PandoraPartyProject

シナリオ詳細

死体を運ぶ火の車

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 高天原はカムイグラの都。
 そこは和装の精霊種や鬼人種が多数住まい、清廉とした雰囲気を感じさせる場所だ。
 豊穣の中心とあり、華やかさを感じさせる土地でもある。富裕層が多いこともあり、沢山の人は仕事を求めてこの地へと集まってくる。
 しかしながら、人が集まる場所には獲物を求める妖や悪霊の類も集まりやすく、そうした事件も多く起こっているようだ。

 高天原の外れにある墓地。
 昼間は疎らに人々が訪れ、祖先や身内に花やお供え物を備え、祈りを捧げる。
 ただ、夜になってまでそんな場所に近づく者はほとんどいない。
 暗闇の中では、妖や悪霊を招きやすいことを皆、本能的に察しているのかもしれない。
 メラメラ、メラメラ……。
 その墓場へと近づいてくるのは、猫の獣人を思わせる姿をした妖。後ろに燃え上がる荷車のようなものを引き、そいつは墓場へと足を踏み入れる。
 何を思ったのか、墓を暴き始めたそいつは掘り出した死体を火の車へと積んでいく。
「キヒッ、キヒヒヒ……」
 不気味な笑いを上げながら、そいつは火の車を引いて墓場から去っていくのだった。


 此岸ノ辺、黄泉津に存在する穢れの地。
「来たね。アンタ達を待っていたよ」
 そこで、和服姿をした『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)がローレットイレギュラーズ達へと声をかけてくる。
 情報屋が別の用件で動いていることもあり、今依頼のメッセンジャーかつサポーターとなるべくオリヴィアがこの場で待っていたのだ。
「依頼内容は妖と悪霊の討伐。相手は墓荒らしのようだね」
 オリヴィアは予め聞いていた情報をそのままメンバー達へと伝える。

 現場は高天原の外れにある墓地。
 夜な夜な墓が暴かれ、死体を持ち運ぶ妖がいるという。
「目撃証言によると、火車ってやつの仕業らしい」
 この火車という妖は猫の獣種を思わせる姿をしており、葬式や墓場から死体を奪う。
 亡き側をどうするのかは分からないが、一説によれば食らってしまうのだという。
「仏になった者にまで手を付けるとは……、なんとも罰当たりな妖だね」
 オリヴィアが悪態づくが、そう考えるのは彼女だけではないだろう。
 さて、この火車を止めるためには、そいつの退く火の車まで合わせて討伐する必要がある。どうやら、妖は悪霊である火の車を運搬用の手段として利用しているようだ。
「敵情報は書面で預かっている。後で確認しておきなよ」
 墓場は高天原の人々の分を網羅するだけあって、それなりに大きい場所だ。火の車を引くとあれば、壁をよじ登ることはあり得ない。北東、北西、南の3ヵ所ある入り口を確認するだけで問題ないだろう。
「以上だね。直に日が暮れる。馬車を用意してもらったから急ぐよ」
 妖討伐に意欲を見せるオリヴィアと共に、イレギュラーズ達が現地を目指して移動していくのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。

●目的
 火車、火の車両方の討伐

●概要
 高天京の外れにある墓地近辺に、怨霊の出現情報が寄せられております。
 死体を奪おうとする墓荒らしのごとき妖が出現するそうですので、その討伐を願います。

●敵
○火車(かしゃ)
 全長1.5mほど。猫の獣人を思わせる見た目をした妖です。
 魔眼や炎を使う他、しなやかな身体で躍りかかるなど、素早さと魔力に秀でた相手です。

○火の車
 火車が引く車輪が燃え上がる荷車ですが、自立して行動も可能な怨霊でもあります。
 質量を活かした体当たりだけでなく、炎の車輪を個別に操って相手を引き潰そうとしたりするなど、侮れない相手です。

●NPC
○『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)
 今回の依頼の加勢に当たります。
 シャムシールを使った近接戦だけでなく、水の術を使った射撃攻撃も得意としています。

●状況
 夜間、高天原の外れにある墓地の周辺に妖が現れますので、討伐を願います。
 墓場は広いですが、大きさもあって、張ってくる方向は北東、北西、南の3か所に限られます。ダッシュすれば2~3ターン程で各入り口には駆けつけられるでしょう
 墓場の外から炎を燃え上がらせて現れる為、発見は容易でしょう。

 事後はこの地に眠る人々に鎮魂の祈りを捧げるとよいでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 死体を運ぶ火の車完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月31日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
幻夢桜・獅門(p3p009000)
竜驤劍鬼

リプレイ


 日が暮れ行く高天原の街を、馬車が駆け抜ける。
 その中には、ローレットから派遣されたイレギュラーズ達の姿があった。
「死体を奪う墓荒らしか……」
「墓荒らしの猫妖怪ってか、名前くらいは知ってるが詳しかないな」 徐に口を開いた樹精、『ハニーゴールドの温もり』ポテト=アークライト(p3p000294)の呟きに、巨漢の『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)が今回の討伐対象について然程知識がないと頭を横に振った。
「妖がお墓を荒らしてるの? なんてことをするのかしら」
「なんとも罰当たりな妖だ」
 異世界のエルフである『揺蕩』タイム(p3p007854)、和装の『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が揃ってその行いに不快感を示す。
 その後、2人はわざわざ人の死体を漁る妖の目的も口にする。
 食用なら人である必要はないと思われるが、妖には何かこだわりがあるのだろうかとタイムが推論を語れば、錬もそういう恐怖から生まれた妖だからなのかと自身の考えを展開する。
「墓荒らしか……いずれにせよ迷惑な話だな」
 精悍な体つきをした鬼人種の少年、幻夢桜・獅門(p3p009000)は豊穣の地で起きる事件に辟易としていた。
「墓所は死せるものが穏やかに眠る場所。そして生きている者が故人に思いを馳せる場所でもあります」
 そこで、妖憑の少女『全霊之一刀』希紗良(p3p008628)が淡々と自らの考えを口にして。
「そこを荒らすのは到底許されるものではないのであります」
「死者への冒涜……ですか」
 見た目は人間の成人女性といった『自分にはない色』グリーフ・ロス(p3p008615)だが、秘宝種である彼女は歴史から見れば天義などでは同様に扱われるのではと口に仕掛けて……いえ、と一旦話すのを止めた。
「なんでもありません。ワタシは私として、今ここに生きている。それだけは確かですから」
 そして、改めて墓の存在が遺族にとって大切なモノであるとグリーフは語って。
「それらを奪われることによる喪失・悲嘆を、ワタシは望みません」「ああ、皆一緒さ」
 同行する『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)も同意を示す。
 そこで、獅門がそれはそれとして、と話を切り替えて。
「火車はまだ斬った事ないからちょっと楽しみだな」
「ま、殴れば死ぬ存在なら恐れるもんでもねえな、ぶっ飛ばすぜHAHAHA!」
 武を磨く獅門は、素早い相手を如何にして捕まえるかと考え始めると、貴道が軽く拳を突き出して笑う。
「何はともあれ、仕事は仕事だ。泥棒猫を成敗しなくてはな」
「この豊穣の地に領地を構える者として、そして神殿騎士団の一員として、『魔』の存在は皆殺しだ」
 錬はローレットの依頼として。そして、自称聖剣使いの『病魔を通さぬ翼十字』ハロルド(p3p004465)は妖の存在そのものを否定すべく討伐に当たる。
「放っておけば奪われた死体による第二の悲劇や惨劇も起こりそうだし、ここで食い止めよう」
 丁度、現場へと到着したこともあり、ポテトはそう仲間達へと促しながらも馬車から降りていったのだった。


 高天原の外れにある墓地。
 見渡せる程度の広さがあるこの場所へと妖……火車は現れるはずだが、車輪が燃え上がる荷車である火の車を伴うこともあって内部への突入は南、北東、北西の3ヵ所の入り口に絞られる。
 その対処の為、オリヴィアを加えたイレギュラーズ達は4班に分かれて警戒を行うことになる。
 南はポテト、グリーフが敵襲に備えていた。
 ポテトは戦闘による被害を防ぐべく保護結界を展開し、グリーフは暗視を働かせて墓場の外を見回す。
 そのグリーフの頼みで、オリヴィアは錬と獅門と墓場内中央で、どの入り口に妖が出現してもすぐ駆け付けられるように備える。
 錬はいち早く敵の出現を察することができるよう墓石から無機疎通を行いつつ、時に空にも注目する。
 空は獅門が信号弾を撃つ手筈となっていた。
 『北東:青色』、『北西:赤色』、『南:黄色』と3色を使い分けることでどの入り口に敵が出たか示す算段となっていたのだ。
 月灯りの雫を目に点して視界を確保する獅門は鳥のファミリアーも飛ばし、火車の探索に努めていた。

 北東には貴道、タイムの姿がある。
(すっごい大きな人だなー)
 タイムは見上げんばかりの貴道の巨体を見上げつつ挨拶して。
「頼りにさせて貰いますね!」
「ああ、任せな。HAHAHA!」
 頷く貴道は墓には妖を入れさせまいと、その巨体で墓場への入り口を封鎖する。基本的に彼は敵を墓に入れるつもりなどないし、万一入られたとしても死体漁りは断固阻止の構えだ。
「火の車は自立行動可能って話だし、持ち逃げされちゃたまらねえからな」
 タイムも任せきりにはせず、サイバーゴーグルを装備した上でカラスのファミリアーを上空に旋回させる。
「ふふ、こういうのちょっとやってみたかったの。あ、遊んでる訳じゃないですよ!」
 この警戒態勢を何処か楽しむ素振りを見せつつ、タイムは墓地から少し遠い場所に着目する。墓地からと居場所で発見すれば、それだけ早くイレギュラーズ達は動けるはずだ。
「ん……?」
 タイムは北西の方角に何かを発見していた。
 その北西には、ハロルド、希紗良が詰めていた。
 ハロルドも暗視を使って墓場などの地形を把握しようとする。
 周囲をきょろきょろしていた希紗良も気を抜かぬよう警戒していたが、遠方から向かってくる赤い炎を視認して。
「あれが、火車と火の車でありますかね……?」
「違いないな」
 すぐさま、ハロルドは墓場の外へと身を顰めると、希紗良は一人で妖の侵攻を妨げることとなって。
「絶対にここは通さないであります」
「キヒッ、キヒヒヒ……」
 燃え上がる車輪を持つ荷車を引いていた猫の妖、火車は不気味な笑い声を上げながら近づいてくる。
 そこへ、物陰からハロルドが飛び出して奇襲する。
 予めもう一人の自分の可能性を纏った彼は火の車目がけ、透明な青い刃を飛ばす。
「どこへ行く?」
「キヒッ、いい度胸だ」
 奇妙な笑みを浮かべる火車と、この場の2人は対する。
 それを察した中央の獅門。
「北西だ」
 すぐに錬とオリヴィアがそちらへと向かうが、獅門は色を間違えぬよう確認してから魔晶式信号弾を頭上へと打ち上げる。
 空高くで弾けたのは赤い弾。
 南と北東のメンバー達もまたその色を視認してすぐ、北西へと移動を開始したのだった。


 南のポテト、グリーフは空に上がった赤い信号弾を確認し、全力で北西入り口を目指して墓場の内部を移動し始める。
 耐久力に優れるグリーフに回復専念で力を発揮するポテトは妖の侵攻に十分耐える自信はあったのだが、どこから敵が来るか分からなかったのは致し方ない。
 北東の貴道、タイムは一度墓の外へと出ていた。
「内部の墓の配置を見るに、墓の外周を経由した方が早い」
 そんな事前調査から貴道は判断し、タイムもそれに追随していたのだ。
 聖躰を降臨させつつ移動する貴道へと、タイムが声をかける。
「わたし達の方に来ていたら、墓地に入れないよう堪えてみせたのに……」
 正直、タイムは耐久性のあるスキルを覚えていたらとも考えており、自分達の方に来なくてよかったという安堵が少なからずある。
 それでも、彼女は確認せずにはいられなかった。
「攻撃は最大の防御っていうし! ね、剛田さん」
「HAHAHA! もちろんだ!」
 もしもの話ではあったが、北東に敵が現れていたならば、2人は仲間達が駆けつけるまでうまく妖を食い止めていたことだろう。
 もちろん、逆もしかり。仲間が堪えている間に駆けつけねばならないと、彼らは北西出入り口をへと急行していく。

 メラメラ、メラメラ……。
 燃え上がる荷車の車輪が自立して動く。そいつもまた怨霊であり、猫の獣人のような姿をした妖、火車の意のままに動く。
「キヒ……」
 そして、火車は邪魔するイレギュラーズに奇妙な笑みを浮かべ、自らの周囲へと燃え上がる炎を具現化させていた。
「ははははっ! おら、掛かってこいよ、ハイエナどもが! テメェらごときに俺の翼十字が貫けるか!」
 そいつらを煽るハロルドは、墓場へと敵を入れぬよう入り口へと陣取りつつ、その意識を強く自分へと引く。
 すると、火車が身を躍らせ、火球を直接ハロルドへと叩き込み、さらに火の車が彼の体を引き潰そうと体当たりを仕掛けてきた。
 多少のダメージこそあれ、ハロルドは態勢を崩すこともなく、体を炎で焦がした様子もない。
「抵抗力には自信があるのでな。並大抵の異常攻撃は俺には通用せん」
 自身ありげに言い放つハロルドの後ろから、身体強化魔術を自らへと施していた希紗良が敏捷性を活かして仕掛ける。
「キサもいるでありますよ」
 鬼渡ノ太刀で多段牽制を仕掛け、希紗良が火の車の侵攻を食い止め、少しでも相手の勢いを削ごうとしていた。
 その攻防をもう1度繰り返し、敵の侵攻を食い止めると、墓場内部から水の弾が飛んできて、火車の顔面へと浴びせかける。
「間に合ったようだね」
 距離を置いてオリヴィアが水の術を使っている間に、肉体再生によって力を高めた錬が傷付くハロルドへと近づき、ヒールオーダーを放って癒しを齎すことで場を繋ぐ。
「キヒ、まだいたのか……!」
 だが、妖どもは援軍程度で臆することもなく、なおも炎を燃え上がらせる。
 そこに、少し遅れる形で駆け付けた獅門が大太刀「啾鬼四郎片喰」で火の車目がけて正面から切りかかる。
「仏さん達は眠りについているんだから静かにしろ」
 まっすぐ、華やかさを感じさせる斬撃に、火の車が苦しみ、悶えるように炎を揺らめかす。
「出来ないっていうなら、力尽くで黙らせてやるよ」
「キヒッ、面倒な連中め……」
 薄暗い笑いを浮かべ、火車はなおも空中へと身を躍らせてイレギュラーズへと鋭い爪を薙いでくるのである。


 妖、火車と怨霊火の車。
 火車が主導となり、高天原の墓場を暴いて人の遺体を持ち去るという。
 なぜ、この妖が亡骸を持ち去るのかはあまり知られていない。
「キヒッ、よくも、この俺様の邪魔を……」
 火車もあまりそれについて語ることは無く、その身体能力を活かして多彩な攻撃を仕掛けてくる。
 自分に付き従う火の車も合わせ、自分達を煽るハロルドへと怒りの炎をぶつけ、突撃を繰り出す。
 ハロルドも多少であれば持ちこたえられはするが、さすがに妖どもが繰り出す攻撃は威力が高く、そう何度も耐えられはしない。
 ただ、そこに他の入り口の護りに当たっていたメンバー達が続々と駆け付けて。
「HAHAHA!」
 アメリカンなノリで笑い、傷だらけの拳を振るってくるのは貴道だ。
 直接、攻撃する前に、彼は気迫や殺気を伴い、フェイントを繰り出して相手の気を引く。
 すぐに火車や火の車の攻撃は貴道にも向き、火車は素早さで、火の車は重厚感ある一撃で攻め立てようとする。
 タイムは気を引き締めて神秘的な力を扱う本能を覚醒させ、仲間に注意を向ける妖らへ一条の雷撃を迸らせ、2体の敵を撃ち抜いていく。両方に当たったのを確認したタイムは喜んでいたようだ。
 そして、最後に駆けつけたポテト、グリーフは直接火車の姿を捉えて。
「死体が目的の相手が、生者のワタシたちに執着するかわかりませんが……」
 すでに、この場では2人がバトンを引き継ぐ形で敵の気を引いてくれている。
 グリーフはハロルドから壁役を引き継いだ貴道のカバーへと当たりながら、再生能力を高めつつ反撃態勢をとり、敵の自滅を誘う。
「天目は回復役有難う。後は私に任せてくれ」
 これまで、場を繋いでくれた錬へと礼を告げたポテトはこの場でも保護結界を展開し、仲間達の癒しを本格的に始める。
 まずは自らの魔力の使用能率を高めたポテトは調和の力でハロルドの傷を塞ぎ、さらに天使の歌を響かせてこの場で戦う仲間達に福音を齎す。
 万全のバックアップができる存在とは、かくも安心できる者だろうかと先に交戦していたイレギュラーズ達は安堵すらしてしまう。
「キヒッ、いくら頭数を揃えたところで……!」
 最初は笑っていた火車だったが、その表情はどんどん険しくなっていく。
 それもそのはず。壁、回復が機能するようになっていけば、妖どもは攻め手となるきっかけを失ってしまっていたのだから。
 仲間の支援を受けたハロルドは壁役を貴道へと託したまま、加速して突撃を行おうとする火の車の排除の手を強めて。
「神殿騎士団に伝わる剣術で、その身を刻んでやる!」
 墓場の外を走る火の車の動きを完全に捕らえたハロルドは、聖剣の刃を振り下ろすと同時に雷撃を叩き込み、火の車の全身に亀裂を入れていく。
 それでも、己の身を顧みることなく突撃しようとしてくる火の車へ、ポテトに回復役を託した錬が進み出る。
「水剋火、夜闇には分かりやすい火だが、ここには火葬を待つ者はいないぞ?」
 五行思想において、水剋火……水は火を消し止めるとされる。
 そう語った錬は突進を仕掛けてくる火の車に対し、激突の瞬間を狙ってノーモーションでその車輪を弾き飛ばす。
 大きく吹き飛ばされた敵は、獅門の方へ。
 彼は大太刀を再びまっすぐ振るい、火の車の身体の亀裂を切り広げてその全身を砕いてしまった。
「キヒッ!?」
 貴道と交戦をしていた火車は相棒の敗北に大きく目を見開く。
 一方で、目の前の巨大な相手はポテトの癒しに支えられ、笑いながら殴り掛かってくる。
 しばし、壁となって防御態勢をとっていた貴道だったが、攻勢に出た彼は集中し、我流のボクシングで飛び回る火車の体を殴りつけた。
 仰け反る敵の身体をタイムが放った雷が撃ち抜き、痺れを与える。
「キ、キヒッ……!」
 だが、なおも高い魔力を活かし、火車は魔眼で睨みつけてくる
 瞬間の火力は恐ろしいまであり、下手に受けてしまえばそれだけで意識を奪われかねない。
 すでに相手は1体となってはいたが、錬は横一線に氷の槍を生み出し、突撃する槍兵の如く火車の体を貫き、さらにオリヴィアの水弾が敵の攻勢を削ぐ。
 弱ってきた火車が何をするのか分からないと、グリーフは敵の行動パターンの変化に注意する。
 相手はやはり強引にでも墓場への突入をはかろうとする。
 行動を見るに、奪った遺体を喰らうのではないかと感じさせるが、グリーフは相手をしっかりとマークして進ませない。
 さらに攻撃を畳みかけていくイレギュラーズ達だったが、なかなかに火車もタフさを見せつける。
「中々頑丈でありますね……なれど、この勝負はキサたちの勝ちなのであります」
 心を、気合いを剣に宿す希紗良は相手の懐へと潜り込み、刃を煌めかす。
「この場を守るという気持ちの方が絶対に強いでありますから!」
 火車は睨みを効かせようとするが、仲間達のつけた傷の一つをなぞるように振るった希紗良の一撃の方が速い。
「キヒイイイイイィィィィィ!!」
 炎のような赤い血を撒き散らした火車は断末魔の叫びを上げ、力なくその場へと崩れ落ちる。
 それを確認し、希紗良は血を拭ってから刃を収めたのだった。


 妖討伐を終え、錬は一息つく。
「全く、迷惑な妖たちだったな……」
 武器を収めた彼は墓地の方を見やる。ポテトの保護結界が働いていたこともあり、戦いによる被害はほとんどないのが幸いと言えた。
 それでも、何かせずにはいられず、錬、ハロルド、獅門らは整地や清掃、それにすでに敵が暴いたと思われる場所の修繕へと当たる。
 グリーフは墓地の管理者と連絡を取ることにし、オリヴィアと連携して状況伝達、遺族の意向を確認するなど忙しなく動く。
 悲嘆というものもまたケアすべき一つ。
 まだ人間の感情を理解する最中にあるグリーフは墓地と向き合うことは必要だと判断していたのだ。
「騒がせて済まなかったな、静かに眠っていてくれ」
 墓の修繕をある程度済ませた錬、そしてハロルドはこの地で眠る人々に謝罪する。
「これで暫くは静かになるだろうからゆっくり休んでくれ」
 獅門も過去に豊穣で生きた人々の為に手を合わせる。
 そして、ポテトがギフトで花を育て、タイムと共に墓前へと供えて。
「静かに眠っている所を煩くして済まない。……もう終わったから、ゆっくり眠って下さい」
 皆で一緒になり、イレギュラーズ達は仏となった人々へと祈りを捧げるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
皆様一人一人が自らの役割をこなしたからこその成功です。
オリヴィアへと指示も感謝です。
今回はご参加、ありがとうございました!

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