PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<禍ツ星>邪竹ラビリンス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔よけの鑑
「おう、なんだ、その鏡は」
 男が言った。
 村の中心にある、神社へと続く道である。
 身の丈ほどもありそうな巨大な鏡を抱えていた男は、「ああ」と一息ついてから、男に答えた。
「お守りらしいぞ」
「お守り?」
「京から送られてきたんだと。なんでもあやかしや、怨霊の類を封じるんだとか」
 へぇ、と男は唸った。確かに、その巨大な鏡には、何か――ひやりとした、妙な冷気を感じた。上手くは説明できないが、なにか、ぞっとするような感覚である。男はそれを、神聖さゆえの畏怖であると解釈した。
「で、そのお守りをどうするんだい」
「ああ、今度夏祭があるだろう。その間中、村においておけってよ。そうすれば御利益があるんだとか。だからよう、村の中央にある神社に置こうって話になったんだわ」
 なるほどな、と男は頷く。村の中央には神社がある。そのご利益とやらが、結界だとか、あやかし除けのなんだかはしらないが、とにかく村全体に影響させたいのならば、そこが一番、ちょうどいいだろう。
「じゃ、俺も運ぶの手伝おうじゃねぇか。お前一人で運ぶのは危なっかしいや」
 男は手伝う旨を告げる。もう一人の男は快諾した。二人でえっちらおっちら、神社に向って鏡を運ぶ。
 やがて神社の本堂にたどり着いて、その鏡を台座に設置した。
「これで一安心だなぁ」
 などと笑い合う男たちが、神社の本堂、その扉を閉める。鏡は隙間から漏れ込む光を浴びて、どこか妖しく輝いている――。

 ――神社から突如発生した無数の竹が、村中を覆いつくしたのはその翌日の事である。

●雨後の筍
「なんでも、竹の迷宮が出来上がったそうにござる」
 鬼人種の男は、イレギュラーズ達へと向けて、そう告げた。
 絶望の青――今は静寂の青と呼ばれる――を踏破した海洋王国の前に現れたのは、新天地カムイグラである。
 カムイグラでは、ちょうど夏祭りの時期であり、海洋王国は両国の友好と、疲弊した自国の負担を補うために、サマーフェスティバルの合同祭事を提案した。
 かくして、二国合同の夏祭りが催されることとなり、今や町はその祭りで賑わっている――。
 そんな最中の事件である。
「どうやら、京から送った祭具が、何者かの手により呪具とすり替えられてしまった、との事で御座ってな。その呪具を設置した村の中央、神社を中心に」
 村全体が、竹でおおわれてしまった、との事である。
 もちろん、ただの竹ではない。
 何者かが侵入するたびに姿形を変えるほか、タケノコのような怪物と、竹で組み上げあれたプラント・ゴーレムのような怪物が徘徊し、落とし穴や竹やりなどのトラップも仕掛けられているのだという。
 外部から燃やそうにも、燃やした端から竹が次々と生えてきてしまい、どうにもこうにも、手が出せない。
 つまり――一般人では対処は難しい。
「そこで、神使殿。おぬしたちの出番という訳であるな。なんとか竹の迷宮を踏破し中央神社にたどり着き、呪具を破壊してほしいのでござる」
 そうすれば、おそらく、竹の迷宮はその効力を失うだろう、との事だ。
 竹が枯れるかどうかまでは保証できないが、このまま迷宮として、あやかしのはびこる地にしてしまうわけにもいかない。
 それに――合同の夏祭り。それに水を差すわけにもいくまい。
 イレギュラーズ達は依頼を受諾すると、件の村へと向かったのである――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 異常なる竹林の迷宮に覆われた村。
 そこを突破し、呪具を破壊してください。

●成功条件
 呪具『邪鏡』の破壊。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ある村を、一晩で覆いつくしてしまった、以上なる竹林。
 それは、京より送られた祭具――が、呪具へとすり替えられてしまったが故に発生した事件のようです。
 皆さんには、この迷宮に突入し、踏破。中央の神社へと到達し、呪具『邪鏡』を破壊していただきたいのです。
 作戦決行事項は昼。村はすでに竹林の迷宮と化し、内部には様々な怪物が徘徊し、落とし穴や竹やりなどのトラップが設置されているようです。
 くれぐれも、お気をつけてください。

●エネミーデータ
 タケノコの怪物 ×不明
 タケノコのような見た目をした怪物です。単体ではさほど強くありませんが、数が多いのがネック。
 おそらく、内部でもっとも遭遇するタイプの雑魚モンスターです。

 竹のプラントゴーレム ×不明
  竹で組み上げられた、竹製のゴーレムです。竹やりのような鋭い手による攻撃が得意とみられます。

 竹の主 ×1
 神社周辺に生えた巨大な竹です。どうやら迷宮の主のようです。
 戦闘能力は不明ですが、相当の生命力と、雑魚を召喚する能力を持ち合わせているようです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <禍ツ星>邪竹ラビリンス完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月06日 22時36分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀

リプレイ

●竹の迷宮
「中々に壮観っすねー」
 外から内部を覗き込むように、『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)が言った。一行がいるのは、村の入り口にして、竹林迷宮の入り口。ざわざわと風に揺れる竹たちが、どこか不安感をあおるような笹の音を立てて、一行を待ち受けている。
「本当に竹か? まるで鋼鉄みたいな硬さだ」
 こんこんと外壁の竹を叩きながら、『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)が言う。イレギュラーズ達が到着する前、地元の者たちが、迷宮を燃やそうと試みたことがあるらしいが、それは失敗に終わったらしい。異常な再生力と生命力がそれの理由だというが、実際に迷宮を見てみれば、そのような理由にも納得がいく。
 なんにしても――異常である。正常な竹とは思い難い。これでは、竹を排除しながら真っすぐに中央神社――この迷宮の中心へ、とはいかないだろう。急がば回れ、迷宮を踏破するしか、無いのだ。
「お祭りの最中にも事件事件、ヤになっちゃいますねえ」
 『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)が、迷宮を見やりながらふぅ、とため息をつく。現在、豊穣の地では、海洋国と合同での夏祭りの最中――その最中での、今回の事件であるのだ。まるで何者かの悪意が感じられるようなそれに、ミミはなんだが、ウンザリとしてしまう。
「よいしょっ、と。これでよし」
 ぱんぱん、と手を叩きながら、『辻ポストガール』ニーニア・リーカー(p3p002058)が頷いた。目の前には、先ほどニーニアとリサが作り、設置したばかりの看板がある。
 ――現在迷宮攻略中! 危険! 立ち入り禁止! ――。
 それは、イレギュラーズ達の作戦行動中を現し、同時に内部に人が侵入しないよう警告する看板である。話によれば、人が入るたびに迷宮はその形を変化させているという。攻略中に誰かが侵入し、それまでの成果を変貌させられてしまっては、此方の身にも危険が増す。
「取り合えず、看板はこんな感じっすね。あとは、村の人たちへの周知が完了すれば……」
 と、リサが告げたタイミングで、
「あの、村の人たちにも、お願いしてきました!」
 手をあげながら、此方へとやって来るのは『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)だ。マギーはふぅ、と息を吐きながら、続ける。
「皆さん、作戦中には村に近づかないことと……一応、誰か来たりしないように見ててくれるそうです」
「ありがと、マギーちゃん。……それから皆、外から調べてみたけど、神社は迷宮……村の、ほんとに中央部分にあるみたい」
 ニーニアが言うのへ、利一が言う。
「とは言え、まっすぐ進んで到着……とはいかないだろうね」
 前述したが、内部は迷宮化している。急がば回れ、この迷宮を踏破しなければ、中央にはたどり着けまい。
「だが、『果ての迷宮』ほど複雑という訳ではないだろう」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が言う。果ての迷宮とは、幻想王都の中央に存在する、摩訶不思議な地下迷宮の事だ。イレギュラーズ達による踏破作戦が、現在も行われている――それはさておき。
「迷宮探索なら私の専門だ。重要なのは、マッピングと現在地の把握。とにかく迷わないようにすることだ。進にも戻るにも、自分を見失っては先行きが立たない」
 ゼフィラの言葉に、仲間達は頷いた。迷宮探索の基礎、それは迷わない事。自分自身がどの位置にいるのか把握することだ。
「ミミはちょーっとダンジョン探検とか得意じゃないのでー……探検は皆さんにお任せします。その代わり、傷の治療なんかは任せてほしいのです!」
 ミミが手をあげる。適材適所、パーティの役割分担は重要だ。探索に特化したメンバーも必要なら、その後方を支えるメンバーも必要となる。ダンジョンアタックとは、メンバーが、誰一人欠けても成立しない。
「ん、ミッション受領。迷宮化した竹林の踏破、及び原因の除去」
 『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が、そう告げる。無表情ではあったが、見る者が観れば、どこか決意に満ちた雰囲気を纏っていることに、気づいたかもしれない。
「竹は地下茎を通して広がる……放っておいたら、拡大するかもしれない。此処で確実に除去しないとね」
 オニキス・ハートの言葉に、頷いたのは不動 狂歌(p3p008820)だ。
「ああ。しかし、村の連中もとんだ災難だな。俺達で助けてやらねぇとな」
 その言葉に、仲間達は頷いた。
 そして決意と、少々の緊張を胸に、迷宮へと足を踏み入れたのであった――。

●迷宮踏破作戦
 迷宮内部は、一見すればただの竹林のようにも見えたが、その竹は意志持つかのように侵入者の進行を阻み、あらぬ方向へと誘導していく。
 陽光すら遮る程に、鬱蒼と生い茂る竹。薄暗いその陰から、いつ何かが飛び出してくるかもわからない。
 時折見かける、竹林に食われたかのようなその姿をさらす村の家屋が、ここが本当に、人が暮らしていた村であったことを思い起こさせる。そして、僅かに見えた生活の痕跡が、瞬く間に竹が村を飲み込み、村人たちが慌てて避難したのであろうことも、想起させた。
 一行は、そんな道中を慎重に、進んで行く。すでにいくつかのトラップは発見されていたが、『シーフぴよちゃん』の力も借りたリサが、それを的確に解除していった。
「ふぃー……かなり殺意マシマシって感じっすねー」
 ぱちり、とリサは目の前にあった薄く、細長い……蔓のような竹を切り取る。とたん、上空から無数の竹やりが降ってきて、一行の目の前の空間に突き刺さった。直撃していたら、大怪我では済まないだろう。
「わわっ、こんな所にも罠がっ!」
「はいはい、お任せっすよ!」
 マギーが見つけた罠を、リサが再び解除に向かう。八面六臂の活躍である。
「流石。頼りになるね」
 ゼフィラはくすりと笑いつつ、リサを称賛。
「ニーニア、現在地の確認をしておこうか」
「了解だよ」
 ゼフィラの言葉に、ニーニアが頷く。ニーニアのギフトにより、一度行った地点でのマッピングは完了しているが、こう言ったものは確実性が必要だ。ゼフィラの瞬間記憶を用いた現在地の確認を行って、より確実な探索を行っていく。
 それに、敵の気まぐれで、迷宮の内容を変化されでもしたら面倒だ。その確認のためにも、二人の記憶の確認は必要だった。
 そして、迷宮での敵は迷宮の構造、そして罠だけではない。
「……!」
 ぴこん、とミミの耳が立って、しっぽも緊張を現すように、ピンと立ち上がった。
「後ろから何か来るのです! たぶん、敵です!」
 ミミの言葉に、イレギュラーズ達の間に緊張が走る。慌てて振り向けば、後方からぴこ、ぴこ、と飛び跳ねるようにやって来る、小さな無数の影――。
「――タケノコ」
 オニキス・ハートが思わず声をあげた。そう、それは、30cmほどのサイズのタケノコであった。もちろん、ただのタケノコという訳ではない。切り取られた下部からは、笹の葉のような足が生えていて、ぴょん、ぴょん、と飛び跳ねながら、此方へと向かってくる。先端は鋭い槍のようにとがっていて、
「ぴょん! ぴょんー!」
 と雄たけびを上げながら跳躍。イレギュラーズ達目がけて、その頭部を槍のように、あるいは自身をミサイルのように見立て、跳躍から突撃してくるのだ!
「散開――っ!」
 利一が叫んだ。同時に、仲間達は一斉に飛びずさる。間髪入れず、タケノコたちが次々と地面へと突き刺さり、地を抉っていった。タケノコたちはすぐさまぴょん、と飛びあがって態勢を整えると、再び跳躍し、体当りを敢行する!
「まったくっ! 見た目はなかなかコミカルだけど、厄介な敵じゃないか!」
 利一はぼやきつつ、構えた。防御の姿勢。敵の攻撃をさばき、防御から攻撃へと転ずる、『嘯風弄月』の構え。
「お前らの相手はこっちだ!」
「ぴょぴょぴょん!」
 利一の挑発に、タケノコたちが次々と突撃を敢行する。それを利一が寸前で叩き方向を転換させ、あるいは体さばきで受け流して見せる。利一にあたる直前で、タケノコたちが方向を変えたかのように、傍からは見えた。
 ぴょぴょん、とタケノコたちが再び跳ねようとするのへ、
「これ以上……やらせません!」
 マギーの放つ魔性の茨が、その身体をからめとった。ぴょいん! と悲鳴を上げるタケノコたちへ、
「まとめて吹き飛ばしてやる!」
 狂歌がその武器を回転させて、小規模な暴風域を生み出した。巻き上げられたタケノコたちが悲鳴を上げながらあちこちに叩きつけられていき、
「タケノコを煮込……違う。焼く……も違う。まとめて吹き飛ばす。フォイア!」
 オニキス・ハートの放つ無数の魔力弾が、まとめてタケノコたちを撃ち抜いていく。タケノコたちがそのダメージに耐え切れず、次々とはじけて消えていく。
「片付いたか……利一、ケガはないか? まだまだ先は長い、少し治療してから行こう」
「そうだな……助かるよ」
 ゼフィラの言葉に、利一が頷く。ゼフィラが利一の治療を行い、仲間達は周囲を警戒しつつ見渡した。
「でも……変な敵だったね。あれも、タケノコのプラントゴーレム……なのかな?」
 ニーニアが小首をかしげるのへ、
「大きな竹のゴーレムもいましたからね。まさか、成長すると竹のゴーレムになるのでしょうか……なんて」
 苦笑するマギーが答える。
「……倒すと消滅しちゃうのか。ならば、食べられない……かな」
 オニキス・ハートは無表情にそう言ったが、なんだかガッカリしているような雰囲気を感じさせる。
「むむ、それは残念なのですね……タケノコ……新芽くらいの奴なら確か煮たりして食べると聞いた記憶があるような、ないような」
 ミミがむぅ、唸る。
「えっと……食べる気、だったの?」
 ニーニアが苦笑するのへ、
「いや、こ、これは食欲ではなく、食べ物屋としての本能でしてっ 」
 ミミが両手を振りながら、慌てて弁解する。
「……食べたかった、かも」
 しかしてオニキス・ハートは、ぽつりとそう呟くのであった。

●迷宮の主掃討作戦
 幾多の罠と、タケノコと竹のゴーレム達を排除し、一行は先へと進む。
 危なげなく迷宮を進むことができたのは、紛れもなく一行の実力の結果だろう。トラップ対策、マッピング、そして奇襲対策は的確に行われていたから、脱落者もなく、迷宮の中央へと到達できたのである――。
 中央神社。文字通りに村と迷宮の中央にある神社は、その小さな本殿を中心に、大きく開けた広場となっている。
「ふむ……アレが神鏡……いや、魔鏡だね」
 ゼフィラが声をあげる。その視線の先には、大きく扉の開いた本殿があって、そこには大きな鏡が設置されていた。見るだけで寒気を感じるような、冷たい印象を受ける鏡である。そう感じるのは、鏡に施された呪いのせいかもしれない。
「じゃあ、さっそく壊しちゃうのですよ!」
 ミミが愛用のバスケットに手を突っ込んで、何か鏡を割る固いものを探し始めた――途端。
 周囲がぐらぐらと揺れだしたので、イレギュラーズ達は慌ててあたりを見回した。地面の底で、何かが動いているような感覚を、皆は覚える。
 その感覚は正しい、おそらくは、竹の地下茎――それが、脈動しているのだ。
 刹那、大地が割れた。神社の本殿、その真下から、巨大な大樹のような、巨大な一歩の竹が現れ、その身体を伸ばし始めた。
「か、鏡が!」
 ニーニアが叫んだ。現れた巨大な竹は、その腹のうちに鏡を飲み込み、隠してしまう。竹の成長が止まる。十メートルほどはありそうな巨大な太い竹。それは意志を持つように身体を震わせると、舞い落ちてきた笹が、鋭いナイフのようにその身を煌かせ、イレギュラーズ達へと迫りくる。
「ち……いっ!」
 狂歌がその葉を薙ぎ払った。地に突き刺さった笹の葉が、まるでナイフが刺さったかのように鋭い傷跡を残す。
「こいつが……主か!?」
 狂歌の叫びに、
「恐らくそうだ! コイツを倒さなきゃ、鏡にアプローチ出来ない!」
 利一が叫ぶ――同時に、再び地面が揺れ、地から複数のタケノコと、数メートルサイズの巨大な竹のゴーレムが現れ、イレギュラーズ達を威嚇する!
「こ、こんなに敵が……!」
 マギーが思わず息を呑む。現れた竹の軍団が、イレギュラーズ達へと向けて、進軍を開始した。
「怯んじゃダメっすよ! 敵のボスは目の前っす! だったら勝利は目前っすよ!」
 リサの叫びに、
「同感だよ。敵は追い詰められてる……だから」
 オニキス・ハートが頷く。魔力銃を構えて、敵の群れにポイント。
「そうだね……行くよ皆! この魔物をやっつけて、迷宮を踏破する!」
 ニーニアが叫び――それを合図に、イレギュラーズ達は一斉に敵の群れへと突撃した。
「時間はかけていられない! 手早く全滅させるんだ!」
 真っ先に戦端を切り開いたのは、ゼフィラだ。時間さえ置き去りにする、それほどの速度で放たれる光の一撃が、襲い掛かるタケノコを吹き飛ばす。
「雑魚は引き受ける! 主を討伐してくれ!」
 利一が叫んだ。受け流しの構えを取った利一へ、竹のゴーレムの鋭い手が迫りくる。それが利一の顔面を捉える刹那、構えた右手でゴーレムの腕を横へと押しやった。わずかな動き。それだけで大きく射線をそらされた腕が、利一をとらえきれず地を抉る。
「タケノコども! 俺が相手だ!」
 狂歌が武器を振り回して、タケノコたちへと応戦する。鋭く迫りくるミサイルのようなタケノコの攻撃にさらされつつも、狂歌はタケノコを自身の暴風圏に巻き込み、吹き飛ばす。
「狂歌さん! 無茶はダメなのですよ!」
 ミミが放った魔法の絆創膏が、狂歌のほっぺたに張り付くや、全身の傷を瞬く間に癒していく。
 迷宮の主が、再び笹のナイフを振り散らせ、イレギュラーズ達を切り裂くべく発射する。舞い散り無数の刃が、イレギュラーズ達に無数の傷を負わせた。
「わわ、大変なのです! 皆さん、頑張るのですー!」
 自らも傷つきながら、ミミはポーションをあたりに放り投げて、仲間達に薬液を降り注がせる。
「ありがとう! 私も……!」
 ニーニアが、カバンから機械のようなものを取り出して、放り投げる。それは、配達用でありながらニーニアの不用意な一言で戦闘用に改造されてしまった、『ポータードローンβ=マルチプル』だ。
「いって、ドローン!」
 ニーニアの指示に従って、ドローンは迷宮の主へと突撃する。複数展開されたそれが、周りのタケノコや竹のゴーレム達に取り付いて、電流を流した。身体を駆け巡る電撃が、竹の魔物たちに強かなダメージを与えていく。
「そろそろ終わりにしましょう!」
  マギーの茨がタケノコたちを次々と縛り上げ、消滅させていく。果たして、主へと向かう道筋は出来た。
「まとめてどかーん、っす!」
 リサがその道をさらにこじ開けるように、自走式の爆弾を発射する。あちこちで爆風が舞い、タケノコや竹のゴーレム、そして主に爆風が襲い掛かり、その身を苦痛に歪めるように揺らした。
「8.8cm大口径魔力砲マジカル☆アハトアハト、発射(フォイア)!」
 オニキス・ハートのマジカル☆アハトアハトが、その強力な砲弾を発射した。それは寸分たがわず主の身体を狙い、砲弾がその身体に直撃する! ドン、と音を立てて竹の外装はぶち割れて散乱し、内部に隠されていた呪具――鏡を露出させた。
「これで最後だ!」
 ゼフィラは跳躍し、その手の機械義手を、現れた鏡に向けて掲げた。途端、放たれた光が鏡を飲み込み、鏡を粉砕した――。

 鏡が粉砕されたと同時に、周囲に異変が起こった。主の竹はまるで悲鳴を上げるかのようにその身体をよじらせ、瞬く間にその身体の色を灰色に変貌させた。瞬間的に枯れていったのだ。
 同時に、周囲の迷宮を構成する竹にも異変が起きた。それらは瞬く間にぱらぱらと破片となって崩れ始め、その破片も風に消えて消滅していく。現れた時と同様、迷宮は瞬く間に消滅し、後には枯れた主の竹だけが残ったが、それも程なくしてチリとなって消滅した。
「終わった……っすか?」
 リサが呟くのへ、答えたのはオニキス・ハートだ。
「そのようだね。ミッション・コンプリート。タケノコが食べられなかったのが残念」
「や、やりましたね……!」
 マギーがほっと胸をなでおろしながら、そう言った。
「村の建物はいくつか壊れてるが……再建すれば問題は無いだろうな」
 狂歌が言う。村の建物は一部傷ついてしまっているが、それは仕方のない事だろう。
「それにしても……呪具、なのですか? だれが何の目的で、こんなものを送ってきたのでしょう」
 ミミが言うのへ、利一が鏡の破片を手にしつつ、答えた。
「今調べた限りじゃ、確かにこの鏡に何らかの細工が施されていた、って事しかわからないな」
「でも、今回の首謀者も、じきに分かるかもしれないよ」
 ゼフィラが微笑みつつ、告げた。調査はこれから始まるのだろう。そして、今回の件の首謀者も、やがてイレギュラーズ達の前に姿を現すに違いない。
「問題は山積みだね……でも、夏祭りを台無しにされなくて良かったよ」
 ニーニアがそう言って、胸をなでおろした。
 事件の首謀者は不明ではあったが、少なくと一つの村を、イレギュラーズ達は救ったのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のご活躍により、竹の迷宮はその姿を消し、村人たちも無事に元の生活へと戻れたそうです。

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