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シナリオ詳細

飛んで火に入る夏の巨大イカ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 かつて絶望の青と呼ばれた海域を踏破し、新天地豊穣の地へと至った海洋王国。
 国民達はついに悲願であった『大号令』の達成に王国の民は心より歓喜した。
 ここからは新たに航海を行いつつ豊穣との交易を行うなどして活発な交流が行われるとみられるが、豊穣の地もまだ様々な問題を抱えている為、今しばらくの時間を要することになると思われる。
 さて、海洋はアクエリア島を足掛かりとして豊穣方面への航海を繰り返している。
 以前に比べれば絶望の青……現状は静寂の青と呼称は改められてはいるが、穏やかな航海ができるようになったとはいえ、まだまだ危険は多い。
 例えば、狂王種や変異種の存在は未だ確認されているし、残存勢力である魔種もまだこの海域に潜んでいると思われる。
 安全確保の為には、それらの討伐を進めていくことが必須なのだ。

 フェデリア島付近。
 以前の絶望の青攻略の際、冠位、リヴァイアサンといった強敵と交戦したこの海域も海洋王国による拠点化が進んでおり、豊穣を結ぶ航路の中継地点となっている。
 日々、海洋の船が往来するこの海域にある日突然姿を現したのは、全長10m程度もある巨大イカだった。
「…………………………!!」
 海上へと頭を出したそいつは複数の触手を振り上げ、小型のイカミサイルを発して船乗り達の船を攻め立てる。
「うわあああああああああっ!!」
「きょ、狂王種だ!!」
 船乗り達にとっては突然のことではあったが、まだ沖の方にそれらの存在は確認されており、こちらに流れ着いてくるのは珍しいことではない。
 先の戦いにおいて、船に乗って海洋、ローレットを支援していた者達も少なくなく、危機管理能力に秀でた彼らの判断は素早い。
 可能な限り巨大イカから距離を取り、舵を切って船への被害を防ぐ。とりわけ、マストや船底に穴でも開けられると致命的だ。
「アクエリア島に一時避難する。後は王国かローレットに討伐を依頼するんだ」
 狂王種が存在するだけで、障害となるのは見ての通り。
 海洋の船乗り達はアクエリア島へと一時立ち寄り、その討伐を依頼しに向かうのである。


 アクエリア島の浜辺にて。
「と、いうわけで、巨大イカ討伐です」
 静寂の青にはまだまだ多数の狂王種が生息しており、危険な状況に変わりはないと『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は語る。
 スクイド・テンタクルスと呼ばれるこの巨大イカは、全長が10mほどもあり、小型船をあっさりと破壊する力を持っているという。
 空は晴れており、航海は穏やかなもの。もっとも、暴れた巨大イカが大波を起こす可能性はあるので注意したいところではある。
 また、相手の飛ばす大量のイカミサイルや、触手によって船を沈められる恐れもあるので、借り物の船を使うなら注意して交戦に当たりたい。
「とはいえ、先の絶望の青の攻略で海での戦いに手慣れた皆さんでしたら、問題なく撃破できると思います」
 ある意味で、ローレットイレギュラーズにとっては、カモがネギしょってやって来たような状況。邪魔な巨大イカを討伐し、それを美味しくいただくことができる実に美味しい依頼である。
「私、ここで待っていますので、是非頂いてみたいです」
 アクアベルはアクエリオ島で調理器具を用意して待っているとのこと。誰も調理できないようなら、自分が料理を請け負うそうだ。
「それでは、巨大イカ討伐、よろしくお願いしますね」
 彼女は嬉しそうに、調理の準備を行うべくその場を離れていったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 夏なんだから、海中で思いっきり泳いで、巨大イカと戯れましょう!
 事後はイカ焼きもありますよ!

●目的
 狂王種の撃破。

●敵……狂王種
○スクイド・テンタクルス
 全長10mもある巨大イカです。
 基本は海中から頭を出し、墨を飛ばしたり、伸ばした触手を使ったりして襲ってきます。
 どこからか出現させる小型イカミサイル(50cm程度)は非常に痛いですが、しっかりと捕らえることができれば後で直接食べることも可能ですので、是非捕獲も狙ってみて下さいね。
 全身を揺さぶらせて大波を起こしてくることもあり、船を使って交戦する場合は波に煽られぬよう注意が必要です。

●状況
 静寂の青(元・絶望の青)からフェデリア海域へと流れつき、船を襲う巨大イカ討伐を願います。
 大型船が入れない海域の為、小型(~10m程度)、中型船(~25m程度)を任意の数だけ海洋の船乗り達から借り、この海域に近づくこととなります。くれぐれも沈めないようにお気を付けくださいませ。
 交戦に当たってはそれらの船を利用するほか、自分達で所有する小舟を使うこともできます。飛行、水中移動といったスキルも有用ですし、直接敵の身体に乗ることもできます。

 事後はアクエリア島へと戻って敵の巨体やイカミサイルを調理できます。
 お好みで食材を持ち込み美味しくいただいちゃってください!
 事後パートのみ『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)もご一緒します。
 調理担当が不在の場合、彼女がイカをさばきます。ご希望の品があれば彼女にお任せくださいませ。交流なども遠慮なくどうぞ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 飛んで火に入る夏の巨大イカ完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月09日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
オラクル=ヴァンジェーロ(p3p007449)
Apocalisse
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
ソニア・ウェスタ(p3p008193)
いつかの歌声
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは

リプレイ


 海洋、アクエリア島に集まったローレットイレギュラーズ達。
「海洋にはまだ不慣れですが、よろしくお願いします」
 改めて、アルビノ人間女性を模した姿をした秘宝種、『自分にはない色』グリーフ・ロス(p3p008615)が仲間達へと挨拶する。
「イカ食べれるとききました!」
 シスター姿の鉄騎種の子供、『Apocalisse』オラクル=ヴァンジェーロ(p3p007449)はドヤ顔で仲間達へと言い放つ。
「海王種って美味しいんだぜ!」
「昨日の夜からずっと、どう食べるかかんがえてました」
 鷹の飛行種である『水神の加護』カイト・シャルラハ(p3p000684)が楽しげに語ると、丸焼き、パスタ、イカリング……どれもきっと美味しいと、オラクルは胸を躍らせる。
「久々のイカ漁なのです!」
 金の交じった白髪から猫耳を生やす『生まれたてのマヴ=マギア』クーア・ミューゼル(p3p003529)も意気揚々と声を荒げる。
 思えば、旅人であるクーアがローレットに来て最初の依頼もイカ討伐だったらしい。
「狂王種が糧食にできるなら、ウチの所領の食糧問題も大分楽になるかもなのです」
 クーアは彼女なりに悩み事があり、その解消も考えていた。
「狂王種とはいえ、もはや廃滅の危機もないからな」
 海洋マフィアの若頭、『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)も皆を脅かしていた病気が根絶したこともあり、巨大なイカを食材に変えてやると意気込んでいた。
 確かに事前の情報で、邪魔な巨大イカを討伐し、それを美味しくいただくことができる実に美味しい依頼……と言われてはいたが。
「そもそも皆さんの生活が脅かされているわけですので、まずは討伐を第一に考えなくては」
 紫のウェーブヘアの少女、『勇気は勝利のために』ソニア・ウェスタ(p3p008193)は油断禁物と気を引き締める。
 とはいえ、仲間達はやはり事後のイカ料理に気持ちが飛んでしまっていて。
「……体を動かした後に食べるイカ、最高に美味いだろうなぁ」
 凛々しい顔立ちをした『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)も思わず垂れそうになる涎を抑えつつ、その味を思い浮かべる。
「お酒との相性もちゃんと味わう必要があるのです」
 クーアはイカ焼きと一緒に、自身の領地の特産品であるお酒を提供できないかと予め話をつけていたようで。
「……単に私が飲みたいだけではないのです。ホントウナノデス」
 猫なのにウワバミなクーアの要望もあり、自らの船の積み荷を確認していた『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)がシニカルな笑みを浮かべて。
「安心しろ。後でたっぷり持ち込んだ酒を振舞ってやるからよ」
 浜辺で食材の下拵えをして待つ情報屋アクアベルに飲み物が入った積み荷を託した以蔵は、その分戦闘用にと真水を自らの船に積み込んでいた。
 また、出港までの間、グリーフは慣らしも兼ねて近海で初めての水中行動を実践する。
「……水の中、気持ちいいものですね……」
 今の姿のモデルとなった女性はアルビノだった為、日差しの強い海とは縁遠かった。その為、海の体験の記憶はグリーフも乏しく。
「これは、ニアではなく私の体験。私の記録。私だけの」
 自らに経験を与えてくれる静かな海。それを荒らす存在なら、対処に意はないとグリーフは砂浜へと上がりながら呟く。
「まだまだ危険に溢れているんだね」
 それを聞いていた利一もまた、今は静寂の青と名前が変わったその海に残る脅威を放置はできないと、狂王種討伐に強い意欲を見せていたのだった。


 今依頼に参加したイレギュラーズを乗せた船はアクエリア島を出港する。
 ソニアも魔法のボトルシップを持っていたが、今回は以蔵の小型船に皆が乗り込む形となり、彼が操船まで請け負う形となる。
「これでも海洋の商人ギルドを預かってる身だ、船は動かせらぁ」
 煙草をくわえて舵輪を握る以蔵は、ゴーグルの奥から広がる海を見渡す。
 その分、皆戦闘に集中する形なのだが……。
「おふね初めて乗ります。ひえ……揺れる……」
 陸ではイカを食べられると喜んでいたオラクルが一転、波に揺られる船に怖がってしまう。
「なに、心配しなさんな」
 そんなオラクルに以蔵が呼びかける。
 海面は非常に穏やか。船は迷うことなく一直線に狂王種が迷い込んだフェデリア島付近へと向かう。

 しばらくして、イレギュラーズ達は皆、それを視認する。
「イカ釣りの時間だな!」
 カイトがうきうきしながら目の前に迫る全長10mもある巨大イカ、狂王種スクイド・テンタクルスの巨体を眺め回す。
「これだけ巨大なら、相当食いごたえはありそうだな」
 飛行種であるジョージはギフトを使い、コウテイペンギンの姿となって水中戦に臨む。
 グリーフもまたここまでは船上にいたが、戦いに備えて水着姿となる。ただ、胸部のコアの露出も危険と判断して変身バンクで砂神の棺を装着して対応していた。
「本業漁師を舐めんなよ! テイクオフ!」
 一方、カイトは敵を視認して翼で飛び上がり、船とは反対側の位置を気がけて低空飛行する。
「……むむっ、こんなの何でもないです。イカに遅れは取りませんよ」
 船の揺れを気にしていたオラクルだが、敵が現れたとなれば彼も持ち前の過酷耐性で乗り切ろうと踏ん張っていたようだ。
 なお、利一やジョージは巨大イカの全身を見回して。
「種別名が判明しているから、検索は容易だろうか」
 利一はブルーノートディスペアーを利用し、これまでいた近しい存在から有効な攻撃手段、弱点を探る。
「イカとさほど生態は変わらないのなら、狙うは頭と胴の付け根だろう」
 海中から頭を出したジョージによれば、イカの締め方と言えばそこだということで、メンバー達も意識して戦いに臨む。
「さぁ、調理の時間だ!」
 ジョージは再び水中へと潜り、船上や空中の仲間と共に巨大イカの攻略へと当たり始めるのである。


 狂王種スクイド・テンタクルスも自身へと取りついてくるイレギュラーズ達に気付き、2本の触手を振り上げてくる。
 太く巨大なその触手は、下手すれば軽々と小型船をもつかんで船体を真っ二つにしかねない。
 それもあり、カイト、グリーフがこの巨大イカを引き付けながら、メンバー達は船上や海中から攻撃することとなる。
 大きな緋色の翼からは羽根を飛ばしていくカイト。それが命中すると同時に爆破し、敵を怒らせていく。
(低命中ですし、そもそも水中で名乗りができるのでしょうか……?)
 海中のグリーフは少し不安を感じながらも、魔晶式信号弾を併用して名乗りを上げて。
「こちらですよ」
 すると、巨大イカは海中に向けて墨を吹きかけてきた。
 グリーフが事前に聞いていたように、墨を煙幕のようでなく年生を帯びて分身の如く使うようで、姿が視認しにくくした間に捕らわれてしまわぬよう注意する。
 イカの脚は10本。さらに敵はそれらの脚を動かすことで、2人を捉えようとする。
「足が多くても眼は2つだけ、俺らには追いつけねーぜ!」
 さらに、船上のオラクルもまた攻撃の引き付けに当たって。
「ずっとあなたのことをかんがえてました。個人的には丸焼きがいいな……と」
 相手を煽るように言い放ち、自由になる脚を伸ばしてこようとする巨大イカ。
 オラクルはその足の攻撃を捌き、自己回復をはかりながらも粘り強く敵を押さえつける。
 仲間達がうまく相手の気を逸らす間に、海中からペンギンの姿となったジョージが殺人剣の極意を自らの身体にのせ、突撃していく。
「ペンギン姿になっていても、破壊力の伝達は変わらない」
 防御にも利用する相手の脚を突き飛ばし、ジョージは相手の頭と胴の合間目がけて突撃する。
「イカの動きを制限したいところですね」
 クーアは現状、ある程度足場が安定していると判断し、巨大イカへと飛び移る。
 その素早さを活かして敵の身体の上を動き回りながら、クーアは敵に簡易封印を施そうとする。
「行けそうですね」
 上手く一発で相手の能力を封じたクーアはさらに、敵の動きを注視していかなる策が最善かを見極めようとしていた。
 操船しながら、以蔵も魔銃ミッドナイトラヴァ―で敵の巨体に弾丸を撃ち込んで攻撃に出る。
 先程、敵が海中で吐き掛けた墨が周囲に残っているが、以蔵はそれを食らって目晦まししないようにとゴーグルを着用している。
 さらに、墨をすぐ洗い流せるようにと真水を積み込んでおり、その辺りの対策は万全だ。
「ガンガン攻撃していこう」
 うまく以蔵が船を近づけてくれたこともあり、利一が因果を歪める力の残滓を指弾で飛ばし、巨大イカを恍惚とさせる。
 仲間の疲弊状況を見ながら、回復役のソニアは一旦攻撃に出て。
「頭の側面のあれは……」
 頭部に何やら射出口らしきものを確認したソニアは魔法を発動させ、生み出した複数の小さな氷の刃を飛ばして切り裂かんとしていく。
 そこで、敵の動きに大きな変化が。
「………………!!」
 すぐに自らの封印を解いた敵は、頭部の射出口を一斉に展開してきたのだ。
「イカミサイルが来るよ!」
 敵の攻撃を察した利一が呼びかけた直後、巨大イカは多数のイカミサイルを周囲へと放ってきたのだ。
 一部ソニアが噴出口を潰していたが、それでもかなりの数が飛んでくる。
「ミサイルもろとも巻き込んでやる!」
 羽根と炎を舞わせたカイトは火災旋風を直線状に放射し、言葉通りイカミサイルを撃墜してイカの触手も纏めて焼いていく。
 余裕を見て、カイトはそのイカミサイルの回収も考えるが、現状は後回しになりそうだ。
「避けられないなら、受け止めてやろう」
 ただ、海中のジョージなどはすでに実践しており、向かい来るイカミサイルを手袋型のガントレットで撃ち落としつつ捕獲して。
「ただではやられん」
 攻防一体の構えをとっていた彼は勢いのままに敵にも拳を打ちつけ、敵の体力を削いでいくのである。


 巨大イカ、スクイド・テンタクルスを3人がかりで気を引くイレギュラーズ達とクーアが相手の力を封じつつ戦いを有利にしようとするが、徐々に敵も狂王種の力を見せつける。
 敵は思いの他すぐに冷静さを取り戻し、且つ力を取り戻すこともあり、その身に宿る力を使ってくることも少なくなかったのだ。
「…………!!」
 巨体を大きく揺さぶらせた巨大イカに、突撃を繰り返していたジョージが危険を察して。
「いかんな、大波に警戒するんだ」
 仲間達へと呼び掛けるが、敵は素早く大波を巻き起こす。
 特に、波によって煽りを受けるのは小型船に乗って戦うメンバー達だ。
「ああっ!」
 オラクルは体勢を崩し、海へと投げ出されてしまう。
 操船する以蔵も必死に舵を切って。
「あーちくしょう!」
 全身全霊で敵へと大喝を放つ以蔵だが、敵もしぶとくその場に留まって触手を頭上から叩きつけ、彼を攻め立てた。
 頭上からカイト、水中からグリーフが気を引こうとするが、敵は執拗に船を攻め立てようとする。
 再度触手が叩きつけられた以蔵はパンドラの力を砕いてなお、舵を握りしめて。
「こっちにゃ、この船壊せねえ事情があるんだ。絶対ぇ捕まってたまるかよ!」
 なんとかその場から逃れ、彼は船へと触手が巻き付かれるのを避けていく。
 一方、敵の狙いは海中へと落下したオラクルへ。
 グリーフがカバーに当たろうと向かっていくが、素早く撃ちつけられる巨大イカの触手に叩きつけられ、オラクルもまた運命の力に頼って意識を繋ぎ止める。
 ようやくカバーが間に合ったグリーフはこちらへと向けられる攻撃に身構え、反撃を叩き込みながら状況が好転するの待つ。
 仲間達が敵の対応に手いっぱいとなっているのを受け、クーアが敵の身体から水中へと潜り、オラクルの救出へと向かう。
「なんとか振り落とされずに済みましたが……」
 一方で、船上で手すりにつかまって難を逃れたソニアはまず以蔵の回復をと練達の治癒魔術を施す。
 海からクーアがオラクルを引き上げてくれば、ソニアは纏めて皆に癒しを齎すべく天使の歌声を響かせていた。
 仲間達が態勢を整える間、カイトと利一が奮起して巨大イカを押さえつける。
 頭上から赤い羽根を飛ばして、巨大イカの身体へと突き刺すカイト。
 敵も彼にイラついたようで、大きなモーションを見せる。
「墨がくるよ」
 利一がゴーグルを装着しつつ仲間達に注意を促すと、その直後敵は大量に黒い墨を周囲のメンバー達へと吹きかけてきた。
 それを勢いよく浴びせかけられたカイトはすぐさま海中で洗い流す。
「羽根についたら取るの大変なんだよな、イカスミ。タコのほうが幾分楽だぜ」
 水神の加護を受けているカイトは海中にあってもさほど動きが鈍ることなく、すぐに空中へと戻っていく。
 水中へと落ちた仲間の救出が上手くいったこともあって攻撃を繰り返す利一も、いつもの間にか装着していたゴーグルで墨を素早く拭う。
 回復役が一度倒れかけたメンバーのケアに当たっている都合もあり、引き付け役の疲弊を察した利一もまたその一員に加わるべく前に出て。
「こっちだ」
 自らの居場所をアピールし、伸びてくる触手を受け止めつつ指先で弾く歪業で迎撃していく。
 再び、船に戻ったクーアも再度敵の能力の封じに当たって。
「今度こそ、封じたのです!」
 しかし、これまでの状況を見るに、いつまで効力が続くかは怪しいと感じていたイレギュラーズ達は一気に攻勢を強めて。
 水中ではグリーフが反撃を繰り返しながら防御態勢を取り、傍からジョージが突撃して巨大イカを痛めつける。
「貴方は子羊……ではないですねどう見ても。失礼しました」
 船上は自己再生とソニアの手当てで持ち直したオラクルが再度敵を煽る。
「ならば、敵ですね。悔い改めて、丸焼きにおなりになれです」
 上手く気を引くことができれば、オラクルは破壊の鉄鋼で伸びてくる触手を殴りつけて。
「信ずるものは救われる……改宗せよ!」
 隙あらば、本体にも強力な一撃を叩き込んでいく。
 巨大イカはまだ力を発揮できずにいたこともあり、クーアは簡易術式を発動させる。
 クーアが飛ばす光弾は執拗に巨大イカの身体へと纏わりつき、その動きを鈍らせる。
 それを見たソニアはまたも小さな氷の刃を多数生み出して相手の頭を切り裂き、イカミサイルの噴出口を潰していく。
 頭上を飛ぶカイトがさらに、相手の脚を赤い羽根で撃ち抜いていき、触手を無力化させていけば、巨大イカも徐々に抵抗しなくなって。
 そこで、指弾を飛ばした利一がなおも撃ち放った指弾の連撃で巨大イカの頭を貫いた。
「………………!!」
 大きく目を見開いたスクイド・テンタクルスはだらりと触手を垂らし、海上に浮かんだまま動きを止めたのである。


 スクイド・テンタクルスを討伐して、メンバー達は確保できる範囲で船上となった海に浮かぶイカミサイルを確保していく。
 特を同じくして、ジョージは改めて巨大イカの頭と胴の付け根を狙い、一点突破の衝角を打ち込んで締めていった。
「色が変われば、締められた筈だ」
 利一は仲間とロープで縛り、その巨大イカをアクエリア島まで船で引っ張る。
「……早く食べたいっ!」
 島まで戻る道のりを長く感じてしまう利一だが、皆同じ心持ちだろう。

 アクエリア島へ到着すれば、カイトが主となって巨大イカの全身を捌いていく。
「でかいと捌きがいがあるな!」
 楽しそうなカイトは丁寧にワタを外し、水で洗い落として墨袋を削いでいく。
「イカ祭りです。丸焼き、丸焼きがいいです!」
 料理ができないというオラクルがそこで、自身の希望を声高に繰り返す。
「あとは美味しく焼いてくれよ! ……俺は焼くんじゃねーぞ!」
 一通り作業を終えたカイトは翼を羽ばたかせて主張すると、アクアベルが苦笑しながらも切り分けていく。
「あまり複雑すぎない簡素なものが良いでしょうか……」
 ソニアは手伝いをと切り分けてから、手数を増やすべく焼いてイカ焼きにしたり、揚げてイカフライにしたりと調理を進める。
「……うん、美味い! アクアベルは料理上手だなぁ」
 料理はサバイバル料理が基本という利一は食べるのに注力している。同じく食べる専門と主張するオラクルと共に、それらの味に舌鼓を打ちながら会食を楽しむ。
「……、おいひぃ……がんばった甲斐がありました」
 オラクルは敢えて大きめに切り分けた特大丸焼きを所望すると、それに応えたアクアベルがソニアと共に大きく切り分けた以下の切り身を焼いたものを皿へと盛る。
「おおきい! たくさん食べてもまだまだあります!」
 彼は嬉しそうにそれをがつがつと頬張っていた。
 また、仲間が酒のつまみを所望していることもあり、ソニアはイカの刺身なども用意するのだが、彼女自身はそれに手を付けようとはしない。
「だ、だって生ですよ? 怖いじゃないですか……」
 どうやら、元居た世界でもソニアは食す機会がなかったのか、敬遠してしまっていたようだ。
「調理は感謝するが、アクアベル嬢はまだ食べていないだろう」
 ある程度、イカの歯ごたえを楽しんだジョージは調理を変わり、海鮮焼そばを振舞うと、彼女も嬉しそうにそれを頂いていたようだ。
 また、この場にはイカ料理だけでなく、以蔵の持ち込んだジュースもたんまりとあり、皆それで喉を潤していた。
「ヒーヒー言いながら討伐したんだから、ちったあ楽しみがあってもいいよな?」
 以蔵自身もイカ調理を堪能しつつ、持ち込んだ酒を煽る。
「はー、最高。命かけたかいあったぜ」
「本当、至福のひと時なのです」
 ねこだけどひとなのでと、クーアも豊穣からいただいた調味料……お醤油を使い、こんがり香ばしく焼かれたイカをつまみに、辛口のお酒を口にしていた。
 ある程度お腹が膨れれば、利一などは腹ごなしにと水着に着替えて砂浜や波打ち際で遊び始める。さすがに海はクラゲがおり、入ることは無かったようだ。
「……けぷ。おなかいっぱいです。デザートにパスタ頼んでもいいですか?」
 一方、別腹で注文するオラクルに、皆から笑いが起きていたようだ。
 そんな仲間達に加わり、秘宝種のグリーフもまたイカ調理の味を楽しむ。
 海での時間、体験を五感に記憶に刻み、彼女もこの一時を充分に満喫していたのだった。

成否

成功

MVP

羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは敵の弱点分析や仲間のフォローなどに動いていた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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