シナリオ詳細
いい子はおやすみの時間
オープニング
●罪は罪であることが最大の罰である
監獄島。幻想南部に位置するこの島はいわば罪人達の楽園である。
幻想貴族ローザミスティカが看守を含め全てを懐柔し『閉じた王国』『無法地帯』『幻想治外法権』と呼ばれるに至ったここに、当然ながら法律は機能しない。
生きるも死ぬも自己責任であり、気まぐれな女王であるローザミスティカによってスリリングな毎日が約束されていた。
そんな島にローレットが出入りするようになったのは、フィッツバルディがこの治外法権地帯を得るべくローザミスティカからの依頼を受けるよう求めたからである。そうして今日もローレット・イレギュラーズはボートで島へとたどり着き、どこかシニカルに笑う看守と顔を合わせるのであった。
「よう、今度は何をやらされるんだって顔してねえか? 安心しろって、ガキひとり殺すだけさ」
看守の男は指の上でコインをくるくる回しながらあなたの顔を見た。
「ガキの名前は――『リリシー・ショトゥール・ベズモリコン』。殺しの天才だ」
●殺人を楽しめ
ある少女の話を、もう一度しよう。
リリシー・ショトゥール・ベズモリコン。彼女は幼い妹を刺殺した罪で収監された……ことになっている。
厳密には彼女が『殺人を楽しめないことが罪である』というきわめて歪んだ倫理観に苦しみ続けたことから、なかば放棄するかたちで監獄島へとなげこまれたのだった。
そんなリリシーを気に入ったローザミスティカはローレットを雇い、彼女の願いをかなえるように依頼した。格好としては、殺人の楽しみ方を彼女に教えるようにリリシー自身から依頼された形である。
それが、今からおよそ一ヶ月前の出来事だ。
リリシーはローレットの中でも特段に突飛な才能や価値観を持ったイレギュラーズから人の簡単な殺し方や殺しの楽しみ方や殺しのメリットを教わり、最終的に舞台とした『監獄街』をホラーショーに変えたのだった。
囚人達が作った監獄の中の街、監獄街。住民達はリリシーによって捉えられては『おもちゃ』にされた。リリシーは逃げ隠れる彼らを巧みに見つけ出してはクリスマスオーナメントのように飾り付けたという。
「バケモンがバケモンになっただけさ。俺ら看守もなんとも思ってねえ。
あ、ボスはたいそう満足だったらしいぜ。だからあんたらにも金が出た」
看守の男はそう語った。
しかし、今回の依頼は……。
「ああそうさ。ボスはホラーショーに『飽きた』んだとさ」
監獄街はいま、ホラーショーの舞台になっている。
住民たちはリリシーから逃げ隠れし、もてる限りの武装で抵抗していた。
「おっと、『リリシーを殺そうと結託した』なんてヤワい話じゃねえよ? あいつら結局は自分の利益と生存が第一だからな。『いけにえ』を手に入れてリリシーに差し出すことで一日でも長く生き延びようとしてんのさ。リリシーもそんなデスゲームが気に入ったらしくてな、一人につき一日ずつ見逃す約束をしたそうだ。今じゃ少人数ずつの派閥にわかれてハント合戦に明け暮れてるぜ。そこにリリシーが時折現れて台無しにしていくってのが日常さ」
ポルノ雑誌を広げ、事務机に足をのっける看守。
「あんたらの仕事はリリシーをぶっ殺して死体を持ってくること。なんなら首だけでも構わねえよ。
まあ、それより先にあんたらの首が人骨ツリーに飾られてても関知しねえけどな。
おっとそうだ。ボスが『喜ぶ』形で仕事を仕上げたらボーナスが出るぜ。ボスへの謁見はできねえけど、チャレンジがてら考えてみてくれ。
俺自身は……ま、なるようになればそれで満足さ」
- いい子はおやすみの時間Lv:17以上完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常(悪)
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年08月15日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●いい子はおやすみの時間
監獄街、正面ゲートにて。
「わーお、随分とイメチェンしましたね。リフォームの匠ってやつですか?」
元々スラム街のような様相をしていた場所ではあったが、『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)が最初に見た時とは比べものにならない風景が広がっていた。
装甲ゲートを潜ってすぐ、斜めに三分割された看守がワイヤーフックで吊され点滅電飾を巻き付けたステキなアーチが出迎えた。
あたりは血と腐敗した肉の臭いで満たされ、生きた人間の気配はない。動くものといえばネズミと虫くらいだ。
「どうします? もう実行します?」
「せやなあ……」
『化猫』道頓堀・繰子(p3p006175)は指抜きの革手袋をはめ、甲の部分に埋め込まれたマグネットに薄いスローイングナイフを貼り付けていく。
壁によりかかり、くわえた煙草にジッポライターで火をつける『悪徳の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)。
「にしてもそのリリシーってガキ。まわりが生贄出してまで延命をはかるなんざ、随分良いようにやられてんだなァ。
だいの大人が寄って集ってコレ、ってコトは、ガキにしちゃかなり厄介みてェだし。
気は抜けねェなァ」
「因果応報。汝、深淵を覗く時なんとやら。
怪物は怪物に滅ぼされるってかー?難儀なもんやで。
まっ小難しい事言うてもしゃーないしゃーない。同情はせえへんし嫌悪もせえへん。そろそろよい子はねんねの時間やでぇー、っと」
「殺人鬼……懐かしい響きですねー。
思わずリリシーたそとかつての私を重ねちまうところでしたー。
しかし聞いた話ではかなり頭のネジがぶっ飛んでる方のよーですねー。
そんな方の脚はさぞかし立派なんでしょーねー……是非手に入れたい。
ついでにイーゼラー……様にも捧げておきましょーかねー」
なにかと脚に執着する『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)も、今日は他三派閥の連中よりもリリシーに執着を向けている様子だった。
「やれやれ、ですねえ……。
元より狂人の素養があったとはいえ、イレギュラーズに狂気を育てさせるとは随分と悪辣な手管を操るものです、ローザミスティカというお方。
さすがは監獄島の実質的な主……」
『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は取り出したタロットカードをマジシャンの如く華麗にシャッフルし、そのうち一枚を引き抜いた。
「とはいえ。ワタクシにとって、悪なる者の不幸こそが至上の悦楽。
少女とはいえ、悪に落ちたならばその応報をさせるのがワタクシの流儀です。
殺す事を愉しむ少女が『殺される側』の気持ちを味わう……とても愉しみですね」
リリシーに集中した彼女たちの作戦が、吉と出るか凶と出るか。
「おや?」
裏返したカードは、塔の大アルカナだった。
「ふむー、今回の目標は随分好き勝手やってるみたいですね。
それをやるだけの力もあるとなると、なかなか厄介な相手っぽいです。
まぁ、死なないように頑張りますかー」
桐神 きり(p3p007718)はいつもと同じスキルセットで魔方陣を操作すると、タッチパネルでも操作するように升目型の魔方陣を複雑にタップした。
すると周囲50m以内の仲間に念話がつながり、視界右上にライトグリーンの文字が表示された。。
「テキストチャット、か。便利だな……」
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は使い心地を一通り確かめてから、作戦のおさらいを始めた。
『繰子、ノワ、ピリムの三人がそれぞれ三派閥を引きつけ、広場へと誘導する。
その間残る五人は広場にある露天や何かをつかって隠れておく。
三派閥それぞれの誘導が住んだら交戦状態をおこさせ、リリシーが現れるのを待つ。
猟奇的な彼女のことだ。おそらくそれだけ大きな戦いには混ざりたがるだろう。
そしてそれぞれの派閥に被害が出ないわけもなく、弱った者を狙うだろうことも予想がつく』
リリシーに効率や技術を教えたことが影響しているのだろう。リリシーはそれほど戦闘に対して積極的ではなく、刺激はあくまで加虐によって得ようとしているようだ。
『そして三派閥もリリシーへいけにえを捧げるのが目的だから、リリシーが現れればすぐに手を引くはずだ。
そこへ全員でリリシーへ襲いかかり、即座に殲滅する。
いくら手強い相手とはいえ魔種でもあるまいに、八人がかりで取り逃すことはありえない。たとえ2~3人欠けたとしても同じことだ』
「了解。皆もそれでいいね?」
『盗兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)はカーテンのついたフラフープを自分の真上から垂らして姿を隠すと、ストンと輪をおとして見せた。その時には既にノワは非常に特徴の無い一般囚人に変装しており、そばで見ていた仲間も思わずギョッとするような変化ぶりであった。
「仕事だったとは言え僕らイレギュラーズが彼女を完成させてしまった。
ならばピリオドを打つのも僕らの仕事だ。
――Who Killed Cock Robin?」
手をぱたぱたと振って、ノワは街の中へと消えていく。
続いて繰子とピリムも。
残る仲間達は広場で身を潜めることになった。
●監獄街第一派閥『bar visiv』
ピリムが訪れたのは、なんとも読み方の分からない名前のバーだった。
バーといっても木製の扉と手書きの看板があるだけで、灯りがついて人の声がするからどこかの派閥のひとがいるんだろうなあという直感のもと近づいただけであって、本当にバーなのかは分かっていない。
(ノワたそと繰子たそはうまくやってるでしょーかねー……。ひとまず私は皆さんのよーに演技上手ではねーので……)
ピリムは普通に扉にてをかけ、普通に開き、振り向いた何人かがピリムという見たことのない人間の存在にびくりと身体を動かしたのを確認すると、何も言わず即座に抜刀。『飛翔斬』を放つと、回れ右して走り出した。
「なんだあいつ!」
「知るか、とりあえず殺せ!」
『とりあえず』で殺すとかここはスラムかと思ったがスラムどころか監獄であった。ピリムはとりあえず近くの板やケースを蹴倒しながら走り、荒れた監獄街の中を逃走しはじめた。
●監獄街第二派閥『リトルリリス』
三派閥は隠れていたり警戒していたりと述べたが、『リトルリリス』はそのうちの隠れている派閥である。
元々は娼婦達によって作られた『監獄内の娼館』であり、こんな場所でもしぶとく生きる女達が街の中に独自のネットワークを作って潜んでいる。
リリシー騒動のなかでは商売もろくにできなかったが、ネットワークのおかげで被害を未然に防げているようだった。
そんな隠れ家の一つを……。
「にゃははー。お姉さんたちこんなところで何しとるんー?」
あたかも最初から知っていたかの如く探り当て、繰子は扉を蹴破った。
片目にひどい傷をおった40台ほどの女性が銃を向け、その場にいた数人の女性たちも一斉に繰子へ銃を向けた。
「なんやなんやブッソーやなあ。身内がクリスマスツリーの飾りにでもなったん?」
「惜しいね。ティファミーは昨晩『プレゼントボックス』になって届いたところだよ。見るかい?」
両手をあげて降参の姿勢をとる繰子。彼女の両手にこれみよがしに装着されたスローイングダガーをとりあげるべく、銃をつきつけたまま女性が近づいてくる。彼女が繰子の手首を掴んだ――その瞬間。繰子のブーツに仕込まれていたナイフがつま先から飛び出し、女性の脇腹へと突き刺さった。
「――!?」
「にゃははは、ほな鬼ごっこでもしよかー?」
両手で中指をたてながら飛び退き、一目散に逃げ始める繰子。
女達はあらん限りの罵声と銃弾を放ちながら繰子を追いかけ始めた。
●監獄街第三派閥『黒縄地獄』
看守の力が及びづらい監獄街に曲がりなりにも治安を作り社会活動を行わせることで経済的安定を得ようという試みは、必然的に暴力支配によって行われた。
しかし彼らのボスであるバルバザスがリリシーによって暗殺され、爆薬いっぱいの生首となって送りつけられた時からその支配は崩れ去った。
過激派によるリリシー討伐の動きは見事に失敗し、一人また一人と暗殺されるうち保守派もとい『臆病者』だけが組織に残り、彼らの暴力はもっぱら自衛といけにえの確保に用いられるようになった。
「すみません。迷子になってしまったのですが」
ひとの良さそうな笑みを浮かべるノワ。
ライフルの銃口を胸に押しつけられ、わざとおびえたような表情に変える。
刀を抜いた者や魔力を剣の形にした者があちこちから沸くように現れ、ノワを取り囲んでいた。
「この街に『迷子』なんかいねえ。いるとすればそいつは、外から放り込まれたネズミだけだ」
直後、自分の首を狙って繰り出される刀。
ノワは地面を転がることで回避し、素早く立ち上がって走り出した。
「チッ、逃がすな。奴を次の『いけにえ』にする」
●網
広場には露店がいくつも建っていた。といっても鉄パイプと木の板だけで作られた簡素な露天で、きっと食品や道具を売っていたのだろうが、いまや見る影もない。
肉屋らしき露天は人体模型のパーツ展示会のごとくに、治癒薬を売る店は血液ドリンクバーのごとくにリフォームされていた。血文字で『おにくやさん』などと書かれているのが、リリシーの性格を如実に表しているようだ。
きりはそんな露天のひとつに身を隠し、パーティーチャットの様子を観察していた。
監獄街といってもそう極端に広いわけではないらしく、入り組んで視界が通りづらいだけで案外仲間との交信がとれた。
が、問題もある。
『うまく広場方向に逃げ切れませんねー。回り込まれますー』
『うちも無理そうやわ。適当にまいてもええか?』
『どうやら彼ら、ここの構造を知り尽くているみたいだね。本気で逃げないと、彼らに狩られることになりそうかな』
「困りましたね……」
きりは視界右上に流れていたチャットテキストを視界下部へとうつし、深く息をついた。
「囮役を一派閥一人きりに絞ったのは、ちょっと荷が重すぎましたかねえ?」
『逃げ切れればいいが、もし囲まれれば迎撃するだけ戦力はない。今から助けに行くか?』
ブルーシートを被って丸くなっていたエクスマリアがちらりと視線を動かした。
『あー……これはマズいコトになったなァ』
建物の屋上で身を伏せていたことほぎがチャットの文章に顔をしかめた。
どうやらピリムたちが街に仕掛けられたトラップにかかり、逃げ遅れたところをそれぞれの派閥につかまりそうになっているようだ。
身動きが自由にできない中で、なんとか迎撃を図っているようだが……。
『この広場にくる間にもチョコチョコ罠があったろ? オレ自身は罠にかかんねェように注意してたが、必死に逃げてる最中じゃそうもいかねェだろ』
『仕方ないですねぇ』
しにゃこはことほぎと共に身を伏せていたが、空に投げられた爆竹が激しい音と光を発したことで彼女たちの危機を確信した。
『ところで、不測の事態が発生したときの作戦って?』
『そりゃあ……プランBですよ』
きりの返答に、しにゃこは『あー』と虚空を見上げる。
プランB。そんなものはない。
『では、ワタクシはこの場で見張っておりますので……』
ヴァイオレットは露天の中で身を潜め、薄暗い風景に目をこらした。
露天周辺にも様々な罠がしかけられ、おそらくは飾り付けられた人間の知人が慌てて近づいた所を狙うつもりだろうワイヤートラップのたぐいがごろごろしていた。
ヴァイオレットはそれらをめざとく見つけては解除し、逆に自分が狙われたときの為に罠をはりなおすなどしていた。
『ところで、ひとつ占いの話をしてもいいでしょうか?』
カードをめくり、ヴァイオレットは首を振る。
『なんです? この場所が危ないとか?』
『いえいえぇ……』
めくったカードの死神めいた様子に、ヴァイオレットはどこか諦めたような笑みを浮かべた。
『監獄街に安全地帯などない……と出ています』
次の瞬間。ヴァイオレットの背後からスッと幼い手が伸び――ヴァイオレットの口を塞いだ。
●サバイバルデスゲーム
プランBが求められる。きわめて早急に。
きりは強く歯を食いしばり、爪をかみ砕かんばかりに思考を巡らせ、そしてチャットに文字を念じた。ここまで実にコンマ三秒の出来事である。
『ことほぎさんはノワさんへ、しにゃこさんは繰子さんへ、ヴァイオレットさんはピリムさんへのフォローをお願いしますね。当面の目的は時間稼ぎと仲間の生存!』
今回、生命の危機に直面したところで誰も助けになど来ない。
看守たちはもちろんのこと、幻想貴族たちにとってすら監獄島は治外法権地帯なのだ。それがフィッツバルディが監獄島を欲する理由でもある。
『私とエクスマリアさんは一緒に各方面を回って各個撃破。仲間を逃がしながら町中を高速で移動する。……できますか?』
『マリア(私)の能力なら、細かく入り組んだ町中での移動に役立つだろう。桐神を運びながらは難しいかもしれないが』
『構いません。皆さんはどうですか?』
『ことほぎ了解! マジックショーに加わってやるかね』
『しにゃこりょーかーい。遠くからちまちま撃って逃げちゃいましょ』
と、そこまでだ。
そこまでだった。
きりは違和感に心臓を鳴らし、顔をしかめ、そして反射的に広場のほうを見た。
血塗れで転がるように走りながら、後方にむけて短剣を構えるヴァイオレットの姿が、そこにはあった。
「これは、また、困りましたねぇ……!」
引きつるような笑み。『本来の姿』を一時的に再現し、伸びた無数の影が『誰か』を飲み込んだ。
が、次の瞬間に影は切り裂かれ、頬や肩から血を流す少女が飛び出してきた。
間違いない。リリシー・ショトゥール・ベズモリコンである。
「かくれんぼですね? みーつけ――た!」
『た』、の時点でヴァイオレットを見てはいなかった。
リリシーが大きく大きく、恋する乙女のようにキラキラと開いた瞳孔に映ったのは。
驚きに目を見開くきりの顔、だった。
――銃声。
視界に表示されていたチャットテキストが消滅した。
その理由に思い当たるところはあるが、ことほぎが冷静さを欠くことはない。
伊達に年期を入れちゃあいないのだ。
「さぁて、リリカルマジカル――っと!」
煙草をグッと噛みしめ、マジカルステッキで大きな十字をきる。
衣装がフリルだらけのリリカルファッションとなり、ことほぎは建物の屋上からジャンプした。
一瞬、派手に血を流して走るノワと目が合う。小さく笑いかけ、意図を伝えると、ことほぎはノワと武装団体との間に着地。
と同時に地面に叩きつけたマジカルステッキから魔力を豪快に噴射した。
先頭の男がショットガンをこちらに向けた――途端に炎に包まれる。
それでもひるまず射撃を加えてくるので、ハート型のバリアを幾重にも展開して防御。すぐさまきびすを返してノワを追う。
「オレが来たからもう安心……とは言わねえ。つかまったら最後だ。逃げンぞ!」
一方こちらはしにゃこ。トタン屋根の上でうつ伏せに傘型ライフル構えると、照準内を駆け抜けていく繰子を確認。
アタッチメントのスコープによるレンズ反射を、繰子は見逃さなかった。
ブレーキ&ターン。繰子の攻撃――に合わせてしにゃこは引き金を引く。
後から追いかけてきた娼婦達の横っ面にアサルトライフルによる連射が浴びせられた。
『ギッ』とだけ叫んで転倒する女達。
「あーあー、しにゃ的には綺麗な肢体に傷をつけた借りを返しに行きたかったんですけどねー」
立ち上がり、こちらに銃を向けてくる娼婦たち。
しにゃこはテヘペロ顔をして転がり、建物の下へと飛び降りる。
他の物が遮蔽物になって隠れたことで、娼婦たちはしにゃこを追いかけるチームと繰子を追いかけるチームに分かれて動き始めた。
傘の先端キャップを外し、槍状態にするしにゃこ。
「お仕事お仕事……」
物陰から飛び出し、娼婦の胸を突き刺した。
ヴァイオレットときりの後ろ襟(?)をつかみ、リリシーはるんるん気分で歩いて行く。
淀んだ色の噴水に飾るためだ。
気を失った二人を横たえ、放置されたチェーンソーに手をかけ――た瞬間、『ボッ』という奇妙な破壊音と共に地面と噴水が砕けて飛んだ。
それを事前に察知し、飛び退くリリシー。
破壊の主は、エクスマリアである。
えぐれた地面に立ち、振り返った。
「状況は最悪……だが、成功の目は、まだ、ある」
頭髪を両腕や両足に巻き付け、恐ろしく俊敏に走り出す。打ち出した電撃の弾をリリシーは次々に切り落とすが、直後眼前に迫ったエクスマリアの拳が直撃。電撃が全身に響き、リリシーはそのまま肉屋の露天に突っ込んだ。
「はぁ、は――」
起き上がりリリシーは――。
「語らう気は、ない」
顔面を打ち抜く拳。
「パーティーはお終い、だ。リリシー。いい子だから、もう、眠れ」
下顎から上を喪失したリリシーは、その場に崩れ落ちた。
適当に部位や歯を拾い集め、きりやヴァイオレットを抱えるエクスマリア。
あとは撤退するのみだ。
皆は逃げ切れただろうか。そうであれば、いい。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――依頼条件達成
――この結果に『ボス』は若干満足したらしく、報酬にボーナスが加えられました
GMコメント
■猟奇殺人鬼リリシーの抹殺
このシナリオの成功条件はリリシーを抹殺しその証拠を持ち帰ることです。
過程においていかなる損害、死傷者が出たとしても依頼人は一切関知しません。
●監獄街
飾り付けられた死体だらけとなった現代の地獄。
街に住む三つの派閥は『いけにえ』を得るためにマンハントに明け暮れている。
当然PCたちも見つかり次第襲われますし、捕まれば死ぬより酷い目にあうかもしれません。
住民の戦闘力はまちまち。間違っても雑魚の群れではないので、油断せぬよう充分に警戒して挑んでください。
更に言うなら、戦闘能力以外のあらゆる力も使って現状を切り抜ける必要がでるでしょう。
●リリシー
監獄街にて神出鬼没の殺人鬼と化しています。
銃、ボウガン、魔法、ナイフ術をはじめとして様々な殺人術に精通し、非常に高い個人戦闘力をもちます。武装も豊かで、これまで殺した人々から奪った物資でかなり潤沢に動いています。
大事なのはこれらを『楽しいからやっている』という部分で、楽しむための努力を惜しみません。
●オマケ
本件は以下のアフターシナリオですが、このシナリオ内容を知らなくても充分にお楽しみいただけます。
『天使が来たから、いい子じゃない』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3440
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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