シナリオ詳細
祭事の陰で鮫と少女と
オープニング
●S・O・S!
カムイグラは夏の祭典に湧いている。
その影では妖怪悪鬼の類が蠢いているが――それはあくまでも影の話。
多くの人物にとっては盛況なりし夏祭りの真っ最中である。
海は眩く、空は晴れ晴れとしており心地よく。
誰もが心よりこの暑さを楽しんでいる――その最中にて。
「わ――!! 誰か助けて――!!」
海の方。小さなイカダの上で助けを求める少女が一人。
彼女はスカーレット・トワニ・ヴァージンロード。
元々は混沌大陸の方で活動していたイレギュラーズだったが――バグ召喚、向こうで言う所の『神隠し』に巻き込まれ、カムイグラの大地へとやってきた。絶望の青がイレギュラーズによって踏破されるまでは帰れる見込みもなく、故にそれまでは各地を転々とし自分なりに見聞を広めていた訳だが――
うん――ちょっとね。季節も夏になってね。水着もね。あったのでね。
夏祭りがあるって言うしね。ちょっとね。
楽しもうかと思って海の方に泳いでいったんですよ。そしたら。
「どどどどどどうしてこんな事に――!! わ――ッ!!」
周囲にサメが湧いちゃったんですよ。うん!!
正に一瞬、電光石火の事であった。浜に戻れそうな余裕もなく、近付いて来る恐怖。
咄嗟にしがみついた丸太と大波に巻き込まれ事態急転二転三転。
無人島に流れ着き、その地における大冒険の末にイカダを作りてカムイグラ本土を目指していた――ら。またその帰り際にサメが襲ってきた。あ、あと少しで辿り着けたのに――!!
掲げる旗はSOS。寄って来るはサメとカモメ。やめて突かないで。
「うううこのサメ達引っ繰り返してこようとするし、イカダの紐もなんかほつれてきたし……」
大ピンチってヤツである。
スカーレット――彼女はイレギュラーズではある、が。彼女は特異なギフトを宿しており、どこまで経験を詰もうと戦闘能力の向上が見込めない特性を宿しているのだ。故に精々『なり立て』のイレギュラーズ程度の力しかなく、ここに至るまでに一苦労も二苦労もして体力が削れていればサメ達を強行突破する事も出来ない。
魔物の類ではなさそうだが、それはそれ。海を素早く泳ぎ、獰猛たる性格があれば脅威である。
視界に見えているのは夏祭りの地、神ヶ浜。
しかし隅であるからだろうか、人影も見えず助けの声はとても届かず。
ああ……あそこまで辿り着ければ今頃屋台巡りも楽しめていたし……
「海も謳歌できてたのに……うわーん!!」
天に向かって声を立てれば、眩しき太陽が目に涙を。
故に彼女はまだ見えていなかった。
視界の端。そんな彼女の様子に気付いた――『貴方』がいる事に。
- 祭事の陰で鮫と少女と完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2020年07月31日 22時55分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
海は広大だ。だって海洋王国から見れば、その先には豊穣の地があったぐらいだもの。
だから多少不思議な事が起こったって仕方がないけれど――
「はっ、アレは!! スカーレット・トワニ・ヴァージンロード殿!! 行方不明になっていたスカーレット・トワニ・ヴァージンロード殿じゃないですか! 楽しそうですね! カムイグラの地を満喫してるみたいじゃないですか!! いやぁ良かったなぁあんなにはしゃいじゃって――え、何? ピンチなんですかあれ?」
遊んでるのかと思いましたよ! イカダから微かに聞こえてくる『たすけてー!』という気配に『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)は高笑いを。いやだってまさかSOS出してるとは思わないですし! しかも行方不明者だった人が!
「およ、何か海の上で救けを求めておる女子がおるな? 近くにいるのは……鮫か。
イカダを揺らされ遊ばれておるの。飽きて食料になる前に助けてやるべきか」
「……何やら鮫に襲われて大変な様子。仕方ありません。さぁ近くより小型船を用意してきました――足が無い方はこれに乗って、向こうへと往きましょうか」
やれやれとばかりに『蹴鞠スト』鷹乃宮・紅椿(p3p008289)は言葉を紡ぎ『流星光底の如く』小金井・正純(p3p008000)と共に小型船をそれぞれ近くより。これで泳げなくても問題なくあちらへと往けよう。例えば、ほら。私巫女だから泳げませんし。ね?(?)
「まぁ荒事が得意ではないというのは、僕もよく分かるものです。なんだかちょっと余裕がある様な気がしないでもないですが、とりあえず助けてあげるのに賛成ですね」
故に『喰われた半心』カッツェ・サンドーラ(p3p007670)は正純の船へと同乗させてもらい、海へと。サメは海においてかなりの速度を出すという……ならば船の上から矢を射かけるのが正道だ。まぁもしかしたら小型船が紡ぎ出す波の影響でイカダを巻き込む可能性もあるが些事である些事些事。
「それにしてもカムイグラにもサメっているんだね……
なんだかどこでもいるなぁって気分になっちゃうよね。この前なんて洞窟の中に出たし」
それははたしてサメなのか『サメ召喚士』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は顎に手を添えながら過去を想起する――あちこちに現れるサメ・サメ・サメ。なんだか頻繁に会ってる気さえしてきちゃう。
「――でもきっと気のせいだよね。人間、生きてればサメに会う事ぐらい珍しくないし」
うんうんと自己納得。その隣ではルル家がやたらめっさ凄い怪訝な表情と視線でスティアを見ているが、なんでだろう。ちょっと理由がよく分からないなぁ……
ともあれ目の前のサメ事象は人を襲っている次第。とにかく救助せねばならず。
「やれ、あの方が神隠しにあった方、ですか……一時は大騒動になったと記憶しておりますが、よもやこの神威神楽の地に召喚されていたとは。いえ、何。お元気そうなのはなによりですが」
「確かになによりだが――いやしかし、なぜイカダなのかは知らないが流石にサメが近くにいるとは危険だな。早々に救助しなくては……」
不吉な黒い彼岸花によってどこぞへと消えたと彼岸会 無量(p3p007169)は伺っていたが『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)の眼にも映る彼女の様子は、意外の他元気そうだ――ピンチではあるのだけれど。
とにかくこのままでは折角助かった命が海の藻屑になってしまう。
それにスカーレットという少女は――『彼女』の知人であるとジョージは視線を齎し――
「スカーレットはあんな所で何をしているんだ?」
直後。言葉を紡いだのは『戦神凱歌』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)である。
スカーレット。彼女の顔と名前は良く知っている――ああ知人だとも。かつて神隠しでこの手に掴めなかった、正にその人。それが今や、やっほー! と言いながらイカダに乗って新しい水着来てるわバカンス楽しんでるわ凄い状況なの? ホント?
思わず顔が利き腕じゃない方で描いた絵みたいな表情に……いや気のせいだろう多分!
「ふっ。だが、その前向きさ……何処までも愛らしい。助けに行くか」
陽射し避けの為の白き帽子を脱ぎ捨てて。
ベルフラウが換装するは――夏の為の衣。水を弾く人類の英知。
蒼き、いや黒きともいえる衣には胸元に彼女の名が記されていて――こ、これは!
そう! 一言でいうならば彼女が身に纏うのは伝統と信頼の『スクール水着』である!!
胸元には『べるふらう』の名前も完備。やったねローゼンイスタフ卿!!
「ゆくぞ! バカンス気分は後に取っておけ!
事を楽しむのは――全てが一件落着した後だ!!」
説得力が全くないです『べるふらう』さん!!
●
夏の日差しが凄い中、スカーレットの体力は限界に近付きつつあった。
上は真夏の日差し。下は獰猛なサメ達。ついでに頭にはカモメがいて突いてくる。
ああここで餌と成ってしまうのか――そんな事をうっすらと思っていれ、ば。
「失礼、ヴァージンロードさん。動かないでくださいね」
そこへと往くは無量だ。
空を舞う。途中まで船に乗っていた無量は、そこから先行しスカーレットの近くへと。そして見るは第三の瞳――全てを見透かすかのような不快感をサメに与え、自らへと注意を引き付けるのだ。先に彼女を連れて、浜辺まで連れて行った方が良かっただろうか、とも思ったが。
「何。手早く救助すればどの道同じ事だ――奴らもそう多くはないしな」
ジョージもまたサメ共の視線をスカーレットから外さんと前へ出る。
とにもかくにもまずはスカーレット嬢の安全が最優先だと。
「逃げるなら良し。逃げぬなら、貴様らを三枚卸にしてくれよう……!」
放つ一閃は空を両断し、そのまま波をも穿つ。
直後、ジョージは海中へと飛び込むのだ。彼の姿は――コウテイペンギンそのもの。
この姿によってサメとの水中戦を試みる。ペンギンとサメ。絵面だけでいえばとてもペンギンが勝てる道理はないが、このペンギンはイレギュラーズであれば百戦錬磨のペンギンである。水中戦ぐらい幾らでもこなして見せよう……!
「うむ! がぼ、ごぼ! こういう時に、飛べたり泳げたりする者達は便利で良いな!
ぶはっ! だが生憎と私に翼はなく、ヒレもない! クロールで挑ませてもらうぞ――!」
更にそこへクロール全力で現場へと駆けつけるベルフラウの姿が見えた。
無量の様子を見たりすればちょっと羨ましかったりもするものだ。私の背中にもジェットとか唐突に生えぬだろうか。いや、足から噴射でも良いな。足から噴射しつつ、空に仁王立ちするのも中々乙なモノである。
そんな思考をしながら彼女もまた敵を誘き寄せるかのように動き回る。
戦場を賛歌する様に。或いはサメの撒き餌の様に。
ジョージのペンギン姿も混じればホントに撒き餌沢山あるみたいなもんである。サメも意気揚々と噛みついてくるが――この程度に負けてなるものか。水を吸って滅茶苦茶重くなった旗を何とか海面に掲げて……ていうかソレをクロールしながら持ってきてたの!? 凄いな!?
「がぼぼ! 後は頼んだぞ――!!」
「やれやれ、旺盛な動きじゃのう。ともあれ後はスカーレット殿も安心させてやらねばな」
防御を固めるベルフラウ。その直後に動くのは紅椿だ。
船から飛び降りイカダの元へと。水中に潜むサメに斬撃を放ちながら――
「もう大丈夫じゃぞ、安心せい。皆とても強いからな。すぐに安全な所へと移ろうぞ」
「わ、わーん!! ありがとう――!!」
「ええ! サメを追い払うのは任せてください!! ええ、やってみせますとも!
ええ! 多分こっから射撃しても大丈夫ですから! 多分!!」
「当てないでくださいよ? 本当に当てないで下さいよ? 掠らせても駄目ですよ?」
そして同時。正純の船もスカーレットへと。戦場はカッツェの姿もあり。
あまり波風立たぬ様に慎重に運転し、イカダの傍へ。
なんとも不安になる言動をしながらも、彼女の顔は自信に溢れている。もしちょっとうっかりして狙いがサメではなくイカダにあたったりしたら大変な事になるが、まぁそんな事ないだろう大丈夫大丈夫と――紡ぐは天狼星。
オリオンを形作る一撃がサメの周囲へと。イカダが揺れ、スカーレットの小さな悲鳴が聞こえるが、カッツェの矢も射かけられればサメは近付けぬ。いざとなれば治癒術の備えも万全だ。
「さぁすかー……とわさん? ええと、とにかく船へ! 手を伸ばしてください、大丈夫ですよ!」
そこへ伸ばした手が掴めば一気に引っ張り上げる。ふぅ、良かったです。泣き顔が可愛、可哀想ですし早く助けねばと思っていた所ですし、うっかり手を伸ばした時に落ちたりしたら救助者が二人に増える所でした……!
とにかくこれでスカーレットは救助出来た。後は――
「あのサメ達をなんとかするだけですね! 普通サメなら船の上にまでは上がって来れないでしょうし、本来なら放置していても問題ない筈ですが……今回は特に気を付ける必要がありますから……」
ねぇ、分かるでしょう? と空中を飛行するルル家が視線を向けるのはスティアだ。一方の彼女は、えっ? とばかりに首をかしげているが本当に心当たりがないのですか貴女、貴方!
油断ならない。あのサメの伝道師たるスティア・エイル・ヴァークライトが近くにいる以上、サメ達も飛行能力を使ってきてもなんら不思議ではないのだ。なんなら水着を着込んでさも人間側の味方ですよという顔をしているスティア・エイル・ヴァークライトそのものがサメの黒幕として襲ってきても不思議ではない。いや流石にそれはないですか。うーん、でも、うーん。
「まぁとにかくサメ達を一掃しますよ! ファイヤ――!!」
一抹の不安を抱きながらも、ルル家は海中へと一斉掃射。
サメ達をどんどん追い詰める。如何に素早いとはいえ、所詮二体だ。
スカーレットを救助してしまえば後はどう料理するか程度。
「サメちゃん達……まだ諦めてないみたいだね」
だがサメ専門家のスティアは見た。彼らの眼から闘争の意欲は失われていない。
治癒の術を味方――あ、人間ですよ? ――に振舞いながら、さてどうしたものかと思案し。
――飛び込む。彼女もまた海中へと。
こんな時の為にと水着を着込んでいてよかった。水中でも動きやすく、そして。
「サメちゃん。落ち着いて……もう君達じゃあの子は食べれないんだよ。わざわざイカダを揺らして怯えさせる動きをしたのは、悪手だったね。これ以上悪さをしないなら攻撃しないけど……?」
彼らと分かり合えないか対話を試みて――
瞬間。サメの牙がスティアへと襲い掛かってきた。聞く耳もたずか!
「むー、あくまで立ち向かってくるって言うの!」
ならば容赦はすまい。物分かりの悪い子には、相応の教え方と言うモノがある。
同時。サメ達の背筋に緊張が走った。
それはスティアより発せられる意思によってのもの。サメを威圧する気配が波の様に。
――言って分からないなら、説得する必要がありそうだね――
そんなテレパシーの様な一言がサメの脳内へと。
思わず怯えるサメちゃんズ。だが後悔してももう遅い。
――スティア・エイル・ヴァークライトが命じる!
「サメちゃんよ! 私に使役されよ!」
昔から天義の偉い人も言ってたもん。困ったら最後は説得(魔法)だって。
スティア渾身の練り上げられた魔力が海中で炸裂。
直後、海上に大きな――水柱すら発生させた。
●
事態収束。皆して浜の方へと。
豊穣は今、夏祭りの真っ最中である――ならば事が片付いたなら後は祭りでも楽しんで……
「ところで今回の事件……黒幕がいると思うのですよ」
だが、とルル家は沈痛な表情を携えて焼きそばを啜る。あ、これ結構おいしい。
ともあれもはやその『黒幕』とは何か――語るまでもありますまい。
数々の悪行の証拠たるこの書物(召喚魔法失敗譚)を披露するまでもなく!
「今そこでサメをテイミングしている怪しさ天元突破の幻想種! スティア・エイル・ヴァークライト! 貴方がサメを放った犯人です! 犯人でしょ! 貴方が! サメの! スカーレット・トワニ・ヴァージンロード殿をハメた! サメの! スティア・エイル・ヴァークライト殿!」
「むー! なんだよそれー! 私じゃないもーん!! 関係ないもーん!!」
「じゃあ!! なんですかその!! 懐いた!! サメ達は!!」
海の近く。ルル家の視線の先には水着姿、かつ。
サメの背に乗っているスティア・エイル・ヴァークライトである!!
あの戦いの後なぜか懐いたサメ達が付いてきたのだ。スティア・エイル・ヴァークライトに。ボールを投げたらイルカみたいに鼻先に乗せようとするし、これ芸を仕込めるんじゃないか? ともあれどう考えてもスティア・エイル・ヴァークライトが黒幕ですね。本当にありがとうございました。え、違う? またまた御冗談を。
「…………まぁ事の真相はともあれもはや被害が出ないのなら良いだろう。それよりも夏祭りでも巡ろうか。うむ、共にどうだ――? ここはまた、海洋の夏祭りとは大分違う趣に溢れている様だ」
「いいですね、ええ! 状況が落ち着けば後は楽しむのみ、ですよ。祭りと言えばこの前は星祭りの方に出たのですが、あの時は従業員側だったですし、魔種が攻めて来た時にはお祭り所じゃありませんでした……あ。りんご飴がありますよ!」
「ほう。これは良さげなものだな……」
引き続き可愛らしいペンギン姿で正純達と歩くジョージ。人間の姿でもまぁいいのだが……あちらのほうは少し『圧』が強い事がある故にと、ぺたぺたと足音を鳴らしながら露店の方へ。
この身でも串などは訓練すれば持てるものだ――正純の薦めたりんご飴にイカの串焼き、様々なモノがあちらこちらへと。この美味たるタレはカムイグラ特有のモノであろうか? 実に香ばしい。
「後は、夏の風物詩としてかき氷も欲しいものだな――やはりアレで頭を痛めねば夏ではない」
「おお。然り然り。しかし食べ物だけでもないぞ? ほれ、金魚すくいやヨーヨー釣り……ほほうあそこには射的もあるの。なんとも良き光景じゃ」
かき氷を探すジョージ。共に視線を巡らせる紅椿の眼には、むしろ遊戯の方が映える形か。
金魚すくいは上手くいかねば網が破れる。射的は悪ければ一つも取れぬ。
だがそれでも良いのだ。楽しむというのは『そういう事』でもあるのだ。
「そう。こういう場は取り過ぎ注意。やり過ぎ厳禁ですからね。
……しかしこの射的、なぜか当たりませんね。弾の方に不備があるのでは?」
カッツェはその辺りをよく理解している。特に彼は普段より弓を使う故、的に当てる遊びは得意だ――けどこの射的はなぜか当たらん。店主の作為を感じるぞ……
ああ久しい。久しい様な気がする。こんな風に、祭りを巡る感覚は。
彼には『喜』が無い。どこかに落としたかのように表情は変わらないのだ。
祭りを巡って、自然に振舞う事が出来る者達が羨ましくも見える。
それでも理解は出来るから。
「……ええ。きっと、いつか」
いつか自分も、そちら側に。
必ず取り戻して見せると心に近い――今は楽しむ人々の顔をしっかり覚えて。
そして――
「――どうじゃ? お祭りは楽しめておるか?」
「うん~……なんとか、ね。これも皆が助けてくれたおかげだよ!」
「それは良かった。抱えて浜辺までお連れした甲斐があったというものです」
紅椿の視線の先にはスカーレットが。どうにも、イカダ漂流の緊張からか突かれているようだが、それでももうサメの恐怖はなく純粋に楽しめている様だ。
そんな彼女を浜まで連れて行った無量は――露店を見て回るメンバーの最後尾から。
付いて回る様に歩を進める。祭りとは、如何にして楽しむものなのか……
彼女はソレを知らぬ故に。
物を食べ、試してみて。祭囃子に耳を傾け――五感で雰囲気を感じとるのだ。
折角の祭りの場なのだ。楽しめねば、不幸であり。
「先にこの国に来ていた卿から見て、この国はどうだ?」
そしてベルフラウがスカーレットへと言の葉を紡ぐ。
民草は、今この場で笑っている者たちの様に広く穏やかか? もし、違うというのであれば――
「この国は……うん。どうなんだろうね。鬼さん達の扱いが酷い気はするけれど……
でも『霞帝』って人がいた時代は、大分ソレもマシだったみたいだよね」
スカーレットがこの国へと至った時には既に眠りに付いていた霞帝。
彼が再び目覚めれば、真に奥底から誰もが楽しめるだろうか――?
「そうか――」
ベルフラウは瞼を閉じる。一拍、二拍。呼吸数回程度の沈黙の後に。
「――まあ、それはそれとして腹が減ってはなんとやらだ。
何が食べたい? 漂流して腹も空いて居よう。御馳走する」
「わー! ホント!? じゃあね、後はあれ! かき氷食べたいな!!」
今一時だけはこの場を純粋に謳歌しよう。
目の前の事を成せない者に、先にあるものを背負えるはずが無いのだ。
先往くジョージや正純達がかき氷を手に取っている。
そちらの方へと合流するかのように、祭囃子の中を――彼女の歩が、向いた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
祭囃子の喧騒の中に、楽しき歩は紡がれて。
スカーレットちゃんは無事に救助されました!! やったね!!
彼女はまだ暫くカムイグラに居る事でしょう……何が起こる事やら。
ありがとうございました!!
GMコメント
はわわ。海の上でピンチな人が!!
救出してあげてほしいのです!!
■依頼達成条件
スカーレット・トワニ・ヴァージンロードの救出。
■戦場
神ヶ浜付近。夏祭りの地ですが、比較的隅の方であるのか人気は少ないようです。
ちょっと離れた海の上でスカーレットちゃんが怯えています。
周囲にはサメが幾つか。でもイカダはもう少しぐらい保ちそうです。
サメを無事に倒す事が出来たら後は夏祭りでも楽しみましょう!
少し歩けば屋台も出ている様ですし、或いは人気のない所で思いっきり海を楽しんでもいいでしょう。この依頼は戦闘も混じりますが、敵の数はあまり多くなくさほど苦戦はしない事が見込めます。無事に倒せれば後半はお祭りを楽しめます!
■カムイグラシャーク×2
カムイグラの鮫。名前がそのまんますぎる……
獰猛な性格をしており、水中では動きが素早い。
……とはいえ特別に強い魔物と言う訳でもないので、イレギュラーズの皆さんなら慎重に戦えば特に苦戦するような相手でもないでしょう。這う這うの体のスカーレットちゃんにはちょっと以上に厳しいですが。
■スカーレットちゃん
スカーレット・トワニ・ヴァージンロード! スカーレット・トワニ・ヴァージンロードちゃんじゃないか! 神隠しに遭って行方不明になったけど案外そんなに危険でも無くてあちこち余裕で歩いてたら鮫に出会ってしまったスカーレット・トワニ・ヴァージンロードちゃんじゃないか! わーん助けてー!
特殊なギフトを宿しており、戦闘能力が伸びない特徴がある。
その為あんまり強くない鮫でも彼女には厳しくて……あ、イカダが壊れそうで怖がってる。かわいいなぁ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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