PandoraPartyProject

シナリオ詳細

油と炎にご用心!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 カムイグラ某所の竹林。
 竹という植物は、非常に成長力が高いことで知られる。環境によっては、1日で1mも伸びるというから驚きである。
 この竹、管理が大変な部分こそあるが、様々な利用法がある。
 例えば、生えたばかりのタケノコは食用になるし、竹細工は職人の手にかかれば食器、日用品、ちょっとした武器と様々な品物となる。
 この竹林を管理するヤオヨロズ、竹造は鬼人種の職人や作業員を雇い、タケノコ、竹細工等を販売している。
 普段は竹林傍の自宅にて、経理や販売などの業務を行う竹造。
 その日、彼の元へと入ったのは、竹林で起こった事件の知らせだった。
「何、妖怪だと……!?」
 話によれば、2体の老人風の妖怪が竹林に火を起こしているのだという。
 急いで竹造が現場へと駆けつけると……。
「ヘッヘッヘ……」
 1人は蓑を羽織ったにやけ顔の翁で両腕から大量の油を周囲へと撒き散らし、地盤を緩めていく。
「ヒッヒッヒ……」
 もう1人は和服姿の老婆で、口から直接火を吹き出す。
 めらめらと燃える炎は油に引火して勢いよく燃え上がる。
「何てことしやがる……!」
 竹造が刀を抜いて斬りかかろうとするが、油で足を取られて近づくこともできない。
「大人しくしてろ」
「邪魔な竹林を燃やし尽くしてやるよ」
 笑う老人風の妖怪達に、野次馬のように訪れていた鬼人種達も悲鳴を上げ、あるいは茫然と立ち尽くすのみ。
 竹造は何かを思い立ち、竹林の外へと駆け出す。
「今、神威神楽にやってきている神人達ならば……」
 彼はイレギュラーズの助けを請うべく、取り急ぎ伝手を使って連絡を取ろうと動き始めるのだった。


「……というわけです」
 此岸ノ辺へと連絡の入った依頼を、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がイレギュラーズ達へと説明する。
 現場はとある竹林。
 依頼主のヤオヨロズ竹造宅を含め、民家が接する竹林に火が放たれており、一刻の猶予もない。
「竹林を邪魔だと言い放ち、油すまし、火吹き婆なる2体の妖怪が協力して火を放っているようです」
 全焼を食い止められれば、自生する竹はすぐ生えることができる。
 ただ、根元の地下茎まで燃えてしまってはそれすらできなくなるので、その前に妖怪を何とかしてほしいというのが依頼主の要望だ。
 火が民家や竹林中の地下茎へと至るにはまだそれなりの時間を要する。その前に妖怪達を倒し、燃える前の竹を切り倒して竹林の全焼を食い止めたい。
「無事、炎上を食い止められたら、タケノコを使った料理を振舞っていただけるそうですよ」
 他の地域だと、なかなかお目にかかれぬ食材ではある。一口味わってみるのもいいだろう。
「それでは、よろしくお願いいたします」
 アクアベルは丁寧に頭を下げ、イレギュラーズ達を送り出すのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。

●概要
 妖怪2体の撃破。

●敵
○油すまし
 老父の姿をした妖怪で、どうやら性格は陰湿な相手のようです。
 大量の油を操って地面をぬかるませたり、直接相手に浴びせかけて防御力を下げたり体勢を崩させたりしてくるようです。

〇火吹き婆
 和服を纏った老婆の姿をした妖怪です。
 性悪な性格をしており、片っ端から目に付く物を燃やそうとし、今回はヤオヨロズ所有の竹やぶを焼き払おうとしているようです。
 戦闘においても炎をメインに使います。相手の感情を燃え上がらせて注意を引くこともあるようです。
 油すましの油に引火すると、戦場が火の海になって非常に危険です。

●NPC
〇竹造……ヤオヨロズ男性、40代
 周辺の竹林の地主であり、竹を扱う商いを営んでおります。
 多数の商人、小作人を雇っている彼は自宅の近場にある竹林が燃えると知り、今回はローレットに事態の解決を依頼してきます。

●状況
 ヤオヨロズ所有の竹林が戦場です。
 竹林の全焼を防ぎつつ妖怪達の撃破を願います。
 多少の炎上でしたら竹はすぐに育つので大丈夫ですが、それでも炎上が激しすぎればその限りではありませんので、程々の被害に食い止める必要があります。
 事後はたけのこごはんや土佐煮等の煮物を振舞ってもらえます。逆に、食材を持ち込んで炒め物等を教えると、竹造が広めてくれるかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 油と炎にご用心!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
武器商人(p3p001107)
闇之雲
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
エミリア・カーライル(p3p008375)
新たな景色
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星

リプレイ


 豊穣の地にて、竹林を前にするローレットイレギュラーズ達。
「地元では珍しかったが、竹とは本当に便利な植物だな」
 ケンタウロスを思わせる見た目の旅人、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は食用から日用品の素材という竹の利便性に感嘆する。
「人々の生活の糧となる竹林に、あまつさえ放火するとは……。よほどの恨みでもあったのでしょうかー?」
 そんな竹が群生する場所を台無しにしようとする妖怪コンビの行いに、シロイルカ型の下半身を持つ『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が呆れながらも疑問を口にする。
「火は便利だけど危ないものだから、扱いには注意しないといけないんだよ!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は炎の神とのハーフゆえか、危険性を熟知している故に、火を使って迷惑をかける妖怪を許せずにいた。
「まったく性悪な妖怪どもだな」
『全くなのだわ! みんな困ってしまうのだわ!』
 愛らしい抱える人形と腹話術で語り合う、『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)も、今回の妖怪達には辟易としていた。
「黒影の旦那も、章姫のお嬢さんもよろしく頼むよ」
 銀の髪で両目を隠す『闇之雲』武器商人(p3p001107)は、それぞれ鬼灯と、人形に視線を向けて挨拶を交わしていた。
「まったく……、こんな綺麗な竹……? 林を燃やそうなんて許せなっすね」
 緑に煌めく銀髪の鉄騎種女性、『鋼鉄の冒険者』エミリア・カーライル(p3p008375)は初めて竹を見たようで、その名称を確認しつつ自らの思いを語る。
「何が好きでそんなことをするのかわからんがまあいい。性悪度では俺も負けてはいないぞ」
 忍にして不吉の道化だと自称する鬼灯も、依頼へと強い意欲を見せる。
 改めて、今回の依頼は、竹林を燃やそうとする妖怪、油すましと火吹き婆のペアの討伐である。
 すでに竹が燃える臭いがこちらにも漂ってきている。
「旨い筍料理の話に釣られて妖退治と参った訳だが、油に炎とはどうにも厄介な組み合わせでござるな」
 こちらも忍として活動する忍び衣装を纏った『蒼海の語部』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)。
 ここに至るまでに一行はすでに作戦を立案しているが、それが上手くいけばいいがと彼女は思案する。
 竹林が多少燃えてしまっている状況だ。全焼を避け、根さえ残ればいいとればいいと依頼主である竹林の地主であるヤオヨロズ男性、竹造も告げている。
「ここが普通の森でなかった事は不幸中の幸い。取り返しがつかなくなる前に退治してしまおう」
「手早く倒してしまわなければ、ですね」
 ラダの言葉に、特殊な能力を発動させたオッドアイの金髪少女、『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)が同意する。
「なんか美味しいものも食べさせてもらえるみたいだし頑張るっすよー」
 そんなエミリアの意気込みに刹那笑顔が浮かぶ面々だが、改めて漂う焦げ臭さを感じて一斉に表情が陰る。
「さぁ、舞台の幕を上げようか」
 鬼灯の一言で、イレギュラーズ一行は一斉に竹林内へと駆け出していくのだった。


 竹林へ突入する前に、ラダは依頼主に決着がつくまでは家屋や近辺の鎮火と防火を第一にと頼む。
 彼女は消火器を持ち込み、皆が適宜使用できる状態とし、火災の犯人である妖怪2体へと近づく。
 すると、油すましが竹林の地面へと多量の油をぶち撒け、それに火吹き婆が名前の通り口から炎を吐き出して竹林を焼き払おうとしていた。
 鬼灯が燃え広がらぬようにと、魔糸を鎖付きの鉄球に変形させてからまだ燃えていない竹を一気に刈り取っていく。
 彼は仲間に当たらぬよう配慮していたが、他メンバー達は妖怪2体が連携をとれぬよう引き離しへと動いていた。
 直接それに当たるのは、ユゥリアリアとラダだ。
「好きにはさせませんわー」
「いくぞ」
 ユゥリアリアは角度を調節して青い衝撃波を油すましへと放ち、ジェットパックで地面の油を避けて移動していたラダも奇妙な音を発するLBL音響弾を火吹き婆へと浴びせかけて。
「ぐおおおっ!」
「ぎゃああっ!」
 両者を吹っ飛ばして引き離す。
 2人はそのまま、それぞれの抑え、討伐に当たるメンバーと合流して迎撃に当たる。
 ユゥリアリアはステラ、武器商人と共に油すましを抑え込む。
「お2人とも、よろしくお願いいたしますわー」
 改めて挨拶しつつ、ユゥリアリアは全軍銃帯の号令を発して範囲内の仲間達の力を高め、他メンバーも範囲に加えられるよう移動する。
「ヘヘッ、余計な真似をしおって」
 こちらを睨みつけてくる油すましへと、ステラと武器商人が迫る。
「橋場・ステラと申します。少し付き合ってもらいますよ」
 ステラが口上をあげて相手の注意を引けば、足元の油を気にして三対六枚の翼で浮遊する武器商人も破滅の呼び声を油すましに聞かせて強く意識を引いていく。
 火吹き婆にはラダが抑えに当たり、さらにLBL音響弾を浴びせかけて吹っ飛ばし、油すましから大きく引き離していた。
「抑えを頼む」
 互いの攻撃、支援などが干渉できない程度に引き離したラダは、こちらに向かってきた仲間がうまく相手をブロックしていくのを目にして。
「さぁ、火を使って迷惑をかける悪い妖怪はボクが相手だ!」
「油でぬるぬるになったりは……、しないっすよね?」
 焔が名乗りを上げて火吹き婆の意識を強く自身へと向ければ、巨大剣を手にエミリアも近づくが、足元に油がないかと気にかけていた。
「ヒヒッ、おのれ、小生意気なガキどもだねっ!」
 その間に、咲耶は近場で燃える竹を隠密刀で切り倒し、延焼を防ぐ。
「依頼主には申し訳ないでござるが、竹はいずれ生えて来る故にこれも必要な対処でござるな」
 ある程度、炎の勢いを弱めたところで、咲耶は火吹き婆へと向き直って羽の幻術を放つ。
「それでは、おいしい筍を頂く為にも招かざる客には帰って貰うとしよう」
 咲耶は手早く火吹き婆を弱らせようとし、その討伐に乗り出すのだった。


 油すましと火吹き婆をうまく分断したイレギュラーズ一行。
 少し離れ、鬼灯が炎上する竹を燃え広げぬよう、衝撃波を発して炎を消しながら竹を切り倒す。
 仲間達が敵を抑えてくれていたこともあり、鬼灯は炎の対処に専念することができていたようだ。

 こちら、油すまし対処班。
「わしの油を存分に浴びるがよいぞ」
 大量の油を操ってくる油すまし。その油は浴びせかかることにメンバーの体力を奪うが、それ以上にこちらの防御を下げたり、態勢を崩したりしてくるのが厄介な相手。
 ユゥリアリアは天使の歌を響かせて仲間の回復に当たり、皆が十全に戦えるようにと支援する。
 武器商人は敵の動きを見ながら障壁を張り、適宜ダメージを防ぎながらも、抑えに注力しながら月の魔力を使い、油を操る油すましの気力を奪い去っていく。
 共闘するステラも、油すましのぶちまける油で足を取られぬよう気を付け、立ち位置に気を付けながら戦斧ランページを魔術と合わせて叩き込む。
 注意は武器商人に向いてはいたが、ステラは火吹き婆がいる方向を気がけ、合流させぬようにとしっかりブロックし、油すましの行く手を遮っていた。

 火吹き婆側は先に倒すべしと考えたメンバーも多く集まり、撃破を目指す。
 炎を浴びせかけてくる敵に対し、咲耶は2本の刀による暗殺術で攻め立てて。
「まだまだ火力が足らぬでござるなぁ! さぁ、得意の炎とやらで燃やして見せよ!」
 心頭滅却すれば火もまた涼し。この程度の炎で退くようでは、紅牙の忍びは務まらぬと、咲耶は苛烈に切りかかっていく。
 十分油すましとの距離は保ち、油がないところまで相手を吹っ飛ばしてからの交戦。
「今日は火が使えないから、これでっ!」
 さらに、自らの火で竹を燃やすまいと、焔は傲慢の左を拳で叩き込んで攻め立てる。
「鉄騎の体を、舐めないでもらいたいっす。そんな火の海くらい耐えて散らしてみせるっすよ」
 至近距離で敵の炎に耐えるエミリアも率先して突貫する。
 ただ、敵の炎が竹に引火すれば、巨大剣を旋回させてその竹を割りつつ火を散らし、延焼を防ぐことを優先させていた。
「油を被ることはなさそうだが……」
 妖怪どもも個々でかなりの力をもっており、連携はなくとも文字通り、『油断』はできない。
 防火帯を活かしつつラダは距離を取り、大嵐の如くライフルを発射し、火吹き婆に銃弾を連続して叩き込んでいく。
「鬱陶しい連中だね!」
 苛立つ火吹き婆は通常攻撃としても炎を使うが、それすらも焔は悠然と受け止めてみせて。
「お父様の加護があるボクにはこの程度の火じゃ燃やせないよ!」
 炎の神を父に持つ焔はそれを無効化しながらも、アクロバティックな動きで火吹き婆へと殴り掛かるのである。


 火吹き婆は焔が主体となって押さえつけ、順調に攻め立てていた。
 交戦の間に、ある程度竹を間引いて延焼を防いでいた鬼灯が火の元である火吹き婆目がけて接敵し、式符より致命の毒蛇をけしかける。
「ああっ!!」
 毒を身体に流し込まれて苦しむ敵へと、イレギュラーズは一気に攻め込んで。
「さて、目の前の敵を殲滅、に移行します」
 ギフトmodeSADを発動させたエミリアの腕、足、首、左眼の機械部分が体を覆う。
 明るい口調がクールなものへと変化し、エミリアは巨大剣を振り下ろして重い一撃を火吹き婆へと叩き込む。
 2、3歩後方へとよろけた敵へ、ラダはライフルで狙いを定めて。
「火の始末は確実にしないとな」
 ゴム弾を撃ち込んで追い込むラダ。合わせて鬼灯が虚無の剣を生み出して。
『閻魔様にたっぷり怒られていらっしゃいな!』
「よかったな、地獄では死ぬほど好きな炎が見れるぞ。もっとも、今度は貴殿らが燃やされる番だがな」
「がああああああっ……!」
 一気にその体を切り裂き、鬼灯は火吹き婆を仕留めてみせたのだった。

 一方、油すましと交戦するメンバー達。
 見た目は火吹き婆の火力が高そうに見える為、油すましの方を軽視していたイレギュラーズ達。
「どうも、わしは舐められておるようじゃな」
 油すましはさらに全身から油を捻出し、それを操ってこの場のイレギュラーズを苛む。
 立ち位置を気付けていたステラは火吹き婆の方を気にかけながら戦っていたのだが、仲間が上手く撃破したことに気をとられてしまって。
「そうら、存分に浴びるがよいぞ」
 にやりと笑う油すましはステラへとなおも大量の油を浴びせかけていく。
 パンドラが働くことは無く、ステラはそのまま崩れ落ちてしまい、起き上がれずにいたようだ。
 そこへ駆けつけるユゥリアリアがステラを避難させると、入れ替わるように火吹き婆を倒したメンバーが駆けつけてきた。
 ラダが遠方から銃弾を撃ち込み、素早く迫ってきたエミリアが重い一撃を叩き込んでくる。
 一気に劣勢となって表情を歪めた油すましを、武器商人が嘲り笑って。
「ヒヒ。所詮は火吹き婆の腰巾着、おまけ程度の存在かァ」
 ヒトリでは何もできない相手に、武器商人はさらに破滅の呼び声を聞かせていく。
「頼政の弓矢すら持たぬキミじゃあ、我(アタシ)に畏れを抱かせるにはちょいと力不足だね」
「耳障りじゃのう……!」
 なおも油を使って攻撃を仕掛けてくる敵へ、今度は咲耶が告げる。
「彼奴と共に同じ所へ行ける様に、お主もすぐに黄泉路へ送ってくれようぞ!」
 咲耶は油すましにも、気を纏う鴉羽の幻術の嵐へと巻き込んでいく。
「お主に怨みはござらぬが、これも筍料理の為故に……成敗!」
 同じタイミング、頭上から焔が飛び込み、傲慢なる左をその背へと撃ち込む。
「これで終わりだよ!」
「ぐおおっ……!」
 もはや、焔の一撃に耐えられず、油すましも自らが放出した油の上へと倒れて。
「おのれ、人間……口惜しや……」
 そう言い残し、なぜ襲ってきたかを語らぬままに果ててしまう。
「しかし、このおじいちゃんとおばあちゃんも。妖怪になる前は仲良し夫婦だったりしたんすかね……」
 そんな妖怪達を見下ろし、普段の調子に戻ったエミリア。
 割り切って討伐には当たったが、改めて少し可哀想だったかもと彼女は少しだけ傷心に浸っていたのだった。


 2体の妖怪を討伐し、イレギュラーズ達は竹林の火を完全鎮火させる為の作業に当たり始める。
 戦闘後に目覚めたステラは、燃える炎の地帯から落ち葉や枯れ木などを取り去っていく。
「後は、油がかかってない土をかぶせて……」
 仲間と分担し、ステラは残っていた火を全力で消していく。
 また、メンバー達は戦闘中に切り払った竹、燃えかけた物も竹林内から回収して外へと持ち出す。
 徹底的に燻ぶりを確認して消化と片付けを進め、メンバー達はなんとか完全に鎮火を完了させた。

 出来る範囲で修復作業を進めたイレギュラーズ一行は、依頼主である竹造の元へと戻る。
「さぞ、疲れただろう。我が家に寄って行ってくれ」
 彼は火災がある程度鎮火したところで、自身が雇う者達にタケノコを使った料理を作るよう指示を出していたのだ。
 やとわれの鬼人種達も、自分達の仕事場を守ってくれたメンバー達に感謝を示し、調理を進めてくれていた。
「火の扱いは得意だから火加減の調整とか出来るよ!」
 ただご馳走になるのは悪いと、焔はご飯を炊く使用人達の手伝いへと当たると、使用人達は嬉しそうに彼女を受け入れていたようだった。
「タケノコ! まさかこっちで食うことができるとは!」
 テンションを高める鬼灯がその時呼び寄せたのは、部下で忍集団『暦』のうちの1人、母上と呼ぶ霜月(男性)だ。
「俺あれが食べたい、青椒肉絲」
「料理ィ? いいよォ! 霜月さんに任せなねェ!」
 霜月は頭領である鬼灯の要望もあり、豚肉、ピーマンやタマネギ、豊穣にない調理器具を用意して青椒肉絲の調理に入る。
「そういえば、此方にはメンマとかあるのでしょうか」
 そんな疑問を抱くステラもメンマの簡易レシピを用意していた。本来は麻竹を発酵させるものだが、簡単に作るなら茹でたタケノコで作ることができる。
 この地でも似た製法の食べ物はあったが、折角なので、使用人はステラの製法を使ってメンマを作ってくれた。

 調理の間に、手の空いたイレギュラーズ達は再び竹林へと入る。
 ラダはエミリアやらとタケノコの植樹を行い、竹林の再生を早められるよう努めていた。
『鬼灯くん! 竹ってすぐに生えてくるの?』
「ああ、成長速度はかなり早いな。床を突き破って生えることもあるそうだよ」
 鬼灯は召し物が汚れぬよう肩に乗せた嫁殿とそんな会話をしながら、精密機械の様に狂いなく、マエストロの様にタケノコを植えていく。
 なんでも、彼は手先の器用さに相当の自信があったようだ。
 程なくして、準備ができたとの知らせがあり、咲耶が真っ先に竹造への屋敷へと戻っていく。
「むっふっふ~。拙者、これが楽しみでこの依頼に来たのでござる」
「わたくし海育ちですので、山の幸のたぐいは新鮮ですわー」
 ユゥリアリアも卓上に並べられた料理に目を輝かせる。
 美味しい土佐煮に山菜と合わせた煮物。そして、メインであるたけのこご飯。メンマなどの副菜も並ぶ。
 混沌の大陸ではあまり見ない料理の美味しそうな匂いを思いっきり吸い込んだ咲耶は笑みを浮かべる。
「ここで本場の味を存分に味わっておかねば!」
 早速、彼女はおかずを口にする。タケノコは程よい柔らかさで、それでいて歯ごたえを感じさせる。味漬けはしっかりと使用人がしてくれており、噛むごとに醤油ベースの味が出て美味しい。
「私、たけのこごはんが気になるよ。米料理、結構気に入ってるんだ」
 ラダはご飯を一口。こちらも豊穣の民好みに味付けされて炊きこまれ、ほくほくとした食感も相まって実に美味しい。
 うんうん、とユゥリアリアもその味を堪能している横では、武器商人がゆっくりと料理を噛みしめてながら、竹細工を作る職人へと声をかけて。
「大陸の方だと竹自体はあっても、細工のできる職人が珍しくてね」
 良ければどんな細工物があるのか見せてほしいと武器商人が頼むと、職人達は箸やかんざしや普段使うザルや籠を見せてくれる。
 それに、武器商人も目を見張り、竹の編み方など職人の技に感嘆していたようだ。
「わはー♪ 竹の子も美味しいっす♪」
 改めて、タケノコ料理に舌鼓を打つエミリアが来年も美味しいタケノコを育ててほしいと話すと、使用人達はまた食べに来てほしいと言葉を返していた。
「ああ、美味い……」
 使用人達に感謝を示しながら、ありがたく料理を食べていた鬼灯は、霜月が作った青椒肉絲も絶賛していたのだが。
「母上もありがとう。美味しいよ」
「あ、こら頭領! ピーマンよけてんじゃないよ! あと母上じゃないでーす!」
 だって、ピーマンは苦いだろと愚痴をこぼしながらも、鬼灯は渋々口にする。また、霜月はタケノコのバター醤油炒めも作っており、豊穣の人々も物珍しそうに食べてレシピを聞いていたようだ。
「いやぁ、本当に幸せでござるなぁ。ここに来て良かったでござるよ」
 和気藹々としながら美味しく食べるタケノコ料理。
 それらでお腹を満たす咲耶が満足そうに告げると、地主の竹造もイレギュラーズ達に好感を抱いてまた来てほしいと語ってくれたのだった。

成否

成功

MVP

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは竹林の延焼を防ぐべく竹の伐採を行い、妖怪1体を討伐したあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!

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