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シナリオ詳細

嵐の中で敵を討て! 今年のゴリョウ米守るため!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゴリョウ米を守るため、イレギュラーズは脅威に立ち向かう
 ビュウビュウと、恐ろしく強い風が吹き荒ぶ。何もかもを吹き飛ばすのではと言う猛烈な台風は、豊穣を荒らし回り、ゴリョウ・クートン (p3p002081)の領地もその暴風圏内にあった。
 さらに悪いことに、ゴリョウの領地に迫るのはそれだけではない。どこからともなく現れた巨大な巻貝、超巨大ジャンボタニシがゴリョウの領地に迫りつつある。
 台風による稲の倒伏や冠水、超巨大ジャンボタニシによる食害。二つの危機が、収穫を間近に迎えたゴリョウ領の田を襲おうとしていた。このままでは、今年の米の収穫は全て台無しになってしまう。
「このままでは……よくないですの……。ゴリョウさんの……お米が……」
 ゴリョウの恋人として収穫を楽しみにしていたノリア・ソーリア (p3p000062)が、不安そうな表情を見せる。だが、その時――。
「今年のゴリョウ米がダメになるかどうかの瀬戸際です。お手伝い、させてもらいましょう」
 ゴリョウ宅の中に、六人のイレギュラーズ達が入ってきた。その中の一人、新田 寛治 (p3p005073)が高らかに告げる。
「はい。仕入れ先がダメになってしまったら、私は困ってしまいます」
 シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ (p3p000996)が、寛治に続いた。
「鉄帝の食糧事情を改善するために、ゴリョウ君のお米は私達も取引したいの」
「収穫が台無しになれば、その分飢える人も増えるでしょう。そのような状況、見過ごすわけにはいきません」
 クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク (p3p007997)と彼岸会 無量 (p3p007169)も、それぞれの事情からゴリョウ米の収穫を守り抜く意志を露わにする。
「我らがこうして集まれたのは、僥倖じゃな。これだけの人数がいれば、超巨大ジャンボタニシとやらとて討てよう」
 クレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)が、この場にいる面子を見て自信たっぷりに笑う。
「ぶはは、こいつはありがてえ。台風ばかりはどうしようもねえが、これなら何とかなるかもな」
「その台風も、どうにかなるかもしれないのです」
「「「な、何だって!?」」」
 七扇から委託を受け、救援要員として派遣されてきた只野・黒子 (p3p008597)の言葉に、ゴリョウをはじめとしたイレギュラーズ達は驚愕した。
 黒子が委託元の役人に聞かされた所によれば、このような激甚災害には祟り神――八百万の怨霊――が関わっている可能性が極めて高いという。そのため、元となっている祟り神を討って鎮めれば、台風は勢いを落とし、消滅さえする可能性もあるとのことだ。ただし祟り神を討つのは困難であるから、対応を誤ると超巨大ジャンボタニシも止められずじまいで終わりかねないと言う。
「それじゃいっちょ、超巨大ジャンボタニシをぶっ倒して、田んぼの様子を見てくるか!」
 事態にどう対応するかの相談を終えると、ゴリョウ達は強烈に吹き付ける風の中、超巨大ジャンボタニシの元へと向かうのだった。この危機さえ乗り越えられれば、今年も無事にゴリョウ米の収穫を迎えられると信じて――!

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。EXリクエストのご指名、ありがとうございます。ジャンボタニシは生まれ故郷の川でピンク色の卵をよく目にしたものです。懐かしいですね。
 さて、今回のシナリオは超巨大ジャンボタニシの撃破が成功の最低条件ですが、台風による風雨にどう対応するかで稲の被害状況が変わります。方針次第では難易度が大きく上昇しますので、対応についてはよくよくご検討下さい。

●成功条件
 超巨大ジャンボタニシの撃破

●失敗条件
 超巨大ジャンボタニシのゴリョウ領への侵入

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ゴリョウ領まで約1キロ弱の田園地帯。時間帯は夜で天候は大嵐。ただし敵が超巨大であるため、ちょっとした灯りがあれば暗視がなくても戦闘へのペナルティーは入りません。ただし松明の類いは激しい風雨で消されてしまいます。
 風が強すぎるため、イレギュラーズ達の機動力と命中と回避にペナルティーが入ります。機動力については、地上にいる場合は-1、飛行する場合(低空飛行も含む)は-2となります。命中と回避へのペナルティーについても、飛行している場合はより大きくなります。

●超巨大ジャンボタニシ ✕1
 突如豊穣に現れた、全高20メートルほどのジャンボタニシです。ゴリョウさんの領内の田んぼを目指して全力移動しています。
 超巨大ジャンボタニシの全力移動中、その前方50メートルにいる場合は巨体に弾き飛ばされたり轢き潰されたりして大ダメージを負うことになります。これは【必中】で命中し、ライトヒットであっても高HPの盾役で無い限り一撃で戦闘不能となります。
 基本的にはイレギュラーズ達を無視しますが、ダメージが蓄積されてイレギュラーズ達へのヘイトが高まればイレギュラーズ達を攻撃する可能性があります。遅くとも19ターン目を迎えるまでにこの状態にしないと、失敗条件を迎えることになります。
 その巨体からHPは膨大であり、特殊抵抗は極めて高く、また殻も厚く硬いため防御技術も極めて高くなっています。一方、命中は大味であり、回避はほぼ皆無です。

・攻撃手段
 前脚 物至範 【弱点】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】【飛】
 突進 物中貫 【必中】【移】【防無】 全力移動中の前進の戦闘バージョンです。

・超巨大ジャンボタニシに対して、無効となるもの
かばう(※1)、マーク、ブロック、【飛】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】【足止】【泥沼】【停滞】【麻痺】【呪縛】【石化】【混乱】【狂気】【魅了】【怒り(※2)】
 ※1 前脚による攻撃を除く
 ※2 イレギュラーズ達への攻撃を行うようになってからは有効

・風雨により効果が半減するもの
 【火炎】【業炎】【炎獄】

●祟り神 ✕1
 今回の台風を引き起こしている祟り神です。超巨大ジャンボタニシの上空30メートルに陣取っており、超巨大ジャンボタニシの移動に合わせて移動します。イレギュラーズから攻撃しなければただの台風ですが、攻撃されればイレギュラーズを敵と認識して攻撃してきます。
 命中とHPが極めて高く、一方で回避、防御技術、特殊抵抗に関しては皆無です。ですが、霊体をベースとしており、かつ非常に強力な怨霊であるため、物理攻撃やBSは一切無効となります。
 祟り神の撃破は困難ですが、撃破すれば稲の倒伏や冠水の心配は無くなります。しかし、祟り神に攻撃を行う場合、シナリオの難易度はHard相当まで上昇します。
 なお、祟り神の情報については、このシナリオで調査することは出来ません。

・攻撃手段など
 暴風 神/至~超遠/域
 【恍惚】【飛】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】【足止】【泥沼】【停滞】
 マーク・ブロック不可
 【飛】無効
 BS無効
 物理無効

●水位調節について
 祟り神を撃破しない場合、超巨大ジャンボタニシの撃破後にゴリョウさんがリーダーとなって田んぼの水位調節を行わなければ、稲の倒伏や冠水によってゴリョウさんの稲への被害は甚大なものとなります。
 なお、水位調節を行った際の倒伏や冠水による被害の程度は、行動可能なイレギュラーズの数によって変動します。全員行動可能である場合、冠水は完全に防げますが、それでも多少の倒伏は発生するものとします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

  • 嵐の中で敵を討て! 今年のゴリョウ米守るため!完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
彼岸会 空観(p3p007169)
クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)
成果を伝う者
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
只野・黒子(p3p008597)
群鱗

リプレイ

●田に迫る脅威、迎え撃つイレギュラーズ
 イレギュラーズ達が『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の宅に集まり、超巨大タニシの元に向かうべく出発するまでの間。
 ゴリョウは大急ぎで田畝の水位調整について指示書を用意し、他のイレギュラーズ達に向けてレクチャーを行った。何しろ、如何に稲を冠水させることなく深めの水位を保ち、台風による倒伏を防ぐかが、今年のゴリョウ米の収穫を左右するのだ。しかしゴリョウだけでは手が足りないというわけで、他のイレギュラーズにも水位調整を手伝ってもらうことにしたのだ。
「特にオメェさんには期待してるぜ」
「ええ、任せて頂戴」
 そうゴリョウに応えたのは、『成果を伝う者』クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)だ。一度目にし、読み、聞いたものを忘れることのないクリスティーナが水位調整の方法を完璧に記憶してしまえば、指示を出すゴリョウが二人いるようなものとなり、効率的に水位調整を行うことが出来る。
(いとしのゴリョウさんの、お米が、大ピンチですの……いつも、手塩にかけてらっしゃる田んぼが、ダメになってしまったときのことを思うと……わたしには、もう、いてもたっても、いられませんの!
 こんなときには、不惜身命……ゴリョウさんの、お力になりますの!)
 ゴリョウと恋仲の『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は、ゴリョウの心中を慮りつつ、自身の中にある固い決意を秘めていた。
(クートンさんの作るお米は大層美味です。それがもし食べられないとなればお得意様等は落胆されるでしょう。
 此度はまだ、被害を抑えられる目がある。であれば、精一杯務めさせて頂きましょう)
(意気込んで来たはいいものの、今回は環境も悪く、敵も強力です。
 慎重に、見極めながら戦わないと……美味しいお米のためにも!)
 ゴリョウの米を守るためにとゴリョウ宅を訪れた『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)と『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)もまた、その収穫を損なう脅威を退けるべく内心で意を固めている。
(七扇から救援を任された以上は、何としても成功させるまでなのです)
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)の態度はビジネスライクではあるが、事態に対応する意志は他の者達より何ら劣ることはない。むしろ、仕事であるからこそ必ず成功させねばならないのだ。

(この水田は実に興味深いのう。
 海洋でも土地によっては稲を収穫はするが、塩害やらでそう石高が上がるわけではない。
 どうやら豊穣は米の栽培に適した地のようじゃな。然らば交易に於いて主要な作物として認識しよう)
 超巨大ジャンボタニシの迎撃に向かう道中、『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は周囲の水田を見ながらそんなことを考える。だが、その思案は間もなく打ち切られた。迫り来る超巨大ジャンボタニシの影が見えてきたからである。
「――って、何じゃあれ。……大きすぎん?」
 近付くにつれどんどん巨大となる影に半ば呆然としながら、クレマァダは独り言ちた。
「……いるんですねえ。豊穣にも特定外来生物が」
 普段のスーツ姿ではなく、作業服姿となっている『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は何処か興味深そうにポツリと漏らす。もっとも、こんな超巨大ジャンボタニシが何匹もいたら豊穣は滅茶苦茶になってしまうのだが。
(ともあれ、まずは目の前の個体を駆除と行きましょう)
 寛治は眼鏡をクイッとしてその位置を整えると、改めて気合いを入れながら戦闘態勢を整えた。

●超巨大ジャンボタニシは進む
「どれだけ殻が固くても、衝撃を徹してしまえば――」
 最初に超巨大ジャンボタニシに仕掛けたのは、黒子だった。超巨大ジャンボタニシの右側方に回り込むと、意志力をエネルギーとした衝撃波を放つ。超巨大ジャンボタニシの動きは止まらないものの、ガイン! と鈍い音がして確かに衝撃は殻の中に徹った。
「あぁもう、固ったいのう!」
 波が押し寄せては引き、また押し寄せるように遠距離から連続で拳を超巨大ジャンボタニシに叩き込んだのはクレマァダだ。その殻の固さにうんざりしたようにクレマァダは叫んだが、それでクレマァダの闘志が萎えたりすることはない。クレマァダは再度攻撃を仕掛けるべく、構えを取った。
「大きくても巻き貝と同じ構造なら……狙うは殻口の上部、殻の向こう側にある内臓群」
 寛治が放った魔弾は命中し、殻など無いかのように殻の中へと吸い込まれていった。狙いどおりに中で跳弾するまではいかないものの、超巨大ジャンボタニシは一瞬その動きを止めた。
「市場のおばさんは急所を一発で抜くらしいですが、こちとら素人ですからトライ&エラーですね」
 最大の結果こそ得られなかったものの、特に悔しがる風でもなく、寛治は次はどう撃つかの検討を頭の中ではじめた。
「此処を貴方の終着点と致します、御覚悟を」
 妖刀『大妖之彼岸花』を携え、無量は超巨大ジャンボタニシへと迫る。その身に鬼の如き心と力を宿した無量の刃は、固く厚い殻を易々と貫いて深々と突き刺さった。もう一度、一瞬だけ超巨大ジャンボタニシの動きが止まる。
「穿て術釘――麻酔飛棘!」
 それに乗して、シズカが釘状の魔法弾を放つ。魔法弾は超巨大ジャンボタニシの殻に突き刺さったが、状態異常で超巨大ジャンボタニシの動きが鈍る様子は見られなかった。
「さすがに、いきなり効いてはくれませんか」
 巨体故に、麻酔作用の回りも悪いのだろう。ならば、効くまで何度も続けて撃ち込むまでだった。
「この先に進ませるわけにはいかねぇんでな!」
 ゴリョウは南瓜の形のランタンを掲げながら、大型のガントレットである四海腕『八方祭』の掌部分を超巨大ジャンボタニシに向ける。ドン! と言う轟音と共に、砲弾の形をした呪いの結界が、超巨大ジャンボタニシに放たれた。砲弾は命中したものの、超巨大ジャンボタニシは展開された結界を振り払うかのように進み続けた。
(準備はこれでヨシッ、だけど、戦闘はからっきしなのよね、私)
 戦闘の影響が周囲の田畝などに及ばないよう既に保護結界を展開しているクリスティーナだが、本業は諜報であるため戦闘は得手とは言えなかった。むしろクリスティーナの役割は戦闘後にこそ大きいが、だからと言って何もしないわけには行かない。
 クリスティーナは自身の精神を機械のように精密なものへと整えると、超巨大ジャンボタニシに遠距離攻撃を仕掛けている者を中心に、その精神を高揚させ鼓舞していった。
(お願いですの……力を、貸して欲しいのですの……)
 ノリアは他の仲間から百メートル以上離れた場所で、加護の力を持つ貝殻を胸に抱くように握る。貝殻はノリアの願いに応えるように淡く光ると、ノリアに力をもたらした。
 これで、ノリアの準備は整った。超巨大ジャンボタニシが進んでくれば、体内に蓄えている海水を思い切り叩き付けてやるつもりだ。
 一方の超巨大ジャンボタニシは、イレギュラーズ達の攻撃など意に介していないかのように、ただひらすらゴリョウ領へと前進していった。

●超巨大ジャンボタニシ、応戦に移る
 最初こそ状態異常を寄せ付けることなく、イレギュラーズ達の攻撃などほぼ何処吹く風であった超巨大ジャンボタニシだったが、戦闘が進みイレギュラーズ達の攻撃を受け続けるにつれ、受けているダメージの蓄積が大きくなり、様々な状態異常に蝕まれていった。所々ひび割れた殻の、欠けた部分からは炎がチロチロと燃え上がっている。一方、冷気と麻酔に蝕まれた身体の動きは明らかに鈍っていた。
 そしてついに、このままゴリョウ領へ突き進み続けるかと思われた超巨大ジャンボタニシは、イレギュラーズ達を無視し得ぬ排除すべき敵と認識した。ゴリョウ領まで残り四百メートル地点でのことである。
「うぐっ……いいでしょう。敵に覚悟を求めた以上、私も覚悟を見せねばなりません」
 超巨大ジャンボタニシは突如側方へと向き直ったかと思うと、イレギュラーズ達の中で唯一接近していた無量に叩き付けるように、前脚を薙いだ。それをまともに腹部に受けてしまった無量はゴポリ、と血を吐いたが、凄絶な笑みを浮かべて『大妖之彼岸花』の柄を握り直して反撃を浴びせた。

(後は早く水位調整に移れるよう、速やかに倒すだけなのです!)
 その意思を込めて、黒子は殻の欠けている部分を狙い衝撃波を放つ。衝撃波は超巨大ジャンボタニシに狙いどおり命中し、欠けた部分の周囲の殻を粉砕した。パラパラと、破片が飛び散っていく。黒子は同時に、超巨大ジャンボタニシを引き付ける予定のゴリョウの位置を確認すると、まとめて攻撃されないように距離を取った。
「ようやく足が止まったか。これで、コン=モスカの武をとくと見せられるというものじゃ」
 クレマァダは超巨大ジャンボタニシとの距離を一気に詰め、二つの”波”を宿した拳を殻に叩き付ける。一度目の”波”が殻の中に道を作り、二度目の”波”を遮らせずに中身に至らせる。刹那、超巨大ジャンボタニシの動きが止まる。
「今度は、上手く行きそうです」
 わずかな隙を衝いて、寛治は魔弾を放つ。ガンガンガンガン、と弾丸が殻によって跳弾する音が響き、超巨大ジャンボタニシの内臓は大いに痛めつけられた。
「成程、この感じですね」
 試行錯誤の末に感覚を掴んだ手応えに、笑みを浮かべる寛治。
「こちらも全力で行きますよ!」
 ここからが本番と、シズカは戦い方を攻勢を強めるものへとシフトする。次いで放たれた魔力の弾丸は、殻の欠けた場所に次々と命中し、そこから覗く肉を抉っていった。
(例え倒れようとも、攻め続けるだけです)
 既に気力を使い果たしている無量は、戦い方を殻に構わず斬りつけるものから、殻の脆くなっている部分を狙うものに変えていた。黒子の衝撃波によって欠けた場所を狙い、渾身の力で鍔まで刀身を突き立てると、刃を回転させて超巨大ジャンボタニシの身を削っていく。
(海水は、これで最後ですの……!)
 ノリアは身体の中に蓄えている海水を残らす解き放ち、猛烈な勢いの水流として超巨大ジャンボタニシにぶつける。超巨大ジャンボタニシの殻のひび割れはますます大きくなり、その巨体がぐらっと微かに揺れた。
「ようやく、本来のタンクとしての仕事だな!」
 不可侵の、閉じた聖域を自らに纏わせたゴリョウは、超巨大ジャンボタニシを引き付けるべく金色の目からじっと視線を送る。その視線は超巨大ジャンボタニシに十二分以上の不快感を与え、その意識をゴリョウへと向けさせた。
(超巨大ジャンボタニシの退治、上手く行ってるといいのだけど)
 味方への支援で気力を使い果たしたクリスティーナは、既に戦闘から離脱してゴリョウ領へと向かっていた。戦場で出来ることがなく、ゴリョウから特に詳しくレクチャーを受けた以上、ゴリョウの田の水位調整を行うのが今自分の為すべき事と判断したからだ。

 超巨大ジャンボタニシはゴリョウに向けて突進し、ゴリョウは天狼盾『天蓋』を構えてその突進を受け止める。
「ぐっ……こいつは、何遍も食らうとやべぇな」
 直撃を避けたにもかかわらず、盾越しでも凄まじい衝撃がゴリョウを襲う。この後を考えると倒れられないだけに、ゴリョウは内心で冷や汗をかいた。

●この身を捧ぐ(ただし一部)
 超巨大ジャンボタニシがゴリョウ領への移動を止めてイレギュラーズに攻撃を仕掛けた時点で、イレギュラーズ達は半ば勝ったと言える。回復手段がない以上、超巨大ジャンボタニシが倒されるのは時間の問題だった。しかし、それが早いか遅いか――盾役であり後の仕事を残しているゴリョウが倒れずにいられるかはその後を左右する大きな問題だった。
 結果としては、ゴリョウがパンドラを費やしたところでノリアがゴリョウを庇いに入って守り抜いた。ノリアもパンドラを費やすに至ったが、ノリアの受けたダメージの一部は超巨大ジャンボタニシにも返されたため、他のイレギュラーズ達の攻撃と合わせて超巨大ジャンボタニシの生命力はますます削られることになった。

 そうして超巨大ジャンボタニシを倒したイレギュラーズ達は、田の水位調整を行うべくゴリョウ領へと急ぎ戻っていった。
(祟り神は、祀ればしずまるものだと、聞きましたの……)
 途中で足を止めたノリアは後ろへと振り返ると、自身の尻尾に包丁を入れて切り離していく。
「どうか、おしずまり、くださいですの……わたしの、自慢の、つるんとしたゼラチン質のしっぽを、生贄として、ささげますから……!」
 懇願と共に、ノリアは天にいる祟り神に向けて切り離した尻尾を両手で天に捧げる。するとびゅう、と一層強い風がノリアの周囲で吹き、尻尾を天高く舞い上げた。それと引き換えにしたかのように、風雨がはっきりと弱まっていく。
「台風が、弱まった……?」
 ゴリョウをはじめ水位調節に勤しむイレギュラーズ達がその原因を知るのは、しばらく後になってからのことである。

●料理のお時間
 風雨が弱まったとは言え、イレギュラーズ達は夜明けまで田畝の水位調整を行うことになった。しかし、その甲斐あってか冠水も倒伏もゼロと言う結果に終わる。多少は発生すると見られていた倒伏が皆無だった理由は、ゴリョウの代理たり得るクリスティーナが先行して水位調節に従事していたことと、ノリアが自身の一部を捧げて台風の勢いを弱めたことであった。

 しかし、朝になってもイレギュラーズ達はまだ休めない。超巨大ジャンボタニシの解体が待っていたからだ。
「……いや我も貝は喰うが、こんなに巨大な。お主ら正気か?」
 クレマァダが、呆れたように尋ねる。だが、その問いを意に介してないように、ゴリョウ、クリスティーナ、寛治と言った面々は明らかにそれを楽しみにしていると言った様子で、テキパキと超巨大ジャンボタニシの殻を砕きはじめていた。
「食べるのですね……」
「食べるつもりなのですね……」
 無量と黒子はその様子にそれぞれつぶやきつつも、そのつもりならと手伝いに入る。正気かと問うたクレマァダも、興味自体はあったこともあってか、観念した風に解体に参加した。

 殻を砕いて中身を露わにされた超巨大ジャンボタニシは、身と内臓とに解体されていく。サイズがサイズだけに、泥を吐かせる必要が無いのは手間がかからず楽だった。確保した身は、ゴリョウ、クリスティーナ、シズカが中心となって料理していく。
 身が大量にあるためか、思いつく限りの超巨大ジャンボタニシ料理がどんどんと作られていった。まずは寛治のリクエスト、酒蒸し。酒はゴリョウの田で採れた米を醸造した拘りの一品だ。甘い吟醸香が、鼻腔をくすぐってくる。
 軽く炙った身を米と共に炊き込んだ炊き込みご飯。炙った身の歯応えと活性化された旨みを、柔らかいご飯が包み込んでハーモニーを奏でる。
 身にパン粉をまぶして油で揚げた、超巨大ジャンボタニシのフライ。サクサクの衣の食感とコリコリとした身の食感の、コントラストがたまらない。
 蒸した身と貝出汁と味噌を溶いた、超巨大ジャンボタニシの味噌汁。貝出しと味噌の競演に、特に寛治、無量、黒子は郷愁を誘われた。
 貝出汁をベースに、塩で味付けしたラーメン。塩で味付けしたことにより海を思わせるスープは、細麺とよく絡み合って舌の上でワルツを踊る。トロトロと脂が舌の上で蕩けるチャーシューも、ラーメンには欠かせない。
 同じく貝出汁をベースにしたスープとビーフンを使った麺料理、螺蛳粉。本家は臭みと酸味が強く好き嫌いが分かれるものだが、それらを抑えるゴリョウのアレンジによって食べやすくなっていた。そして適度な酸味が、食べている者の食欲をさらに刺激する。
「これは、たまりませんね」
 コリコリとした身を噛むと、口の中に美味い酒の味わいが広がる。寛治は、酒蒸しを存分に堪能していた。
「ラーメンも螺蛳粉も捨てがたいのです」
 両方平らげた黒子は、空になった器を前に優劣を付けられない様子だ。
「……案外、いけるものですね。しっかり食べて、怪我を治しましょう」
 おっかなびっくりで超巨大ジャンボタニシ料理を口にした無量だったが、その味に驚きつつ、回復に必要な滋養とばかりにフライをおかわりする。
「……なんと美味い。いや米も美味いし貝も美味いが、何より腕前よ。
 お主、どこに店を構えておる?」
 炊き込みご飯に感極まった様子なのは、クレマァダだ。仕事に使いたいと、ゴリョウの店を聞き出そうとした。
 食べる側の様子に、作り手のゴリョウ、クリスティーナ、シズカも満足そうな笑顔を見せる。
 ――未だ残る大量の身は、小分けにして干され、美味い出汁が取れる新たな特産資源と化した。

「――全く、無茶をしたモンだ」
「ゴリョウさんのお米が守られたから、いいんですの……♪」
 他のイレギュラーズ達が帰り、ゴリョウとノリアだけとなったゴリョウ宅。二人は寄り添いながら、残った超巨大ジャンボタニシ料理を楽しんでいた。自身の一部を切り取って捧げたことを咎めるような口調のゴリョウに、ノリアはそっと腕を組むと、甘えるようにその身体を預けるのだった。

成否

成功

MVP

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

状態異常

ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚
ゴリョウ・クートン(p3p002081)[重傷]
ディバイン・シールド
彼岸会 空観(p3p007169)[重傷]

あとがき

 リクエスト、どうもありがとうございました。まさかグ●ル●介ばりに超巨大ジャンボタニシを食べるとは、リクエスト文からは見抜けなかったため盛大に驚くことになりましたorz それを踏まえてあのOPの作りで良かったのかと反省するところはありますが、ともかく楽しんで頂けてましたら幸いです。

 MVPは自分の尻尾を贄に捧げたノリアさんにお送りします。まさか祟り神に向けてそんなプレイングが飛んでくるとは想像もしていませんでした。その意気を買った結果、台風の勢いが落ちたため倒伏の方も皆無という判定としました。

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