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シナリオ詳細

鉄輪を砕く藤の鎰

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●錆ヶ原の鎮守
「豊穣は表向きは平穏だけど、ほら、上があんなだろう? だから、昔から鬼人種や傍流にあった人々が謀反……一揆、蜂起かな? そういうのを繰り返し起こそうとしては鎮められてきたらしい。特に抵抗が激しく、繰り返しそんなことが起きたのが、高天京から馬で3日ほど南に下った『錆ヶ原』ってとこらしい。なんでも、藤の花が綺麗だとかで」
 伏見 行人 (p3p000858)は何処からか――恐らくは鬼人種達や精霊を通して見聞きした情報から――そんな噂話を聞きつけ、仲間達へと持ちかけた。
「錆、でございますか。恐らくは農機を構えての謀反でありましょうが、そうも鉄気(かねけ)が強くなっては、最早農地としても使えぬと思うのですが……そんなところに、藤が?」
「分かった、その農機具やら刀やらを回収して畑として耕し直すんだろ? オレは詳しいんだ!」
 鬼桜 雪之丞 (p3p002312)の素朴な疑問は、新道 風牙 (p3p005012)の勢いが押し流す。藤の花が巻き付くだけの樹木、あるいは整備された藤棚がなければ藤がそう繁茂できるとは思えない。
「藤の花……錆ヶ原……なるほど、拙者察したであります! その藤、そこに入植し直そうとした方が植えたのでは?!」
「ということは、依頼者は藤を植えたどなたかから、ということでしょうか」
 夢見 ルル家 (p3p000016)の閃きに、鶫 四音 (p3p000375)が追従する。彼女らは自分の推論を疑うことがない。相手の反応を待つことをしない。そう思ったなら、そうなのだ。
「……驚いたな。全部じゃないが当たりの部分が多い」
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)はルル家と四音の言葉にたじろぎつつ、首肯した。彼は仲間達を集めるにあたり、予め行人から依頼の概要を聞き知っていたのである。
「つまり、依頼人さんの身柄が危なかったり、藤の花をどうにかしようとしてる『なにか』がいるってこと?」
「そうなると、急いだ方が良さそうですが」
 ルアナ・テルフォード (p3p000291)の敏い言葉に、雪村 沙月 (p3p007273)は顔をしかめた。未だ混乱の跡が残るその地で入植者の命が絶えれば、今一度同じような試みを行おうとする者はいなくなるだろう。すぐには影響は出まいが、大局的に見れば豊穣の国力衰退に繋がる見方もある。……何十年か単位の話ではあろうが。
「すぐには影響が出ないから問題はないよ。少なくとも、今向かってる途中だし、その『敵』は藤の花に攻撃を仕掛けられないそうだから」
 行人は改めて口を開くと、今回の依頼の詳細を語りだす。

●鎮守の藤、獰猛たる鉄刳輪(かなぐるわ)
 錆ヶ原にその藤を植えようとしたのは、単なる酔狂気まぐれの類だったのかもしれない。
 少なくとも、最初の『再入植者』は荒野が続くその地から鉄器を引き抜いてまわり、ひとところに纏めつつ藤を植えたのだろう。
 よもや、それがその場しのぎであっても有効に働くなど考えもしなかっただろう……「それ」の侵攻を止めたのは、間違いなく藤棚の効果である。
 皮肉なことに、それら鉄の器は数多が人の情念を吸って振るわれたことから、人の感情をネガティブな部分に絞って記憶している。……それらが『神性』を獲得した結果、鉄を使いこなすそれが産み落とされたのだから冗談にもなりやしない。
 鉄の刳輪を操り自在に操る『影』は間違いなく人の心を乱すものである。
 鬼人種の姿をしながら、天を衝く威容を見せたそれはまさしく伝承の類に明るい『鬼』そのもの。
 そんな巨怪が、いつまでも人の営みを手をこまねいて見ているわけがない。いずれ、それは人を襲う。そうなるまえに、撃破せねばならない――。

GMコメント

 リクエスト有難うございます。
 色々検討した結果、某神格と鬼となんやかんやのミックスでアレなものが出来上がりました。
 なお藤棚は日よけになるので、夏を迎えるこれからに作っておくことは実際何の違和感も持ちません。いいね?

●成功条件
・鉄刳輪の鬼の撃破
・戦闘開始地点から200m以上、鬼を進軍させない(【飛】等で押し戻しての時間稼ぎ可)

●鉄刳輪の鬼
 今回の敵。単体。
 体高5m、筋骨隆々にして角1本の巨大な『鬼』。
 両手に鉄刳輪(取っ手のついた円錐形で螺子切りのついた金具。造語)を持つ。
 鉄刳輪はもっぱら投擲武器(レンジ4)で、近接攻撃は己の拳足。鉄刳輪は出血と崩れ系統のBSを付与、拳足は弱点と恍惚が乗ってくる。
 その他、大咆哮(物・自身よりレンジ2全周、飛)を使用する。
 200m前進するとその位置から畑を撃破可能になるため、全力で止める必要がある。
 なお、ステータスはHPが膨大、攻撃力がかなり高く、高い次元の【再生】を持っている。
 当たり前だが『至』は通常手段では顔面に届かない。

●戦場
 豊穣・錆ヶ原。
 周囲には原型を留めず、錆びた金属片が多く転がっています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 鉄輪を砕く藤の鎰完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月22日 23時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●天衝く角
「藤ってあれでしょ? 確か綺麗な紫色の花と、ぐるぐるーって巻き付く幹? みたいなやつが特徴的な」
「然様でございますね。恨み辛み、音量の化身が風情を知るとは些か考え難いですが、鬼が育つまでに散った者の思念だとすれば」
「……この地方ならあり得る、ってことか」
 ルアナが身振り手振りで藤の形と色とを表現すると、雪之丞は首肯し、鬼がそれを攻撃しない事実に首をかしげた。ベネディクトは彼女の言葉を引き継ぐように眉根を寄せて考えると、仲間たちも事前に聞いた鬼についての逸話を改めて反芻した。
「情念こもった物質は神性を得て形になる……それが八百万となるか、はたまた此度のように鬼になるかは……、さてその情念次第と言ったところでしょうか?」
「負の感情からこのような者が生まれてしまうのですね……土地柄の問題なのか、どこでも起きえることなのか……」
 ルル家の思案顔に、沙月の表情が暗くなった。人の感情が影響を及ぼした結果とするならば、こんなものを生み出すほどの負の感情とは、いったいどれほどのものだったのか。
「この地にてどんな物語が紡がれるのか……とても楽しみです。ふふふ」
「ここを新たな住まいと決めた人達にとっても、ここは新天地なんだな……ここを壊すと決めた怪異とどちらに付くかと聞かれれば、俺は此方側だ」
 四音の弾むような声音に、行人も頷き返し、そして鬼をみる。笠に挿された藤の花は満開に咲き誇り、一房だけでもその存在感をありありと見せつける。鬼が襲わない理由が花にあるのか、その香りにあるのか、はたまた別の理由は定かではないが、少なくとも、彼を真っ先に狙うつもりはないらしい。
「我が名は新道風牙! 鉄刳輪の鬼よ、『お前たち』の戦い、この場にて終わらせる!」
 むしろ、堂々たる名乗りを上げて打ちかからんとする風牙にこそ、その興味を引かれているようでもあった。
「強敵だが、相手は1体。畑は何としても守り抜くぞ」
「お仕事の内容としては、鬼さんをその場に縫い留めることだけど、倒してしまってもいいんだよね。ならばかわいそうだけど全力で頑張ろう!」
 ベネディクトとルアナは各々の得物を構え、鬼目がけて駆けていく。
 ルル家と四音は鬼から距離をとって狙いを定め、今や遅しとその到来を待ち構える。いかにも小さく、弱く、猥雑に見える者達の敵意露わな行動に、鬼は両手に持った鉄刳輪を威圧的に掲げ、襲いかからんとする。……その鉄刳輪のシルエットを見たルル家は、顔をしかめてしばしそれを凝視し……目を見開いて叫ぶ。
「アレ完全にドリルじゃないですか?!」
「雰囲気を損なうから言わなかったんだけどな……」
 どうやら大半の面子が気づいていた様子だが、行人のように敢えて言わぬ者が大半だったらしい。
 貫通力を求めた結果とか、いろいろそれらしい理由はあろうが……偶然というやつはどうにも、デリカシーというやつを知らないらしかった。

●鬼と、人と
「おにさんこちら。てのなるほうへ♪」
 ルアナは鬼へ向けて挑発を仕掛け、その反応を注視した。攻撃の精度が劣っている、と感じた覚えはない。挑発に乗れば、畑から引き剥がすことで多少なり有利もとれるだろう……そんな発想はしかし、ふっと逸らした鬼の視線の前に霧散する。彼女を見ていた以上、聞こえていた、とみるのが自然だ。それを無視した以上、そこそこ以上の抵抗力が見込まれた。
「こっ……の……!」
「俺はこっち、君はそっちだ! 1人じゃ無理でも2人ならどうだ!?」
 風牙と行人は鬼の両足にとりつくと、互いに強烈な一撃をそれぞれの足に見舞う。風牙は再生能力を奪うために、行人はその進軍の速度を止めるために。
 その巨体にいかほどの威力が通じるかは未知数とはいえ、しかし彼らの狙いは無駄ではなかった……らしい。少なくとも、風牙のつけた傷口が塞がろうとしつつも歪んだ形のままであることからも明らかだ。
「グ……オォ……!!」
「その体躯でも痛みは感じる様ですね。安心しました」
 雪之丞は、行人目がけて振り下ろされた鉄刳輪の威力に薄ら寒いものを覚えつつ、その顔目掛けて連撃を放つ。得物は掠めるだけだったが、それでも相当な手傷を強いた様子。顔面を狙われた鬼はすぐさま狙いを彼女に定め、思い切り後ろに振るった足を前方へと蹴り出した。
「大ぶりな蹴りを放ったということは、足下の安定を捨てたということ……つまり」
「その顔を狙うに十分なお膳立てをしてくれるということだな。結構なことだ」
 沙月は軸足の小指を踏み抜くほどの勢いで跳躍し、鬼の顔面へと一撃を見舞う。
 彼女の背後で槍を振りかぶっていたベネディクは、沙月がいた位置へと槍を突き込む。どう見ても同士討ちを狙ったそれだが、沙月は器用に身を捻ってそれを避け、気づくのに遅れた鬼の油断と不意の一撃とを誘う。一見危険なようで、味方を目隠しにした恐るべき不意打ちである。
 堪らず数歩退き、顔を逸らした鬼を見たルル家は容赦なく追撃に出る。狙いは――敢えて、足。
「犬、猿、雉は連れねども! 鬼を祓うに不足はなし!」
 勇ましいかけ声と共に放った一撃は確かな精度を以て鬼の足を打ち抜き、浅からぬ傷を残していく。
 四音はといえば、掠めたとはいえ強烈なものを食らった行人を治療しつつ、後退させられた分を埋めるが如く歩を進める鬼から距離をとろうと試みる。
 遠すぎても鉄刳輪の一撃が恐ろしく、近ければ語るまでもなく……隙の少ないその巨体は、相手として実に厄介極まりない。
「こっちへおいで、おにさんこちら……♪」
 前に進ませない。その強固な意志のもと、ルアナは再び鬼へと挑発を向ける。ぐるりと、今度こそ視線を向けて足を踏み出した鬼は、しかし息を吸い込むと咆吼を放ち、四音以外のほぼ全員を放射状に吹き飛ばす。予備動作が見えなかった、なんてことはない。
 だが、その一瞬に割り込む余裕を持った者がいなかったという、ただそれだけ。
 無造作に振り抜いた鬼の足は、屈んだ雪之丞のこめかみを掠め、巻き起こった風でその身を揺らす。堅固な守り、優秀な回避能力を持つ彼女を襲った一撃は、痛打とは言い難いが、無視できるものではない……続けざまにもう一撃、襲いかかってくるのなら尚更に。
「……好都合です。拙も、受けに回るばかりとはいきませんので」
 2本の『夜刀』を構えた彼女は、襲い来る次の一撃を凝視し、しかしそれを待つことなく、一撃を見舞った。守りの構え、転じて攻め。それは鬼の動きを揺さぶるには十分なものだった。
「その長身、顔を狙われ慣れぬとみました。つまりは、顔は打たれ弱い……のではないかと」
 沙月はバランスを崩した鬼の動きに合わせ、顔面目掛けて一撃を叩き込む。隙を衝くそれは、『殴って当てる』のみならず。己が当てると意図して叩けば、気や勢いがそのまま叩き込まれるのだ。
「痛がっちゃいるが、まだ余裕があると見た。なら、余裕をなくすまで叩くまでだ!」
「ああ……そう易々と俺達もやられはせんッ!」
 行人は鬼の足へとより強力な一撃を叩き込み、その進行を一秒でも遅らせようと腐心する。ベネディクトは、鬼を後退させるのではなく確実に足止めを狙う向きにシフトし、槍を全霊を以て投擲し、その耳を貫きにかかる。
 悲鳴をかみ殺した鬼の形相は怒りそのもの。目の前の矮小な者達を排除すべき敵として改めて意識したその表情、視線は、まともな神経を持つ者なら卒倒して然るべきそれであった。
「ごめんね。これ以上進んでもらうわけにはいかないの」
「沙月殿、その推測に乗ったであります! これであまり効果がない時は――まあお互い様ということで!」
 ルアナは鬼の足へと大剣を突き立て、全身の力で押し込んだ。ルル家は鬼の頭、それも目を狙うべく……その手に、対物狙撃ライフルを生み出していた。何故か? 狙えておっきければ宇宙バズーカとかなのだろうが、そこは現実の範疇で精度を選んだのだ。おそらく。
 ライフルの弾丸は狙い違わず鬼の目を貫き、その喉から悲鳴にも似た咆吼を吐き出させた。恐るべき貫通力。そして、その貫通した目を数十秒のうちに再生する鬼の再生能力もさるものである。……機能を回復しただけで、身に被った痛手を回復できたわけではないようだが……。
「ゥゥゥゥゥ…………!!」
 鬼は怒りを露わに、両手に構えた鉄刳輪を振り上げる。投擲に用いる武器、しかし手に持つということは拳撃に使えぬ道理はない。然るに、足下へと踏み込んでいた数名目掛け驟雨の如く振り下ろされた拳と鉄刳輪は、四音の治療速度を上回る破壊を以て地面を抉り、周囲の金属を弾き飛ばした……さながら、地を耕すように。
「伝わってくるぜ、無念や苦痛……よほど辛かったんだろう、だったら、尚更! ここで俺達が終わらせてやる!」
「『あなたたち』が立ち向かった気持ちが、今のあなたを産んだのなら……ううん、やっぱり倒さなきゃいけないよね」
 それを受け止めた風牙とルアナは、それぞれが鬼の内部に蟠る感情が、必ずしも悪意・敵意だけではないことに気づいただろう。さらに、行人と風牙は気づいたはずだ。散々に打たれ、蹴られ、傷つけられながらも藤の花は些かも傷ついていないことに。
 それは――弱点でも忌避物でもなんでもなく、鬼が壊さぬよう扱っていたという事実に。

●それは祈りにも似た
 鬼の猛攻はイレギュラーズ達を傷つけたが、当然ながら彼らも猛攻で以て鬼の肉体を傷つけにかかる。驚異的な再生を用いるなら、それを阻害すればいい。
 強烈な打撃能力を是とするなら、その注意を引きつけ、数名が狙いを受け止めればよい。
 仮に1人が気を引くことができないのなら、それを複数人で持ち回りにすればいい。
 イレギュラーズは多様性を持つがゆえに、最適解を導き出すことができないが。
 その多様性がゆえに、あらゆる代替策を講じて『最適である』と強弁することが可能なのだ。
 50メートル。鬼は強引ににじり寄る。80メートル。イレギュラーズが押し返す。咆吼と絶叫とが切り結ぶ戦場で、幾度となく受けた鬼の咆吼のクセを彼らはつかみ取る。最初こそノーモーションに等しく見えたそれは、その実隙だらけであり。
「藤の精霊よ、鬼の頸へとこの一閃届かせ給う……!」
 風の精霊の後押しを受けてとんだ行人は、儀式めいた言い回しで藤の花に触れ、蔦草の如き刃紋を持つ刀を振るう。大きく頭を上げた咆吼の予備動作は、喉ががら空きだ。狙ってくれと言わんばかりのそれに、彼は飛び込んだ。深い呼吸と共に。
 だが、僅かに鬼が頭を戻すのが早いか、と思われたその瞬間、持ち上げた顔のさらに上から、たたき落すような一撃を放つ陰があった。
「生憎と、バネには自信があってね。咆吼するとき、右足を踏み出すクセがあるんだな? 使わせてもらったよ」
 風牙が、足を踏み台にして跳躍し、上をとったのだ。落下する勢いを味方につけたそれは、滝の如くの激しさを伴い、鼻先を両断する。
「顔狙いが常道ですが……ここは体勢を崩すのがよいと判断します」
「いいだろう、あの図体を盛大に転ばせられるなら試す価値はある!」
「では、拙はあの大口を塞ぐとしましょう。炎も毒も、入れたくはないでしょうから」
 沙月とベネディクトは、それぞれの足目掛けて渾身の一撃を叩き込む。雪のように冷たく、月のように閑かに、そして花のように優雅な沙月の一撃。対してベネディクトのそれは、傭兵仕込みの苛烈なもの。何れも、よわりかけていた鬼にとっては堪ったものではない。
 バランスを崩した鬼の口など、雪之丞にかかれば狙うというより『送り込む』に等しい部位だ。
 毒と炎を突っ込まれた鬼が悶絶しながら、もんどり打って倒れた姿は痛快の一言に尽きる。
 両手両足を振り回しながら起き上がったその所作は、当然ながら周囲の者達を痛めつける……が、四音は猛攻を続ける仲間達目掛け、魔力が尽きんとする勢いで治癒を施し続けていた。
「皆さんの命を癒やし守るのが私の使命です。怪異が相手なら、尚更倒れるわけにも、倒れさせるわけにもいきません……私も含めて!」
「ここが想いの成れの果てなら、わたし達はそれを受け止める責任がある。先に進む人達がいるなら、それを後押しする義務がある! だから……今はそこをどいて!」
 四音の治癒を受け、ルアナは叫ぶ。生まれ落ちた世界にあった負の感情を、彼女は十分には思い出せていない。今はそれでいいのかもしれない、とおもった。
 だって、自分が成すべきは誰かのための自分であること、なのだから。

 鬼が沈む。
 喉を掻ききられ、胴を貫かれ、それはひどい有様で。
 ……だが、崩れ落ちたそれが幾重にも折り重なった鉄錆として消え去った後に、イレギュラーズがその周辺に藤の花を植えることを提案し、開拓者達がそれを快諾したことは、鬼にとって……ほんの僅かの救いであったのかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 鬼は陰から出でて陽に融けたれば。

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