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シナリオ詳細

<月蝕アグノシア>邪なる羊の狂笑

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 妖精郷アルヴィオン。
 現状、この地は外部から侵攻してきた魔種、魔物による強襲を受けていた。
 巨大なキノコが立ち並ぶとばりの森にあるクァレス村。
 多数の妖精が住んでいるこの地もまた、魔物達の強襲に遭っていて。
「きゃー!!」
「いやあああっ!!」
 翼を羽ばたかせ、小さな体躯の妖精達はその場から逃れようとするのだが、粘土製ゴーレムの粘土弾、自律型機械人形の銃砲に撃ち落とされ、森から逃れることができずにいた。
「家から出ちゃダメ、捕まるわ!」
「入り口を塞いで。相手は入ってこられないよ!」
 妖精達の住居は人間サイズと比べれば小さく、魔物達は入り込むことすらできない。
 それならと妖精達はキノコや花々の自宅へと閉じこもろうとするのだが、そんな住居を躊躇なく血に塗れた斧で伐採していく人影が。
「立てこもりなどさせませんわ。大人しく出てきなさいな」
 それは血に濡れたドレスを纏った獣種女性。
 薄暗い瞳に狂った笑みを浮かべるそいつはさらにもう1本、キノコを切り落としてみせた。
「「…………」」
 これ以上、村の住居を破壊されてはたまらない。
 妖精達が仕方なく外へと姿を現すと、頭上から水の体を持つ豹や、どろどろした体のニグレドが妖精達を拘束していく。
「タータリクス様の言いつけもありましてね。大人しくしていただきますわ」
 どうやら、この魔種や妖精達の命を奪う様子はないらしい。
 それもあって、妖精達も抵抗を止めたのだが……、魔種の女性は楽しそうに笑いだして。
「あはっ、あはははははは……!!」
 狂った笑いに、妖精達は背筋に寒気を走らせて。
「これだけいれば、材料は十分ですわね……」
 この女の言葉を聞いた妖精達は、間違いなくこの先自分達が無事では済まないだろうと確信するのである。


 妖精郷アルヴィオンが未曽有の危機に陥っている。
 魔種と配下の魔物達が妖精達の集落や城を占拠してしまったのだ。
 一部は錬金術師タータリクスの作った魔物であり、イレギュラーズの血や髪等を採取する事件も引き起こしている。
 魔種どもがゲートを強引に突破、余波でその機能を全停止してしまっていたが、ローレット勢が妖精郷への正規ルート『大迷宮ヘイムダリオン』を踏破したことで、妖精郷へと至ることができるようになった。
 それによって、アーカンシェルの機能回復を知った妖精達は、アルヴィオンからこちら側に逃げ出しており、ローレットへと救援を求めている。
「アルヴィオンから避難した女王の侍女、フロックスさんが現状について語ってくれたそうです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が今ある情報を纏め、イレギュラーズ達へと説明する。
 まず、女王が捉えられ、妖精の町『エウィン』にある『月夜の塔』へ幽閉されてしまったこと。
 そして、妖精達の『命』を使い、人間そっくりの形をした『白い怪物(アルベド)』が現れたことだ。
「女王様や妖精を助けてほしいと、フロックスさんは救いを求めているようです」
 妖精郷で好き放題振舞う魔種を放置するわけにもいかない。
 世界存続の可能性『パンドラ』を収集するローレットのイレギュラーズとしては、魔種によって蓄積される『滅びのアーク』増大を阻止せねばならない。
 妖精郷アルヴィオンに急行し、女王を始め妖精達を救出する為の作戦を決行することになる。

 別の情報屋達が女王らの救出作戦について話す中、アクアベルは妖精達の救出依頼について語る。
「とばりの森と呼ばれる巨大キノコの群生地のクァレス村の妖精達を助け出してほしいのです」
 この地は今、山羊の獣人女性……魔種エイプリルを筆頭とした錬金術モンスター達の強襲を受けており、多くの妖精達が捕らえられてしまっている。
「正確には確認できていませんが、10数体の魔物が入り込み、集落50名程度の妖精が捕らえられているそうです」
 魔物……錬金術モンスターは4種。水豹とクレイゴーレム、オートマタにニグレドが確認されている。
 これらをある程度倒すか、魔種エイプリルを退けねば、妖精達の解放はない。
「相手の狙いは妖精達の捕縛のようです。……おそらく、他の依頼で話題に上がっているアルベド生成の為かと……」
 残念ながら、現地情報については乏しい。
 しかし、家屋は基本妖精しか入れない場所も多い。
 多数の妖精達を魔物が監視できる場所は家屋内ではありえず、とばりの森の中であってもそう多くはないはずだ。
 相手は妖精を人質にとったとしても、その命まで奪うことはないはず。もっとも、傷つける可能性は否めないが……。
「ともあれ、魔種、魔物達を撃退し、妖精の皆さんを救い出してあげてください」
 アクアベルはイレギュラーズ達に、このクァレス村の解放を願うのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 妖精郷アルヴィオンでの決戦となる全体シナリオです。
 よろしければ、お付き合いくださいませ。

●目的
 とばりの森の解放、妖精達の救出。
 エイプリル含む敵の撃退。

●状況
 とばりの森のクァレス村を魔種エイプリルが引き連れる錬金術モンスターらが占拠しております。
 エイプリルの撃退、もしくは一定数の錬金術モンスターの撃破が必須です。

○とばりの森
 巨大なキノコが群生する不思議な森です。
 人間の背丈すら超える巨大なキノコの森を中心に、大小の樹木や淡く光る不思議な花などが立ち並ぶ、非常に幻想的な場所です。
 そんなキノコや木々、花々を住居として妖精達が住んでおりますが、錬金術モンスター達によって強引に家から引きずり出されて捕らわれている状況です。

●敵
 魔種エイプリルを中心に、錬金術モンスター達が森に入り込んでおります。
 総数は不明ですが、10体以上はいると見られます。

○エイプリル・リリィ・シャーリー
 山羊の獣人女性。魔種。能力は不明ですが、血で染まった斧を使うのは間違いないものと思われます。

○水豹×?体
 人工精霊の類。
 近接攻撃を、水の貫通レーザー、水を使った窒息狙いなど。

○クレイゴーレム×?体
 粘土を固めて造られた人型のゴーレム。
 拳や蹴り、粘土弾など。

○オートマタ×?体
 自律型の機械人形。
 内蔵された銃砲、電流を纏わせた打撃など。

○ニグレド×?体
 黒いどろどろの人型のモンスター。
 能力は不明です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <月蝕アグノシア>邪なる羊の狂笑完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年07月16日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
竜の力を求めて
武器商人(p3p001107)
闇之雲
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
策士
ハロルド(p3p004465)
聖断刃
オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)
石柱の魔女
アリア・テリア(p3p007129)
希望の紡ぎ手
恋屍・愛無(p3p007296)
ろっくの伝導
エリス(p3p007830)
呪い師
エミリア・カーライル(p3p008375)
新たな景色

リプレイ


 深緑へとやってきたローレット所属のイレギュラーズ達はゲートをくぐって妖精郷アルヴィオンへと至る。
 一行はそのまま、魔種と錬金術モンスターに襲われているという
多数のキノコが群生した『とばりの森』へ急行していた。
 陽光が差し込むその森は、混沌ではまずお目にかかれぬ多数の巨大なキノコや大小の樹木、淡く光る不思議な花と、見とれてしまいそうにもなる幻想的な光景が広がっている。
 本来なら、この妖精郷という幻想的な雰囲気を抱かせる土地をじっくりと堪能したい者もいただろうが、残念ながら皆とてもそんな気分にはなれなかったようだ。
「さて、いつもはこちらが多くがほとんどっすけど、まさに多勢に無勢とはこの事っすかね?」
 露出が大きく派手目の衣装を纏う『鋼鉄の冒険者』エミリア・カーライル(p3p008375)が仲間達へと同意を促す。
 相手は魔種を含み、10体以上との情報がある。
「……全く、数を大量に用意しやがって……」
 オッドアイの狐の獣種少女、『こむ☆すめ』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)も悪態づく。
 魔種達は今、とばりの森の一角を占拠し、妖精達を捕獲している。
 リアナルはその狙いをニグレドの量産と見ていたようだが……。
「まったく……やっかいな」
「ああ、実に厄介だ」
 人型をしているが、その正体は地球外生命体という『らぶあんどぴーす』恋屍・愛無(p3p007296)も同意する。
 村一つとなれば当然、大規模な作戦に違いないが、如何せん敵の数が多い。
「だが、まぁ、やるしかあるまい」
 愛無の言うように、救出に当たる他ない状況ではある。幸い、その部隊の数から追跡に限れば楽そうだ。
「魔種……この世界の癌どもが。皆殺しだ」
 つり目三白眼、クールな印象を抱かせる『聖断刃』ハロルド(p3p004465)だが、こと魔種討伐となれば戦闘狂の本性を垣間見せる。
 ただ、今回の依頼は妖精の救出が最優先だ。捕えられれば、彼らが実験の素体とされてしまうのはほぼ確実なのだから。
「何時ぞやの山羊の獣人……ここで決着を付けたい所ですが。まずは、この状況を何とかしないと!」
「……討伐の難易度は高いか。仕方がない、いずれ邪魔の入らない場でケリをつけるしかないか」
 ブラックドッグという妖精種とのハーフである旅人女性、『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が今作戦に意気込みを見せると、状況を冷静に分析したハロルドも今回は妖精の救出を優先して立ち回ることに同意する。
 そこで、前髪で両目を隠す性別不詳の旅人、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が今作戦の方針を口にする。
「戦闘中に妖精達を運んで闘争される可能性に留意だよ。可能なら妖精達を先に解放して逃がしておきたいね」
 妖精達が縛られているのは、建物のスケールからほぼ間違いなく屋外。しかも、一括管理の為に広場へと固めて見張られている状況のはずだ。
「同胞たちを酷い目に合わせるなんて許せないね! 懲らしめなきゃ!」
「妖精さん達が心配です……早く助け出しましょう!」
 音を愛する精霊種の『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が素直な気持ちを表に出すと、別世界出身のエルフ女性、『呪い師』エリス(p3p007830)も捕らわれの妖精達の身を案じて仲間達へとそう促す。
「他所では複製(アルベド)が出現しているらしいが……あの魔女とやらはアルベドを連れてはいないようだな」
 イレギュラーズの複製体として妖精を利用し、造られたアルベド。
 それについて、黒翼を背に生やす『黒翼の裁定者』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は考える。
 今回の魔種は単なる利害の一致で行動しているのか、それとも……。
「そういえば……、魔女と言えばこちらにもいたな」
 レイヴンの言葉を受け、眼鏡を着用した褐色肌の幻想種女性、『石柱の魔女』オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)へと皆の視線が集まる。
「やっと正体を現しましたか」
 臆病な彼女にしては、大胆な行動に出たと口にするオーガストは明らかに魔種となった山羊の獣人のことを知っている口ぶりだ。
 今回現れた山羊の獣人の名は、エイプリル・リリィ・シャーリー。 相手は家族であり、姉妹のようだが、オーガストはそれを全く感じさせず。
「……彼女の暴虐を防ぎ、叩きのめしましょう」
 ただ、事件を引き起こす魔種を倒すと決意を見せるのだった。


 とばりの森。
 愛無がゴーレムの足跡や、大規模な群れの臭いを追跡し、件の妖精の住居が集まる地域へとたどり着いた一行はすぐに錬金術モンスターの姿を視認する。
 以前の依頼にも姿を見せた水豹、クレイゴーレム、オートマタ。それに、今回は黒い泥状のモンスター、ニグレドの姿まである。
「あはっ、あはははははは……!!」
 時折、聞こえてくる笑い声が、それらのモンスターを従えている魔種で間違いない。

 詳細が分からぬ部分もあり、メンバー達は改めて現場の状況確認を行う。
 まず、ハロルド、エリスがこの森に住む鳥をファミリアーとして呼び出し、偵察に当たる。
「広場に妖精達……その周囲を取り囲むようにモンスター達がいるな」
「敵は12……魔種を入れて13体ですね。開けた北側より、キノコが入り組む南の方が妖精達は逃げやすいかもです」
 ハロルド、エリスが得た情報を仲間達と共有し、敵情報と合わせて妖精達の退路も考えて手早く作戦を固めていく。
「じゃ、みんなよろしくね!」
 また、精霊疎通と統制を組み合わせたアリアが複数の精霊達を通して、現場の状況をさらに詳しく伝える。
「内側にオートマタ3体が守りを固めて、それ以外3種3体ずつが周回しながら陣取っているのね」
 愛無はできる限り、敵の戦力をスキャンする。特に、情報が全くないニグレドは注意深く見つめて。
「泥を発してくるのか。……呪いは厄介な相手だな」
 元々、能力の分からないニグレドを早めに討伐予定だったが、愛無の情報通りならやはり優先撃破対象となりそうだ。
「問題は……あれだな」
 愛無が問題視していたのは、中心にいた羊の獣人女性……魔種エイプリルだ。
 状況の推移を待っていると思われる彼女は、輸送の算段でも立てているのだろうか。
 なお、オーガストも近場のキノコなどへと自然会話を試みる。
「……そう、彼女はあちらこちら動き回っているのですね」
 どうやら、エイプリルは常に捕えた妖精達の中心に居続けるわけではなさそうだ。

 妖精救出へと広場へと飛び込むまでの間に、イレギュラーズ達は皆準備を進めていた。
 レイヴンは飛行と森番としてのセンスを生かして黒翼を羽ばたかせ、高所から視界と足場を確保できる狙撃地点へと陣取る。
 ジャックポットスペシャルによって運を呼び込むリアナルは、これからの戦いを最適化する特殊支援の態勢を整える。
 あとは、エイプリルが大きく動くのを待つのみ。敵が大きく北へと動いたのをハロルドが見定めて……。
「今だ」
 彼が仲間達へと合図を出すと、武器商人が前方へと飛び出していく。
 武器商人は自らの役割であるエイプリルを抑えるべく、いち早く接敵してロックを目指す。
 その後ろを、アリアが追って。
(この子を抑えておかないと、被害が大きくなりそうだしね!)
 同時に、残りのメンバーが妖精達を守る為、錬金術モンスターと集まる広場へと向かう。
「自分がヒーローになれるなんて思って無いっす!」
 前に飛び出す仲間達が攻撃を引き付けてくれる。その間に、エミリアは周りのモンスターたちを1体ずつ撃破しようと身構えて。
「だけど、目の前の助けてあげないといけないものがあるならば、それを助けたいじゃないっすか!」
 襲撃してきたイレギュラーズ達に、山羊の獣人女性はすぐ広場の方を向き直って。
「貴方達、侵入者を排除なさい!」
 配下の錬金術モンスター達へと指示を出す魔種エイプリルは血塗られた斧を両手に握る。
 そのエイプリルへ武器商人は接敵して、物理、神秘の攻撃を遮断する障壁、結界を展開する。
「素敵な花嫁衣装のお嬢さん、我(アタシ)と遊んで行かない?」
「あはっ、いいわよ。御代は貴方の首でよろしいかしら?」
 楽しげに笑い、エイプリルは近づいてきた武器商人へと斬りかかっていく。
(このコ、狂ってそうな割りに理性と判断力はちゃっかり残ってるみたいだし、基本はおしゃべりしながら情報収集かな)
 なるべく自分へと注意を向けられるように相手を扇動して適度に挑発し、武器商人は有益な情報を得られないかと試みるのである。


 さて、魔種エイプリルが率いていた錬金術モンスターには他メンバー達が交戦に当たるが、ハロルドと愛無が敵の引き付け役として飛び出す。
「ははははっ! おら、掛かってこいよ!」
 東側に位置取ったハロルドは闘気を圧縮して透明な青い刃を生み出し、敵陣へと放っていく。
 錬金術モンスターの多くが妖精達の傍にいたが、その中でも近場のクレイゴーレム2体をメインに、オートマタらの注意を彼は引いていく。
 その太い腕で殴り掛かってくるクレイゴーレムの攻撃を、ハロルドはやすやすと受け止めてみせて。
「テメェらごときに俺の守りを貫けるか!」
 まだまだ、余裕を見せるハロルドはアバターカレイドアクセラレーションを使い、もう1人の自分の可能性を纏って身体能力を飛躍的に向上させていた。
 愛無はというと、匂いで敵味方の大まかな位置を把握して。
「恋屍・愛無だ」
 西側へと陣取った彼もまた敵へと名乗りを上げ、モンスター達の注意を引きつける。
 こちらにはクレイゴーレム1体の他、水豹やニグレドといった敵。
 結果的には、愛無が多くの敵を引き付ける形となるが、彼は位置取りによって仲間や、特に広場中央にいる妖精達を巻き込まぬよう配慮して動く。
 妖精達へと接敵する敵の数を可能な限りコントロールさえできればと、愛無は意識して立ち回っていた。
 なお、各敵の抑えに当たる面々のサポートには、リアナルやエリスがついている。
 リアナルは特殊支援を抑え役優先で振りまき、継戦ができるよう努める。
 エリスはチームの回復役となっていた。
 明らかに負担の大きい武器商人がメインとなり、数多くの錬金術モンスターを引き付けるハロルド、愛無も合わせ、できる限り纏めて癒しに当たる。
 リアナル、エリスは錬金術モンスターの排除を請け負う攻撃役のフォローにもあたるのだが、その前に優先すべきことの為に動く。
「向こうだ、行け!」
 ハロルドが示すは、キノコが入り組む広場の南側。
 チームとしてもそれは最優先。人質にされようものなら状況打開が非常に厄介なことになるからだ。
「あはっ、何をしているんですの。早く捕えなさいな!」
 多少語気に怒りが籠っていたエイプリルが叫ぶが、武器商人が先へと行かせない。
 錬金術モンスターも依然としてハロルド、愛無に引き付けられたままだが、中には冷静さを取り戻す者もいた。
 ニグレドや水豹が妖精の確保へと動こうとすれば、鶫がそれらを狙い撃つ。
「これ以上、犠牲者を出す訳にはいきません!」
 鶫が発するのは、うねりのたうつ雷撃。それらが敵の体を灼き、感電させてしまう。
「妖精の皆さん、私に続いてください」
 オーガストは視界の向こうにいるエイプリルを一瞥してから、逆方向へと捕まっていた妖精達を誘導する。
 妖精達は互いの顔を見合って戸惑ってしまうが、ぼやぼやしていれば錬金術モンスター達にまた捕まってしまう。
「早く、逃げてください!」
 エリスが叫ぶと、妖精達はこくこく頷いて逃げようとする。
 我を取り戻していた水豹やニグレドが追いかけようとしたところに、エミリアが立ち塞がって。
「残念っすけど、ここはすこーし邪魔させてもらうっす!」
 相手は2体。エミリアはそのまま、妖精達の退路を確保すべく立ちはだかる。
「妖精さん! 自分に捕まったり乗れるだけ乗って欲しいっす!」
 エミリアは妖精達へとそう呼び掛け、捕まれない者には髪の毛でも掴んでほしいと呼びかけた。
 その間に、仲間達が上手く、錬金術モンスターの機を引いてくれたようで、エミリアはさらに妖精達を全身に引き連れ、怪力でその場から移動しようとする。
「力こそパワーとは言ったものっす!」
 幸い、現状は家の破壊には至っていないが、このまま距離を取り、エミリアは妖精達を戦場から引き離そうと動いていた。


 エミリアに引き連れられ、この場から離れていく妖精達。
 本格的に敵の排除へと当たり出すメンバー達を援護しようと、リアナルがソリッド・シナジーで支援を続けているが、アリアもまた支援に力を注ぐ。
 まずは呪詛の歌でエイプリルの体を包み込み、呪言の力でその身体を苛む。
「十全の力なんて発揮させないもんね」
 あっかんべーと舌を出すアリアはさらに簡易封印を施して、相手が満足に攻撃できぬ状態にしてしまう。
「あはっ、さすがは、ローレット……ですわね」
 しかしながら、スキルを封じられたとしても、魔種としての力まで押さえつけられたわけではないエイプリルだ。
 石化を回避していた彼女は、両手の斧を叩きつけて武器商人を力ずくで叩き伏せようとしていた。
 一方、イレギュラーズ達は錬金術モンスターの討伐を順調に進めて。
 ある程度妖精がこの場から離れたのを確認したオーガストは、調和の力で抑え役を請け負う仲間達を癒し、時には攻撃にも出る。
 仲間達の攻撃が集中しているニグレドに対して、オーガストがこの場に造り上げた大蛇の泥人形が睨みを利かせる。
 体が石のように固まるモンスターが出る中、攻撃が集中していたニグレドはどろりと黒い泥となって溶けていき、再び動くことが無くなった。
 それを皮切りとして、ローレット勢の攻勢は強まっていくが、合間に支援に当たっていたリアナルが扇子を手に輝きを見せて。
「……シノマイ・セイテンハレルヤ」
 煌めく星々の輝きが相手の気力、魔力を奪い取っていく。
 元々、依頼を受ける地点では能力情報のなかったニグレドだが、厄介な能力を持っていることが仲間からの情報提供で分かっている。
 何もさせないのが一番。ただ、リアナルもそう簡単に事が運ぶとは思ってはいない。
「とはいえ、私にはこれぐらいしか能がないのでね」
 しかしながら、リアナルのその攻撃は功を奏し、ニグレドを満足に立ち回らせはしない。
「不定形というのは、どうにも不安を想起させて仕方がない」
 高台から敵を注視していたレイヴンも、ニグレドを危険視して狙い続ける。
 思ったよりは仲間達の物理攻撃も効いていたようだが、能力が面倒な相手だとレイヴンは判断して。
「不安の芽は早々に摘ませていただこう。起動せよ、起動せよ、八ツ頭の大蛇……ハイドロイド!」
 レイヴンが描いた魔法陣から呼び寄せたのは、異形の多頭海蛇の頭。
 それらは口内へと水を集めていき、一気に噴射していった。
 直撃を受けたニグレドは一溜りもなく、どろりとその場に崩れ落ちてしまう。
 同じタイミング、エミリアも自分の方へと再び向かってきていた錬金術モンスター達を相手取ることに。
 妖精達を守るように立つ彼女だったが、素早いオートマタとニグレドの攻撃を同時に受けたことで意識が途絶えかけてしまって。
「耐えてみせるっすよー!」
 パンドラを自らの生命力へと変えたエミリアはギフトによって首や足、首、左眼の機械化した部分が体を覆う。
 彼女は弱ってきていたニグレド目がけ、巨大剣「F・ブレイカー」による強烈な一撃を浴びせかけ、完全に相手を黒い泥状の物体としてしまったのだった。


 ニグレドを順調に討伐したイレギュラーズ達。
 ハロルドは錬金術モンスターの討伐を仲間達が進める間、相手を煽り、盾となり続ける。
 面倒なニグレドはいなくなったが、だからと言って他モンスターも手強いことに変わりはない。
「あと2回……か」
 3回目のアバターカレイドアクセラレーション。
 徐々に自分も仲間も消耗してはいるが、動ける間はハロルドも聖剣を振るって次なる優先撃破対象であるクレイゴーレムへと斬撃と共に雷を叩き落とす。
「クレイゴーレムは輸送の要となりそうだな」
 愛無の考えは一行の総意でもあり、比較的早いタイミングでこの巨体を潰そうと考えていた。
「心理的重圧をかけていけば、過去の報告を見る限り、多少の目はありそうだが……」
 クレイゴーレムはただ殴りつけてくるのみ。引かぬなら是非もなし。愛無は戦うだけだ。
 魔種エイプリルの抑えに当たっていた武器商人、アクアも苦しい戦いを強いられるが、なんとか前線を持たせていた。
(なんせほら、我が死ににくいって気が付くにも多少時間はかかるし、2人がかりだし)
 実際、武器商人は幾度もエイプリルの斬撃を受けていたが、持ち前のスキルで身を固め、さらにアクアが手助けして継戦能力を高める。「それで、お嬢さん。番の元へは行かなくていいの」
「あははっ、何を探っているのでしょう」
 何か口を滑らせて情報を漏らしてくれればと武器商人が期待していたが、残念ながらエイプリルの口はそこまで軽くなかったようだ。

 その後は皆、力の限り敵の数を減らす。
「好き放題やるのもここまで。貴方達の愚行は、ここで微塵に打ち砕かせて頂きます」
 仲間が引き付けるクレイゴーレムへ、鶫は召喚兵装によって呼び寄せたライフグレネードを頭へと叩き込んで体力を削る。
 さらに、鶫は顕現した邪悪な怨霊によって、クレイゴーレムに与えられた仮初の生を刈り取ってしまう。
 リアナルも仲間の支援強化を一通り済ませ、別のクレイゴーレムを狙う。
 再び、リアナルは星を瞬かせて敵の気力、魔力を奪っていたのだが、仲間の攻撃が集中していたクレイゴーレム1体が崩れ落ちていたようだった。
 さらに、クレイゴーレムを引き付けていた愛無は残像を影のように展開してそいつを惑わせる。
 そのクレイゴーレムはそれでも愛無を狙って蹴りを叩き込もうとするのだが、反撃体制を取っていた彼女によって見事に玉砕して自滅してしまっていた。
 クレイゴーレムを全て倒し、次は水豹へとイレギュラーズ達の攻撃対象が移る。
 我に返った水豹が素早く妖精を追跡しようとしていたのだが、高所にいたはずのレイヴンが近づいて。
「本来、お前達に対して抜くものではないんだがな。――是非も無し」
 素早く近づいたレイヴンが呼び出したのは、無名の執行者。
 溜めの時間は必要ではあったが、振るわれる大鎌は間合いすらも無視してしまう。
 レイヴンの断頭台は水豹の意識をも刈り取り、ただの水へと化していった。
 少しずつ、加速していく討伐。
 鶫の発した雷が戦場を踊って敵複数を灼いていき、さらに、エミリアが苛烈に別の1体へと巨大剣を叩き込むことで、それぞれ水豹を1体ずつ霧散させていく。
 しかしながら、イレギュラーズとて被害は小さくない。
 戦いの中で調子が上がってきていた魔種エイプリルは徐々に手が止められなくなっていたようで、武器商人とアリアは抑えられなくなってきていた。
「あははははははっ!!」
 ここにきてスキルを解放していたエイプリルの振り回す血染めの斬撃。
 それは一気に武器商人とアリアを地に伏せようとしてしまう。
 これまで、物理一辺倒で攻撃していたエイプリルだ。ここにきての神秘攻撃に虚を突かれた武器商人。
「奥の手はここぞという時に見せるものですわよ?」
 狂気の笑いを浮かべ、血に濡れた凶器をエイプリルは振り回す。
「倒れないことが……大事!」
 アリアはさらにエイプリルの動きを止めようとして。
 序盤は上手く封じていたのだ。全く自分のスキルによる足止めが効かないはずはない。
 歪みの力を持つ呪言。それが今度はエイプリルの体を一時的に医師へと近づけて。
「あはっ、やりますわね……!」
 その間に、他メンバーが残るオートマタの排除を急ぐ。
 錬金術モンスターもオートマタのみとなっており、抑えに当たるハロルドや愛無がほぼカバーできていた。
 オートマタは素早い動きでこちらを翻弄しようとしてくるが、そいつらが十全に性能を活かせるのは仲間がいて、かつ十分に相手との距離を取ることができる状況だ。
 すでに別依頼も含めて交戦を重ねており、それを見切っていたイレギュラーズ達。
 遠距離から妖精を狙う可能性も考慮しながらも、リアナルは自らの能力を底上げしてから、敵の魔力を奪い取る。
 そこで、オートマタが底力を見せ、抑えるハロルドの胸部を撃ち抜いていく。
 思わぬ一撃にハロルドは可能性の箱をこじ開けて耐えきり、透明な青い刃を撃ち込んで反撃する。
「ったく、驚かせやがって……!」
 ハロルドが行きついてから程なく、同じく抑え役の愛無が敵を惑わせながらも、反撃でオートマタを撃破していた。
 エリスは仲間達の消耗を気にかけて癒しに当たり続ける。
 敵が減ったこともあり、位置取りを行うのも容易になったエリスは仲間達の支援の為の領域を展開する。
 最後の1体はオーガストが追い込んでいた。
 仲間達が抑えていたこともあり、オーガストは見えない悪意を放つことでそいつを仕留めてしまう。
 機械音を立てながらも地面に転がった最後の錬金術モンスターの姿を見ることなく、オーガストは血の繋がらない家族を見据えて。
「私は昔から貴方が嫌いでした」
 きっぱりと拒絶を示すオーガストに、エイプリルは狂気の笑いを浮かべて。
「ああ、お姉様。折角お会いできたのに、なんて素気無いこと」
 にやりと笑うエイプリルは体が動くことを確認して。
「残念ですわ……。私、お姉様のこと、尊敬しておりますのよ……?」
「…………」
 拒絶の一言以降、何も語らぬオーガスト。
 エイプリルは素早く立ち回り、それまで抑えに当たっていた武器商人をかわして両手の斧を広範囲へと薙ぎ払う。
 一度パンドラに頼っていたエミリアの体を、血に濡れた刃が深く抉る。
 彼女が膝をついたところで、エイプリルは数度飛び退いて広場から北へと大きく移動した。
「どのみち失敗ですわね。報告に戻りませんと」
「いい加減、教えて頂きたいものですね。貴方達は何がしたいのですか?」
 そいつへ、鶫が声を掛けながら足止めの為の炸裂弾を発射する。
「あはっ、あはははははは……!」
 だが、鶫の起こした爆発に紛れ、高笑いするエイプリルはいずこともなく去ってしまったのだった。


 戦いを終え、メンバー達は被害状況を確認し合う。
 パンドラを砕いた者は半数近くおり、エミリアや武器商人は重傷。安静が必要な状態となっていた。
 その武器商人だが、傍に近づいていた妖精達が傍に近づいて、じっと見つめる。
 話によれば、彼が『魔法使いの真似をしている魔法』を使っているように見えたそうだが、それはさておき。
「一時的に、妖精郷から深緑への避難を提案するよ!」
 妖精達へと呼び掛けていたのはアリアだ。
 そうすることで、現状乗り込んできている魔種達から逃れることができるだろうというのが彼女の考えである。
「少しだけ、辛抱してね。すぐに平和にして元の生活ができるようにしてあげるから。約束するから、今は安全な所へ逃げてね」
 特にイレギュラーズ達からも異論は出ない。
「うん、わかった……」
「受け入れ先の人がいい人だといいな」
 妖精達も、アリアの提案に従うことにしていたようだ。
 一時的にであれ、故郷を追われることになる妖精達に、オーガストは謝らずにはいられない。
「申し訳ありません。先ほどいた魔種は……自分の知人なのです」
 素直に打ち明けてくれた彼女を、妖精達も別段攻めようとはしない。
「事情があるんでしょー」
「私達を守るために戦ってくれたじゃない」
 そんな彼らの言葉を耳にし、オーガストは改めて身内の不始末をつけようとこの場で誓うのだった。

成否

成功

MVP

恋屍・愛無(p3p007296)
ろっくの伝導

状態異常

武器商人(p3p001107) [重傷]
闇之雲
エミリア・カーライル(p3p008375) [重傷]
新たな景色

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは索敵、敵の抑え、討伐を活躍を見せたあなたへ。
今回は全体シナリオへのご参加、ありがとうございました!

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