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シナリオ詳細

迷い森・招きて血啜るホトトギス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 てっぺんかけたか、てっぺんかけたか。


『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、鳥の声に耳を傾けている。
「この国ではあれが風雅なんだってさ。まあ、いっぺん聞いたら忘れられない声ではあるな」
 もちもちと餅菓子を食べている。
「さて――山越え手前に宿場村があるんだけどな。そこに伝わる話がある。まあきいてくれや」


 夏が盛りに向かう季節に、危うく遭難する所であったと命からがら戻ってきた旅人達が居た。
『忍音が聞こえてから迷い、廃寺へ踏み入ってしまったが恐ろしくて逃げて来た』

 てっぺんかけたか、てっぺんかけたか。

 見上げても空と変わり映えしない梢ばかり。グルグル歩いて、ようやく許されたように廃寺にたどり着いたという。
 入った瞬間、嫌な感じがしたそうだ。
 小さな寺の朽ちた床には仏像が何体か転がされていたが、その頭部、いや、頭頂部がきれいにえぐられていたそうだ。

「この国の仏像――信仰対象になる像――は、こう、こう、一段盛り上がってんだと。それがえぐれてたんだってよ」

 てっぺんかけたか、てっぺんかけたか

 で、『あ、これは迷ったんじゃない。妖に何かされてる』と思った旅人達は、惜しげもなく魔よけの札やらお守りやらを投げつけながら無我夢中で山から駆け下りてきたんだとさ。備えあれば患いなし。どっと払い。と話に落ちが付くんだが――実話なんだよなこれ。は~い、皆さんお仕事ですよ~」


「――という訳で。こちら、その筋にお詳しい祇・紙萃さん。伏見さんと懇意だそうで、いや、話が早いわ、来てくれるわで助かる―」
 この情報屋、式部省にも入り込んだのか。
 失礼を。と、降りていた御簾の向こうから古書の八百万が顔を出す。
「拙もお顔を見とうございましたし――」
 年端もいかぬ娘のようななりで、式部省の万年出世拒否文官――まさしくお局様だ。行人に新たな伝承の催促をしに来たのだろう。知識欲の権化は常に飢えている。
「良い茶菓子があると誘われましたので馳せ参じました」
 情報屋が得たりと笑っている。釣ったな。風土をよく知らない土地での伝承の説明がめんどくさいからと、菓子で釣って連れてきたな。
「かような史実は、どうで御座いましょうか。と、こちらの情報屋さんに語っていただきましたが――嘗て、かの山では人を惑わせ食らう妖鳥が居たが廃寺で調伏された。と、記録にございます」
 これ、この通り。と、抱いている本は閉じ糸が焼けている。相当古い。
「それがまた出たとして、何の不思議がありましょうか」

 てっぺんかけたか、てっぺんかけたか。

「迷子にされて、疲れ果てたところで寝床の廃寺に誘導。頭のてっぺん割られて中身を食われないように、ちゃんと対策していってくれよ」
 情報屋なトントンと指で頭頂部を叩いた。
 方向音痴は事前に申告するように。と、情報屋は付け加えた。
「できるだけ一緒に行動するんだぞ。ボケっとして孤立するなよ。一人で廃寺についたなんて言ったら、速攻おいしいご飯ルートだからな」
 つうか。と、情報屋は言う。
「俺が件の怪鳥で、自分の縄張りに手練れっぽいのがぞろぞろ来たら、丁寧に分断して、各個撃破する」
 基本。

GMコメント

 田奈です。
 リクエストありがとうございます。
 森の中で仲間の手を離さぬよう。きっと、廃寺にはたどり着けるから。ただ、メンタルバテバテは避けたいよね!

怪鳥「テッペンカケタカ」
 獲物の方向感覚を狂わせ、消耗させた上で、自分の巣(廃寺)に誘い込み、頭に穴をあけて脳みそちゅうちゅうします。夜になく鳥。【暗視】あります。
 スキル<テッペンカケタカ>
 方向感覚がなくなり、【必中】【Mアタック300】、【呪い】、【泥沼】
 命中すると、仲間からはぐれます。

特殊ルール<迷い森>
 *現実の森に、入った人間を惑わせます。
 *10ターンで抜けられますが、毎ターンの最初に<テッペンカケタカ>が発動します。特殊抵抗判定をします。
  判定に失敗するとはぐれます。同じタイミングではぐれた面子は一緒にいられます。一度はぐれると廃寺につくまで仲間と合流できません。
  幻覚看破系の非戦スキルを持っていれば、特殊抵抗判定に有利に働きます。
*判定でファンブルすると、【致命】が追加されます。

 はぐれたPCは、ショートカットされて廃寺に導かれます。複数いた場合、誰かをおいしくいただく間、周辺をグルグルさせられます。
 BSが解除されたPCにはホトトギスの居場所――廃寺の位置が分かるようになります。一人で敵の前に飛び込まない様、相談してくださいね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 迷い森・招きて血啜るホトトギス完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月08日 22時26分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
篠崎 升麻(p3p008630)
童心万華
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ


 頬に当たる風が痛い。高高度まで上がっている。件の森ははるか眼下だ。
『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)は、科学と幻想がまじりあった世界からのウォーカーだ。
「現実の森に入った人間を惑わせるって言うなら、森に入らなきゃイイだろの理論っ! 我ながらアホな事を考えたって思うけど、少しでも可能性があるなら試す価値はあるもんね、きっと」
 飛行を駆使して上空から廃寺を確認し、地上に垂らしたロープを使って仲間を誘導しようと思っていたのだが。
「廃寺、どこ?」
 建物があるのだから、木々に隠れていたとしても絶対空白地帯はあるはずなのだ。
 あるはずのものが見えない。
「うっそだあ。そんなのおかしいよ。だって絶対あるはずなんだもの」
 時間が刻々と過ぎていく。研ぎ澄ませた感覚を併せ持ち、サイバーゴーグルを駆使して視覚を電子的に増幅させても廃寺がどこにあるかわからない。
 あるいは、見えているのにそれが廃寺だと認識できなくなっている。
 時鳥の土俵に上がらなければ、時鳥を狩れないのだ。この森はほととぎすに味方している。空を行けばホトトギスの害に遭うことはないだろうが、それではホトトギスを倒せない。
 虎穴に入らずんば虎子を得ず。ここはカムイグラ。妖ひしめく土地である。


「――という夢を見たんだ」
 お疲れさまでした。花丸をを迎えて仕切り直しだ。
 森の入り口である。
「お寺までの道案内を頼みたいんだが――」
『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は、精霊に愛されている。危ないと感じたら逃げてくれよ。と、付け加えた。
 森の入り口で快諾した精霊が急にくるくると回ってばたりと倒れた。急速に弱っていく。この森は精霊を拒んでいる。つまり、「自然」ではないのだ。あらゆる意味で。
「………何か、いやーな予感がする森ですね、これ」
 無理を言ってすまなかった。と、精霊をいたわる行人の手元をのぞき込みながら『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)が眉をしかめる。
「てっぺんかけたか……うーむ、風雅かのう? 豊穣のセンスはよく分からんのじゃ」
『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)がう~んと唸った。妖精が魔法で森を迷路にするのは新緑では定番のおとぎ話だが、この森は湿度が高く、闇が深い。さわやかさに欠ける。
「天辺、欠けたか?でしょうか」
 『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は、空を見上げた。
「花丸さんがご覧になった通りなら、まさしく空からの救援は望めない――天辺が欠けている状態ですね。増援は望めないということです」
「メクレオの持ってくる依頼は難儀なことが多いが、今回は群を抜いて厄介そうじゃのう」
 正確には、メクレオの依頼の中でもとりわけ面倒なのに限って首を突っ込んでいるのだが、アカツキには自覚がないらしい。
「アカツキ、そのまま両手を上げてくれ」
『Black wolf = Acting Baron』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は、最善を尽くす。
「これがはぐれ対策になりゃいいけどな」
『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)自分できっちり結ぶ。
「そうですね。こんなこともあろうかと用意してきて正解です」
 ウィズィは自分が最後尾を歩くようにした。
「十分に対策出来たとは言い辛いかも知れんが、無いよりはマシだろう」
 ロープで互いを縛った。腰縄は非常に問題はあるが背に腹は代えられない。戦闘の時は各々切ればいい。
「ん」
 アカツキはリンディスに手を伸ばした。
「やれることはやっておきたい。ので」
 おててをつなぎましょう。という言葉足らずなアピールである。
「こ、怖いわけではないぞ?」
 アカツキの手が汗で湿っている。
「ファミリアーを飛ばしています。高度があると鑑賞できない森みたいなのでギリギリ低空で」
 ウィズィの視界とリンクしている鳥の視界に今のところ異常はない。
「厄介な攻撃が飛んでくるみたいじゃが、気を確かに持って抵抗するのじゃ。誰かが迷ってしまいそうなのを見つけたら咄嗟に手を繋げられるといいのじゃが、一人で迷うことだけは避けたいのじゃ」
 つないだ手がキュッと強く握られた。
「敢えて超聴力で鳴き声以外の音も収集し、現実の音に耳を澄ませて取り入られないようにします。多分、泣き声による催眠でしょうから――」
 ウィズィは万事において最善を尽くそうとする。思いついたことは全部やる。やったことは裏切らない。実を結ばなくても経験はウィズィを強くする。
「周到だな」

――テッペンカケタカ――
ホトトギスが鳴いている。 

 ベネディクトは顔を上げた。
「え?」
 アカツキがきょとんと言った。あんなにしっかりつないでいた手が。
「どういうことですか」
 ウィズィが辺りを見回した。聴覚にも視覚にも異常はなかった。列から離れる者もなく。ついさっきまで。
 五人がいなくなっていた。地面に千切れたそれぞれが用意した縄の繊維が落ちていた。
 「――――」
 ほんの一瞬だった。つい今しがたまで息遣いを感じていた。気配を感じていた。だが、今、陰りゆく森の中、三人で顔を見合わせている。
「廃寺に向かおう」
 ここに立ち尽くしていていいことなんてなかった。
「消えたのはこっちだという可能性もある。最終的にはホトトギスは俺達を呼び寄せる。行こう」
 歩き出す。道は一本なのだ。この道を行くしかない。
「なあ、妾の仲間を見なかったかの。髪が長くて黒いのとか、人形抱いた忍びとか、妙に旅慣れてそうなのとか、やたらと元気なのとか、妾のようにほっそりとしてかわいらしい――」
 アカツキは草や木に話しかけた。しかし、応答がない。違和感が。この木と草は植物ではない気がする。意思が通じる気がしない。
「二人とも――」
 ベネディクトがいない。いや、体に負担をかける術は使っていないのに腹の底にたまる倦怠感。
「ウィズィ。あー、具合悪くないかの?」
「消耗してます――ね」
 体感、影踏みを発動させた以上の消耗を感じる。
「妾たちがベネディクトを一人にしてしまったのかもしれん」
 こういう状況で多分一番残りやすいのはベネディクトだ。そして、一番孤立させたくないのもベネディクトだ。あいつはヒトがワイワイしているところにほおりこんで丁度いい。弱らせるとあそこのうちのメイドが怖い。
「前にもあったぞ。バラバラにされるお化け屋敷。まったく、メクレオの持ってくる奴は――」
 アカツキは肩を怒らせながら歩きだした。
「ベネディクトに余計なことを考えさせるのばっかりじゃ」

 ――テッペンカケタカ――
 ホトトギスが鳴いている。

「おい。他の奴らはどこに行った?」
「さあ? 僕は動いた覚えはないね」
「もうせっかちだなぁ。どこ行ったんだろうね」
「どこにも行ってません。だって、アカツキさんと今の今まで手をつないで――」
「面妖な」
 八人が、五人になり、次の瞬間には三人になっていた。
「いたよね、リンディスと鬼灯」
「いたね。今いないけど」
 行人と升麻と花丸は顔を見合わせた。
「まったく、メンドクセぇ事しやがって……」
 升麻は余剰な細胞群を破棄して、全体の調和に振り分けた。少しばかり胸焼けする愚背に腹は代えられない。
 道案内してくれている精霊の様子がおかしい。発狂寸前。自我が揺らいでいる。つまり、ここが精霊がまともに存在できる場所ではないという証明だ。
「無理させてすまないな。もう少しだけ付き合ってくれ」
「行人さんは、元気?」
 花丸は、サイバーゴーグルの下でニコっと笑った。
「ああ、少し、こいつに当てられたが。つまり、下手を踏んだのは俺達だということだな。すまんが手を繋がせてもらっていいか」
「手?」
 升麻が、あ? と言った。
「ロープは無駄のようだ。はぐれる訳にはいかないから」
「OK! 升麻さんは行人さんとそっちの手をつないで」
 花丸は升麻の手を取った。
「よし。これで行けるところまで行こう!」
「はぐれて移動する際に切れたってんなら、この縄の方向に廃寺がある気がするが……」
 道の向こう。行人のギフトと照らし合わせても、この道を進むのが最適解なのだ。

 ――テッペンカケタカ――
 ホトトギスが目の前にいる。

「ここは――」
 朽ち果てた木造の宗教施設。これが本で見てきた廃寺。
 リンディスは、自分が一番最初にはぐれたことを自覚した。餌と認めたら待機などさせぬということか。状況まで致命的だ。
『一人で廃寺についたなんて言ったら、速攻おいしいご飯ルートだからな』
 情報屋が言っていたことが脳裏で反響する。全員合流してからの突入が最善主だったというのに。
 巨大な鳥が、屋根にとまってじっとリンディスを見ている。
 正確には、リンディスの頭頂部を見ている。
(廃寺の近辺で迷わせる…ということはある程度その周囲に他の味方の方もいる可能性が高い)
 ならば、ここは自分が絶対探し出そうとしていたように、仲間が合流してくれることを信じて粘るしかない。
 幸い、消耗は少ない。後方支援が身上だが、自分一人支えられないようで何のレイザータクトか。死ぬまで負けない。死んでも負けない。極限闘争心に火が付いた。

――テッペンカケタカ――
 ホトトギスが鳴いたような気がする。

 ベネディクトは、目の前の道を歩いている。
(伏見なら、この森をどう見るだろう)
 そばにいたら、真っ先に相談したい。
(俺はこの森に入ってから、首筋辺りがずっとちりちりしている様な感覚を感じるんだが)
 何もかもに見張られている気がする。いつだったかの籠城戦でもこんな感じだった。囲まれている気がする。まったく根拠が説明できないのだが。

――テッペンカケタカ――
 ホトトギスのくちばしが自分の血で赤い。

 額から顎まで滴る血が気持ち悪い。必ずそこを狙われるのはわかっているがそこをガードするのは構造上難しい。ならば行動させてケアした方が速い。頭抱えてしゃがみこんでいる場合じゃない。
 リンディスが支えるべき戦う者が飛び込んできた。
「ああー! 心強い! 一人でしたら逃げの一手選択でした!」
 だって、嫁殿――章姫を守らなきゃならないから。
 「戦っている側に」合流してくれた。漢気に報いなくてはならない。
「鬼灯さん、状態は」
「無傷。まだ死に物狂いになるには早いってとこです。まずは封印してやろうと思いますが、いかがか」
「お願いします。支援はお任せを」
 「気力つきないようにするから滅私奉公しろってことですな?」
 リンディスは、まあ。と、にっこり笑った。
「忍びの方は命を賭して任務に徹すると書物で読みました」
「それ言われると弱いですな。では面と向かって戦える方が来るまで防戦ということで!」
『悪い鳥さんにはお仕置なのだわ!』
 章姫がそれを望むなら、鬼灯はそうするのだ。

――テッペンカケタカ――
ホトトギスがしばらく鳴いていないような気がする。

「心強いぞ、ウィズィ」
 つないだ手は離れていない。今のところ。
「私、誰かが、はぐれそうになったら呼び止めよう。歩きだしたら体をつかんで引き寄せようと思ってたんです」
 出来るはずですよね。そこにいたんだから。と、この間まで町娘だった少女は言う。
「この森は変じゃ。森じゃないと思う。妾は森を友とする幻想種だがな。この森と友達になりたいとはこれっぽっちも思わん」
 だから。今考えると、と、アカツキは言う。
「ひょっとして、あの時、妾はちゃんとリンディスの手をつかんでいたんじゃないか? だが感覚を狂わされてつかんでいないと錯覚してしまったんじゃなかろうか。自分でリンディスの手を離したんじゃないかと思うてな」
 ウィズィはアカツキの手を握りしめた。
「いいえ。アカツキさんは消耗していないのですから、錯覚を跳ね飛ばしたんですよ。離したりしていません」
 ウィズィはアカツキの横顔を見る。
「アカツキさん。約束してください。もし、アカツキさんが廃寺に先についても突入は私が行くまで待ってて下さい。中で戦闘が始まっていても」
 アカツキの戦闘能力は、誰かが盾になった時にこそなりふり構わず全力を出せるから。
 己の生存が最優先。冷たいチャートが脳裏に展開する。自分の感覚も信じられない中、信じるのは今妖に立ち向かっている仲間の粘りと情に流されない怜悧な戦力計算。アカツキは、ウィズィの真剣な顔にうなずいた。

――テッペンカケタカ――
 ホトトギスの誘いをぶっちぎってやった。

「待たせたな。今から、テメェの頭を欠けさせてやんよ!」
 鬼灯いうところの面と向かって戦う人だ。升麻は花丸と行人からはぐれたのだ。これで陣が体裁を整えた。
「合流まで粘りますぞ。五人集まるまで結構な時間と思いますが」
「上等だ。こちとら、持久戦の方が得意でね。完全防御で行くぞ。ランダム且つ徹底的に左右へと揺さぶり、直撃を避ける。仲間が来るまで持ち応えて、ついでに相手の手の内を可能な限り把握」
「最高ですな」
 
――テッペンカケタカ――
 ホトトギスのの誘いには乗らない。

 精霊の様子は落ち着いている。行人の存在が支えになっているからか、自分に消耗の気配は見られない。
「花丸は元気だな」
「そこはイージスだし。ほんとは上空から丸っとお見通しだーってしたかったんだよ。公上空からロープ垂らしてみんなを引っ張るの」
「凧に引っ張られるような」
「そうそう。絶対いけると思ったんだけどな――あれ。アカツキとウィズィじゃない?」
「遅い! 待ちくたびれた!」
「そんなことはないですよ。ベストです」
「――ベネディクトは」
「まだじゃ。ショートカットに遭ってないのかもしれん。ということは、あいつ、やっぱり一人で――」
 精神的に隙がないというか、踏み込む余地がない。

――テッペンカケタカ――
 ホトトギスに惑わされなかった男が来る。

 前方に人影が見えた。四人。友の顔が見える。
 一人じゃない。と思って、自分の不意の気弱に笑いが漏れる。ほんの少しの間の話ではないか。異様な喪失感に翻弄されていたことに気が付く。だが、摩耗してはいない。全力で戦える。
「またせた! 他の三人は!」
「汝がピンピンしとるなら中で戦闘中じゃ。合流するぞ!」
 
――テッペンカケタカ――
 ホトトギスが年貢を納めるときが来た。

「すまん、リンちゃん!」
「思ったより早かったです」
 複数の未来綴りの術式を刻々と世界に刻み続けた羽根筆を握る指はがちがちにこわばっている。アカツキを見て浮かべた血まみれの微笑にリンディスの奮戦がうかがえた。
 鬼灯の背中がやけに盛り上がっているのは章姫をナイナイしているからだ。頭でなければ攻撃されない。
「嘘でも嬉しいぞ!」
「拙者の封印が利いたからと思っていただけるとやる気が出るんですが!」
 鬼灯は頑張っていた。モチベーションは大事である。
「――さて、ここまで散々弄んでいただきどうもありがとう。次は貴殿が餌となる番だ」
 忍の手に虚無でできた剣が生まれ、あご下からさっくりと水を穿つように差し込まれた。無残に知らされた気力のいくばくかを回収し、鬼灯は自分の最良の間合いに戻る。
「よし、カチ割る」
 入れ替わるように、ここまで我慢を重ねてきた升麻がいなしに使っていたベクトルを攻撃に転用した。坤方向に寄っていた機動が巽に跳ね返る。
「てめえの勝ち確フラグ、ブチ折ってやんよぉ!」
 えぐれた頭頂の意趣返し。喉の奥まで真っ赤な怪鳥の上くちばしが斜め下から切り込んできた妖刀によって付け根から斬り飛ばされた。
「頭を割られる訳にはいかんのでな、相対出来た以上この場で討ち果たさせて貰う!」
「物騒で不気味な怪鳥め、よくもやってくれたのう。香ばしい焼き鳥にしてやる――いや廃寺ごと行こう。合法的バーニングチャンス! ヒャッハーなのじゃ!!」
 アカツキの放つ二つの炎の豪流を割り、雷のの花を咲かせながら突き出される『栄光を伴う痛み』
 腸をまき散らしながらホトトギスは天空を目指す。地を這うもののを置き去りに戦略的撤退だ。
「ここで逃がしてやれるわけがないだろう。精霊にも無茶をさせてしまったしな」
 空では、行人が待ち構えていた。
「お前には俺以上に安住の巣はないよ。とことんブロックしてやろう――こいつを倒すのは任せたよ」
「お前の魂胆は全部マルっとお見通しだっ! よし、言えた!」
 花丸が、色々乗せた破壊の拳で翼をへし折った。
 錐揉み落下してくるホトトギス。ウィズィが愛を巨大なナイフに変換させて待ち構えている。
「お待たせしてしまいましたからね。私の武器は!EXAと通常攻撃だ! 攻撃集中しながら通常攻撃で一気に畳み掛けますよ!」
 そして、そのようになった。


 気が付くと、ローレット・イレギュラーズは野原に立っていた。
 足元には、かつてここに建物があったのだろう、石組みがささやかに残っている。朽ち果てた仏像の光背。
 あれほど茂っていた森が消えていた。
 森の中にホトトギスが潜んでいたのではなかった。
 ホトトギスが森だったのだ。あるいは、かつていた怪鳥の骸を吸収した森自体が妖となっていたのか。
「つまり、俺達はずっと化かされてたのか。こんな狭いところで」
 行人は、深くため息をついた。
「はあ。紙萃が喜びそうな話になったな。しばらくはこれで面白がってくれるといいんだが」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

黒影 鬼灯(p3p007949)[重傷]
やさしき愛妻家
リンディス=クァドラータ(p3p007979)[重傷]
ただの人のように
篠崎 升麻(p3p008630)[重傷]
童心万華

あとがき

お疲れさまでした。突入タイミングの駆け引きがポイントでしたね。これで頭つつかれる旅人はいなくなります。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。

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