PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Erdbeere

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「アイラさん!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に長い黒髪が揺れる。ひらりと青い蝶が舞い、ユリーカの帽子はへ止まった。ユリーカの視線とアイラ(p3p006523)のそれが蝶へと注がれる。
「お仕事の邪魔は、ダメですよ」
 めっ、と言いながらアイラが人差し指を出せば、蝶はひらひらと舞い上がって彼女の指に留まる。元は彼女の魔力であるはずだが、翅を得たそれは少しばかりの自由を謳歌しているようだ。
 青の軌跡をほぅ、と見上げたユリーカは手元に持っていたものを思い出してアイラへ差し出す。目を瞬かせたアイラがそれを受け取ると、なんだか懐かしい匂いがした。
「……お師さま、から?」
「アイラさんをご指名なのです」
 彼女がお師さまと呼ぶ人物は、善良なる薬師を騙る魔術師の男だ。興味本位故に敵にも味方にも転ぶ男は、此度依頼人となるらしい。対立しないと知ってアイラはほっと胸を撫で下ろす。
「内容は……あ、」
 封筒から手紙を出すと同時、指に留まっていた蝶がひらりと飛んでいく。それを視線で追うと、蝶はよく知る人物の髪に着地。第2の師匠たるウィリアム・M・アステリズム (p3p001243)は、アイラの髪飾りのように羽休めをする蝶を視線で見上げた。
「ふふ。お揃い、みたいです」
「俺には似合わないけどな」
 小さく肩を竦めてみせると、その拍子にまた蝶がひらり。今度はカウンター席に腰掛けて眠たげにしていたSolum Fee Memoria (p3p000056)の猫耳へ。ふるるっと猫耳が震えると、今度は依頼を探しに来ていたクリソプレーズ (p3p007897)の周囲をはたはたと飛び回る。視線を向けた2人にアイラは声をかけ、ウィリアムも合わせてテーブル席へ集まることとなった。
「お師さまの依頼、皆で受けてみませんか?」
 封筒の中に入っていたのは1通の手紙、そして小さな袋。手紙を開くと4人は覗き込む。
「苺の花ですの?」
「毒を持つ花か」
 クリソプレーズの言葉にウィリアムは頷いた。通常であれば毒性を持たない苺の花であるが、幻想の森にはそのような苺があるらしい。最も毒性を含むのは花弁──しかも花の間のみで、実をつけると失われるということだった。依頼は『花を袋いっぱいに集めること』である。
 群生地は平和なようで、どうして師がアイラにわざわざ頼むのかもわからない。けれど送られてきた以上は、依頼だ。
 事細かに書かれた手紙を眺めていたSolumはふと目を瞬かせ、アイラをちょんちょんとつつく。視線を向けたアイラは彼女の言葉に目を瞬かせた。
「この苺が、あの追伸の?」
 知っているのか、とウィリアムが視線を移せば2人は頷く。なんでもやり取りしていた手紙で少しだけだが話題に上ったらしい。
「幻想に美味しい苺があるから、一緒に行こうって約束、していたんです。ね?」
 こくこくと頷くSolum。手紙の内容を見る限りはきっとそれだろうと言う。
「でも花が咲いている時期なら、実はまだなんじゃないか?」
「それがそうでもないみたいですわ」
 ほら、とクリソプレーズがウィリアムに指し示す。手紙にはご丁寧にも、誰かから聞いたらしい開花時期や結実時期が書かれている。そもそもこの時期に苺の花が咲いているのも不思議ではあるが、この苺は夏に結実する種類らしく。
「ちょうど花と実のなる時期が重なっているみたい」
「ということは、」
「いちご狩り、ですね!」
 ウィリアムの言葉に繋がって、アイラがぱぁっと表情を輝かせる。師の手紙には急ぎとも書かれていないのだから、少しの寄り道くらい許されるだろう。

GMコメント

●目的
 苺の花を摘んでくる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。お師さまの興味対象ですから。

●エールトベーレ
 苺です。至って普通の苺ですが、春ではなく夏に身をつけます。しかし暑さに弱いことから、暑さ和らぐ森の中にしか群生しません。現在は花と実が両方見られる時期となっています。
 苺の花は通常白ですが、エールトベーレは黄色い花を咲かせます。うっかり食べなければ毒に当たりません。
 集める袋は小さいので、大した苦労もなく集まるでしょう。

●フィールド
 幻想にある森林です。とても平和でモンスターなどの報告例はありません。外よりはいくらか暑さも和らいでいます。
 道なりに行けば苺の群生地に辿り着きます。群生地はとても広く、4人が食べて持ち帰る程度で苺はなくなりません。
 もう少し奥まったところまで行けば花畑や湖があったりします。

●注意
 このシナリオはアドリブがもりもりします。もりもりです。そのためアドリブについての明記は不要です。

●ご挨拶
 愁です。大変お待たせしました!
 苺の花を積み終わればあとは自由です。4人でご自由に過ごされてください。
 それでは、プレイングをお待ちしています。

  • Erdbeere完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月18日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

Solum Fee Memoria(p3p000056)
吸血姫
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
クリソプレーズ(p3p007897)
虹の橋を歩む者

リプレイ


 夏の猛暑から切り離されたような森の中、4人のイレギュラーズが歩を進める。『吸血姫』Solum Fee Memoria(p3p000056)は小さく欠伸を浮かべた。
(寝てしまいそう……)
 その思いは夜を好む吸血鬼故か、気まぐれなる猫の遺伝子故か。けれどこの森に来た理由はお昼寝のためだけでも、ましてやピクニックのためだけでもない。昼寝をするにしても、まずは依頼を達成させなければ。
 先頭を歩いていた『虹の橋を歩む者』クリソプレーズ(p3p007897)はSolumの様子にくすりと笑う。魔物の報告例もない森だ。ほんの少し気が抜けてしまうのは最早仕方がない。天気も良くて心地よいから尚更だろう。
「たまにはこのような、息抜きの依頼もいいですね」
「はい! とはいえ、依頼は依頼ですけれど」
 『未来に幸あれ』アイラ(p3p006523)は師匠からの依頼に気を引き締め、しかし頼ってくれたことに頬が緩む──ということを繰り返していた。そんな彼女の姿に『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は小さく肩を竦める。
 彼はアイラの第二の師匠──お星師さま。具体的なことは告げられていなくても、弟子たるアイラと本来の師匠との間に何かあることは察している。時に敵対もするようだが、アイラのこの様子からして喧嘩別れという単純な話でもなさそうだった。
(今度は依頼人ときたが……まあ、俺が首を突っ込む話でもないか)
 気にならないといえば嘘になるのだろう。けれどもこればかりは2人の問題なのだ。
「ま、たまにはのんびりもいいだろ。危険もないらしいしな」
 ウィリアムがそう声をかけると、相変わらず気を張ったり緩めたりを繰り返していたアイラが「そうですね」と胸に手を当てた。
(今、ここに彼はいないけれど)
 瑠璃の彼と共に過ごし、満たされた守護──時として人はそれを毒とも言うのだろうが──が今も彼を感じさせてくれるようで。
(頑張ってきます)
 心の内で彼に告げて、アイラはクリソプレーズの背を追っていく。クリソプレーズは隣を行く眠たげなSolumへ視線を向けた。
「こちらには良く来るのですか?」
「……ん。庭みたいなもの」
 きっと木の枝を伝っても迷うことはないだろうが、そこまでSolumは口にしない。その表情は無であるが、ゆらりと揺れる尻尾は少なくとも、声をかけられることに嫌がっている訳ではないのだと思わせた。
(何かしらの感情を、思い出せるかもしれない)
 人との触れ合いは心を潤してくれる。久しぶりにこうして他人と出かけたけれど、なかなか悪くはない。
「ふふ、それでは頼りになりますわね」
 Solumの言葉に微笑んだクリソプレーズは再び前を向く。頼りにはなるが、だからといって張り切った思いが萎むことはない。最年長で、森に長けた者として。お姉さんらしく道案内をせねば。
 森は必ずしも道が歩きやすく整備されているわけではないが、ここは外と隔絶されたかのように涼しく心地よい。避暑地に来た気分で4人は苺の群生地へとたどり着いた。
「わぁ……! 苺の花も実もたくさんありますね!」
 感嘆の声を上げるアイラ。眼前にはルビーのような色の苺と、黄色の花が入り混じっている。
「まずは依頼の花摘みを終わらせよう」
「ええ。……毒花の採集なんて、何に使うのかしら?」
 袋を出したクリソプレーズの言葉に一同は揃って首を傾げる。依頼だけを寄越されたのだから知るはずもないこと。けれど気になっているのは同じだ。
「見間違えるようなものでもないけど……一応気をつけてな。花をうっかり食べないように」
 後輩を引率するような気持ちでウィリアムが注意を述べる。まさか花を食べるような食い意地の張った者がいるとは思わないが。思わないが、念のためである。頷いた3人娘にウィリアムもまた頷いて、一同は一旦解散した。
(毒を持っていても、素敵なのは分かりますわ)
 花を摘み、視線の高さまで持ち上げたクリソプレーズはそれを観察する。口に含まなければ毒性を発揮しないそれは、見るだけなら可憐な花だ。観賞用──例えばハーバリウムだとかに使うのはアリかもしれない。個人的にも採集しようと心に決め、クリソプレーズは袋へ花を入れた。
「ふ、わぁ……」
 欠伸がふわり。Solumは小さく頭を振り、頭上を見上げる。麗らかな木漏れ日が涼しい空気をほんのり温め、それがなんとも心地よい。けれどそれに身をまかせてはならないとSolumは花をまたひとつ摘んだ。
(……花弁は綺麗)
 美しいものには棘があると言うが、この花の棘はその身に抱える毒と言うべきか。
(でも、これはやがて抜ける棘)
 ふ、とSolumの瞳が優しく細まる。その口から無意識に零れ出したのは花園で覚えた歌だった。
(これはお師さまの元に行くお花)
 アイラはひとつひとつ、丁寧に花を摘んで袋へ納めていく。ほんの少し、羨望を混ぜ込みながら。
 自身は師の傍らに在れないというのに、この花たちは師の元へ行ってしまう。師も依頼だけを寄越さず、せめて一目でもアイラの姿を見に来てくれたら良かったのに。
(確か、苺の花言葉は──)
 ふと浮かんだ言葉を掻き消すように、ウィリアムがアイラの名前を呼ぶ。顔を上げたアイラは集まる3人の姿を瞳に映した。
「こっちは集まったぞ」
「あ……ボクも、もういっぱいでした」
 考え事をしながらも黙々と摘んでいたようで、アイラの手にある袋も満杯だ。駆け足気味で皆の元へ行くと、Solumがお疲れ様と声をかける。
「3人ともありがとう、お疲れ様です!」
「ふふ、事情はよく分かりませんけれど……これで依頼達成ですわね」
 笑顔を浮かべるアイラにクリソプレーズが微笑む。たしかに依頼自体はこれで終了だ。けれど折角のお出かけでもあり、このまま帰ってしまうというのも勿体無くて。
「そうだソフィ、美味しい苺の見極め方を教えて欲しいかも!」
「まあ。それは私も是非」
「お、それなら俺も」
 3名から視線を注がれたSolumはひとつ瞬きをして頷いた。わざわざ誰かを仲間外れにするような理由もない。
「美味しい苺は、大きさと色と……匂い」
「匂い、ですの?」
 クリソプレーズが苺の近くに寄ってみるが、首を傾げる。甘い香りにほんのりと酸味漂うものは美味しいらしいが、人の嗅覚で知り得るのは難しいかもしれない。Solumは緩く首を振った。
「……分からなければ、それでもいい」
 代わりに美味しそうだと思ったものを一生懸命に採れば、それは一般的に美味しくなくとも『特別』の美味しさだろう、と。Solumは苺の匂いがわかるけれど、わからないから美味しいものが食べられないわけではない。
「それもそうだな」
「匂いを嗅いで、美味しそうだと思ったもの。ふふ、見つかるといいな」
 納得と頷くウィリアムの傍ら、アイラは苺に鼻を寄せる。持って帰って2人で──或いは瑠璃の彼や、沢山の人と──食べても良い。食べきれなかったなら砂糖と一緒に甘く煮詰めてジャムへ変えてしまっても良い。
「私はおやつに備えますの」
 そう告げて手巾に苺を包んで行くクリソプレーズは、ことさら楽しみだと言うように笑った。



 苺を積み終わると、Solumとクリソプレーズの案内により一同は湖の近くへ。水辺は温度が下がるものだが、ひらけた空間には日差しも差し込んで変わらず良い心地だ。
「ここで足をつけて涼みましょう。ね?」
「そうですわ、折角一緒に来たんですもの」
「え、俺? いや、荷物番を──」
「……水は苦手」
 Solumがひらりと手を触れば、クリソプレーズが先導しウィリアムの背をアイラが押す。皆でレジャーシートを敷いて、荷物を置くと3人は湖に足をつけた。
(……なるほど、こりゃ気持ちいい)
 歩いて疲労の溜まった足には良い冷たさ。クリソプレーズも恥ずかしそうに靴を脱いでいたが、浸してしまえばやはり冷たくて気持ち良いらしい。
「クライノートも浸けたら涼しく感じるかしら?」
 常に持っている黒の長剣と湖を見比べ、クリソプレーズは沈みすぎないように長剣を水へ晒す。皆が落ち着いたら昼ご飯の準備だ。
「プレーズ、これとても美味しい!」
 クリソプレーズの持ってきたバゲットにアイラが目を輝かせる。お昼はこれと先ほど摘んだ苺。周囲は随分と長閑で、柔らかく吹く風に木漏れ日が揺れ、どこかで小鳥がピチチと鳴いていた。
(少しだけ、深緑を思い出しますわ)
 先日ローレットの大規模トレーニングで向かったけれども、それでも思い出せば恋しいもの。けれどそれを紛らわせてくれるのは今ここにいる者たちだった。
「そういえば、アイラと違って2人は依頼慣れしてないんだろ?」
 アイラが話し、話題を振られたウィリアムは答えてまた別の話題を出す。バケットを食べながら頷くSolumの隣でクリソプレーズは苦笑いした。
「この前、とんちきな魔物を倒してきたところでしたの。不思議な依頼もありますのね?」
「とんちき?」
「ええと……練達? でしょうか」
 ウィリアムとアイラが顔を見合わせて呟くけれど、クリソプレーズは首を横に振る。あれは神をより深く信仰する国家──天義であった、と。
「ゲーミングなパロットがいましたの」
「ゲーミングな……」
「パロット……?」
 その答えを受けた2人はぽかんと口を開ける。混沌にはまだまだ不思議生物がいるらしい。本当に特殊な例で、ほとんどはよくありがちな血生臭い依頼だったりするのだが。
「ま、こういう仕事で慣れていくのも悪くないさ」
 そう告げて苺を食べたウィリアム。アイラが視線を落とせば──偶然にも、そこには最後の苺が転がっていて。
「「「……」」」
 3人が顔を見合わせる。それは牽制か、譲り合いかわからないが誰も動かない。持ち帰るような苺もあるが、それを言ったら皆もっと食べたい気持ちはあるのである。
「あっ」
「えっ?」
「……あ」
 そんな3人の前から苺が消える。はっと視線を巡らせた3人の視界にはもぐもぐと口を動かすSolumの姿があった。
「……争いは何も生まない」
 そう告げて嚥下したSolum。3人は顔を見合わせ、くすくすと笑いだした。
「ふふ、ふ。そうですわね。必要ならまた採りにでも……あ、」
 不意にクリソプレーズがあることを思い出して声を上げる。そう、苺の花を摘もうとしていたのだ。ハーバリウムの材料にしたら大層綺麗に違いない。
「お手伝いして下さる?」
「構わない」
「ボクはここにいますね。ソフィ、ほらこっちに」
 アイラが手招きした先には転寝し始めるSolumの姿。全く無防備なことだとウィリアムは肩を竦める。
「ソフィー、いつかの街角みたくここで昼寝は……しても良いけど、程々にな?」
「……誰かが来たら起きる。本当」
 ぱちりと目を開けたSolumは感情の読めない瞳でウィリアムを見つめる。アイラもあるのであればきっと大丈夫だろう。
 クリソプレーズとウィリアムは再び森の中へ入っていき、程なくしてアイラたちの元へ帰ってくる。苺を包んでいた手巾に今度は黄色の花を包んで、クリソプレーズは嬉しそうだ。
「……ん」
 その気配にSolumもまた目を開ける。夕暮れには早いけれど、のんびり帰ったらきっと丁度良い時間だ。
「皆、お仕事は楽しめましたか?」
「ええ!」
「ま、それなりに楽しかったよ」
 アイラへSolumも頷いてみせ、レジャーシートなどを片付けた一同は森の外へと向かい始める。Solumは苺を入れた袋を揺らし、慣れ親しんだ森を振り返った。いつもと変わらず静かで穏やかな森は、きっと今後来る時も皆を歓迎してくれるだろう。
「ソフィー、どうした?」
「何かありましたの?」
 ウィリアムとクリソプレーズの声に振り向くと、アイラが大きく手を振っていて。
「……何でもない」
 Solumは彼らの元へと走り出す。3人にとって、今日が良い1日であることを願いながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 楽しいひと時を感じて頂ければ幸いです。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM