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シナリオ詳細

再現性東京1993:小麦狂想曲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●主食だけど主食じゃないちょっと脇役の穀類
「お米が騒動を起こすのならパンやうどんも起こすかもしれない」
「……はい?」
「お米が騒動を起こすのならパンやうどんも起こすかもしれない」
 ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の思いもよらない(トンチキが過ぎる)発言に、さしもの『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)も耳を疑った。でも2回言ったので聞き間違いじゃないらしい。
 1993年、『現実の日本は』歴史的不作に喘ぎ、ジャポニカ米(所謂国内のコメ)を口に出来ない事態に陥った。代替米として持ち上げられたインディカ米(所謂タイ米)は調理の不明瞭さから敬遠され冷遇された歴史があり、それを『再現性東京』で踏襲した結果としてコメが暴れ出す「米騒動」が発生したのである。
 ローレットではこれを無碍にすることなく、米問屋襲撃に加担することでインディカ米の溜飲をさげ、後にインディカ米をメインに据えたイベントを企画することで、この暴走にケリを付けたのである。
 だもんで、米のみならず他の穀物もこうじゃないかと思うのは……まあ間違っちゃ居ないのかも知れない。
「……確かに1993年は歴史的不作の年でしたし、国内の小麦農家も同様の煽りを受けている可能性はありますが、当時の小麦の食糧自給率を考えるとそこまでのことは起きない……はずですが……」
 三弦は腕を組んで考える。が、『再現性東京(アデプト・トーキョー)』は飽くまでも「再現性」なので本来の歴史と異なる流れが起きていておかしくはない。歴史上、インディカ米は暴動を起こしていないからだ。
「ひとまず調査は行いますが、希望通りの事態になってなくてもご勘弁願いますよ……? 我々としても何もない方が望ましいのですから」
 で、こうやって安請け合いするときは決まってフラグであることを三弦は気付いていなかった。

●「加工品は暴動を起こさなかったけど小麦が暴発寸前なので調理しましょう。薄力粉と強力粉を間違えちゃいけない」
「なんて?」
「『先日のイベントで米ばかりフィーチャーされてぼっち食らった小麦が不満げで最近どこの店でも加工品が上手く作れなくなってるので、ここはひとつローレットのイレギュラーズ各位に美味しく調理して頂き、1993街で売りさばいて欲しい』だそうだ。戦わなくていいぞ。粉塵爆発に怯えなくてもいいんだ」
「粉塵爆発絡みは絶対アレ再現性低いと思うけどなあ……フィクションでしょ」
 依頼内容を読み上げたブレンダに、同行したローレットの面々は首を折れるほどに傾げた。ばかなの?
 だが、1993街で小麦加工品関連――うどん、パンはおろか洋菓子まで――の店が6割ほどシャッター閉まっているのはそういう理由からかも知れない。
 なんでも、前回1993街でのイベントが終わって暫くしてから急に小麦によるグルテンの形成が困難に、言ってしまえば「加工しづらく」なり、それも日増しに悪化していると。よしんば調理できても非常に食べづらいものとなり、菓子類もどこか舌ざわりが悪くなっているのだと。インディカ米の騒動を経た人々は、これは小麦の反乱だ、と焦りを覚えたわけだ。
 メレンゲだのおから(この時勢だとまだ先進的な選択肢だ)をメインに据えているこだわりの洋菓子店が無事、くらいのノリ。
「さあ料理を始めよう」
「なんで小麦料理作るのに初手から包丁持ってるのか聞いていい?」
 取り敢えず今までの経緯とかガン無視してまず小麦料理、菓子でもうどんでもパスタでもいいので作ることになるが、小麦を宥め賺すように声をかけながらやってくれというのが趣旨である。
 いや本当に、本当に何を言っているのか。

GMコメント

 アフターアクションをみたとき、私も三弦と完全に同意見でした。なんて?

●達成条件
 小麦料理全般を作る
 それを振る舞う

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは

 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●1993街の小麦
 一連の事件(「再現性東京1993」関連)の影響でぼっち食らったと勘違いした小麦が機嫌を害しており、調理を気前よく受け入れない体勢に入っている。具体的には淡々と調理してもグルテンがいい感じにアレしない。
 なだめすかして美味しく作ることを約束しつつこう上手い具合に美味しく調理しなきゃいけない。
 なおうどんに関してアレンジレシピ(なにか練り込む、うどん調理に工夫をする)を試そうとしてそれが中途半端だと練り揚がったうどんに思わぬ一撃を食らい重傷判定なんて事もあるので、自信なきゃパンドラ使用にチェック入れといた方がいいと思う。

●振る舞う先
 1993街の人々。事情は理解しているのでセーフ。

  • 再現性東京1993:小麦狂想曲完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年10月20日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

リプレイ


 1993街内のとあるパン屋(そこそこキッチンが広く調理器具が多いので選ばれた為他意はない)。イレギュラーズ7人はその場に集まり、目の前の小麦粉を前に思案顔であった。
「米の次は小麦か……やれやれ、先の時代の食材は何つーか……随分と元気がいいんだな?」
「グルテンが何かイイ感じにアレしてくれないと、お料理がソレコレで良い感じにならないのだわ……!」
 『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)はもう色々と慣れ始めているので「やっぱり起きるんだな」という風情だが、流石に『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は初体験なので非常に混乱をして……して……いや案外馴染んでる物言いだなこれ?
「このままじゃあちこちで小麦が粉塵爆発を起こして、その小麦を吸った人が気持ちよくなって複製小麦種になって練達のドーム内が小麦まみれになって練達を守るドームが爆破! それはなんとしても阻止しなきゃ!」
 『イワ死兆』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の考える『最悪』が想像以上に最悪すぎてイレギュラーズは「うん、ありそうだね」ってスルーしようとした。やめろよ。ラジオ事件だって北東部占拠で終わったんだぞ。規模を大きくするな。
「パティシエとしては小麦が反乱するのはとってもこまっちゃうねー。洋菓子と小麦はきってもきりはなせないくらい小麦のお世話になってるからねー、まさに小麦はトモダチってやつだよね!」
「まあ、うん。本当アレだよ。アレしか言えねぇよ。……どうしてこうなった」
 『甘いかおり』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)にとって小麦が自由にならないのは文字通り死活問題である。練達で菓子職人を名乗ろうとすると、この巨大な壁を乗り越えなければならないらしい。面倒がすぎる。
 『死神教官』天之空・ミーナ(p3p005003)の心からの叫びは一同が同意すべきところなのだが、『練達だしなあ』になっているメンツのなんと多いことか。それでも小麦が反乱を起こすと聞いてフランほどの混乱に陥らず、食卓のピンチで済んでいるのだから温和に終わっているといえば、まあそうだ。
「ふむ、小麦粉……さっぱりわからん!! 料理は最低限しか作れないから調べるしか……ここはaPhoneを」
 がしっ。
 『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)がaPhoneを手に取ろうとして、『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)がしっかりとそれを押し留めた。何事かと眉根を寄せるリアナルに、「ここは希望ヶ浜じゃないんだ」と、ブレンダは砂を噛むような表情で諭した。包丁を手に持ったまま言うのはどうかと思いますが正論です。
 非常に便利だし練達だしそれ以外でもイケるやろと多くのイレギュラーズが思いがちだが、「aPhoneは」「希望ヶ浜を除いては」「一切の機能を使用できない」のである。情報一つ取れやしねえ、写真も撮れねえ板っ切れである。
「まさか本当に騒動を起こしそうだとはな……てきと……私の勘もよく当たるものだ」
 適当って言ったな。今適当っていいかけたなブレンダこれ。
「正直なところ私はライスよりもパスタやパンの方が好きなのだ。だから君たちをできるだけ美味しく調理させてもらおう。よろしく頼む」
 小麦に向けて頭を下げるその姿はいかにもちょっとおかしい人のそれだが、今回は大正解である。誠意なくして小麦料理は成り立たんのだ。
「というか一つ言っておく。包丁は握りしめるもんじゃねぇし包丁で小麦粉は料理できねぇよ。他の具材ならともかく」
「できないのか……」
 ミーナはちゃんと突っ込んだ。ブレンダは素直に包丁を置いた。いいぞ一歩前進だ。道のりは1万歩あるかもしれないが。
「……で、新田殿はどこに行ったんだ? 依頼を放棄するわけじゃないだろーし……」
「さっき『地元のダチコーに頼みに行くので私抜きで進めてください』っていって出ていったよ!」
 幻介が、姿の見えない『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)を求めて視線をさまよわせると、フランは本人からの言伝を口にした。さらっと姿を消しているが「考えがあるので」って先に周りに伝えていたのでなんとかセーフ。
「こうなったら私は餃子を作ろう……作り方、わからないけど」
「大丈夫なのだわ、餃子で小麦を使う場面は皮だけなのよ! なんとかなるのだわ!」
 aPhoneという羅針盤を失い途方に暮れるリアナルに、華蓮は優しく手を差し伸べた。皮さえ作ってしまえば小麦相手に苦戦はすまい。多分。
「調理にゃ自信無えけど……大体のモンは美味く食えるからよ、頼むから大人しく調理されてくんねえかな?」
 幻介は強力粉の袋に噛んで含めるように告げた。こころなしかざわめきを感じていたその袋から、波が引くように反抗の空気が失せた、気がした。
 ひとまずは準備という点では完璧だ。イレギュラーズは小麦粉と相対し、いざ調理をせんと立ち向かう。……料理なのになんでこんなことになってるんだろうなあ。


 さて。
 7名のイレギュラーズの奮戦をああだこうだする前に、一人行方を眩ませた寛治は何をしているのかというと。
「私の使用する小麦は、粉ではなく発芽した種子。そう、『麦芽』です」
 誰に……恐らく現地のブルワリーの施設を借り受けた相手に説明する姿は堂に入っている。ブルワリー、つまりビールの醸造施設だ。彼は小麦麦芽を50%以上使用した「ヴァイツェン」を作ろうと考えたのである。
「敢えて濾過しない事で白く濁ったこのビールは、『へーフェ・ヴァイツェン』と呼ばれています。大麦を同量使うことで、小麦とわかり合ってもらい大麦の反乱を防ぐ意味もあります」
 少量仕込みに適したエール系統を狙ったことも依頼達成時間の省略に一役買っている。寛治は自らの夢を、この1993街で叶えるべく動いたのだ。
「私の作るべき『小麦』の品は、このヴァイツェン以外に考えられなかった。何せ酒税法がありませんからね。自家醸造もやりたい放題です」
 ……そういえば「小麦の反乱」って言ったもんなあ。インディカ米が反乱して小麦が加工後だけ反乱するわけないもんなあ。じゃあ仕込みが終わるまで寛治は小麦麦芽をあやす作業な。目が出ている分イヤイヤ期並に厄介だぞ。

「いつも小麦にはお世話になっています。小麦なくしてお菓子なし! 他の材料を使うお菓子も多いけど、ケーキとかクッキーとか小麦がなかったら作れないお菓子がいっぱいあるもんね!」
 ミルキィは静かに一礼すると、小麦がいかに大切なのかを力説する。彼女はパティシエなので薄力粉の重要性ときたらもうえらいことで、グルテン化しなかったら死活問題てなもんである。
「お米はお米で主食として確立しているけど、小麦の魅力はパンや麺といった主食ポジションからお菓子等のデザートポジション、ピザやお好み焼きといったおかずもかねたポジションとオールラウンダーなところだと思うんだよね!」
「お、おお……ミルキィ先輩の後ろからすごいオーラを感じる……」
 矢継ぎ早に小麦料理の魅力を口にするミルキィは、口だけではなく手も忙しなく動かしていた。クレープ生地の種を作り、熱したホットプレートに薄く広く生地を広げて焼いていく。美しく仕上がったそれをバターシュガー、トマトチーズクレープ、バナナカスタードの3点へと次々と仕上げにかかった。
 フランの言う通り、その動作には淀みがなく一種の根性すらも感じられる。言葉通りに小麦の魅力を引き出そうと全霊を尽くす姿は、パティシエとしての矜持を確かに感じるものであった。
「種類も多いし甘いのと食事感覚で食えるのとがあるのはいいな。小麦の味もよく分かるよ」
 ミーナはクレープを食べ比べ、うんうんと頷く。最初が肝心とはいうが、なかなかの出来らしい。
「フランだよー、あたしがすんごく美味しいパンにするから安心してね!」
 続いてフランの様子だが、こちらは元気に挨拶しつつボウルに小麦粉をあけていく。幻想で作り慣れているだけあって準備も手際もなかなかのものだ。……そして小麦粉をまえにおもむろに椅子に座り。
「わかる、わかるよ……お米さんだけちやほやされたのが小麦さんはおこなんだよね? あたしもさ、かわいい服着てお出かけしたら同じ服をばいんばいんの人が着ててね……似合うー! ってちやほやされてた時は暴動起こそうかと思ったもんね。あっ牛乳飲む? 今日は一杯付き合ってね!」
 どっかのクラブのママみたいな態度をとったと思えば、牛乳をおもむろにボウルに注ぎ入れる。そのまま卵も混ぜ入れてわかるわかる、と言いながら馴染ませていく。わかるも何も絶対これ本人の体験談9割じゃん? ちやほやの次元が若干違うのでは?
 「キレてるよ!」「その白肌最高かい!」「なんだいその弾力!」「酵母とベストマッチだよ!」……というコールが聞こえつつ生地が練り上げられ、寝かせに入った。このあと色々作るわけだがもうお腹いっぱいである。
(これでうまくいくのか? でも生地の仕上がりは確かに凄くいいんだよなあ。なんでだ?)
 ミーナは訝しんだ。
「大丈夫……大丈夫……よしよし、怖くないのだわ。皆は何になりたいのかしら……? 一緒に考えましょう」
 他方、華蓮は小麦粉達に触れて香り、手触り、そしてその意志を受け止めるべくママとしての適正をすべて小麦への理解に注ぎ込んでいた。記事を作る、調理するといっても一筋縄ではいかないのなら、対話を徹底的にするだけだ。
「うん……うん、クッキー……そう、クッキーはどうかしら? 嫌なら遠慮なく言ってね? うん? そっちの小麦さんは餃子がいいのね……?」
 「ね?」って感じで華蓮から渡された小麦粉袋と華蓮の顔とに視線を往復させたリアナルは何を要求されているのか、と理解の追いつかない顔をしていた。
「その子は餃子になりたがっているのだわ。料理は手伝うから作ってあげて頂戴な」
「わ、わかった……よし小麦粉、上手くやれ♪ 旨くなれ」
 脅してどうすんだよ。
「まずは生地を作る。熱湯でお湯をこねる捏ねて丸めて……寝かせます」
「そうそうその調子」
 リアナルが調理に入る。わからんわからん言ってた割にはちゃんと動きは様になっている。多分希望ヶ浜学園で練習したんだろう。
「そしてこれが寝させていた再現性東京の外から持ってきた生地。これを……そっと横に置きます。小麦粉たちが怒るので。……なんで?」
「なんで??」
 え、ちょっとまって本当になんで? 作ったものが? あるの?
「少したったもとの生地を分けて……この外から持ってきた生地を包みます……なんで??」
(もしかしてこれって……)
 リアナルが自問自答しつつ作る様子に、しかし華蓮はいよいよツッコミをいれなくなった。自分のクッキー作りも大事だし、なによりママは見守るもの。教育ママは嫌われるのだ。
「そしてこの生地で包んだ生地を焼きます。ものすごく分厚いので弱火でじっくり小麦粉で溶いた水を張りつつ煮ます。焼き上がったら皿にひっくり返します、するとふっくら餃子In餃子が完成します!!」
(餃子じゃない……ワンタンなのだわ?!)
 生地、というか種と皮をなんやかんやしたものを更に包んで完成! 完成じゃないが!
「美味いんだけど、これ小麦粉のおかげなのかもとの生地のおかげなのかわっかんねえな……」


「はい。……はい、卵さん、小麦粉さんと混ぜるだわね。一緒に仲良くするのだわよ?」
 もはや突っ込むことを忘れた華蓮は自分の料理に集中し始めた。色々な具材を使ってクッキーを作るにあたり、それぞれをただ混ぜるだけではなく、小麦粉の機嫌をみつつ混ぜようと考えたのだ。
 「ええ……お化粧しましょうね」とか「星にハートに…皆個性的な形なのだわ」とか、その様子は周囲の雰囲気すらも数段ファンシーに見せすらする。
「私はパンケーキを作ろう。あちらほどうまくはできないが、素人が作ってもちゃんと美味しくなるのだから偉大だな」
 小麦粉、砂糖、卵に牛乳、そしてベーキングパウダー。小麦粉以外を分量を慎重に計り混ぜつつ、小麦粉を最後にする気遣いは忘れない。
「どうだ? ここに君たちが入ればさぞ美味しいパンケーキになるだろう……」
 なだめて、じっくり力任せに混ぜる。混ぜる。さらに混ぜる。力作業はブレンダの得意分野だ。彼女のゴ……強靭な肉体はこの時を想定していたとすら思えてくる。
「よーく混ざるのだぞ? 君たちのポテンシャルを引き出すためにも重要なのだ」
 混ぜながらも彼女は考える。余計なアレンジを加えてはならない。こういう時にアレンジをすると……確実に失敗するのだからと、神経を尖らせて!
 混ぜた種を脇に置き、一度熱して火を止め落ち着かせ、もう一度温め油を馴染ませたフライパンに投入していく。
 焼き上がったそれをきれいに盛り付ければ、素人としては頑張ったレベルの逸品の完成だ。普通に美味しい。
「あー、何々? まずは塩水と小麦を入れて混ぜる……こんな感じかね? んで、これを捏ねて……おっ、何かそれっぽい形になってきたんじゃねエ゛ッッ」
 幻介は目分量で次々と材料を混ぜ、やや粉っぽさの残る生地に仕上げおおおーっと幻介の顔を生地が打ち据えた!
「次は……寝かす? ……。…………。………………」
 頬をさすりながらボウルからおろした生地を置き、彼はまった。間の置き方がエrgいえなんでもありません。
「一時間も待ってられっか! 時短だ、時短!! 次は打ち粉を振ってのヴァッ」
 おおっとここで顔に当てたらまずいと気付いた中途半端な生地が幻介のボディを狙いにいったァ! ……そんな立派なレシピを借りておいてどうした。メガネは一日待つ構えでブルワリー行ったぞ。
 だが、まあ喧嘩するほどというのか、喧嘩の中で生まれる友情なのか。グルテン形成はうまく行っているしいい感じにこねられるがままになっているので、挨拶って大事だなと思う。
「んじゃ、後は……よっ、と!」
 練上がった生地を放り投げてどうするのか。それは、まな板の上にきれいに切りそろえられた生地、麺と化したそれをみれば一目瞭然だ。
 あとは麺を茹でて、湯切りし、生醤油をかけて完成である。
(華蓮のクッキーも大したモンだし、幻介のうどん……あの混乱でよく出来たなコレ……)
 ところで、ミーナはなぜ食うことに徹しているかというと。
 もとより『敗戦処理』をメインに考えていたというのが一点と、作ろうとしたら全員がかりで全力で止められたというのが二点。
 そして、寛治の作ったヴァイツェンの存在を一同が知るのはもう少しあとの話である。

成否

成功

MVP

ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ

状態異常

なし

あとがき

 「やりたい放題」ってこういうのを言うんだなって実感しました(褒め言葉)。

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