PandoraPartyProject

シナリオ詳細

文月の双つ星

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●知るべきは新たな文化
「天義には新しいお祭りが必要だと思うの」
 リゲル=アークライト(p3p000442)とポテト=アークライト(p3p000294)の(義)母であるルビアの口から飛び出したのは、思いがけぬ言葉だった。
 否、彼女であればそのような言葉のひとつ出てこよう。問題があるとすれば、復興の為に出た祭りの内容、そしてその素材がイレギュラーズでなければ確保が困難なものだった……という話である。
「豊穣といったかしら。あの国に『七夕』という祭りがあると聞きました。……笹、という植物を使って祈りを捧げる儀式、私はとても素敵だと思うわ」
「七夕、でございますか。拙も存じております」
「織姫と彦星の話やねぇ、うちも好きよ」
 居合わせた鬼桜 雪之丞(p3p002312)と蜻蛉(p3p002599)は、それぞれの知識をぽつぽつと語る。何れも、広く知られた(そしてルビアの知りうる)「七夕」のそれを踏襲しており、彼女の知り得ぬ知識に踏み込んで伝えた為、よりルビアの興味を惹くこととなる。
 曰く、天界で離れ離れとなった夫婦の再開を祝う儀式であるとか。
 曰く、願いを籠める。それが色恋縁故の沙汰ならなおよかろう、とか。
「素敵だわ……あの村の復興にはとてもいいお祭りね! リゲル、笹を獲ってきてもらうのは頼めるかしら?」
 とまあ、トントン拍子に進んだ結果。
 リゲル達は豊穣で笹を収穫し、天義の小さな村の復興の祭りを催すこととなったのだ。

「なるほど、それで俺達も収穫についてきてくれと」
「私は大丈夫だよ! カムイグラに行って天義でお祭り、忙しいけど楽しそうだねっ!」
 そんなわけで。ルビアが帰ったあとのローレットで、シラス(p3p004421)とアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)を交えて話し合いが催されていた。
 丁度、豊穣で活発化していた『妖怪退治』のひとつに、笹を根こそぎ刈り取ろうとする鎌鼬の討伐依頼が来ていたのである。
 それ自体は決して強くはないため、依頼として見向きする者が少なかったのだが、リゲル達にとってみれば渡りに船である。
「あらぁ、豊穣旅行の話し合いかしらぁ? それともお祭り? どっちでもお酒が飲めるわねぇ~~!」
「も、もう少しお酒は控えて……無理だろうけど……」
 耳ざといアーリア・スピリッツ(p3p004400)は常よりも赤みの増した髪をなびかせ、話し合いの卓に滑り込む。
 それに引っ張られるように現れたリア・クォーツ(p3p004937)は、既に酒気を漂わせたアーリアを見てこめかみに指を当てつつ、ことの次第を聞き、頷く。
「天義の復興の為、そして豊穣の平和の為にも、皆の力を貸してほしい。このメンバーなら、きっと良いお祭りを催せるはずなんだ」
「私もそう思うよ、リゲル。一丸となって、お義母さんの期待に応えたい」
 アークライト夫妻の力強い言葉を切り捨てる者はいない。一同は強く頷くと、早々に豊穣へと向かうのだった。

GMコメント

 へえ期限が長……七夕ァ!? って感じで書きました(実話

●成功条件
・笹ノ原の鎌鼬の討伐
・天義での七夕祭り(七月生まれの誕生会)の成功

●鎌鼬
 豊穣パートで出現します。3体ワンセット。
 悪戯メインの妖怪の一種で、今は笹を刈り払って、止めに来た人間の足を怪我させて楽しんでいます。
 出血とか付与し……っていうか討伐(撃退)は概ね「こう倒す」って書いてあれば倒したことになります。笹も手に入ります。
 ほか、豊穣で軽く触れておきたいことなどを書いておくと良いかもしれません。豊穣特産の金の園から生まれるお酒とかね。

●七夕祭り
 一般的な七夕祭りと内容は一緒です。多分、混沌世界だと連星とかを織姫とか彦星とかにしてる気がするのでそこは雰囲気です。
 小さな村なので『花祭り』の時ほど大規模な準備はできませんし不要ですが、そこそこに盛り上がって楽しめる仕掛けだとよりエモです。
 なお、『色恋沙汰の願い事は叶いやすい』みたいな内容がOPにありましたが……?

●誕生日祝い
 七夕祭りに付随します。祝おう。

●重要っぽい備考
 このシナリオでは「豊穣」「天義」2カ国の名声が獲得できます。
 名声量に変動があった場合、「天義」の名声が優先して増加しますし、「豊穣」の名声が優先して減少することがあります。
(そこまで深刻に考えなくても大丈夫です)

  • 文月の双つ星完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先

リプレイ

●新天地へ
「新しいお祭りかあ。いいねいいね!」
「新しいお祭に、新しい風。そうやって少しずつ、天義が変わっていくのは嬉しいわねぇ」
 アレクシアが素直に喜ぶ様子に、アーリアは柔らかい笑みを浮かべしみじみと語る。天義を一度は見捨てた彼女が、命を賭けて守った奇縁。それがこうして結実するのは、喜ぶべきことなのだろう。
「……それに豊穣、お祭、誕生日祝い!お酒の香りだわぁー!」
「お酒は、お仕事終わってからよ?」
 アーリアのシリアスな感想が剥がれて酒を求め始めたところで、蜻蛉がやんわりとそれを制す。あからさまにしゅんとなるアーリアであったが、しかし酒自体が全面NGというわけでもない。飲む機会は幾らでもあるのだ。
「小さな一歩かもしれないけど、天義と豊穣の交流第一歩だな」
「祭の様式を他国から学び、新しい風を取り入れるのも大切だ。お互いの国の為にも、俺達が確り道を示していかないといけないな!」
 ポテトとリゲルはただの復興としてのみならず、これを機に両国間によい縁を築ければ、と考えていたらしい。決して楽な話ではないが、文化の吸収から始めるのは悪い判断ではないといえた。……彼らの場合、打算よりも単純に好意ありきなのだが。
「新しい祭りを興し、笑顔が増えることは、とてもいいことです。それに……」
 雪之丞は国家の復興に喜びを感じつつ、同時に此度の祭りが催される『もう一つの理由』にも心をはせた。
 リゲル、雪之丞、アレクシア、リアの4名は、7月が誕生日であり。うち3名は、話題の俎上にあがった『七夕祭り』の当日が誕生日にあたるのだ。人ので合いというのは、時に数奇な運をも引き寄せるようだ。
「なんていうか、こうして天義が段々変わっていくのを間近で見られると、あの時命かけて戦ったのには本当に価値があったんだって思えますね」
「ああ、祭りの為にも悪戯妖怪ぐらいパパっと退治して、祭りの準備に精を出さねえとな!」
 リアとシラスはかつての戦いを思い出しつつも、これから向かう豊穣にも同じくらいの熱意を持って挑まんとしていた。
 祭りの為の途中経過、笹を譲り受けるための準備……言ってしまえばそれだけの縁なのだろうが、豊穣の人々が鎌鼬に悩まされているのは紛れもない事実だ。それを助けることに何の迷いがあろうか?
「じゃあ、まずはカムイグラの人達に事情を説明しないとな。鎌鼬はそう強力な敵じゃないというし、速く笹を持ち帰りたいしな」
 そわそわしつつも何をすべきか的確に理解し、準備を進めるポテト。
 彼女に限ったことではないが、この依頼が舞い込んだときから、何名か気もそぞろな面々がいるのは事実だ。何故か、を深く語る必要もあるまい。誰だって、祭りは楽しみなのである。

「さあ、此方へ。あなた方の求める敵は確かに此処に」
 雪之丞の鈴鳴る声と軽妙な手拍子は、竹林を駆ける鎌鼬達の気を惹き、疾く来たれと誘いこむ。
敵意を刺激された鎌鼬達は油断なく彼女へと接近し、渾身の一撃を見舞おうとするが……その進路を阻んだのはリアの手にした水晶の剣だった。振り上げたそれが鎌鼬の鼻先を掠めると、盛大な舌打ちと共に靴底が飛んでくる。
 ビリヤードよろしく吹き飛ばされた鎌鼬は、甘い誘いの毒に乗って互いを痛めつけ傷つけ合う。
「ほら、見逃してやるから死にたくねぇならさっさとどっか行きなさい」
 這々の体になって正気を取り戻した鎌鼬達は、リアにその尻を蹴り飛ばされ、ぴいぴいと鳴きながら何処かへと消えていった。
「行ったか。あとは笹の回収だな。……で、よかったのか? 逃がしちまって」
「うーん……」
 シラスは鎌鼬の後ろ姿を眺めつつ、どこか拍子抜けした様子で問う。その問いにす馬歯考え込んだリゲルは、「誰も傷ついてないからいいさ」と、肩を竦めて笑う。
「誰も大きな怪我してへんから、よしとしましょ。『ご同胞』が無駄死にせんのやったら、構わんのでないやろか?」
「あの傷で生き残ったとすれば、あとは恐れて出てこないでしょう。おそらく、大丈夫かと」
 蜻蛉と雪之丞も、無闇に殺さず済むならそれでよしという様子。シラスも別に倒したい、というより村の人々を思っての発言だったので、仲間達がそれでいいというなら問題ないか、と首を縦に振った。
「それよりもぉ、妖怪を撃退したんだから笹だけが報酬ってことはないわよねぇ? 私ちょっと『金の園のお酒』貰ってくるわぁー!!」
 アーリアはそう言うと、数本の笹を手に一目散に村へと降りていった。次に仲間達が彼女を見たときには、その両手には抱えきれぬほどの日本酒と麦焼酎があったのは言うまでもない。それで酔ってないのだから、彼女の自制心も時には信頼できるようだった。
「へぇ~……7月7日にはそんな伝説が……」
 他方、リアは七夕について村人達から聞き、『色恋沙汰に強い』理由の一端を理解した気がした。なお、そんなことをしみじみとかみしめる様子をアーリア以下イレギュラーズ一同が見逃さぬはずがない。にやつく仲間に、リアは顔を真っ赤にする。
「な、なんですかなんですか! 別に誕生日にそんな素敵な伝説が重なっててドラマチックとかそんな事思ってないですよ!」
「いいんじゃね? ロマンチックで。ほら、土産話に出来る話題が増えただろ?」
「あぁ? うるせぇな! ふぁっきゅー!! さっさと竹切り出して天義に向かいますよ!!」
 くつくつと笑いながら応じるシラスに、彼女は今にもかみつかんばかりの勢いで抗弁した。言うほど腹を立てていないのは、勝手知ったる仲として容易に察することが出来ただろう。
「村の人達、天義て七夕祭りをするって言ったら驚いてたね。いつかカムイグラの人達と天義の人達で交流ができたらいいなぁ」
「天義の『花祭り』も興味を持って貰えたみたいだし、国同士の交流は是非とも進められるといいな!」
 祭りに使うに十分すぎる量の笹を抱え、アレクシアは笑顔で希望を口にする。リゲルも、天義の祭りを紹介することでより多くの催し事に携われたら、と期待に胸を膨らませる。
 これから天義に戻り、人々と催す祭りの楽しさは何物にも代えがたい。
 それに……七夕祭りについて村の人々に詳しく聞いた結果、その伝承も含めてよりいっそう興味がわいたのは当然で。一同を迎えたルビアは、彼らの表情に期待をいや増すのだった。

●祭りを創るということ
「灯籠には竹と、この『和紙』が必要なんでしょぉ? お酒を頂くついでに譲って貰っちゃったわぁ!」
「これは見事な和紙ですね。そしてこの竹も、灯籠には丁度よさそうです」
 アーリアは、何かに備えて動くとなると思いがけぬ周到さを発揮する。半ばから伐って作られた多数の竹ひご、そして貰い物の和紙。それらを知りうる雪之丞にとって、それらは非常に使いでのあるものだ。
「では皆さん、灯籠作りは拙がお教えしますので一緒に絵付けをしましょう。……ここをこうすると、影絵にもなるのですよ」
 周囲に集まった子供達に見えるように、雪之丞は竹ひごを組み合わせて灯籠を作っていく。和紙を貼り、軽く絵を描いてから弱めの火で明かりをとってみせ、影絵になることを伝えながら作っていく。
 子供達の思考の柔軟性たるやたいしたもので、各々が自分の表現したいものを絵にして灯籠に貼り付けていく。和紙の絵付けは簡単ではないが、そこも彼らなりの感性が光る作品となった。
「シラス君、調子はどう? 上手く……出来てるね、すごい……!」
「アレクシアだって、その星、よく出来てるぜ。俺はもうちょっと凝ったものも作るよ」
 様々な手法を用いた星の飾りを手に現れたアレクシアは、シラスの手から生まれる多種多様な紙細工に目を丸くする。提灯や花、紙を折って様々な形に変えるその手腕は成程、素晴らしいの一言に尽きる出来映えだ。
 アレクシアのものも、価値が落ちるかといえば真逆で。同じモチーフを様々な手法で作り上げたそれは、シンプルなものから複雑な類いまで、変化をつけて人々の目を楽しませることだろう。
 ……両者ともに、根底にあるのは「誰かを楽しませたい」という一心。
 それは村の人々でもいいし、目の前の相手でもいい。或いはここにいない天義の人々を想ったとしても、誰が文句を言うものか。
「あらぁ、かいらしい飾り付けやわぁ。笹に飾るの、うちや村の人達に手伝わせてもええやろか?」
 蜻蛉はそんな2人の和やかな雰囲気が一段落したのを見計らって顔を出し、2人の了承を受けてひょいとつまみ上げていく。自身でもそれなりの数を作ったらしく、村人達へと飾り付けるように配って回っていた。
「この短冊に願い事を書いたり、絵や飾り付けを加えたりして笹に飾るんだ。お星様が願い事を叶えてくれるかもしれないよ」
「へぇー! こんなお祭りを考えるなんて、海の向こうってすごいんだねえ!」
 リゲルは、星形に切った紙を人々に配り、七夕の趣旨を説明する。子供達の快哉が上がると、願い事の書き方や目立つ飾り方を積極的に教えに行く。彼自身、目立つやり方を心得ているだけのことはあり、子供に対し教えるのが非常に上手い。
 その姿は、勇ましさ際立つ普段とはまた違う側面でもある。
「リゲルも成長したわねぇ、そう思わない?」
「そう……ですね、私も彼に教えられてばかりです。ちゃんと、見合うものを与えられていればいいんですが」
 ポテトはルビアと言葉を交わしながら、着々と料理を進めていた。星をモチーフにした料理は、くりぬいた野菜も無駄にせぬよう詰め物などにして。
 もののついでにと買ってきた素麺をうまいこと調理し、異文化の人々も食べられるようにアレに。さらにはデコレーションケーキと、限られた時間を全力で使っていく。
 ルビアの協力あってこそだが、ここまでのアイデアはポテト主導だ。
「そういえば、お義母様も願い事を?」
「ううん、私はいいの。……貴女達を見ていると、願い事が叶っちゃてるとおもうから」
 ポテトの問いに悪戯っぽく笑うルビアは、その実とても優しい声音と『感情』をしていたことを、準備を手伝っていたリアは気付いていた。

 そして、祭り本番。
 灯籠と飾り付け、そして願い札の乱舞に沸き立つ人々へ向けて、アーリアはメガホンをとって声を張り、語り出す。
「このお祭り、そして持ってきた笹は『絶望の青』を越えた先の国から持ってきたものなのよぉー! 絶望を越えた天義の先にも、きっと素敵なものが待っているわぁ……七夕祭りは星のお祭り、それじゃあ……せーので灯籠を消すのよぉ!」
 アーリアの合図を受け、一斉に灯籠の火が消され、あたりは闇に包まれる。が、夏の満天の星空が一同の目に飛び込めば、それは幻想的な風景として映し出される。
 そして、再びの合図で灯籠が灯されると、人々の輪の中心には扇を手にした蜻蛉の姿があった。
 七夕の伝承をもとに舞うそのは、別離の悲しみと約束の喜びとをない交ぜにしたかのよう。
 伝承を詳しく知る者――とくに雪之丞にとっては、その舞いはとても尊いものとして映ったに違いない。
 即興で演奏を引き受けたリアの技術もあいまって、人々の歓声はしばらく尽きることはなかった。

「かんぱぁーい! リアとリゲル君はお酒解禁ねぇ! さぁ飲むわよぉー!」
「ハッピーバースデー! 皆の分のカクテル作ったぜ! 雪之丞とアレクシアはノンアルコールな!」
 七夕祭りも酣になったところで、ここからは誕生日を迎える4人のお祝いだ。
 アーリアは麦焼酎を高らかに掲げ、乾杯の音頭をとる。シラスは誕生日組の4人に七夕テイストのカクテルを供し、盛り上げる。こと、アレクシアのカクテルは刻んだフルーツが誕生花をモチーフにしているが、あからさまではない為気付いたのは本人のみという巧さだ。
「……えっ、こんなに素敵な飲み物もらっちゃってもいいの?!」
「ケーキも用意したぞ! 皆おめでとう!」
 カクテルに驚くアレクシアの前に、ポテトが作ったケーキが並ぶ。ホール状のものを切り分け、取り分けられるとその精巧さがより伝わってくるかのようだ。
「乾杯! これでお酒が解禁されたんだ、今日は目一杯楽しむぞ!」
「ね、お酒って初めてだから緊張する……」
 リゲルとリア、成人組は一口目をおずおずと、しかし調子に乗ってくるとすいすいと飲んでいく。アーリアは妹分の調子の良さに気分をよくし、酒が進んだ。……いつもかもしれないが。
「リアは調子乗って飲み過ぎんなよ、潰れたら持ち上がんねえから!」
「今日くらいいいんですよ、ふぁっきゅー!」
「雪之丞も俺よりお姉さんだった?! ……いや、鬼の歳はよく分からないけどとにかくおめでとう!」
「有り難うございます、まだまだ未熟ですゆえ、精進致します」
「リゲルが10代だったの忘れてた、更に頼りにさせてもらうぜ!」
「ありがとう、しらすさんはアレクシアさんと2人で幸せでいて欲しいな!」
 シラスはリア、雪之丞、リゲルらへと祝いの言葉をかけていく。それぞれの反応を聞きつつ、リゲルもそれに応じて仲間達に対して思いの丈を並べていく。
 彼の言葉には裏表がなく誠実そのものなだけに、関係を素直に祝福されるとシラスとアレクシアには気恥ずかしいものがあった……かも、しれず。
「雪ちゃんはお誕生日おめでとう、何書いたん?」
「『来年も、七夕祭りが出来るといい』と思い。それが、拙の願い事です」
「そしたら手、合わせよか?」
 蜻蛉は雪之丞の願いが叶うように、と手を合わせ。次いで、2人で酒を酌み交わせるようにと願いを追加する。
「……で、リアのお願いは? さぁおねーちゃんに見せてみましょー!」
「嫌ですよ! なんで見せなきゃ……あっ、こらーーー!!」
「なになに、『クォーツ院の皆が、いつまで仲良く幸せに暮らせますように』? いい願い事だけれど……本当ぉ?」
 リアの願い札を強引に奪い取ったアーリアは、相手の方をジト目で見つめる。リアは当然だろうといわんばかりに胸を張る。……暫しの硬直の後、アーリアはリアの主張を『一応は』飲むことにした。
「俺は『ポテトや母上、今日来てくれた皆や、天義や幻想、他の国の人々が幸せに暮らせますように』だ。皆が幸せならそれで十分だよ」
「『幻想で大出世』に決まってるし、実際書いたけどさ……星に願うようなもんかなあ?」
 リゲルとシラスは、互いの願い事を言い合って談笑していた。互いの性格が出ているが、これもまた個性だ。ラド・バウで着実に成果を上げつつあるシラスの願い事は、自身でなんとかなりそうでもあるが。
「私は『1人でも多くの人が笑顔でいられますように!』だよ! シラス君の願い事も叶うといいね!」
 アレクシアは、そんな2人に対し元気よく声を張って答える。ぶれない、曲がらないことは危うさに例えられることもあるが、彼女に関しては間違いなく強さである。シラスにとって、それは眩く尊いものでもある。
(もうひとつ、願い事はしてるけど……それは言えないな)
 シラスは密かに、もうひとつ願い事を掲げ。
 少し離れたところでは、リアがアーリアに見つからぬように二つ目の願い札を下げ。
 ……そんな様子を遠巻きに見ながら、雪之丞は『皆様の願いが、天へ届きますように』と書かれた願い札を笹につるすのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 天義でも豊穣でも、その活躍は非常に喜ばれたことでしょう。
 誕生日の皆さんはおめでとうございます。七夕にこのシナリオをだせたこと、嬉しく思います。

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