シナリオ詳細
ハクアマグナの翡眼
オープニング
●つがいの秘宝
ジャズピアノの流れるカフェの奥。分厚いカーテンを潜ったさきに、20人がけの個室席がぽっかりと開いていた。
その奥にある椅子ひとつきりを、線の細い老人が埋めている。
一目見ただけで高級品と分かるモノクルをつけ、白い髭を上品に伸ばした紳士。彼は、ラサ傭兵商人連合の中ではなかなかに名の知れた大富豪である。
数人のボディーガードを壁際に立た一流のスーツを一揃え身につけた有様を見るだけでも、彼の富がうかがい知れようというものだ。
だがより引き立たせていたのが、彼がテーブルに置いたひとつの箱。
「よく来てくれた。ローレット・イレギュラーズ。
依頼内容は聞いていると思うが……。
まずは、こいつを見せておく必要があるだろうな」
紐を解き蓋を開けば、きらりと光る翡翠色の宝石。
赤子の握りこぶしほどはあろうかという宝石をたたえたそれを、老人は白い絹ごしにそっと持ち上げ、テーブルへと下ろした。
ごとんと重い音をたてたそれは、一言でいうなれば『眼』であった。
宝石を中心として黄金の装飾がまぶたのように上下をつつみ、綺麗なアーモンド型を形成している。
だが、それだけで秘宝とまでは呼ばれまい。
老人が『眼』の上に手をかざし、右から左へ撫でるようにスライドさせると宝石周辺の黄金が生きたまぶたのようにゆっくりと閉じ、宝石の輝きをぴったりと包み込んでしまった。
「これは『ハクアマグナの翡眼』という秘宝でな。
一年間両のまなこに見つめられた者は宝石に魅了されると言われておる。
この『右目』は我が家に伝わるものだが、はるか昔何代も前の当主が『左目』を失ったという。
今回、それを取り戻すのが君たちの仕事というわけだ」
老人はハクアマグナの翡眼を箱にしまい直すと、顔にシニカルな皺をつくって苦笑した。
「この特異性を試そうというわけではない。元々自分のものであったのだから、両方を手元に置いておくのが据わりが良いというだけのことだ。心配には及ばんよ」
さて、ここからは仕事内容の話だ。
老人が席を立ち、代わりに『黒猫の』ショウ(p3n000005)が仕事の資料を広げていく。
「あの人は『何代も前の当主』なんて遠回しな言い方をしたけどね、『左目』は古代遺跡の奥にあるっていう宝物庫にしまい込まれているそうだ。
一体何代前の話なんだか、本当に先祖が持っていたのかも分からないけど……ソコは俺たちの気にするべきトコロじゃあない。そうだよな?」
ショウは肩をすくめ、そして肝心の『古代遺跡』について説明し始めた。
「ここは『バルトロデモザ墓所』。
まあいわゆる古墳だね。
古代魔術によるトラップやガーディアンが内部を守っているから、一人や二人で挑む場所じゃあない。
今日集まったメンバーで力や知恵や道具を結集して、このダンジョンを攻略する必要があるわけだ」
ダンジョンの最奥まで到達し、待ち構えているという最後の関門……ストーンガーディアンとミイラ兵を倒し宝物庫へと至るのだ。
「おっと、宝物庫にはくれぐれも注意してくれ。
『ハクアマグナの翡眼』はもちろんだけど、そのほかにも山ほどお宝が置いてあるけど……『ハクアマグナの翡眼』以外のお宝をひとつでも持って出ようものなら遺跡ごと地中深くに閉じ込められることになるそうだ。
欲深い盗掘者を防ぐための最後の罠、ってトコロだ。
ここはひとつ、風景と雰囲気を楽しんで帰ってきてくれ。命より大事なお宝は、多分ないだろう?」
- ハクアマグナの翡眼完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月21日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●泥棒の資格
「さてダンジョンアタックござる。ワクワクものですな!」
グローブをした手のひらにばしばしと拳を収め、『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)は遺跡の入り口に仁王立ちした。
ここはラサの一角にあるという古墳。古墳といえば王の墓だが、この場所がいかにして作られたのか、そして誰が収められていた筈だったのか、何もかもが分からぬまま現代の砂漠に鎮座している。
古い歴史を感じさせる彫刻が扉に描かれ、それが少しずつ仲間達の力によって開かれていった。
「未踏の地とは言え、さいわい多くの情報が手に入っておるゆえ、準備万端に臨むのは比較的容易。おのおのがた、そのようにお願いし申すヨ」
「そういえば、目的は依頼人の家宝……宝石よね? 綺麗な翠玉ではあったけれど……おもえばなぜここにあるのかしら?」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は開かれた扉から一歩ふみこみ、石と砂の香りを吸い込んだ。
「兎角、できるだけ安全を確保しながら進むとしましょう。
命あっての物種だもの。それでも、面白そうな依頼だとは思うけれどね?」
「確かにな」
半獣状態を解き、運んできた旅の荷物を入り口近くへとおろす『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)。
「パズルのピース、失われたページ、欠けた片目。
揃えたくなるのが人情であり、それを叶えるのが私達商人だ。
さぁ、少々荒っぽいが仕入れに行こうじゃないか」
このバルトロデモザ墓所には、『ハクアマグナの翡眼』という宝物がおさめられているらしい。
それを手に入れ、持ち帰ることが今回の任務だ。
ラダは荷物の中から愛用のライフルを取り出すと、ウッドストック部を握った拳でゴンと叩いた。
同じく自分の刀をとりあげ、かちりと刀身を引いてから改めて鞘に収める至東。
ラクダから下りた『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)も、それを見て尻ポケットに入れていたグローブを両手にはめた。
「『宝』には心惹かれるものがあるが……。
さすがに墓所って呼ばれているところのものを手あたり次第持っていくのは、ちょっと申し訳ない気も出てくるな」
「ちょっとわかるわね。ラサの古墳に手をかけるのは気後れするわ」
背負っていた鎌から刃覆いを外す『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)。
「けど、必要な事なら……やらなくちゃよね。
なるべく荒らし過ぎないように気をつけたいところだけど」
「まあ、やろうと思っても難しいだろうがな」
情報屋の話によれば、バルトロデモザ墓所に収められた宝をひとつでも持ち出そうものなら遺跡ごと地中深くに閉じ込められることになるそうだ。
その唯一の例外が『ハクアマグナの翡眼』であるという。
「それだよなあ。他のお宝には一切手を付けちゃいけねーってのも、なんともケチ臭ぇ仕掛けの遺跡だぜ……。
何考えてそんな設計にしたんだかな? 昔の人ァ。
ま、先に分かってる時点でだいぶジョートーなんだけどさ。魔物も多いみたいだし」
『須臾を盗む者』サンディ・カルタ(p3p000438)は荷物の中からカードデッキケースを取り出し、腰のベルトに四つほど装着した。
『砂の幻』恋屍・愛無(p3p007296)も彼らに共だって擬態状態のまま通路へと入っていく。
「興味はあるが持って帰れないのであれば興味もない。貰えるモノで我慢しておくとするさ。各所でのトラップでの対応が肝なのだろうが。さて、どうしたもんかな」
「一般的な物理トラップやマジックトラップなら得意なんですがねぇ」
『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は糸目をゆるめて首をかしげた。
「遺跡に宝物庫ですかぁ…………いやぁ、楽しそうです。
大規模トラップのせいで持って帰れない事を除けば最高だったでしょうねぇ。やる気が落ちますねぇ」
「仮に、だが」
修也は一度眼鏡をクロスでぬぐうってから装着。
「この墓所にはもともと『ハクアマグナの翡眼』が収められていなかったとしたら、どうだ」
「……と、いいますと?」
杖を突いて床や壁の様子を叩くカイロ。
「『木を隠すなら森の中』と言うだろう」
「あ、あー。そういうことな」
準備を終えたサンディがぽんと手を叩いた。
「宝を持ち出せば遺跡ごと沈められるって評判の遺跡に置いておけば、誰も持ち出さないってわけか。逆にソイツだけは持ち出せると知ってる奴じゃ無いと持ち出せない。ちょっとした暗号金庫みたいなもんだな」
「そういうことだ。他にもいくつか、バルトロデモザ墓所の呪いがかかっていないお宝があるかもしれない、が……」
「ええ。命を賭けてまでするワンチャンストライではありませんねえ」
今回は依頼報酬で満足しておきますよ、とカイロは口角をあげた。
●神秘の甲殻
石のにおいとたいまつの明かり。
カイロは身をかがめ、あとに続く仲間達に『止まれ』のハンドサインを出した。
「早速の歓迎ですねえ。修也、そこから右に一歩ずれてください」
「こうか?」
言われるままに移動したあと、カイロは金色の小さなナイフで透明な糸を切断した。
するとカイロのすぐ横、そして修也のさっきまで立っていた場所から槍が飛び出し、天上にがつんとぶつかる形で止まった。
「古典的な罠ですが、こういうものがこの先大量にあると思った方がいいでしょう」
「罠は数で攻めるものなのか?」
修也の問いかけに、カイロは口角だけを上げた笑顔で応えた。
「それこそ『木を隠すには森の中』ですよ。古典的で単純なトラップを大量に仕掛けると、巧妙な罠を見逃す。そうですね……何か魔力のこもった小さなものはありませんか。できれば沢山あるといいですね。投げながら歩くと魔術感知系の罠を空振りできます」
「ああ、それなら……」
修也は何かに使えるだろうと考えて持っていた施術済の五円玉棒をポケットから取り出した。
一見したところ紐で結束した小銭だが、修也が念入りに『祓い』の術を施したエンチャンテッドコインだ。
カイロは『グッド』と言って手を合わせた。
「今回も面白いダンジョンねぇ……」
慎重に進むイレギュラーズたち。
そんな彼らがたどり着いたのは広い正方形の部屋だった。
投げたコインに反応はなし。
しかし碁盤目状に敷き詰められた正方形の床タイルには古代文字がひとつづつ書かれていた。
「ちょっとまって。この部屋、少しおかしいわ」
ヴァイスは集団の前に出ると、タイルに手を触れつつゆっくりと耳を近づけた。
「やっぱりね」
魔術によって茨のムチを形成すると、地面のあちこちをランダムに叩く。
すると軽い衝撃にもかかわらずタイルが壊れ、真っ赤な溶岩めいたものがその下を流れているのが見えた。
ううむと唸る愛無。
「正しい手順でタイルを踏まなければここに落ちる仕掛けか。僕らはそんな手順は知らないぞ?」
「なら、無理にでも整えるしかないわね」
ヴァイスは地面にあてた手に魔力を流し込み、意図を察した愛無もまたタイルに手を触れて黒い粘液状の何かを広げていった。
まるで古い家屋にびっしりとはったツタのようにタイルを補強すると、細い一本道を無理矢理作り出す。
「これで解き方がわからなくても進めるわ」
「少々ずるいが、それはお互い様だな」
タイルの道を抜けると、そこからは真っ暗な細道が続いていた。
それまでは不思議な魔法でたいまつが燃え続けていたが、ここから先は真っ暗闇。どこから現れるかもわからない敵におびえなければならないということだろう。
「だが『そうなる』と分かっていれば問題ない」
愛無は頭を黒い粘液でフルフェイスヘルメットのように覆うと、ぴこんと飛び出た赤い球体を発光させた。
きょろきょろと闇になじんだ目で周囲の様子を観察する。
「隊列全体を照らすには光源が足りないな。誰か何かもってきているか」
「ふむ、これでどうでござろう?」
至東が手甲をかざしてぺかーっと光らせた。
「そんなものをどこで?」
物珍しそうに見るカイロに、至東は『拾いものでござる』とどこか自慢げに振って見せた。
「とはいえ、照らしきれない闇もおおいもの。二人ほど暗視を担当してもらえると助かるのだが……」
「はい。そう言うと思いました」
カイロは首から提げていたゴーグルを装着。
一方でラダも暗視ゴーグルを装着した。
「何か来るぞ。この音と臭いは……?」
優れた五感にサイバーゴーグルの暗視効果を加え、ラダは周囲を警戒するようにライフルを構えた。
「臭い? ん、たしかに、これは……」
愛無はスンと鼻を鳴らすような動作をすると、ラダとは逆方向へとあえて構えた。
「敵意が近づいてきたら知らせてください」
「オッケー! エネミーサーチをはしらせとく。ステルスするやつもいるかもしれないから似たような感情をサーチしといてくれ!」
カイロとサンディはラダたちとは別の形で奇襲に警戒。
『来るぞ!』と叫んだサンディに応じてラダと愛無が素早く索敵。
ラダが開く壁から飛び出してきたミイラ兵を狙撃すると、愛無はその一方で黒い杭を投擲。
別の場所から奇襲を仕掛けようとしていたミイラ兵を壁に打ち付けると、仲間達に『走れ』と指事を出した。
仲間の掲げた光を追って、走る……。
走り抜けた先は宝物庫部屋だった。
「あら? ガーディアンを倒す必要があるんじゃなかったかしら?」
エルスは一足飛びに目的の場所に来てしまったのかと首をかしげ、宝物庫をゆっくりと見回した。
「いや、ここは目的の場所ではなさそうでござる。『ハクアマグナの翡眼』が見当たらない」
同じように部屋を観察していた至東。一通り調べ終えるとラダへと振り返る。
「ここは引き返すべきかもしれぬな?」
「ああ、そうだな。持ち出し禁止の宝なんて、いくつあっても無意味だ」
ラダはため息をついてきびすを返……そうとして、ぴたりと足を止めた。
宝物庫には無数の宝が美しく飾られている。
壁にかかった沢山のアクセサリー。
スタンドにたてられた黄金の剣。宝石のはまったライフリングマスケット銃。
「これは……すごいな……」
伊達に商人をやっているわけではない。ラダはついつい銃に手を伸ばし――た瞬間その手首をがしりとサンディとモルダーがとらえた。
「おいしっかりしろ! こいつやべえぞ!」
サンディなにをもって『やべえ』と称したのか、彼の能力を把握していた他の仲間はすぐに察した。
「エネミーサーチが反応してる! 敵だ!」
銃のストック部分におさめられた宝石がぎょろりと動き、節足動物のように金色の足をはやしたかと思うと羽を鳴らして飛び上がった。
魔力をこめた手刀で素早くたたき落とすヴァイス。
「この部屋自体が罠よ。宝石には触らないで。誘惑の魔法がかかっているわ」
「厄介な」
身構える修也。
だが誘惑の魔法に勝てなかったエルスや至東がついついアクセサリーや刀に手を伸ばしてしまう。
それを無理矢理取り押さえつつも、修也は掌底のフォームで魔力衝撃を放って宝石虫を破壊した。
「早く部屋を出るぞ。カイロ、そっちを頼……」
至東を羽交い締めにしていたカイロが、ピラミッド状に積み上がった金塊を見てハァハァしていた。
思えば一番この手の罠にかかりそうな人だった。
「カイロ?」
「……大丈夫ですよ。惑わされたりしません。宝石に惑わされない強い心で……心で……」
ハァハァいいながらも、(そして何度も振り返りながらも)カイロは至東たちを引きずって部屋からの脱出に成功したのだった。
「ここまで来れば安全ね……」
エルスと至東は遺跡内にあった部屋へと転がり込み、仲間達の協力で部屋の安全を確認。
一応警戒しながら休憩をとることにした。
長時間の戦いは神経を摩耗させる。最後の最後で『おなかがすいたから』といった理由で敗北してはたまらないだろう。
適切な休憩はそれだけ任務の成功率を上げるのだ。
それが上質なものであればなおよい。
と、いうわけで。
「まさかこんな所で呈茶や料理をするだなんて思わなかったわ。
まぁでもこれらはいつもしてる事! いつも通りすればいいのよね!」
「然様。なのでコレを着るでござる」
至東はさも当然みたいにメイド服を取り出してきた。
二度見するエルス。
……かくして、至東は和風メイドで、エルスは妙にアキバアキバしたメイド服で日本茶や紅茶、ビスケットといったお菓子を仲間達に配ることになったのだった。
「ねえ、これって本当に着る必要あったの……?」
「アイドルには必要では?」
「アイドル!?」
二人の献身(?)のかいあって、仲間達は気力充分で最後の部屋へと挑むことができた。
つまりは――
●全力全開
沢山の宝物が壁際に飾られた、それは広い広い部屋だった。
中央の台座には四脚有翼の獅子石像が配置され、部屋に入ったイレギュラーズたちにむけて吠えることで威嚇をはじめた。
だが、それがなんだというのだろうか。
カイロは杖を手に取りあえて獅子へと突撃。吹き付けてきた炎に包まれるが、懐から取り出した金貨から資本魔術を展開して火傷を瞬時に補填。相手の魔術基板を攻撃的に買収していくことで浸食を試みた。
「もうしばらくはもちそうですね。ヴァイス、エルス。こちらを手伝って貰っても?」
カイロの支援にヴァイスたちが走る一方で、部屋の各所に配置された箱からミイラ兵が大量に出現。
「こっちは任せて貰おう。……どんな仕事もこなす。それが傭兵というものだ」
愛無はてくてくと間へ割り込むように歩くと、全身をたちまちのうちに黒い粘液に包み込んだ。
槍を振り回し襲いかかるミイラ兵の攻撃を巨大な黒い爪で弾き、尻尾部分を変形させた蟹のようなはさみで頭を粉砕していく。
そんな愛無へ襲いかかろうと剣を振りかざすミイラ兵たちへ、至東(メイドスペシャル)とサンディがそれぞれ割り込みをかけた。
「今宵の剣はひと味違うでござるよー」
至東は膝バンドにさした刀を膝をあげた姿勢からしゃらんと抜刀。ミイラの首を素早く切断すると、返す刀で相手の肉体を真っ二つにした。
一方のサンディはカードホルダーから何枚ものカードを抜いて一斉投擲。
愛無へ集まるミイラ兵たちだけを的確に攻撃すると、カードのうち一枚をナイフのように持ってミイラ兵を斬り付けた。
「たいして数は用意できないみたいだな。一気にかたづけるぞ!」
「まったく大層な護衛だ、どこぞの王でも眠ってるのか――ラサに、王がいた試しがあるかは知らないがね」
ラダは素早く高所へと駆け上るとライフルを構えた。自分の腕を台にした個性的な構え方で、愛無の引きつけに応じなかったミイラ兵を選んで的確に一体ずつ頭を打ち抜いていく。
とはいえ相手もミイラ兵。頭がなくなってもバランスをうしないつつ剣を振り回すという行動にでた。
「いかにも墓所に出現するものとしては違和感のない相手だな。
盗掘に来てるような俺が言うのもなんだが。彷徨ってないでさっさと成仏してくれ」
修也はそんなミイラ兵の背後にするりと回り込み、掌底を打ち込んでいく。
グローブから発動した衝撃の魔術がミイラ兵を打ち抜き、そのまま光の白刃となって他のミイラ兵たちを切り裂いていく。
その一方で、石像の獅子ストーンガーディアンはヴァイスたちと戦闘。
吹き出す炎がヴァイスの展開する草花を燃やすが、それ以上の発達速度で獅子の手足へとつたが巻き付いていく。水分をもった植物は案外燃えづらいものだ。
「もう、そんなんじゃあだめよ? 倒れてなんてあげられないわ!」
うっすらと浮かべた笑顔でパチンを指を鳴らすと、ツタが沢山の花をつけて不思議な香りをふりまいた。
広がった魔法の成分が獅子の肉体を徐々に腐食させていく。
「さぁて……あなた達には悪いけれどこれも仕事なの。ごめんなさいね。せめて一瞬で逝けるよう尽くすわ」
エルス(ミニスカメイドスペシャル)が指輪の封蝋をスゥッと指でなぞるとたちまちのうちに両手で抱えるほどの鎌へと変化した。ブレード側面に彫り込まれたどこか残酷な雰囲気のある封蝋がきらりと光った……かと思えば、エルスの姿はその場からフッと消えていた。
獅子がその様子に慌てた次の瞬間、背後に描き出された血の魔方陣からエルスが出現。伸びた氷のペンデュラムが首や足に巻き付き、鎌による斬撃が獅子の首を切り落とした。
崩れ落ちる獅子。
エルスがふと壁際を見ると、沢山の宝物に混じって『ハクアマグナの翡眼』がそっと置かれているのがわかった。
優しく手をかざし、そっと撫でるように振る。すると金のまぶたが閉じ、宝石をぴったりと閉ざしてしまった。本物に違いないだろう。
「綺麗なものね……ラサにはこんなお宝があったのだと歴史を感じるわ」
こうしてイレギュラーズたちは目的の宝物だけを持ち出して墓所をあとにした。
ラサにはこうした幻の秘宝がいくつも眠っており、それを求めた大冒険の扉もまた眠っているという。
そんな冒険への扉がこれからも開いていく……そんな予感が、ふと彼らの中に湧いたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――依頼達成!
GMコメント
■オーダー
ハクアマグナの翡眼(左目)を持ち帰る。
■探索判定『アクシデントカード判定』について
ダンジョン内では様々なアクシデントがおこり、そのたびにPCたちが能力や道具を駆使して対抗していきます。
各自プレイングで非戦スキルやアイテムの使用を宣言し、ダンジョン内で発生するであろう【アクシデントカード】に対抗していきます。
対抗できるのは『一能力につき一回だけ』です。
宣言するスキルやアイテムを分担ないし持ち寄ることで、多様な状況に対抗していきましょう。
例えばアクシデントカードに『罠×2』とあった場合、1人の『罠対処』だけでは足りないのでもう一人に持ってきてもらうか、いっそのこと罠をライフで受けたり、仕えそうなアイテムや『こんなこともあろうかと』で平たく対処するといったやりくりが必要になります。
特にこのルールにおいて『こんなこともあろうかと』は一枚限りのワイルドカードなので、どこで使うかを吟味しましょう。
プレイング上では罠カード1枚に対して罠対処スキル一回きりで対抗したように見えますが、実際は沢山の罠に一人の罠対処で次々と対抗していく扱いになっています。
こうした各人の役割分担によって、ダンジョンが攻略されていく扱いとしてリプレイに描写されます。
●アクシデントカード
・罠×4:戦力低下の罠。発動すると以降全員の戦闘時にペナルティがつき続ける。
→罠対処なら確実に対抗可能。ハイセンスなどの探索系カードなら一定確率で対抗が可能。
・暗所×4:暗い場所でモンスターが襲ってくる。対処できないとペナルティが発生。
→発光やランタン系アイテムを使うか、暗視能力者が率先して戦うなどして対処しよう。
・奇襲×4:モンスターが奇襲を仕掛けてくる。
→エネミーサーチや他探索系能力で対抗可能。
・欲誘う宝石:壁に埋まった真っ赤な宝石が侵入者を誘惑する。もし誘惑に負けて手に取ってしまうと恐ろしいダメージを受けることになる。
→『平常心』『感情封印』『ブロッキング』スキルがあると完璧。それらを持っていない仲間をガッてやったり羽交い締めにしたりして止めてあげよう。
・安全地帯×2:料理や呈茶などのスキルがあると全員のペナルティを一つ解除できる
■ストーンガーディアンとミイラ兵
石でできた四脚有翼の怪物と鎧と剣を装備した大量のミイラ兵が『最後の大広間』に出現します。
ミイラ兵はHPや回避がものすごく低いので範囲攻撃や【怒り】BSが非情に有効です。これを引きつけてなぎ倒す係をつけておくと有利に戦えるでしょう。
ガーディアンは炎の魔術と物理攻撃によって攻撃してきます。全体的に固くてタフなうえ『不吉無効』『精神無効』『怒り無効』といったカタさがあるのでマークやブロックを駆使し連携して戦うとよいでしょう。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
Tweet