シナリオ詳細
【再現性怪異譚】私たち、帰るおうちを探しているの
オープニング
●コール音
規則正しい日々。
いつもと変わらない日常。
うるさい上司に叱責されたり、顧客に無理を言われたり……。
それでも、コンビニの店員さんがかわいかったとか、楽しみにしている漫画が発売されたりだとか、いやなことと同じだけ、ちょっとだけいいこともあって。
世の中はだいぶ理不尽ではあるけれど、少なくともここでサラリーマンをやっている限り、怪異とは無縁のはずだった。
再現性東京(アデプト・トーキョー)。……練達が作り上げたこの箱庭にいる限りは。
RRRRRRRRRRRRr....。
呼び出し音が鳴り響く。
「こ、来ないでくれ……来ないでくれ……」
鍵をかけて部屋に引きこもる男。
「やめてくれ……頼む……頼むから!」
音はやまない。電話線を切っているというのに、だ。
右から。
「あたし、メリーさん」
左から。
「あたし、マリーさん」
少女たちの甲高い声が、鼓膜に響き渡る。耳を塞いでも、なお……。
「どっちがメリーさんで」
「どっちがマリーさん?」
「あ、あ、あ……」
沈黙。
「「ふふふ……」」
「「きゃははははははははははは」」
笑い声は耐えきれないほど大きくなっていく。
部屋には、男の悲鳴が響き渡った。
●aPhone
「あら、ありがとう」
誰かが少女の落としたスマートフォンを拾ってあげた。
希望ヶ浜学園の生徒の制服を着た少女。彼女は、過知 観音子(あやまち みねこ)と名乗った。
「あなたたちもローレットに行くの? お礼に飲み物でもおごろうか。どう?」
彼女はロイヤルミルクティーを頼んだ。どうやら常連らしい。ティースプーンをくるくると回せば、カランカランと氷が鳴る。
「ねぇねぇ、知ってる? こんな噂話を聞いたんだけど」
声を潜める観音子。
「双子の人形から、aPhoneに電話がかかってくるんだって」
「メリーさんとマリーさんってお名前の、寂しがりのお人形たち
持ち主になってくれそうな人に交互に電話をかけるの」
「電話をかけるうちにだんだん近づいてきて、そうして最後にこう聞くんだって」
「どっちがメリーさんで」
「どっちがマリーさん?」
「ちゃんと答えられなかったらーー」
死んでしまうとか。
まあ、ただの噂なんだけどね、としめくくる。
そうしていると、着信が響き……。
「あら、着信かしら。長く呼び止めてごめんなさい」
気をつけてね、と付け足した。
- 【再現性怪異譚】私たち、帰るおうちを探しているの完了
- GM名布川
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年09月01日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●二人の夜妖
「メリーさん……以前居た世界でも良く耳にした都市伝説ですね」
『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は不気味な笑みをいっそう濃くする。
「ふむ。ヴァイオレットも耳にしたことがあったか。今回も、都市伝説が何らかの形で捻じ曲がって顕現したクチか?」
『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、興味深そうにねこ耳を傾ける。
「よもや、メリーさん単品ではなく、相方が付いてくるとはな。私が知る都市伝説では、メリーさん一人だけなのだが。そのマリーって子はどこから来た?」
「……そこなんですよねェ」
「ふふ、これは単に私の興味だけれど。怪異と通話するなんて、中々できない経験じゃないかい?」
『宝飾眼の処刑人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)はへらりと笑った。
「とはいえこの手の呪いは術中に嵌るとロクな事になる試しがございません。
敵の思惑に乗らぬよう、気をつけておかねばなりませんね」
破綻者で人嫌いを自覚しながらも、つい忠告をしてしまうのはヴァイオレットの性だろうか。
「『どちらがどちらかを当てて、助かったものはいないらしい』ねェ……」
「ほんとうよ」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)を見つめて、自称魔女は頷く。
どうして助かったものがいない話を知ったのか?
しかし、この情報は確かなのだろう。
「Uh……友だちがほしいのならなんでおそってくるんだろう……?」
『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はきょとんと首をかしげる。長い前髪が揺れた。
「ヒヒヒッ……ひねくれ者なんですかねェ?」
「過知……えーと、魔女先輩?」
『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はぽちぽちと慣れた手つきでaPhoneを操作する。
「んー?」
「SNSのあかうんと教えてー。ふぉろーするよー」
「必要なときは繋がるから」
「えすえぬ……?」
リュコスと『お姉チャン』ジェック・アーロン(p3p004755)はaPhoneの操作に慣れない。
「どうやって使うのかな?」
「うわぁ! 音が?!」
リュコスはわたわたとaPhoneを掴もうとする。
「私だ」
汰磨羈であった。
「えっ、えっ、このボタンを押したらいいんだね……?
Uh……もしもし……」
「ちゃんと聞こえるね」
「aPhone越しの声ってこんななんだね、ハロー? 下手に触るとよく分からなくなっちゃいそうだけど、声が聞こえたら返事はするよ」
「返事!? するんですか!?」
『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)はぶんぶんと首を横に振って、aPhoneをハンカチに包む。危険物扱いである。
「いーやーでーすー! 私ホラー苦手なんですよーー!」
それでも何かあったときのために受け取りはするのだが、まあ。十分な危険物であるのは間違いがない……。
●着信
というわけで、カフェ・ローレットにてテーブルを囲むのだった。
「怪異とはかくも不思議なものだね。……ま、なんであれ私はただ剣を振るうだけだけれど」
こんな日常でも、シキが思い描くのは自身の業だった。
「しかし、前の世界では"怪異側"だったワタクシが……まさか怪異に襲われるとは。なんと皮肉な事でしょうね、ヒッヒッヒ……」
1度目の着信があった。ウィズィだ。
「はーーーー!? 出ませんけど!?」
着信拒否。
「これでおっけーなのかなかな?」
「これでこっちに来たら反則ですよ! もー! でもどうせ戦うことになるのでしょうし、皆さんとは一緒に行動しないといけないんですよね……ああ~もう~~!」
次の着信は、ジェックだった。
「んー、こっちかぁ。パス」
ジェックはそのままにしてみる。着信はしばらくおいて鳴りやんだ。
次は、ヴァイオレット。
「打たれ弱いワタクシに彼女らを止め置ける手立てはありません」
ヴァイオレットは肩をすくめ、同じく放っておく。
「そうそう、アタシの元に来ちゃったらすぐ倒れちゃうからね。あ、限定メニューのパフェだって。……頼んでみようかな?」
「はえるねー」
秋奈はaPhoneでSNSを観覧していた。使いこなしている。
「Uh……お肉はないね……」
「ハンバーグはあるかもしれませんよ」
突如、秋奈のaPhoneが震えた。
「もしもし! ちゃん秋奈なんだぞっ!」
秋奈はためらわない。
「なんでですか!?」
「うむ、元気でよろしい」
笑い声が響き渡る。
続けて、aPhoneをとったのはシキ。
「おや、かわいらしい笑い声だね」
ただ、へらりと笑うのみ。
「次は私か」
汰磨羈が操作する。やはり笑い声である。
「ふむ、二人分か?」
「あーーうっさいうっさい! もー!
こんなこともあろうかと! 耳栓持ってきてよかったです……!」
「がんするーってやつだね」
武器商人のaPhoneが震える。
「おっと、もらおうか」
武器商人は、通話を押して、机に伏せてただ流れるに任せる。
「Uh……ぼくみたい」
リュコスはおそるおそる手のひらを押し当ててみる。
「……もしもし……」
やはり笑い声だ。
「うう……というか怖くて全然お話できそうにないよ」
リュコスは縮こまった。
●第二陣
それからしばらく沈黙があり、思い思いに過ごしていたが。
「あっ」
「どうした?」
秋奈に一斉に注目が集まる。
「SNSでメッセ飛んできた」
「そっちからも来るの?」
「現代的だな」
通話のアイコンがぶるぶる震え、応答するとあの声が聞こえる。
『家族にしてくれないかしら』
「んー、いくつ?」
『えっ?』
「だって家族になるにしてもおねーちゃんなのか妹なのかわかんないと呼び方困るからねっ」
沈黙である。
「にげた。秋奈ちゃんの勝ちっ」
「えっと……メリーさんとマリーさんって“姉妹”なのかな……?」
リュコスはおずおずと言う。
「非常に似た声ではあるな」
再びかかってきたのは、汰磨羈であった。
「おうちや家族が欲しいなら、武器商人のおにいさん……おねえさん? そちらにお願いしてみるといい」
言いながら、ふと。
(そういえば、武器商人は性別不明だったな……)
と思ったのだった。
『ぶきしょうにん、さん? ……不思議なお名前』
『いいんじゃない?』
『いいとおもうわ……ありがとう!』
次にはシキ。
『あなたがぶきしょうにんさん?』
「ちがうよ」
『……ん、でもいいか。ねぇ、あたしたち、寂しいの。家族にしてくれない?』
「さぁ? お人形遊びはしたことないね。……それから、私の家族はもういないからねぇ。
他の家族は、いらないや」
『でも、あなたも少し寂しそう』
「少しだけ寂しそうな声だって? ふふ、気のせいだよ」
シキは穏やかに笑う。
電話は相談するような様子を見せて、小さく切れた。
「我だね」
正しく武器商人にかかってきた。
「武器商人だよ。ああ、待ってるよ。人形は嫌いではないからね」
『ほんとう!?』
『うれしいわ』
『それじゃあまたあとでね』
『会いに行くわね』
ジュースを飲み終えた秋奈ははたときがついた。
「……はっ! これホラーじゃん!」
「遅っ!」
●余興
「でも、あれですね……どっちがどっちって答えたら必ず殺されてしまうのなら……」
そこでウィズィは息を吸う。
「『どっちがどっちであっても、二人共愛してるよ……』って答えたらイイんですかね?」
「!」
「えもっかいやってすごい」
周囲が震撼するようなイケメンボイスである。
「きゃっ」
と、そこへ汰磨羈が壁ドンをしてみる。
『私も負けてないぞ』
実際、ウィズィは怖いから茶化しまくって気を紛らわしているのだが、なかなかに盛り上がりを見せていた。
「ジェックさんもれっつ」
「あれかな、可愛い路線かい? ちょっと手を組んで上目でこう」
「こう?」
シキの指導のもと、うるうるとした表情を浮かべるジェック。
いくらでもおごってもらえそうだ。ふ、と笑むシキのアクアマリンの瞳がきらめきをこぼす。
「リュコスさんは、んー、リボンいってみる?」
「U、U――Urrr?」
「私とおそろい……も似合いそうだけど、その髪型が落ち着くのかな?」
「う、うん。隠れてると……落ち着く」
「おやおや楽しそうだね」
「あらあらまあまあ」
武器商人とヴァイオレットはそんな彼らを眺めており。
ひととおりきゃあきゃあとやったあと。
「うーん、或いは、どっちでもない、とか。どちらもメリーさんでありマリーさんである、って答えるとか?」
「頭いいね……」
「いや、適当だけど」
「その線が正しいんだ、きっとね」
調べ物を終えた武器商人は一つの答えにたどり着いていた。
同じ声質。
魔女の情報。
収集した情報から……。
「普通に答えると必ず間違う」。
それが結論だ。
●おんなじ
武器商人のaPhoneがけたたましく鳴り響く。
哄笑があたりを取り囲む。
『家族になるなら、わからないとだめよ』
『『さあ、どっち?』』
「キミたちは知ってるかぃ? メリーもマリーも、綴りは同じなんだ」
熱波のごとく強烈な攻撃は、空を切る。
「だからキミたちはおんなじ」
『見つかっちゃったわ!』
『見つかってしまったわ!』
『どうしましょう? メリーさん』
『どうしましょう? マリーさん』
『『秘密を知られたら返してはおけないわ』』
「はーーーー!? 当たりなのに戦闘するんですか!?!?」
「まあ、タダとはいかないわけだ」
くるりと指先を回し、武器商人はマギ・ペンタグラムを呼び出す。金と銀の輪が周囲に浮かぶ。
人形たちの攻撃は、見事に弾かれる。
「んー」
私は結局いくつなんだろう。秋奈は考えていた。いくつだっけな。
ああそう、16歳だ。永遠に。
我は戦神。
秋奈の崋山の刀、光が走った。
「一曲、踊りましょうか」
ヴァイオレットのマリオネットダンスがマリーとメリーを絡め取る。
「ちょうど良いねぇ、そのまま頼めるかい?」
シキの処刑剣「ユ・ヴェーレン」が舞った。
刃は重く、断ち斬るための処刑刀。
細い体で自由自在に重力を振り回す。
不意打ちからの、剣魔双撃。
「め、メリーさん……マリーさん…ころさないで、家族や友だちを作ることってできないのかな……?」
(でも誰かに危害を与える存在になってるなら……もう無理……なのかな……)
「U、U――Urrr」
リュコスは少し迷ったが、仲間が傷ついたのを見て、ようやくリュコスは力を込める。血しぶきを鋭い刃に変えて飛ばした。
戦わなければ生き残れない。
『残念だけど、あなた方はあたしたちの――』
「とらえた」
夜妖の言葉を、厄狩闘流『破禳』が遮る。覆魂装具『調霊術式・流迅甲種』が輝き、濁流を受け止める。
水行のマナが、あたりをぐわんぐわんと回っている。めちゃくちゃな力押しに見えるその攻撃は、巧みに制御されている。
渦に巻き込まればもう身動きは取れない。
変幻自在の連撃だ。
「油断……禁物だ!」
太極律道・劉境楔。見極めて振るう双刀が。メリー・マリーの気の流れの。双子をつなぐ気の流れのちょうど真ん中をたたき切る。
狙うは、メリー。
太刀を振るう度に傷がつき、二人の違いが開いてゆく。
『いや、いやあーーーー!』
『よくも……』
「あー! やりますやりますよ!」
ウィズィは茨の鎧を纏い、勇ましく戦場へと駆けていく。
「ああああ悪霊退散悪霊退散だコラァ!!」
「相手を見ずにがむしゃらに攻撃する読ませぬ軌道。これは……!」
「通常攻撃でございますねぇ……」
しかしながら見事な一撃が、メリーを大きく切り裂いた。
戦場の音、遠くに聞こえる金切り声。
攻撃だ。あたりにびしびしと日々が入る。
ジェックの頭は、ひとまずそれを無視する。この位置ならば安全だ。瓦礫が近くを飛んで行く。
ブラック・ラプターは音を殺した。
黄金銃穿。
どちらがどちらかなんて、今、考える必要はない。
どっちにも当てるからだ。
●続けよう
「大丈夫かい、スピッツの子」
「U、U――Urrr」
「ワタクシの目をご覧いただきましょう」
ヴァイオレットのホープダイヤモンドの短剣が輝いた。
ヴァイオレットの第三の目。……"滅びの眼"。
『どうしましょう、あたし! 足が!』
『足がなくなっちゃったわ!』
はたから見ていれば傷を負ったにすぎない、しかしその幻術は現実すら浸食していく。ぼろぼろと崩れ落ちる。
「殴って倒せるなら怖くない! 怖くない!」
ウィズィがびしばしと攻撃を続ける。
「っと」
目ざとく、鳴るaPhoneを見つけたジェックは蹴り飛ばして出る。aPhoneから衝撃波が走った。
弾丸で処理。ふう、と額をぬぐう。
『これじゃあ同じじゃないわ!』
「二人で一つの君らに、『どっちがどっち』なんて意味があるのかい?」
シキは華麗な斬撃を繰り出す。一太刀、一太刀がどれも真に受ければ致命傷。
さらに。
リュコスの連撃は死角外からのものだった。来ると分かっていても、早すぎて対処ができない。流れ出る血を止めることはなく、リュコスは己が武器を振るう。
そこへ、緋い刀身が煌めいた。
その名を、戦神特式装備第弐四参号緋憑という。
「さて、仕上げだ」
汰磨羈の刀が相手の気力を刈り取って行く。
●お人形に戻る
リュコスのキルストリークが相手を圧倒していた。傷ついた皮膚はすぐに塞がって行く。
「もうーーー! しつこい! 終わって!」
ウィズィは銀のナイフを振り上げる。ハーロヴィット・トゥユー。コーラヴラヴ。
愛が私を呼んでいる。共に歩むと約束したあの人への、燃え立つ心を――真っ赤に燃える、巨大なナイフの形に変えて。この場を切り抜けるために!
「さァて、あと一踏ん張りだ」
武器商人のルーンシールドの輪が回る。
aPhoneが鳴る。ジェックはそれを撃ち抜いた。衝撃波はすんでのところで消える。
『あら、いらないの?』
「間に合ってるよ」
攻撃は擦り切れた勝負服をかすめ、とらえることはなく。
「……ッ!」
シキの剣魔双撃がメリーを打ちのめした。
もう一人、マリーが立っている。
「ヒヒヒッ、しぶといですねえ。二つで一つ、ですか」
ヴァイオレットは招くように虚空に手を差し伸べる。当たらなかった。いや、狙いはそれによってできた影。
影の貌。
貌なき影の渇望。
生き物のように対象に喰らいつき、飲み込むもの。
「ここはアナタ達のお家ではありません。非日常は絵空へと還る時間でございますよ」
『い。い、いやあああああああーーーー!! あ、あ、あ、あ……』
震える片割れは何を見たのか。怯える表情でヴァイオレットを見る。ヴァイオレットは人ならざるような表情でただ笑うだけ。
(なんなの、あれ……まるで、まるで……)
夜妖の中の夜妖。いや、それ以上のモノ。
「"二人で一つ"と言ったな。言い換えれば、"その命は繋がっている"といった所か?」
あまりに早すぎて、痛みが数瞬、遅れた。
抜き打ちで放つ刹那の霊刃。瞬時に刃先より伸びる霊刃が深々と突き刺さっている。
「いや、いや……っ!」
その刃は、陽の霊気を以て骨肉を断ち切り、陰の霊気を以て精気を引き抜く。
同じになれない。同じにならない。
「ならば。二人仲良く、同時に逝くといいさ」
斬撃の合間。
其れは牡丹の花を散らす如く――。戦神ノ刀が飛んで行く。
相手を斬るという一点に特化したすさまじい攻撃。
遠い遠い、此処ではない世界の伝説が、尾を帯び、そしてもう一度。
「これが私の見せどころ!」
選んだのは戦神ノ刀。
「チェストーっ!!!」
●終幕
ずいぶんと長いこと、笑い声を聞いていた気がする。
ようやく静寂があった。
あとに残ったのは二つの人形。
汰磨羈は、とどめを刺したことを確認し、立ち上がる。
「これで、夜妖の事件は何件目だ? いい加減、根を断ちたい所だな」
「終わった!? 終わった!? はーー! もうやだ早く帰る!」
ウィズィが空に向かって伸びた。
「家族がほしい、ねぇ」
ジェックはそう言って、人形を見下ろしていた。
「互いだけじゃ駄目なのかな。分かんないや、アタシには」
大切な人の顔がよぎった。
「……二人で一人な君らは、一緒にいるのが似合いでしょ」
その人形は、本来であればただ、ひっそりと。誰からも忘れられて静かに朽ちていく運命だったのかも知れない。
人形に手を差し伸べたのはシキだった。
「ふたりいっしょ……なのかな。よかったね……」
リュコスが言った。
(家族はいらないけど、友達にはなれるだろ)
シキは、人形を隣に置いておく。
それ以上、悪さはしないけれど。ポトリと棚から落ちてしまう。
何度も何度も。その頻度は増していき、ある日、ぬいぐるみは中途半端に“割れた”。
足が折れ、無残な姿だ。
「何か不満なのかな?」
人形たちは、とびきりの寂しがり。
シキはへらりと笑って、忌まわしい刀を握った。
そうしてくれといっているようだったから。
「寂しがりのお人形なんだってね、お互いがいるのに」
いつものとおりのカフェ・ローレット。魔女が頼むのはいつものホット。報告にやってきたようである。
「じゃあきっと」
「ひとつになってしまえば、寂しくなかろうね」
「ふたつでひとつなんだから」
顔の真ん中の縫い目が目立つ、赤と青のオッドアイの人形で遊びながら、武器商人は言うのであった。
「キミは人形はお好き?」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
というわけで、マリーさん&メリーさん、討伐です!
素敵なリクエストをありがとうございます!
とっても楽しいリクエストでした。フリーホラゲ、いいですよね……!
なお、SNSに出てきたのは完全に悪乗りなので、読みが足りないわけではありません。
気が向いたらこんなことにまた巻き込まれる日もあるのかもしれませんね。
ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
GMコメント
●目標
夜妖<ヨル>マリーさん&メリーさんの討伐
●状況
イレギュラーズのaPhoneに「マリーさん」と「メリーさん」から電話がかかってくる。
aPhoneは支給されているものとする。
プレイングで指定すれば未所持も可能(その場合はかかってこない)。
全員が所持していないとほかに被害者が生まれてしまうので気をつけましょう。
一度接触してからaPhoneを紛失・破壊などすると、超常的な手段でポケットなどにaPhoneが出現します。怖いですね。
・Phase1
くすくすという笑い声。二人分か?
・Phase2
「あたし、メリーさん。新しいおうちを探しているの」
「あたし、マリーさん。あなたはお人形は好きかしら?」
接触した人間に、メリーさんとマリーさんから交互に電話がかかってくる。通話を切っても通話はそのまま。
その場に複数いれば、複数人が同時に着信することもあるようだ。
「ねえ、私たちを家族にしてくれないかしら」
YesでもNoでも、相手の答えは変わらない。
※※※オプション※※※
プレイングで指定すると、双子は、「あら、あなたは、あまり人が好きではないみたいね」などのような、若干核心を突くようなことを言うようなことがあります。
オプションです。指定しない場合は特に何もありません。
・Phase3
ターゲットとなった人物のaPhoneが鳴り止まず、けたたましく呼び出し音が鳴ります。
もっとも好意的(受けて立つなども含む)な返答をしたプレイヤーの元に出現します。
●登場
メリーさん&マリーさん
「私たちは、二人で一つのお人形」
びいどろのような青い目と赤い目の双子。
見た目はそっくりな、西洋人形にとりついたヨル。
電話を通じてターゲットに近づき、精神が衰弱したところで「どちらがどっち?」と問いかける。
青い方がメリーさんで、赤い方がマリーさん……と見せかけて、任意に入れ替わることが可能である。
メリーさんは甘ったるい声だが、声質は同じ。
マリーさんは大人びた声だが、声質は同じ。
なので、「メリーさん、マリーさん」のどちらかを指名した場合は”絶対に間違う”ようにできている。彼女たちは二つで一つの人形なのだ。
問いかけに間違うor答えないと強烈な範囲攻撃を食らってからの戦闘となる。
・金切り声(物理属性範囲攻撃)
・精神波(魔力属性範囲攻撃)
「ねえ、家族にしてくれない?」
「柔らかいベッドで、いっしょに眠るの」
攻撃は物理属性の範囲への金切り声と、精神属性の単体攻撃。どちらか片方を倒しても、数ターン後には復活してしまう。同時の対処が必要だろう。
●過知 観音子(あやまち みねこ)
「私?」
「過知 観音子」
「魔女よ」
「お薬はぐつぐつ煮ないし、空は飛べないし、黒猫の使い魔もいないけど」
「私は、魔女」
自らを「魔女」と呼称する。
生徒であることは確からしいが、誰もその正確な学年やクラスを知らない。
この再現性東京2010において、情報屋のような存在であり、心強い味方である。
今回の件については、噂話までしか知らない。ただ、「どちらがどちらかを当てて、助かったものはいないらしい」と教えてくれる。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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