PandoraPartyProject

シナリオ詳細

幸せが呼び込む災い?

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 以前、高天京において、とあるヤオヨロズの資産家が『保護』していた少女が攫われた事件が起こった。
 少女の名はルリ=ウェルフェア。
 背に青い翼を持っている『神人』……旅人とのこと。
「なんでも、彼女は幸せを呼び込み、その翼に宿らせるのだそうです」
 此岸ノ辺にて、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が集まったイレギュラーズ達へと説明を行うのは、以前の事件。
 ならず者がこの家の手前の通りで騒ぎを起こし、そのどさくさで資産家宅の離れの壁が破壊してしまい、『保護』されていたルリが攫われてしまった。
 その事件はならず者を壊滅させたニア・ルヴァリエ(p3p004394)、ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)ら、イレギュラーズのチームによって解決したのだが……。
 青い翼を持つ神人の少女の存在は公のものとなり、ルリは高天京や近辺の人々の注目を浴びることとなる。
 ――彼女を囲う物に幸運が舞い込む。
 そんな噂話が民衆の間でまことしやかに囁かれていた。
「実際、資産家である源次さんはここのところ羽振りが良く、離れが破壊された家を豪邸へと建て替えたのだそうです」
 その間、一時的に匿われていた部屋は外からでも良く見える上、ルリ自身も外の街並みを眺めることが多かった。
 おかげでルリを一目見ようと押しかける住民は後を絶たず、源次もできるだけ建築を急がせて彼女が人々の目にさらされぬようにしたのだが……。
「どうやら、不穏な動きを源次さんは察知したようです」
 ――青い翼の少女がいれば、幸運が舞い込む。
 そんな噂話が出回り、ならず者の集団が自身の屋敷を狙っているという情報を源次は従業員から耳にしたという。
 しかも、集団は一つではないようだ。
「襲撃は今日とも言われています。できるだけ早く現地へと向かってあげてください」
 アクアベルは簡潔に説明を終え、イレギュラーズ達へと早急に資産家源次宅に向かうよう願うのだった。


 高天原、資産家源次宅。
 まだ新築でヒノキの香りのするその家には、家主である源次の他、多数の下働きを行う人々が忙しなくあちらこちらへと移動して働いている。
 しかしながら、屋敷の裏手近くにある離れの部屋に匿われた青い翼の少女、ルリ=ウェルフェアは今日も退屈な一日を暮らしていた。
 一応、豊穣で出回っている本や遊戯などは提供してもらえる。
 だが、本は一読すれば十分だし、室内で凧あげやコマ回しなどできないし、カルタや双六などを1人でどう遊べと言うのだろうか。
「また、外を見てみたいですね……」
 その呟きは誰にも聞こえない。
 やってくるのは、食事や余暇を過ごす物品を運んでくる使用人くらいのもの。それも日に2、3度だけだ。
 ……それにしても。今日はことさら屋敷内が騒がしいと、ルリも感じて。
「何かあったのでしょうか……?」
 その時、屋敷前にはチンピラ……屈強な鬼人種の集団が襲撃を仕掛けていたのだ。
「お前達はこの場で押さえろ、青い翼のガキは俺が確保する」
 松梅組を名乗る集団の組長、頬に傷の入った松太郎が剣客の兄弟を引き連れて屋敷の中へと入ろうとする。
 だが、そこに駆けつけてきたのはローレットのイレギュラーズ達だ。
「間に合ったか!」
 屋敷入口で従業員と門を抑えていた源次は、イレギュラーズの到着を喜んでいたようだったが、そこで彼の元へと更なる悪い知らせが入る。
「なんだって、裏にもならず者の集団が……ええい!」
 裏手の門も従業員へと抑えに向かわせたが、間に合うかどうか。
 できるだけ状況をイレギュラーズ達へと手早く伝えたいところだ。
 その裏手側には、屋敷表の騒動に乗じて屋敷の襲撃を企てる別集団の姿が。
「へっ、いいタイミングだ!」
 茶髪の精霊種の青年、岩之助が鼻を鳴らす。
 これはある意味で青い翼の少女がもたらした幸運ではないのかとそいつは考えて。
「野郎ども、一気に行くぜ。裏門を叩き壊せ!」
 部下達へと指示を出し、岩之助は手前へと先端を鋭くした岩を出現させ、裏門目がけて放っていくのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)さんのアクターアクションによって発生したシナリオです
 また、拙作「幸せの青い鳥」の続編にも当たります。
(OPでそちらの情報は簡単に触れておりますので、読む必要はございません)

●概要
 旅人の少女の保護。ならず者2勢力の撃退。

●敵……ならず者
 2勢力が同時にルリさんを狙い、源次宅へと襲撃してきます。
 両勢力はそれぞれ名前を知っている程度であり、連携することはありません。

◎松梅組
 数は15人ほど。ゼノポルタ(鬼人種)の屈強な男性ばかりの人相の悪いもの達です。

〇組長……松太郎
 30代男性。紺の着物を着崩した任侠を感じさせる頬に傷の入った男。
 ドスを操る他、肉弾戦も得意としております。

〇梅次郎、梅彦兄弟
 赤い着物を纏う20代の男達。刀を愛用し、敵とみなした者は全てを切り裂くなかなかの手練れです。

〇組員×12名
 いずれも2~30代男性。
 槍、鉾、薙刀といった長物を使う他、鉄砲も使うようです。

◎岩石団
 数は10人ほど。ヤオヨロズ(精霊種)の若者のみで構成された柄の悪いチンピラどもです。

〇団長……岩之助
 橙色の和服を纏った短い茶髪の青年です。
 岩を纏い、殴り掛かってきます。
 また先端を鋭くした岩を飛ばすこともできるようです。

〇副団長……石造
 灰色の衣服、灰色の髪の青年。岩之助よりは年下のようです。
 多数の石つぶてを弾丸のように飛ばしたり、多数の石を相手の足に纏わせて動きを鈍らせたりして来るようです。

〇団員……9名
 いずれも炎、氷、雷、木といった自然の力を利用して攻撃します。その力はさほど強くありませんが、いずれも相手に状態異常をもたらす為面倒な相手になるでしょう。

●NPC
〇ルリ=ウェルフェア
 首に首輪と背に青い翼を持つ旅人の少女で、ニア・ルヴァリエ(p3p004394)さんの関係者です。戦闘能力は皆無です。
 青い翼を持つ彼女は、幸運、幸せを無意識に呼び込みます。
 今回は源次宅の離れにおり、ならず者達の狙いは彼女を確保することにあります。

●状況
 現場は高天京の街中、ルリさんが保護されている鬼人種宅です。
 イレギュラーズが駆けつけたタイミングで、2つのならず者の勢力に襲われている状況です。
 前回の襲撃で離れの部屋が破壊されたこともあり、家主である初老のヤオヨロズ男性源次は幸運の力でもたらされた富によって家を豪邸へと建て直しております。
 タイミングを見て表から松梅組、30秒ほどの時間差で裏から表の騒動を察した岩石団が源次宅を襲撃してきます。
 無事に両方の襲撃を撃退することができた場合、事後は、ルリさん、源次を交えて今後をどうするか話し合うことができます。
 今後どうなるかはイレギュラーズの皆様の総意、話の付け方次第で大きく変わることと思います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 幸せが呼び込む災い?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月30日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
篠崎 升麻(p3p008630)
童心万華
ヨル・ラ・ハウゼン(p3p008642)
通りすがりの外法使い
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


 豊穣、高天京の街中。
 ならず者に襲撃されているというヤオヨロズの資産家源次宅へと、ローレットイレギュラーズ達は急行する。
「またルリさんの周りでいざこざが……」
 腰まで伸ばした髪を左側で一点留めた『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)がこの状況を憂う。
「前の1件から何となく気にはなっていたけど……やれやれ、こうなっちゃったかー」
 前回に引き続いて今回は5人が参加の状況。外法使いの一族、『通りすがりの外法使い』ヨル・ラ・ハウゼン(p3p008642)もその1人だ。
「話を聞いたけれど、源次さんは下手を打ったね」
 前回の状況を伝え聞き、成人を迎えたばかりの『浮草』秋宮・史之(p3p002233)が主観を語る。
 ただでさえ、今回の保護対象である旅人の少女、ルリ=ウェルフェアは青い翼を持つという珍しい特徴を持つ。青い翼が幸運を呼び込むと民衆に流布されれば、こうなるのは当然だ。
「もう少し、うまいことやればよかったのにな」
「……ったく、流石に迂闊すぎると思うんだけどね」
 史之に同意する猫耳、褐色肌の『君が居るから』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)は、ルリを保護していた鬼人種男性源次に些か呆れを覚えていたようだ。
「世にも珍しい首輪を付けた幸せの青い鳥の少女の保護ですか! クヒヒ! いいですねェ!」
 アルビノの髪で左目を隠した狼の獣種、『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)が笑う。
「それはさぞかし立派な首輪姿な奴隷さんなんでしょうとも!」
 首輪に並々ならぬ異常な執着を持つ彼女は、鳥籠の少女の話を聞き、ドン引きするような妄想を抱いていたようである。
「青い鳥か。鳥自身の事を省みないなら、モノと変わらんな」
 海洋マフィアの若頭、『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)もそんな少女の扱いに辛辣なコメントを口にしていた。
「これが代償、というのでしたら。……あまり、幸せであるとは言い切りたくありませんわねー」
 こちらも褐色肌の海種女性、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は今の源次には幸せが訪れているようには感じられなかったようだ。
「……まぁ、幸せを呼ぶ噂と源次殿の今を見ればこうもなるネェ……人の欲望に底なんて無いしサ!」
 ヨルが言うように、自分にだけ幸せを囲い込もうとした結果がこれであり、幸せを求めてならず者が群がってきたわけだ。
 問題の屋敷と合わせて、一行は正門付近に群がるならず者の群れを視認して。
「ともあれ、今はルリさんの身の安全が第一だね」
 依頼内容の通り、史之が青い翼の少女の保護をと仲間達に確認する。
「ま、依頼でもあるし……なにより、あの子の為だからね。しっかり守ってやるさ」
 知人であるニアにとっても、ルリは保護したい存在だ。
「本人だって、幸せを探す権利がある筈だよ」
 ――今回の1件は、ルリにとってその機会となれば。
 ニアはそう願いながらも、仲間と共にならず者達の撃退に乗り出すのである。


 源次の屋敷の正門を強引に突破しようとしていたのは、屈強な鬼人種の集まり、松梅組を名乗る者達だった。
「お前達はこの場で押さえろ、青い翼のガキは俺が確保する」
「「おお!!」」
 組長松太郎の指示に、組員達が吠える。
「なんとか鎮圧しなければ!」
 ユーリエの言葉に頷ぎ合うメンバー達は松梅組へと駆け出す。
 だが、ユゥリアリアは鬼人種達に突っかかると見せかけ、魔力で作った翅を羽ばたかせて敵を乗り越える。
「あとはよろしくお願いいたしますー」
「あぁ? 待ちやがれ!」
 松太郎だけでなく、剣客である梅次郎、梅彦兄弟がユゥリアリアを追いかけようとする。
「他者が呼びこむ幸運とやらを頼り、利用するってか?」
 そこで、それらへと小柄で長い紫の髪を靡かせた『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)が問いかける。
「幸せを呼び寄せるねぇ。験を担ぐのはいいが、それで人様を攫って幸せになろうってのはちょっと違うんじゃないか?」
 続き、豊穣の農村出身、大きな黒い一本の角を生やす不動 狂歌(p3p008820)もまた松梅組の幹部達へと問いかける。
「現にこの屋敷のジジイはその恩恵に預かってるではないか」
 睨みを利かせて松太郎が主張すると、ギフトで吸血姫化し、茶色から銀色へと髪を変色させたユーリエが相手を睨み返す。
「力ずくで取りに行く幸運は間違っています!」
 ユーリエを含め、正門班はこの場で松梅組を引き止める。
 周囲の組員達も長物を手にし、抗戦の構えを見せるが、そちらにはジョージが前に立って。
「肉弾戦が得意だと言うなら、俺が相手になろう」
「フリック 今 サポートロボ。味方 ヤリタイヨウニ デキルヨウ 頑張ル」
 そして、松梅組の引き付けに当たる『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)がバックアップに当たる。
「そんなモンに縋るテメェ等なんぞに、好き放題やらせる訳にはいかねぇ」
 後方の仲間達の仲間達の存在を感じながらも、升麻は性根の腐った松梅組に苛立ちを隠さず。
「一言で言って、気に食わねぇんだよ!」
「上等だ! 青臭い神使どもが!!」
 こちらの素性をすぐに察した松梅組の連中は、その屈強な身体で猛然と襲い掛かってくるのである。

 それ以外のメンバー達はその間に館の門が僅かに開き、依頼主である源次が自らイレギュラーズを招き入れようとする。
 依頼主に思うことがありながらも、ヨルやあやめ、ニアに史之が素早く中へと入り、使用人に門を閉めてもらう。
「裏手にもヤオヨロズのゴロツキが襲ってきているそうですわー」
 ユゥリアリアが源次から裏口からも強襲を受けていることを聞いていた。
 表の状況も気にはなるが、裏口からルリの部屋まではさほど距離はない為、5人が内側から全力で裏口を目指す。
「連中はこちらが迎え撃ってくるとは知らないので、そこを利用したいネ」
 すでに、裏口側は内側からでも集団が騒ぎながら門の破壊に乗り出していた。
 移動中、あやめは首輪をつけているルリの居場所をギフトによって確認する。丁度、彼女の姿が窓からも確認出来て。
「滾ってきました! 首輪美少女のルリさんの為にこの首塚 あやめ、粉骨砕身致しましょうとも!」
 昂ぶる彼女はさらに妄想したらしく、テンション高く叫ぶ。
「…………」
 ニアもルリの姿を刹那捉え、気にかけながらも裏口へと急ぐ。
 すでに裏口の突破を図ろうとしていた岩石団。団長岩之助は岩を纏って。団員と共に門を破壊すべく殴り掛かる。
「もう一息だ! 叩き壊せ!」
 十分に守るべき方向を確認し、メンバー達はそれを塞ぐよう布陣し、敵が門を破壊するのを待つ。
 ドオオオオオォォォン!!
 門が破壊されたタイミングを見て、ヨルが顕現した怨霊をけしかけ、先頭の団員を執拗に襲う。
「ぐああああっ!!」
「んだあ!?」
 苦しむ団員の姿に橙色の和服を纏った茶髪団長の岩之助が訝しむと、そいつの前方へとユゥリアリアやニアが行く手を塞ぐよう対峙する。
「クヒヒ!!! 柄の悪いチンピラ集団キター! 彼らに首輪を付けたらさぞ映えるでしょう!」
 声高にあやめが叫んで名乗りを上げ、敵を煽ると、さらに史之もまたこう言い放つ。
「無理にさらうなんて外法が通用すると思わないことだな!」
「野郎……!」
「石つぶてで撃ち抜いてやんぜぇぇあ!!」
 忌々しそうに岩之助が歯噛みする横から、灰色一色の副団長の石造が石礫を操り、威嚇してくる。
「思う所はあるが、先ずは阿呆共にお帰り願おうかネ!」
 ヨルは後で仲間と主に、依頼主や保護対象の少女へとどう説得の言葉をかけるか考えながらも、岩石団の撃退に乗り出すのだった。


 屋敷の正面では、任侠の集団松梅組が屋敷内への突入をはかっており、5人のイレギュラーズがその阻止に当たる。
「松梅組の実力見せてやるぜ、オラァッ!」
 長物を操る鬼人種達は鍛え上げた体で楽々振り回し、空気を切って刃を向けてくる。
「おら、来い! 自力で道を切り開く僕等が、幸運に縋るテメェ等をブチのめしてやるよ!」
 前線で切りこむ升麻は組員をメインに煽り、至近から群青色の霊波動を浴びせかけていく。
 自らに甘~いスイーツを用意し、戦いの最中でも美味しくいただくユーリエは、升麻にもスイーツ……豊穣らしくみたらし団子を差し出す。
 彼女は美味しく頂きながらも、戦闘効率を高めながらも組員へとさらに仲間達の攻撃に巻き込まれぬよう立ち回り、さらなる暴力的波涛を発していた。
「馬鹿にきついお灸を据えてやる必要があるな」
 狂歌も組員達をメインに、鎖のついた棘鉄球を振り回して叩き込み、殴り倒そうとしていく。
 重ねるように、フリークライもアタックオーダーによって呼び出した鳥を敵陣へとけしかけ、早くも撃ち抜いた組員を倒し、その数を減らしていた。
 強敵である組長と剣客兄弟の方にはジョージが向かって。
「俺はキングマン。ジョージ・キングマン! 此処をタダで通すわけには行かんな」
 名乗りを上げ、彼は不敵に微笑んでみせる。
「野郎……ぶった切ってやる!」
「さぁ、来い! 貴様ら如きの攻撃で、俺が倒れると思うな!」
 組長松太郎はドスを、剣客兄弟は刀を抜いて迫ってくる。レディを襲おうと企てるそいつらが屋敷に入らぬよう、ジョージは十分引き付け、手加減なしで得意の海洋式格闘術を叩き込む。
 とはいえ、相手もイレギュラーズほどではないが、荒事に慣れた者達だ。
 敵が徐々にジョージの聖域を侵して斬撃痕を刻み込んでいく状況もあり、フリークライは賦活術によって彼の止血に当たっていた。
 合わせ、まだ消耗がさほど大きくないこともあり、フリークライはなおも召喚した鳥を突撃させて攻撃を繰り返す。
 ジョージの負担はかなり大きいが、彼が耐えてくれているうちにと攻撃の手を強めて。
 ある程度仲間への支援を進めたユーリエは、血のオーラを纏わせたIFG……イリュージョン・ファイア・ガーンデーヴァを発動させ、魔力で作成した疑似弓矢を構える。
「いきますよ……」
 ユーリエは美しい幻影の矢を勢いよく放ち、組員を纏めて倒していく。
 升麻がさらに青い衝撃を浴びせ、狂歌が棘鉄球を振り回す。
 そうして、正門班はジョージの抑える組長と兄弟以外、10人余りいた松梅組の組員を叩き伏せしてしまったのだった。

 裏門から強襲を仕掛けようとしていたのは、ヤオヨロズのチンピラどもだ。
 ヨルの一撃で出鼻をくじかれ、岩石団はイレギュラーズに押し出されるような形となり、門の外での交戦が開始する。
「ヤベェ! 妄想が滾るぅ! チンピラヘタレ受けとか最高!」
 テンション高く相手を煽るあやめへとチンピラどもが集まり、自然の力を呼び覚まして放出してくる。
 火炎流に吹雪、落雷に木の葉乱舞。その攻撃は個々の得意攻撃も反映されているのか、実に幅広い。
「俺達に敵うと思ってんのかぁ!?」
「わざわざ裏から襲ってくるなんてね」
 史之もまた、無駄に気位の高い団員達へと打刀『忠節』で乱撃を浴びせかける。
 上手く団員が連れれば、史之は団長である岩之助へと向かう。
 その団長にはすでにニアが張り付く。
 彼女は、寄せては返す波の如く惑わせる精霊の風を叩きつけ、団長の気を引く。
「ガキかァ? 邪魔すんじゃねェ!」
 折角の奇襲のタイミングを潰され、岩之助は苛立ちげに拳に岩を纏わせて殴りかってくる。
「……残念だけど、あたしにそうそう簡単にその手の技が通じるとは思わないで欲しいかな」
 だが、ニアは涼しい顔をして、さらに風を操って敵を煽る。
 この場の仲間達全員を捕捉するように範囲に収めたユゥリアリアは、エスプリ「道征きのキャロル」や氷水晶の戦旗の支援効果を発揮し、仲間の力を高める。
「全力で支援いたしますので、速攻でお願いいたしますわー」
 すると、支援を受けたヨルがさらに怨霊を顕現させ、団員達へと襲い掛からせていく。
 さらに、スキル・オールハンデッド。ユゥリアリアは仲間達の為にと号令をかける。
 門を塞ぐように布陣するあやめに副団長がの石造は石つぶてを叩きつけてくるが、その痛みに快感を覚えつつ彼女はしっかりと鉄拳で反撃を見舞う。
「ここから先は抜かせませんよ?」
「なんだ、こいつ……!?」
 彼女は愉悦の微笑みを浮かべるあやめに、副団長は思わず寒気を感じて身震いしてしまうのである。


 再び、正門側。
 すでに組員が倒れ、残るは組長の松太郎と剣客の梅次郎、梅彦兄弟。
 いずれも、幾多の敵を叩き伏せてきた極道の男どもである。
「お前ら起きやがれ! ……チッ」
 手早く突破して屋敷へと突入するつもりだった松太郎だが、ジョージの煽りに気をとられていた間に部下が倒されたことに気づき、舌打ちする。
 なんとかこの場から突破しようとするが、ジョージがしっかりとついて離れない。
 さらに、剣客兄弟が後方のメンバーを狙おうとすれば、升麻が立ち塞がる。
「どーした、成人もしてねぇ若造を無視する根性無しかテメェ?」
 煽りを入れつつ挑発しながら、升麻はここまで倒れぬしぶとい剣客兄弟へと禍々しい闇と呪いを帯びた拳を叩き込む。
 だが、任侠の男たちも意地を見せ、じっと耐えてみせる。
 依頼者の屋敷の門や塀への被害を考えることなく、棘鉄球を振り回していた狂歌。
 暴風域を作り出し、敵陣へと浴びせかけて松梅組を圧倒していた彼女ではあったが、隙を見計らった剣客兄弟が狂歌へと攻め入り、彼女を素早く切り捨ててしまった。
 フリークライが回復にと動いていたものも、残念ながら間に合わず。
「くっ……」
 嗚咽を漏らしながらも、血を撒き散らして倒れる狂歌。その傷は深い。
 イレギュラーズを1人倒した松梅組だが、イレギュラーズ達は彼らを勢いづかせることはなく、升麻が兄を殴り倒す。
「うおおおおっ!」
 弟が鋭い刃でジョージへと斬りかかるが、彼は攻撃を変えず。
「その程度か?」
 挑発を交えつつジョージは相手のメンツを潰しながら、寄せては返すような波の如く、相手へと接近した彼は波浪が崩れる強烈な一撃を胸部へと叩き込み、弟を卒倒させてしまう。
「なんてことだ。この俺の松梅組がこうもあっさりと……!」
 残るは組長松太郎のみ。
 だが、ここまでコケにされ、敵も黙ってはいない。
 ドスをしまい、素手で殴り掛かってくる松太郎。その剛腕は確かな威力で、ジョージや升麻を纏めて殴り倒さんとしてくる。
「そんなやり方では、幸運には届きはしません!」
 援護に当たるユーリエも組長へとその狙いを移し、赤黒い血で出来た剣を高速作成して横薙ぎに一撃を加えていく。
 それでも、強引にこの場を突破しようとする松太郎は倒れる部下を見やりながらも、当初の目的を優先すべくイレギュラーズの囲いを突破しようとする。
「通しはしないと、言ったはずだ!」
 だが、抑え役を全うするジョージがそれを許さず、しっかりとブロックを続けて。
 仲間の回復を行っていたフリークライだが、全身が傷付き値を流す組長目がけ、召喚した鳥を突撃させ、さらに傷を深める。
 フリークライはある程度仲間達の気力にも気を払っており、メンバーは効率良く敵を攻め立てることができていた。
 交戦が続く中、敢えて仲間から手当てを控えめにしてもらっていた升麻が力を高め、組長目がけて呪刻と奪命の一撃を見舞う。
 渾身の拳を受け、松太郎の身体が大きく揺らぐ。
「お前達の……勝ちだ……!」
 そいつは白目を向き、重い音と砂埃を上げて地面に崩れ去った。
「組長は倒した! 降参するなら今の内だぞ?」
 さらに升麻が目を覚ます組員達へと告げれば、彼らは組長や兄弟の体を抱えて。
「お、覚えてやがれ!!」
 捨て台詞を吐き、そいつらは何処ともなく去っていったのだった。

 裏門付近で岩石団を相手にするメンバー達。
 ユゥリアリアの支援の元、ニア、あやめが主にほとんどの敵を引き付ける。
 主に名乗りを上げるあやめが多くの敵を引き付ける。
 団員は多彩な攻撃を繰り出し、炎に凍結等、様々な状態異常をもたらしてくる。
 だが、個々の威力はお世辞にも高いとは言えず、異常もユゥリアリアの治癒で十分間に合っていたようだ。
 普段から鬼人種に自らの力をひけらかすような連中であり、さほど鍛錬を積んでいるわけではないのだろう。
 あやめがそれらを抑える間、ニアが精霊の風を解き放って正気に戻りかけた団員をさらに引き付ける。
 そいつらへと、ヨルは個別に刹那の疑似生命を向かわせ、団員を叩き伏せていく。
 ヨルもまた、団員の及ぼす異常を振り払いながらの交戦を続けていた。
 イレギュラーズ達の連携は十分。数に劣るメンバー達であったが、すぐにその差を覆し、団員達を地面へと伏していく。
 史之も団員へと乱撃を浴びせて1体を倒しながらも、団長へと告げる。
「いったいどんな育ちをすれば、こんな悪党になるんだろうね、親の顔が見てみたいよ。それとも孤児なのかな?」
「野郎、調子のんじゃねェぞ!!」
 なかなか倒せないイレギュラーズに怒りを撒き散らす団長は先端を鋭くした岩を展開し、素早く投げつけてくる。
 それに貫かれたニアが血を流すが、彼女はまるで怯む素振りを見せない。
「手加減はしてやんないからね。殺しはしないけど、痛い目はみてもらうよ……!」
 そこで、史之が全身の力を雷撃へと変え、刀身を叩きつけて行く。
「ぐああっ!」
 全身を痺れさせた団長へ、ニアは短剣に纏わせた風を振りぬき、一層敵を怒らせる。
 前線のあやめは時折、反撃で団員を叩き伏せつつ、チームの強固な盾となって岩石団を屋敷の敷居すら跨がせない。
 徐々に弱っていく敵は、合間を見たユゥリアリアが氷の突剣から痛みすら感じさせぬ一撃で倒す。
「どこから情報が流れたかは気になりますしねー」
 気づけば、団員達は倒れ、団長副団長の岩石コンビのみを残すのみ。
 敵に風を使った戦いを繰り広げていたニアが副団長石造へと風を纏わせた拳を打ち込み、昏倒させてしまう。
 意識のみを刈り取るニアの一撃。石造も気絶はしていたが、胸を上下させて呼吸はしていたようだ。
「そんなバカな……!」
 自分達の力が優れていると疑っていなかった岩石団団長。
 再度、拳に岩を纏わせて殴りかかってくるが、あやめがしっかりと抑えて鉄拳で反撃を浴びせた直後、攻撃を集中させた史之がまたも全身全霊の一撃を雷撃として叩き込んで。
「ウソ、だろォ……!?」
 最後の最後までイレギュラーズの力に敵わぬことを認めぬまま、団長岩之助は意識を失ってしまった。
 なお、倒れた敵へとユゥリアリアが事情聴取していたのだが。
 岩石団に限らず、この家に青い翼の少女がいることは近辺には周知の事実。
 とりわけ、特別な情報ルートがあったわけではないとユゥリアリアも判断したようだった。


 松梅組、岩石団の双方を撃退したイレギュラーズ達は、正門側へと集まり、依頼主である源次へと直接報告する。
「そうか、ご苦労だった。……報酬は後で使いの者に渡させよう。では帰ってよいぞ」
 安堵の表情を浮かべる源次だが、イレギュラーズとしては個々からが本題だ。
「…………」
 ニアはルリをどうにかしたいと考えている。ただ、一番大事なのは本人の気持ちである。
 とはいえ、それを押し通すことができるかは周囲の環境による。依頼人である源次と穏便に話し合い、ルリが自由になれる環境を整える必要があるだろう。
「源次氏、ちょっと良いかな?」
 話を切り出したジョージは、依頼前にほとんど話ができなかったことを理由に、依頼主の意図を確認する。
「行き場がないというのでな。私が保護してやっておるのだ。あの娘もさぞ感謝しておることだろう」
 思った以上に横柄であり、明らかに自分の利益を重視して青い翼の少女ルリを保護したと感じさせた。
「なるほど。だが、過度は幸福は災いを生む。今回のようにな」
 源次に物申したいと考えるメンバーも多く、あやめが前に進み出て。
「貴方は『ルリさんのご主人様』としての資質なしです!」
「なっ……!?」
 カリスマを働かせたあやめの辛辣な言葉に、源次も思わず驚く。あやめも敢えて悪役を買って出て、源次へとそのまま叫びかける。
「源次さん! 衣食住を提供した位で「保護」した? 言語道断! 現に彼女を2度も守り切れてない! さらに言えば彼女の幸せを考えてない! 一生軟禁でもする気ですか?」
 あやめは歯に衣着せぬ物言いでさらに叫ぶ。
「奴隷の福利厚生を考えない主など「ご主人様」失格です!」
「ぐぬぬぬ……」
 それに、フリークライも同意を示す。
(源次 ルリ 軟禁 財目的。ソレデイテ 迂闊。ルリ 噂 ナノニ 羽振リ 隠サズ 転居セズ 豪邸 建築。欲 制御 下手)
 現状、言葉にはしないが、フリークライはこの先も源次は同じことを繰り返すと疑わず、彼は自力での対処は不可能であり、ルリは飛び立つべきだと考える。
 その為、フリークライもまずは源次を説得することにして。
「ルリ 幸セ 呼ビ込ム 翼 宿ラス。ソレ 幸セ 無カラ産ム 違ウ」
「ぐう、お前までワシに意見するか……!」
 イレギュラーズの言葉に、源次は顔を真っ赤にする。
 あまり依頼者を怒らせると、悪評を広めかねられないが……。
「幸セ吸イ込ム 幸セ移動。等価交換。プラマイゼロ。幸セ 大キイ 比例 不幸 大キイ」
 フリークライも言葉を選び、現状を源次に再確認させようとして。
「源次 大丈夫? 次モ コノ次モ ソノ次モ ズットズットズット」
 つまり、フリークライは憶測を織り交ぜて事実を告げ、源次にこの先もまた今回のような不幸が幾度も訪れると気づかせ、不安にさせようとしているのだ。
 こうすることで、前回恩義で留まったルリが迷惑をかけずに出ていけるようにというのが彼の狙いだ。
「ぐぬう……」
(思ったよりはうまく説得できそうダネェ)
 前回は運が悪かったが、今回は明らかにルリを狙った襲撃。ヨルも源次が重なる事件に思うことがあったのは間違いないと察して。
「幸不幸は表裏一体、彼女がもたらした幸せで富を得るのは良いが今回の様に襲撃は何度も起こるだろうネェ……」
「きっと今後もこのような襲撃があるでしょうし、あるいはもっと酷くなると思いますわー」
 ユゥリアリアも合いの手を入れる。
 それが続けば、周りから煙たがられるわ、ならず者や国のお偉方から目を付けられるわ……。
「……とてもとても楽しそうな日々になりそうだネェ……それでも保護するのかなぁ?」
 ヨルはいい笑顔を浮かべながら、源次に問いかける。
「また襲撃されればどうなるか……。いや、効果は実証済みだ。しかし……」
 ぶつぶつ呟きながら、損得勘定を考え始める源次。
 ある意味で商魂逞しい依頼主の姿に、イレギュラーズもかなり呆れていたようだ。
「幸せは自分の手でつかみ取る物。他人にもたらされ続ける幸運は、いつしか空虚なものとなるでしょう」
 そこで、ユーリエが源次を諭す。
「人生山あり谷ありという言葉があります。苦行を乗り越えてこそ……幸運があるのではないでしょうか?」
 苦節を乗り越えたその先に、富、栄光、名声が待っているはずだとユーリエは語るが、源次は小難しい顔をしたまま唸り続ける。
「……このままにはしておけねぇよな。何かこう、代替となるもんで気を逸らせないもんか」
 そんな中、升麻は前向きにこの状況を打破できる手段はないかと模索する。
「例えば、ルリを模した『幸運を呼ぶ御守り』を作って、それを売り込むとかさ」
「……それだ!」
 思いもしない提案に源次が目を見開く。
 自分の家に青い翼の少女がいるという情報は知れ渡っているのだ。その恩恵をさらに預かるというのは、ある意味で商機ではないのか。
 もちろん、それは一層、襲撃にさらされる危険も伴う。
「依頼人さん。ちっとばかし相談があるんだけど」
 そこで、ニアが源次へと声をかける。
 誰かの幸運が誰かの不幸になるというのは、充分身に沁みただろうと確認をとってからこう提案する。
「本人が望むならだけど、ルリの事はあたし達イレギュラーズとローレットにまかせてもらえないかい?」
 とはいえ、損得勘定で物事を考える源次のこと。ニアもただとは言わない。
「あたしの身分を証明してくれる紹介状も見せようか?」
 ただ、ニアが提示するのは豊穣ではまだ地名度も低いラサの商家のもの。海洋でもようやくといった認知度の豊穣の民には少し厳しい。
「むう……」
 とはいえ、ニアが本気であることは源次も分かったようである。
「いっそ、奪われてしまったと風説を流して、どこか誰もルリさまの事を知らない場所へ行くしかないのではないかしらー」
 豊穣内でなく、ローレット本拠のある本土で、ルリを保護する形をとることをユゥリアリアも提案する。
 イレギュラーズ達がルリ本人を説得する間、源次はどうすべきかとあれこれ思案することになるのだった。

 そのルリ本人の説得もまた、イレギュラーズ達は頭を悩ませることになる。
 なにせ前回、ルリ本人がイレギュラーズの提案を断り、自ら源次の保護を受けることを選んだのだ。
 幸運を呼び込む癖に、ルリ本人は幸運の恩恵を受けることができない。
 それはあまりにもふざけていると升麻は考えて。
「こんなんじゃ、ルリが報われねぇ」
 人の欲に翻弄され、しまいには自分の意思など関係なく弄ばれる……。
 ――このままじゃ、そんな結末になるのは目に見えている。
 ――そんなのはダメだ。絶対にダメだ。
 内心で升麻はそれを防ぐ為には、自分達のように力を持つものがしっかりと対処し、彼女を良い道へと導く必要があると結論付ける。
「それは、必ず果たすべき義務だ。目を逸らしちゃいけねぇ」
 升麻の意見に、皆頷く。彼女をこのままにしておくわけにはいかない。
 どたどたと屋敷の廊下を走り、彼女のいる部屋へと真っ先に駆け込んだのはあやめだ。
「ルリさん! 貴方も駄目です! 自身の能力をちゃんと理解してない!」
「え、えっ……?」
 突然押しかけて来たイレギュラーズに、ルリも困惑してしまう。
 そこで、追いついてやってきたイレギュラーズ達の中から、知人であるニアは簡単に事情を伝える。
 ルリを狙ってこの屋敷にならず者達の襲撃があったこと。そして、その撃退の依頼を源次より受けてイレギュラーズがやってきたこと……。
 事態を飲み込めたルリは頷き、話を聞く態勢に入ったところで、改めてあやめの言葉にこう返す。
「わたし……皆に幸運を……」
 ルリは自らの力を十分自覚している。
 あやめはルリの首輪に更なる妄想を膨らませたのか、感情をさらに爆発させつつ畳みかけるように言い放つ。
「幸運? 笑止千万! 貴方を巡って主に迷惑を掛けてる時点で幸運じゃない、不運ですよ! つまり貴方は不幸を呼ぶ青い鳥だという自覚を持つべきです」
「ひっ……」
 それはそれで、彼女にとっては悲劇だ。
 ならば、自分はいない方がいいのではとすら考えかねない。他メンバーに抑えられ、あやめも少し言い過ぎたかと考えたようだ。
「正直なところ、どこへ行っても同じ目に合う気がするよ」
 史之もまた、現実を突きつけるように話す。
 ルリ自身も今回の一件も踏まえてそう感じていたはずだと史之はほぼ確信していたのだ。
「だけど、源次さんを止めなかったルリさんにも非はあると思うよ」
 それだけの力があるルリだ。それに応じた心構えは最低限持っておくべきだと史之は認識を改めるよう促す。
(初対面の俺がどうこう言うのはちっと無責任だしな)
 目覚めた狂歌は本人の意思に任せようと考え、傷の深さもあって安静にしていた。
 ただ、このままではまた同じようなことが起こるだろうと、近場にいた使用人へとこう吹聴する。
「彼女の幸せを呼び込む能力はデマである」
「幸せと同等の不幸を呼び込む」
「源次の成功も幸運でなく実力だ」
 噂話が好きな使用人も珍しくはない。あっという間に街中に噂は広がる事だろう。

 改めて、ルリの部屋。
「わ、わたしは、誰かに保護されるしか……」
 この力ゆえに、ルリは皆に狙われる。だからこそ、誰かを幸運にする代わりに鳥籠の中にいることを彼女は選んでいるのだ。
 やや落ち着きを取り戻したあやめがそんな冷めた彼女の考えを見透かして。
「何より……その諦観の表情が頂けない」
「…………」
 言葉を詰まらせるルリをあやめは諭す。誰かを幸運にしたいのならば、まずは時運が幸せになるのが義務だ、と。
「望みをいいなさい。迷惑を掛けてるのです。我儘言うなど今更ですよ」
「ウェルフェア嬢は、どう生きたいか。望みがあるなら、我が侭だろうと、言うというといい」
 同様の意見を持つジョージもまた、その能力が利益をもたらすのであれば、ルリ自身が受け取るべき正当な対価があると主張する。
 すでに、狂歌が吹聴し始めていたが、源次が得た資産は彼の事業の成果であることが知られればいいのだ。
「ルリモ 幸セ ナッテホシイ カラ」
 フリークライも自らの感情を織り交ぜ、ルリを説得する。
 すでに仲間が厳しい言葉を投げかけていることもあり、彼は幾分か優しく諭せそうだ。
「ダカラ オ願イ 鳥サン。青イ鳥。幸セノ 青イ鳥。青イ鳥 最後 飛ンデイク 聞イタカラ」
 フリークライはスキルのオーダーで呼び出したのは、ルリとおなじ青い翼を持つ鳥。
 それは瑠璃の周りを飛び交い、何かを囁いてから外へと飛んでいく。
 それは、鳥籠の中にいるルリに、幸せを探しに行こうよと誘いかけているかのようだった。
「ずっと一人は寂しいよね。余と友達になって、一緒に外に出て街を色々な物を見て歩かないカナ?」
 ヨルもまた笑顔を向けて、ルリを外の世界に出るよう促す。
「余が欲しいものは幸せじゃなくてルリちゃんと言う友達だヨ」
「どうでしょう? この箱庭よりも、もっと広い場所へ羽ばたき、一人だけじゃなくて色んな人を幸せにする羽根になりませんか?」
 ユーリエもまた人助けセンサーを使用して、助けを求めるように呼び掛ける。
「でも……」
「もっと信用できる人のところへ身を寄せようよ。幸い、ここには領地持ちのイレギュラーズがたくさんいる」
 何なら、自分のところにおいでと史之は誘う。
「もし良ければ、だけど。あたしの里にでも来るかい? これでもあたし、そこそこ無理が言える立場だからさ」
 ニアもまた誘うと、ルリが戸惑いながらもメンバー達の顔を見回す。
 ほとんど部外者が来ることもない為、里の中は自由にできる。ちょっとした手伝いくらいはお願いするだろうけれどと、ニアは一言付け加えて。
「……自由ってのは責任が伴うし、面倒で重いモンだけどさ。あたしは、飼い猫に甘んじるより良かったと思ってる」
「あ……」
 そこまで考えてくれているニアにルリが少しだけ顔を綻ばせる。
「だから。あんたがそれを望むなら、あたしにできる限り手伝うよ。それだけ、覚えておいて」
「決めるのはルリさんだ。そこは忘れないで」
 ニアと史之が自分で考えるよう促す。今度こそ、自分の翼で鳥籠から羽ばたく為に。
「……わかりました。ニアさんの、里に……いきます」
 真摯に自分を説得してくれる知人であるニアが言う里に、ルリは興味を示す。
「暮らしになれたら、あなたの領地、にも、行ってみたい、です」
 ようやく、本音で自分の希望を口にしたのだったルリに、イレギュラーズ達は皆、心の底から笑顔を見せたのだった。

 その後、源次の元から巣立つことに決めたルリを連れ、イレギュラーズ達は幻想へと戻っていく。
 一方で、置き土産として残したルリの人形はこの近辺で「幸運の御守り」として売り出され、ちょっとした人気商品となったそうである。

成否

成功

MVP

ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣

状態異常

不動 狂歌(p3p008820)[重傷]
斬竜刀

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは戦闘での活躍と合わせ、事後の説得にも当たった貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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