PandoraPartyProject

シナリオ詳細

幸せの青い鳥

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 カムイグラは比較的平穏な地であり、人々は緩やかな時を過ごす。
 ただ、時に怨霊や妖怪達が悪さをしており、住民達が被害に遭うこともしばしば。それらの対処に当たる鬼人種達もいる。
 悪さをするのは人外の存在だけでない。堕ちた八百万……精霊種や鬼人種達が盗賊や山賊として活動することもある。

 高天京から少し離れた集落跡。
 そこはかなり前に怨霊騒ぎによって住民達が住む場所を追われてしまったそうで、今はならず者達の拠点となってしまっている。
「ほお、なかなかの収穫じゃねえか」
 その色黒なヤオヨロズの男、引き締まった肉体を持つ勘一は部下達が奪ってきた物品、食料などの量に満足そうに頷く。
 炎を操る勘一は、強すぎる力を持つゆえに周囲から嫌悪され、盗賊稼業へと身を堕としてしまっている。
 しかしながら、その勘一を頭目として10数名の者達が付き従い、彼らがあちらこちらの街で暴れて強盗、窃盗を行い、日々を過ごしていたようである。
「ほお、娘も攫ってきたのか」
 部下達は物珍しい娘を攫ってきていた。
 都市は10代前半、長い銀髪の少女で、背に青い翼を持つのが特徴的だ。
「「ぐへへ……」」
「可愛い嬢ちゃんだな。俺の好みだぜ……」
「…………」
 おどおどした態度の少女はルリと名乗るが、高圧的な態度のならず者達に怯えっぱなしでなかなか口を開こうとはしない。
 とはいえ、この娘についてもまた、頭目である勘一に扱いは一任される。それだけ、彼は部下達から慕われているのだろう。
「こいつはどうしたもんかな」
 しばらく考えていた勘一は傍にいた用心棒の源三郎がこちらをじっと見ていたのに気づき、にやけ顔で返す。
「どうした? 惚れたか? ククク……」
 年齢差を考えれば娘にも近そうな年頃だが……。
 ともあれ、勘一はその処遇については保留して。
「しばらくは楽しめそうだ。その後、のんびり考えることにするさ」
 奪った財で、数日から半月程度は遊んで暮らせる。
 勘一もその間はこの娘を傍に置き、態度を見ることにする。気に入らぬ態度を取ったら、どこかに売ってしまうまで。
「まぁ、当面は働いてもらうとするか。……な、おい?」
「……は、はい」
 ならず者の頭目に顔を覗き込まれたルリは、その威圧感に思わず顔を背けてしまうのだった。


「とある八百万の資産家が『保護』していた少女の救出を願います」
 此岸ノ辺にて、やってきたイレギュラーズ達へと『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が説明を行う。
 依頼主は、高天京に住む初老のヤオヨロズの男性源次だ。
「その方、翼を持つようですが、飛行種の方ではないようですね」
 その少女は、ヤオヨロズには『天狗』でなく『神人』として扱われていたことから、旅人だと思われる。
「名前は、ルリ=ウェルフェアというそうです」
 大きな特徴は、背に生えた青い翼。
 なんでも、彼女は幸せを呼び込み、その翼に宿らせるのだという。
 それを知った源次は、ルリを館の一室に囲って『保護』していたそうなのだが、街にやってきてあちらこちらを破壊し、暴れ回っていたならず者達に連れ去れてしまったのだとか。
「……その方の境遇については少し引っかかる点はあるのですが、今はならず者を懲らしめてルリさんを奪い返すことに注力しましょう」
 高天京から少し離れた集落跡。
 そこにある荒れた屋敷にならず者達は居を構えている。
 数は合わせて10数人だが、中には頭目を始めとして強い力を持つ相手もおり、油断は禁物だ。
 無事に少女を助け出せたのなら、帰り道で交流しながら時を過ごすといい。何か食べ物などあれば、少女は喜ぶことだろう。
「以上ですね。皆さんのご活躍を祈っています」
 そう告げ、アクアベルは説明を締めくくったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 捕らわれた旅人の少女の救出を願います。

●概要
 旅人の少女の救出。
 ならず者達の討伐。

●敵……ならず者×14名
 多くは鬼人種ですが、数名が精霊種です。

〇頭目、勘一……ヤオヨロズ(精霊種)40代男性。
 色黒な肌と引き締まった体を持ち、炎の力を操って飛ばすだけでなく、その身に纏って攻撃力を高めて殴り掛かってきます。

〇用心棒、源三郎……ゼノポルタ(鬼人種)30代男性。
 着物を着用した細身の男ですが、優れた剣客のようです。

〇部下達×12名
 いずれも2~30代男性。
 基本的には精霊種2名がマウントを取る状況のようです。

・精霊種2名
 かなり横柄な態度をした若者達で、それぞれ風と雷を操ります。
・鬼人種10名
 並の力の部下達。刀、槍、金棒等で武装しております。

●NPC
〇ルリ=ウェルフェア
 首に首輪と背に青い翼を持つ旅人の少女で、ニア・ルヴァリエ(p3p004394)さんの関係者です。戦闘能力は皆無です。
 青い翼を持つ彼女は、幸運、幸せを無意識に呼び込みます。
 元々は、高天宮に住むヤオヨロズ宅に『保護』されていましたが、部屋の壁を破壊されてしまい、ならず者達に攫われてしまったようです。
 なお、ならず者の拠点では、屋敷内で下働きを行わされているようです。

●状況
 現在は打ち捨てられた集落跡、ボロボロになった屋敷をならず者達が拠点としております。
 入口は正門と裏門。それぞれに鬼人種が2名ずつ見張りとして立っています。敷地は高さ2m程度の竹垣に覆われており、そちらは建て替えたのかしっかりとした造りとなっています。
 ならず者達は居間で、攫ってきたルリさんをどうしようかと話しながら、今後の予定について語り合っているようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 幸せの青い鳥完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
篠崎 升麻(p3p008630)
童心万華
ヨル・ラ・ハウゼン(p3p008642)
通りすがりの外法使い

リプレイ


 高天京から少し離れた集落跡へと向かうローレット、イレギュラーズ達だが、どうにもその表情は浮かない。
「何と言いますか、依頼主も依頼主であまり穏当な感じもしないですわねー」
「誘拐した連中は連中なのだけど、高天原もきな臭いのよね……さて、どうしたものかしら……」
 柔和な笑みを浮かべた海種女性、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)や赤毛をポニーテールとした『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)が言うように、そもそも依頼主であるヤオヨロズ男性に対してメンバーは些か不信感を抱く。
 依頼内容はとある旅人の少女の救出。しかし……。
「『保護』……ね」
 小麦色の肌をした猫耳女性、『君が居るから』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)がぼそりと呟く。
「依頼してまで『救出』させようとする位には、その効能は本当という事でしょうか」
 蒼い衣を纏う黒髪の巫女、『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)が言っているのは救出対象である蒼い翼を生やした旅人の少女のことである。
「幸せの青い鳥を手にするものは幸せを得られる……か」
 目的の屋敷跡を見つめる外法使いの女性、『通りすがりの外法使い』ヨル・ラ・ハウゼン(p3p008642)が呟いた内容がある意味での依頼者の目的。
 青い鳥の幸せは何処に。そんなヨルの問いに答える者はいない。
「ルリさんを、幸運を呼ぶためだけに使う道具としか思ってないのでしょうか。本人は不幸しかないのに……!」
 自らの幸せの為に、救出対象の少女を不幸にしている依頼主に、小柄な茶髪ロングの女性、『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は怒りを隠せずにいる。
 ――自分と同じ、青い翼を持つ女の子。
 3対の青き翼を持つ『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)にとって、その救出対象少女はだったそれだけの事だったのだが。
「……助けたいって、思ったんだ」
 彼は捕らわれの少女に、自らを重ねたのだろうか。
「滅茶苦茶気に食わないけど……、まずはここから助け出してやる方が優先かな」
「私たちで、ルリさんに幸運をもたらしてみせましょう!」
 ニアが「さ、行こう」と仲間達に促すと、ユーリエが応じて気合いを入れた。
 イレギュラーズ達は青い翼の少女ルリの救出を誓い、作戦を決行するのである。


 以前あった怨霊騒ぎの影響で、集落跡に元の住人の姿はない。
 今いるのは、ヤオヨロズを中心とした豊穣のならず者達。力で攻め来る鬼人種がメインではあるが、中には自然の力を操る精霊種もいる。
 そんな彼らが物取りの為にと街にやってきて、青い翼の少女を攫ったというのだが……。
「資産家の館の一室に囲われていた筈の彼女が簡単に連れ去られたというのは、少し気になりますね」
 行き当たりばったりにしてはおかしいと冬佳は睨んでいたようだ。
「或いは……そこに居る、という事を知っている者が襲撃側に居たか……?」
 ともあれ、考察はそこまでにして、イレギュラーズ達は正門からの陽動班と側面から突入の救出班へと分かれて作戦に臨む。
「陽動の方、よろしくお願いいたしますわー」
「ああ、最善は尽くす」
 救出班のユゥリアリアの言葉に、陽動班の『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)が返答すると。
「騒ぎになったら、そちらのタイミングで突入してネ」
 こちらも陽動班ヨルの言葉を了承した救出班の面々は、屋敷の側面側へと回り込んでいく。
 救出班はユゥリアリアの他、ニア、冬佳、ハンスが当たる。いずれも簡易を含めて飛行手段がある面々。見張りのいる裏門を避けて垣根を飛び越えて屋敷跡への侵入をはかる。
(正門、裏門は2人ずつ、屋敷内の巡回に1人、後は屋内……)
 とりわけ、少女の保護、離脱を担うハンスは高く飛び、敷地内の間取り、敵勢力や位置を確認する。
 ひとまずは陽動班の様子を見つつ、近場に身を隠す冬佳。
 側面部は竹垣が高いこともあってならず者達の警戒は薄く、冬佳もドリームシアターを使ってまで身を顰める必要はないと判断したようである。
「陽動組がどの程度釣り出せたか、見ておきたいですわねー」
 ユゥリアリアは正門の様子を窺いながら、突入のチャンスを待つ。
 一方の陽動班は、ユーリエ、ルチア、升麻、ヨル。
「まずはルリ殿の救出といこうか」
 突入に当たって、ヨルは霊魂疎通でこの辺りに漂う霊に協力を仰ぐ。
「キミ達の、懐かしき場所に心無い連中が我が物顔で居座ってる」
 集落跡とあって、この地で眠ったままになっている者もおり、夜はそういった霊達に呼びかける。
 ルチアは幻影を作り出し、自らも髑髏を被ってその中へと紛れ、正門を見張るならず者の部下達を誘い出す。
「幻影とはいえ、死者を利用するような真似をして申し訳ないのだけれど……御免なさい」
 そんな生真面目なルチアの態度は、ヨルの呼び出した霊達に今回を抱いたようである。
 ギフトによって吸血鬼化したユーリエはというと、近場に待機させた相棒の蝙蝠と共に禍々しいオーラを纏わせて。
「これで怨霊と見紛うことでしょう!」
 自信満々で依頼に臨むユーリエが先に、蝙蝠を正門へと向かわせていく。
「ん……?」
 見張りのならず者達がそれに気づくと、今度はヨルの呼び出した霊達やルチアの幻影がゆっくりと近づく。
 ならず者達もこの地で怨霊騒ぎがあったことは知っていただろうが、実際にそれを目の当たりにすれば……。
「「う、うわあああっ!!」」
 ヨルの目論見通り思いっきり驚いた正門の敵を、升麻が奇襲する。
 すでに大声を上げてしまったこともあり、新手が駆けつけるのは避けられないだろうが、彼は助けを呼ばれる可能性を少しでも減らそうと首、肺を狙って妖刀で斬りかかる。
 正門に異常があれば、屋敷の巡回や裏門の警備もそちらへと向かっていく。
 駆けつけてきた連中共々、迎撃を行う陽動班。ユーリエは蝙蝠を自らの近くへと戻して同班メンバーと交戦を開始する。
「始まったようですわねー」
 ユゥリアリアは屋敷内からもならず者達が慌ただしく出ていくのを耳にして仲間と頷き合い、側面部の垣根を飛び越えて少女の救出を目指す。
(せっかく陽動してもらってるのに、音を立てちまうワケにはいかないし)
 ニアは互いの仕事がしやすいようにと、精霊の風を纏って音を遮断する。
 冬佳、ハンスも騒ぎに紛れるように、屋敷へと忍び入るのだった。


 屋敷跡正門。
 升麻の一撃を受けた門番達から血飛沫が飛び散るが、まだそいつらは倒れていない。
 確実に撃破すべく、事前に気力の使用能率を高めたユーリエが破滅の黒い剣を投影して。
「道を切り開け……ガーンデーヴァ!」
 素早く彼女の手から放たれた真紅の矢が一度に門番2人を倒してしまう。
 続いて、巡回と裏門にいた2人が正門へとやってきたのだが、物陰に隠れたヨルが殺傷の霧を展開し、続く升麻が妖刀「血蛭」を旋回させて暴風域を巻き起こして撃破した。
 ルチアは体力回復の為に控えるが、序盤は仲間達に声援を送って気力の回復に当たる。充填力が高いルチアがそれで気力が尽きることは無く、本格的に体力回復が必要になっても場を持たせられるよう備えていたのだ。
 見張りを倒してしまった後は屋内からも部下達が駆けつけてくるが、ヨルが奇襲をと死者の怨念を一条に束ねてならず者どもを穿っていく。
「二手に分かれて分が悪い分、上手く立ち回らないと」
 順調に部下の数を減らすことができているが、それでも陽動班は4人だ。一気に来られてはこちらが不利となる。
 次は、一度に現れた部下達をユーリエやヨルが奇襲するが、さすがにそれだけで倒すのは難しい。
「よぉ、盗賊共。雁首揃えて斬られにきたか?」
 そいつらへと、升麻が名乗り口上を上げてならず者達を煽る。
「ああァ、喧嘩売ってんのかてめェ!?」
 これまで不意を突くことができていたが、部下達は刀、槍、金棒といった獲物を手にして、陽動班メンバーを威嚇してくる。
「ったく、こっちはしばらく奪ったブツで遊んで暮らせると思ってたらよォ……」
 ガンを飛ばしてくる部下の後方では、精霊種と思われる相手が大儀そうにやってくる。
 そいつらを、升麻はさらに引き付けるべく声を上げて。
「その首、腐った根性ごと刎ね飛ばしてやるから覚悟しろ!」
 さすがに、ここからは厳しい戦いになると踏んだメンバーが布陣を組む。
 升麻のすぐ後ろにルチア、ユーリエが控え、ヨルは距離をとったまま魔力を高めて。
「精霊種の二人……コイツら厄介だろうネェ……」
 これまでの相手とは違い、それぞれ風と雷を操る相手だ。
「てめェら纏めて消し炭にして……」
「海の向こうまで吹き飛ばしてやんぜ……!」
 メンチを切ってくるならず者達。
 なお、頭目と用心棒の姿はないことを陽動班メンバーは察し、救出班の成功を祈りながらもこの場のならず者達を抑えに当たるのだった。

「ええーいですわー」
 ユゥリアリアが居間の戸を蹴破り、救出班メンバー達が屋敷内へと突入した。
 そこは、ならず者達がバカ騒ぎした後があり、昼間とあって酒こそなかったが、奪ってきた飲食物を食い散らかした状態で放置されていた。
「これはチャンスですね」
 そう言いながら、冬佳が正門側の方の様子を窺う。
 騒ぎを聞いてほとんどのならず者が正門へと出払ってしまったのだろう。今はほぼ誰もいない状況でどうやら、正門の方に頭目や用心棒も足を向けていたらしい。
「……すんなり助けられれば良いんだけど、そうじゃない時に備えるのがあたしの仕事だね」
 ニアが言うように、いつならず者達が戻ってくるか分からない。
 撹乱の為、冬佳はここぞとドリームシアターを使って屋敷の壁を増やす。
 居間にユゥリアリア、ニア、冬佳が残り、警戒を強める中、ハンスが屋敷跡内のどこかにいるルリの姿を探す。
「普段から恨みを買っていそうな連中だ。初手なら相手はこちらの目的がルリさんだとは分からないはず……」
 正門へと敵の注意が向いている間に、ハンスはルリを掻っ攫ってやると意気込んでいると彼女の姿を炊事場で発見して。
「えっ、あ、あのっ……」
 戸惑うその銀髪の少女は白い服を纏い、背にはハンスと同じ青い翼が。
(なんて素敵な翼なんだろう……)
 同じ青い翼でも、幸福感を与える自分の翼はとは似て非なる物。
 文字通り、幸運、幸せを与えてくれるそれに、ハンスは羨ましさも感じていたが、本人の身体が震えていることに気づいて。
(きっとすごいストレスだった筈、不安を取り除いてあげたい)
 ハンスはギフトを使い、自らの青い翼で相手を引き付けて。
「その翼……」
「どうか安心して欲しい。もう大丈夫……僕たちは君を助けに来たんだ!」
 誘惑の力も働かせ、ハンスはルリを落ち着かせる。
 あんまりこういうの使うのは良くないとは思いながらも、今は急場だということもあり、ハンスは瑠璃を抱えて急いで居間へと戻っていく。
 だが、そこにはすでに、ならず者の頭目である勘一と用心棒の源三郎が部下2人を連れて戻ってきていた。
「ただで済むと思ってねェよなァ……!?」
「ああ、あたしが相手になってやるよ」
 引き締まった体を持つ頭目は上半身を勢いよく燃え上がらせており、抑えに当たるニアが惑わせる精霊の風を解き放って強く注意を引く。
「…………」
 着物を着用した鬼人種の用心棒も無言でその横につき、刀の柄に手をかけて鋭い視線を向けてくる。
 そちらにはユゥリアリアがついており、牽制にと血を媒介に精製した氷の槍で迎撃に当たっていた。
 丁度、そこに、ルリを連れたハンスが現れたことで、頭目はイレギュラーズ達の素性はともかく、狙いは察したらしく。
「てめェら……狙いはそのガキか……」
 すぐさま、この場を居間にいたメンバーに任せたハンスは、ルリを連れて正門の方へと全力で移動していく。
「野郎ォ、待ちやがれェ!!」
 燃え上がる炎を飛ばそうとした頭目の前に、ニアが立ち塞がって。
「ただでは済ませないんだろ。追いたいなら、あたしを倒してからにするんだね!」
 だが、居間に残るメンバーもこの状況で交戦を続ける気はない。
「いきますー」
 その間に、ユゥリアリアが事前に仲間達へと知らせていたパーティーグッズ「聖夜ボンバー」を炸裂させて。
「んだァ、これは……!?」
 派手に爆発して光や音を放ち、頭目や用心棒らの目と耳を塞ぐ。
 その間に、冬佳がダメ押しにと再びドリームシアターを使ってダミーのルリを投影し、交戦していた救出班もニアを殿として正門へと駆け出していく。
 なお、ハンスは正門の戦いをすり抜け、しばらく行った先の物陰でおろして。
「待ってて」
 ルリが小さく頷いたことを確認し、ハンスは正門での戦いに参戦すべく引き返していったのだった。


 正門付近での戦いは、徐々に激しさを増して。
 ヨルがロベリアの花を使って部下の数を減らしていたが、部下の中でも格上の精霊種達が抑えに当たる升麻の体力を削ぐ。
 雷と風、激しく大地を揺るがす敵の攻撃に耐え、彼は不敵に笑う。
「追い詰めたと思ったか? 悪いが、僕の本気はここからだぜ……!」
 そこで通過していくハンスとルリに気を取られる間に、追い込まれた升麻は力を発揮する。
 しかも、そこで残る救出班3人が屋敷から飛び出してきて。
「救出は上手くいきました。後は……」
 冬佳はこの場のならず者達を見回す。すでに、この場は5人にまで敵は減っていた。
 それらがうまく纏まっているのを確認した冬佳は、ならず者達を捉えて陣を展開した内部で無数の氷刃で敵の体を切り刻む。
 升麻もそこでヤオヨロズの2体を狙い、手足の根元をぶった斬る。
「「ぐああああああァッ!!」」
 部下達が叫びを上げて倒れる中、ヤオヨロズ達もまた崩れ落ちていく。
 この場のならず者を討伐したと思いきや、屋敷内から炎と共に刃が一閃する。
 それまでギリギリで持ちこたえていた升麻は虚を突かれ、自身の血が噴き出すのを目の当たりにする。
 直後、パンドラが発動してその血の一部が自らへと巻き戻り、彼は倒れるのをこらえてみせた。
「チッ、やっぱり仲間だったか」
 唾を吐き捨てる頭目と眉を顰める用心棒。それに配下2体が屋敷から姿を現した。

 両者のメンバーが合流してきたところで、仕切り直して交戦は再開する。
 ヨルは変わらず死霊弓で狙い撃つのは、ニアやユゥリアリアが抑えに当たる頭目や用心棒。
「オラオラァ!!」
「…………」
 彼らは大胆な立ち回りでイレギュラーズ達をも一気に叩き、攻め立ててくる。
 抑えに当たる2人を、ルチアはミリアドハーモニクスを振りまいて支える。
(用心棒の男……)
 冬佳はこれまでの振る舞いで、彼が自身の展開した幻影を含めてルリを気がけていたのを察していて。
「大した剣の腕のようですね。それだけの腕があって、何故このような賊の一味をしているのですか?」
「…………」
 用心棒、源三郎は語らず、己の役目を果たすべく刃を振りかざす。
 冬佳は大天使の祝福でできる限り高火力のならず者の実力者達を抑える2人の体力を維持する。
 彼女達の気力が尽きぬよう、ユーリエは回復能率を高める
 その間、残る部下へとユゥリアリアが絶望の海を歌い、部下2人を同士討ちにしてしまって。
「貴様らァ……!」
 苛立つ頭目が調子を見出されている間に、一度パンドラを使った升麻が気を送り込んで魅了された部下を1体排除し、もう1体はヨルが死霊弓で穿って倒してしまった。
 残る実力者達、用心棒源三郎は宙を飛ぶ斬撃を操り、優れた剣技を見せつけてくるが、憤りを感じるローレット勢に抑え込まれて。
 用心棒を抑えるヨルが惑わせる精霊の風を纏わせた風断ちの刃で切りかかって反撃を与えると、支援を終えたユーリエが破滅の黒い剣を差し向けて。
「怒りの一撃を受けなさい!」
「…………!」
 用心棒へと撃ち込むと、そいつは白目を向いて崩れて落ちてしまう。
「チィッ!」
 その腕は確かだったはずと頭目も認めている。この場はイレギュラーズの勢いに押され、炎の猛撃すらも燻ぶってしまう。
 そこにいつの間にか戻ってきていたハンスが速力を活かして頭目へと近づいて。
「ちょっとね、怒ってるんだ」
 その言の葉と鬼の角……『存在しない』鉤爪を具足から突き出し、彼は頭目の体を貫く。
「グ、オオオオッ!!」
 負けるものかとその身を燃え上がらせ、自らの傷を焼いて塞ぐ頭目は、さらに燃え上がる拳を叩きつけてこようとするが、冬佳が抑えて穢れ無き水を一閃させてその炎の勢いを弱める。
 そして、全盛にまで力を高めたユゥリアリアがまたも氷の槍を作り出して頭目のみぞおちを穿つ。
「クソ、ガァッ……!」
 完全に炎を鎮火させたならず者の頭目、勘一はその場へと崩れて落ちていったのだった。


 ならず者を全て倒したイレギュラーズ達は、助け出した青い翼を持つ少女ルリの元へと向かう。
「あ、ありがとう、ございます……」
「怖かったですわね」
 視線を宙に泳がせる彼女をユゥリアリアが慰める。
「いやー、盛大に暴れたな。マジで疲れたわ……」
 升麻はルリをチラッと見て、取り出したお菓子を差し出す。
 ルリは見ないようにとしていたが、お腹を鳴らしてしまって。
「しゃーない。これはお前にやるわ」
 升麻からお菓子を受け取ったのをきっかけに、ユーリエもスイーツタイムを使って甘ーいスイーツを振舞う。
「おいしい……」
 ハンスも忘れていたとフルーツサンドを差し出すと、ルリは少しだけ戸惑いながらも受け取り、口にしていた。
「無事で良かったよ」
 喜ぶルリに笑顔を見せるユーリエ。ニアもそんな彼女の様子に安堵を見せる。
「ルリ殿。これからどうしたいか聞いてもいいカナ?」
 そこで、ヨルが問いかける。
 依頼はルリを『保護』していたヤオヨロズによるもの。戻れば間違いなく、鳥籠の鳥となる。ある意味で下働きとはいえ屋敷内を動けたならず者よりも待遇は悪いとさえ言える。
 このまま返していいものかどうかとヨルは尋ねていたのだ。
「戻るのが嫌なら、何かしてあげたいですがー」
「力になるよ。……どうする?」
 ユゥリアリアやルチアが本人の意思を尊重しようと問いかける。
 本当に嫌だと言うなら、手を差し伸べたい。そう考えて。
(青い翼で本人が不幸になるなら、おかしいよ)
 ハンスは彼女の境遇に関しては何もできないと自認しながらも、絵笑顔でいてほしいと考えている。
「……ルリ。あたしは、飼い猫が嫌で故郷を出たクチだからさ」
 最後に、ニアが言葉をかける。
 どうしてもと言うなら、ローレットを頼ってほしい。元々旅人なら、ローレットに所属できる資格はあるのだ。
「それなら『保護』の必要は無くなるよ。すぐに決めるのは難しいとは思うけど、ね」
 ただ、ルリの表情は、一行が優しくすればするほど陰るようにも見えて。
 少し考えていたルリが出した結論は……。
「……戻ります。助けて頂いた、方なので……」
 籠の鳥になると分かっていながらも、ルリは戻ると一行に語る。
 少しだけ落胆も見せながらも、イレギュラーズは彼女を連れて高天原へと戻っていくのだった。

成否

成功

MVP

ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開中です。
MVPは無事、捕らわれの身となった青い翼の少女を助け出したあなたへ。
続編を準備中です。しばしお待ちくださいませ。
今回はご参加、ありがとうございました。

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