シナリオ詳細
再現性東京2010:百人岬
オープニング
●百人目の死者はあなた
さざ波の音のそば。懐中電灯のスイッチを入れる。
揺れる水面と伸びる木が闇の中に灯り、青年はポケットから取り出したスマホを、カメラレンズだけを出して胸ポケットへ入れた。
「えーでは、早速怪奇スポット実況していきたいと思います。ふぁっくんチャンネルです。
今日入っていくのはですね、百人岬という場所ですね。
ここで幽霊を見たっていうコメントがあったので、検証してみたいと思いまーす」
やや棒読みの語りをしながら、青年は波打ち際から離れすぐ上の灯台へと歩いて行く。
階段なんていう親切なものはなく、白い灯台も必要最低限といった作りをしていた。
「えー、ここは昔、鎌倉幕府が死刑囚を沢山斬り殺したっていう伝説がですね、ありますね。鎌倉時代の霊なんでしょうかねー」
などと言いながら、苦労して灯台のそばへとやってきた。
灯台に光はなく、ただ暗闇を照らす懐中電灯があるだけだ。
――ザザ
という音がした。
草を大きくかき分けるような音である。すぐさま振り返るカメラ。
暗闇と膝までとどく雑草を写すのみ。
――ザザ
さらなる音。
再び振り返るカメラ。
灯台の白い壁だけが写される。
「風、かな……」
――ザザザ
音が。音の数が、明らかに増えたのが分かった。
振り返るとそこに。
日本刀を振り上げる――。
●百人岬
「ここは再現性東京、混沌のアデプトだ。鎌倉時代も江戸時代もあるか」
ソファに寝そべり、革靴のまま足首を組んでくつろぐ男。
紫の偽ブランドスーツに身を包んだ彼の名は無名偲・無意式。希望ヶ浜学園の雇われ校長である。
イレギュラーズたちはaPhonのアプリによって呼び出され、学園の校長室へとやってきていた。
ただ呼び出されたわけではない。練達三塔の一人である佐伯操をコネにして、ここ再現性東京2010希望ヶ浜における怪異事件の継続的解決を依頼されており、これはその一環なのだ。
「大体の奴は生徒や教師になってこの環境になじんでいるだろうが……説明をしておいてやろう。
ここ希望ヶ浜は『偽りの平和』の上に成り立っている。その辺を歩く生徒もサラリーマンも朝ジョギングする女もその飼い犬も、この街に異常な脅威があることを知らない。気づいていない。いや、『気づかせていない』。
それは俺たちが露見する前に綺麗さっぱり掃除しているからだ。その掃除……もとい『払い』の部分を、イレギュラーズ。お前達に依頼しようというわけだ。もちろん金を払ってな」
校長はけだるそうに前髪を整え、ソファへ座り直す。
「飲むか? ここには酒しかないが。ああ……依頼内容だったな。どれどれ」
ソファの手すり部分を操作すると、目の前のテーブルがひっくり返って大きなタッチパネルディスプレイが現れた。
一部をトントンと叩くと、鎧武者や刀をもった大昔の日本農民のような画像が表示される。
注目すべきはその数である。
「九十九体の亡霊が現れ、訪れた人間を百人目にするべくとり殺す。それが百人岬だ。
1980年代に発行された中高生向けの一般雑誌が起源と言われ、読者コーナーに寄せられた最初の目撃体験談をきっかけに日本全国の岬で同様の目撃談が寄せられるようになったというものだ。
風の音を間違えただけだとか、そもそも嘘であるとか、当然そういう説はあるが……今回相手にして貰うのは『本物』になるな」
画像はつまり、その『本物』を撮影したものだということだ。
「発見は動画投稿サイトに昨日AM4時に公開された動画からだ。この動画はすぐに削除され、無数のダミーアカウントによる指摘で自作自演の嘘動画ということにされている。
とはいえ、誰かが同じように現地に向かえば二次被害は必至だろうからな。
そうなる前に、お前達の手でこの怪異を破壊してもらいたい。
方法は簡単だ。殴ろうが斬ろうが銃で撃とうがなんでもいい。攻撃を与え、壊すのみでいい」
校長はそこまで説明すると、手に持っていたグラスをテーブルに置いた。
「さあ、街の平和のために人知れず魔を払おうじゃないか。それで金が稼げれば言うことなしだろう」
- 再現性東京2010:百人岬完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年08月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●怪異はいつも零人目を待っている
白い灯台が見える。日本のやや古い、昭和末期の建築様式にそった建物だ。
雑草が生え放題になった斜面には、かつてそれが階段であったことを思わせる腐った木がわずかに並び、『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)はその一つを踏んでくすくすと笑った。
「不思議な街……ですよね。きっとこの町に暮らす殆どの人はここを『懐かしい』と感じるのでしょうけれど、私にとっては、この街が非日常ですから。
実際の所学園生活、というものには、少し興味がありますし……」
そう語るフィーネは、この街になじむために学園のブレザー制服を着ていた。
年相応に幼く年不相応に神秘的な彼女に、赤い制服のラインがよく似合う。
「しかし、今はそれを考えている時ではありませんね。被害を防ぐ為にも、微力を尽くさせて頂きましょう」
「あら、別にいいじゃないの。真面目に働くっていうのは、真面目に楽しむことでもあるものよ」
『オネエ口調のお兄さん』夕凪 恭介(p3p000803)は首から提げたカードホルダをぴんと指で弾いてみせる。
恭介の顔写真と教員であることを示す所属と名前が書かれている。ラフな格好で歩く彼なら、そのまま中学生のクラスを担任したり家庭科室でエプロンの縫い方を教えていてもおかしくないように見える。
「で、百人岬だったかしら? 99体だなんてえらい団体さんねぇ。熱烈な歓迎じゃないの。
けど亡霊だと切り刻んでも、裁縫の材料にはならなさそうなのが残念ねぇ。まあ、報酬のお金で良い布買いましょ」
「…………」
その横では、黒いジャージ姿の『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)が咳払いをした。
いかにも体育教師といった風貌の、バレーをさせたら強そうなさっぱりとしたヘアスタイルと目つきをした女性である。
どうやら校長が金の話を持ち出したことに若干立腹したようだが、人命を重んじる者にとっても利益を重んじる者にとっても必要なスタンスだったのかもしれない……と、あとになって桐神 きり(p3p007718)に説明されたのを思い出した。
とうのきりはフルダイブゲームの癖なのか手のひらを空中でスライドさせるようなジェスチャーをして、利一たちとテレパシー式ボイスチャットを開いた。
「『次はお前だ!』てのはよくある都市伝説ですが、リアルに100体くらいの幽霊に迫られると想像するとヤバイですね。あ、物理無効属性とかないんでしたっけ? この世界はシンプルでいいですねえ」
ターレット型魔方陣を開いて指でくるくると術式を選択。味方支援用の術式を複数セットするとサークルウィンドウを閉じた。
「さてさて、それじゃあお仕事……いえ、学生らしくアルバイトといきましょうか!」
先行する仲間達のあとに続いて、『フォークロア』スカル=ガイスト(p3p008248)が灯台を見上げて立ち止まった。
「ゴーストを排除して報酬を受け取る。なるほど後腐れがなくていいじゃないか……」
穴が四つしか無い特殊なリボルバー弾倉に、これまた特殊な形状を五寸釘めいた長細い弾を込めていく。
よほど手慣れているのか、親指で弾くように弾倉を回しもう一方の手で水でも流すかのように四本の弾をぴったりと穴へ滑り込ませる。弾倉を開いて閉じるまでジャスト一秒の業である。
「確認なんだけど……これって、一気に襲ってこないのよね?」
腰にはいた剣を改めて手に取り、二本指でなぞるようにして式を起動する『狐です』長月・イナリ(p3p008096)。
熱を持った剣が、刃部分を赤く発光させはじめる。
「そもそもこれってどういう怪異なのかしら。この場所で大昔に99人死んだってわけじゃないのよね? だって、この前の事件で被害が出たのにまだ99人なわけだし……」
「ふ。こういうものは『永遠に百人になれない』と相場が決まっているものだ」
『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は目元を手で覆い、口の片端だけで笑った。
「第一、歴史も嘘なら出自も嘘だ。混沌に鎌倉時代はもとより無く、全国各地で同じ幽霊が目撃されるなど不自然極まる。噂されたがゆえに現れた……そう考えるのが妥当であろうな」
リュグナーはスーツの上からスマートな白衣を纏い、腰のポケットからするりとハンカチを取り出した。ハンカチっていうかパンツだったが。
「つまり……全員倒せばいいわけだな? よし、理解した」
『筋肉最強説』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は竹刀を肩に担ぎ、黒い布マスクの位置を整えた。
希望ヶ浜学園の制服を着てはいるが、スカートは恐ろしく長く上にはスカジャンを羽織るというなかなかキアイの入ったツッパリガールコスチュームである。
「徐々に強さを増していくらしいがそれもまた面白い。どれ、一つ腕試しと行こうではないか!」
置いていくぞ! と言って土の斜面を走って行く。
スカルたちは顔を見合わせ、肩をすくめて後を追った。
●怪異は生きている
いまは光も灯らぬ灯台。
当然だ。この場所そのものが東京の町並みを再現するためだけに作られた巨大なオブジェにすぎない。この灯台をあてにして近づく船も、灯台守もいない。
いない……と、されている。
それでも。
「こうして怪異が現れるってことは、この場所にもなにか意味があるんだでしょうね」
恭介は小指に巻き付けていた赤い糸をくるくると解くと、空中に浮かべて魔方陣を縫い込んでいく。
一塊になった彼らを取り囲むように、どこからともなく現れた半透明な鎧武者。
彼らは一様に抜刀し、恭介はそれに対抗するかのように組紐を陸橋型にくみ上げてかざした。
魔力を帯びた糸が霊体の刀をはじき返し、その隙に素早く腰のホルダーから抜いたまち針を放つ。針に込められた魔術によって毒や炎におかされていく鎧武者。
スカルは拳銃をくるりと反転させると、グリップ底部をハンマーのようにして殴りつける。
ミートハンマーのような突起が武者のかぶとにひびを入れ、さらなる腰のひねりから繰り出すハイキックが武者をその場に蹴り倒す。
スカルは被った仮面を片手で押さえ、拳銃を再び反転。倒れた武者に三発の銃撃を浴びせた。
「都市伝説の本質は情報の塊。ならば『俺』にも喰らえるだろう。ごく一部でも、な」
「できれば二度と現れないくらい完膚なきまでに食い尽くしてほしいところだが。なに、贅沢はいわん」
ブレンダは竹刀をゆっくりと武者へ突きつけると、両手でしっかりと握り込んだ。
武者とブレンダは互いの間合いを奪い合うようにすり足をはじめ、約40度ほどの円周移動をはかった……ところで、ブレンダは無理矢理相手に歩を詰めた。大上段からの面打ち予備動作だ。
ばかめ、と口元を動かして上段防御の構えをとる武者――の刀とかぶと、さらには胴体に至るまでをブレンダはいきなり真っ二つにした。
「ハッ! 幽霊だろうがなんだろうが知らぬが剣で斬れるのであれば私の敵ではない!」
「いや、斬れすぎでしょ」
イナリは手の甲に乗せていた蒼い小鳥を空に解き放ち、横から割り込むよに斬り付けてくる武者の剣を『贋作・天叢雲剣』で打ち払った。
「この――!」
反動を腕と肩の力でこらえ、武者へ剣を叩きつける。
剣は武者の鎧による防御をまるで霞のようにすり抜け、振り抜き、そして『焼いた』という現象だけをあとに残した。
突如として燃え上がる身体に困惑し転げ回る鎧武者。
イナリはこんこんと剣をノックしてみせると、散る火花を見せつけた。
「私のコレは特別製なのよ。そんな防御ではじけるわけないでしょ」
「ふむ、ふむ……」
きりは自分の周囲をブレンダたちに固めさせ実質的な安全地帯を作ると、手元に呼び出したターレット魔方陣に五指を突っ込んでがちゃがちゃと複雑に回転操作をはじめた。味方のAP回復とHP回復量を調整するためだ。
「これらのスキルは消費量がばかにならないですからね、回復支援はフィーネさんに任せますよ。皆さんは体力の自己申告よろしく」
きりの視界右上にアイコンが複数表示され、音声ウェーブエフェクトと共に念話が入ってくる。
きりが分析した限りでは、『百人岬』はこちらを包囲し適当に近い対象を攻撃するという単純な行動パターンをとっているようだ。
イナリによる俯瞰視点からは攻撃が届かないほど遠い場所から腕を組んでこちらを観察している鎧武者たちの霊が見えるらしく、おそらく彼らが参戦してからが本番ということなのだろう。
「こちらの戦力を観察している? いや、戦闘パターンをですか……」
「何か、気がかりなことがあるのですか?」
フィーネは両手を組んで『天使の歌』を継続展開することで防御の弱い仲間の損耗をフォローしていた。
今回のメンバーは攻撃力に優れるが防御力の隙は大きい。主にイナリと利一によるタンクムーブで損傷を抑えられるが、こうして全方位から囲まれている状況だと穴があきやすいのも事実だった。
きりはフィーネに『明鏡止水』の術式を付与することで『魂の献身』の効率をアップ。さらには治癒効率を引き上げた。
「この分なら、攻撃が激化しても耐えられますね」
「どうでしょうね。敵が頭をつかってくるかどうかで変わりそうですが……」
流れる水は板でとまるが、押し寄せる暴徒にそうはいかない。
だからこそ、こちらも頭を使わねばならないのだ。
「まあ、今しばらくは私に任せておけ」
利一は陣から飛び出し鎧武者たちを挑発すると、わざと彼らの中心へと飛び込んだ。
首を狙って繰り出される刀をのけぞってかわし、横からの突きを刀身を手刀でうつことで無理矢理そらした。
流れる水のように無数の斬撃を次々に回避していく利一。
「そろそろか。――頼むぞ」
利一はちらりとリュグナーの様子を確認すると、その場から跳躍して緊急離脱。
リュグナーはここぞとばかりに『オセの狂眼』を発動。覆いをはずして晒した片目が大きく見開き、にらみつけられた鎧武者たちは一瞬にしてミイラのようにしおれていった。
「数が多いのは厄介だが……良く"視える"な」
非憎げに笑い、力の暴走をおさえるためか再び覆いを下ろすリュグナー。
「貴様らも少し休んだらどうだ? ――ああ、何なら地に座らせてやろうではないか」
ぐい、と指を地面にむけてさげると、鎧武者たちがまるで操られたかのようにがくりと膝を突いた。
戦力はいまだ圧倒的。いまはまだ、だが。
「イナリ、付き合え」
ブレンダは竹刀を二本、それぞれの手に握り込むとやや頑丈な構えをとった鎧武者たちへと突貫。
「我が二刀で纏めて吹き飛ぶがいいッ!」
高速回転にさらなる回転を加えて駒のようにスピンすると、激しい竜巻を纏って鎧武者たちを蹴散らした。ボーリングのピンもかくやという吹き飛び方をした武者たちをみて、イナリが『はいはい』といって剣に術式を込め始めた。
ブレンダとは逆方向へ向き直ると、突撃をかけてくる鎧武者たちめがけて跳躍。
激しい縦回転をかけると赤く燃えたブレードが光の円のごとく彩り、鎧武者たちの中央へと『着弾』。彼女を中心に広がった放射状の熱光線が鎧武者たちを貫き破壊した。
「さてと、手強いのはこれで全部かしらね」
「いや、『ここから』ですね。七時方向」
きりのアナウンスをうけ、イナリはリンクしていた俯瞰視点に意識をむけた。言われたとおり七時方向から迫る鎧武者の姿があった。
振り向き剣をかざすも、余りに激しい斬撃がイナリの身体を無理矢理に吹き飛ばす。
空中を回転し飛んでいきそうになるのを、イナリは地面に剣を突き立てることで強制ブレーキ。
代わりにブレンダが鎧武者へと斬りかかった。大上段からの斬撃――を、別の武者が斬馬刀によって防御。
それまで武者をまるごとぶった切っていたブレンダの剣が止められた。
「……やるな」
「総員全方位に注視。アタッカーは一人一体マークしてください。集中攻撃を受けたら瞬く間に陣が傾きますよ」
きりは温存していたエネルギー出力を一気に解放すると、『狂獄陣』の術式を発動。鎧武者たちの中でも動きの悪い集団を狙って打ち込んだ。
ブレンダやリュグナーたちが序盤から範囲攻撃をばらまき続けてきた。この期に及んでまだ団子状になって行動しているなら、それは知能の低い敵だ。そして知能の高い敵は分散し、こちらの防衛の隙をつこうとしてくる。
効果的なのはフィーネときりを倒すことだが、それを許さぬとばかりに恭介たちが立ちはだかった。
「百人目を殺して、そしたらなんか意味があるのかしらねぇ?
人柱百人集まればもっと強くなるとか? なんにせよはた迷惑な話だし、静かに眠りなさいな」
恭介は特殊な革手袋を装着。指から伸びた無数の糸が彼の周囲で複雑怪奇な幾何学模様を描き始める。
「遊んであげるわ。かかってらっしゃい」
斬りかかる鎧武者の腕や足に細かく糸をからめ、少しずつ自由を奪いながら彼我の戦力差を埋めていく。フィーネやきりによる支援をあわせ、ギリギリ渡り合える強敵だ。
一方でスカルはタクティカルグローブの甲で刀を弾くと、武者の額に『C&JX1パイルドライバー』の銃口を押し当てた。トリガープルと同時に上半身をうねらせる武者。まるで熟練のボクサーめいた動きで銃撃を回避、刀を握る拳をそのままスカルへと叩きつけてくる。
重量と勢いによって殴り飛ばされそうになるが、咄嗟に相手の手首を掴んだ。
足を踏ん張って相手の腕をひねり上げ、無理矢理防御を開いてさらなる銃撃。脇腹を狙った三連発の弾が鎧武者へと打ち込まれ、スカルは大きく飛び退いて素早くリロード。足下にばらばらと乱暴に投げ捨てられた空薬莢がはねた。
「利一さん」
フィーネは回復支援の対象をシフトさせると、三体の武者相手に挑みかかる利一へ集中した。
「これまで通りにかわしきれる敵じゃあない、か」
頬をかすってできた傷を親指でぬぐい、防御を更に固くする――とみせかけて、鎧武者へ急速に距離をつめた。
拳に因果歪曲の力を込めてボディブロー。
横から突撃してきた武者の刀が利一の身体を貫くが、構わず伸ばした手で鎧武者顔面を掴んだ。
びくんとけいれんをおこし、崩れ落ちる鎧武者たち。
残る一体が高く剣を掲げた――が、その胸に突如として大きな穴があいた。
穴ごしに、こちらを指さすリュグナーが見える。
「とっておきだ。この騒動に終止符を――死神の子として、貴様らを在るべき場所に送り届けてやろう」
更に三発のエネルギー弾を放つと、残る鎧武者たちを打ち抜き破壊していく。
最後に指先にフッと息を吹き付け、リュグナーは笑った。
「灰は灰に、嘘は嘘に……な」
戦いを終え、灯台は静寂に包まれていた。
やがて風にゆれる草の音が、波のぶつかるさらさらという音が聞こえてくる。
空を旋回して戻ってきた蒼い小鳥が、フィーネの肩にとまった。
「この街の夜妖に、どれほどの慰めになるのかはわかりません、けれど……」
胸に手を当て、鎮魂歌をうたいはじめるフィーネ。
波に消えていきそうな清らかな歌声を聞きながら、きりたちは彼女がつぶやいたことを思い出した。
――本当に。夜妖とは、なんなのでしょうね。
――いったい、どうしてこの街でだけ、こんな魔物が現れるのでしょうか?
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――除霊完了
GMコメント
■オーダー:『百人岬』の討伐
指定された廃灯台へ向かい、そこに現れる『百人岬』を倒しましょう。
戦闘の流れは非常にシンプルです。
約九十九体現れるという大量の幽霊型モンスターとひたすらに戦い続けていただきます。
といっても、いきなりポンと九十九体現れるのではなく、灯台へ訪れた人を取り囲むように少数ずつちょこちょこと現れます。
なので補充され続ける雑魚的をひたすら倒し続けるといった戦い方になるはずです。
一人頭12人ノルマと考えれば、そんなに難しいことでもないでしょう。
ネックになるのは戦闘時間。休憩ができないのでだいたい30ターンくらいは継続戦闘ができるようにAP管理をしておく必要があります。
尚、現れる幽霊は『序盤』『中盤』『終盤』でちょっと強さが変わります。
単純にレベルが段階的に上がっていくくらいに考えてください。
なので後半に向けて大技を温存しておくとベターでしょう。
●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
それも『学園の生徒や職員』という形で……。
●希望ヶ浜学園
再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。
●夜妖<ヨル>
都市伝説やモンスターの総称。
科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
関わりたくないものです。
完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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