げだそうとするギャングの足首に巻き付け転倒させる。
 貴道がその背を的確にスタンプした。
 ボクシングは地面を蹴る競技という言葉があるらしいが、貴道のスタンピングは男の背骨をへし折るか内臓をどうにかさせてしまうだけの威力があったらしい。
 振り返る貴道。目の光りが闇夜のヘッドライトよろしく不気味なラインを描き、そのラインがジグザグなラインを更に描き始める。
 男達はバリケードの側面に回り込まれたことを察して銃を乱射するが、急接近する貴道をとらえることはできない。
 否、何発か当てている筈なのにガード姿勢の彼の体勢ひとつ崩すことができないのだ。それだけ優れた体幹なのだろうか。いわば破壊できないうえ触れれば死ぬ鉄の柱が猛スピードで迫ってくるようなものだ。男は恐怖の絶叫を――あげるまえに、殴り倒された。
 縦に回転しながら飛んでいく男を横目に、仗助はアズライトを庇って盾を構えた。
 身をすっぽり包むタクティカルシールド。防弾ガラス面から向こう側をのぞき込み、仗助は短くコンパクトに呼吸を整えた。
「根性があれば、なんだって出来るんだぜ? だってよ、常に前に歩き続ける意思ってのが”根性”なんだからよ!」
 自分に言い聞かせるように叫ぶと、しびれを切らせて突っ込んできた男めがけてシールドバッシュで突き飛ばした。
 斜め上につきあげるようなバッシュで宙に浮いたところを、ラヴがドレスの裾から素早く取り出した拳銃が狙いをつけた。
 銃弾が的確に男の額を抜き、ラヴはもう一丁の銃を膝の隠しホルスターから抜くと走り出した。
 狙うは別のバリケード。
 相手の銃撃を跳躍によって回避すると、彼らめがけて銃弾の雨を降らせてやった。
 宙返りをかけて着地。
 撃ち漏らした男達がナイフを抜いてラヴへ斬りかかるが、それを銃身で受け止めた。
 振り返り、アズライトへパチンとウィンク。
 アズライトはまるで応援するように、ラヴへ投げキスをよこしてきた。
 左右非対称な微笑を浮かべるラヴ。
 そして男の喉に、胸に、一発ずつ的確に銃弾を撃ち込んでやった。
「おやすみなさい。夢は見ないまま、どうか安らかに」
 崩れ落ちる男。
 それを最後に、銃声も怒声も聞こえなくなった。

●さよならはキスの味
 スパークリングワインのように、世界がしゅわしゅわと泡だっては消えていく。
 遺跡を構築していた精霊たちが、幻を解き始めたのだ。
 気づけばキドーたちも元の格好に戻り、泡立つ石のステージの上に立っていた。
 こちらもまた元通り。アラビアンな衣装を纏ったアズライトが、首に書けていた色宝のネックレスを外す。
 そして、くすぐったそうに笑った。
「フフ。素敵だったわ。とっても刺激的で、とっても勇敢で、そしてちょっぴりダーティーなのね」
 宝石のついたネックレス……つまりはアズライトそのものをキドーの手に収めると、両手で包むように握らせた。
「あんた、まさか」
「これを私だと思って、かわいがってあげてね」
 キドーの頬に甘く優しく口づけをすると、アズライトは泡立つ景色にかすんで消えていった。

 それきり。
 イレギュラーズたちは砂漠の上に立っていた。
 遺跡の姿はどこにもない。
 いや、彼女が腰掛けていた石の椅子だけが、長い年月に晒されたかのように、ぽつんと鎮座していた。
 キドーの手に、キラリと輝く色宝を残したままで。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――色宝を獲得しました!
 ――色宝はラサの首都にて管理・保管されます。

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