＜gemel＞人像フリップ

オープニング

●ラサの砂を踏む

『次に行く場所も是非イレギュラーズに来て欲しいんだ。君も一緒にどう？　旅とまではいかないけれど、クロエも連れて少し遠くへのお出かけ、なんてさ──』

　そんな手紙が『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス（p3n000038）のいるローレットへ届けられたのはつい数日前の事。友からの手紙を受けて、リヴィエールはイレギュラーズたちと共に砂漠をひたすら歩いていた。同封されていた地図によると、そろそろのはずである。
「……む。あれか？」
　顔を上げた『焔の因子』フレイムタン（p3n000090）は巨大なドームに似たものを見て目を細める。砂が吹くここではしっかり口元を覆わなければ、砂を食べることになるだろう。
「みたいっすね。……あ、」
　リヴィエールが声を上げると同時、向こう側から何かがやってくる。パカダクラの背には誰か乗っているようだ。
「リヴィエールー！！」
　大手を振ってこちらへ叫んでいるのはパサジール・ルメスの民であるレーヴェン・ルメス。目にも口にも砂が入りそうであるが、おおよそ彼女は気にしていなさそうである。
「皆もお疲れ様、さあもう少しだよ！」
　満面の笑みを浮かべたレーヴェンはドームの方へとイレギュラーズたちを誘う。彼女に聞きたいことはあれど、ここではゆっくり話すこともできないと一同は彼女に従った。

　ドームの近くまで辿り着くと何やら複数のテントが張られている。中には様々な種族がいるようだが、少なくともレーヴェンのような『商人』はいない。
「学者の方っすね？」
「そう。この遺跡の謎をずっと解き明かそうとしてるんだ」
　レーヴェンに紹介された学者たちがぱらぱらと頭を下げ、再び手元へ視線を戻す。どうやら古代文書の解析を行っているようだ。遺跡の内容が記されているであろうそれらを丹念に読む学者からレーヴェンは視線をドームへ移し、皆へ行こうかと促す。ドームにはよくよく目を凝らせば人1人分が通れるほどの通路があり、その先には小規模ながらも広場があるようだった。
「この遺跡……いや、正確に言えば外殻らしいんだけれど。ここの中にはまた遺跡が入っているんだ」
「遺跡の中に遺跡っすか」
　そう、と頷いてレーヴェンは広場の奥へ向かう。そこに安置されていた2つの宝玉は怪しげな光を湛えていた。イレギュラーズたちが身構えるもレーヴェンは「何も起きないよ」と苦笑する。
　一見お宝にも見えるが、つい先日までこの外殻が開かれることはなかったのだと言う。故に盗賊などの被害に遭うこともなかったということだが、学者たち曰く『これが外殻を解く鍵である』らしい。
「私はその辺よく分かんないんだけれど……ほら、左右に通路が伸びてるでしょ」
　レーヴェンの指し示した広場の側面には、確かに道らしきものが伸びている。やはり1人分の通路となっているらしい。まだ外殻の全貌を読み解けたわけではないが、それぞれの通路先に宝玉を持って行くことで何かが起こるという予想が立てられているそうだ。その為どのような仕掛けがあるのかを表の学者たちが調べており、その話を聞いて通路の先へ向かう形となる。
「あ、私も片方には付いていくよ。いいものあったら見ておきたいし」
「それならあたしはもう片方っすね！」
　レーヴェンが宝玉を手に取って横目に笑みを浮かべると、リヴィエールもまたもうひとつの宝玉を取る。くるりとイレギュラーズの方を向いた彼女は「よろしくっす、センパイ！」と笑顔を浮かべた。


●Side：レーヴェン
「貴殿はパサジール・ルメスの民と聞いているが」
「そうだよ？」
　フレイムタンの言葉にレーヴェンは目を瞬かせる。そして意図を察したかくすりと笑った。
　パサジール・ルメスといえば物資を運び、情報を運ぶ少数民族である。少なくともこんな遺跡に挑むような者たちではない。
「私はちょっとばかり変人でね。自分の嗜好に合うものを集めるためなら火の中水の中遺跡の中さ」
　にっと笑みを浮かべた彼女は表に出ると学者へ声をかける。目の下に隈を作った男は顔を上げ、そしてイレギュラーズを見ると納得したように頷いた。
「行くのか」
「彼らがきたからね」
　レーヴェンの言葉に再度頷き、男は散々書きなぐられた羊皮紙を突き付ける。かなり筆跡は汚いが、どうにか読むことはできそうだ。この羊皮紙こそ学者が調べ上げた片方──左側の通路に関する情報らしい。
　通路に入ってまず気を付けるべきは満ちる空気。特殊なそれは侵入者のステータスを乱すと言う。そして道を阻む古代兵器を倒さねば先には進めない。まだ他にも隠された何かがあるかもしれないが──こればかりは行ってみないとわからないだろう。
「ふむ。それじゃあこれを元に作戦会議といこうか？」
　必要だろう？　と。その羊皮紙を一同の中心に置いて、レーヴェンは楽しそうに告げた。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●
「まずは……レーヴェン、元気そうだな」
「ふふ、ラダも息災でなによりだよ！」
　パサジール・ルメスの民であるレーヴェン・ルメスが海洋から幻想、そしてラサへと向かう道中の縁。『剣砕きの』ラダ・ジグリ（p3p000271）は途中の護衛依頼を請け負った1人でもあった。あの時のレーヴェンは商売目的だったようだが、今は違うらしい。
「こだわりも相変わらずだが……完全にあてずっぽうではないんじゃないか？」
　片目を閉じて見せれば、レーヴェンはわかっちゃう？　とでも言いたげな笑みを浮かべてみせる。とはいえまだ想定の域を出ないからか、『狙う品』については秘密のようだが。
「はあ、遺跡ですかぁ」
　呟く『果てのなき欲望』カイロ・コールド（p3p008306）はきょろりと視線を巡らせ、今しがた出てきたドームを見上げた。どのような作りになっているのかも分からないが、これは遺跡の外壁らしい。ぐるりと一周するのにも大層な時間がかかりそうな遺跡で、挑む前から疲れてしまいそうだ。いや、実際かなり疲れる依頼だと思う。
「遺跡荒らしって、儲けに対して疲労感が半端なく高いんですよねぇ」
　準備には既に学者たちがこれほどかと時間をかけているだろうし、こちらもこちらであらゆる可能性を考えて道具を色々用意しなくてはならない。面倒な上に未踏破ともなれば精神的にもかなり負担がかかるだろう。
「まあ、今回は特段荒らすわけでもあるまい。奥へ進むというだけならいくらかマシだろう」
「ですね。勿論わかっていますとも」
　『焔の因子』フレイムタン（p3n000068）にカイロは頷いてみせる。今回は純粋に奥へ向かうだけ──奥にあるだろう台座に、レーヴェンの持つ宝玉を安置するだけだ。
「遺跡探検って言えば心躍る響きじゃない？」
「うん！　何が出てくるかワクワクするよね！」
　『特異運命座標』羽住・利一（p3p007934）の言葉に『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー（p3p004630）が頷く。『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン（p3p001619）や『無銘の刀』ルーキス・ファウン（p3p008870）もまた然りだ。
「未踏破の遺跡、ですからね。遺跡にはロマンと宝があるって本にも書いてあった気がします」
　ルーキスは遺跡の方を振り返って目を細める。あの中には、未知の先には宝が待っていたりしないだろうか。
「踏破して、あれば宝も持って帰りたいし……色々試してじっくり調べて行こう！」
　ムスティスラーフはまず先駆者の話を聞きたいと、学者の中でも遺跡に入った事のある面々にテントへと来てもらう。彼らの中には未だその時の怪我が治らぬ者もいるようだ。その1人は治療の為、やむなく調査チームから外れてオアシスへ戻る予定になっていたらしい。
「この環境では治るものも治らないのです。……と、皆に言われて」
　そう告げる本人は命を賭してでも調査を続けたかったようだが、周囲の強い押しに折れたのだそうだ。それさえなければ今頃ここにはいなかったのだから、イレギュラーズとしては少々複雑な気持ちかもしれない。
　彼は進んでしばらくの場所で壁から棘が生えてきたのだと告げた。先頭を進んでいた男が串刺しになり、引いていく棘から遺体だけでも回収しようとして傷を負ったらしい。
「遺跡の中で、身体能力の変調とかは？」
　男──怪我をしていない者も含めれば男『たち』──はムスティスラーフの言葉に心得ていると言わんばかりに頷く。
　最も詳しいことは未だ調査中で、全貌は明らかになっていないらしい。しかしある者は腕力が落ちて神秘適性を得たり、ある者は急にタフな体になったりと一時的な変化は見られたようだ。
　彼らへ求められる情報はこの程度か。あとは行って体感せねばわかるまい。イレギュラーズとレーヴェンは立ち上がり、再びドームへ向かった。
「厄介な仕掛けがありそうだね」
「ああ。ま、楽しんでいこうじゃねえか」
　『鬨の声』ルカ・ガンビーノ（p3p007268）は砂除けのフードの中、小さく笑みを浮かべる。謎のアイテム、謎のキーワード。加えて謎の敵ともくれば、いかにも冒険といった舞台だ。高揚しないわけがない。
「レーヴェンちゃん、宝玉はどう？」
　分かれ道のある広場まで来た『満月の緋狐』ヴォルペ（p3p007135）はレーヴェンへ視線を巡らせる。それを受けた彼女は「この通りさ」と持っていた宝玉を差し出した。
「変わらなそう？」
「みたいだね」
「そっか。じゃあ何か変化があったらおにーさんに渡してくれる？」
　何か──持ち主に不都合が起こりかねない事態。或いは未知の反応。それを真っ先に受けるのは自分でありたい。
　ヴォルペにレーヴェンはわかったと頷く。ずっと旅をしているとは言えど、彼らの方が経験値は高いだろう。こういう時は素直に従うものだと心得ている。
「それでは進もうか」
　フレイムタンが示したのは向かって左の道。リヴィエールたちが向かう道とは反対側。足を踏み出し、門をくぐり抜けると道が大きく広がった。幅の狭い通路で突然岩でも転がり落ちてきたら──とヒヤヒヤしていたルーキスだが、そういったことも特にない。
　無事にイレギュラーズが踏み込むと同時、左右の壁へ明かりが灯る。カンテラを用意していたルーキスはぎょっとして手を止めた。
「すごいねえ」
　レーヴェンが感嘆の声を漏らすが、この照明具には特に食指が動かないらしい。珍しいものではあると思うのだが。
　彼女の手元にある宝玉は変わらず怪しい光を湛えており、どこか渦を巻いているようにも見える。これもまた珍しい品に変わりはなく、そこにレーヴェンが気を引かれないということはこの先の『想定』がよほど魅力的ということか。
「おにーさんから離れないようにね」
「ふふ、任せてよ」
　ヴォルペにぱちりとウィンクをしてみせるレーヴェン。彼らが前線を進むことはなく、代わりにその立ち位置となるのはカイロだ。
　だが、その前に。
「うん、この辺りでは何も動いていなさそう」
「ああ。これといった音は聞こえないな」
「罠もこの辺りには仕掛けられていないようです」
　アレクシア、ラダ、そしてルーキス。3人による安全確認が行われたのち、一同は身体能力の変化を調べることとした。
「回復は……ええ、問題なさそうです」
　治癒魔術を行使したカイロは小さくホッと息を吐く。その傍ら、ラダは壁へとライフルを向けた。数発の発砲音が響き、跳弾して遺跡の先へ弾が転がり落ちる。
　威力、命中、精密さに加えて反動エトセトラ。あらゆる観点で自らの弾を観察したラダはふむ、と呟いた。
「……命中率が悪いな」
　威力も反動も申し分なく、しかし構える重心がどことなくブレる感覚。ラダも剣を片手で振り回しながら顔をしかめる。
「俺は物理攻撃だ」
　両手剣を片手で扱う一撃は、しかし普段ほどの力を持たない。反転してステータスが下げられたということか。
「うーん……ごめん、こっちは全然わからない」
　利一は眉根を寄せて頭を振る。アナザーアナライズでは皆にかかった変化を読み取ることはできない。しかしついでに見たレーヴェンの持つ宝玉は、なんらか大きな力を封じ込めているようだと知ることができた。
「大きな力、か。2つ合わせたら凄いことになりそう」
　レーヴェンは宝玉を見下ろし、もう片割れのそれを思い浮かべたようだ。この価値に気づくかもわからないが、この遺跡が悪人に開かれなくて良かったということになる。
「なんというか、皆を見る限り……あまり規則はなさそうだね」
　ヴォルペが能力を確かめる各々の姿にそう漏らした。それはイレギュラーズ皆が考えていたことであり、しかしなんとか規則を見つけようと足掻くため目を逸らしていた事実。
「スキル自体は一通り大丈夫そう。実際に戦ってみないとわからないこともあるね……」
「故に、外の学者たちも想定の域を出なかったのだろうな」
　アレクシアがむむむと考え込む横でフレイムタンは頷く。戦うと言っても、仲間に攻撃を負けるわけにはいかない。ならば進むしかないのだ。
「慣れてはいますが注意して行きますよ～」
　カイロが先頭に立ち、その後へ仲間が続く。ラダとヴォルペ、そしてレーヴェンは後方だ。
「宝玉が変化したら教えてくれ」
　今は何もないが、この先もそうとは限らない。何かあるかもしれないからと告げるラダにレーヴェンは頷く。
「なんだかすごく守られてる感じだね？」
「まあ、ローレットご指名だからな。期待には応えたいよ」
　そっか、とレーヴェンは擽ったそうに笑ってみせて。
　しばらくは道も程よい広さで、少しずつ曲がった1本道だ。外から見たドームの外壁を伝うような作りなのだろう。
　ふわふわと飛ぶムスティスラーフは遺跡という『無機物』との対話を試みる。ここはどういった場所なのかという問いかけに、しかし無機物が返せるのは非常に簡単な言葉だけ。
「封印？　なにかを封じている場所なのかい？」
　そう問いかける最中。不意にカイロが立ち止まり、後続にも立ち止まるよう促した。
「血の跡ですね〜。それに……」
「ええ……ありますね」
　ルーキスが呟き、他の幾人かも頷く。
　床の端に散った多量の何かは死んだと言う学者のものだろう。遺体がないところ、怪我をしていた彼が身を呈して取り戻したに違いない。
　利一が罠のスイッチを探し当て、慎重にそれを解除した。これで作動しないはずだが、万が一はどこにだってあるもの。
「それでは、」
　カイロはひょいと一歩を踏み出す。血のあった場所を通り抜けて──大丈夫だ。動かない。
　彼が進めたことを受けて皆が順に通り始める。この先からは何人たりとも入ったことのない、真実未踏破の場所だ。
　これまでと変わらぬ道をひたすら行くも、流石に罠の数が増え始める。しかしカイロやルーキス、利一、そしてハイセンスで探索するラダたちによって確実に解除し、時にはカイロが踏み込んで確かめた。エコーロケーションで辺りを調べるアレクシアは、ふと顔を上げる。
「この先、広い場所があるみたい」

　それは程なくしてイレギュラーズたちの眼前へ現れた。驚くほどに広い、正方形の部屋。
「見ろ」
　フレイムタンが鋭く告げる。対角線に通路は伸びていたが、そこに立ちふさがるような光の柱が生じていた。それはいくつかの影を生み出すなり収束し消えてしまう。では影はといえば、これまたいくつかの形に変化していくようだ。
「チェスがモチーフみたいだ」
　ムスティスラーフの言う通り、影は騎兵や歩兵、女王などの形に見える。これらが例の『守護者』だろう。
「レーヴェンちゃん」
「言われずとも下がってるよ」
　遥か後方、部屋より1歩廊下へと下がったレーヴェンに頷き、ヴォルペは敵を見てにっと笑った。
「さあ、おにーさんと遊ぼうか！」
　その言葉は戦いの合図。ルカは開幕から全力と言わんばかりに言霊で歩兵を打つ。普段と異なる戦い方はこの環境に適応するための一手だ。
　騎兵が素早くヴォルペへ肉薄し、武器を振り上げる。アレクシアの支援を受けたムスティスラーフは最初の一撃のみと、具現化させたタンザナイトの剣を振り下ろした。
「僕はルカ君と逆みたいだ」
　ここまで敵が出てこなかったが故の、能力を図るための剣。神秘適性ががくりと落ち、その代わりに腕力が付いている気配がする。
「まぁ、相手がなんであれ落ち着いて戦いましょうかぁ」
　カイロもまた前線へ飛び込み、敵を少しでも引きつけんと自らを治癒しながらその身を危険にさらす。その中、敵の振るう槍がヴォルペと、その周りで戦っていた利一に命中した。すぐさま自らの反転に気づいた利一は仲間へ声をかけながら後方へ下がる。
（俺は回避力か……）
　あの瞬間、なんとも言えない足の重さを感じた。ならば反転したもうひとつは──？
　疑問を抱えたまま利一は指弾を撃つ。それは驚くほど的確に、かつ鋭く歩兵へとめり込んでいった。
「さて、頑張ってもらおうか」
　その傍らからラダは愛用の欠陥ライフルを構える。命中率はいつもより控えめだが、ならばライフルの気まぐれな精密さに賭けるほかない。気の逸りを落ち着けるようにラダは深呼吸して、引き金を引いた。
「実物はなんとも、チェスらしくないですね」
「形だけ、という印象だな」
　ルーキスとフレイムタンは歩兵を倒し、次の標的へと武器を向ける。大昔にチェスがあったのかわからないが、形が似ているということはそれらしい何かはあったということだろうか。
　しかし後方から回復と攻撃を加えるアレクシアはこれだけで断じることはできないと気を張り巡らせる。どのような作戦でいくのか確定したことなど何も言えない。
「全ての駒がいるわけでもなさそうだ、が……ッ」
　騎兵の一閃を受け、フレイムタンは──彼らは異変に気付く。それは同じように受けたヴォルペも同様だ。
「そんなはずは……いや、」
　これこそが自身にかけられた反転か、とヴォルペは気付く。高抵抗力のオリジナルから反転して低抵抗力に。その代償として恐らく命中率が上がっている。先程からやけに攻撃が当たりやすいのだ。それは敵が鈍いのではなく、自身の攻撃がより研ぎ澄まされているということ。
　しかし、それならば殲滅は早くなろう。
「大丈夫、まだやれるよ！」
　アレクシアが味方の中心へ飛び込み、色とりどりの小さな花弁が具現する。ともに広がるのは味方を癒す魔力だ。
「ああ、楽しくなってきた！　もっともっと遊ぼうか！」
　ヴォルペはパンドラを煌めかせながら叫び、引きつける。いつもと違う遊び方もたまには良い。
「残るは女王のみですね……！」
　歩兵と騎兵を倒しきり、残るは豪奢なドレスと思しき影を揺らす1体。ルーキスは息を切らせながらも攻撃を向ける。
「もう一息ですよ」
　カイロはボロボロになりながらも女王を引きつけるヴォルペを庇う。ここで倒れられては敵わない。
　ラダの執念めいた連射に続き、利一の指弾が突き刺さる。ルカの言霊は鋭い刃となり、影のドレスを大きく引き裂いた。アレクシアは白黄の花を咲かせ、あと一息を押し出して──。
「これで今度こそ……チェックメイトだ！！」
　ムスティスラーフの吐き出した緑の閃光が、影を散り散りにした。


●
　傷の応急手当てをして暫し。一同はさらに道を進んで最奥まで来ていた。
「セオリー通りだな」
　ルカの視界に移ったのは階段だ。長いそれは、空間最奥に鎮座する小山を登るように続いている。上にちょこんと見えるのが件の台座だろう。階段は特段広い
わけでもなく、ここにいる全員が登るのは流石に手狭だ。
　となればまずは宝玉を持つレーヴェンと──。
「おにーさんも一緒に行っていいかな？」
　──有事を気にするヴォルペ。他にも興味を持った数人がちらほら手を挙げる。
「さてさて、何が起きますかねぇ」
　カイロの呟きに応える声はなく。レーヴェンが登りきり、台座にそっと宝玉を乗せた。

　──カチリ。

　小さな音は、しかし静かな空間によく響く。次いで台座のそばまで近づいた者は、宝玉に宿っていた怪しげな光が消えていく様を見た。いいや、消えたのではない。
「台座が……！」
　誰かの言葉と同時、台座の上から下まで光が走る。まるで宝玉の光が抜け落ちて走り出したかのようだ。
「これは成功、ってことでいいのかな？」
「いいんじゃない？　さあ、あとは『あちら側』次第だ」
　レーヴェンは楽しそうに笑って、元来た道の方へと振り返った、

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

あとがき

　お疲れ様でした、イレギュラーズ！
　こちらは無事成功しましたが、はてさてリヴィエール側はいかに。
　反転に関しては個々にランダムでしたが、あくまでステータスの高低は個人の見解で判断されております。ご容赦下さい。

　またのご縁をお待ちしております。