PandoraPartyProject

シナリオ詳細

逆光騎士団と誰も知らない嘘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ
 『我々は民の自由と意志を尊重し、罪をまねく心を赦し、悪を憎む心を赦し、未熟なる我らの学びと育みを尊びます』
 天義ノフノの街をまもる逆光騎士団は、連続児童誘拐事件の解決のため新人騎士プリクルとローレットによる合同調査を行いみごと『醜悪の呪い』によって怪物と化した通称『魔女』を倒し彼女たちのコミュニティである魔女集会をも壊滅。呪いの作法が書かれた『傲慢稚拙の書』を回収し事態は解決したかに見えた。
 だがあるとき、突如現れた牧師による非合理な魔女裁判によって逆光騎士団は魔女と決めつけられ、火刑が下された。
 それを助け出すべく唯一残ったプリクルと協力者のローレットたちは戦い、みごと牧師を倒したが……牧師に寄生していた赤き怪物が拘束されていた逆光騎士団へと寄生。
 騎士団はおろか街の人々までもがパンドラとアークの価値観が入れ替わるという非常に危険な洗脳状態に陥ってしまった。
 そんな逆光騎士団を相手に、『取り戻すための戦い』が始まっていた。

●偽られた悪
 イレギュラーズ。そして彼らへの最初の仲間とも言うべき『茨の騎士』プリクル。
 彼女たちは多くの戦いの中で逆光騎士団の洗脳をとく試みを続けてきた。
 逆光騎士団カリアン、コディマリー、アンスズ、リンゴスノー、オステオスペルマム、ブッドレア、サントリナ、アザレア、ロータス、リコリス、オドントネマ――敵になってしまった22名のうち11名の救出に成功し、仲間にした格好である。
 つまり注意すべきは洗脳の中核にある聖女『逆光』と11名の騎士たち。
「そろそろ……仕掛けるタイミングじゃあないか?」
 騎士カリアンが、パンを豪快に食いちぎりながら言った。
 前髪をくしで丁寧に直し続けていたコディマリーと、豊満な胸の谷間が目立つアンスズ。タンバリンの手入れをしているリンゴスノー。その他思い思いの方法で自由時間を過ごしていた騎士達が、カリアンの一言でぴたりと動きを止めた。
 『赤い怪物』の洗脳から逃れ安全な街に身を潜めていた彼らではあるが、留守中の街を誰もが案じていた。
 騎士を取り返すことは確かに重要だが、粛正活動が激化し続けるノフノを放置していればいずれはあの街が巨大な死体置き場になってしまうことだろう。
「私は賛成だ。というより……今やるべきだろう」
 扉を開け、大きな紙袋片手に現れた騎士ロータス。
 彼女の後ろには、騎士プリクルの依頼によって再び集結したローレット・イレギュラーズの姿があった。
 一枚の書を掲げるプリクル。
「先輩がた……いや、街の皆さんが危険ッス!」
 書には――『大裁判』という文字があった。

 近々、ノフノでは魔女の疑いのある者やそれを庇護する者すべてを一斉に処刑する『大裁判』が行われるという。
 裁判とは名ばかりで、既に檻に入れられ首に縄のかかった何十人もの人々が『悪魔に加担した罪』によって一斉に死刑に処されようとしている。
「悪魔なんてとんでもないッス! みんなこれまでの活動のなかでローレット・イレギュラーズの皆さんに協力してくれた人々ッス!」
 プリクルの話どおり、彼らは大なり小なりローレットに協力した人々だった。
 多くは『パンを売った』だとか『宿に泊めた』といった程度だが、過去の活動の中で情報提供や調査協力をしてくれた人々も名を連ねている。
「彼らの中でパンドラを溜める行為は『世界を滅ぼす行為』であると考えが書き換わっている。敬虔な信徒達ゆえに、その行いを深く悔いて自ら望んで死罪を受け入れるだろう」
「こんなこと許しちゃいけないっす!」
 いますぐ。
 そう、いますぐ。
 ノフノの街へと飛び込み、今ある戦力を用いて街の奪還をはからねばならない。

 計画はこうだ。
 大裁判が行われている広場へと数台の馬車で一斉突撃。
 味方の騎士12名とイレギュラーズたちでもって総攻撃をしかけ、裁判官を務める聖女『逆光』を倒し、同時に11名の洗脳された騎士たちを倒すのだ。
 このとき同じく洗脳影響下にある『志願兵』たちも戦闘に加わるだろうが、彼らはノフノの街から志願したいわば武装した一般市民である。騎士や聖女たちの盾になったり決死の特攻を仕掛けたりといった妨害はするだろうが、固体戦闘能力は警戒に値しないだろう。
「こっちは大体20名。あちらは12名。主力の数では勝ってるッス! けど……」
 プリクルはくしゃりと複雑そうな顔をした。
「先輩たちをただ『倒す』のでなく、『救出』するなら……こっちの戦い方は限定されるしそれだけ不利になるッス」
 これまでの戦いで、洗脳された騎士たちは【不殺】攻撃を行うことでほぼ確実に救出できることがわかっていた。
「助けたい気持ちは山々ッス。けど、街を守るセンパイたちの使命を考えれば、ここで命を落としても誰も責めたりしない筈……ッス。
 だから……ここまでジブンたちを導いてくれた、センパイ……イレギュラースの皆さんに、判断を託すッス」
 プリクルは剣を水平に掲げ、それに続くように他の騎士達も同じように武器を掲げて見せた。
 代表するようにカリアンが声を上げる。
「我らはローレット・イレギュラーズ――あなたに続く」

GMコメント

■オーダー
・成功条件A:聖女『逆光』を倒す
・成功条件B:逆光騎士団11名を倒す
・オプションA:聖女『逆光』を救出する
・オプションB:逆光騎士団11名のうち半数以上を救出する
・オプションC:逆光騎士団11名全員を救出する
・オプションD:味方の騎士団から一人の死者も出さない
・オプションE:?????

 オプション要素を満たそうとするたびに実質的な難易度が上昇します。
 リスクはメンバーの戦力等を考えながら、どこを着地点とするかを話し合って決めておきましょう。
 難易度的状況的にみて『最大成果を目指すけどダメそうなら諦める』といった手は今回おそらく使えないでしょう。ダメそうと分かったときには敗北(撤退)している筈です。

 相手のHPは視認できないものとします。つまり『トドメだけ不殺攻撃』といったプレイングは無効扱いになります。
 不殺攻撃を徹底したい場合は、戦闘のどの当たりから不殺攻撃にシフトするかをリスクと相談して判断しなければなりません。当然戦闘難易度は上がります。

■突入について
 広場には大勢の『武装した市民』がはりついています。
 当然ながらこちらの突入は事前に察知されてしまいますが、構わず突っ込みましょう。
 馬車は複数用意されていますが、自前の馬車やそれを操作する技術があれば突入成果があがり、その際にする工夫や頑張り次第で更に成果があがります。
 突入成果は主に戦闘開始初期配置される敵の数や位置、士気など様々です。

■味方騎士との協力について
 今回12名の味方騎士が一緒に戦います。
 ざっくりと1PCに1~2名ついてくる程度に考えてください。
 彼らの戦力は皆さんと同じくらいなので、PC総合戦力が2.5倍した程度に考えてOKです。
 プレイングで『自分をフォローしてくれる味方騎士1~2名』への指事を書くことが出来ます。
 ※違いがあまり分からない上字数を圧迫するので明記の必要はありませんが、『ぼくこの子がいい!』というのが仮にあったら事前に話し合ってから明記しておいてください。

■騎士と聖女、受刑者の配置
 広場の中央に聖女が、それを囲むように騎士団が配置され、高い場所から吊り下げる形で檻に入った受刑者たちが懺悔の祈りを捧げています。
 武装市民(いわゆる一般兵)たちはその周囲でごっそりとドーナツ状の群れを作っています。種族はバラバラなので飛行可能な兵士や騎士も当然います。
 受刑者たちは洗脳影響下にあるため、現時点で救出してもあまり意味がありません。戦闘の後にしたほうがいいでしょう。

 騎士団の戦力は味方騎士たちと同程度。
 聖女の戦闘力は『未知数』です。実は誰も聖女が戦ったところを見たことがありませんが、どの騎士も直感的に彼女にはタイマンで勝てないと考えているようです。

■勝利時の処理について
 聖女や騎士を倒すと『赤い怪物』が出現しますが、全員対処法を熟知しているのでこれ以上の寄生はおこりません。具体的には出てきて即破壊します。そしてそのプレイングも必要ありません(それでプレを圧迫するとよろしくありません)

■オマケ解説
『逆光騎士団シリーズ』はこちら
https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E9%80%86%E5%85%89%E9%A8%8E%E5%A3%AB%E5%9B%A3

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 逆光騎士団と誰も知らない嘘Lv:17以上完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月06日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾

リプレイ

●神様なんてしらない
 数羽の鳩が青い空へと飛び立ち、強く照る陽光を遮っていく。
 装備を万端に調えた何人もの天義騎士たちは、個性的かつ特徴的な武器や防具をまるで身体の一部かのようになじませていた。
 ここはノフノの街境に確保された中継地点。
 既に何代もの馬車が止まっているが、そこへ一台のオフロード車が停車。
 手動で開かれた窓から、『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)があらかじめ決めてあったサインを出した。
「ローレット・イレギュラーズだ。『真の』逆光騎士団というのはあんた達か」
「おうさ……。ウチはオドントネマ。アンタ、名は」
 腰掛けていた木箱から立ち上がり、握手を求める大柄な女子。
「ジョージだ。ジョージ――」
「『キングマン』のジョージかい?」
 名を知られていたことでジョージはわずかに眉をあげた。
「海洋にダチがおんねん。頼もしい助っ人や。今日はたのむで」
 ジョージは肯定のかわりに彼女と強く握手を交わした。
 すると、後部座席から『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が下り、馬の様子を確認していたプリクルへと駆け寄った。
「プリクルちゃん! ひさしぶり!」
「大丈夫だった? ご飯たべてる?」
 まるで親戚の挨拶めいた親しさで駆け寄る彼女たちの手を、プリクルは安堵した笑顔で握り返した。
「おかげさまで、っす。まだ万全とは……っすけど」
 笑みに苦笑のニュアンスが混じったが、膝を抱えて震えるしかできなかった彼女を知っている身からすれば大きな回復だ。
 焔たちは街を振り返った。
 一度は手をすり抜けた街。ノフノ。
「今度こそ、平和なノフノを取り返すわ」
「そうだね。けどプリクルちゃん。今度は今までよりもずっと激しい戦いになる。
 迷ったままじゃ危ないかも知れない」
 もう一度プリクルへ振り返り、焔は彼女の両手を強く握った。
「まだ悩んでるなら、ボクたちだけに任せてくれてもいいんだよ」
 ずきりという痛みが、まるで手を通して伝わるようだった。
 目を細め、泣き出しそうにほんの一瞬歪んだ顔が、強がるような笑顔に変わる。
「大丈夫……やるッス。センパイ! じっとしてたら、何もできないッス!」

 一足遅れてオフロード車から下りて、『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)はプリクルたちの様子を遠巻きに眺めていた。
「逆光騎士団。こうして関わるのは、魔女の集会を攻めた時以来、か……」
「その話はボクも聞いてる。お手柄だったらしいね、『ゴールデンロア』」
 別方向から声がして、エクスマリアは振り返った。
「初めて聞く名だ」
「君の異名だよ。『僕ら』の界隈じゃ、たぶん君が思ってるより君は有名人だ。ボクはリンゴスノー」
 すっと差し出した手には白銀のグローブがはめられていた。
 まるでうら若く美しい乙女のような顔立ちをした男性である。
 エクスマリアはあえて頭髪を腕代わりにして握手をしてやった。
「ははっ、噂通りだ。不思議な髪だね」
「そちらも、噂通りの良き騎士らしい、な」
 それがああも変わってしまうか……とノフノへと視線を向ける。
 既に車を降りて立っていた『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が、胸に本を抱いてじっと目を閉じていた。
 一度空をめぐった鳩が、再び舞い降りて地面すれすれを飛んでいく。
 吹き抜けた風がスティアの髪と服の裾をなびかせた。
「罪無き人達を処刑させるわけにはいかない。大裁判をやめさせて、そして皆が笑って過ごせる街に戻さなきゃ……」
 馬車をとめ、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は彼女たちが見つめる方向へと手をかざした。
「信仰は自由であるべきだけど、それが歪められるのは研究者としても一個人としても看過出来ないね」
「そういう発想、悪くないね」
 馬車の窓から顔を出して、『特異運命座標』楊枝 茄子子(p3p008356)が話に加わってきた。
「ねえ、今回の方針……覚えてる?」
 ああ、と小さくつぶやいてゴーグルを装着するゼフィラ。
 二人は改めて、仲間の騎士達へと振り返った。
 今回彼女たちが策定した作戦の着地点は『逆光及び対象騎士の半数以上を救出すること』。
 そのために敵味方に死者が出ることを、許容する。
「『誰も死なせない』って、そんなに難しいこと?」
「それに拘りすぎて、全部を失いかけたらしいからね」
 ゼフィラはシニカルに唇をゆがめて、手綱を握りしめた。
「世界はそこまで、私たちに優しくない」

「さあみんな! 今日は頑張ろう! よろしくね!」
 『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は元気いっぱいに拳を突き上げた。
 イエーイといって飛び上がる騎士リコリス。
 ウマが合ったのか、初対面なのにアクセルとリコリスは仲よさげに拳をぶつけあった。
「こっちこそよろしくねアクセル。百戦錬磨のアクセル。こんなこと慣れっこだろ?」
「どうかな? けど、全力は尽くすよ!」
 翼を広げて飛び上がると、馬車の幌へと着地する。
「出発進行! ノフノを取り返そう!」

●正しさを信じていた
 街の中心、集会場。
 かつては井戸があり、人々の交流拠点となっていたこの場所は、いま略式裁判の場として開かれていた。
 高い二本の鉄塔からはそれぞれフックが伸び、木製の檻がぶら下がっている。
「私たちはイレギュラーズという世界の魔に与することで、世界の破滅を呼び込みました」
「私たちは懺悔し、祈ります」
 檻の中で人々は手を合わせ、深く祈りと懺悔を続けていた。
「祈りは必ずや神へと届き、罪は許されるでしょう」
 集会場の中心で、書を抱く一人の女性。
 目元を布で隠した彼女を、ひとは聖女『逆光』と呼んだ。
 町民達は木でできた粗末な槍をとり、檻へと見上げる。
 罪への罰が裁判で下された際に、その場で一度ずつ刺す。それが教えであった。
「では皆さん。裁判を――」
 と、その瞬間。
 警鐘の音が十五度、打ち鳴らされた。

「異端者です! こっちへ来ます!」
 叫びに応じて振り返った民兵たちへ、激しい音と光が投げ込まれる。叫ぶ焔。
「特製の火薬だよ! 吹き飛びたくなかったら離れた方がいいよ!」
 それを攻撃と勘違いした民兵の一人が飛び退き、さらには――。
「つかまっていろ。飛ばすぞ」
 アクセルを限界まで踏み込み、ハンドルを握りしめたジョージが低く唸る。
 エンジン音を咆哮のごとく唸らせたオフロード車が民衆へとつっこみ、慌てて飛び退いたことで開いた道にタイヤ痕を激しく刻みつけた。
 180度ほどターンした車体が民衆のまんなか。つまりはドーナツ地帯の中央で停止。
 更にそこへ複数台の馬車が一斉に突撃をかけた。
 軽くパニックを起こした民兵がワッと広がっていくなか……。
「早く逃げなくていいのぉ? この広場に爆弾を仕掛けたわぁ」
 イレギュラーズは悪魔であるという洗脳を逆手に取ったかのように、アーリアたちは馬車から降りて空へと指を立てた。
 そばについた騎士カリアンとコディマリーがライフルでもって空に発砲。
「爆発に巻き込まれたら、それこそみんな無駄死にだよ? キミ達が居てこそのノフノの街なのに、もしかしてキミ達は街を滅ぼしたいのかな?」
 オステオスペルマムとブッドレアを味方につけ、茄子子が馬車から飛び降りて民衆へと挑発的に呼びかけた。
 『反抗したいが言い返せない』といった様子で歯がみする民兵達。
 一方でプリクルはアーリアや焔たちを守るように剣を抜いた。
「裁判を中止するッス。こんなこと、逆光騎士団としてよくないっす、センパイ!」
「裏切り者のプリクル……来ると思っていた」
「せめて我々の手で眠らせてあげましょう」
「世界を汚し人々を恐怖と混乱に陥れる悪魔。絶対に許さない」
「彼らに手を上げることは許さないわ。絶対に守る!」
 場を守っていた騎士達はさすがというべきか、突入する馬車たちに一切ひるむことなく構えていた。
 『逆光』に至っては声をあげるだけで民衆のパニックを抑え、プリクルたちへと槍を向けさせた。
 ギリ、と歯がみするプリクル。
 彼女の肩に、アーリアは手を置いた。
「大丈夫。いきましょう」

「アクセル、行ける?」
「もちろん!」
 馬車の上からボウガンを素早く連射するリコリス。それを次々と切り落としながら敵騎士が接近。それを守るかのように民兵達が団子状になって突撃をかけてきた。
 対するアクセルはその中心へと『神気閃光』を発射。咄嗟に民兵を庇って防御する騎士とその周囲の民兵たちをなぎ払っていく。
「アンスズ、リンゴスノー。援護、だ」
 エクスマリアは馬車の上から大きく跳躍すると『破式魔砲』を発射。
 騎士のひとりと逆光を一直線にとらえ、騎士達の魔術援護射撃を受けながら金色の光線を解き放つ。
「久しぶり、だな。聖女、逆光。いきなりですまないが、少しばかり痛い思いをしてもらう、ぞ。なに、ショック療法、というやつ、だ」
 直撃コース――のはずが、騎士は残像をつくって回避。逆光はといえば、打ち込まれた光線に対して光の聖域をつくってキャンセル。しかしあまりの威力に聖域がガラスのように崩れていった。
「魔術結界か。厄介だな」
「『金獅子』が圧倒できないほどとなると……うーん、マズいかなこれ?」
 外側からは民兵に取り囲まれ、内側からは騎士達が襲いかかる。
 挟み撃ち状態にはなったが、おかげで民兵と騎士を別個に対処できる状況が生まれていた。
 ゼフィラはサントリナとアザレアにそれぞれ指事を出し、民衆側への対処を開始した。
 次々と打ち込まれる手榴弾に対し、天使の歌でのカウンターヒールを行うゼフィラ。
「固まった陣形は危険です。分散しつつ適時回復すべきかと」
「民兵の攻撃も受けすぎれば致命傷に繋がる。同志ゼフィラ、どうする」
「仕方ないね。民兵を無視してまずは騎士の確保だ。不殺攻撃を頼むよ」
 ゼフィラは馬車を障害物にしながら継続して治癒魔法を展開。
 ゼフィラたちの支援によって場の中央へ最も近づくことができたのは、スティア率いるチームだった。
 ロータスの運転するセイクリッドバイクに二人乗りし、破壊したバリケードをそのままジャンプ台にして急接近。
「飛べ、スティア」
「――!」
 スティアは空中でバイクから離脱すると、指輪を強く発光させた。
 瞬間的に発生した聖域が『逆光』の作り出す聖域と拮抗。
 白銀の火花を散らした後、守りに入った大柄な騎士の顔面へ拳をいれた。
 聖域化した拳によって無理矢理防御をぶち抜かれた騎士は連続しておこる氷結と爆発をうけながら吹き飛び、救援にかけつけた別の騎士はロータスのバイクによって無理矢理押し倒された。
 やっと車を降り、拳を鳴らすジョージ。
 オドントネマが彼の肩を叩き、ニッと笑ってパイルバンカーを構えた。
「さぁて一暴れするでぇ」
「背中は任せた。俺はまず、騎士を落とす」
「アァン? やんのかコラてめぇ」
 髪をオールバックにした騎士が同じく拳を鳴らしてゆっくりと歩いてきた。
 互いに火花がちらんばかりににらみ合い、歩いて距離を縮め合う。
 最後には額をがつんとぶつけ、超至近距離でにらみ合った。
「悪魔野郎。この世界には手出しさせねえ。ぶっ殺す」
「洗脳とは悲しいな。安心しろ、すぐに思い出させてやる」
 二人は互いの襟首をつかみあうと、顔面へと拳をたたき込み合った。

 戦いは血にまみれた。
「行って、ボクの炎!」
 焔の放った『炎縛札』が騎士の直前で燃え上がり、炎が蛇の如く絡みついて動きを束縛。更に飛びかかったプリクルが騎士を殴りつけて転倒させた。
「死んでくれるな、よ? 死ぬ程痛い、が」
 更にエクスマリアの放った『威嚇術』もとい巨大な黄金の拳が騎士のひとりを殴り倒し、すぐさま頭髪で縛り付けて動きを封じた。
「これで、二人」
 と、その一方で集中攻撃を受けたリンゴスノーが胸を剣で貫かれ転倒。そこへ群がった民兵たちが槍を次々に突き立てていく。
「リンゴスノー!」
「来……るな! みん、なを! 頼――!」
 リンゴスノーを刺した騎士は己の手の震えに動揺し――た隙をつくようにアクセルの神気閃光が直撃。
 茄子子とゼフィラが回復支援を送る騎士達の集中攻撃によって鎮圧された。
 さらにはジョージとオドントネマが同時に殴り倒した騎士が気絶し、残る一人――というところでリコリスが非殺傷弾を発射。直撃を受けた騎士がよろめき、その場に倒れた。
「よし! やったぜ見てたからアクセ――」
 サムズアップしてみせたリコリスの脳天を、銃弾が抜けていく。
「――あ」
 馬車の上から転げ落ち、民兵が群がっていく。
「リコリスー!」
 助けに向かおうとするアクセルを、がしりとスティアの手が止めた。
「私たちの目的」
 と、短く告げて。スティアは目を強く見開いて『逆光』へと手をかざした。
 白く輝く羽めいた氷塊が舞い散り、その全てが逆光へと飛んでいく。
 対する逆光は小さく顔の位置に手をかざし、スティアの魔法をキャンセル――するかと思われた寸前、アーリアが放った投げキスが悪魔のような爆発を起こし『逆光』の障壁を無理矢理破壊。砕けたガラスのように散る中を、スティアの羽が殺到していく。
 かわす暇など、与えない。

「好機だ。行くぞ」
「分かった」
 エクスマリアとジョージが逆光への集中攻撃を図るべく走り出す。
 が、その一方で残る騎士や民兵たちからの過剰なまでの集中攻撃が彼らに浴びせられていた。
「しゃあない。なんとか保たしたる」
 立ちはだかり、顎で『早く行け』としめすオドントネマ。
 更にアンスズやコディマリーたちも加わり、民兵や他の騎士たちのブロックや鎮圧が始まった。
 同じく焔とゼフィラがくるりと背を向け、市民達へと身構える。
「行って。こっちはボクたちが抑える」
「できるだけ早く片付けてほしいかな」
 一方――。
「あなたたちはなぜ世界を破滅させようとするのです。己の身すら滅んでしまうというのに」
「本当に、わからないよね。わかりあえないよね。だから、止めるしかないんだよ」
 スティアはさらなる魔力を氷結させ、逆光へと乱射していく。
 手のひらを右から左へスライドさせるようにして新たな障壁をはり、魔法を防御する逆光。
 そこへエクスマリアが急接近。
「次は、外さん」
 障壁の上から魔力を乱射し、プレッシャーを与えてていくエクスマリア。
 が、そんな彼女たちを振り払うように一人の騎士が二丁拳銃でもって襲いかかった。
「逆光様に触るな! 俺が相手だ!」
「洗脳ってややこしい……!」
 茄子子は味方に治癒魔法をありったけ連射し、ぜえぜえと荒く息を整えた。
「スタミナが……」
「問題ない。速攻でカタをつける」
 ジョージは跳躍からの跳び蹴りによって聖女へと襲撃。更に軽く飛行したアクセルの神気閃光爆撃が逆光へと殺到していく。
「さぁ、聖女様よ。お目覚めの時間だ。貴様の心はまだ、抗っているのだろう……!」
「よそ見はしない。一点集中だ!」
 ついには彼らの攻撃が逆光の作る何枚もの障壁を破壊し、派手に蹴り飛ばすことに成功。
 広場の床を転がり、目元に手を当てる逆光。
「私が、いま、倒れるわけには……」
 なんとか起き上がろうとする逆光の首に、アーリアがそっと手を添えた。
 電流がはしったようにけいれんし、今度こそ気を失う逆光。
 彼女の中に帰省していたであろう赤い怪物が外へと飛び出し、次なる寄生先を探そうと眼球をぎょろりとさせたその途端、素早く鉄のピンを放ったアーリアによって破壊された。
「やったっすね、アーリアセンパイ!」
 プリクルが思わず笑みを浮かべた、その瞬間。
 騎士の銃口が彼女の心臓にぴたりと狙いをあわせた。
「よくも――」
「プリクルちゃん!」
 飛び出し、プリクルを庇って背に激しい銃撃を受けるアーリア。
 プリクルが大きく目を見開いた。

 残った騎士と市民達を相手に、ゼフィラと焔、そして逆光騎士団たちは戦い続けていた。
 炎を円形に放って民兵を牽制しながら、騎士を足止めしていく焔。
 その一方でゼフィラは集中砲火をあびながらも騎士達の回復につとめていた。
「どうやら……目標は達したらしいね」
「!?」
 ゼフィラの言葉に騎士たちが振り返り、逆光がイレギュラーズの手に落ちたことを察した。
「貴様――」
「こらえろ、ここは退け!」
 リーダーらしき騎士が仲間の腕を引き、素早く馬へと飛び乗る。
「街は必ず取り返す! 今は生き残ることを優先させろ!」
 兵が退いていく。
 と同時に、あれほど怒り狂っていた民兵たちが一斉に気を失い、その場に倒れた。
「みんな!」
 急いで駆けつける茄子子。血塗れで倒れたオドントネマを抱え起こすが、焔がその肩に手を置き、ゆっくりと首を振った。
「頑張って、耐えてくれた。ボクをかばって……」
「…………」
 ジョージはその様子に沈黙し、眼鏡を外す。
 生き残った騎士のロータスが、ヘルメットを外して塔へと振り返った。
 鳩が、遠い空へと飛んでいく。

成否

成功

MVP

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

状態異常

アーリア・スピリッツ(p3p004400)[重傷]
キールで乾杯
楊枝 茄子子(p3p008356)[重傷]
虚飾

あとがき

 ――依頼達成!

 ――聖女『逆光』を救出しました
 ――逆光騎士団オレガノ、セージ、チャイブ、ナスタチウム、ローリエが救出されました
 ――逆光騎士団のうち半数、及び逆光の救出に成功。今後ノフノの立て直しが可能になりました!

 ――逆光騎士団リコリス、リンゴスノー、オドントネマ、オステオスペルマム、ブッドレア、サントリナ、アザレアが死亡しました

 ――市民に死者がでませんでした
 ――隠しフラグ達成! 数名の子供が行方不明になっていることが判明しました!

PAGETOPPAGEBOTTOM