PandoraPartyProject

シナリオ詳細

\ジェック祭り/

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 三日月の下での泣き笑い。
 そんな夜――役目を果たしたとばかりにジェックのマスクは落ちていた。

 ――と、言うわけで。
「ジェック様の! ガスマスクが! 落ちましたわー!」
 ぱやぱやー。ダイナミックエクセレントスタイリッシュフェスティバルポーズを決めた御天道・タント (p3p006204)が指をぱっちん。
 お決まりのあの言葉に合わせ「タント様ー」とそう言ったジェック・アーロン (p3p004755)のガスマスクは外れており素顔が見えていた。
「おめでとう。色々と……大変な事もあっただろうが、友人として素顔が見れた事を嬉しく思うよ」
「ああ。おめでとう。それから……嬉しい事もあったみたいだし、な?」
 ポテト=アークライト (p3p000294)とリゲル=アークライト (p3p000442)の言葉を受けタントとジェックが顔を見合わせた。紆余曲折(そりゃもういろいろと)あったのだ。
 その辺りは酒の肴にでも――という訳で折角ガスマスクが外れたのだからやる事は一つだ。

「\ジェック祭り/ です!」
 夢見 ルル家 (p3p000016)のその言葉にぱちぱちとエクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)が手を打ち合わせた。こういう時はそうするものなのだろうとマリアは聞いていたという彼女は「食事をするんだったな」と首を傾いだ。
「そうであります! いやぁ、そりゃもう恐ろしいほどにお祝いしなくては!」
「ええ。ええ、そうですわー! なんと言ったってジェック様は生まれてこの方、ガスマスク越しにストローでの摂食しかしてこなかったというのですから!」
 タントのその言葉に炎堂 焔 (p3p004727)が「ええー!?」と驚愕の声を上げた。つまりは美味しいBBQだとか、美味しいペチャの実だとかもきっちり食べた事がないというのか。
「じゃあ、ガスマスク外れたから食べれるようになったんだね!」
「そりゃあ、たんまりとなァ」
 にやりと笑ったグドルフ・ボイデル (p3p000694)はローレットの伝で素晴らしい場所をレンタルしたという。ちなみに御代はレオンにつけておくとのユリーカの談だ。
 曰く、「ならキャンプ地のログハウスでちょうど良いのがあるのです。一棟貸切でキッチンなどを使って盛大に一泊してくるのです」という事だ。
「成る程、じゃあログハウスに食材を持っていって調理するのも良いのか。
 BBQやパエリアもあり出し他のも良いな。1日ゆっくり出来るっていうなら朝昼晩、色々考えられそうだ」
 伏見 行人 (p3p000858)は何かあるかな、と精霊に伺い聞いた。精霊たちは酒か、飯かと楽しげだ。
「パネェな。修学旅行(?)じゃね?」
 ロッジで一泊なんて何処までも楽しいではないか。伊達 千尋 (p3p007569)がログハウスの解説を見れば近くに温泉施設があることや星がきれいな事などの付帯事項もしっかりと描かれている。
「あらあら、とっても楽しそう。星を見ながらお酒を飲むのもきっと楽しいと思うの」
「ええ。ええ。きっと楽しいわよぉ。ふふ、未成年はノンアルコールドリンクで雰囲気を味わうのも楽しいかもしれないわねぇ」
 ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク (p3p003593)にアーリア・スピリッツ (p3p004400)は大きく頷いた。
 何せ、今日はジェック祭りだ!
 飲んで、騒いで、寝て、大騒ぎするのだ!

GMコメント

祝! ジェックのガスマスクが外れたよ! とのことで、おめでとうございます!
騒ぎましてよ!

●キャンプ地のログハウス
 一棟貸しきりました。飲んで騒いで大騒ぎしやすい素敵な空間です。
 ベッドが並んで居る部屋も数個存在し、近くには温泉施設もあります!
 キッチン、調理器具完備。外でのBBQもお楽しみいただけます。
 材料などは皆さんでご用意くださいね!

 勿論、出来合いのものと買ってくるもよし、みんなでわいわい作るもよし!
 器具はあるので材料さえあれば色々出来ますね。楽しいぞ!
 ドリンク類も持込OK。未成年にアルコールは駄目ですよ!

 チェックインは13時から。チェックアウトは11時。
 のんびり出来ます! お昼ごはんから次の朝ごはんまで楽しんでもOKですし、夜ご飯だけでもOKです。
 夜は晴天の模様。木々の合間から美しく照らす月と星が美しくってとっても素敵なロケーション。
 つまりは『何かめっちゃ良い感じのキャンプ地を貸切』なのです。

 代金はローレットにつけときましょう。

 それでは楽しく飲んで騒いでジェック祭りだ!
 よろしくお願いします!

  • \ジェック祭り/完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月10日 22時10分
  • 参加人数12/12人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

リプレイ


『お姉チャン』ジェック・アーロン(p3p004755)のガスマスクが外れたという一方を受け、今日という良き日に開催されるのは――

 \ジェック祭り/

 ――であった。
「いやー、目出度い! 祝わずにはいれません!」
『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)は楽しげにテーブルの上に食器を並べていた。そう、此処はギルドローレットではない。祝いの席を設けるという言葉を聞き、折角だからと『場所』を探した『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)の功績(?)による貸し切りロッジの中なのである。
 ガスマスク取れない系ガールであったジェックは食事もほぼ経験が無いという。そんな彼女との約束を思い出し『ハニーゴールドの温もり』ポテト=アークライト(p3p000294)は小さく笑った。
 ――ジェックのガスマスクが外れたら美味しい物をいっぱい用意してジェックの好物を探そう。
 その約束がついに叶うときが来るのだと胸を躍らせるポテトに『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は勿論の事、協力したいと言った。新しい人生の門出になるのだ。思い切りお祝いをしようと笑みを零すリゲル。
 ……と言うことは、今日は『美味しい物』を食べる日なのだ。食事会を開くと聞けば『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)とて楽しみにせずには居られなかった。ジェックのための祝いと言えども食事は皆で取る方が楽しい。
「マリアも、楽しませて貰うとしよう」
「ああ。一等良い物ばっかりをセレクトしておいたから楽しみにしてくれ」
 小さく笑った『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は主賓の登場を楽しみにしながらこの祭りにかけた意気込みとして、『特上品』を用意したのだという。
 鉄帝国の万年雪を関する零脈の麓からくみ上げた水、深緑では精霊の関係で懇意にしたとある村で栽培されたハーブ。海洋王国は王家後献上品の塩を横流しして貰い、練達は再現性大阪より焼きそばソースをゲットした。勿論、何に使うか商店のおばちゃんは五月蠅かったそうだ。
 ラサのサンドバザールで流通してきたフレッシュな香辛料に天義では聖餐に供される葡萄酒と、その葡萄を使ったぶどうジュースを。幻想では旅の途中に食べ比べた結果、一番癖もなく『うまい』と心から思えたチーズだ。
 それだけの物が揃っているだけでも喜ばしい。そして、ルル家曰く「料理は得意!」というのだからエクスマリアの腔内には唾液がじわじわと滲み出す。
「まあ、まあ。お祭り? ジェックさんのお祭りがついに……第二回とかあるのかしら?」
 きょとんとした調子の『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)に『ガスマスクが外れた現場』に居たという『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は「みでぃーくんがしたいならお祭りも沢山開いちゃいましょ?」とウィンク一つ。
「いいですかぁ~~~皆さん! おうちに帰るまでが修学旅行です! はい! 班行動ーーーーーーーーー!!!」
 ジェック祭りと書いた栞を配る『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)にグドルフは「何でぇ、何かやるってのか?」と問いかける。
「ところで千尋せんせぇ、お酒はおやつに入らない水分よねぇ?」
 アーリアの問いかけへと「違いねえ」とからから笑うグドルフ。班行動はとっても難しそうです、先生。
「ジェックちゃんガスマスク外せるようになったんだね! おめでとう!
 よーし、今日は\ジェック祭り/だよ! いっぱい食べていっぱい遊ぼう」
 バスケットを抱え、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)がそわそわとした調子で笑みを零す。そろそろ主賓がやってくる。盛大にクラッカーの音鳴らしお迎えするぞと意気込んだ焔の前へと飛び込んだのは美しく輝く額であった。
「オーッホッホッホッ!」
 相も変わらずエクセレントスタイリッシュフィーバーポーズを決めて見せた『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)。
「それでは昼食兼、第一回ジェック様祭の開催を! ここに宣言しますわー!」
 そう宣言したタントの背後から恐る恐ると顔を覗かせたのは『ガスマスク外れたガール』であるジェックであった。
「え、なんでこんな皆盛り上がって……うわテンション高っ!?」
「そりゃぁ高くもなるぜ! ほら、『ジェック祭り』の栞!」
 ぐいぐいと差し出す千尋にジェックの耳までが赤くなる。よく見えるようになった表情にしっかりと乗った赤い色――それを見れば誰だって彼女の顔をしっかり見られるようになったのだと感じるだろう。
「ああもう……勝手にすれば」
 にっこりと微笑んで手を繋いだタントの笑顔にだって、負けた。


「ふふふ、拙者実はこう見えて結構な料理上手なのです! ジェック殿の食事、喜んで頂けるように作りますよ!」
 胸を張るルル家に期待しているとポテトはパスタソースとパスタを用意してきたと笑いかけた。茹でて和えたら完成と言うことで――夕食のバーベキューに期待していて欲しいと皆に告げる。
 スパゲッティとペンネの二種類を用意したから、此れは好みでと茹でながら告げる手際の良いポテトの後ろでトマト、ミートソース、クリームソースの準備をするルル家はタントが予め月ってきたというハンバーグのタネをちら、と見遣る。
「どうせなら目玉焼きをのせるのも良さそうですね!」
「まあ! とっても素敵ですわーっ! ソースも二種類ぐらい用意致しましょう!
 パスタにのせる方が居ても良いかも知れませんわねっ! 組み合わせは無限大ですわー!」
 きらりと瞳を輝かせるタントにポテトとルル家は頷いた。食べ物を用意してきた三人娘の傍らで千尋が用意するのはジェックが好きだと言っていたバニラシェイクだ。折角ならば食後に皆で飲もうと材料を一度保管しておいた彼はくすりと振り返ってから小さく笑みを浮かべる。
 そわそわとした調子で食器を並べるジェックはタントに「何をすれば良い?」と問いかけた。
「使い終わった調理器具とか洗うのは任せてね!」
 微笑んだ焔は夜のバーベキューになったら任せてと胸を張った。流石は炎の御子。火の扱いには長けているのだ。
 早速のお昼ご飯タイムがやって来る。ちょこり、とタントの傍らに座ったジェックは慣れない手つきフォークを握りしめテーブルに並んだ食料をまじまじと見遣った。少しずついろいろなソースを、と小皿に『一口パスタ』を並べたポテトは「好きなのを選んでくれ」と柔らかに微笑む。
「こっちはタントが昨日作ってたやつ? で、こっちはポテトかな……凄い……。ん……、美味しい!」
「そうだろう?」
 誇らしげな旦那様――リゲルを肘でこつ、と小突いてからポテトは小さく笑みを浮かべる。自慢げな旦那様に擽ったくて、何だか心地よさを感じる。その夫婦の仲の良さを見詰めながらアーリアは眸をキラリと輝かせグラスを掲げた。
「明るいうちからお酒!ばんざぁーい!タダ酒でレオンくんのお金を枯らすわよぉー!」
 パスタもハンバーグもお酒にぴったり。その様子に「まあまあ」と小さく笑うミディーセラ。
「ジェックさん、固形のものにはもう慣れたのかしら? 食べ過ぎないようにしませんと」
 ね、と微笑んだミディーセラはアーリアに「これも美味しいわ」とフォークを刺しだした。所謂『あーん』の形になればアーリアは「みでぃーくんったら」とくすりと笑う。
「良い想い出を作りましょうね。良い想い出は幾つあっても足りませんから。増やすのです、どんどん」
 ジェックはこくり、と頷く。こうして共に食事をしているだけでも良い想い出が増えていく。ハンバーグにチーズをのせるのも美味しいと行人が提供するアレンジもどれも此れもが心を躍らせる。
「チーズはワインに合いますよ」
「ええ、ええ、勿論良いわよねぇ! けど、ジェックちゃんも楽しめるアレンジを試してみましょう?」
 二人の言葉に頷いて行人は「見てろ? 味が変わるぜ」とジェックに揶揄うようにそう告げた。食事用意も旅でそれなりに慣れては居るが手伝いに回った彼は持ってきた水をハーブに浸けハーブ水を作るだけに留めていた。
「チーズ、マリアも貰っても、良いだろうか?」
「勿論だ。たっぷりかけるか? それとも?」
 まるで給仕の様に恭しくエクスマリアにそう言った行人。そんな様子にからからと笑ったグドルフは「まだまだ晩もあるんだ、食い過ぎてダウンするなよ!」と仲間達を揶揄った。 
「食後はァッバニラシェイクを用意しましたァン!
 暑い時にはキンキンに冷えてるシェイクが身体を優しくクーリング!」
 千尋がシェイクを『未成年組』に配れば、今まではガスマスクの儘、ストローで吸っていたのとは違い、コップで直接飲むという『新しい経験』をすることになる。
「チヒロのバニラシェイクもストローより直接飲む方が……アガるね」
 タントとジェック、同じようにグラスを傾ければ二人の口の周りにはシェイクの泡が髭のように飾られる。その様子にふ、と吹き出したルル家とリゲルは「髭が出来ている」と可笑しそうにそう言った。
「え? ひげ? どういうこと?」
 ――勿論、鏡を見たジェックは慌てたのだ。


 昼食が終わったらここからが出番だとエクスマリアは食休みついでに釣りが出来そうな場所を探しに行ってくると外へと向かった。彼女の所有するギフトは『髪業』――それはどのような疑似餌をも上回る。極上の川魚をBBQで振る舞うというエクスマリアのやる気は漲っているのだ。
「それにしても、嬢ちゃんの顔はいつか拝みてえと思っていたもんだが、まったくいつの間にってカンジだぜえ」
 酒を呷りながらグドルフはからからと笑った。こんなにも目出度いのだから一番良いロケーションを探したというグドルフは「後の準備は全部おめえらで」と言いかけてリゲルに「済まない手伝って貰えないか?」と声を掛けた。
「へーへー、何をしろって?」
「折角の思い出作りにBBQも合成にしたくてな。その準備を手伝って欲しいんだ」
 グドルフは「そういうことなら任せろ」とにんまりと笑った。盥の中に水を張ってスイカを浮かべれば夜のスイカ割りの準備も完了だ。薪拾いを行ったタントが「これでいいですの?」と問いかければ焔は「ばっちり!」と嬉しそうに笑みを浮かべた。
「バーベキューって言ってましたものね。足りなくなると困るから、これくらいで良いかしら?」
 ちまちまと薪や水を集めるミディーセラはベンチに腰掛けて『此れで出番は終わった』と言いたげなグドルフの傍らでにんまりと微笑んだ。
「若い方が頑張って……まあ、まあ。ではグドルフさんもまだまだお若いのですから。一緒に行きましょうね」
 仕方ないと引きずられていくグドルフに行ってらっしゃいとアーリアは手を振った。
「アーリアさん」
「……は、働くわよぉ」
 皆、『みでぃーくん』には弱いのだった。
 外でご飯となれば最初に困るのは火の用意――なのだが、慣れた様子の行人と焔はテキパキと準備を続けていく。
「やっぱり『火』になれてるってのは頼りになるな」
「ふふん、火加減だってバッチリ! お任せあれだよ!」
 (無い)胸を張る焔に行人は「じゃあよろしく頼むぜ」と背をぽんと叩いた。夕飯の為の材料を切るのだって任せて欲しいとナイフを手にしていた焔はふと思い出したようにジェックを呼ぶ。
「そうそう、普通のご飯が食べられるようになったジェックちゃんにプレゼントがあるんだ!」
「プレゼント?」
「うん。はい、練習用のお箸だよ、フォークやスプーンだけじゃなくてこういうのも使えた方が楽しく美味しく食べれるものも増えるかなって」
 お箸は慣れなければ中々に難易度が高い。小さな子供が使用するような『練習用』の箸から始めるのが丁度良いだろう。フォークに突き刺すだけなら出来るが器用に箸で豆まで掴むまでは少し時間が掛かりそうだ。
「さぁ、みんなで頑張りましょう! エイエイオー!」
 ルル家は最近、依頼で豊穣の農家から野菜を卸して貰えることになったのだとたんまり準備をしていた。何せよ今日は人数が多い。貧しい農家であるらしいがイレギュラーズが贔屓にすれば儲かるだろう。器用に野菜を切り分ける焔は味付けなんかは『お料理が得意な人に』とそう言った。用意を手伝おうと名乗り出るエクスマリアは旅で慣れていると髪も使用して凄まじい早さで調理を進めていく。
 お料理の得意な人――ポテトはリゲルに「野菜をスティック状に切ってくれるか?」と問いかける。
「何を作るんだ?」
「即席ピクルスとディップサラダにするんだ」
 味付けは頼んだよと微笑んだリゲルはポテトと協力してのサラダ作り。どれも美味しそうだと褒める旦那様に微笑めば、彼の飯盒も炊けましたと合図を送る。
「俺は焼きおにぎりを作ろうと思って。醤油で味付けして焼くのが香ばしくて美味しいだろう?」
「ああ。とっても良いな。ジェックも食べやすいように小さめに野菜を切ってもらっても?」
 勿論、とリゲルは頷いた。地井様に切った野菜サラダにいろいろな食材のアヒージョ、それからチーズたっぷりのオムレツに優しい味のシチュー。アークライト夫妻の作ったデザートはカットフルーツとマンゴーを挟んだシュークリームだ。
 昼に仕込んだハーブ水は、肉の油っぽさを流してくれるように爽やかに。
「ぶどうジュースもあるぜ?」とおすすめする行人の行き届いたサポートに千尋は「いいねぇ」と笑う。
 肉をガンガン焼くぜ、とやる気を漲らせたグドルフは『山賊焼き』ってな、とにいと笑う。
「オウ、ジェックの嬢ちゃんよ。せっかくなんだ、ガンガン肉食いな。しっかり食ってイイオンナにならねえと、男にモテねえぞお。ゲハハハ!」
 そう笑ったグドルフにジェックの頬がぽ、と赤らんだ。その刹那、思わず喉に詰まったのか「ングッ」とジェックから声が漏れる。
「ああ、ジェック。喉につまらせぬように、慌てず食べず、水も飲んでおくように、な」
「アリガト……」
 コップに水をなみなみ注いでいたエクスマリアはこて、と首を傾げる。その様子を眺めて居たグドルフは何かに気付いたように「ジェックの嬢ちゃん、まさか……」と呟く。
「え、恋人いるんすか? マジで? いつの間にだよ?」
 あんぐりと口を開いたグドルフに「実は実は、わたくしの家でジェック様と同棲しているのですわ! きゃっ」と言うタントのはしゃいだ声が聞こえ――
「はあああ!? デコの嬢ちゃんか!? そうかあ……マジか……こりゃあダブルでめでてえだろうが。赤飯いるか?」
 驚いたように『バーベキューの肉の焼き加減を教える』為に協力していたルル家とタントが目を丸くする。笑い祝いだと一番大きな肉を差し出してくれるグドルフに「まあ! ジェック様、沢山食べれますわね!」とタントは微笑んだ。
 ――さて、どうして同棲の話が出たかと言えば、ルル家と力を合わせて調理をしていたタントは「わたくし意外と家事はこなせるんですのよ」と言ったからであるらしい。
「あ、ジェック殿! 熱いと思いますからふーふーしてから食べて下さいね!」
 はっとしたようにふう、ふう、と皿に息を吹きかけるジェックが可愛いとルル家がくすくすと笑う。
「地元の夏祭りの出店仕込みの俺の焼きそば作りの腕を見せてやるぜ! オーフェンス! オーフェンス!」
 小手を握りしめて千尋は鉄板と向き合った。その真剣な表情に行人ははっと顔を上げる。
「千尋――! 此れを使え!」
「ああ! 奇を衒うような事はしねえ……キャベツ・ニンジン・豚肉のストロングスタイルで勝負!
 見やがれこのコテ捌き! 焼きそばが天翔ける龍のように舞っているだろう?」
 そして――「仕上げに青ノリを振りかけて」ふぁさぁ、と青のりが宙を舞う。その様子は練達で流行する動画のように優雅そのものだ。
「……完成さ」
 ちなみに普通に美味しいのだった。


「酒ぇ~~~? 未成年がいる中で良識ある大人が酒かっくらう訳ないっしょ!
 まあ俺は良識のない大人だからいいんだけどな! ウェーーーーーーーーイ!!!」
「飲むわよぉ~~~!」
 大騒ぎの大人組は酒を、そして、未成年達は花火とスイカ割りなのだと言うがこの時、アヒージョや枝豆をつまみながら酒を飲み続けるアーリアと違い千尋はスイカ割りも花火もやるぜ、とやる気十分であった。
「そうそう、この間豊穣の方でとっても、とっても良いお酒をもらったのでお裾分けに。
 それにそう、小さい星みたいなお菓子……こんぺーとー? で甘いものもばっちりですとも」
 ミディーセラの持ってきた豊穣の酒に行人が用意した葡萄酒。そして――
「そうだそうだ。酔っ払いども、喜べ! 酒をたんまり持ち込んできたぜ。
 燃える石から拝借してきたエグいやつだ。ノンアルの奴も樽で持ち込んできたからよ、ガキどもはそれでも飲んでな!」
 がはは、と大笑いしたグドルフにアーリアが「燃える石の!」ときらりと瞳を輝かせる。隅でその様子を眺めるエクスマリアはグドルフが引き摺ってきたリゲルに気付く。
「リゲル。おめえも付き合えよ。飲めるトシになったんだろ?」
「はい。これからはいつでも付き合いますよ!」
「おめえと会ってから3年、まァ……会った頃よりイイ顔になってきたな。
 何だかんだ、楽しみにしてたよ。お前とこうして酒を飲みかわす日をな」
 じゃあ、乾杯だと告げたとき、ぱちりとミディーセラは「リゲルさんも飲めるように?」と問いかけた。
「なんてこと、今度お祝いしなければ」
 次回は酒盛りも始まりそうだ。そんな様子の中、ルル家が「始まりますよー!」と声かける。
 スイカ割りを眺めるポテトは「割った後は食べやすいサイズに切ろう」と優しく声を掛ける。
「えっ」と呟いたのは目隠しをされたからだ。「えっ!? 何!?」と大慌てのジェックに「右、右!」とルル家が声を掛ける。
「もっと右右! あっ、行きすぎちゃった、ちょっとだけ左!」
 焔の指示とは真逆の方向に進むジェック。何かの気配を感じて振り下ろせば――
「ッウエエエエイ」
 千尋にクリーンヒットである。慌てて「アタシ知らない!」と首を振るジェックに「良い人だった、な?」とエクスマリアが首傾ぐ。
「死んでねぇぜ! 見てろ、俺特製ドラゴンバズーカ――ウェーーーーーーーーイ!!!」
 勢いよく放たれる花火に、エクスマリアは「花火か」と足下にどうなるかも分からないネズミ花火を投げ――千尋が大いに慌てることとなる。
「ははは」と笑う行人に酒を呷りながらアーリアとグドルフが楽しげに笑い続ける。
「ジェック様ジェック様! ……これやりませんか、線香花火!」
 そっと手招いて。喧噪から離れて線香花火を二人で一つずつ。ぱちぱちと火花を散らして揺れるそれを眺めながら、タントはゆっくりと顔を上げる。炎に揺れて、照らされる真白のかんばせが美しい。
「……皆様から愛されてしあわせですわね、本当に」
「まだ、夢みたいだ」
 そう、唇から漏らした。ジェックはぽとり、と落ちた線香花火に「あ」と声を漏らしてから小さく笑う。
「うん、でも……幸せ、かな。素直には言えないけど……」


 翌朝――

「朝ですわよーーー! さあさ! 朝ごはんが出来ておりますわ! 皆様起きて下さいまし! 朝の化身タント様がお寝坊は許しませんわー!」
 タントの声を聞き、慌てて起き上がったルル家。ジェックも眠たげだが彼女と一緒に起きたのだろう。食堂では朝の準備をする焔が「おはよー」と手を振っている。
 死屍累々の大人達は「うぇっぷ」とげっそりとした青い顔で朝食のスープを啜ったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おめでとうございました!!!!!

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