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シナリオ詳細

君子下問を恥じず

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●訓練
「はっ!」
 今日も今日とて、訓練にいそしむ兵部省の役人の姿があった。
 彼らの使命は「国を守る」こと。
 それゆえ、当初はよそ者である神使たちに対してに対して警戒心を抱いているものが多かった。
 しかし、今は……。
「なあ、どう思う?」
「よそ者のことか?」
 3人の武者たちが、彼らの噂をしている。
「”神使様”だ。いいかげん、その呼び方は改めるんだな」
「……」
 図星をつかれたようにう、と押し黙る鬼人種の男。
「ま、分からんでもないが。お前さん、悔しいんだろ?」
「うう……正直な話俺は一番の剣士だって自負してたんだぜ。一度、彼らを見たことがある」
「その様子だと、文句のつけようもないほど強かったんだな?」
「ああ。本当に強かった……。
そうだ。悔しいんだ……彼らの活躍は俺も耳にしてる。”強い”って……な」
「この少しの間にぐんぐんと名をあげて、手に負えない事件を次々と解決してるらしい。聞けば、明確に長がいるわけでもない。毎回決まった者と組むわけでもなく、それで、事件を解決して、すいすいと名をあげてるらしい」
「主も持たずに、どうしてあんなに強いんだ?」
「うーん、だからこそ、なのかもしれないですね」
「どういうことだ?」
「しがらみにとらわれない分、自由に動けるってことですね」
 ふう、と雲を見上げる3人。どうしたら、ああなれるのだろうか。
「…………」
「いっそ、手合わせを、申し込んでみるというのはどうだろうか」
「手合わせ?」
「俺は、国を守りたい。そのためなら誰にだって頭を下げて、教えを乞う」
「いいんじゃないか、一度戦ってみたかった!」

●教えを乞う
 神妙な顔つきをした鬼人種に、兵部省に呼び出された神使たち。
 何事かと思えば、なんてことはない。
「──我々と一度、手合わせを願いたい」
 そう言って特異運命座標を真っすぐ見据えて言葉を呟いたのは鬼種の若者だった。
 若者もまた、この豊穣の土地にて国家防衛に類する兵部省に所属する武者の一人である。

「戦いを通じて何か学べる物があるのでは、とこうして頭を下げに参った次第です。私、そして私の部下も豊穣の土地を守る為、努力はしておりますが──足りないのです」
 無論、礼は弾みましょうと彼は言う。どうか、宜しくお願い致す、と彼は深く頭を下げた。

GMコメント

大変、たいへんお待たせしました!!!
布川です。

●目標
8人の武者たちとの演習になります。
演習とはいえ武器をとり、実戦に近いものになります。

●登場
兵部省の武者×8
一人を除いて鬼人種で、神使に対しては好意的です。
(ちょっと悔しがってる人もいましたが)

●演習場
見張り台(高いところ)が二つある演習場です。
・刀を持った前衛が三人
・槍を持ったリーチの長い後衛が二人
・祈祷師(回復役)が一人。
・弓兵が二人
統率はある程度とれていますがお手本通り。
前衛が動かずに、その隙に後衛が削るというスタイルです。

ひとりだけ精霊種(祈祷師)もいます。鬼人に混じってちょっと気まずそうで、角がないことを隠すように深く頭巾を被っています。
鬼人種との対立に関しては穏健派で、仲良くしたいと思っています。

動き方(例)
・刀の1人は実力者だが、おそらく「俺がひとりで何とかしないと」という気負いがある。
・槍のコンビは統率がとれているが、二人だけの連携に終始しているように見える。
・弓兵は仲間に当てるのが怖いのか、過度に慎重に思える。
・祈祷師は、体格が小さく防具が体に合っていない。
・割と「見た目」で相手を判断している。例えば見た目が可憐な少女は弱いと思っている。

演習中に素直に指摘しても良いですし、身をもって教えてあげるのも効果的でしょう。

●振り返り
一通り終わったらお茶と饅頭でも食べながら振り返りタイムです。おそらく演習前よりも心を開いてくれているでしょう。
・どうしたらそれほどの強さを手に入れられるのか
みたいな質問をされると思います。答えてあげてくださいませ!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 君子下問を恥じず完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ

●試合申し込み
「……ッッ」
『翡翠に輝く』新道 風牙(p3p005012)は、胸のうちに熱いものがこみあげてくるのを感じていた。国は違えども、同じ血潮が流れている。
「頭を上げてくれお侍! あんたたちの気持ち、しっかと受け取った!」
「では……協力してくださるか!」
「その申し出。勿論受けよう──」
『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が進み出る。
「この国はそなた達の国、我らも手は尽くすが……自らの生まれた土地は、自らが守る。その気持ちは俺にも解る心算だ。俺も、かつてはその為にこの槍を振るっていたのだから」
「ああ、オレたちにできることなら何だって手伝うぜ!」
「神使殿……!」
 依頼人は思わず涙ぐむ。
 決死の思いで頭を下げてはみたものの、駄目元半分だったのだ。
「手合わせの機を頂けたことに、こちらこそ感謝致します」
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は折り目正しく一礼をした。
「この豊穣を守ろうという信念は同じ。共に研磨致しましょう!」
「今日は宜しくお願いします」
『ハニーゴールドの温もり』ポテト=アークライト(p3p000294)は、リゲルの隣で頭を下げた。
 武士たちは異国の礼に合わせて、慌ててぎくしゃくと真似をする。
「国を、国の人々を護ろうって気持ちは、オレもあんたたちも同じなんだから!
同志として、ぜひとも協力させてくれ!」
「もちろん、兵部省の人達との手合せは花丸ちゃんも望むところだよ!」
『おかわり百杯』笹木 花丸(p3p008689)がぐっと拳を握る。
「だからさ、やろっか?」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
「お互いに頑張りましょう」
『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)がぺこりと頭を下げれば、柔らかな日差しに三つ編みが揺れる。
 守るために、強くなりたい。

●模擬戦
「模擬戦、か。色んな気付きを伝えられたら良いよね」
 マルク・シリング(p3p001309)は地図を見ながら布陣を確認する。
「ふむふむ。花丸ちゃんはここね? おっけー」
 武者たちは真剣な表情である。
……神使がやってきて初めの頃であれば、考えられなかったような光景であろう。
 マナガルムは感慨深く、その様子を眺めていた。
(我ら、神使の殆どは彼らにとっては外部の人間だ。
我々を信用して貰える様にと動いて来たが……今回の様にその土地を守護する者達と関われる事になったのは嬉しい)
「しかし、まぁ、のんきと言えばのんきな気もするが。まぁ、いい。始めるとしよう」
『砂の幻』恋屍・愛無(p3p007296)は合図を待つ。

「始めェッ!」
 合図とともに、風牙の飛翔斬が鋭く飛んだ。
(……! 剣士か。速い! だが、この程度であれば見切れる!)
(って、思ってる感じだな?)
 風牙は距離を保つ。目論見通り、マークされることはない。
「俺はベネディクト=レベンディス=マナガルム。豊穣を守る護国の者達よ、いざ──尋常に」
「……正面から来るか! その心意気や良し!」
 堂々と、一歩名乗り出でるマナガルム。
 黒狼極爪。マナガルムの槍から生み出される強烈な薙ぎ払いは、空間すら掠めるような威力だ。
「加減はせん、最初から俺は全力で行かせて貰うぞ──!」
 その動きに反応した、一人。
 おそらくは腕に覚えがあるのだろう。
 リゲルは銀の剣を構えた。
(あまり盲目になってはいけない。自らを省みる心算で挑ませて頂こう)
 相手が歯を食いしばり、一撃、一刀を振りぬいた。
 リゲルの銀の剣が、それを受け止める。
 抜き身で放たれるは、静かなる断罪の斬刃。
 剣戟がぶつかり合い、一度で互いに相手の力量を知った。
 男は思い切り斬りこんでくる。
(強さを追い求める心か……俺もいつも渇望している。だがそれ以上に共感する所がある!)
 だが、加熱する男とは対照的に、リゲルの頭は冷静だ。

(みなさんホンキ、ですね。何かを守るために、強くなりたい……というのは、よくわかるので……)
 マギーは銃を握った。
「回復でなし、銃兵か……っ!」
「兄者、俺がやるっ!」
「少し、乱させて貰います……」
 マギーは、突出した槍兵に向かって誘いをかける。アンガーコールが響き渡った。
 かかった。敵は突進してくる。
 一見すれば、相手の練度は高いように見える。
 だが、ところどころ不調和を起こしている。それはおそらく仲間のためにという気負いであろう。
 つまり、焦っているのだ。
 マルクの神気閃光が、まばゆく相手の3体を貫いた。
 愛無は、戦場の喧騒を眺めている。
「武器を持たぬか……手加減のつもりか?」
「え? 武器ならちゃんとあるよ? 二つもね」
 花丸はくるりと回る。
「――おいで、君達の相手は私だよ」
 花丸に近づくことができない!
 傷つけ、壊す事しか出来ない少女の拳はなんという威力か。かすっただけで恐ろしい質量を感じた。
 その瞬間、武者たちは自らの落ち度を思い知った。侮りすぎていた。
「かはあっ!」
 距離をとろうとしてももう遅い。もう一方の拳が容赦なく弧を描き、みぞおちに入った。なんとか踏みとどまる。
「ぐっ、まだまだ!」
「うん、楽しもうか」
 飛んでくる矢を避け、花丸は構える。
(……折角の機会だし、胸を借りるつもりで頑張ろう)
 ポテトが準備していた。ミリアドハーモニクスが、傷を癒していく。

●油断大敵
 ようやく不利を悟った武者たちが、じりじりと前線を下げようとする。
 そのときだった。
 蒼き彗星が、戦場を横切った。
「……え?」
 音すらしなかった。
 いや。遅れているだけだ。衝撃がやってくる。
 それが、斬撃だとわかる。装束は大きく切り裂かれている。
 烙地彗天。その槍の動きはあまりにも疾い。
「馬鹿な……っ!」
 ノーマーク。
 ならば、あの初手での斬撃は囮だったとでもいうのか。
 完璧に不意をつかれる形となった。
 慌てて回復役を庇おうと陣を組み直す。
 だが、遅い。
 風牙はさらに一歩敵陣に踏み込んだ。
 攻撃範囲は、辺り一帯。風牙の頭すれすれを相手の刀がかすめるが、当たらない。
 その速さに物を言わせて、武器に重心を乗せる。
 突風が吹いた。
 その一撃は、先ほどの動きとは比べ物にならない威力で放たれる。風牙から打ち込まれた気が、身体の動きを鈍らせる。
「回復役から落とす。定番だろ?」
「っ! 立て直すぞ!」
 仲間がピンチだ。ならば、自分が要であると気負っている。
 リゲルへ向かって飛ぶ斬撃が、鋭さを増していく。
 この斬撃で決着をつけようという、賭けであった。
(……だが!)
「……っ!」
 刀を握る手が、思うように動かない。
 マナガルムの黒狼極爪は、次への布石。その一撃を、仲間へと託していた。
 黒と銀の騎士がコントラストをなし、互いに背を預け合う。
 一人、居合いの達人である男は、……冷静さを失っていた。
 凍星-絶対零度。
 銀の剣の周りで、全てが動きを止めたかのようだった。
「囲めっ!」
 ポテトへと矢が降り注ぐ。だが、ポテトは勇ましく盾を構え、戦線を維持する。
「女、それもヒーラーだから簡単に倒せると思ったか?」
「くっ……!」
「生憎、身の守りは騎士であるリゲルにしっかり教えて貰っているから、そう簡単に倒せないぞ!」
 落とせない。
 その間に、天使の歌声が傷を癒していく。
「ありがと。で、花丸ちゃんはまだまだいけるよ?」
「なんのっ!」
 花丸は一度腰を引き、踏み込むように拳を振るう。硬く、傷だらけになった少女の拳。戦いを知る者の拳。
「う、うわあああーーーー!?」
 悲鳴が上がった。
 愛無の姿がどろどろと溶けてゆくのであった。
 ヒトであった姿の中から現れたのは、全身が黒い膜に覆われている異様な悪魔の姿。白い歯の生えそろった三日月の口がにい、と笑う。
「ひあっ、うわああ」
「に、肉腫か!?」
 ふむ、こけおどしのつもりだったが。十分に不意をつけたようだ。
「落ち着け! 気をしっかり持て! 目の前の戦いに集中しろ!」
(これが実戦であったなら……)
 やはり、甘い。愛無は思った。
 腕部粘膜がゆっくりと形を成し、巨大な生物の鋏を形成する。
 同化吸収。
「あっ、ああ……っ、あああっ……」
 後衛が崩れていく。援護に行かねばならない。だが、リゲルがマークを外さない。
(貴方は確かに実力者であり、だからこそ責を負うのも解る。だが一人の力には限界があるんだ。俺が貴方を、自由にはさせない)
 リゲルは攻撃に耐え続ける。じわじわと削られていくが、マルクのサンクチュアリがあたりを包み込む。
「……貴様も、補給兵か!」
「回復役は、回復だけしていれば良い、ってことは無いからね。ポテトさんのように壁役として皆を守るか、あるいは僕のように攻防両面に参加するか、だよ」
「ああ、私がいる」
 その一瞬のチャンスを、ポテトがつなげる。
 風牙の攻撃が、ついに祈祷師を落とした。次いで風牙が狙うは弓兵である。
「くっ……!」
 マナガルムが、槍を構える。黒顎魔王。膨張した黒の大顎が口を開く。どうすることもできず、槍兵は崩れ落ちる。
「敵は崩れた。今なら……押せる」
 ポテトの号令が響き渡る。
 イレギュラーズたちの消耗は少ない。ミリアドハーモニクスが集中砲火を受けていたマギーを癒す。
「ありがとうございます! そちらは」
「ああ。大丈夫だ」
「っと、油断禁物だよ?」
 花丸の破拳が、弓兵の一体を打ち砕いた。連撃。その圧倒的な質量。構えていた弓の弦が切れ、その場に崩れ落ちる。
 粘膜の中から、不意にでろりと杭が浮かび上がる。
「ああっ!」
 禍津早贄。投擲された杭が地面に敵を縫い留める。
 死にはしない。だが、ゆっくりと。傷口から侵入する不浄が、生命活動を阻害する。
「あがっ……!」
 鼓動が弱くなっていく。まずい、このままでは、落ちる。
 援護射撃を行う弓兵に、マギーが向き直る。
「外しません……!」
 一瞬だけ、マギーは双銃をぎゅっと握りしめる。
 Eosphorus(明けの明星)が。Hesperus(宵の明星)が。空にまたたいた。正確無比に放たれた弾丸は、弓兵を落とす。
「っ! しっかりしろ!」
 なぜだ、という相手の驚愕と焦りを、リゲルは相対する相手から感じ取っていた。
 黒星。閃いた銀の一閃が、相手の体勢を大きく崩す。
 仕留められる……が。
 ここで、リゲルは無理に踏み込まなくていい。
 仲間がいた。
 リゲルと相手の勝敗を分けたのはその判断。引いた隙に、マルクの魔光閃熱波が貫いた。リゲルは攻撃を受け止め、下がる。
 あとの顛末は、あっさりしたものだった。

●反省会
「……まいりました。完敗です」
 がっくりと膝をつく男に、リゲルは手を差し出す。
「良い勝負でした」
「何も言わないでください……痛感しました。俺は……」
 仲間を頼っていなかった。
 ひとりだけの実力が突出していたところで何になろうか。
 結論から言えば、彼らは、なすすべもなく負けた。
「……俺も一人で気負う気質だが、沢山仲間に助けられてきたんだ。貴方も仲間を信じて協力し合えればより強くなれる。それは俺が保証するよ」
 そして、それはそのまま固い握手となる。
「俺はまだまだ弱いよ」
 そういうリゲルはまだ、上を見ている。
 そして、いずれ到達するのだろう。遥かな高みへと。
「強く、ありたい。あなたのように」
「強さの秘訣があるならば……自分の弱さを自覚し、向上心を持って、前へ進み続ける事なのだと思う」
 試合を終え、仲間がやってくる。
「後は……強い人と戦いたいと常に願ってる。お互い研磨し、また手合わせしよう!」
「ああ!」
「ありがとうございましたっ!」

 そして、試合の後には。
「串団子を作って来たんだが、良かったらどうぞ」
 兵士たちへの手当を終えたポテトは、見事な団子の包みを取り出した。
「え、いいんですか!?」
「餡、みたらし、磯部の三種類だ」
「客にもてなされてどうする。お茶を! お茶を淹れろ!」
「ポテトのお菓子は絶品なんだ」
 リゲルが照れたように笑う。
「これ、お饅頭って言うんだね。甘くておいしいな……」
 マルクはそっとまんじゅうを割り、頬をほころばせる。
「んーっ、甘い物が染み渡るーっ!」
「……」
 大きく伸びた花丸は、暗く沈んだ周りを見渡す。
「って、そうじゃないや。真面目な話をしよっか」
「……是非にも」
 そうして、講義が始まるのであった。

「先ずさ、花丸ちゃんの事を見た目で判断してたよね?」
 恥ずかしそうにうつむく槍兵。
「ダメだよ、見た目に関係なく強い人は本当に強いんだから。
手合せだから良かったけど、これが実戦だったらその思い込みが命取りだよ?」
「はい……痛感しました」
「――何て、花丸ちゃんも実際まだまだだからさ。
誰かにダメだし出来る程偉くも何ともないんだけどね」
 そう言ってお団子を頬張る花丸。
「強さに関してもそう。私より強い人は幾らでもいるよ」
「こ、これよりも上があるというのですか?」
 あるよ、とあっさり花丸は認めて。
「でもね、そんな強い人に立ち向かえるのは仲間が居るからなんだ。
君達にも国を守りたいって仲間が居るでしょ?」
「仲間……」
「見た目といえば……」
「大変失礼しました! ま、まさか肉腫などと……」
 慌てて愛無に頭を下げる兵士。
「その可能性はあった」
 その一言に、はっとしたように黙る。
「今後、肉腫や魔種と戦う事があるならば。心を強く持つことだ。目の前の相手が。隣にいる者が。守るべき者が。「化物」になる」
 これが実戦であったらどうか。
 不意を突かれ、なすすべもなく取り込まれていただろう。
「可能性ではあるが。彼らの狂気に飲まれるとはそういう事だ。心を強く持ちたまえ。覚悟しておきたまえ。恐怖に飲まれぬように」
 愛無の言葉に、神妙に頷くのであった。
 マルクは戦場に見立てた駒を動かしながら、今の戦闘の復習をしていった。
「ここで……俺が油断した。最初に見た時、思いました。貴方は”強い”と。けれど、最初の攻撃が……油断したのです。この程度か、と……」
「それが上手く行ったのは、仲間のおかげでもある」
 風牙は言う。
「オレ一人で救える人の数なんてたかがしれてる。
だけど、何かを護ろうと戦ってる人たちは、オレだけじゃないんだ」
 手が届かないところには、きっと仲間がいる。
 それを感じられたのが、たまらなく嬉しかった。
「これは僕の持論なんだけど、」
 と、マルクは前置きして。
「僕たちの戦いって、多くはチーム戦だと思うんだ。
そうなると重要なのは、一人ひとりの戦闘能力よりも、役割分担と戦術だと考えてる」
「ふむ……」
「達成すべき目的があって、そこに至るまでの「勝ち筋」をどう描くか。まずコレが重要。
そして、描いた「勝ち筋」を実現するために、個々人が何をすべきかまで落とし込む。
これは誰か一人の役割じゃなくて、全員が考えるべきなんだ。
皆で「どうすれば勝てたか」を振り返ってみるのもいいんじゃないかな」
「うんうん。想いを共にする仲間と心を一つにし、部隊として機能すれば君達はきっと幾らでも強くなれる。なんてね、花丸ちゃんは思うな」
 彼らは、一人ではないのだから。
「お話して互いを理解すること、其処から始めたらどうかな?」
「成程……」
「例えば今回の模擬戦なら、そちらは僕を真っ先に狙うべきだった。攻撃力と回復能力がある割に、防御は弱いからね」
 客観的に、あっさりと自らをそう称するマルクに、兵士たちは感じ入っている。
「……狙われたら命懸けで踏みとどまって、倒れないように頑張るけど」
 ごくりと祈祷師が唾をのんだ。戦場の生命線となるのだ。
「倒れさせない、きっと」
 ポテトが小さく、しかしはっきりと言った。
「ヒーラーはみんなの命を預かる立場だから、みんなの傷を癒すと同時に自分の身を守れたほうが良いと思う。その為には、自分に合った動きやすい防具がお勧めだな。……動きやすいものでいい」
「あ、あの!」
 弓兵の1人がマギーに頭を下げた。
「射撃、お見事でありましたっ。どうかコツを伝授いただけないでしょうか!」
「えええっ、えっと。ボク自身もまだまだなので強さの秘訣とかはお話しできませんが……そうですね。後ろにいるボクらだからこその眼を鍛えるのがいいのかなって」
「眼、ですか」
「相手をよく見るだけじゃなく、周りも見るということですね。なんて、えっと。お互い、頑張りましょう……!」
「……双銃ってかっこいいですよね」
 弓をちらっと見る兵士であった。

 こうして、和やかに時は過ぎていく。
「良き試合でした。反省点はたくさんありますが、お頼みしてよかった……」
「──上には上がある。
我々もまた、敗北を喫した戦いが無かった訳では無い。これからも我々よりも強く、強大な敵は現れるだろう」
 マナガルムは、彼らの一人一人と固い握手を交わした。
「だが、それでも我々は一人では無い
心を通わせ、共に戦ってくれる仲間が居る──それは俺達も、そなた達も同じ筈。個は全の為に、全は個の為に、だ。機会があればこの背中、そなたらに託そう」
 なんと大きい背中なのだろうか。やはり、彼らは自分たちの数歩先を行っている。
 けれど。
 並び立ってみたい。誰もがそう思った。彼らに。いつか彼らと肩を並べて、戦場を共にする日が来るだろうか。
 その日は、遠くない……ように思われた。

成否

成功

MVP

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

状態異常

なし

あとがき

演習、お疲れ様でした!
兵士たちも、割と一方的にならないように調整したつもりだったのですが、いやはや。お強い。
なかなか切り崩せず、このような結果となりました。
彼らも多くの学びを得たことでしょう。
いつか京の危機には、一緒に戦うこともあるのでしょうか。
強くあらんと、決意を新たにする武者たちでした。
気が向いたらまた是非お手合わせお願いしたく!

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