PandoraPartyProject

シナリオ詳細

さまーたいむ・ばけーしょん! ~おいでよニャッキーランド~

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●労働者は楽園の夢を見るか
「あ……あぁ……」
 書類の山の中からゾンビめいた呻きが響き、震える手が伸びあがる。
 卓上につっ伏していた『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)はガバッと顔を上げた。
 けたたましく鳴り続ける業務用の内線電話をワン切りし、半泣きのまま天井へ吼える。
「もうヤダーーー!!!」

 来る日も来る日も残業、残業!
 ひとつ仕事が終わったと思えば差し込みがみっつくらい飛んで来るし、これ絶対お盆休みとか無いやつじゃないか!

「海……山……何でもいい……癒されたい……夏っぽい事したい!!」

 うぅ、と呻きながら再び突っ伏しかけた蒼矢の前をシラス(p3p004421)が通り過ぎ――かけたところで。
「無視しないでよぉ!!」
「うわっ、何だよいきなり!?」
 久方ぶりに異世界の仕事でも探そうと図書館へ顔を出した彼は、ものの見事に境界案内人の我儘に巻き込まれてしまったのだった。

●おいでよ! ニャッキーランド
――テーマパーク。それは人の夢と希望の詰まった理想の楽園。
 絶叫モノのジェットコースターはもちろん、華やかなフロート(乗り物)が列を成すパレードはご機嫌なリズムに合わせて行進し、
 手を振ればほら、マスコットキャラクターの猫海賊ニャッキーがどこか虚ろな目のまま手を振ってくれる。
……夏場はきっと蒸れるのだろう。着ぐるみに中の人なんていないけどね!

「とまぁ、こんな感じで……異世界《ニャッキーランド》は依頼で疲れた特異運命座標の精神を癒すのにうってつけのテーマパークなんだ! 特異運命座標の!」
 大事なので2回言いましたと言わんばかりに、拳を振って力説する蒼矢。
「特異運命座標をダシにして遊ぼうっていう魂胆が見え見えだ……」
 人数集めに協力させられ、あちこちを奔走するハメになったシラスが半眼で視線を送る。しかし蒼矢はゴメンて、と片手を顔の前に立てて軽い謝りを入れるだけに留まった。

「お昼からニャッキーマンの水まきヒーローショーがあるんだって! 場所はお城の前らしいよ」
「お城といえば王族……これはご挨拶に伺わなければなりませぬ!」
 ニャッキーランドのパンフレットを仲良く覗きながら、きゃあきゃあと楽し気に騒ぐ『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)と『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)。

「白い砂浜のビーチに大自然を感じられるハイキングコース……遊園地の中に海も山もあるのね」
「なんてったって"楽しい夢"がテーマの遊園地だからね! 何でもあるし、一日じゃまわり切れないくらい広いんだ。
 一日歩きっぱなしでもたどり着けない場所まであるから、遊園地の中にホテルがあって泊まれるんだって!」
 マップを見ながら感心したように呟く『壊れる器』リア・クォーツ(p3p004937)に、すかさず蒼矢が解説を入れる。
 よほど事前にパークの事を調べて来たのだろう。目元にうっすらとクマを滲ませたまま彼は笑った。

「事前の説明はここまで。パンフレットとマップは渡しておくから、出発当日までに遊ぶための準備を最大限にしておいて!
 あっ、当日の天気は快晴らしいから、涼し気な恰好で行くといいんじゃないかな。水着も浴衣も、他の衣装だっていい。楽しい夢の世界は何でもアリさ!」


 数日後。
「パーク内でのお会計は腕輪のバーコードで全て済ませられるわ。依頼の経費扱いになるけど、お土産は元の世界に持って帰れないから、それだけは注意して頂戴」
 入口の前でパスポート代わりの腕輪を4人に配り、境界案内人のロベリア・カーネイジは見送る姿勢で手を振った。
 蒼矢が案内する筈ではなかったのか。そう問われると、ロベリアは軽く肩を竦める。
「遊ぶ準備で徹夜して体調を崩したの。まぁ、土産話が出来るくらい貴方達が満喫したら、蒼矢も浮かばれるんじゃないかしら」

NMコメント

 ご指名ありがとうございました! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 気合を入れて、夏を満喫できるシナリオをご用意させていただきましたッ!

●目標
 全力で楽しい夏を満喫する

●場所
 異世界《ニャッキーランド》
  あらゆる世界の人間達の夢と理想をテーマパークという形で再現した異世界。
  来訪者の"遊びたい"を原動力に無限に施設が増え続ける底なしの楽園です。
「こんな風に遊んでみたいな」と願えば、解説やオープニングに登場していない施設でもいつの間にか出来上がります。

 以下はパークのパンフレットに書かれている施設やイベントです。

『ビーチエリア』
 白い砂浜と青い海。海水浴にピッタリの場所です。もちろん遊泳可能。
 バナナボートや水上スキーの他、海中を探索できる潜水艦ツアーもあるようです。
 ビーチバレーや潮干狩りのスペースもあり、疲れた時は海の家で休憩するのもいいかもしれません。

『ハイキングエリア』
 木々の生い茂る涼しい山を中心としたエリアです。ハイキングコースはもちろん、
 キャンプ場も用意されており、バーベキューや貸し出しテントでのキャンプも可能。
 夜には満点の星空に加え、遊園地エリアから上がる花火を見る事も出来るようです。

『遊園地エリア』
 このテーマパークのシンボル「ビリーヴ城」を中央に据えた、巨大なアトラクションエリアです。
 ジェットコースターやお化け屋敷、コーヒーカップなど様々なアトラクションがあり、
 夏限定の特別バージョンとして散水が行われているようです。
 お城の前ではファイヤーアクションと水まきがウリのヒーローショーが行われ、遊園地エリアを横断するパレードでは希望者がパレードに参加できるようになっています。

●その他
 芳董の担当している境界案内人(蒼矢、赤斗、ロベリア)は基本的には特に登場予定ございませんが、プレイングで呼ばれた際は出て来る場合があります。

 それでは、素敵な夏をお過ごしください!

  • さまーたいむ・ばけーしょん! ~おいでよニャッキーランド~完了
  • NM名芳董
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月16日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先

リプレイ


「おいルル家、あんまはしゃぐんじゃねーぞ?」
「折角のバケーションじゃないですか! リア殿は、はしゃがないんですか?」
「はぁ? このあたしがいちいちはしゃぐと思いまして?」

 蝉の声が響く快晴の空の下。溶けかけのアイスシャーベットを咥えながら、シラス(p3p004421)は半眼気味に過去の出来事を思い出していた。学級を取り仕切る委員長よろしく昨日まで真面目に徹底していた『壊れる器』リア・クォーツ(p3p004937)は、テーマパークの入り口で星のオブジェを目の前にしても至って平静……と思いきや。

「あははは! すごーーい!」
「待ってくださいリア殿ーー!」
「ここ、望めば何でも出てくるの!? 凄いじゃない!!」

 きらきらと、そりゃもう子供の様に無邪気な顔ではしゃいでる。あまりのハイテンションっぷりに『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)も慌て気味だ。忍者走りで音もなく、走り出したリアの後を追尾していく。

「めっっちゃくちゃはしゃいでるじゃん」
「まぁ、いいじゃない。折角のバケーションだもの。少しくらいはっちゃけておかないと損よ!」
 シラスの呻きに似たツッコミに、まぁまぁと『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)がフォローにまわった。気を取り直すように手にしていたパンフレットを広げ、事前にメモしていた情報へと視線を落とす。

「さあさあのんびりしてる時間が惜しいしドンドン行こうー! 事前に計画も立ててきたしね!」
「そうですね! 最高に夏をエンジョイしていくとしましょう!」
「ほら、何もたもたしてんのよ! シラス、アレクシアさん!」
「はいはい。分かってるから走るなよ。迷子になっても知らないぞー!」

 あらゆる困難を乗り越え、今日これまで頑張ってきたローレット・イレギュラーズ。ここに居るのはその中でも指折りの精鋭たちだ。日頃の頑張りに応えようと言わんばかりに、瞬きひとつする間にもマップの中へ新たなアトラクションが現れ、遊びにおいでと誘ってくる。

「このような世界まであるんですね! 世界は広いというべきか……この場合は多いという方が正しいですかね?」
 ハイカラな世界にモノクロの世界。色々な異世界を渡り歩いて来たルル家だが、未だかつてこんなにも特異運命座標に献身的な異世界はあっただろうか。不思議そうに呟く彼女の前へ、ふわと黄色いリボンの尾が靡いて横切る。
「夏といえばやっぱりこれだよね。そう……水着!」
 大きな鍔の帽子を両手で押さえながらアレクシアがくるりと回った。真夏の太陽から色を取ったような爽やかな姿に、思わず拍手が沸き起こる。
 この世界にルールはひとつ。テーマパークを最大限に愉しむ事! そのためならどんな服を纏っていたって咎める者は誰もいない。思い思いにこの夏を楽しもうと持ち寄った水着に着替えた後は、皆の願いを抽出した「アレ」へと向かう事になる。


「これ大丈夫なのかなっ……!」
 カタカタカタ。
 シラスの不安を引き立てるように大きな音が響き続ける。
 肩もお腹も安全装置のバーが下り、身体をガッチリ固定してくれてはいるものの……コースターの外へ視線を投げれば、さっきまで居たはずの乗り場が米粒のように小さく見えた。
"海の中を楽しく遊覧できます♡"
……なんて売り文句に踊らされた結果がこれである。遊覧はどうなったんだよ、遊覧は!?
「ねえねえ、あそこ見てよ! 遠くに大きな観覧車!」
「う、うん」
 すぐ隣ではしゃいでいたアレクシアも、青ざめるシラスに気付いたようだ。かくんと軽く小首を傾げる。
「大丈夫? ちょっと顔色悪いみたいだけど……」
「ジェットコースターのこの、カタカタって音が苦手でさ」
 だけどきっと大丈夫。自分に言い聞かせるように呟いて、シラスは少し照れたように笑った。落ちていくのは怖いけれど……好奇心が止まらない。それに何より、アレクシアの隣に居られる。これだけでもう、乗りに来た意味があるってやつだ!
 座面の上で、安全バーを握る手を解く。代わりにアレクシアの手をぎゅっと握り――。

「シラス殿とアレクシア殿、上手くお話出来てるでしょうか?」
 コースターを4人占め出来ると知った特異運命座標たちは、その長さを最大限に満喫する……という建前で、最前列と最後尾へ2人乗りという贅沢極まりない位置取りを選んだ。その実、シラスとアレクシアの急接近を企んでの配置だったのだが、距離と風の音も相まって、ルル家とリアの方へ2人の会話は届かない。
「じれったいけど、見守るしかないわ。それにしても……」
 じっ、とリアに見つめられ、どういう理由か分からないままに愛想よく笑顔で手を振るルル家。
「貴女って、不思議よね。旋律の無い人なんて、初めて会ったわ」
「旋律、ですか?」
 美しい音色や優しい音色、聞くに堪えない不協和音。リアのギフトであるクオリアは、感情を旋律として捉える不思議な力だ。故にその旋律を聴けば、大抵の人となりは掴む事が出来るのだが……目の前にいるルル家からは、妙な事にそれ(旋律)が無い。だから興味がわいて仕方がないのだ。彼女が今何を思い、どんな人間であるのか。
「拙者には難しい事はよく分かりませんが、リア殿に興味をもって戴けるのは素直に嬉し――」

 カタン。

 コースターの音と共にルル家の言葉はそこで途切れた。車体が傾いたかと思えばすぐに、急降下からの急旋回! 右へ左へあっちこっち、揺さぶられながら落ちていく!!
「おらーーーいけーーー!!!」
「叫び声がワイルドですねーー!??」

 ざぶーーん! と飛沫を上げてコースターが海へ突っ込んでいく。どういうメカニズムか息が苦しくなる事もなく――どうやら遊覧エリアまで来れたようだ。
「うわー! すっごく綺麗ですねー!ほらほらリア殿!あれ見てくださいよ!美味しそうな魚!」
 海の中から見上げる太陽は涼やかながらも明るくて、珊瑚や魚を綺麗に彩り、海中の神秘を引き立てている。興奮せずにはいられないと、がくがく、リアの肩を掴んで目を輝かせながら揺さぶるルル家。しかし返事は希薄なままで――リアの口から魂が抜けかけている事にルル家が気づくのは、暫く後になりそうだ。

 一方その頃、シラスとアレクシア。
「さっき横切ったお魚見た!? 綺麗だったよねえ」
「あぁ、俺も見てたよ! 意外とデカかったな」
 繋いだ手を互いに握り合い、とてもいい雰囲気になっていた。
(よかった。急降下した時は死ぬかと思ったけど、アレクシアは変わらず楽しんでくれてるみたいだし……)
 アレクシアとルル家が互いに手を振り合ってるのを見守りつつ、シラスはホッと息をつく。しかし気を緩めたのも束の間、背後にパーティー以外の気配を感じて視線を流すと――。

「う、後ろっ!」

 そこに居たのは、凄まじいスピードで迫りつつ大口を開ける巨大鮫! 戦う武器は手元にない。代わりに――グン! と突然コースターが加速した! 緊急時に振り切るよう、プログラムされていたのだろう。
「だからってこれは早すぎだってぇぇーーっ!!」
 絶叫に次ぐ絶叫。それでもレールはまだまだ続く――。


 遊園地エリアを嫌というほど満喫した一行は、とっぷり日が暮れた頃に次なる場所へ訪れた。

 トングをカチカチ鳴らしながら、ご機嫌な様子でルル家が網から肉を持ち上げる。
「海に入って冷えた身体には、温かい食べ物が染みますよね!」
「好き嫌いがあったら早めに言ってね!」
 アレクシアも彼女と一緒にバーベキューで焼く係だ。小食気味な彼女にとって、最高のメインディッシュは美味しそうにご飯を食べる皆の笑顔!
「……で、リアは手伝わねぇの?」
「あたし?」
 手伝っていない女子は一人だけだぞ……と言わんばかりのシラスに、リアはフフンと得意気に笑った。
「あたしは食べる専門よ。ふふ、折角年上のお姉さんが居るんだから、ここはアレクシアに全力で甘えるわ!」
 何はともあれ肉である。彼女のお皿の上には茶色い塊が山と積まれ、豪快に平らげられていく――。

「あ、アレクシア殿! これもう食べられますよ!はい!あーん!」
「はふはふっ! ン、……ありがとう! すっごく美味しいよ!」
 ルル家に食べさせて貰い、口をもごもごさせながらアレクシアは各々の味の好みを観察中だ。
 リアは修道院育ちで好き嫌いが無いと踏んでいたが、肉ばかり取っている様子。逆にルル家はバランス良く食べている。勢いで何でも食べれてしまうのかも。そしてシラスは――。
「あ、シラス君の好き嫌いは大体わかってるので大丈夫です!」
「シラス殿野菜食べられなかったんですか? 意外と子供ですね……ぷぷぷ!」
「俺もう好き嫌いしないって、皆の前で言わなくてもいいじゃん! アレクシアこそもっと食べ――うおっ!?」
 ルル家に茶化され慌てるシラスを後ろからリアがガシッと掴んで羽交い締める。
「シラスから野菜食べたい音色が聴こえてきたわ! 特別にあたしの分も食べていいわよ!」
「それ、単純にリアが野菜食いたくなかっただけじゃ……んがむぐっ!」
 焼いたピーマンを口の中にねじ込まれ、目を白黒させるシラスの耳元へリアが唇を寄せる。
「……ねぇ、シラス。貴方、そんな顔もできるのね」
「!?」
「やっぱり、あの人の隣だとそんな音色も聴かせられるんじゃない」
「けほっ。それは……」
 次ぐ言葉は――打ち上げられた花火の音に溶けて消えた。

 見上げれば光の大輪が、夜空を埋め尽くすように咲き誇っている。
「来年は……婚活を成功させて素敵な男性と一緒に花火を見れるようがんばりますからねーー!」
 決意を新たにするルル家に、ぷはっと思わず笑いだしてしまう仲間達。

(今年もいい思い出ができて、よかったな……)
 花火を見上げ、きらっきらと目を輝かせるシラス。その横顔を眺めてアレクシアもまた、満面の笑みを零すのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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