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シナリオ詳細

<夏の夢の終わりに>アヴァル=ケイン城前会戦

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『冬将軍』を討て!
「突撃――!」
「迎え撃てぇ――!」
 雪と氷の世界と化した妖精郷の、アヴァル=ケイン城前の平原で、二つの集団がぶつかりあった。
 一つは、深緑より派遣された迷宮森林警備隊とローレットのイレギュラーズからなる混成部隊。もう一つは『冬将軍』率いる冬の精と錬金術モンスター、邪妖精からなる混成部隊である。
 序盤は、質に優る迷宮森林警備隊・イレギュラーズ達が押していた。だが、数に優る冬将軍の部隊が次第に戦況を覆していき、迷宮森林警備隊・イレギュラーズ達は苦戦に追い込まれ始める。
 特に、冬将軍に挑んだ者は悲惨だった。冬将軍や吹雪の精霊の放つ吹雪にたちまち氷漬けにされ、動きを封じられる。あとは、護衛の氷の騎士や他のモンスターなどにいいように倒されていくだけだ。
「くそっ! 一体一体は雑魚でも、こうも数が多くては……!」
「諦めるな! 決死隊が冬将軍を討てば、勝ち目はある。それまで、持ち堪えるんだ!」
 迷宮森林警備隊の隊員二人が、背中合わせになって襲い来る敵の攻撃を次々としのぐ。
 そう、数で不利である迷宮森林警備隊・イレギュラーズの側は、冬将軍さえ討てば統制も士気も崩れると見て、冬将軍を直接狙う決死隊を用意していたのだ。

 イレギュラーズ十名からなる決死隊と、迷宮森林警備隊員十名からなる先導隊は、開戦から少し遅れて戦場に突入すると、脇目も振らずに冬将軍へと駆けていった。途中で立ちはだかる敵は先導隊の隊員が離脱して足止めし、一行はただひたすらに冬将軍を目指した。
「我々の露払いはここまでです! どうか、ご武運を!」
 最後の先導隊隊員が、決死隊に襲い来る敵の足を止めるために一行から離脱する。幸い、先導隊のお陰で決死隊に消耗はなく、もうすぐ冬将軍と遭遇出来るところまで来ていた。後は、冬将軍を討つばかりである。
 アヴァル=ケイン城前の戦闘の勝敗は、決死隊のイレギュラーズ達にかかっていた。

●決死隊、隊員募集
「『冬将軍』なんてものがいるとは、流石は無辜なる混沌と言うべきでしょうか……」
 『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は、呆れたように溜息をついた。彼の元いた世界では、冬将軍とはあくまで征服者の侵略を阻む冬の極寒のことを言った。まさか、『冬将軍』なる敵が実際に存在しようとは、想像も出来なかったのだ。
 とは言え、ぼやいてばかりもいられない。復活した冬の王の力によって妖精郷は冬に閉ざされ、このままでは妖精郷は滅亡してしまう。それを防ぐためには、アヴァル=ケイン城から籠城する魔種達を排除しなければならなかった。そして、そのための準備を整える必要が勘蔵にはあるのだ。気を取り直した勘蔵は、目の前に集まったイレギュラーズ達に向けて、用件を切り出した。
「皆さん。集まって下さり、ありがとうございます。
 今回は、アヴァル=ケイン城前の平原に陣取る『冬将軍』を討つ決死隊のメンバーを募集します」
 冬将軍の率いる軍勢の数は多いが、だからと言ってこれを放っておくわけには行かない。何故なら、この数はこの数で厄介であるのだが、分散して他の場所への救援に向かわれたらそれはそれで厄介だからだ。
 逆を言えば、冬将軍の軍勢をそこに釘付けにしておけば、他のアヴァル=ケイン城突入を目指す者達への援護となる。そう言う判断で、迷宮森林警備隊員と合同の部隊を用意し、冬将軍の軍勢を相手取ることになった。
 だが、冬将軍の軍勢ほどの数は用意出来ない。質ではこちらが有利と思われるとは言え、数に優る敵に野戦を挑む以上、何らかの手は打たねばならなかった。そこで、決死隊で直接冬将軍を討つというわけである。
「決死隊は、アヴァル=ケイン城前の戦闘の行方を左右する重要な部隊となります。
 その分厳しい戦闘になるとは思いますが――我こそはと言う方は、どうかご協力をお願いします」
 深く頭を下げ、勘蔵は決死隊のメンバーを募った。

GMコメント

 どうもこんにちは、緑城雄山です。
 今回は、全体依頼<夏の夢の終わりに>のうちの1本をお送りします。よろしくお願いします。

●成功条件
 『冬将軍』の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●アヴァル=ケイン城前の平原
 OPに記述のとおり、戦場となっています。
 イレギュラーズの初期配置は冬将軍から100メートルで、一丸となって固まっています。
 冬将軍の取り巻きは、いずれも冬将軍から至近の範囲内にいます。
 時刻は午前であり、地形や天候による戦闘へのペナルティーはありません。

●冬将軍 ✕1
 アヴァル=ケイン城前の平原にいる冬の精達のリーダーであり、錬金術モンスターや邪妖精の指揮も執っています。
 衣装を凝らした氷のフルプレートアーマーと言う姿をしており、氷で出来た馬に乗っています。
 回避と特殊抵抗がやや低めなものの、その他の能力は全般的に極めて高いです。

・攻撃手段など
 氷の馬上槍 物至単 【災厄】【凍結】【氷結】【氷漬】
 薙ぎ払い 物至列 【凍結】【氷結】
 ランスチャージ 物超単 【移】【万能】【弱点】【災厄】【凍結】【氷結】【氷漬】
 ブリザード・近 神近域
  【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
 ブリザード・遠 神超域
  【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
 【凍結】無効
 【飛】無効

●氷の騎士 ✕2
 冬将軍の護衛です。姿は冬将軍をシンプルにした様な感じで、やはり乗馬しています。
 命中はそこそこ、回避と特殊抵抗は低めですが、防御技術は高いです。
 戦況に応じて攻撃に参加したり、冬将軍やブリザード・スピリットを庇ったりすると見られています。

・攻撃手段など
 氷の馬上槍 物至単 【凍結】【氷結】
 薙ぎ払い 物至列 【凍結】
 ランスチャージ 物超単 【移】【万能】【弱点】【凍結】【氷結】
 精神無効
 【凍結】無効
 【怒り】耐性(高)
 【飛】無効

●ブリザード・スピリット ✕2
 冬の精の一種です。吹雪を吹きかけて攻撃してきます。
 命中が特に高く、その他の能力もバランス良く高くなっています。
 身体が微少な氷の粒で構成されているため、物理攻撃及び物理攻撃に起因するBSは無効となります。

・攻撃手段など
 ブリザード・近(通常攻撃) 神近域
  【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
 ブリザード・遠(通常攻撃) 神超域
  【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
 精神無効
 【凍結】無効
 【怒り】無効
 物理無効
 BS無効(物理攻撃に起因するもののみ)

●ターン経過について
 この戦闘においては、12ターン目までは冬将軍、冬将軍の取り巻き以外の敵が戦闘に参加することはありません。
 しかし、13ターン目からは戦場にいる他の敵が参加してきます。
 19ターン目以降、6ターン経過するごとにその参加数が増加します。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。

  • <夏の夢の終わりに>アヴァル=ケイン城前会戦Lv:15以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年09月02日 22時25分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
流麗花月
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
清楚にして不埒
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼い空へ
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
夜咲紡ぎ
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に
月錆 牧(p3p008765)
邪妖精斬り

リプレイ

●道は拓かれた
 戦闘の喧噪が響く極寒の戦場を、イレギュラーズ達は駆けていた。敵の総指揮官である冬将軍を討ち、この戦場での勝利を勝ち取るために。
「決死隊とは……この戦場で最も面白い役柄ですから精が出ますね。
 では、季節外れの冬将軍には御退場願いませうか」
 決死隊は、その活躍の如何でこのアヴァル=ケイン城前の平原における大規模戦闘の勝敗が決まる。『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)はその役割に高揚して唇の端を吊り上げてニヤリと笑い、討つべき敵である冬将軍を見据えた。
「多勢に無勢の戦場で起死回生の策──か」
 ヘイゼルの笑みに釣られるように、『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も笑ってみせる。
「冬将軍だか何だか知らねぇが、抑えに回った連中の為にもとっとと討ち取るだけだ。
 冬に支配された世界ならこの炎で氷を溶かそう。春はこの手で奪い返す……!」
 冬将軍の撃破が長引けば長引くほど友軍の被害は増し、決死隊の前に敵の救援が乱入してくる危険も増える。それもあって、可能な限り速やかに冬将軍を討ち果たしたいところであった。
(……さむい)
 戦場を覆う寒気に身を震わせるのは、『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)だ。白竜や氷竜と言った氷の属性を纏う竜であれば話は別だが、そうでなければ往々にして竜は冷気には弱いと言われる。雷の属性を纏うアルペストゥスも、その例に漏れなかったようだ。
「グルルルル……!」
 この戦場で冬の精や邪妖精、錬金術モンスターの長として振る舞い、自身も強烈な吹雪をばらまく冬将軍の姿を目にして、アルペストゥスは戦意を高め、低く唸った。
「……寒い。寒いですが、歩みを止めず。
 道を拓いてくれた皆さんの為、この先に繋がる道を私たちが拓く為。
 率いる冬将軍を打倒し、この郷に春を取り戻す未来を綴りましょう――!」
「そうですね。どうせ春が来れば居なくなる、だからそれまで待て……とは妖精郷の方々には言えません。
 先導をしてもらった恩義には、冬将軍を討ちこの戦いを勝利に導くことで応えましょう」
 寒さに震えるのは、『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)も同様であった。だが、リンディスはここで止まるわけにはいかない。それは、『光る砂に舞う』月錆 牧(p3p008765)も同様だ。
 ここまでイレギュラーズ達を無傷で先導した迷宮森林警備隊員の尽力を無にする事は出来ない。決死隊の敗北は、妖精郷アルヴィオンの滅亡に繋がるのだ。何としても冬将軍に勝つと、リンディスと牧は改めてその意を固くした。
「おいおい冗談キツいぜ! タダでさえクソ寒いのに、さらに冬将軍なんてものまでお出ましたぁ、季節外れも良いとこじゃねえか!」
「全くだ。猛暑の最中で、納涼デリバリーでも始める気か?」
 あまりの寒さに苦々しげにつぶやく『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)に、『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が同感とばかりに頷く。
「ならば、徹底的にクレームを叩きつけてやろう。過剰なサービスはノーサンキューだとな!」
「ああ、夏風邪引いちまう前にさっさと片付けて次に進もうぜ! 俺達はこんなところで凍っちまってる場合じゃねえからな!」
 いくら酷暑の季節とは言え、納涼と言うには極端すぎる状況など、歓迎出来ようはずもない。戦意を露わにした汰磨羈に、ルウは豪快な笑顔を見せた。
「冬の女王……なんて存在なの……こんなにバカバカしいくらいの規模でそこらを凍てつかせるなんて」
「あぁ、クオンを止められなかった結果がこれですか……これ以上なく自らの無力さの代償が見せつけられますねっ!」
 アヴァル=ケイン城の周囲が、いや、妖精郷アルヴィオン全体が、極寒の冬に覆われている。『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)はその規模に呆れと後悔が入り交じった表情を見せ、『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)は厳しい表情で唇をギリッと噛む。
 ミルヴィとフォークロワは、かつて冬の王を封印から解放しようとするクオン=フユツキと対峙し、敗れた過去を持つ。そしてもたらされたのがこの事態であるだけに、二人の悔恨は深い。
「アタシ達がフユツキに敗れたせいでこの事態が起こってしまったのなら……絶対にここに春を取り戻してみせる!」
「――ええ!」
 だが、悔やんでばかりはいられない。冬の女王を止められれば、妖精郷は滅亡から免れるのだ。ならば、全力を尽くして挽回するまでだ。固く決意するミルヴィに、フォークロワは深く頷くと仮面を被った。
(……全武装制限解除。交戦用意ヨシ。……「ハンター」、間もなく冬将軍との交戦に入る)
 『TACネーム:「ハンター」』ルクト・ナード(p3p007354)にとって、冬将軍の討伐は自身が果たすべき任務に過ぎない。冷静沈着な性格であるルクトは、その無表情もあってか他のイレギュラーズ達のように冬将軍と戦うに当たって特に感情を見せることはなかった。戦いを求める性故にもしかしたら冬将軍との戦闘に胸を躍らせているかも知れないが、それは本人のみが知るところであろう。

●交戦、開始
 冬将軍達まで残り百メートル。ここでイレギュラーズ達の足が一度止まる。仕掛けるには微妙に遠い距離で、可能であれば冬将軍達が動いたところを迎え撃ちたい。しかし、足を止めたイレギュラーズ達に対して冬将軍達が動く様子はなかった。
 数秒の停滞。それを打ち破るように動いたのは、レイチェルだ。疾風の如く駆けて冬将軍との距離を半ば以上まで詰める。
「神は復讐を咎める、神の怒りに任せよと。だが神は手を差し伸べず。故にこの手を鮮血に染めよう。復讐するは”我”にあり──」
 さらにレイチェルは、右半身に刻んだ術式を解放し、自身の戦闘能力を強化する。
「俺の炎で焼き払ってやるよ」
 そして自身の血で魔法陣を描き、そこから紅蓮の炎を放った。炎は吹雪の精に命中し、その身体を構成する微少な氷の粒を溶かしていく。
「まだだぜ!」
 レイチェルの攻勢は続く。『ゼピュロスの息吹』で自身の時間を加速すると、再度血で魔法陣を描き炎を放つ。炎は先程放たれた炎と合体して大きく燃え盛り、吹雪の精の身体の半ば近くを溶かした。
 そのレイチェルに、冬将軍が猛烈な吹雪を浴びせかける。
「ぐっ!?」
 冬将軍の吹雪は直撃し、レイチェルの身体は冷気に斬り刻まれて深い傷を負った。
「倒れる迄付き合って頂きますよ。無論、其方がです」
 ヘイゼルは全力で移動し、冬将軍の前に陣取る。そして、冬将軍の吹雪を受けたレイチェルを調和の力で癒やした。レイチェルの傷はまだ深いが、それでもある程度は楽になったように見える。
 牧は全力で走り、次には冬将軍を攻撃出来るよう、冬将軍の斜め前へと位置した。
 その牧とヘイゼルを狙い、吹雪の精が吹雪を放つ。ヘイゼルは掠り傷を負ったのみだが、牧は重くはないものの無視出来ないダメージを受けてしまった。
 瞬く間に冬将軍達への距離を詰めた汰磨羈は、足許から水面の波紋のような霊気を放って冬将軍を捕らえ、睡蓮の花のような結界で囲む。そして結界の花弁から斬撃を浴びせるが、痛手には至らなかった。
「くっ、流石に固いか」
 これに氷の騎士の護衛が付くとなると、なかなか厄介だと汰磨羈は感じた。
「……届くっ!」
 ルクトは冬将軍に魔弾を放つ。命中はしたが、冬将軍は痛痒を感じている様子は見せない。
 ミルヴィとルウは、左右に分かれて冬将軍達の直前まで移動した。
「グラァアアウッ!!」
 冬将軍達の前まで一気に移動したアルペストゥスは、さらにその左側に回り込んで、吹雪の精二体を狙って雷撃を放つ。迸る雷撃は吹雪の精達に強かにダメージを与えたらしく、吹雪の精を構成する氷の粒はさらにその数を減らした。
「――古きものから、新しきものを作り出そう」
 ある程度まで前進したリンディスは、『未来綴りの羽筆』によって"鏡"の如き力を自らに付与して未来綴りの章を用いる際の消耗を軽減し、長期戦に備える。そしてさらに前進すると、癒し手達の記録を『未来綴りの羽筆』で記してレイチェルの傷を癒やした。
 フォークロアも前進するが、攻撃を届かせるまでにはわずかに至らない。
 氷の騎士は、一体が冬将軍の防護に、もう一体がダメージの深い吹雪の精の防護に入った。

「食らえっ!」
「まだまだ!」
「こいつもだ!」
 レイチェルの炎が、氷の騎士が護りに入っていない方の吹雪の精をめがけて三度放たれる。既に手負いであった吹雪の精は連続して炎を叩き込まれ、瞬く間に氷の粒の大半を失った。
「私はレイチェルさんを回復します。ヘイゼルさんは牧さんを――」
「ええ、わかりました」
 リンディスは癒やし手達の記録でレイチェルの、ヘイゼルは調和の力で牧の傷を癒やす。レイチェルの傷は軽いと言えるところまで回復し、牧に至ってはほぼ完全に回復した。
「尻ぬぐいぐらいはしないといけませんよね!」
 フォークロワの仮面から零れ落ちた黒き雫は、敵を蝕む銃弾として放たれる。毒が、呪縛が、不運が吹雪の精を襲った。
「まとめては狙えないか。なら、各個撃破といこう」
「そちらが氷尽くしで来るなら、こちらは乱れ崩しでおもてなししよう」
 高度を取ったルクトの放った弾幕が冬将軍を庇う氷の騎士に命中し、その鎧を削っていく。そしてルクトに続いた汰磨羈が水のマナに氷の騎士を巻き込みながら斬りつけ、その体勢を崩した。
 片方の吹雪の精が反撃に出た。冬将軍を庇う氷の騎士に接近している、ルウ、ミルヴィ、汰磨羈、牧を狙い、吹雪を放つ。ミルヴィは身を屈めて躱し、ルウ、汰磨羈、牧はわずかながらダメージを受けた。
「あなたの動きは計算済みです」
 牧は氷の騎士の動きを見切った上で、『破秀滅吉』で斬りつけていく。氷の騎士の身体が、少しずつではあるが削られていった。
 ここでもう一方の吹雪の精が動く。狙いは再びルウ、ミルヴィ、汰磨羈、牧で、結果も先程と同様だった。
 ミルヴィは訪れなかった未来の、殺人鬼である自分を自身に降ろす。
「もっと迅く! 鋭く──!」
 そして、砂漠地帯の夜空を思わせる独特な動きで、無数の剣閃を繰り出していく。汰磨羈によって体勢を崩されていた氷の騎士は防御もままならず、その身体を次々と削り取られていった。
「ガァァァッ!!」
 アルペルトゥスの雷撃が、立て続けに放たれる。氷の騎士に庇われていない方の吹雪の精がこれで倒れ、わずかに残った氷の粒はポロポロと地に落ちていった。
 冬将軍は自身の周囲にいる者達――ルウ、ミルヴィ、汰磨羈、牧――に、吹雪の精よりも強烈な吹雪を浴びせかける。ミルヴィは回避し、ルウ、汰磨羈はまだ余力があるものの、牧は次を食らえばパンドラを費やさねばならないところまで追い込まれた。
「やってくれるぜ!」
 ルウは反撃とばかりに『巨獣の大剣』を大きく振りかぶって冬将軍を叩き切ろうとするが、氷の騎士に割って入られる。だが、ルウの大剣は氷の騎士の身体を深々と斬り裂いた。もっとも、まだ氷の騎士の生命力には余裕があるように見えた。

●氷の騎士、斃れる
 氷の騎士がいる時点で予想されていたことではあったが、冬将軍達との戦闘は長期戦の様相を呈した。冬将軍を狙った攻撃も、吹雪の精を狙った攻撃もいずれも氷の騎士に阻まれる。
 一方、冬将軍と吹雪の精は徹底して前衛にいるルウ、ミルヴィ、汰磨羈、牧に吹雪を浴びせ続けた。冬将軍を以てしてもミルヴィには攻撃が命中することはまず無かったが、ルウ、汰磨羈の傷は次第に深くなっていき、牧に至っては後退せざるを得なくなっていた。
 それでも、冬将軍の側には回復を担う者がいない以上、いくら氷の騎士が固く生命力が高いとは言っても限界は訪れた。問題は、そこに至るまでに大分時間を要してしまったことだ。
「これで……とどめだ!」
 レイチェルの血が魔法陣を描き、そこから放たれた炎が吹雪の精を庇う氷の騎士を完全に溶かし尽くした。
「グルォオオオオッ!!」
 ようやく吹雪の精を攻撃出来るとばかりに、アルペストゥスはオーラによる縄で吹雪の精をきつく締め上げる。吹雪の精の身体は微小な氷の粒で出来ているにも関わらず、オーラの縄からは逃れられなかった。
「あなたも、倒れたらどうですか!」
 牧は『破秀滅吉』に気を集中させ、残る氷の騎士に切っ先を向けると、気を光線として放つ。身体中にヒビが入り満身創痍となっていた氷の騎士は、その光線を受けた所から全身へと亀裂が入っていき、無数の小さな氷塊となって砕け散った。
(このままでは、まずいですね……)
(これで、戦況が変わるといいのですが……)
 リンディスとヘイゼルは、味方の回復に忙殺されていた。二人の癒やしがなければ、ルウと汰磨羈は既にパンドラを費やしていたことであろう。だが、それでもルウと汰磨羈の傷は次第に深くなる一方だった。
「貴方もこの雫で蝕んであげましょう」
 フォークロワはもう一体の吹雪の精にやったように、仮面から黒き雫を落とすと銃弾として放つ。毒や呪縛、凶運が吹雪の精を苛んだ。
「ここからが本番だね! 剣よ! 嵐となって舞い踊れっ!」
 ようやく冬将軍を狙える状況になったところで、ミルヴィは吹き荒れる剣と嵐の幻影を繰り出して冬将軍を攻め立てる。冬将軍が盾を翳して幻影を受け止めた隙にミルヴィは斬りつける。冬将軍の鎧に斬撃の跡は刻まれたが、まだまだ余力は十分と言った様子だった。
「これなら、どうだ?」
 水のマナによる大渦の中で、汰磨羈は双刀『煌輝』を縦横に振りかざして冬将軍の隙を作り防御を封じにかかる。完全にとは行かなかったものの、冬将軍の防御には隙が生まれた。
 吹雪の精と冬将軍が、再度前衛に吹雪を放つ。しかも今度は――。
「何だと!?」
「連続で来るかよ!」
 二体による吹雪が止んだと思った瞬間、冬将軍が再度吹雪を放った。吹雪の精の分を含めて三連続の吹雪には流石に耐えきれず、汰磨羈とルウは体力を根こそぎ奪われる。
「ははは! 楽しいじゃねえか!」
 パンドラを費やして立ち上がるやいなや、ルウは大剣を横薙ぎに放った。大剣の一閃は、冬将軍の馬の胴の前部を斬り裂いた。もっとも、氷の騎士を相手にしていたときもそうだったのだが、馬は傷を受けても苦しむ様子は見せなかった。

●冬将軍、討ち取ったり!
 その後、吹雪の精はすぐに仕留められ、残るは冬将軍となる。冬将軍の生命力は膨大であり、多勢に無勢となりながらも、救援が参戦してくるまで持ち堪えた。そして、吹雪や馬上槍で反撃し、イレギュラーズ達に強かに損害を与えた。だが、冬将軍の抗戦はそこまでが限界だった。
「……これ以上は、キツいかな」
 最初に冬将軍の救援に駆けつけた、氷の兵士達三体。その足止めを担っていたミルヴィが、ポツリと呟く。遠目に、氷の狼六体が迫ってきているのが見えた。さすがに、これだけの数を止められるかと言えば自信は無い。
 しかし、冬将軍への攻撃を邪魔させるわけにはいかない。二振りの曲刀を舞うように振って最後の氷の兵士を細かく斬り刻んで倒し、氷の狼が来るのを待った。
「あと少しです。何とか、耐えて下さい」
「次を鎬きれれば、勝てるはずです」
 祈るような表情になりながら、リンディスがルウを、ヘイゼルが汰磨羈を癒やす。既に冬将軍の全身には無数のヒビが入っており、満身創痍なのは見ても明らかだった。しかし、冬将軍の攻撃も厳しい。特に汰磨羈とルウは一度パンドラを費やすまで追い込まれたこともあり、冬将軍に集中的に狙われていた。
 リンディスとヘイゼルによって、次を食らえば間違いなく倒れるであろうと思われたルウと汰磨羈の傷は癒えたものの、それでも二人が次の冬将軍の攻撃を耐えきれるかは疑問だった。
 その冬将軍は、馬上槍でルウの胴体を深々と貫きにかかる。が、ルウの大剣に受け止められ、穂先はルウの胴体ではなく肩口を貫いた。さらに冬将軍は、自身の後方に回り込んでいる汰磨羈に吹雪を浴びせる。だが、ルウも汰磨羈も冬将軍の攻撃を辛うじて耐えきった。
「早く……倒れろ!」
 氷の狼達がここに到達すれば、次はミルヴィだけで止めるのは厳しいだろう。これで仕留められればと、ルクトは空中で冬将軍に義手を向け、そこから射撃を敢行する。数個の弾丸が冬将軍の兜に命中して亀裂を大きく広げた。が、倒しきるまでには至らない。
(ここで決めてしまいたいですね……)
 牧は『破秀滅吉』の切っ先を冬将軍の胸部に向け、残る全身の気を全て集中させた。
「はあっ!」
 裂帛の気合いと共に光線として放たれた気は、冬将軍の胸部に突き刺さり、胴体の亀裂を広げていく……が、まだ倒れない。
(かたよりのそんざい……いのちが育つことをじゃまするありかた……いま、ここで……!)
 冬将軍を、必ず倒す。アルペストゥスはその意を強めると共に、自身のオーラを昂ぶらせると縄として編む。
「グルォオオオオッ!!」
 咆哮と共に放たれた縄は、冬将軍を縛り付け、きつく締め付ける。オーラの縄に締め上げられた冬将軍の身体はバキバキ、と音を立て、既に亀裂の広がっている表面の一部を砕いて剥落させた。
「もう、限界のようですね。でも、出し惜しみは無しですよ」
 フォークロワは仮面を外し、冬将軍の方に放る。仮面は冬将軍の兜の前まで漂っていくと、どんよりとした黒いもやを放った。そのもやは冬将軍の身体中に出来たヒビの隙間に、浸透するように吸い込まれていく。
 内部を蝕まれているのであろう。これまでどんな攻撃にも大きく動じることのなかった冬将軍が、見るからに苦しそうに全身をよじらせて悶えていく。
「覚悟せよ! 汝は既に我が贄なり!」
 汰磨羈は冬将軍の背後から、霊刃『魂刳魄導剣』を伸ばしてその背中を貫く。霊刃は冬将軍の胸部にまで貫通しており、冬将軍は大きく仰け反った状態でその動きを止めた。ピシ、ピシピシ……と言う音が響き、冬将軍の生命力が尽きようとしているのが明らかにわかった。
「アンタももう……終わりだなァ」
「こいつで……とどめだぜ!」
 レイチェルが純白の大弓『月華葬送』に矢をつがえて放ち、ルウが大剣を大上段に振りかぶる。レイチェルの放った矢は、冬将軍の胸部を貫通している霊刃の側に命中。冬将軍の身体の至る所に細かな亀裂が入り、それを黒いもやが内から押し広げ、冬将軍の身体の崩壊は胴から手足、馬体、武器へと広がっていく。
 そこに、ルウが渾身の力で大剣を振り下ろした。冬将軍は何の対応も出来ずに両断され、パリィン! と言う音と共に一瞬にして無数の微小な氷塊となって砕ける。冬将軍は、ここに討たれたのだ。
「俺達が、冬将軍を討ち取ったぜえええ!!」
「「「おおおおおおっ!!」」」
 ルウの絶叫と共に、イレギュラーズ達が鬨の声を上げる。その報と叫びはまず冬将軍の救援に向かう敵を足止めしていた先導隊員に広がり、そこから戦場全体に広がっていった。
 将を討った、将が討たれたと言う事実は味方の士気を大きく高め、敵の士気を大きく挫いた。これにより戦況は逆転し、冬将軍の軍は次々と壊走。アヴァル=ケイン城前の戦闘は、イレギュラーズ・迷宮森林警備隊の連合軍の勝利に終わったのである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ルウ・ジャガーノート(p3p000937) [重傷]
暴風
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831) [重傷]
流麗花月

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。また、リプレイ返却が遅くなりまして申し訳ありませんでした。
 さて、「アヴァル=ケイン城前会戦」は皆さんが冬将軍を討って下さった事により、イレギュラーズ・迷宮森林警備隊の勝利に終わりました。決死隊、お疲れ様でした。

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