PandoraPartyProject

シナリオ詳細

木々芽吹き古樹はゆる夏

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 小さな手足を動かしながら、少年のハーモニアが新緑の間を走っていた。
 少年は木の根を飛び越え、丈の低い枝を突っ切りながら走って、くるりと振り返る。
 その視線の先には、一人の少女の姿がある。
「ほらほら~、こっちこっち!」
「待ってよぉ~!」
 少年は優しく頬を緩めながら、少女が自分の下へと走ってくるのを見守っている。
「まったくもう、アリエルは足が遅いんだから……」
「うぅ……だってぇ……」
 しょんぼりする少女の頭を優しくなでながら、少年は手を差し出した。
「はい、手、繋ごう? 迷子になっても駄目だし」
「うん……」
 頷いた少女は、差し出された手を握り締める。
 少年はそっとその手を包むように優しく握って、くるりと前に向きなおして歩き出す。
「じゃあ、いこっか」
 少年はもう一度、今度は顔だけで少女の方を微笑んでから、一歩を踏み出した。
「もうそろそろ花畑に着くから、そこで休んでから婆様のおうちに行こう」
「うん……」
 こくりと頷いた少女の手を引きながら、二人は歩いていく。
 ぎゅっと踏みしめる足場は夏を迎えて新緑を覗かせる小さな植物たちと、周囲に聳える木々から落ちた新緑の葉。
 ふと空気を吸えば、木々独特の澄んだ空気が肺いっぱいに入ってきて心地がいい。

 さて、それからどれぐらい歩いただろうか。もうそろそろ、花畑も見えてくる――というところだった。
 少年はふと、足を止める。
「ど、どうしたの?」
 進もうとした少女の手を軽く引いて後ろに戻した少年の視線の先、それはいた。
 やや開けた空間に、静かに鎮座する古ぼけた樹木。ただの樹木ではなかった。
 空に向かって伸びる枝は何かを探すように蠢き、季節は初夏を経て盛夏へと至ろうとせんばかりの時期というのに、一枚の葉さえ残していない。
 周辺の木々はまるで薙ぎ払われたかのようにぶちりと引きちぎられていた。
「……帰ろう。遊びに行くのはまた今度にしよう」
「で、でも……」
「しっ――大声出したらアレに見つかっちゃう。帰るよ?」
「う、うん……」
 二人の判断は正しかった。それはまさしく、ただの子供では一たまりもない化け物なのだから。


「初めまして、特異運命座標の皆さま方。アナイスと申します。
 これからローレットの情報屋として皆さまのご活躍のお手伝いをさせていただきますね」
 ふんわりと微笑んだ幻想種の女性が軽くぺこりと君に礼をする。
「今回の依頼は比較的単純です。自らの意思を持って動く樹木型の魔物を破壊することです」
 髪の間からひょこりと出た耳がぴくりと動いて、緊張らしい感情を示している。
「何でも、依頼人の方のお子さんが遊びに行く途中で見つけたらしくて。
 現場が森の中なので、燃やしてしまうとなると周辺の木々まで諸共……となってしまう可能性が高いみたいですね。
 とはいえ、放っておけば近隣の木々はこれになぎ倒されて生態系に問題が出てしまうと。
 それで、ここは一つ、皆さまにお願いしたいとか」
 敵の情報を記された紙を手渡されて見てみれば、そこには複数の何かを伸ばしている樹木のような何かがあった。
 全長はおおよそ8mあたりだろうか。枝のようなものが複数、しなり、蠢いているような絵だ。
「名称はかなりそのままですが、近隣では蠢く老樹と呼ばれているそうです。枝を伸ばして身動きを封じる、枝で扇上の範囲を叩きつけて吹き飛ばす、枝を丸めて鋭利なドリルのようにして貫通攻撃をするなどが確認されているようですね」
 資料の絵には大きな蕾のようなものがあり、そこにはご丁寧に赤で丸が付けられていた。
「あっ、そうでした。その蕾みたいな所が弱点なみたいですね。
 ただ、どうやらそこを攻撃すると、次の攻撃がちょっとだけ苛烈になるみたいです。
 弱点を殴られた事による反射、といったところでしょうか」
 大事な情報を最後に君たちに伝えて、アナイスは不思議そうに首をかしげる。
「それじゃあ、皆さまの無事のご帰還を、祈っておりますね」
 そう言ってアナイスは明るめの黄緑色の瞳を愛おし気に細めて笑っていた。

GMコメント

こんばんは、春野紅葉です。
ゼノポルタな方々が増えたとのことで。
楽しみですね。

さて、そんなわけでさっそく詳細をば。

●オーダー
蠢く老樹の討伐。

●戦場
木々が立ち並ぶ森の中。
周囲に木々が立ち並んでおり、遮蔽物が多いためにレンジ3以上の攻撃が困難です。
木々は隠れる場所に使えますが、敵の攻撃で折れる可能性があります。ご注意ください。

●敵情報
【蠢く古樹】
古ぼけた樹木に悪霊が入り込んで暴走した樹木型のモンスターです。

豊富なHP、比較的高めの物攻、抵抗、反応、防技、EXAを持ちます。
反面、回避、EXF、CTなどは低め、命中は大ぶりなぶん並なようです。

<スキル>
・捕縛枝(A) 物中単 威力小 【凍結】【崩れ】【麻痺】
・扇打(A)  物中扇 威力中 【飛】【フィールド上の樹木にダメージ】
・貫通撃(A) 物中貫 威力中 【万能】
・核蕾(P) 蕾部分に攻撃を受けた場合、蕾部分への攻撃に【弱点】がつく(デメリット)次のターン1度目の攻撃の威力小アップ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 木々芽吹き古樹はゆる夏完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月14日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ダーク=アイ(p3p001358)
おおめだま
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
二(p3p008693)
もうまけない
白鷺 奏(p3p008740)
声なき傭兵

リプレイ


 草木をかき分け、踏みしめながら子供たちから聞いているそこへと足を進める。
「子供たちは運がよかったわね。これもファルカウのご加護かしら」
 8人のうち、先頭を進むのは『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)だ。
 深緑を故郷とするアルメリアにとっては、我が庭――とまで行かぬといえど、ちょっと近所を歩いているといった風情であろうか。
 進む足取りに迷いはない。
「こども。ぶじ。よかった。あと。にいたちの、しごと」
 アルメリアの言葉に続ける二(p3p008693)はやる気を見せる。
(……。まわり。みんな。つよい。けど。がん、ばる)
 むん、と気合十分な動きに反応するように『手』が動いて見せる。
(子どもたちが襲われなくて安心)
 そう思い浮かべる『声なき傭兵』白鷺 奏(p3p008740)は足を踏みしめながら進んでいた。
(でも、悪霊を放置していたら近くに住まう人達だって危険だし、
 この美しい森林も壊されちゃう)
 周囲を見渡せば夏色の輝きを見せる青々とした木々と、葉の間からさす木漏れ日。
 これを台無しにするわけにはいかないだろう。
「環境破壊する木て……興味深いわね」
 歩みを進める『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は、蠢く老樹に興味がある楊だった。
 環境を破壊するということ――より正確に言えば、周囲の木々を殺すこと。
 そこから推察できるソレ自体の利益と言えば、例えば周囲の栄養分も自分の糧にするだとか。
 自分にかかる日差しを遮る木々を無くすだとか、そんなあたりだろうか。
 しかし、だとすればおかしい。
「ふむ。生者たる人々の救いは元より、死した者にも救済を与えるのも吾輩の努めである。
 何故そのような樹木を憑依の対象に選んだかは理解しかねるが──さて」
 そう言った……言った?『おおめだま』ダーク=アイ(p3p001358)の考えもまた正しい。
 そもそも枯れ果てた老樹に入り込む理由などそうは多くないだろう。
 もしくは、若い木ではいけない理由があるのか。
「まぁ、でも。こういう事も稀にはあるわよね」
 興味を示し、或いは思考する2人に答える様に『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が言う。
 人間種でいえば幼な子ほどしかない小柄な少女は、その背にある光の翼をはためかせる。
「なんだか懐かしい気持ちになるわ」
 旅人――異界からの来訪者たるオデットは、そう言って少しばかり郷愁に浸る。
 故郷において、少なからず存在していた案件である。
「蠢く老樹ですか……
 その手の魔物は不思議と穏やかなイメージがありましたが、
 どうやら今回は違う様子ですね」
 対照的にそう呟いたのは『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)である。
 同じく旅人たるリディアにとってはいささか馴染みない魔物の様子に首をかしげながらも、やる気は十分なようで。
「良いでしょう。このリディア、全力を尽くさせて頂きます!」
 依頼人達へのその言葉は頼もしいものだった。
「このような面妖な樹は早々に伐採するに限りますね。
 まだまだ未熟な身なれど、この剣にかけて!」
 愛剣に手を置く『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)は意気軒昂と言った様子。
 その視線は依頼用の資料として情報屋から受け取った羊皮紙に向けられている。


 さて、歩みを進めて少し。ぴたりとアルメリアが立ち止まる。
 それに続くように立ち止まったオデットは精霊へと呼びかけた。
「私はこの森に詳しくないの。良ければ助けてもらえないかしら?」
 周囲の木々に存在する無数に等しい精霊たちにそう問いかければ、何処からともなく小さな光がオデットの周囲を漂う。
「あれの蕾ってどこか分かるかしら?」
 そう呟けば、びゅん、と光の束が老樹の方へ飛んでいき、ある程度の場所でぐるぐると円を描く。
 よく見れば、ぷくりと膨らんだそこには、赤い実のようなものが隆起している。なんとも見やすい弱点だ。
「ふむ、徹底的に破壊し、使命を全うするのみであるな」
 ダーク=アイは相手の様子を眺めるや、その大きな一つ目をやや細めた。
「ええ、こうなってしまった以上討伐しないといけないのは悲しい限りだわ。
 長生きの樹としては悲しい最後だけど……道を譲ってもらうのよ!」
 アルメリアも頷き、魔導書を構える。
 イレギュラーズの内、最初に老樹の待ち受けるその空間に姿を晒したのはリディアである。
「永き刻を生きた敬拝すべき翁様と見受けましたが、何故そのように荒ぶるのですか……!?」
 円を描くような精霊を払うような動きを見せる老樹へ、リディアは声を張り上げ問いかけた。
 反応は――ない。リディアは地面を蹴り上げる様にして跳ぶや、老樹の方へと走り抜けた。
「――残念ですが、鎮めさせて頂きます!」
 駆け抜けるうち、自らを覆うは蒼炎が如き闘気。抜き放たれた蒼煌剣に浮かび上がる蒼の紋章が、大きく脈打った。
 タンッ、とある程度の距離までくると同時に跳び上がり、真っすぐに振り下ろす。
 堅牢な護りを薙ぎ払う獅子の一撃が、老樹の皮膚に傷を付ける。
 ダーク=アイは老樹の至近にまで近づくと、その大きな目玉をやや開くようにしてそれを見た。
 その視線が撫でれば、老樹を包み込んだのは虚無。
 その直後、視線を嫌がるように動き、鞭がしなるように動いた枝がダーク=アイを掴み――きることなく影を切って帰っていく。
 アルメリアは先行した2人との位置関係を考慮しつつ、魔導書を媒介に魔力を練り上げる。
「少し痛いけど、ごめんなさいね」
 静かに老いた樹木を見上げた魔導士が手を掲げた。
 放たれるソレは絶対零度。
 白い魔力が飛び、老樹に付着した瞬間、その周りを瞬く間に氷漬けに変えていく。
 そのアルメリアの横を綾姫は疾走する。
「魔剣、装填!」
 最後の一歩、踏み込みと同時に跳ね上がる。
 魔力で出来た剣先が老樹の比較的太い木の枝を叩き、みしりと音を立てて抉り取る。
 奏は銀色に輝くガーディアンブレードを握り締め、足を踏み出した。
 超至近距離まで接近した上での重心をかけた全力の振り降ろしが、大きな幹を削り落とす。
「土の精霊の友達の力、見せてあげるわ」
 オデットはフォールーンロッドを掲げる。
 大気中の充足した魔力を吸い込み、ロッドの頂点が淡い輝きを帯びた頃、オデットはそれを大地へ叩きつけた。
 同時に地割れのように大地に真っすぐに罅が走り、老樹の根元で拳となって炸裂する。
 強烈な一撃に老樹がぐわんと軋んだその時だ。
 大きく開いた隙を狙いすましたように、ソレが走る。
 突き立つそれは必中の毒手。享楽にふける悪夢を見せる毒の刃。
 刺さった箇所から老樹の樹皮が爛れていく。
「内から蝕む毒の味は如何?」
 レジーナは老樹の方を見上げて微笑んだ。
 二は『手』で大地を叩いて身体を跳ね上げる。
 蠢く老樹の枝の一つを握り、アスレチックのようにぐるんと更に跳ぶのとほぼ同時、『手』で拳を作り、思いっきり叩き込む。
 ぐしゃりと音を立てた老樹の一部がへしゃげていく。
 イレギュラーズの連携の取れた猛攻を受けた老樹が、うねうねとその枝を蠢かせると、その枝を再び鞭のようにしならせる。
「むっ! 危ない!」
 横なぎに迫った枝はリディアとアルメリア――そして彼女を庇うように躍り出たダーク=アイを巻き込み、3人の身体が弾かれるように後退する。
「大丈夫ですか!?」
 リディアはアルメリアと彼女をかばったダーク=アイへと声をかける。
「か弱き人の子らの美貌に傷を残させる訳にもいかぬ故な。
 吾輩は所詮化物風情。痛み、傷つく事の無い身体故、苛烈な攻撃も問題あるまい」
「ええ、ありがとう。助かったわ」
「うむ……しかし永く保つかは別問題である故、吾輩の身体が保つ内に態勢を整えるがよい」
「もちろん、そうさせて貰うけど、まずは私たちの回復が先ね」
 老樹の姿を目にとめながら、アルメリアはそう呟く。
 リディアは、すぐに体勢を立て直すと、グッと聖剣を握り締めて構えた。
「はっ! 今ならいけそうかもしれません……皆さん、打ち合わせ通り――蕾に一斉攻撃を!」
 強烈な殴打の動きにより、がらりと開いた蕾への道を確かめ、リディアは弾けるように走る。
 奏はその様子を見て、続く様に突貫する。
 その勇ましさに仲間たちの士気があがるのを感じながら、剣を構えた。
 リディアはその姿に勇気づけられるように、更に速度を上げた。
 聖剣に込められた魔力はじわじわと熱を帯びて必殺の力を得る。
 全身全霊をこめた突きは蒼い一条の光となり、蕾への道を導き出す。
 痛撃を受けた老樹が震えるのを待たずして、奏も既に蕾の前にたどり着いていた。
 握りしめられたガンブレード・アストレアもろとも、自らを躍らせる様に突撃し、蕾の一部を抉り取る。
 ダーク=アイはその連撃に合わせる様に視線を蕾に向ける。
「大人しく逝くが良い」
 再び老樹を包む虚無のオーラが放たれる。
 それは露になった蕾を正確に包み込み、老樹が震えだした。
「行きます!! 」
 綾姫は再び剣に魔力を込め、老樹目掛けて疾走する。
 強烈な魔力を帯びた剣閃は確かに老樹の蕾を切り裂いた。
「何をそんなに暴れるの? 回りを遠ざけて駄々を捏ねるように、
 意味は無いと汝(あなた)が嘯くなら。
 刈り取るこの賤手も意味はない」
 其はどこからともなく姿を現す1つの魔剣。
 少女の名を冠する其は、彼女の罪を示す如き赤き刀身を描く。
 ねじれた幾本もの角と竜眼を模した宝玉の彩られた鍔を持つ其を、少女はそっと握り、静かにふるう。
 鮮血のような魔力が残像と共に剣閃を描き、蕾を削り取ったその直後、返すように彼女は剣を閃かせた。
「お見舞いしてあげるわ。感謝なさいな」
 オデットは魔力を練り上げるや否や、アースハンマーを蕾目掛けて叩きつけた。
 粉砕され、粉のようになった一部がパラパラと落ちていく。
 二は走り出すと、『手』を握り拳に変えた。
 そのまま老樹へ至近すると、ジャンプとぐるりと身体を回転させ、『手』を横なぎに蕾へと叩きつける。
 アルメリアはそれらの連撃の最後になるまで、魔力を溜めていた。
「もうそろそろ終わりにしましょう……!」
 可視化した緑色の魔力が収束し、幾重もの層を描く。
 十二分に形成された魔力をアルメリアは走らせる。
 バチバチと音を立ててまっすぐに進んだ一条の魔力が緑雷が炸裂すると同時、炸裂する。
 焼けつくような音と共にバチバチと緑色の魔力が木の端々にまで浸透し、幾つかの枝が落ちた。
 明らかに動きの鈍った木が、ふるふると枝が動き、蕾の近くに集結したイレギュラーズを一直線に貫いた。
 幾つかの傷が開き、後退する。

 あれからも戦闘は引き続いていた。
 豊富な生命力と評されるにあまりあり、老樹はしぶとく生き残っている。
 ダーク=アイは広がった戦場の置いて、後退していた。
 引き打ちするように後退したダーク=アイの目から放たれたレーザーのような物が、老樹に巻き付きその動きを阻害する。
 アルメリアは魔術書を媒介とすると、メガ・ヒールをかけて崩れかけた戦線の再編成を促していく。
「私が治してあげるわ。感謝してくれていいのよ」
 アルメリアのメガ・ヒールの届かないところにいた仲間の下に近づくと、地面にフォールーンロッドを叩きつけ、身体の異常を払拭させる。
「これで終わりにいましょう……」
 リディアは再び魔力を蒼煌剣に注ぎ込んだ。
 剣を起点に全身を包み込んだ蒼い輝きが金色の美しき髪が魔力を帯びて波打つ。
 獅子の如く走り抜けた蒼い一撃は、樹皮の露になった箇所を薙ぎ払う。
 大きく身体を動かして隙を見せた老樹に綾姫は愛剣を握り、天に掲げる。
「魔剣、解放! 吹き飛びなさい!」
 輝く魔力に反射し、見開かれた深い紅色の瞳がまるで輝いたように見えた。
 充足した魔力の束を斬撃に収束し、振り抜いた。
 まっすぐに飛んだ斬撃が、一直線上の幾つかの枝を薙ぎ払う。
「優雅さには欠けるのだけれども、仕方ないわね
 赤く紅く朱に滲み溶け込み乱れ千々と散れ!!」
 至近したレジーナは魔剣を引き抜くと同時に刹那にひらめかせる。
 周囲を巻き込まんばかりの乱撃は、老樹のみに向けて血色の刺突を叩き込み、おびただしい返り血のような樹液を迸らせた。

 ――そして、その時は訪れた。
 幾度もの連撃を受けた老樹が、根元からぐらつき、横に倒れていく。
 咄嗟によけてそれを躱す者が出る中、倒れた老樹の動きはなかった。
 二はそんな老樹の方へと近づいた。
 這う這うの体で抜け出した霊を見つけ、そちらに視線を合わせ、霊魂疎通を試みる。
「ここ。きみのいばしょじゃ、ない。
 ……おやすみ」
「周りと不和をもたらすものは駆逐されるもの
 何かを訴えたかったなら御免なさい。
 ここにはそれを考慮する人は居なさそうだから」
 そんな二の隣に――悪霊を見たレジーナはそういうと、微かに笑みを浮かべる。
「疾く-ね」
 そう呟いた彼女から逃げる様に、悪霊がとけるように天へと還っていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。

倒れた老樹はやがて森の一部となり、新たな木々の支えとなっていくことでしょう。

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