PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Poltergeist

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



『そういえばシラス君、もうおばけは大丈夫なの~?』
『その話ここでするのっ!?』

 ニマニマした顔を今でも覚えている。根に持っていると言うべきか。わざわざ口に出すほどではないが、喉に引っかかった小魚の骨のような思い出なのだった。
 もう大丈夫、大丈夫に決まっている。シラスも男だ、おばけなんぞに怖がってはいられない。だからいつか見返してやるんだと──シラス(p3p004421)が心に決めていた、そんなある日のことだった。

「うーん……」
「お、ユリーカ。どうしたんだ?」
 1枚の羊皮紙を手に唸り声を上げる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)にシラスは声をかける。ぱっと顔を上げたユリーカはへにゃりと眉を八の字にした。
「この依頼、誰も受けてくれないのです……ボ、ボクの情報収集力がポンコツなのかもしれないのです!」
「お、おう、落ち着け? な?」
 今にも泣き出しそうなユリーカを宥めすかし、シラスは依頼書を眺める。戦闘のない調査依頼。多くの人数を割く必要もなく、すぐにでも集まりそうな条件だ。
「えーっと……は? 一家心中?」
「なのです。空き家になったお家の調査依頼なのです」
 何があったのか詳細には語られないが、何でも少し前に住んでいた家族が一家心中し、事故物件ということで空き家になっているらしい。土地の所有者としてはそこを売り払ってしまいたいが、近頃その家で物音がするのだそうだ。
 それは生活音だったり子供の笑い声だったりするのだが、そこで誰かが生活しているわけがない。不気味がって誰も近づかず、当然ながら売れないと言うわけだ。
「本当に幽霊がいるのかもしれませんし、魔物の仕業かもしれません。悪戯好きの妖精かもしれませんが……ともかく、調べて報告書を上げないといけないのです」
 なのに誰も来てくれない、と嘆くユリーカ。依頼書の文面にひと通り目を通したシラスは「俺、行くよ」と名乗りを上げた。
「本当ですか!」
 パッと瞳を輝かせたユリーカへシラスは頷く。ここで依頼を選り好みするようではプロと呼べない。良い依頼も悪い依頼も、人が集まらない依頼だって受けるのがプロの冒険者だ。
 何より。
「あ、シラスくんだ。何か行くの?」
 ひょこりとアレクシア・アトリー・アバークロンビー (p3p004630)が顔を覗かせる。依頼書を見せて一緒に行くかと誘ったシラスは心の中でほくそ笑んだ。
(この依頼ならアレクシアも怖がるだろ)
 以前からかってきた彼女に意趣返しが出来る、またとないチャンスである。
 しかしアレクシアは依頼書を一読するとあっけらかんと承諾した。ただの調査依頼だとでも思ったか。その間にもユリーカが嬉しそうに依頼書へ2人の名前を記載する。
「この依頼、2人で行くための内容なのです。肝試しじゃないですからね? しっかり調査してきて欲しいのです」
 如何なることが起ころうとも、その目と耳で見聞きしたことを正確に報告してもらうのだとユリーカは告げ、2人へにっこりと笑った。

 さあ、一体2人はどうなるのか──?

GMコメント

●成功条件
 空き家の怪奇現象を堪能すること

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

●フィールド
 普通の一軒家です。平民にしては裕福だったようで、少し大きめのお家かもしれません。両親と子供3人の5人家族だったと聞いています。
 電気などはつきませんが、昼間行けば窓から光が差し込んでそこそこの明るさです。夜は真っ暗です。行く時間帯は2人でご相談下さい。

●注意
 アドリブ多めがデフォルトです。
 また、このシナリオは2人のプレイングによって構成されます。プレイングに庭があるって書けばあるのです。書いていない部屋も出てくるでしょう。
 重要となるのは怪奇現象に遭った時の反応となりますので、ぜひぜひがっつり書いてください。
 【タネも仕掛けもない、純粋なホラー】が今回唯一、確かなメタ情報です。

●ご挨拶
 愁です。
 書きたくない恐ろしさと書いてみたい2人の肝試し(?)に後者が勝りました。あと昔またホラゲの実況思い出しました。怖いよう。
 プレイングをお待ちしております。

  • Poltergeist完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月22日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

リプレイ


 不気味な一軒家の前に2人のイレギュラーズが立つ。『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はやる気満々に家を見上げた。
「やるからにはバッチリ隅々まで調べちゃうよ! ね、シラス君!」
「ああ、もちろんだ。途中で根を上げるなら早めにな?」
 シラス(p3p004421)がアレクシアを横目にそう告げれば、彼女もまた視線を寄越してにっと笑う。
「シラス君もね! 早めに正直に言うんだよ?」
「ふふん、この程度怖がるわけないだろ」
 得意げな表情を浮かべたシラスに、アレクシアはなら大丈夫だねと頷いて門扉に手をかけた。そんな後ろ姿にシラスは小さく眉根を寄せる。
(気に入らないぜ)
 何が気に入らないか? もちろんアレクシアのことである。今回の依頼はとびきり怖い話だというのに、彼女は動じない。余裕の表情で「いいよ」と軽く返しているのである。しかも、どこかシラスがまだ怖がっているように思っていると見えるのは果たして、気のせいだろうか?
(いいさ、あの日みたく笑ってられるのは今のうちなんだから)
 あの日──不幸な手紙を受けた日。皆の前でからかわれた日でもある。あの時のシラスとはもう違うのだ。

 なぜなら、シラスはこの家で起きる現象を予習済だから!

 不気味とは言えど、知っていれば心構えもできる。無闇に怯えることはない。
「それにしても、怪奇現象ってどんなことが起こるのかな?」
「うーん……どんなことだろう」
 嘯きながら心の中でよっしゃとガッツポーズを作るシラス。これはどう考えても未予習者の発言である。彼女はここで起こるあれやこれやを知らないのだ。
(今日はアレクシアが怯える番だ!)
 一方のアレクシアは、本当に何も知らない。誰もいないのに音がするとか、家具が勝手に動き出すとかかなあと想像をする程度だ。けれど結局のところ、入ってみなければその内容も危険性もわからない。
 しかし今回はシラスとの『先に根を上げた方が負け』という勝負も絡んでいる。彼が相手となれば絶対に負けられない戦いだ。
「よし、行くよ!」
 錆びた門扉をゆっくり押すと、キィィィィと甲高く錆びついた──聞き方によっては誰かの悲鳴にも聞こえる──音を立てて開いていく。ここに心霊現象は関係していないはずだが、廃れた家屋のムードをさらに高めるようだ。『いる』ところには場所でさえも協力するのかもしれない。
 2人は顔を見合わせ、ゆっくり庭へ、そして玄関へ続く道を歩く。整備する者のいなくなった庭は草がぼうぼうで見る影もない。しかしほんの少し見える遊具は、おそらく子供が使っていたのだろうと判断できた。
「子供は3人いたんだっけ?」
「兄弟仲も良かったらしいよ」
 アレクシアの言葉にシラスは頷く。怪奇現象の情報を集める最中、家族にまつわる話もいくつかあった。兄弟仲はその内の1つだ。
「本当に、悲しい事件なんだね……」
「一家心中の理由はわからないけれど……とりあえず。
 早く行かないと夜になるんじゃない?」
 すっかり立ち止まってしまったアレクシアをシラスは玄関口へ促す。まだ日は高い場所にあるが、今回は夕方から夜に調査時間帯がかかるよう調整しているのだ。あまりのんびりしていると調べたいものも見えづらくなるかもしれない。
「そうだね、中に入ってみよう」
 アレクシアは頷き、再び歩き出す。ドアノブへ手をかけた彼女はシラスの顔を見ると、意を決して開いた。
 同時、埃っぽい空気が流れ出す。長く人が立ち入っていないようだ。2人が玄関へ入ると、日に照らされて埃がキラキラ舞っている。
「それじゃあ先ずは──」
 言いかけたシラスの後ろで扉が勢いよく閉まる。視界でビクッと小さく肩を跳ねさせたアレクシアの手が自分の方へ向いていることを確認するが、当然シラス自身だって肩が跳ねた。
「扉が……」
「閉まったね……」
 2人でゆっくり視線を背後に巡らせて、シラスが試しにドアノブを握ってみる。強い風が吹いたわけでもないのに閉まった扉は──開いた。
「本当に閉まっただけだったんだね。突風かな?」
「いや、今日全然風なんて吹いてないし……」
 早速考察するも、この家で突然起こるとなれば怪奇現象のひとつだろうと行き着くのは容易で。
(歓迎されてる、のかな?)
 アレクシアは再び家の中へと視線を巡らせる。閉められたということは進めということか。それとも、この程度で怖がるなら帰れということか。
 どちらにしても、この程度で帰るなどあり得ない。
「シラス君、家の中を見てみよう」
 そう告げれば彼も同じ気持ちだったらしい。アレクシアは頷いた彼とともに、手近な部屋へと入って行った。
「ここはリビングみたいだね」
 シラスは視線を巡らせる。ローテーブルと囲うように置かれたソファ。近くには子供の遊ぶスペースもあったらしい。冬には火をおこしていたのだろう暖炉もある。最も今はどこにも埃が分厚く積もって、暖炉には大きく蜘蛛の巣が張られていたが。
「あ、足跡」
 視線を落としたアレクシアが気づく。窓からの光に照らされて、埃の上に足跡が残っているのだ。アレクシアとシラスはまだ部屋に入ったばかりだし、何よりその足跡は2人より小さい。まるで子供のようである。
「前に誰かが探索したとか?」
「子供連れで?」
 いやいやそんなわけないだろう──そう思った矢先だ。

 キャハハハハハ!!

 甲高い子供たちの声が上の階より響く。ドタドタと走り回る足跡も含めて、だ。
 また肩を跳ねさせたアレクシアは、にやにやするシラスにむぅっと口を尖らせる。
「ちょっと驚いただけだよ!」
「そう? ま、勝負はまだ始まったばかりだもんな」
 そう軽く告げるシラスはまだまだ余裕の表情で、もちろん下調べの賜物ではあるのだがアレクシアは知るよしもない。
 そんな痕跡を隠すように突然カーテンが閉まる。少し暗くなったが、この程度ならまだ大丈夫だ。
「カーテンに何か仕掛けとかは……うん、なさそう」
 カーテン周りを調べたアレクシアはシャッとそれを開く。窓にはいつのまにやらべったりと子供の手形。
「いてっ」
 シラスの声に振り返れば、彼の足元にボールが転がっている。先ほどまではなかったはずなのに。柔らかいボールは子供用で、先ほどの声は『痛くないけど言ってしまった』やつなのだろう。
「投げられたみたいだ。ちょうど向こうの方から」
 彼が指したのはリビングの出入り口。開いたままの扉の先には当然誰もいない。もちろん、玄関扉の開けられた音だってしていないから他者の出入りはないだろう。
 そんな悪戯は、やがて怪奇現象としてエスカレートしていく。
「そろそろ暗くなってきたね」
 灯りをつけようか、とアレクシアは火を灯す。ぼう、と明るくなった部屋にシラスはぎょっと目を剥いた。
「ち、血文字……!?」
 崩れないバベルは『出て行け』という言葉を2人へ見せる。アレクシアは感心したように──どちらかといえば楽しそうに見える──その血文字をまじまじと調べる。
 次の部屋でもそうだ。洗面所では鏡に映ったシラスの顔が朽ちていき、最後は骨だけになってしまう。けれどもアレクシアは「すごい!」とむしろ自分を鏡に映し、その朽ちる様を見る始末。
(いやいやいや、なんでそんなに楽しそうなんだ!?)
 気味が悪くて仕方がない。百聞は一見にしかずとはよく言ったものだ。
「あれっ」
「灯りが消えちゃったね」
 つけ直すよ、と暗闇の中手探りで進むアレクシア。シラスは不意に第三者の気配を感じとるが、アレクシアが灯りをともしたことでそれは消え去る。代わりに──。
「っ、」
 自分の腕についた手形に顔を強張らせるシラス。冷や汗が背中を流れ落ちていく感触がした。どうにか声だけは上げまいと我慢しているが、これは時間の問題かもしれない。戦えない相手への対処方法など知らないのだ。
(でも、アレクシアだって俺に飛びつきそうな時もあるし。あとひと押しだろ)
 ここは一計を講じるとしよう。シラスは突然血まみれになったベッドを調べるアレクシアからそっと距離を取って身を隠す。彼女が独りだと気づいた時、そして怪奇現象に遭った時の怖がる様子を見てやるのだ。
「あれ……? シラス君?」
 アレクシアの声。シラスがいなくなったことに気づいたのだ。その動揺っぷりから見つかっていなさそうだとほくそ笑んだシラスは、ふと目を離した瞬間に部屋が暗くなったことに気づく。また怪奇現象かと思ったが、いつまで経ってもアレクシアが灯りをつける様子はない。それどころか、先ほどまでいたはずの彼女の気配すら感じられないではないか。
(まさか、何かあったか……!?)
「アレクシア、何処だっ!?」
 物陰から飛び出て辺りを見回すも、暗闇では何が起こったか判断することすらできない。不意に背後で気配が生じ──肩を掴まれた。

「うわあああぁぁぁぁああああっ!?!?」

 盛大な声を上げ、弾かれたように飛びのくも、何かに躓き尻餅をついて。再びついた灯りとともに笑い声が響いた。
「もうっ、仕事中だろ! 何してるのさ──アレクシア!」
 シラスの目の前で笑うアレクシアは「だってシラス君もやったでしょ?」と片目を瞑ってみせる。それを言われては何も言い返せず、ああもうとシラスはため息をついた。
 アレクシアは最初こそ動揺したものの、落ち着いて考えれば彼自身の悪戯だろうと判断もついていた。そしてその目的がきっと、アレクシアを驚かせようとしているということも。そんな彼への意趣返しだ。
(怖がってるとこ見ないと気が済まなくなっちゃったからね! もう!)
 シラスへ手を貸して立ち上がらせ、2人は再び──というより、今度こそしっかり調査へ本腰入れる。シラスは張り詰めていたものが切れてしまったようで、ここまでどうにかなっていた怪奇現象ももう限界だ。少なくともアレクシアの側からは離れられない。アレクシアもアレクシアで、彼が今度こそ本当に消えないよう目をなるべく離さなかった。
 夫婦の寝室には家族の似顔絵──子供が描いたものだろう──が額縁に入れられていたが、2人が通りがかった瞬間にぱきりとひび割れる。思わず視線を向けると、家族の顔部分が黒く塗りつぶされていった。
「アレクシア、あれ」
 シラスが示したのはベッドのすぐ横。血だまりが乾いたのだろう床から、赤い足跡がこちらへゆっくりと伸び始めている。アレクシアは「大丈夫」とシラスへ告げると意識を集中させた。
(やっぱり、心強いや)
 そんな彼女を横目で見るシラス。その身の内へ、赤い足跡をつけていたと思われる魂が吸い込まれていく。しばらくそのままでいたアレクシアだが、ゆっくりと顔を上げた。その視界にまだ赤い足跡はあるものの、それ以上近づくようなことはない。
「……安らかに眠ってね」
 そう呟いた彼女は、隣のシラスへ視線を向けた。不思議そうに見つめる彼へギフトの説明をする──苦痛を伴うことは伏せて──と、「どうだった?」と首を傾げられる。
「うん。お父さんがね、解雇されちゃったんだって」
 もともと他に頼れる者がいなかったらしい。裕福な暮らしから一転、彼らが貧しく苦しい生活を送ることは目に見えていた。これまでの豊かな生活に慣れた家族が、そのような生活を送れるのか──その苦難は想像に難くない。故に父は家族を殺し、この部屋で最後に自害したのだそうだ。
「出て行けっていうのは……ああ。この家自体は渡したくなかったのか」
「そうみたいだね。思い出が詰まってるみたいだから」
 先ほど割れてしまった似顔絵の額を手に取るシラス。黒く塗りつぶされてしまったそれはよく見ると額縁の上からで、生者を驚かせるためのものであったのだと察しがつく。
「どうにか残せるものがないか、掛け合ってみようか」
「うん! 家は残せないかもしれないけれど、思い出を形にできたら良いな」
 家は驚くほどに静かで、怪奇現象のひとつももう起きやしない。ここまでたどり着いた2人に敬意を評しているのか、それとも2人の『思い出を残そう』という言葉を信じてくれたのか。
 ともあれ、1人の霊が起こしていたこと、そしてその原因が突き止められたことで調査は一区切りだろう。



 ユリーカへ報告に行こうと灯りの始末をして家を出たアレクシアは、ふとシラスへ視線を巡らせる。
「……そういえば、勝負の結果はどうなるの?」
「あ、」
 シラスが思い出したように声を上げる。途中の様子からしてシラスの劣勢な気もするが、途中からは協力して調査にあたっていたので判断のしようもない。シラスは窺うようにアレクシアを横目で見た。
「……延長戦、でどうだ?」
「ふふ、いいよ! 次で勝ってみせるからね!」
 満面の笑みを見せたアレクシア。シラスも笑みを浮かべると、肩越しに出てきた家を振り返る。
 1人では無理だったかもしれない。けれどアレクシアと2人で本気を出せば、どんな事件だって今日のように解決できるのだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お2人とも、お疲れ様でした。
 お楽しみ頂ければ幸いです。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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