PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<gemel>天籟エフギウム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラサの砂を踏む

『次に行く場所も是非イレギュラーズに来て欲しいんだ。君も一緒にどう? 旅とまではいかないけれど、クロエも連れて少し遠くへのお出かけ、なんてさ──』

 そんな手紙が『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)のいるローレットへ届けられたのはつい数日前の事。友からの手紙を受けて、リヴィエールはイレギュラーズたちと共に砂漠をひたすら歩いていた。同封されていた地図によると、そろそろのはずである。
「……む。あれか?」
 顔を上げた『焔の因子』フレイムタン(p3n000090)は巨大なドームに似たものを見て目を細める。砂が吹くここではしっかり口元を覆わなければ、砂を食べることになるだろう。
「みたいっすね。……あ、」
 リヴィエールが声を上げると同時、向こう側から何かがやってくる。パカダクラの背には誰か乗っているようだ。
「リヴィエールー!!」
 大手を振ってこちらへ叫んでいるのはパサジール・ルメスの民であるレーヴェン・ルメス。目にも口にも砂が入りそうであるが、おおよそ彼女は気にしていなさそうである。
「皆もお疲れ様、さあもう少しだよ!」
 満面の笑みを浮かべたレーヴェンはドームの方へとイレギュラーズたちを誘う。彼女に聞きたいことはあれど、ここではゆっくり話すこともできないと一同は彼女に従った。

 ドームの近くまで辿り着くと何やら複数のテントが張られている。中には様々な種族がいるようだが、少なくともレーヴェンのような『商人』はいない。
「学者の方っすね?」
「そう。この遺跡の謎をずっと解き明かそうとしてるんだ」
 レーヴェンに紹介された学者たちがぱらぱらと頭を下げ、再び手元へ視線を戻す。どうやら古代文書の解析を行っているようだ。遺跡の内容が記されているであろうそれらを丹念に読む学者からレーヴェンは視線をドームへ移し、皆へ行こうかと促す。ドームにはよくよく目を凝らせば人1人分が通れるほどの通路があり、その先には小規模ながらも広場があるようだった。
「この遺跡……いや、正確に言えば外殻らしいんだけれど。ここの中にはまた遺跡が入っているんだ」
「遺跡の中に遺跡っすか」
 そう、と頷いてレーヴェンは広場の奥へ向かう。そこに安置されていた2つの宝玉は怪しげな光を湛えていた。イレギュラーズたちが身構えるもレーヴェンは「何も起きないよ」と苦笑する。
 一見お宝にも見えるが、つい先日までこの外殻が開かれることはなかったのだと言う。故に盗賊などの被害に遭うこともなかったということだが、学者たち曰く『これが外殻を解く鍵である』らしい。
「私はその辺よく分かんないんだけれど……ほら、左右に通路が伸びてるでしょ」
 レーヴェンの指し示した広場の側面には、確かに道らしきものが伸びている。やはり1人分の通路となっているらしい。まだ外殻の全貌を読み解けたわけではないが、それぞれの通路先に宝玉を持って行くことで何かが起こるという予想が立てられているそうだ。その為どのような仕掛けがあるのかを表の学者たちが調べており、その話を聞いて通路の先へ向かう形となる。
「あ、私も片方には付いていくよ。いいものあったら見ておきたいし」
「それならあたしはもう片方っすね!」
 レーヴェンが宝玉を手に取って横目に笑みを浮かべると、リヴィエールもまたもうひとつの宝玉を取る。くるりとイレギュラーズの方を向いた彼女は「よろしくっす、センパイ!」と笑顔を浮かべた。

●Side:リヴィエール
「――で、レーヴェンにはフレイムタンが着いてるけど、自分が足手まといになるのが不安だから俺?」
「そうっす」
 亮さんでも不安っすけど、と茶化したリヴィエールに『月天』月原・亮 (p3n000006)は溜息を吐いた。
 パサジール・ルメス――それは特定の住処を定めぬ流浪の旅。放牧を中心にキャラバンを伴いのんびりと過ごす風の如き存在だ。レーヴェン・ルメスは商人だ。パサジール・ルメスには多数の商人が存在している。一風変わって居るのは寧ろ、リヴィエールの方だろう。
 気の向くまま、思いの向くままに街と街を転々とするパサジール・ルメスの中でもローレットという『場所』に居を構え、定住する気で過ごしているのである。それ故に、パサジール・ルメスとローレットの架け橋になっていることは彼らからすれば実に喜ばしいのだろうが……。
「……リヴィ」
「はい?」
「楽しそうだなあ」
「勿論っすよ。だって、久しぶりの『冒険』にワクワクしないはずがないっすよね!
 レーヴェンは『宝玉を持って道を進めば良い』って言ってたっすけど、トラップもあるでしょうし、学者の調べた危険そうな道はレーヴェンに任せて……」
 リヴィエール曰く『年長者が率先して謎に挑むのがパサジール・ルメス流』らしい。ちなみに、嘘だ。
 リヴィエールの言葉に小さく笑った学者の男達が羊皮紙に小綺麗な字で書き示した情報は先遣隊として傭兵伴い右側の道を進んだときの情報らしい。
「ははー、ガーディアンが立っていた所から先には進めなかったんですね。
 って事は、右側はシンプルだ。その最奥を目指せば良いってことっすか」
「成程。ま、謎は積もるほど有るだろうけどさ、言ってみようぜ」
 はいっす、とリヴィエールは頷きイレギュラーズを振り返る。
「ってなわけで、センパイ。作戦会議しつついくっすよ! 目指すは『この手渡された宝玉』をどうにか出来そうな場所!」

GMコメント

 夏あかねです。注意事項見てくださいね。

●注意事項
 当シナリオはラサに発見された『謎の遺跡』の探索依頼です。
 同じ遺跡の左右別々の道に進むために、<gemel>の冠を冠する2シナリオは排他処理がございます。
 <gemel>にはどちらかしか参加することが出来ませんので予めご了承ください。
(どちらか一方に受かった場合は、もう片方には参加できません。※予約段階は関係ありません)

●成功条件
 遺跡外壁の仕掛けを踏破する
 (右側ルートの最奥に到達し、仕掛けの作動を止める)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●右の道
 リヴィエール曰く『レーヴェンが進む道より武力よりっす!』とのことですが謎は多いようです。
 以下、学者のとりまとめになります。
 ・入ってすぐに道は広がり、暫くは外壁に沿った曲線の道が続いているようだ
  広さは横に3人並べる程度。道なりに細かく身を隠せる部分などが見受けられた
 ・右の道に満ちる空気は侵入者の能力に影響を与えるらしい。具体的なことは不明だが、左の道と同じく、古文書には『反転』の単語が見つかっている。
 ・途中には明確に『守護者』が立ち歩いている。左と比べれば古典的な罠が多そうだ……。
 ・不用意に踏み込んだ学者の仲間が罠にかかって死んだ。侵入の際は注意されたし。
 (その為、進むことが叶わず『どうすれば仕掛けの作動を止めれるかは判明してません)

●宝玉
 入り口入ってすぐの広場に安置されていた玉。
 怪しい光を湛えており、なんらかの力が込められているようです。持ち主に危害を加えることはなさそうです。

●NPC
・リヴィエール・ルメス
 戦闘ではあんまり役に立たないかも知れません。ギフト『ヘルメース』により方向感覚に優れます(絶対ではありません)

・月原・亮
 リヴィエールのお守りイレギュラーズ。指示があれば従います。そこそこ戦えます。

それでは、新しい『ラサ』の謎を解き明かしましょう。

  • <gemel>天籟エフギウム完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月19日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
天狼 カナタ(p3p007224)
夜砂の彼方に
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
スカル=ガイスト(p3p008248)
フォークロア
三國・誠司(p3p008563)
一般人

リプレイ


「ラサの新たなダンジョン……。
 ふふ、ラサが盛り上がるのは嬉しい事よ、今回もしっかり謎を探っていきましょ!」
 心躍らせ、砂を踏み締めた『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)。ラサはネフェルストより離れた遺跡には学者達の姿が見えた。簡易的な説明を行ってくる学者達の様子を見るに、どうやら謎はまだ解き明かされてない様だ。レーヴェン・ルメスとリヴィエール・ルメスはイレギュラーズの隊を2つに分けて、探索を行う事としたそうだ。
「遺跡を探検てなんかすげぇ!!」
 イレギュラーズと言えば強大なる敵や危険地帯にその身を投じることになるイメージが強かった『砲使い』三國・誠司(p3p008563)にとって遺跡の謎を解き明かすという夢と浪漫の溢れる仕事であるのは心躍って仕方が無い。
「いやー、あきらめずにイレギュラーズしてみるもんだ。わくわくしてきたねぇ……!」
「遺跡の浪漫に冒険の浪漫……お宝の匂いに期待で胸が膨らむってヤツだわ!
 だけど、お宝がある遺跡には邪魔や妨害がつきもの。もう死人も出てるってんだから、一寸ばかりぞっとしないでもないわねぇ」
 楽しいだけではないのね、と『never miss you』ゼファー(p3p007625)は肩を竦める。誠司曰く『ヤバいことは先輩達がいるからなんとかなるっしょ』との事だが――
「ま、虎穴に入らざれば何とやらとも言うしね? ちょっとした散歩気分で軽ーくやってやろうじゃないの!」
「……まぁ、そういうこと言ってると痛い目見るんで頑張りますか」
 学者達が調査に向かい帰らぬ人となった事を思い返すにだからこそイレギュラーズという実力者に仕事が来た理由なのだろうとありありと分かる。
「砂に埋れた夢、そんなのを求めて帰ってこなかった傭兵は沢山聞いてきたが……此処は死地の夢路か、黄金の活路か」
 溜息を1つ。『夜砂の彼方に』天狼 カナタ(p3p007224)は「危ない橋は渡らない主義だったんだがなァ」と頭を掻いた。それでも、心がどきりと躍るのは心が『若葉』であるということだろうか。
「二層構造になっている遺跡ですか、踏破した先にも新しい未知の遺跡があると思うと、ワクワクしますね!」
 遺跡外郭部位に当たるその場所で『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は心を躍らせて、周囲をきょろりと見回す。踏破し、『先』に進むことが出来たならば――また新たな『冒険』が待ち受けているのだ。
「お父様たちもこういう場所をかつて探索したのでしょうか? ……とはいえ全く先の分からない遺跡です、気を抜かずいきましょう!」
「ええ。それでは――進みましょうか」
 静かに息を吐いた。『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は入り口が2つ、片方を進んでいったレーヴェン隊を見送ってから、リヴィエールより預かった宝玉をまじまじと見遣る。
「入り口が2つ、宝玉が2つ、その構造を見る限りは双方がお互いに無関係とは思えませんが……。
 更に深部へと至るには、両方で『解決するための適切な処理』をする必要があるという事でしょうか……?」
 じい、と宝玉を見遣った。入念に解析しておかねば危険が及んでからの行動にも影響が及ぶ。
「明らかに唯の宝玉では無く、何らかの魔力が封じられているのは間違いないでしょう」
「そうね、わざわざ此処で宝玉と言われるものね?」
 エルスがじい、と見遣った宝玉は澄んだ色彩をゆらりと揺らしていた。アリシスは素手で触れても影響はなさそうですね、と指先でつい、と宝玉をなぞって見遣る。
「一先ずは、通路を奥に進んだ先でこの宝玉を用いる必要がある、と予想します。
 仕掛けの解除か、……もう片方の宝玉も同様の役割がありそうですね。
 或いは……両者が適切な手順を経て揃う事で、例えば更なる深奥への扉の解錠……」
 ――奥までこの宝玉を護って進んでいかねばならないと気持ちを確かに、遺跡の中へと踏み込んだ。


 周囲を見回して、手甲に光を宿した『須臾を盗む者』サンディ・カルタ(p3p000438)は敵襲に備え敵愾心を探る。周辺に存在する『ギミック』がどのような物であるか分からない以上は警戒を怠るわけにも行かないだろう。
「切った張ったをするよりかは気が楽だ。無論、油断するつもりは無いが」とそう呟いて『フォークロア』スカル=ガイスト(p3p008248)は亮へとリヴィエールの護衛を任せた。最前列を進み罠に対処しながら周囲をきょろりと見回す。
「入り口に踏み入れた瞬間に罠、というのはなさそうだな」
「ああ……それに奥の方にはゴーレムやらなんやらがわんさか居そうだが――」
 一先ずは入り口はまだまだ安全地帯という事だろうか。ロバや軍馬を連れる誠司は其れ等を一度先行させる。安全を出来る限り確認するが為の対応なのだろう。
「最悪人身御供扱いでロバ達を連れていくけど――此れで言えば僕の残機は3って訳だ。……ん? どうかした?」
「あ、あたしもパカダクラのクロエっていう相棒が居るっすけど、残機として連れて行きますか、センパイ!?」
 リヴィエールに誠司は「クロエはお留守番して貰おう」と小さく笑った。危険が及ぶことは本意ではないだろうとクロエを学者達へと預け、冷たい壁にてひたりと手を触れる。ゼファーは違和感を感じて掌をまじまじと見遣る。
「この反転――というのは妙な感じね。『あっち』も同じなのかしら?」
 遺跡に一歩踏み入れた時に感じた違和感は自身のステータスの変化だ。混沌肯定の効果で『ステータス』を見ることの出来るゼファーにとって、自身が得手とする獲物が近接武器ではないような感覚こそが反転であることに気付いたのだろう。
「ええ、恐らくは。……成程、ステータスの反転、か」
 アリシスが使用するのは強烈なる支援。しかし、その効果は薄れている用に感じられる。得手とした神秘攻撃が変化しているのだろうかとまじまじと掌を見遣る。
「神秘と物理の素養が反転した――と言うことでしょうか」
「人によって違うみたいだな。……自分への変化を確認しながら一先ず進もう」
 スカルノ言葉に誠司は頷く「ヤバいことがあるかどうか……」とたいまつを手にして温度、空気、匂いの違和感を探し続ける。
「絶対じゃないけれどリヴィエールさんは方角がわかるのよね? それなら少しだけでも頼らせて貰えたならって思うの!」
 捜索で隅々にまで気を配るように心がけて居るエルスはマッピングを担当していた。カンテラを揺らしてシフォリィは暗闇にも適した視界で周囲を見回す。
「不用意に壁に手をつかないようにしないといけませんね。変なところを触って仕掛けが作動して努力が水の泡、になるのも困りますし」
 地面へとチョークで印を書き示す。迷わぬようにと注意を図りするすると進み続ける。カナタはその耳を生かして、空洞がないかとチェックした。
「砂漠でのトラップと言うと、地形を爆破して砂で生き埋めにするとかも有るが……さあて何処まで意地の悪い管理人やら」
 首を傾ぐ。宝玉の使い方も奥まで進めば分かるだろう――そして自身の遠吠えで到着を伝えることも叶うはずだとずんずんと進み続けた。
「さて、意地が悪い――とは言ったが……」
 カナタが顔を上げれば其処にはずずん、ずずんと音を立てるゴーレムの姿が見える。
「どうする?」とサンディは静かに問いかけた。
「どうやらこの一本道の『奥』に行かれては困るって事だろう……」
 その脚に力を籠めるカナタにサンディは頷いた。スカルより1つ前へと飛び出して、彼を庇う様に動くサンディは自身の体を盾にしながら飛び込んでいく。
「矢位なら――敵じゃあないぜ」
 避来矢を生かすサンディの背後でスカルが顔を上げる。ゴーレムが音立て進んでくるその脚を止めるのはゼファー。
「動くのも大変ね。嫌な予感がする、なんて思った時はちょっとだけ自分の勘を信じてみちゃうわ! さ――切り裂いてやりましょ!」
 ぐん、と距離を詰めるゼファー。『うっかり』を避けるように直感を駆使してぐんぐんと進む。
 軽やかに跳ねたサンディに『殴れば解決』のカナタの背後から堂々と名乗りあげてゴーレムの標的となるゼファー。
「こ、これが不用意に立ち入る者を餌食にする守護者なのね……!
 ふふ、出てきたわね。そろそろ守護者も頃あいを見計らう頃かと思っていたところよ」
 にい、と小さく笑ったエルス。魔術と格闘を織り交ぜた独自の技を放つエルスは指先に飾った指輪より大鎌へと変化させる。
「守護者には悪いけれど……これもラサの為、このダンジョンの謎を解明させて頂くわ!」
 ラサの為に、と心に掲げればその脚は軽やかに動き始める。守護者の堅牢さは確かに厳しいことであるが――カナタにとっては問題は無い。殴りつければ問題は無いのだ。
 その間にもスカル、ゼファー、誠司は罠にも注力する。成程、古典的な罠が多いのだ。ステータスの反転による制約は大きく、回復や攻撃も力の込め方が多少異なる感覚が邪魔をする。
 幸いにして『力』を武器とするカナタにはソレを阻害する反転効果は無かったのだろう。代わりに、異様に体が早く動いたのは、成程、好機であるかもしれない。
「――肉を切って命を穿つ。行くぜ!」
 守護者の体がずずんと音立て倒れ石ころのように変化する。しかし、それで『奥』の罠に対処が出来ないと誠司は傍に座っていたロバに「進んでくれ」とその背を撫でて偵察へと走らせる。
 ロバが進み――そして、その肉体に無数の槍が降り注ぐ。
「おわ」と亮が慌てたように声を発せばリヴィエールが「ク、クロエ置いてきて良かったっす」と肩を竦める。
「これで残機1減ったか……」
 誠司が溜息を小さく吐いた。これで罠を1つ回避できたのだとすれば貴い犠牲だ。エルスは目を伏せて「ロバさん、後で弔うわ」と呟いた.今はまだ先に進むことが先決だろう。
 非戦闘スキルを駆使する仲間達から情報を確認しながらメモをとるエルスはリヴィエールに方角を問いかける。足下のチェックを怠らないシフォリィはゆっくりと顔を上げた。
 ずずん。
 ずずん――音立てる、守護者達を退けながらも奥へ、奥へと進み行く。
 声を発し、ゼファーが堂々と受け止めるそれをカナタが殴りつけ退ける。サンディは安全を確認しながらも仲間達を支えるようにタクトを振るった。自身の攻守の得手不得手が『逆転』するのは成程、この空気によるものか。周囲を見回すサンディにアリシスは肯く――が、どうやら漂う空気は奥まで進まねば解除は不可能なのだろう。
 まだまだ迫り来る守護者に対して継続的戦闘を可能とするサンディのサポートを得てシフォリィは一気に勝負を決めるべく『安全』を確認して地を進む。
 後ろからの不意打ちにも対応し、万全な状況での行動であれど、『反転』の影響が大きいのか疲労は蓄積し続ける。
「……音が、変わった」
 カナタの言葉にシフォリィは「それは、最奥が近いという事ですか?」と問いかける。肩で息をし、息切れを感じるイレギュラーズ達が辿り着いたのは――
 最奥――
 そこに存在したのは人一人だけが進むことが出来そうな階段であった。周辺を確認することは出来る。
「ルメス、宝玉はあるか?」
「あるっす」
 どうぞ、とスカルへ差し出すリヴィエールは「どうするっすか?」と問いかけた。階段はどうしたことか上へ上へと伸びているがソレを支える壁などはない。魔術的な素養で宙に浮いているかのようだ。
 それ故に、目を凝らせば奥に台座が存在する。誰が行くかと顔を見合わせれば、アリシスは解析を行いながら行きますと仲間を振り返る。
「gemel……確か双子と言う意味がある。対になる物がここにあるのか……それを開く鍵は? 宝玉も何か関係するのかしらね?」
 む、と唇を尖らせるエルスにゼファーは「まさしく『置け』と言わんばかりの台座が存在してるけれど」と指を差す。
「……『確認』した限りでは何か悪しき者ではないように思えますが――どうしますか?」
 アリシスは仲間を振り返った。リヴィエールは「置いてみるのは駄目っすか?」と問いかける。
「それもありでしょうね。けれど、置いた後、『目の前が開いたとき』に何処に辿り着くか分からない……ですよね?」
 シフォリィにアリシスは大きく頷いた。もう一方――レーヴェン側が同様の行動をした場合『双子』の名の通り、何かが起る可能性はある。危険は承知の上、で行動するかどうか、だ。
「やってみるか。……あっちも歴戦だ。それにこっちも、だろ?」
 に、と小さく笑ったサンディに「任せたセンパイ」と誠司が揶揄うように笑う。罠はないと告げたスカルに頷いて、アリシスはゆっくりとその宝玉を置いた。

 ――かちり。


 宝玉に宿る妖しい光が吸い込まれ――奥へ、奥へと走り出す。その光はスカルの足下を、そしてシフォリィの足下を潜り抜け――そうして、重苦しい音を立てて、外郭より『内側』へと踏み入れることが叶うようになった。ゆっくりと、その場所に警戒しながらもサンディは足を踏み入れる。
「なあ、見てくれよ」と振り返った彼は悪戯めいて少年のように小さく笑う。
「ダンジョンを進めば宝の山があるってのはよくある話だけど、『これ』は予想外だろ?」
「ああ……確かに……」
 まるで絵本の中のような光景にカナタは小さく息を飲んだ。サンディが指し示す『これ』――それは、複数箇所へと繋がる遺跡の入り口だ。ワープポータルを思わせる物も存在し内郭部も一筋縄では行かないかのように感じられる。
「ここは―――」
 エルスは踏み入れて眸を輝かせる。昏き宵色の瞳に映り込んだのはまるで『あの方』のような色彩。アリシスの瞳にも似た宝玉を拾い上げシフォリィは「綺麗ですね。まるで疲れも消えてなくなりそう」と微笑んだ――微笑んだ、刹那にその身を何かが包み込む。
「シフォリィさん!?」
 振り向くエリスが慌てたようにシフォリィを見遣る。警戒するアリシスは叡智の秘石を駆使して解析を行わんと目を凝らす。
「これは……精霊の力、ですか……?」
 警戒したように武器を構えたスカルと誠司はシフォリィには何も影響がない様子を確認し安堵する.それどころか、先程まで遺跡探索を行っていた疲労の色が彼女からはごそりと抜け落ちているのだ。
「何か変化は?」
 恐る恐る問いかけたスカルに「何だか本当に疲労が取れたような……」とシフォリィは首傾ぐ。
「成程……先程『疲労が取れそう』と口にした際に『石』、または魔法具が反応した、と」
「ならこの周辺に落ちてるカラフルな石? ――は、願いが叶う石なのか?」
 荒唐無稽な話だと誠司は驚いたように目を見開いた。簡単な願い事ならば叶えてくれるのか、それとも堕小が存在するのかは不明だが余りに手を出すのは危険であろうとゼファーは息を吐く。
「掘り起こさない方が良かったー……なんてのはナシだといいわねぇ。取り敢えず、戻りましょう。
 この事を学者の皆にも説明しないといけないでしょう?」
 一度戻りましょうと促す彼女に頷いてから、アリシスはゆっくりと振り返る。

「――ファルベ、ライズ……?」

 壁に刻まれていたその言葉に乙女は小さく瞬いて。

成否

成功

MVP

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加誠に有難うございました。
 レーヴェンさん側とはまた別の道を辿りました。
 MVPは解析し、より詳細な情報を掴むに至った貴女へ。

 さてさて、両側で成功しました。この結果で、どうなるかは――また、お楽しみ下さい。

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