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シナリオ詳細

PPPサスペンス劇場・歩き巫女の殺人推理~萩の花殺人事件! 温泉宿を襲う見立て殺人の謎……~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ
 豊穣、カムイグラ。その北方にある温泉街に、イレギュラーズ達は湯治の観光に訪れていた。
 訳アリの客、訳アリの従業員。何処か不穏な雰囲気を纏わせながら、しかし、一日目の夜何事もなく開けた――その翌朝の事である。
 泊り客である柏木源五郎が何者かによって刺殺されたのだ。源五郎は客室にて殺害されており、そこには萩の花が、まるで血痕のように散らされていた。
「この事件……もしかしたら、見立て殺人かもねぇ」
 折しも同じ宿に逗留していた『白露』が不安げに告げる――そんな彼女の協力依頼を受けたイレギュラーズ達は、白露と共に独自の調査を開始した。
 新たに発見される新事実――源五郎が夜半、何者かと言い争っていたという証言がもたらされたものの、しかし当日のアリバイがあるものは、関係者の中にはいない――誰もが怪しく、誰もが怪しくないという状況の中、ついに三日目の夕方、第二の事件が発生したのである――。

●第二の殺人
 第二の殺人現場は、山から流れる川を一望できる露天風呂であった――。
「お琴、お琴ぉぉぉ!」
 商人である泊り客、笹本伝助が悲鳴を上げ、立ち尽くした。被害者は笹本琴――伝助の妻である。これまた刺殺であった。
「ふぅむ……萩の花。それにこれは――『おふだ』であるか?」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子 (p3p001385)が死体を見据えながら言う。確かに死体の周りには、萩の花と赤いお札のようなものが散らばっている。
「そうか……見立て、と白露は言ったな。であるならば、これは花札の見立てじゃろうなぁ。札ではなく、短冊じゃよ」
 『幽世歩き』瑞鬼 (p3p008720)が言った。なるほど、であるならば、この状況は『萩に短冊』の札を意識した殺人現場――という事になる。
「えっと、花札……はよくわからないんだけど、トランプみたいなものだよね? っていう事は、『萩』にも何種類かカードがあるっていう事?」
 『雷虎』ソア (p3p007025)が、しっぽをぱたぱたと振りながら小首をかしげるのへ、答えたのは『魔剣鍛冶師』天目 錬 (p3p008364)である。
「ああ。萩の札は、『萩のカス』……つまり萩の花だけの札。それから、赤い短冊のついた『萩に短冊』と、『萩に猪』……この三種類だ」
「なら……!」
 『殴り系幻想種』ハンナ・シャロン (p3p007137)は一瞬、声をあげかけ、周りを見た。それからコホン、と咳ばらいをすると、イレギュラーズ達にだけ聞こえるように、小声で、続けた。
「あと一種類……つまりもう一度、殺人が発生するかもしれない、という事ですか……?」
 さすがにそのような不穏な事を、大声で言うわけにはいかない。だが、今までの状況から見れば、それは予測してしかるべきであった。
「とにかく、一度解散いたしませしょぅ? 女将さん、笹本さんを任せてもいいかしらぁ?」
 白露の言葉に、女将は頷いた――。

「とんだ観光になりましたねぇ。しかし、犯人は何者なのでしょう?」
 『不揃いな星辰』夢見 ルル家 (p3p000016)が言う。一同は、女将の好意で大広間を借り、捜査本部の真似事などをしていた。
「第一の殺人の時には、全員アリバイなし――逆に今回は、全員アリバイあり。となれば、外部犯を疑うべきなのですかねぇ?」
 ルル家が言うのへ、「うぅん」と、唸ったのは白露である。
「どう……かしらねぇ。外部犯なら、わざわざ見立てなんてするかしらぁ?」
「歩き巫女さんのいう事も、もっともなのだわ!」
 『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯 (p3p007949)、その『お嫁殿』が声をあげる。
「見立てにしたからには、何らかの意味があると思う」
 鬼灯は頷いた。しかし、それがどのような意味であるのか――それはまだ、分かっていない。ただ単に、三回人を殺す、と言う明言でしかないのだろうか? それなら外部犯の、異常殺人者のせい……と言う説もなくもないだろうが。
「情報がたりんばいな」
 『穢奈』鐵 祈乃 (p3p008762)が言う。
「二つ目の事件の調査も、全然できてないやけん。また地道に調べるほかないとよ」
「ですねぇ」
 白露が頷いた。
「では――皆、また調査をお願いねぇ。最悪の場合、また誰かが死ぬかもしれない。そうなる前に、私達で止めないと、ね」
 その言葉に、イレギュラーズ達は頷く。
 果たして――イレギュラーズ達は、犯人を導き出すことができるのだろうか――!?

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方の事件は、イレギュラーズ達の観光(リクエスト)の最中、発生した事件となっております。

●成功条件
 犯人を導き出す

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 イレギュラーズ達が観光で訪れた温泉宿。そこで発生した二件の連続殺人事件。
 たまたま同じ宿に逗留していた『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子 (p3p001385)さんの関係者、『白露(シラツユ)』は、素人探偵を気取り、イレギュラーズの皆さんに調査と推理の協力を申し出てきました。
 果たしてイレギュラーズ達は、殺人犯を捕まえることができるのでしょうか。

●調査について
 温泉宿には、以下のような場所があります。これらの場所を注意深く調査し、何らかの情報や、殺人の証拠などを見つけてください。
 非戦スキルやギフト、パラメータ、プレイングなどで、得られる情報は変わって来るものと思われます。

 源五郎の部屋
  最初に殺された柏木源五郎が泊まっていた部屋です。流石に死体はすでに片付けられていますが、それ以外は当時のまま保存されています。

 露店温泉
  第二の殺人現場で、笹本琴が殺害された現場です。
  目の前には、山から流れてくる川が流れていて、宿の目玉ではありました。
  現在は封鎖されてます。

 山道
  宿の裏手にある山です。第二の殺人の時、女将と従業員のお鶴は、ここを登り、山の上で山菜を取っていました。

 室内温泉
  宿内にある温泉です。リフレッシュすれば、いい考えが浮かぶかもしれません。

 温泉街
  主に観光地化された温泉街です。ちょっとした休憩や、何らかの情報収集などができるかもしれません。

 商店街
  温泉街からはやや離れた、街の商店街です。此処には商人である笹本伝助の店もあります。何らかの情報収集などができるかもしれません。

●登場人物
 柏木源五郎
  第一の被害者です。何やら、夜中に誰かと口論していたという証言があります。胡散臭い男です。

 笹本琴
  第二の被害者です。笹本伝助の妻。浪費家で、派手好きな女性だったようです。

 笹本伝助
  笹本事の夫で、街の商人です。あまり良い噂は聞きませんが……。
  第二の殺人の際には、街の商店街の自分の店へ戻っており、アリバイが成立しています。

 女将
  皆さんが逗留している温泉宿の女将です。ちょっと幸薄そう。
  第二の殺人の際には、従業員のお鶴と共に裏山で山菜取りをしており、急いで降りても殺害時刻には間に合わないとの事で、アリバイが成立しています。

 お鶴
  皆さんが逗留している温泉宿の従業員です。かなり幸薄そう。
  第二の殺人の際には、女将と共に裏山で山菜取りをしていました。途中で女将とは別れましたが、急いで山道を降りても殺害時刻には間に合わないので、アリバイが成立しています。

 三太郎
  皆さんが逗留している温泉宿の従業員で、板前です。ちょっと不良。
  第二の殺人の際には休憩中で、温泉街で遊んでいました。そのため、アリバイが成立しています。

 以上となります。
 それでは、皆様の推理と調査をお待ちしております。

  • PPPサスペンス劇場・歩き巫女の殺人推理~萩の花殺人事件! 温泉宿を襲う見立て殺人の謎……~完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月08日 22時27分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
鐵 祈乃(p3p008762)
穢奈

リプレイ

●捜査本部、始動
「それじゃあ皆、調査、頑張りましょうねぇ」
 旅館の好意で借りた一室で、『白露』は声をあげる。すでに二件の殺人事件が発生してしまった。その上、もし白露の直感が正しければ――もう一人、人が死ぬかもしれない。
「この辺はあたしも来たことなかけん、観光ば楽しみにしとったんやけどなぁ。殺人事件が二件も……運が悪かったばい」
 『穢奈』鐵 祈乃(p3p008762)が肩を落としつつ言う。元々は、カムイグラの地を観光で訪れていたのだ。それが台無しになったのは、些か惜しい事であるが。
「捜査とか推理とか……あたしはまったくの素人やし、役立たんかもしれんね。できる限りのことはするけど」
「お願いねぇ。皆の力が必要だわぁ」
 白露は微笑んで、頷く。
「いやはや、合戦で人が死ぬのは見慣れて居るが、普通の殺人事件とな! 吾としては非常に目新しい! 白露殿は如何思われる?」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は腕を組み、うむうむと頷きつつ白露へと尋ねる。白露は頬に手を当て、ふふ、と笑った。
「そうねぇ……歩き巫女、なんてしてると、色々なものにあうからねぇ」
 歩き巫女――様々な地を旅し、祈祷や怨霊の調伏を行うのが白露の仕事だ。その性質から、人の情念については、色々と思う所があるのだろう。
「……人を疑って……人が人を傷つけあうのって、なんか嫌だな……悲しくなっちゃうよ」
 『雷虎』ソア(p3p007025)がしょんぼりとした様子で言った。そのシッポも、なんだか悲しげにうなだれているように見えた。
「そうよねぇ。そう言う哀しいコト、これ以上起こさないために、頑張りましょぉ?」
 白露が、ぽん、とソアの肩に触れる。ソアはうん、と頷き、ぷるぷると頭を振った。よし、と気を取り直して頭を切り替える。
「いずれにせよ、まずは足で情報を稼がんといかんじゃろうな。わしらにはスキルがある故、様々なものから情報は得られるが、それでも現地には赴かねばならんからのぅ」
 『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)の言葉に、一同は同意する。イレギュラーズ達は、様々なスキルを持っている。それは、例えば道端にある草木や無機物から情報を得ることができ、通常では証言者とならぬような存在から、証言を得ることができるのだ。
 とはいえ、やはり現地に行かなければ証言は得られない。それに、それ以外にも――人間からの証言も必要になって来るし、そうなれば結局、やる事は従来の情報収集と変わりはあるまい。
「まぁ、推理ではなく能力で犯人を当てるなんて小説では御法度だが、俺たちはイレギュラーズだからな」
 苦笑しつつ、『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が言う。それに今回は、実際に人の生死がかかっているのだ。手段を選んでいる場合ではないだろう。
「ううむ、俺は忍であって探偵ではないんだがなぁ……」
 些か困惑したようにぼやくのは、『章姫と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)だ。
『なんだかドキドキしちゃうのだわ! 頑張りましょうね鬼灯くん!』
 だが、嫁殿である人形、『章姫』は乗り気のようである。嫁殿が楽しそうなら、鬼灯的にはOKなのだ。なので鬼灯もまた気持ちを切り替えて、調査に意欲を示して見せた。
「宇宙警察忍者としてこの手の捜査はお手の物! ……と言えればよかったのでありますが、拙者も忍者としての活動がメインでしたので、それなりでありますねぇ」
 『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)は頭に手をやりつつ、そう言う。とはいえ、情報収集と言う点で見れば、忍者も警察もそうそうやることは変わりないかもしれないし、そう言った点では、ルル家の能力も発揮できるという所だろう。
「では、手分けして調査を行いましょう……犯人を見つけ出し、次の事件を防ぐんです」
 『殴り系幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)の言葉に、仲間達は頷いたのだった。

●第一の殺人現場
 祈乃と瑞鬼は、第一の殺人現場、源五郎の部屋へと向かう。すでに死体はないが、現場は白露の指示により、可能な限り当時のまま残されている。
 一人用の、一般的な和室には、既にしおれかけた萩の花が散乱していた。
「源五郎はこの部屋で誰かと言い争いばしとったんやね。あたしは、第一の事件、第二の事件……どっちかが偶発的な事件だった、と思ってるばい」
「つまり、最初から計画された殺人ではなかった……という事じゃな?」
 瑞鬼はふむ、と唸りながら、室内を見渡す。
「わしが聞いた所によれば、源五郎は借金取りのようじゃ。それもかなり悪質な、な」
「……じゃあ、ここには借金の取り立てに来たと?」
 むむ、と祈乃が声をあげるのへ、瑞鬼は頷く。
「言い争い……となれば、間違いないじゃろう。問題は、誰に取り立てを行っていたか、じゃが――女将か?」
「ううん、旅館の経営は安定してるみたいやけん、それはなかとよ」
 プルプルと頭を振って、祈乃が否定する。従業員からの話によれば、旅館の身内で借金持ちのような者はいないのだという。
「ならば……伝助か、琴か。そう言えば、琴は浪費癖があったようじゃなぁ」
 煙管が欲しいな、と思いつつ、瑞鬼は我慢した。万一灰でもこぼしたら、現場を汚染しかねない。
「もしかしたらやけど……琴が、源五郎を殺した。借金の事でもめて――」
「その可能性は高いのう」
 口元に手をやり、瑞鬼は唸る。
「では誰が、琴を殺したのか――じゃな。……思い返せば、萩の花はすべて、死体の上に散乱していた。殺した時に倒れたのならば、身体の下にあってもおかしくないはず。それがない……」
 煙を吐き出せぬ代りに、瑞鬼はふぅ、と息を吐いた。
「という事は、じゃな。萩の花をばらまいたのは、殺した後になる。琴がそれをやる理由などなかろう。ならば源五郎の殺害後、何者かがここにやってきた。なるほど、おぬしの直感は当たりじゃな」
「これは、連続で起きた殺人やけど、同一犯による連続殺人じゃなかとね……?」
 祈乃の言葉に、瑞鬼はゆっくりと頷いた。

●山道・温泉調査
「ふぅ……中々急な山道だな。これはゆっくり登らないと、転びかねない……」
 一歩一歩をしっかりと踏みしめながら、錬が声をあげる。錬、鬼灯、ハンナ・シャロンの三名は、女将とお鶴が山菜を取っていたという、裏山への道を進んでいた。
『急いで降りても間に合わない……という事だったけど、これじゃ急いで降りる事自体が無理なのだわ! 絶対に転んでけがしちゃうわ!』
 『章姫』が声をあげるのへ、鬼灯が頷いた。
「流石お嫁殿、的確な判断だ。やはりお鶴と女将は犯人ではないのだろうか?」
「それを確かめましょう……まずは、道中の植物や、無機物から情報を得ます」
 ハンナ・シャロン、そして錬が、周囲の様々なものから情報を収集し始めるのへ、鬼灯は注意深く辺りを見回した。探すものは、僅かな違和感――もし、殺人が露天温泉ではなくこの地で行われたのだとしたら、必ず、その痕跡が残されているはずだ。
(しかし――そのような痕跡は見受けられない。殺害現場はここではない、という事か……)
 ふと、耳にはいったのは、穏やかに流れる水の音だ。山道からやや外れる形になるが、そこへと向かってみれば、大きな川が姿を現した。
『そう言えば、この先は旅館の方向だったわね! 露天温泉につながってるのかしら?』
「おそらく――いや、待てよ? この川は――」
「鬼灯、ここに居たか」
 ふと、思考の海に沈もうとしていた鬼灯を、呼び戻したのは錬である。
「ハンナと一緒に情報収集をしたんだが……意外なことが分かったぞ。お鶴か、女将か――何方かはわからないが、山道を降りていない」
「降りていない?」
「はい、植物たちから聞いたのですが」
 ハンナ・シャロンが声をあげる。
「流石に女将様とお鶴様、その個人を判断できるほど、植物たちも自我が発達していなかったようですが、いずれにしても、山道を降りたのは人間一人だけだった――との事です」
「だが、山菜取りに二人が訪れたのは、確かなようだ。これも、二人が山菜取りをしていた周囲の無機物から確認が取れている――つまり、だ」
『山道を経由しない、秘密の抜け道がある……かしら?』
「それについてだが」
 『章姫』の言葉に、鬼灯が声をあげる。
「一度山を下りて、露天温泉に向おう。もしこの感覚が正しいなら、答えはそこに在る――」

 露天温泉――第二の殺害現場となってしまったこの温泉は、正面に流れる川を眺めながら、穏やかな時を過ごすことのできる旅館の名物でもあった。
「おや、皆さん! 調査は進んでおりますか?」
 露天温泉には先客がいた。ルル家だ。ルル家は、この露天温泉の目の前に流れる川で、凶器がないか探していたらしい。
「ええ。其方はどうですか、ルル家様」
 ハンナ・シャロンが尋ねるのへ、ルル家は頭を振った。
「うーん、見つかりませんね! という事は、犯人はまだ凶器を持ち歩いているのかもしれません。皆さんも凶器探しでありますか?」
「実は、女将かお鶴か……どちらかが、山道を降りずに帰ってきた、という事が確認できてな」
 錬の言葉に、ルル家が小首をかしげた。
「奇妙でありますね……となると、何かショートカット的な手法が?」
「それだが……ハンナ殿、錬殿、周囲の植物や無機物に情報収集をお願いする」
 鬼灯が言った。そして次の言葉に、一行は目を丸くすることになる。
「尋ねるのは――『この温泉に、川からやってきた者がいなかったか』だ――」

●三太郎さんの証言
「嬢ちゃん、良い食べっぷりだなぁ」
 一方そのころ、ソアは厨房で椅子に腰かけて、三太郎の作るカムイグラ料理に舌鼓を打っていた。
 三太郎に対して、肉体言語(うるうるしたひとみ)で語りかけたソア。
『三太郎さんのことが心配でボクはお腹が減ってる』
『あなたのことを守りたいし厨房の匂いがとても気になってる』
『もう側から離れないから観念してボクに何か食べさせて欲しい』
『誰にもあなたを傷つけさせないしもっと言うとカムイグラのお酒も飲みたい』
 ……と、些か私欲も織り交ざった、そんな視線ビームに困惑しつつ、三太郎はついに折れた。
 あまりものの具材でよければ、と、さっと作り上げたカムイグラ料理は、普段旅館で出すものより豪勢ではないが、しかし味は絶品のまかない料理だった。
「うん、すごくおいしいよ! このジンジャーのつけものとか、あまくてぴりぴりしてて、お酒に合いそう! お米がすすむね!」
「だろう? まぁ、でもさ、守るなら俺じゃなくて、お鶴ちゃんにしてやんなよ」
 三太郎が笑いながら言うのへ、ソアは小首をかしげた。
「お鶴さん?」
「ああ。可哀そうな子でな。あの子の家族は元々、この街で小さな玩具屋をやってたのさ。花札とか竹馬とか、そう言うのを作って売っててな。でも、悪い奴に騙されて、土地ごと店を取り上げられちまったらしい。家族は心労がたたって病気で死んじまってなぁ。今は天涯孤独の身って奴さ」
「ふぅん……でもでも、ボクは三太郎さんを守るよ! こんなおいしいご飯を作れる人、守らなきゃね!」
「そうかい、嬉しいねぇ。まぁ、ゆっくり食べてきなよ、嬢ちゃん!」
 そう言って、三太郎は調理を再開する――その後姿を眺めながら、ソアはご飯を食べつつ、花札、と言う言葉に、何かの引っ掛かりを覚えていた。
「あ、そう言えば三太郎さん。猪、って聞いて何か思い出すことある?」
「猪ぃ? どうだかな。裏山にいるってのは聞いたけど、俺は見たことがねぇなぁ」
「そっかー……三太郎さん、ご飯お代わり貰っていい?」
 ソアはにこにこと、どんぶりを差し出した。

●笹本伝助の噂と情報確認
「ああ、奴か。あいつはとんでもねぇ悪党だよ。騙された奴、泣かされた奴なんてごまんといる。今のアイツの商店だって、元々はこの商店街にあった玩具屋をだまくらかして奪ったもんだぜ?」
 ルル家と鬼灯は、商店街にて、伝助についての聞き込みを開始した――それから出るわ出るわの悪い噂。裏で賄賂を贈っているだの、詐欺まがいの商法に手を出しているだの、その手の情報には全く事欠かない。
「いやぁ、絵にかいたような悪人でありますな……」
 ルル家もたまらず苦笑するレベルである。
「これは紛れもなく、笹本家への怨みが発端の殺人でありましょうな」
『動機は笹本伝助への怨みなのね。でも、その恨みを持っているのは、誰なのかしら?』
「笹本伝助が犯人、と言う線は消えたな。商店の者に確認したが、当日の昼休み時も、奴は店舗の中で休んでいたらしい……外へ出ることなくな」
「うわぁ、露骨に怯えているでありますね。拙者は次の被害者は伝助殿かなー、と思っておりましたが、もうほぼ確定でありますよこれ」
 むむ、とルルイエは唸る。伝助に関しての情報は、あらかた調べつくしたようだ――。

「という訳でありますね。次の被害者は伝助殿。動機は、伝助殿への怨み」
 と、旅館の室内温泉で、ルル家は言った。
 情報のすり合わせも含めて、一行は室内温泉に集まった。温泉で疲れを落としながら、情報を突き合わせようという形だ。
「ふむ、吾の人助けセンサーに思いっきりかかっていたのが伝助殿であったからなぁ。さもありなん、と言った所であるか」
 百合子が言う。うーん、と肩を伸ばし、温泉の湯を楽しみながら――百合子は続ける。
「さて、これまでの情報を合わせて――と言いつつ、既に犯人の目星はついているのであろう? 白露殿」
 白露はにこりと笑う。スレンダーながらメリハリのついたボディが美しい。
「やはり、犯人は――でしょうねぇ」
「うう、そうなんだ……」
 ぶくぶく、とソアが湯船に口元を沈める。その瞳はとても悲し気だ。
「トリックなどを考えるに、実行可能なのは二人――そのうち動機があるのは独りのみじゃからな」
 瑞鬼の言葉に、白露が頷く。
「決まったわねぇ。なら――最後の仕上げを、はじめましょぉ?」
 白露の言葉に、仲間達はゆっくりと頷いた。

●崖の上の解決編
「くそっ、離せ!」
 旅館の裏山、その崖の上――。
 そこには、二つの影があった。
 一人は、笹本伝助。もう一人は、お鶴だ。
「放さないわよ。アンタはここで、『猪に襲われて崖から突き落とされる』の。それで、殺人事件は終わり」
 憎しみに歪んだ表情で、お鶴が言う――その手には、小ぶりな小刀が握られていた。
「お前が犯人だったのか……だが、何故!?」
「……でしょうね。気づかなかった? あたしが送ったメッセージに。父の好きだった萩の花……そしてその花札」
「花札? お前、まさかあの玩具屋の――」
「やめるのである、お鶴殿」
 ふと――静かな声が響いた。
 百合子の声であった。
 その声を合図にしたように、九人の男女が一斉に崖の上へと現れる――イレギュラーズ達だ。
 鶴はとっさに、伝助の喉元へと小刀と突き付けた。
「もう……こんなことは終わりにするのであるよ」
「あなたは、夜中に源五郎と琴が言い争い、琴が源五郎を殺してしまうのを見た……そこで、今回の犯行を思いついたのねぇ?」
 白露が声をあげる。
「貴女は、現場に萩の花を散らすことで、琴に第三者の存在を知らしめた……そしてそれをネタに琴を誘い出し、殺害した」
「……どうやって? 殺害時刻に、私は山道に居たわ!」
「それもすでに解かれているのである。で、あるな? 白露殿」
 百合子の言葉に、白露は頷いた。
「貴女は、山道から外れた川を利用して、麓へ降りたのねぇ。川は露天温泉につながっている……大幅な時間短縮になるわぁ?」
 ぐっ、とお鶴が言葉に詰まる。
「動機は――復讐であるのだな。調べはついているのである。貴殿の実家は、伝助に騙されて奪われた――」
「そうよ!」
 お鶴が叫んだ。
「こいつは! 私を! 家族を滅茶苦茶にしたの! だから――!」
「殺すので、あるか」
 百合子が言った。
「それも、よかろう。だが――そこからは、人の道を外れた外道の道。そんな所へ落ちるのを――果たして親御殿は、望んでおられたか」
 びくり、とお鶴は肩を震わせる。
「そうばい。子供が不幸になるのを……親が望んだりはせんとよ」
 祈乃が言った。
「もうやめよう! まだ、ごめんなさいってすれば、罪を償えば、戻れるよ!」
 ソアが叫んだ。
「悲しみの連鎖を広げてはいけません!」
 ハンナ・シャロンは、萩の花を抱きしめた。
 お鶴の――父の愛した花だった。
「この花を――これ以上、汚してはならんぞ」
 瑞鬼の言葉に――お鶴はついに、観念した。小刀を取り落とし、うずくまる。
「よく、決断されたでありますね」
 そんな彼女を、優しくルル家は抱き留めた。お鶴は静かに、涙を流していた。
「な……何をしている! そいつは人殺しだぞ! 早く捕まえて――あがっ」
 喚く伝助を、鬼灯は逆に拘束した。アームロックを極めて、地に打ち倒す。
「捕まるのはお前だ。聞けば随分と、あくどい事をしてきたそうだな」
「証拠は全部そろってる――お前の天下も終わりだよ、伝助」
 錬は冷たく――そう告げる。

 かくして――豊穣の地を襲った殺人事件は、幕を閉じたのであった――。

「万事解決、であるな。しかし白露殿、やはり手馴れているように見受けられる。貴殿は――」
 百合子の言葉に、白露はにこりと笑って――それだけを、返すのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 リクエストありがとうございました。
 皆様の活躍により、殺人事件は無事解決。
 お鶴は情状酌量と模範的な態度により死罪は免れ、今は静かに服役しているそうです。
 伝助は、過去の所業が発覚し、死罪とはいかないまでも、相当に重い罰が課せられたそうです。
 そして歩き巫女は――また静かに、旅に出たそうです。

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