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シナリオ詳細

<巫蠱の劫>折紙衆と異形の巨人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●信仰の巨人
 瓦屋根もろとも、家屋が吹き飛んでいく。
 まるで爆発のような衝撃に、周囲の人々に生存者の有無を確かめることすらためらわせた。
 立ち上る破壊の煙の中から身の丈5mはあろうかという異形の巨人が現れたなら、なおのことである。
 巨人の手には、人間大の巨大な金属製十字架が握られていた。それを棍棒にように振り回し、周辺家屋を破壊していく。
「ロザリ、オ……」
 高天京の市民達は悲鳴をあげて逃げだし、人混みが大通りを埋め始める。
 そんな中、人の波をかき分けて進む忍装束がひとり。
 否、瓦屋根の上を走る数人の同系装束を着込んだアースカラーの一団が、巨人の前へと立ちはだかるように集まった。
「折紙衆『土』――義によって推参」
 地面を叩いた小槌が巨大化し、両手持ちのスレッジハンマーへと変化。
 周囲の忍たちもトンファーや棍棒などの武器を構え、巨人を包囲するようにじわじわと展開し始める。
「ロザリオ……」
 しかし巨人は謎のつぶやきをするのみ。
 忍たちは『土』にチラリとだけ視線をやると、額に汗をにじませた。
「兄者、まるで怯む様子がねえ」
「こいつ本当に人間か?」
「最近ウワサになってる新種のバケモンでは?」
「無駄口を叩くな。親方様の命令はひとつ。巨人の撃退と市民の安全。行くぞ! 包囲陣蛇舅母!」
 『土』が唱えた途端、全員が一斉に巨人へと襲いかかった。
 法術による射撃。肉体を硬くしての防御。大地に手をつけての範囲治癒。担当分野の異なる戦士たちが己の出せるベストを尽くし、巨人へと挑み――。
「魑魅魍魎よ、土へ還れ!」
 豪快に打ち込まれた『土』のハンマーがトドメをさした……かに、思われたが。
 ハンマーを打ち込んだ巨人はしかしぴくりとも動かず、『土』は驚きに目を見開いた。
 身体をつかまれ、強く圧迫される。
「ぐ、ぐおあ……!?」
 もがく。もがくことは、かなわない。ごきごきという異様な音が体内から響き、『土』はわずかに振り返った。
「に、逃げ――」
 次の瞬間、まるで力を入れすぎたトマトのように、『土』は形をなくした。

●緊急事態
 薄暗い部屋に、二人の男女が膝をついている。
 かしこまった様子でブラインドのむこうにいる何者かに頭を垂れていた。
「親方様――『土』とその部下6名。全滅したとの報告が」
「そうですか……」
 悲しみ。後悔。悼みや哀れみ。そういった色が言葉の頭一音にだけこもった。
 だがそれだけである。聞き慣れぬ者には、まるで感情が動いたようには聞こえなかったろう。
「『水』、あなたが戻っていた時で幸いでした」
「は」
 頭を更に深くおとし、『水』――水之江 霄(みずのえ おおぞら)は額を床につけんばかりにした。
「なんなりとご命令を。私の身体に流れる赤き水は、常に親方様のおそばに流れますゆえ」
 その隣で報告を済ませていた『金』――白金 錺(シロガネ カザリ)は横目で『水』を見た。
「相変わらず固いな、『水』。金より固い水があるか」
「五月蝿い。親方様との語らいに水をさすな。口を縫い合わせるぞ」
「おお、怖い」
 『金』はどこか余裕そうに、そして親しみを込めて『水』に微笑みかけた。
 そして懐よりつつみを取り出し、開いてみせる。
「親方様。おそらく巨人の狙いはこの『ろざりお』かと」
「なんだ、それは」
 『水』の問いかけに、『金』はロザリオがよく見えるようにかざしてやった。
「ある村から回収したものだ。村人は奇妙な信仰に囚われ国からの接触を閉ざしたが、調査によってあの巨人の存在が明らかになったのだ。
 巨人はこのロザリオを首からさげ、調査員たちを撃退した。彼らは勇敢にもロザリオを回収し、いまここにあるというわけだ」
「取り返しに来たってのか。なぜそうとわかる」
「迂回路も中継地点も無視して一直線にこちらへ向かっているからだ。途中の家屋すら無視してな。
 今は異形の怪物を増やしてこの場所めがけてパレード中だそうだ」
「…………」
 押し黙る『水』。本来影となり隠密に国を守るのが彼ら折紙衆のつとめ。
 それが表に立ち戦うという決定を、親方様がいかに苦心してたてたのかを想像したためである。
「なら、俺が行く。俺が巨人を倒す」
「お待ちなさい」
 立ち上がり部屋を出ようとする『水』を、親方様がブラインド越しに止めた。
「あなただけでは倒せません。『この方達』を使いなさい」
 床をすべらせた封筒。
 それを開いて……『金』は目を細めた。
「『また』、彼らですか」

●イントロダクションは三度のベルで
「あぁ? 俺様がまぁた呼ばれたってのか? おいおいなんだあ? ファンなのかあ?」
「おいおいからむな」
 顔を近づけて圧をかけるグドルフ・ボイデル (p3p000694)。天目 錬 (p3p008364)は彼の肩をつかんでなだめた。
 一方で水之江はグドルフに顔を近づけ、角があたるほどの距離でにらみをきかせる。
「親方様の命令でなければ貴様等になど協力を求めるか。せいぜい俺の弾よけになれ」
「ほぉ~~~~? おもしれ~~~~~?」
 限界まで煽りあいがおきているが、それに対して白金はのほほんとした様子だった。
「彼はいつもああなんだ。友好の印だと思ってくれ」
「本当に……?」
 錬はものすごく不安になったが、仲間がそういうんだからそうなんだろうと一旦飲み込んでおくことにした。
 封書を手渡す白金。
「事情は先ほど話した通りだ。巨人の正体はおそらく、昨今発見された『肉腫(ガイアキャンサー)』の一種だろう。いわば奴らは大地の癌……」
「『滅びのアーク』で生まれた存在ってわけか。言ってみれば、俺たちイレギュラーズの天敵だな」
 今では更に『呪詛』による騒ぎも勃発しており、誰かが誰かを呪い殺そうという負の流行がおきているのだ。それゆえ内部の人間を頼れないのだろう。更には巨人の暴れる地域の兵も手薄になっており、まるでそう誘い入れるために兵たちが呪詛騒ぎで散っていったかのようだと白金は語った。
「ンなことはどうでもいい。あの巨人は俺が倒す。親方様に害するものは全て倒す」
 そう言い切って、流体金属を操作して鎌の形へ整える水之江。
 歩き出す彼についていく形で、グドルフや錬、白金たちは歩き出した。
「今回は私と水之江も協力する。あの巨人を倒し、民の平和を護ろう」

GMコメント

■オーダー
成功条件:『巨人』の撃破
オプションA:水之江の生存
オプションB:白金の生存
オプションC:?????

巨人の暴れているエリアへと駆けつけ、これを撃滅します。
ただでさえ強力な巨人ですが、その周囲には7体ほどの異形が現れており、更に事態の困難さを増しています。
折紙衆と協力して戦いましょう。

■エネミーデータ
・『異形の巨人』
 身の丈5mはあろうかという巨人です。
 巨人と表現してはいますが、顔はゆがみきっており肉体もまるで肉を無理矢理大量にくっつけたようなぐちゃぐちゃとした作りになっています。
 人間大の金属製十字架を棍棒のように振り回し、とんでもない防御力や耐久力、そして攻撃力をもちます。
 推測ですが、【物無】の自付与スキルをもち、攻撃の中にはこちらの行動を制限するBSや吹き飛ばし効果のついたものがありそうです。
 また命中回避もそれなりの高さがありそうなので、作戦は慎重に立てましょう。

 参考までに、『土』+6人の部下がそれぞれベストを尽くして戦っても全滅しました。
 彼らの戦闘力はなかなかのものでしたが、『各個人ができることをやった』ところまではいいものの、連携を取り損ねたことで力が及ばなかったようです。ちゃんとした連携をとることで戦力は何倍にも膨れ上がることがあるので、しっかり連携していきましょう。

・『異形の眷属』
 7体ほど新たに確認された人型の異形です。
 なんだか肉の塊を無理矢理人型にくっつけたような形状をしており、身長(?)は170㎝程度。
 こちらの動きを制限したり打撃などを用いた集中攻撃を仕掛けてくるものと思われます。

■フィールドデータ
 大通りです。瓦屋根の家屋が向かい合わせ水平に並んでおり、綺麗な『二』の字を作っています。そこを巨人はまっすぐ歩いているので、それを迎え撃つ形になります。
 巨人は余裕でその辺の家屋を破壊できるので、遮蔽物にはあまりならないでしょう。
 また、こんなのが近づいてきているので市民は皆避難済です。

■味方データ
・白金 錺(シロガネ カザリ)
 折紙衆『金』。ヤオロヨズの女性。クールなくのいち。家ではズボラらしい。
 苦無などの武器を作り出しては投擲するといった戦闘スタイルが基本。
 至~中距離の対多戦闘を得意とし、攻撃スキルは物理攻撃の威力に寄ったものが多い。
 通常攻撃に【流血】のBS効果があり、識別つき範囲攻撃が使える。
 弱点はAPの低さ。自らの血を金属に変えて放つスタイルのためスキルに『反動』がつきがちな上『ロスト』『ダメージ』といったパッシブ効果を併せ持つだいぶスタミナの低いファイター。

・水之江 霄(みずのえ おおぞら)
 折紙衆『水』。ゼノボルタの男性。
 親方様一筋。逆に親方様以外はどうでもいいと言い放つ。……割には仲間が死ぬと怒ったりする。割と単純な性格なのかもしれない。
 流体金属の鎌を振り回して戦うインファイト専門の戦士。
 防御無視、弱点、追撃、ブレイクなど相手の防御の隙をつく戦いが得意だが、彼自身はそれをゴリ押しの一種と捉えている。
 弱点は命中能力の低さと性格のまっすぐさ。

 味方はこの二人だけです。合計10人で協力して戦いましょう。
 白金と水之江の戦闘プレイングは何も書かなくても自動で動いてくれますが、特にやって欲しいことがあればそれぞれ『グドルフ:水之江』『錬:白金』が指事することで適用されます。
 そのかわり、プレイングリソースが圧迫した分の判定ボーナスを差し上げます。

■オマケ
 無事に倒すことができた後は、『親方様』に謁見するかどうかを選択できます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <巫蠱の劫>折紙衆と異形の巨人完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた
那須 与一(p3p003103)
紫苑忠狼
すずな(p3p005307)
ふるえた手
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

リプレイ

●閑話休題1
 愛されることにかけて、彼女に勝るものを知らない。
 そして彼女を愛したがゆえに狂った人々も、また。

●巨人の足跡
「肉腫……滅びのアークがもたらす存在が、こんな場所にまで。
 これ以上進ませない為に、此処で止めないと!」
 借り馬車を降りた『揺らぐ青の月』メルナ(p3p002292)は、いまだ破壊の続く大通りに目をこらした。
 巨大な十字架を棍棒のように振り回し、家屋を破壊しながら歩く巨人の姿。
 その周囲には数体の異形の姿が見え、変にひしゃげた人型のシルエットをぐねぐねと動かしながら周囲の様子を探っているようだった。
「ええ、肉腫には思うとことは多々あります……」
 『金星獲り』すずな(p3p005307)も馬車をおり、腰の刀に手をかけた。
「しかし此度は折紙衆の方との共同戦線! みっともない所は見せられませんね!
 気を引き締めて参りましょう!」
「折紙衆……か」
 大地の感触を確かめるように踏む『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。
 馬車をとめた白金 錺へ振り返り、小さく手をかざした。
「例の巨人を見つけた時以来、だな。今回は一緒に戦ってくれるのか?」
「京にまで入られれば、な。元はと言えば仲間の不始末だ。『土』たちが倒せていればこうまでして引っ張り出すこともなった」
「まあいいさ。肉腫のことも気になるし、倒した後で一通り調べよう」
 そう言って歩き出す錬の背を見て、白金は目を細めた。
「倒せれば、いいのだが……」

「全く、いやな感じしかしないね。あの巨人も眷属も……一体何を原料にしているのやら」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)はやれやれといった様子で鞄をその辺に放り投げると、戦いやすいように儀礼剣を鞘から抜いた。
「その事情もさっぱりだけど、あれを暴れさせたままにさせてはられないね」
「確かに、何故巨人がロザリオをなぞを気にしているのか気にかかるが……今は俺のやれることを為すのみ」
 『章姫と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)はかざした指をくるくると回すと魔糸を指に絡めていった。そして、抱えた人形へと首をかしげる。
「そうね、巨人さん達お話ししても止まってくれそうにないのだわ。止めなくちゃ!」
 一方で『はですこあ』那須 与一(p3p003103)はカインと共に近くの家屋にはしごをかけ、瓦屋根へと登っていく。
「被害も出ているでござるし、迅速に事を治めなければ。
 いや、鉄火場である以上おちゃらけてる暇はないか」
 仲間が一通り配置についたのを確認して、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は改めて巨人へと歩き出す。
「既に犠牲や被害は出てるみたいだけど、これ以上は、ね。
 盾役は苦手だけど、皆の為に頑張って耐えるわよ!」

 そんな中、水之江 霄はどうにも不機嫌そうにしていた。
「なぜ俺がこんな賊の助けを……しかし親方様の命なら……」
「あぁ? なにぶつくさ言ってんだテメェ」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は鼻の穴に突っ込んでいた指を水之江へピンとやった。
「よく知らねえが、あのデカブツどもをぶっ殺せばいいんだろ? ゲハハハ! 任せな、このグドルフさまについてきやがれ!」

●閑話休題2
 愛は誰かひとりだけのものではない。いくらでも増やせるはずだ。
 彼女はそういって、出会う全ての者に愛を分け与えた。
 だがもし愛が無限のエネルギーであるならば、増幅はいずれ爆発を及ぼすはずだった。

●エンゲージ
 ひとけの無くなった大通りで、巨人はゆっくりと身体をまわしていた。
 行くべき方向を定めるかのように。捜し物の場所を選ぶかのように。
 そして大通りの先を見つめたままぴたりと動きをとめた、その時。
「破壊することしかできぬ哀れな人形よ」
 瓦屋根を走る忍び装束の姿。鬼灯。
 鬼灯は屋根が砕けんばかりに跳躍すると、魔力を凝縮したクナイを投擲。周囲をばらばらに歩き何かを探すように徘徊していた『異形の眷属』や巨人の足下へ着弾すると、突如として暴風の術を引き起こした。
「そこに貴殿の安寧はないのだ」
 派手に転倒し、障子戸を吹き飛ばして転がる眷属。
 路の中央へ着地した鬼灯をにらむかのように目を見開く巨人――の一方、屋根に伏せていた与一は先ほど転倒した眷属めがけて『ハイロングピアサー』の射撃を加えていった。
 そしてその手応えから……。
「この『眷属』ども、相当に体力や耐久力があるようでござる」
 与一や鬼灯の攻撃は、たとえるなら召喚されて間もないウォーカーを一撃で倒せるほどの高火力を持っていた。
 それを二度ほど打ち込んだにもかかわらず、眷属はまるで何事もないかのように立ち上がり、頭をぐちゃりともとの位置に戻して鬼灯や与一たちを追い始めた。
「連中が分散を始めたみたいだ」
 カインは屋根の上でバランスをとりながら儀礼剣を操作すると、『神気閃光』の魔術を巨人めがけて乱射した。
 生み出された光の球がいくつもホーミングした線を描いて巨人へぶつかっていく。
 巨人はといえば、飛来する球のほとんどを棍棒によるガードや打ち落としによって防いでいた。
「でもって、あっちの巨人はそれなりに防衛能力がある、と」
「カイン。冒険のプロだろ? あいつの弱点とか分からないのか?」
 一方の錬は同じく屋根の上から式符を用い、光の球を次々に作り出しては眷属へと打ち込んでいく。
「こっちの世界のモンスターについてもだいぶ学んだつもりだけど、ちょっとアレは初めて見るなあ。類似してるのは『アークモンスター』とかじゃない?」
「それは俺の方が初耳だな……」
 小首をかしげる錬に、カインが指を立てて説明した。もちろん二人とも異形たちへ応戦しながらである。
「僕らイレギュラーズはパンドラをためてるけど、魔種たちは滅びのアークを溜めてるよね。これが世界にある程度生まれたことで、既存の動物や魔物が更に変異を遂げたって現象がナチュラルに起きてるらしいんだ。これがアークモンスター。肉腫もその一種だっていうのがローレットの共通見解だね」
「詳しいな……で、弱点は?」
「個体差がありすぎてわかんないな」
 肩をすくめるカイン。
「少なくとも人型をしてるんだし、脚を狙ってみたらいいんじゃない?」
「だ、そうだ」
 右から左に流すかたちで白金にアドバイスする錬。
 白金は広げた手のひらに金色のクナイを無数に作り出すと、眷属達めがけて投擲した。
「ああまで激しく動かれれば、狙って当たるとは思えないが。巨人ならば、動きが遅く狙いやすいということは――」
 と語った矢先、巨人が助走をつけて跳躍し、十字架を叩きつけることで地面と周囲の家屋を爆破の如く破壊した。
「――ないな。だいぶ俊敏に動くらしい」
「ああ、戦力の見えない敵をナメてかかると最悪死ぬらしい。仲間のアドバイスだ」
 巨人から距離を取って走る鬼灯と対照的に、すずなとイナリが巨人へと急接近。
「大きかろうと、人型である以上慣れたもの!
 機動力を封じれば狙いやすい的でしかありません!
 その脚、徹底的に刻ませて貰います……!」
 風となったすずなが巨人の足下をすり抜けていく。
 膝関節や足首といった箇所を中心に斬り付け、更にクイックターンで膝の裏を刀で激しく斬り付けていく。
 巨人はぐらりと傾き、その場に転倒。
 どうやら機動力をそぐすずなの狙いはうまくいきそうだった。
「じゃ、次は私のばんね!」
 イナリはルーンシールドとマギ・ペンタグラムを同時発動。自らに無敵の結界をはった上で巨人へと突進した。
 地面を殴るようにして素早く立ち上がった巨人の、十字架によるフルスイング。
 回避行動は間に合わない。あまりに巨大な十字架が、飛び退こうとするイナリの脇腹にぶつかってまるで野球のボールのごとく吹き飛ば――すと、みせかけて。
「おっと、危ないところだったわ」
 攻撃が命中してはいたものの、イナリはダメージを上手に軽減。吹き飛ばされることなくその場に留まった。
「これでひとつ安心要素が増えたわね。私の回避能力ならクリーンヒットをとられる危険が少ない。だから【飛】や【ブレイク】といったクリーンヒット依存の効果をうける危険も少ないわ。とりあえず、スタミナの続くかぎり結界を張り続けることにするわね!」
 剣を防御の型で構え、手のひらを突き出すように結界を押し出すイナリ。
 このとき、何か重要なことを見落としたような気がしたが……。
「ゲハハハハ! おらあ、雑魚ども。このおれさまが相手だあッ!」
 すずなたちに群がろうとした眷属たちへ、グドルフの強烈なラリアットが炸裂した。
 顔面へのラリアットで派手に転倒する眷属。
 また別の眷属がグドルフを追いかけて走り、背後から硬質化した拳を叩きつけていく。
 なまじ頑丈なグドルフのこと。多少集中攻撃を受けたところでリカバリー可能。どころか、彼から湧き出た不思議な光が眷属達へと反撃していくほどである。
「雑魚どもはおれさまが引きつけてやる。そっちの巨人を片付けとけよ! 犬!」
「だれが犬だ、賊!」
 眷属達をつれて全力疾走で大通りのむこう……つまりは巨人の攻撃がすぐには届かないエリアまで眷属達を誘導しようとするグドルフの動きを察し、水之江は巨人との間に割り込んで錫杖に力を込めた。水の刃が鎌の形状をとり巨人を斬り付けていく。
「まだ巨人は例の結界を発動してないみたい。チャンスだね!」
 メルナはスッと息を大きく吸い込むと、燃えるような蒼い光を両目にやどした。
 光は剣の刃をはしり、燃え上がる炎となって顕現する。
 繰り出された十字架をすずなが刀をかざすことで受け止め、一瞬だが停止した十字架へとメルナは飛び乗る。
「そこだっ……!」
 十字架の上を駆け抜け、メルナは渾身の剣を繰り出した。
 蒼い炎が、宙を裂く。

●閑話休題3
 ある者は応えようとした。ある者は独占しようとした。ある者は滅ぼそうとした。ある者は縋ろうとした。そしてその全てが、たがいを敵とした。
 愛が愛であるがゆえに、彼らは互いを消すほかなかった。

●転がる石の如くに
 剣と斧を両手それぞれに握り、グドルフは畳部屋を駆け抜けていた。
 蹴散らかされる鉄鍋。なぎ倒される箪笥。木でふたをした窓に斧を投げつけると、板を破壊して野外へと飛び出した。
 ごろごろと転がり、落ちた斧を拾い上げる。
 マントがばさりと後をおい、一瞬だけ遮った視界が晴れると異形の眷属たちが映り込んだ。
「雑魚のくせにしぶといんだよ!」
 グドルフは掴みかかる眷属たちに斧や剣を叩きつけると、その場に無理矢理なぎ倒した。
 そこへ、大きなハンマーを両手持ちした眷属が殴りかかってくる。
「ぐお!?」
 直撃――を避けて転がるグドルフ。
 与一が屋根の上から射撃ラインを確保しHades03を連射。眷属の首から上を吹き飛ばす。
「まずは一匹」
 すると、グドルフの陽動にかからなかった眷属のひとりが獣のごとく与一へ掴みかかり、彼女もろとも路上へと転落した。
 大きく開いた口。ふぞろいの歯が鋭くふるえ与一の肩へとかじりついた。
「伏せてて!」
 カインはそこへ直接神気閃光の魔術をたたき込むと、白金が駆け寄って与一を回収。眷属へクナイで斬り付けながら距離をとった。
「助かった。カイン、そっちはどうだ」
 カインはそう言われて巨人へと振り返る。
 グドルフたちが引きつけた眷属の撃滅を完了し次第カインたちに合流し協力して巨人への一斉攻撃を仕掛けるという作戦だが……。
「ちょっと、厳しいかもね」
 グドルフによる眷属たちへの殲滅は若干ながら時間がかかっていた。
 いっそグドルフの耐久力をアテにして一人で引きつけ続けてもらうのもアリなのではと思えてきたくらいだ。
 一方、巨人と戦うカインたちのチームは苦戦していた。
「カイン、巨人がこっちへ来るぞ!」
 錬は最後の式符・陽鏡を巨人へたたき込むと、急いでカインと共に屋根から飛び降りた。
 直後、巨人のスイングによってさっきまで足場にしていた家屋が崩壊。
 カインと錬は受け身を採って土の地面を転がると、それぞれの手法で術を練り上げると全く同時に『ショウ・ザ・インパクト』の衝撃術式を発動させた。
「吹き飛ばせなくたっていい! 少しくらい体勢、崩れろっ!」
 衝撃は巨人をわずかにのけぞらせたが、それだけだった。
「結界は」
「いや、まだだ」
 巨人は戦いの途中から物理的な攻撃を無効化する結界を体表に張り巡らせ、メルナたちの攻撃をはねのけはじめていた。
 舌打ちして顔をしかめる錬。
「当たらないってけじゃないが……ブレイクの有効打(クリーンヒット)がとれん。こんなにデカいなりしてるんだから回避は下手でいてほしいもんだな」
 と、そこへ。巨人の手足へ絡みつくように魔糸が張り巡らされた。
「それほど『容易い』敵であれば、折紙衆の一部隊が全滅することもなかったのだろうな。だがそろそろ眠れ、人形よ」
「ゆっくり眠るほうがきっといいのだわ、小さいお人形さんも元に戻してあげるのだわ」
 鬼灯が腕を引き、巨人を強制的に片膝をつかせる。
 が、巨人は強引に腕を振り鬼灯の動きを逆に乱そうと糸を暴れさせた。
 すぐさま糸をパージすると、ピイと指笛を鳴らした。
 それを合図に巨人を取り囲むすずな、水之江、イナリ、メルナの四人。
 四人はそれぞれ剣を構えると、全方向から一斉に斬りかかった。
 切り裂いたそばから修復されていく肉体。結界を破壊するのにかなり手子摺るが……何発か当てたところですずなの『舞風』が炸裂。
「この程度の大きさならどうとでもなりますよ、もっと大きな滅海竜と対峙した事ありますからね!」
 恐ろしく冴えた連撃が結界を破壊し、さらなる斬撃が巨人の身体を切り裂いていく。
 赤黒い血液が吹き出るが、巨人は構わずすずなの身体を鷲掴みにし、大きく高く振り上げた。
「――ッ!」
 歯を食いしばるすずな。直後、数メートルの高さから振り下ろされた拳で家屋が一棟崩壊した。

 砕け散った家屋の破片をよけながらあらためて距離をとるメルナたち。
「結界の破壊がかなり厄介だね。鬼灯くん一人でどうにかできると思ったんだけど……」
「何人かで連続攻撃を加えれば相手の回避に圧をかけて有効打をとりやすいが……その分がロスになるのがそろそろ響いてきたな」
 鬼灯は『章姫』を守るように片手を突き出す構えをとると、巨人に次なる狙いをつける。
「案外、攻撃手段を限定するなりBSでちくちく削るなりするという手もあったやもしれんな」
「そっち方向で、行ってみる?」
 メルナは手のひらで剣の腹にそうようにスッと撫でると蒼い炎をおこさせた。
 との隣で剣に同じように手のひらをかざすイナリ。
「私は賛成よ。このままだと結界を無駄遣いしちゃうそうだし」
 メルナとイナリは同時に踏み込み、それぞれの炎を纏った剣で巨人へと斬り付ける。
 イナリはあらかじめ錬の作成したロザリオの模造品を装着していたが、巨人がこれに興味を示す様子はみられなかった。
 試みが失敗したというよりは、巨人がロザリオを外見や足取りから追ったのではなくもっと別の方法で探知していたことを示すいい実験になった。
 更に言えば、巨人はイナリに有効なダメージを与えられないとみるや彼女を露骨に無視してすずなや鬼灯たちへの攻撃に集中するようになっていった。
 見るからに知能の低そうなクリーチャーだが、案外知能が高いのかもしれない……とも。

 戦いは徐々に苦しくなっていった。
 仲間がひとりまたひとりと倒され、グドルフたちが眷属の殲滅を追えた頃には数人の仲間が戦闘不能に陥っていた。
 それでもなんとか立て直そうと攻撃を加え続けたが、巨人の体力を削りきるよりもこちらの戦力が崩壊するほうが早かったようだ。
「ぐ、う!?」
「くそっ、離せ……!」
 巨人は腕をもう一本増やすと、白金と水之江のふたりを掴んで地面に押しつけた。
 腕の肉がどろどろと溶け、二人を飲み込んでいく。
 グドルフたちが斬りかかり救出を試みるも、二人を助け出すことは叶わなかった。
 なぜなら、巨人は二人を身体の中に取り込んだままきびすを返し、すさまじいスピードで逃走を始めたからである。
 なんとか巨人を追いかけたものの、追いつくこともまた、叶わなかった。

●早められた謁見
「そうですか。二人が……」
 京内某所。なにかあればここへ行けと白金から教えられていた隠れ家へ、イレギュラーズたちは集められていた。
 なかでもグドルフは両目を大きく見開いたまま、荒く乱れた呼吸を必死に整えようとしている。
「ですが、まずは……『よく生きていてくれました』」
 彼女は。
 白金たちが親方様と呼んでいた存在、『神羅(カミラ)』は皆へ微笑みかけた。
 全員へ述べているようにも、誰か一人に述べているようにも、それは聞こえた。
「『金』と『水』が無事でいる保証はありませんが、少なくとも、これが異形の手にわたることは防げたようですね」
 カミラが桐箱を開いて見せたのは、いつだか錬たちが回収したロザリオだった。
「なぜ、巨人は白金たちを攫っただけで帰って行ったんだ。目的はロザリオだったはず」
「説明しましょう。けれどその前に、まずは休むべきです」
 カミラは無事に生き残った八人へ、優しく優しく微笑みかけた。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

那須 与一(p3p003103)[重傷]
紫苑忠狼
カイン・レジスト(p3p008357)[重傷]
数多異世界の冒険者

あとがき

 ――『異形の巨人』の討伐に失敗しました
 ――『折紙衆:金』白金 錺、『折紙衆:水』水之江 霄の両名が行方不明となりました
 ――折紙衆首領カミラから次なる連絡を待っています……

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