PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想蜂起>神父暗殺

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神の御名の許に
「もうみんなわかっちゃいると思うが、この幻想はそろそろ終わりだよ」
 とある貴族領。
 丘陵地帯が多いこの地方の一角に、古びた教会がある。
 そこには今、百名を超えようかという領民が集って彼の話を聞いていた。
 祭壇の前に立って話しているのは、黒い聖職服をまとった精悍な顔立ちの男性だった。
「貴族はボク達から税金だ何だと金ばかり巻き上げて、しかし一向に暮らしはよくならない!」
 彼は声を大きくし、右手を派手に振って人々に自らの動きを示す。
「そして民のことなんて少しも省みず貴族同士で小競り合いばかり。その費用だって元はボク達が稼いだ金じゃないか!」
 男の言葉に煽られて、聞いている民の数人が「そうだ!」と声をあげ始める。
「そして見てみろよ、ついにおかしい事件まで起こり始めた。一つじゃない。幾つも、幾つもだ!」
 最近頻発している以上事件のことは、人々の記憶にも新しい。
 それを話題に出すことで、彼は聴衆の不安を一気に大きくすることに成功していた。
「何でこんな事件が起きるんだ? おかしいだろう? どうして起きる前に防げないんだ? おかしいだろう!」
「そうだ、おかしいぞ!」
「貴族はどうして防いでくれないのよ!」
 事件が起きる前に事件を防げと、普通に考えれば言いがかりに等しい意見だが、加熱しつつあるこの場ではそれに気づく者はいない。
 祭壇で高く言葉を投げる男に、人々は確実に乗せられつつあった。
 彼は言う。
「全ては貴族のふるまいのせいだ。彼らはこの国を蝕む癌そのものだ。彼らがレガト・イルシオンを滅ぼすんだ!」
「そうだ!」
「貴族を許すな!」
「貴族を殺せ! この国を守れ!」
 ついた火が、どんどんと大きくなっていく。
「ボクの神はそれを赦そう。ああ、もちろんボク自身も赦すとも。何せ、これは正義だ!」
「そうだ、俺たちは正義だ!」
「神が赦している、俺たちは正義なんだ!」
「貴族を殺すことこそが、一番の正義なんだ!」
 静かだった教会が、人々の熱狂に満たされていく。
 聖職服の男はもうそのころには自分からは何も言わずに、一線引いた場所から攻撃の意志に染まり行く場を眺めていた。
 男の名はハインケル・エルヴィッヒ。
 ただの、村の神父である。

●それもまた必要な事
「簡潔に言うよ、神父を暗殺してほしい」
 集まったイレギュラーズたちを前に、情報屋『黒猫の』ショウ(p3n000005)は本当に簡潔に言った。
「みんなも聞いているだろう。今、このレガト・イルシオンのいたるところで武力蜂起が発生している」
 もちろん、その話は知っていた。
 かねてより頻発している猟奇事件。
 そこから生まれ出たよくない空気が、具体的な動きへと繋がった結果だ。
 貴族は当初、これらの蜂起に対して武力による完全制圧を目論んだが、そこにローレットが待ったをかけた。
 蜂起に対してその動きが本格的になる前にイレギュラーズが対処する。
 今回の依頼もまた、その一例だ。
「依頼人は小領を統べる領主だ。蜂起したのは人口百人に満たない農村だが、これがどうにもクサくてね」
 クサい、というのはどういうことだろうか。
「どうやら村人を扇動している男がいるらしい。さっき言った、神父だ」
 神父の名はハインケル・エルヴィッヒ。
 経歴上は特に何か問題がある人物ではないが、今回の動乱に際して急に台頭してきたという。
「時々いるんだよね、世俗が乱れたときにいきなり出てきて頭角を現わしていく。そんな、乱世の奸雄にもなりかねないのが」
 ショウの口振りから、イレギュラーズは彼がハインケルに抱くものを察した。
「ハインケルは村の外れの丘にある教会で暮らしている。いるのは彼一人だ。――始末してくれ」
 彼の声はいつになく真剣だ。
「依頼人の領主は、ハインケルさえ始末すれば村については寛大な処置を約束してくれてる。本来は穏やかな気質の人間が多い村らしいんだ。神父がいなくなれば、蜂起の熱気もすぐに冷めるだろうね」
 村の方に戦力はないのか。
 イレギュラーズの一人が問う。
「村人が蜂起するといっても、武器はあって農具くらいなものさ。それに神父はどうやら村人を自分の周りに置かないらしい。曰く、自分には神の加護があるから、危ない目に遭うことはない。だそうだ」
 これも村人に自分のことを印象付けるためのパフォーマンスだよ、と、ショウは言い切った。
「やること自体は簡単だ。教会に忍び込み、神父を始末する。それだけだ。あとは領主がどうにかするってことになっているから、君たちは気にしないでいい」
 ただし、と、ショウは人差し指を伸ばして、
「村人がいつ教会に来るとも限らない。できる限り迅速に仕事を終えてほしい。村人に知られたら、蜂起を止めるどころか火に油を注ぐ結果になりかねない」
 そして最後に、ショウは皆に言った。
「決してキレイな仕事じゃないけど、これもまた必要なことだ。どうか、よろしく頼むよ」

GMコメント

どーも、天道です。
ついに来ました全体依頼。
今回はその一つを担当させていただきます。

●舞台
 村にほど近い丘の上の教会。
 建物はそこまで大きくなく、裏手に小規模の墓地があります。
 村が近いので派手に騒げば村人に気づかれてしまう可能性が高いです。

●対象
・ハインケル・エルヴィッヒ
 ただの村の神父でしすが先導者としての気質と手腕を備えています。
 今回の蜂起については半ば本気で国の行く末を憂いていますが、もう半分はこの状況を楽しんでいます。
 ネタバレしますが死霊魔術の使い手であり、戦闘になったら五体のスケルトンを召喚してきます。
 本人はそれ以外に戦う能力はありません。しかしスケルトンを盾にして逃げようとします。
 逃げられた場合、村に暗殺のことがバレてしまいます。そうなったら依頼は失敗です。

●村人
 シナリオ中、村人が一定確率で教会にやってきます。
 村人にイレギュラーズのことがバレた場合、依頼は失敗扱いとなります。
 見つかってから村人を説得しようとしても不可能と判定しますので、ご注意ください。
 見つからないように何らかの備えをしておくとよいでしょう。

●その他
 ハインケルは先導者として、村人を操ることを楽しんでいます。
 これに対し、参加者の皆さんは何か思うことをぶつけてみてはいかがでしょう。
 天道は、ちょっと『舌戦』というものをしてみたいです!

  • <幻想蜂起>神父暗殺完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月09日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)
強襲型メイド
キドー(p3p000244)
緑色の隙間風
焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
セルウス(p3p000419)
灰火の徒
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
御屋敷 寝子(p3p004915)
妖艶な猫又

リプレイ

●扇動者は教会に吼える
 辺りに夜のとばりが下りようと、教会の中にある熱はまるで醒めなかった。
「さぁ、準備は整おうとしている! いよいよボク達の正義を世に知らしめるときだ!」
 古びた祭壇の前に立って、神父ハインケルが声を振り絞る。
 集められた村人らが直後に続いた。
「この国はもうダメだ! 俺達が立て直すんだ!」
「貴族を殺せ! 国を救え!」
「貴族を殺せ! 世を直せ!」
「貴族を殺せ! 民を解き放て!」
 村人の声は教会の外にまで響いていた。当然、外にすでに潜んでいるイレギュラーズの耳にも届く。
 しかし、八人の中に動く者はいなかった。ほくそ笑む者は数名いたが。
 しばらく時間が過ぎて、月がそろそろ空の真上に達しようとする頃、村人たちはようやく解散していった。
 さぁ、動き出すときだ。
「そろそろ始めようかな」
 明かりをつけず、星の瞬きの下で呟いたのは『夜星の牢番』セルウス(p3p000419)である。
「なかなか見事な演説だった。中身の薄さなどいっそ清々しいほどだ」
 モノクルの男――『智の魔王』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)はハインケルの演説をそのように評し、
「それに踊らされる村人も実に滑稽。衆愚とはよくいったものです」
 続く『    』ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)が村人への印象を辛口に語る。
「人を導く立場なら、民の幸せのために使うべきなの」
 と、『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)などは実に真っ当なことを述べる。
 しかし悲しいかな、この場にいるイレギュラーズで、そんなまともな感性の持ち主は鳴だけだった。
「さて、果たして何を思っての扇動か、興味はあるが仕事を遂行せねばな」
「いかにも。余計な好奇心は猫をも殺すぞ? ワシらは依頼された仕事をするだけだ」
 重ねて言うグレイシアに、『妖艶な猫又』御屋敷 寝子(p3p004915)が冗談めいた物言いで釘を刺した。
 グレイシアは彼女に目を向けつつも答えは返さず、肩をすくめたのみだ。
 先ほどまでの狂騒が嘘のように、教会周辺は静まり返っていた。
 これが本来の夜であろう。しかし今日はやけ月が大きい。月に狂うが人のさがならば、どちらが夜の素顔なのか。
 イレギュラーズ八名、それぞれが前もって決めた場所へと移動する。
 教会の裏手に回ってみれば、裏口と小さな墓地が見えた。
 そこに立つのはグレイシアと『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)である。
「なかなか見事な傀儡師っぷりで御座いましたね」
「あんなモン、くだらねぇペテンだろ?」
 己のギフトでかりそめのスコップを作り、その辺にあった空の樽に土を盛りながら幻は楽しげに言った。
 応じた声はグレイシアではなく、そこにたまたまやってきた『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)のものだ。
 そこに一羽のカラスが舞い降りてくる。
 鳴が使役し、使い魔としたカラスであった。
「来たか。俺ァ表に回るぜ」
「吾輩も行く。準備はそろそろ終わっているだろうからな」
「ええ、万事滞りなく進めていきましょう」
 キドーと、グレイシアと、幻と、三者三様それぞれの持ち場へと赴いて、
「さぁ、開幕だ。最初は静かに上げていこうぜ?」
 教会正面入り口の前に立った『演劇ユニット』Tricky・Stars(p3p004734)が、他のメンバーに確認をとる。
「村人はまだ来そうにないな。そっちは頼むぞ、キドー」
「アンタらこそな。ちゃんと殺せよ」
 ウィンクを飛ばす寝子に、キドーは追い払うように手を軽く振って告げた。
「つまらん劇になるのは分かりきっている。大根役者は早々に舞台から引きずり下ろすのみだ」
 応じたのはTrickyだが、何故か口調が全く変わっていた。
 そして、幾名かを外に残し、イレギュラーズが教会の扉を開けて中へと踏み込んでいった。
 開け放たれて中へと吹き込んだ外気が、燭台に灯る炎を小さく揺らす。
「おや――」
 祭壇で祈りを捧げていた男が、背後のイレギュラーズに気づいて振り向いた。
「君たちは村人、ではないね?」
「はぁい、ご同業?」
 ハインケルの問いを無視し、セルウスがにこやかに笑った。
 だがそれだけで何かを察したのか、ハインケルは向き直ってイレギュラーズと相対する。
「こんな夜分にこの教会に何か用かい?」
「特に教会に用はない。懺悔なり、告解なり、好きにしていいぞ。もっとも、吾輩は神ではなく魔王だがな」
 グレイシアはそう告げてさらに一歩踏み込んだ。
 風が少しだけ強まって、燭台の炎が一つ、そこで消えた。

●ハインケル襲撃
 互いに言葉を交わすことなく、過ぎたのはおよそ三秒ほどだった。
「怖いなぁ……」
 ハインケルが作り笑いを顔に浮かべて、ふらりと歩き出そうとする。
「おっと」
 しかしTrickyが素早く先回りをして、裏口に続くドアとハインケルの間に立ち塞がった。
「何だい、君は。ボクはちょっとそっちに用事があるんだけどね」
「そんなこと言わずに、舞台から引きずり降ろされてくださいよ、神父様」
 朗らかな笑顔で、Trickyは言い放った。
「ははぁ、なるほど……」
 何かに納得したようにハインケルは二度ほど首肯し、パチンと指を鳴らす。
「つまり、問答無用というワケだ!」
 こぼれたインクが作る染みのように、揺らめく黒い影が四つ生じた。
 その中から、手に剣を携えた白骨が姿を現す。おそらくは死霊魔術――ここまでは予想がついていた。
「おっと、やっぱり使ってきたね。そういうの」
 セルウスが笑う。
 扇動者は得てして戦う力が低い。ゆえに有事の際には代わりの戦力を用意する。常道だ。
 そして今回、ハインケルと同じようなタイプが多かったこともあって、ここまでの展開は比較的容易に予想が立っていた。
「分かってると、対処も楽だね」
 言って、セルウスが眼前の白骨へと魔力の火花を解き放った。
 骨を燃やす炎が、教会をひときわ明るく照らす。
 その明かりはすでに始まっている戦いのすべてを場に表した。
「聖職者がよくもまぁ、なかなか笑える話よのう」
 寝子が生み出した不可視の縄が、白骨の一体を縛りその動きを鈍らせる。
「こいつら……、戦い慣れている……!?」
 ハインケルが唇を強く噛み締めた。
 自分が追い詰められているという実感が、彼の顔から薄ら笑いを消し飛ばしていた。
 だがこのとき、ハインケルは確かに己が奉ずる神の導きを感じた。
 チラリと見た窓の向こうに揺れる炎の明かりが見えた。松明。村人が教会にやってきたのだ。
 一方で、ハインケルの表情からヘルモルトも状況の変化を読み取った。そして彼女は小さく呟くのだ。
「残念ながら、叶いませんよ」
 ――場面は、教会の外へと移る。
「何だ、教会の方から音がしたみたいだが……」
 その村人はハインケルの扇動を受けて彼に感化されたうちの一人だった。
 たまたま家が最も教会に近かったという理由から、異変に気付いてやってきたのだ。
 しかしハインケルはまだ神に祈りを捧げている最中かもしれない。邪魔をするべきではないと、裏口の方に回る。
「何だぁ、こりゃあ……!」
 土が盛られた樽で塞がれた裏口を見て、村人は声をあげた。
 その背後に迫っている幻には、一切気づくことなく。
「何って、見ての通りで御座いますとも」
 そっと耳元で一言告げて、村人がこちらを振り向く前に幻が放った魔術が相手を昏倒させていた。
「ふぅ、一人だけで助かりましたね」
 そして彼女はその村人を近くの茂みへと運んでから、また自分は配置に戻っていく。
 さらに少しして、また別の村人が教会前にやってきた。女性だ。教会に忘れ物をしてしまったのだ。
「あら……、教会の中から物音……?」
 と、彼女はランタンを掲げて教会に近づこうとしたところで、いきなりランタンが砕け散った。
「きゃあ!?」
「いやー、運が悪かったな、アンタ」
「だ、誰……!?」
 しかし彼女が反応しようとする直前に、幻がそうしたようにキドーもまた殺傷力の低い術で女性を気絶させていた。
「殺した方が早ェが、まぁ仕方ねぇ」
 ギトーは笑いながらナイフで女性の服を引き裂いて即席の縄を作り、それで彼女の腕を縛り上げる。
 そのまま彼女を茂みに運び、財布を奪ってついでにちょっとおっぱい揉んで、また自分の持ち場へと戻っていった。
「ヘッヘッヘ、役得役得」
 全く悪びれないその様子などまさしくゴブリンそのものだった。
 村人らが拘束されるまでの声と物音を、教会内にいるハインケルは全て聞いていた。
 彼は、その顔をこれ以上なく青ざめさせていた。
「民は汝の救いとはならんようだな」
 寝子が笑って近づこうとする。ハインケルはその顔を怒りに歪めて、声を張り上げた。
「来るな! 来るんじゃあない!」
 その激昂に反応し、群がる白骨がイレギュラーズへと襲い掛かる。
 ハインケルはそれを壁にして逃げようとするが――
「知らなかったのか」
 だが、逃げようとした先にはすでにグレイシアが待ち構えていた。
「魔王からは逃げられない。……別に吾輩、頭に大をつけようなどという自己顕示欲はありはしないが」
「人を間違った道に導いた罪、許しはしないの!」
 鳴の放った魔力弾が、白骨の一体を粉砕する。
「つまらんな、まるで面白みがない!」
 別の白骨を破壊したのは、Trickyの術式を用いて威力を強化した拳と蹴りのコンビネーションだった。
 そしてヘルモルトが、メイド服のスカートを大きくはためかせて跳躍、その白い両の太ももで白骨の頭蓋を器用に挟み込む。
「フランケンシュタイナーでございます」
 身をひねり、回転力がついた状態で白骨の頭部をそのまま床に叩きつけた。
 ガシャンと軽く割れる音がして、頭を砕かれた白骨は動きを止める。
 残る一体の白骨も、結局は盾にも壁にもなれないまま粉砕されて、ハインケルはいよいよ進退窮まった。
「ぐ、う、う……! こんな、こんな……!」
「散らかってしまいました。このままあなたも含めてお掃除をいたしましょう」
 ヘルモルトが慇懃無礼にお辞儀をした。

●扇動者の末路
 静まり返った教会の中で、神父ハインケルは追い詰められていた。
 そして彼は――笑い出した。
「素晴らしい! 素晴らしいじゃないか、この手管! この実力! 村人なんかよりずっと頼りになる!」
 声を大にして胸を張り、イレギュラーズに囲まれながらも彼は大きく腕を振り回す。
「なぁ、こんな汚れ仕事を引き受けたんだ、君達も食い詰め者なんだろう? だったらボクにこそ手を貸してくれよ!」
 言いながら、ハインケルは自分を囲む刺客、その一人一人の目を真摯に見つめ返そうとしていった。
「ボク達は抑圧されている! そうしているのは貴族達なのは知っているだろう? だからボクに手を貸して――」
 演説がまさにクライマックスに達しようとした瞬間、刃が、ハインケルの喉元を狙った。
「うおお!!?」
「チッ、外したわ」
 襲い掛かったのはTrickyだった。
 空振ったクリスナイフを構え直し、彼は忌々しげに舌を打つ。
「な、何のつもりだ! 何で襲い掛かった!」
 腰を抜かしたハインケルが、唾を飛ばして文句を叫んだ。
 だがTrickyは「は? 殺そうとしたに決まってるだろ?」と身も蓋もない答えを返すだけ。
「舌を回せばどうにかなると思われましたか」
 ジリリと、ヘルモルトが間合いを縮めようとする。
 それが怖くて、ハインケルはすぐさま立ち上がって距離を取ろうとした。
 だが逃げた彼を見て、ヘルモルトは小さく息をつく。
「煽るだけ煽り、自分は逃げる。まるで腐った貴族のようですね」
「貴族……? ボクが……? あんなものと一緒にしないでくれよ!」
 ハインケルはこの期に及んで嘲笑を響かせた。
 どうやら、貴族に対しては本気で怒りと侮蔑を持っているようだ。
「ボクは正義を行なおうとしただけだ。村の皆だって賛同していたさ! 無理に誘導したわけじゃない!」
 そして彼は、己を正当化しようとする。
「元々、皆の中にあった不満だ! ボクはそれを正しい方向に導こうとしただけだ!」
「知らなかったな。失敗すると分かっている蜂起への扇動が正しい方向だったとは」
「…………」
 グレイシアの指摘に、ハインケルの言葉が止まる。
「ああ、安心した」
 セルウスがホッと胸を撫で下ろす。
「君は自分が彼らを破滅に導いていると、きちんと自覚していたんだね。そんな自覚もできない阿呆だったらどうしようかと思っていたよ」
 優しい笑顔、柔らかい声色。しかし紡がれた言葉はどこまでも辛辣だった。
「汝の言葉は外で聞いていたが、大層楽しそうであったぞ」
 寝子からもそんな指摘を飛ばされて、ハインケルの顔色はいよいよ蒼白になっていた。
「……ああ、そうか。そうなんだな、つまりボクは目立ちすぎたんだな」
 急に、ハインケルが声のトーンを落とす。
 そして彼はゆっくりと両手をあげた。
「分かった。ここまで来たらどうしようもない。ボクも観念――」
 言い終える前に、ハインケルは指を鳴らした。
「観念なんて、できるものか!」
 ゆらりと影が揺れて、現れたのは一体の白骨。最大で五体呼び出せるうちの最後の一つを、彼は残していたのだ。
 白骨が現れた瞬間、イレギュラーズの方にも確かな驚きが生じた。
 その一瞬こそが、ハインケルが死に物狂いで見出した生き残るための光明だ。
 白骨は大した時間もかからず破壊されるだろう。それでいい。自分が逃げるだけの時間が稼げれば、それでいい。
「ハッ、ハッ! はぁ!」
 一心不乱に走る。
 向かうのは正面の扉だ。裏口はダメだ、さっき何か音がした気がする。きっと連中の仲間が待っている。
 正面、正面の扉だ。そこから逃げて村へと向かう。
 今度は村人を盾にして、そしてまたさらに遠くへ逃げるのだ。
 この村では失敗した。
 しかし次こそは失敗しない。生きてさえいればどうとでもなる。
 不満なんてどこでも渦巻いているんだ。それをちょっと刺激すれば、馬鹿な民はどいつも正義を叫ぶ。
 カラスの鳴く声が聞こえた。忌々しい、黒い鳥だ。邪魔だ。逃げるのだ。自分は逃げて、あの貴族の連中を――
「ハイ、ご苦労さん」
 誰かの声が聞こえたと思ったら、何かが腹に当たった。
 自分の腹を見る。
 ――ナイフが刺さっていた。
「待ってたぜ、本命さんよぉ?」
 醜い姿の小男がそこに立っていた。自分にナイフを突き立てたのは、そいつの仕業だった。
 無論、キドーである。
「ア、ハハ……、き、君。あのね、ボクを助けてくれないか……?」
「あァン?」
 混乱の極みに至り、ハインケルは自分を刺した男の懐柔を試みるという暴挙に出た。
 彼の中にはここでキドーを説得できれば逃げ切れると考えていた。
 もちろんそれは、机上の空論とすら呼べない絵空事だ。
 何より彼は、
「ああ、アンタみたいのと会話するつもりねぇんだわ、俺」
 彼は相手を間違った。
 キドーの前蹴りをまともにくらって、ハインケルが教会の中に吹き飛ばされる。
「おかえりなさいませ、神父様」
 取り囲むイレギュラーズ。その中でハインケルに出迎えの言葉を向けたのは、こちらに入ってきていた幻だった。
「ボク……、は……、腐った貴族の連中を……」
「ええ、ええ、もちろん言い分は様々御座いますでしょうとも」
 幻が言う。
「結局、手のひらで転がすのを愉しんでいる節もあったが、貴族への怒りは本物だったか」」
 グレイシアが言う。
「ですが将の器がないのではどうしようもありませんね」
 ヘルモルトが言う。
「当然の結果じゃね? 村人全員殺されるとこだったワケだし」
 Trickyが言う。
「煽られ盛り上がる村人への演説はさぞかし愉快であったろうな」
 寝子が言う。
「その罪をここで清算してもらうの!」
 鳴が言う。
「同じ信仰者としては、君の選択は残念でならないよ」
 セルウスが言う。
 そしてキドーを除く全員が、ほとんど同時に声を揃えた。

「「「では死ね」」」

「お~、怖ェ怖ェ」
 教会入り口でハインケルの最期を見届けたキドーが軽く呟きかぶりを振る。
 そして彼は思うのだった。
「やっぱよ、何事も暴力で解決すんのが手っ取り早えんだよなー」

 ――その後の話である。
 翌日、村人は殺された神父とメチャクチャに荒らされた教会を発見し、大騒ぎになった。
 しかし事件は強盗の犯行ということで決着し、蜂起は行なわれなかったということだ。
 事前の情報通り、温和な人間が多い村だったのだろう。
 こうして、事件は解決を見たのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした!
蜂起阻止、成功でございます!
今回は参加していただきましてありがとうございました!

ではまた次回のシナリオでお会いしましょう!

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