PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夏のトロピカルパフェを作って親睦を深めよう!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「はあ……」
 一人、純白のクロスが敷かれたテーブルで頬杖をつき、溜息を吐く美女が居る。
 外見だけでいえば歳の頃は二十歳程度。長い黄金色の髪と澄んだ湖の様な蒼い瞳が特徴的な女性。
「はあ……」
 辺りに誰も居ないことを確認して、再度溜息。視線の先にはカレンダーがあり、“その日付”が近づいてくることを、本日だけで二十五回目の確認をした。
「駄目ね……、私……。
 リゲルはきちんと過去を振り切って、国の復興に奔走しているっていうのに」
 彼女の名はルビア。リゲル=アークライト (p3p000442)の母親だ。
 その日というのは、7月11日。
 リゲルの父であり、ルビアの夫である――シリウス=アークライトの、命日だ。
 旦那と息子が不在の今、天義に残りアークライト家を切り盛りしているルビアだったが、本当は寂しがりの一面を内に秘めている。『コンフィズリーの不正義』による一連の謀略に巻き込まれ、天義への怒りから魔種へと反転し、最後は愛する息子を庇って死んでいった、最愛の夫。
 その命日が近づくにつれ、どうしても気分が落ち込んでしまうのだ。
「――いけないわね、気分を変えて溜まった仕事でもしましょ」
 数え切れない溜息に終止符を打ったルビアがそう言って立ち上がり、大きな居間を出ていく。

「……」

 その頃合いを見計らって、リゲルが柱の陰から姿を露わにした。
「やはり、落ち込んでいたか、母上……」
 近頃のルビアの様子を不審に思ったリゲルは、彼女の様子を窺っていた。そして、その原因がやはり父の命日であることを、漸く確信したのだ。
(母上を元気づけられると良いのだが……)
 ふむと考えこむリゲルに、少し前のルビアの発言がリフレインする。
(……そうだ、母上は以前、“楽しくお茶会を開きたい“と言っていた。
 これを機に皆を誘って、お茶会を開こう!)
 ついでに、何か皆で楽しめる企画も考えられると良さそうだ。
 良案を思いついたリゲルは走って居間を出ていく。
 ――これから、準備に走り回らなくては!


いつもお世話になっている皆様へ

拝啓
小暑を過ぎ、夏本番を迎える季節となりましたが、皆様方はいかがお過ごしですか?

 このたび我が母ルビアを元気づけるべく、我が父シリウスの命日でもあります7月11日に、我が家でお茶会を開催したいと思い立ちまして、ご案内をさし上げました。

 みんなで夏のトロピカルパフェを作って、お茶と共に楽しみたいと考えております。
 (フルーツやアイス、生クリーム等の材料もふんだんにご用意する予定です。)

 急なことですが、みんなで盛大に執り行い、母上を元気づければと思っております。
 ぜひともお越しいただければ嬉しいかぎりです。
 (なお、内輪だけの席ですから、ご遠慮されずお越しください。)
 心よりお待ち申しております。まずは書中にて、ご案内まで。

敬具
リゲル=アークライト

GMコメント

この度は、シナリオのリクエスト、まことにありがとうございます。

■ 成功条件
● お茶会を楽しむ。
● ルビアを元気づける。

■ 現場状況
● アークライト家
・ 《天義》内にあるアークライト家の邸宅です。時刻は昼間で、アフタヌーンティの時間帯でしょう。
・ 広い居間で、夏のトロピカルパフェをみんなで作りながら、お茶会を楽しみます。
・ 居間にはアイランド形式の大きな台所があり、外には綺麗な庭も一望できますが、それ以外にも、プレイングに書かれたものは原則、存在することになります。
・ 夏のトロピカルパフェを作るための素材(フルーツやアイス、生クリーム等)はリゲルさん・ポテトさんご夫妻が準備しており、プレイングで書かれたものは原則、存在することになります。
・ パフェ以外の軽食なども描写可能ですので、ご自由にお楽しみください。
・ リゲルさんは主にホストとして、ルビアさんや参加者の皆さんを持て成そうと、執事服で紅茶を提供したりします。また、リゲルさん以外の人も、お好きな衣装を着られるとして構いません。

● 味方状況
■ 『ルビア』
● 状態
・ リゲルさんの母親であり、シリウスの妻。天義の貴族の令嬢。
・ 令嬢らしく、礼儀作法はお手の物。
・ 無類の紅茶好きで、賑やかにお茶会を開くのが大好き。
・ 茶葉を集めるのが趣味で、ローレットにも依頼を頼めないかと機を伺っています。今回は、これまでの皆さんの功績から、特別にローレットから茶葉の提供があり、望んだ茶葉は大体窘めます。

● 備考
・ 『紅の花』ルビア=アークライトさんは、リゲル=アークライト (p3p000442)さんの関係者です。

皆様のプレイング、心よりお待ちしております。

  • 夏のトロピカルパフェを作って親睦を深めよう!完了
  • GM名いかるが
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月07日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)
絆魂樹精
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ネージュ・クラウベル(p3p006837)
雪原狼

リプレイ


「皆、今日は応えてくれて本当に有難う!」
 リゲル=アークライト(p3p000442)の声が、リビングの中に響く。そこには、リゲルの六人の戦友と妻のポテト=アークライト(p3p000294)、そしてリゲルの実母である『紅の花』ルビア=アークライトが両手を胸の前で合わし、満面の笑みを浮かべていた。
 リゲルはモーニングコートを着こなし、優雅に一礼し客人を出迎える。その横では、白と黒で彩られたクラシカルなメイド服に身を包んだポテトが立っている。
「お手紙ありがとうリゲル君~。
 ボク、料理したことないんだけど、頑張るよ~!」
「ノアルは料理をするのは初めてか。よし、私と一緒に頑張ろうか」
「ポテト君が居れば安心だ~」
 ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)が細長い耳をぴょこと立て、微笑んだ。ノアルは深い緑で統一されたドレスで身を包んでいる。胸より上と腕、そしてスカートの裾はレースになって透けており、涼やかさと気品を両立させている。レース部分は、植物の葉を模っている様だ。
「あわわわ、お茶会だー! ってうきうき来たらすんごいお屋敷だよ!?」
 ノアルの横では、御誘いに意気揚々と参加したのはいいものの、アークライト家の貴族な空気感にやや動揺気味なフラン・ヴィラネル(p3p006816)。
 その隣では、
「あわわ……リゲルさん、あ、いやや、リゲル様、貴族様だったのですね……ひ、非礼などなかったでしょうか……!」
 パーシャ・トラフキン(p3p006384)がフランと同じく、あわわしていた。
「あ、パーシャ先輩も緊張してそう! よかった、お仲間だぁ」
 胸を撫でおろすフランの元にリゲルが歩み寄る。
「そんなに畏まらないで下さい、パーシャさん、フランさん。これまでと何も変わりませんよ!
 友人……の間に、貴賤なんて無いでしょう?」
 リゲルは“友人”のところで少しだけ含羞の表情をしながら言った。
「うう、《幻想》は怖い貴族様が多いので、優しいお言葉をいただけて恐縮です……!
 リゲルさんのお母様のお口にあうお料理を作れるかは分かりませんが、精一杯頑張ります!」
 パーシャの言葉に続けて、フランも元気よく首肯した。
(……貴族のお茶会に招待された経験は中々無いな。
 今日は楽しんで貰うし、楽しませて貰うさ。
 魔術師のウィリアムとして、な)
 ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)はリゲルから借用した濃紺色のタキシードに身を包んでいる。紅葉色の長髪と対照的な礼装が映えていて、良く似合っていた。ウィリアムはルビアの方へと歩み寄ると、軽く膝を折り一礼する。
「初めまして、ルビアさん。
 俺はリゲルの……友人の、ウィリアム。魔術師だ」
 ぎこちないその様子に「どうしたんだ」とリゲルが首を傾げる。
「その、なんだ……改めて“友達”だなんて名乗るの、照れ臭いだろ、なんか」
 そう言ってウィリアムは恥ずかしそうに頬を紅潮させた。
「……リゲルさん……今回はご招待ありがとう……」
 グレイル・テンペスタ(p3p001964)がリゲルに穏やかに礼を言った。そしてその横に居るネージュ・クラウベル(p3p006837)も口を開く。
「俺はネージュ。
 姉さんからお茶会の話を聞いて、参加させて貰った。今日はよろしく頼む」
 軽く頭を下げたネージュに、リゲルがにこりと微笑む。
「ああ、よろしく、ネージュ!
 今日は、ぴったりの御召し物を用意しているんだ。
 まずはドレスアップといこうか」
 そう言ってグレイルとネージュの二人を連れていくリゲルに対し、
「お嬢様方はこちらへどうぞ。
 ノアル様は、既に《深緑》の素敵なお召し物を着飾って居られるようですが」
 くすりとポテトが微笑みながら言うと、ノアルもわざと膝を折って一礼して見せる。その横で、フランが「ウィル先輩~!」と声を上げた。
「ドレスって着たことないやー、どんなの似合うかなぁ?」
「へっ? い、いや、俺あんま詳しくないし、つーか訊くならポテトに……。
 ……うぅーん。普段着ない色……って方向なら、赤色で膝下丈くらいの、とか……」
「私が“ウィル先輩”のご希望通りに見繕ってやる。パーシャもな」
「あ、ありがとうございます! お願いします!」

 ――――そうして四人が連れられて行って、幾許の後。

「……これ……ふむ……ネージュさんとお揃いなんだね……」
 空色を基調としたスーツに身を包むグレイルに、
「グレイルのは爽やかでいいな」
 対照的に黒を基本としながら、夕焼けの様な赤に彩られるスーツをばっちり着こなすネージュ。
「ネージュさんのもいいね……温かみを感じるよ……」
 その言葉に、ネージュは頬を掻く。
(誰かとお揃いの服だなんて、初めてだが。……案外嬉しいな)
 ネージュたちの隣では、深紅のドレスを着こなすフラン。
「見て見てー、先輩の髪の毛みたいな色! 似合う?」
「あ、ああ、似合っているよ。いつもよりちょっと大人っぽく見えるかな」
 ウィリアムの誉め言葉に破顔するフラン。その横では、パーシャが自分のドレスに視線を落としていた。
「とっても素敵。私、こういうお洋服を着る経験が全然無かったので、すごく緊張してしまいます……!」
「とってもお似合いだよ~」
 ノアルがぱちぱちと小さく拍手した。パーシャのドレスは漆黒。オフショルダーでフレンチ袖なのがカジュアルさを醸し出すが、そこから真っ直ぐにミモレ丈に伸びるシルエットがどこかクラシカルだ。
「……うん、みんな可愛いな。男性陣も普段と違う雰囲気で素敵だ。
 ――とは言え、この上にエプロンを付けると微笑ましくなるが」
 ポテトがくすりと笑みをこぼしながら言った。


「パフェ作りに使えそうな物は、一通り用意しておいた。
 要望のあった紅茶のゼリーやアイスは勿論、巨大パフェにさせそうなカットケーキ類もな」
 ポテトの言葉に各々が材料を選び始める。
「俺は、その紅茶のゼリーとアイスを使わせてもらおうかな」
 ……ルビアさんも紅茶が好きと聞いたし」
「ボクも紅茶のゼリーを使おうっと! あ、ネージュ君は、お菓子作りが得意なんだよね?」
「……! あ、ああ」
「ボク、料理ってしたことないからさ、教えてよ!
 桃と紅茶ゼリーのパフェとかどうかなー?」
 ノアルがネージュに意見を求める横で、ポテトが色とりどりの器を並べていく。
「金魚鉢みたいなおっきな器、いっただきー!」
「私は、こちらの長細い器をお借りしますね」
 ボリューミーなその器に真っ先に飛びついたフランに、慎ましやかな器を選んだパーシャ。
「器選びにも、個性が出るわねえ」
 くすくすと笑みを浮かべるルビア。その様子に、リゲルは内心、胸を撫でおろす。
(今日の俺は、父上を意識した横分けのヘアスタイル。
 母上は気づくだろうか――)
 そう内心で思いながら……。
「母上もパフェ作りに挑戦しませんか?」
「え? わ、私は……」
「遠慮なさらず、母上!
 ――さて、本格的にパフェ作りを始める前に、皆の御召し物を守らなくては」
 そう言ってリゲルから手渡されたバンダナを広げながら、ウィリアムは目をぱちくりとさせる。
「これ、リゲルが裁縫したのか……? すげえなあ」
「……エプロンも……凄くおしゃれだな……」
 グレイルが頷きながらエプロンを装着すると、続いて肘までは続くだろう手袋をする。ネージュも、同じく調理用の手袋をしている。毛が料理に入らないようにという、彼らなりのエチケットであった。
「さて……やるか」
 ネージュがノアルの眼前で盛り付けを始める。
 一番下層に紅茶のゼリー。その上に生クリーム、アイス、コーンフレークを重ねていき、手際よくカットしたリンゴの角切りを混ぜる。一番上に紅茶のアイスと、ウサ耳カットしたリンゴを添える。
「ウサギになってるんだ! 可愛いね~。
 ボクもネージュ君の手際を学んで……」
 ノアルがネージュと同じく最下層に紅茶のゼリーを敷き、その上に桃やホイップクリームを交互に入れていくと、最後にアイスを乗せれば桃と紅茶のパフェの完成だ。
「初めて作ったパフェにしては、随分と魅力的だな」
「うん、美味しそう~!」
「なるほど、お二人は紅茶で攻めましたか。
 では、私はフルーツを使ったチョコレートパフェを作りましょう」
「俺もチェコレートパフェにするか」
 そう言ってパーシャに続きウィリアムもチョコレートに手を伸ばす。
 パーシャのパフェは、コーンフレークを最下層に敷き詰めると、その上にスポンジ、たっぷりのクリームに、チョコレートでコーティングした夏のフルーツがごろっと。最後にハーブを振り、極めつけはエンジェルいわし型のチョコプレートを乗せていく。
「……その魚の形したプレートは気になるが、まあ。
 コーンフレークとチョコの相性は抜群だよな」
 ウィリアムのパフェはコーンフレークに細かく砕いたチョコレートを混ぜて詰めているところがポイント。そして、その上に乗せるフルーツも、小さ目の星型にカットしているのが“魔術師”らしい。最上段に雲をイメージした生クリームの層を作り、その中と上へ星形のフルーツを散りばめ、天辺には満月を意識したクッキーをザクッと一つ乗せる。
「こんな日に、暗い夜は似合わない。名付けて白夜・星雲のパフェだ!」
「す、すごく手が込んでますね……!」
「……名前が少しかっこつけすぎたかな?」

「私は黄色系をメインにしたパフェにしてみようかな」
「あら、いいわねえ。ポテトさんのイメージにピッタリ。
 私は赤色にしようかしら……イチゴは旬じゃないけれど」
「お任せください、母上。
 フルーツのカットはしますから、飾りつけをお願いしますね」
 皆の進捗状況を確認しつつ、リゲルはルビアの援護に入る。
 ポテトは器にコーンフレークを敷きつめ、カットマンゴー、ホイップ、カスタード、そしてバニラアイスを重ねる。一番上は桃、バナナ、パイナップル、マンゴーで色のグラデーションが美しい。最後にミントを乗せれば、完成。
「……ここまで材料がいっぱいだと……何を作るか迷うけど……。
 ポテトさんの……マンゴーとパイナップルは……とても新鮮そうだ……」
 グレイルは優れた嗅覚でとくに質の良いフルーツを見分ける。作るのはポテトのパフェに似た、黄色系のフルーツを使ったパフェ。マンゴー、パイナップルを使いつつ、パッションフルーツのゼリーを合わせて盛り付けることでより爽やかですっきりとした味わいを引き立たせる。色合いも美しい。
 一方、金魚鉢の器を確保したフランは、超大作の大詰めである。
(下はさっぱりめにカラフルなゼリーとフルーツ。
 綺麗な色合いになるように、そーっと……)
 その上にスポンジとクリームを乗せ、どんどん高さを出していく。そして一番上の方には、アイスをたっぷりと乗せ、そこに花のようにマカロンを散りばめれば完成だ。
 リゲルが辺りを見渡すと、全体的にパフェ作りが終盤に差し掛かっている。
(……よし、紅茶の準備をするか!)


「リゲルが紅茶を用意してくれたことだし、そろそろお茶にしようか」
 適度な渋みと爽快感のあるディンブラティーと、ダージリンのホット、そしてパーシャから差し入れのあったトロピカルローズのハーブティをリゲルが用意したところで、ポテトが皆に声を掛ける。
「サンドイッチや焼き菓子もあるんですね! うう、こんな素敵なお茶会に参加できるなんて……」
「甘いものばかりではなんだから、作っておいた。遠慮せず食べてくれ」
 パーシャの感涙にポテトが応える。みんながパフェを楽しめるように、立食形式で、小さなテーブルがいくつかある。リゲルの淹れたお茶を受け取った者から、自然とお茶会が始まっていく。
「ルビアさん! 見て見て、面白い子でしょー、このこ。のびるの!」
 フランがルビアの元に駆け寄り、びよーんと異世界から連れてきた犬を伸ばす。
「あ、あと、あたしのパフェのてっぺんのクッキーをお裾分け!」
「ふふ、それじゃ一口……って、あれ、もしかしてこれ。
 ……わたし?」
「せいかーい! 笑顔のルビアさんを描いたんだ!
 ……あ、でもルビアさんがこれ食べたら共食い? どうしよー?!」
「なんだか食べづわいわ?!」

「……ん……この紅茶……パフェと凄く相性がいいね。
……茶葉が……凄くいいやつ……だよね……?」
「流石グレイルさん! 鼻が利くみたいだね」
 リゲルが破顔して答えると、グレイルはカップに口をつける。
「ふふ、リゲルも爺やに鍛えられたのね。私もよく教えてもらったわ」
「……ルビアさんも紅茶好きなんだ……もしよければ……行きつけの茶葉専門店とか……教えて欲しいな……」
「あら、いいわよ。この国だったら、東に行ったところにある――」
 談笑するみんなの様子を見ながら、ネージュは内心で自分を鼓舞していた。
(皆の楽しい様子を見て……いるだけじゃダメだ。頑張れ、俺……!)
 おずおずとルビアに近づいたネージュは、
「ルビアさん、よかったらこれ……」
 と声を掛けると、自分のパフェとは別に作っていたミニミニパフェを差し出した。
「あら、かわいい! ずいぶん、器用なのね」
「そうそう、ネージュ君はお料理得意なんだ~」
 パフェの作り方を教わっていたノアルがひょこりと頭を出しネージュを誉めると、「そ、そうでもないさ」とネージュは頬を掻いた。

「この辺りで、余興でも披露しようかな」
 お茶会が程よく落ち着いてきたところで、ウィリアムが一人呟く。
 ウィリアムが軽く指を振る。すると、部屋の中央に突然、人々が集うローレットの風景、そして仲睦まじく過ごすリゲルとポテトの姿が鮮明に映し出された。
「わあ、すごい……!」
 ルビアが思わず感嘆を零す。それは、ウィリアムの記憶にある限りの、彼らの日常であった。
「――これなるは特異運命座標たちの絵姿
 勇猛果敢、一騎当千なる彼らもまた、平時はひとりひとり、只人の如く平穏を愛する――」
 詩を朗読するかのようなウィリアムの言葉に、ルビアはただ無言で、穏やかにその幻影を眺めていた。


(慣れないことをして疲れたが……楽しかった)
 楽しい時間ほど、早く過ぎる。ネージュが内心で一息つけば、もう陽が傾き始めていた。
 今日の茶会中、せっせと仕事をこなしていたリゲルを眺めながら、ルビアが口を開く。
「私は息子としてのあの子しか知らないけれど、お友達から見てどうなのかしら?
 うまくお勤めは果たせているの? 無理はしていないかしら?」
「リゲルは元気に、楽しくやってるよ。変わらずに。
 頼もしい仲間で、――気の良い皆の友人さ」
「皆、リゲルさんやポテトさんが大好きなんです。
 平民の私なんかにも、こうして優しくしてくださって」
 ルビアの心配そうな表情を打ち消すように、ウィリアムとパーシャが答えた。
「そんな人を大切に育ててきたルビアさんも、とっても素敵な方なんだろうなって。
 今日はお会いできてよかったです。
 ルビアさんのような、たおやかでお淑やかな《女性》(ひと)に、私もなれたらいいなあ……」
つんつんとルビアの肩を、ノアルがつつく。「こっそり耳打ちしたいことが……」と云うと、ルビアも耳を貸す。
「余計なお世話かもしれませんが……」
 ノアルはそこで、逡巡する様に一拍の間をおいた。
「今日、“七月十一日”は、リゲル君の誕生日ですよ。
 ……悲しいばかりの日じゃないでしょう?」
「……!」
 ノアルの言葉に、ルビアは思わず目を見開く。
「私ったら、……自分の事ばかりで、こんなに大事な日の事を、忘れてしまっていたのね……」
「それでもリゲル君は、ルビアさんの為にお茶会を開くことを優先したんですよ。
 ――ふふ。愛情、ですね」


 お茶会もようやくお開き。元の服に着替えて去り行くフランとグレイルが、ルビアに手を振る。
「ねえルビアさん、また遊びに来てもいいかなぁ?
 パフェがなくても、またルビアさんや皆とお話して過ごしたいなーって思ったの!」
「ええ、ぜひまた来て頂戴ね。
 グレイルさんは、おススメした紅茶屋さん、ぜひ行ってみてね」
「……ありがとうございます……また……感想を言いに来ますね……」
 名残惜しそうに客人を見送ったルビアは、残ったリゲルとポテトへと振り返る。
「――さて、リゲル。
 遅くなったけど、お誕生日おめでとう!」
 そして、にこやかに言った。
「……実は、今年は、失念していたの。ごめんなさい。
 お友達が教えてくれたわ。良いお友達を持ったわね」
 ルビアが顔の前で両手を合わせると、リゲルは「いえいえ」と首を振る。
「でも、おかげで、色々思い悩んでいたことを消化することができたわ」
「それならよかった! 父上もきっと、見守ってくれていますよ。
 それに母上には、俺達がついています」
 リゲルがポテトを見遣ると、ポテトも力強く頷く。
「これからも何かあれば、俺を父上だと思って頼ってくださいね。
 ……まだまだ父上に比べれば、俺は未熟者ですが。
 精一杯努力し、大人になりますから!」
「ふふ、それじゃあ、これからも頼りにしているわ、リゲル。それに、ポトテさんもね」
 仲睦まじい母子の様子を眺めながら、ポテトは、今は亡きその父を思い浮かべた。
「賑やかな誕生パーティだったな。
 ――おめでとうリゲル!」

 こうして、憂鬱だった七月十一日は、最高の七月十一日へと成ったのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

当シナリオのリクエスト、誠にありがとうございました。

まずもって、納品が大幅に遅延し、申し訳ございませんでした。

皆様の生き生きとしたプレイングが、とても素敵でした。
仲の良い関係性、お互いを想い合う気持ちに触れられて、穏やかな気持ちでリプレイを作成できました。

厳しい暑さが続きますので、みなさまご自愛ください。

ご参加いただいたイレギュラーズの皆様が楽しんで頂けること願っております。
『夏のトロピカルパフェを作って親睦を深めよう!』へのご参加有難うございました。

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