シナリオ詳細
蒼焔提灯之殺戮者
オープニング
●殺戮者顕現
――蒼き焔を視れば逃げよ。
神威神楽、街の一角。
暗闇が謳歌せし時の狭間にて『ソレ』は現れる。
腰には刀。身を包むは鎧であり――
古ぼけた提灯を携え、のろりと歩く人型のナニモノか。
特徴的なのはその提灯。灯される光は白きに非ず……闇に溶けるような『蒼き焔』
「来たぞ……奴だ」
周囲に潜むは神威神楽を守護せし武者数名。
――蒼き焔の鎧武者はここ暫く街を騒がせている怪異である。夜な夜な街を徘徊し、出会う町民あらば切り捨てる。その所業たるや辻斬り……と言って差し支えなかろう。既に幾人もの被害が出ており、ここで止めねば更なる犠牲者が出るは必定である。
故に討つ。街を守護し、民を護るのだ。
「――切り捨て御免ッ!」
跳び出す。複数の者で一体を討つは誉にはなるまいが、名など二の次。
即座の展開、包囲の抜刀。時を掛けずに奴を打ち倒さんとして――
だが。
「何――ッ、こ、これはどういう……!?」
眼前。鎧武者が揺らめいたと思えばいつのまにやら蒼き焔は『二つ』と成りて。
いや、違う。瞬きをする間に『三』に。『四』に『五』に――
「増えている、だと……!?」
いつのまにやらその数は『八』へと至る。それは鎧武者を討つ為に集まった者達より多く……こうなってしまえば包囲など如何程の意味がある事か。むしろこちらの方が数で圧殺されるのみ。
「おのれ……だが臆するな! 罪なき民の明日を護るのだ!
夜は案ずべきモノではないと――世に知らしめよッ!!」
それでもと彼らは往く。我らがやらねば誰がやる。
刀の交差。生じる金属音。激しい鍔迫り合いは――しかし数で勝る怪異の首には届かず。
やがては音が減り流るるは複数の血。複数の命。
全てが無へと変じた後――動きを見せたは。
蒼き焔。
闇の中に焔が揺れる。血を求める足が進む。
殺戮者ハ此処ニ健在ナリ。
●神威神楽
「カムイグラってのは凄い所だね……正に『和』の国というかなんというか」
大号令の結果によって結ばれた新天地――神威神楽(カムイグラ)
此岸ノ辺より至ったギルオス・ホリス(p3n00016)は既知の混沌世界と全く風情が異なるかの地に感嘆の声を。しかし、それも一瞬の事だ。観光の類はあとで出来る――今は。
「さ、仕事の話といこうか。カムイグラのある街の方で君達の力を借りたいという依頼が来た――辻斬りを倒してほしいってさ」
それは怪異の一種、蒼い焔を携えし悪鬼へと至った鎧武者。
鎧武者の正体自体はよく分かっていないという。恐らくは怨霊か何かの類だとは思われる、が。彼の発生した原因自体は重要ではない。重要なのは鎧武者が度々出現し、その度に犠牲者を出しているが故――退治しなければならない事だ。
しかもその鎧武者、それなりの剣……というか刀だが。刀を振るう技術に優れるらしく、一筋縄ではいかないらしい。まぁそれだけならば数をもって粉砕するだけの話なのだが――
「最初は現地の者が動いたらしいんだけどね。どうにも厄介な性質を持っているらしい……それで僕達に話が来た訳なんだけれど。戦闘に入るとね、どうも『ほぼ』同じ性能を持った分身を繰り出してくるらしいんだ」
分身を繰り出し数を整えてくるのだとか。
確認されている上では『八体』の分身が出現。本体を含めると全部で『九体』の敵を相手にする必要があるという訳だ。しかもそれぞれの分身は『ほぼ』本体と同じようで、刀の腕も中々侮れない。
だが――その分身、完璧ではない。
「……ほぼ?」
「ああそうだよ。『ほぼ』だ。全く同じじゃない。
それに分身を増やすごとに……負担が大きいのか分からないが、本体が弱くなるんだ」
「――成程」
まず、分身は本体と同等の体力を持っている訳では無い。
そして全体的なその力も――だ。統括する本体にもある程度分身を造り出す事に負担があるのか、動きが鈍る事も確認されている。分身が減ると負担も減るのか、また力が戻ってくるようではあるのだが……
「分身を減らさず、本体の体力をすり減らすという作戦も取れるのかもね……ただ分身が多ければ敵の手数も多い。どういう作戦を取るのかは任せるけれど――頼んだよ。民衆は結構、怯えているみたいでね」
夜中に浮かぶ蒼き焔。恐怖が伝染する前に退治してほしいと。
これは、奴に殺害された親族達からの願いでもある。
どうか仇をと。神使(特異運命座標)達よ――と。
- 蒼焔提灯之殺戮者完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年07月16日 23時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
鎧が動く――成程。夏の怪談にはよくある話だが。
「あづいー、もう夏って感じよ。溶ける。マジ溶ける。このお国はジメジメするわー」
そんな話を聞いても『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は暑さに悶える。
単純な気温のみならずこの国は湿度も高い……こんな暑さを感じる時は本来怪談話でもするものだ――が。まさか今宵はその怪異自身が相手とは。
「――雑談のネタにはなりそうだ。夏も近いこんな時期に、怪異退治と洒落込めばな」
言いながら、戦場を見据える『エージェント・バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)――視界の端には蒼き焔。
奴だ。ゆっくり、ゆっくりと進むその焔、見間違う筈もない。
ユン(p3p008676)のぼうっとした思考の中でも……その姿は確かに見えて。
「……ああ、そなたか。市民を困らせている怪異というのは。
はた迷惑この上ないな……一刻も早く打ち消えるがよいであろう……」
構える。意思の疎通も出来ぬのであれば、宣言こそするが問答は無用とばかりに。
されば鎧武者の眼にもまた焔が。それは戦闘の意思。命奪わんとする闘志を漲らせ――
「いやー成程ね。こいつが分身する辻斬り、かぁ。寄ってたかってボコろうと思って近付いたら、下手したら返り討ちにあう奴じゃん……最近の怪異ってこんなのまでいるの? 怖いなぁ、戸締りすとこ」
瞬間。『強く叩くとすぐ死ぬ』三國・誠司(p3p008563)が呟きと同時に射撃を仕掛ける。
先制攻撃だ。奴の武器を、或いは壊れそうな部位を狙い射撃を敢行。
「ま、今更どうこう言っても仕方ない訳で……怨霊退治、いっときますか!」
砲弾を撒き散らす。待ち構えていたのだ初手は渡さぬとばかりに。
そして、分身する前に本体を損傷させればソレが分身にも波及するやもしれぬと思考し――と。
同時。射撃を凌ぎつつ鎧武者の身が揺らいだ。
次には奴の影が一つ増え、二つに増え、三つ四つ。
噂の分身体共か。成程増えるのは即座に瞬時に……これでは数を見誤って先人達は失敗しよう。
「だがやるべき事に変わりはない。私はいつもと変わらず――剣を振るうだけだ」
それでも退く訳にはいかぬと『筋肉最強説』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の剣が闇夜へ抜かれ。
「貴様の悪行はここで潰させてもらう! 民の安寧の為……今日、この場にて滅びるがいい!」
激突する。向かってくる鎧武者――その殺意の波を二刀が掻き分け隙間を穿ち、決して逃さぬ。悪鬼羅刹よ滅びるがいいと、その意思は一点に集中しており。
太刀筋を確かに観察しつつ彼女は武者へと挑むのだ。
「人斬りの怪異ですか……現世は全て生者が謳歌せしモノ。
死せる者の残り香が、生きる彼らを害するのはよろしくありませんね」
直後にイスナーン(p3p008498)が至近の武者へと衝撃一閃、吹き飛ばす。
鋭き掌底は身を浮かす。そこへ間髪入れず誠司の射撃が加わり、纏めて奴らを削り飛ばしてやるのだ。分身は本体の力をある程度削ぐと聞いている……ならば分身がいるのは、奴がまだ余裕の証。まずはソレを失くしてやる。
「ああ全く。やっとの思いで超えた海の向こうには新しい大地があって。
いざ訪れてみれば住みたいくらい良い所だと思ったのだけれど――」
と。跳躍せしは『椿落とし』白薊 小夜(p3p006668)だ。
此処は前にいた世界と空気がよく似ている。鼻先を擽る雰囲気の数々が彼女に過去を想起させる程に……ただ。
「流石に。街中に命を狙う鎧武者の辻斬りが出てくるのは物騒にも程があるわね……」
だから倒そう。辻斬りなど、街にはきっと不要だからと。
――尤も。人の事を言えるかは、その仕込み刀に滴った血の量が語るのだろうが。
モノは決して物言わぬ。小夜が狙うのは本体、蒼き焔の提灯持ち。
激突。鍔迫り合えば闇夜に金属音が鳴り響き――どちらの刀がどちらの血を吸うかと交差の問答を響かせて。
「ふむ。本体とほぼ同様の力を持つ複数の分身体か……そんな者に退かずに挑むとは、僕らの前任は立派な者だったようだ――死んでしまえば、それも終わりではあるが」
同時。斬り掛かって来る鎧武者――その一撃を『らぶあんどぴーす』恋屍・愛無(p3p007296)はいなし、刹那に思考するのはこれらに挑んだ『先人』達の事。
数の有利をいきなり覆されたのなら、一度退くのが最善であったろう。
それでも彼らは戦った。民の為に、救うべき者達の為に。
「ならば残ったモノもあるのだろう……無為にはしがたい。
さぁ来るがいい血を求める武者よ――今宵の獲物がここにいるぞ」
怪異に立ち向かう心。彼らの勇猛。それまで『終わり』には出来ぬからと。
同時――愛無の身体が発光する。それは愛無の周囲を照らし、確かな光源とすれば足元も見やすきモノ。されば吠える。奴らの注意を引き付ける為に、奴の本体を滅ぼす為に。
この辻斬りはここでその物語を終えるのだ。
さぁ――現に出てくる確かな怪異を今宵、ただの『怪談話』にしてやろう。
●
鎧武者は分身体を最大数繰り出していた。
故に現状は九対八。数の上で見ればイレギュラーズ側が不利である、が。
「まぁやりようなんてのはあるものよね――
さぁ戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
秋奈の一喝が轟けば分身体の注意が彼女へと。
愛無も多くの敵を引き付ける戦法を取ってはいるが、数が多ければ全て万全にとはいかない。零れる者もいよう――故に秋奈がその補佐として入るのだ。
総員として狙うは本体。
分身体の維持による力の低下がある内に奴を削る。
引き寄せた者へと剣撃を。さぁ今の内よと視線を仲間へと寄こせば。
「狙うのは皆の体力に余裕がある今だ……!
短期でどれだけ削りとれるかでその後が一気に変わる……!」
あのパンツの情報屋の人から得た情報で計画を立てた結果、誠司はそう結論したのだ。え、何? パンツは余計って? いやだってそういう噂を聞いてるし、ねぇ?
ともあれ先手による射撃の影響は些か確かめにくいか。戦闘が始まれば奴もすぐに展開し始めた故……しかし刃こぼれなどが生じようと生じまいとやる事は変わらないのだ。
撃つ。轟音轟かせ奴が滅びるまで。
「飛ばします。後に追撃を」
「うむ――任せるぞ」
そして秋奈達の引き寄せにて紡がれた本体までの道筋をイスナーンが駆け――奴へと衝撃を叩き込む。
初手から行いたかった所だが、分身が生成された直後は数の利は敵に在りそう簡単には近寄れなかった。が、多少以上引き込むことが出来た今であれば道も出来る。そこへ続くのがユンで。
「僕も刀使いでね……ああ。一手、手合わせ願おうか」
抜く。その一閃は空を薙ぎ鎧武者へと。
飛ぶ斬撃が敵を強襲するのだ――次いで詰める。ユンもまた狙うは短期決戦。
長引かせぬ一撃を。膂力を込めた渾身の一撃を大上段より。
「正直。不謹慎かもしれないけれど、少し楽しみよ――刀同士の斬り合いなんて、ね」
直後に小夜も突き走る。開けた道を、ユンとは別方向から。
舞の様に円の動きを伴って、横薙ぎの一閃が鎧武者の足元を抉る――暗闇の中であろうと関係ない。元より彼女の眼は見えぬのだ。
しかし研ぎ澄まされた感覚が『見る』以上に世界を『見据える』
洗練された動きが更に昇華し、まるで極限の集中を賭場で用いるが如く至れば、舞は続く
「――」
と。その舞に応えるかのように鎧武者も動き。
剣閃を瞬かせる。
ユンを、イスナーンを、小夜を捉える高速の抜刀が血飛沫を舞わすのだ――舞の返礼と言うべきか否か。
「成程、まがりなりにも剣士と言う事か……されど、こちらも形が違うとはいえ剣士なのでな。されて嫌なことは理解しているつもりだ」
そこへ踏み込むはブレンダ。鎧武者の一撃を妨げるべく刃を割り込ませ。
激しい金属音が鳴り響く。鍔迫り合い、しかし武者は瞬時に押しのけ彼女へ再び斬撃を――
と、その時。
武者の身に痛みが走る。見れば鎧の隙間へと撃ち込まれていたは――小剣。
「よもや戦の中で卑怯などとは言うまいな。そもこれも技術の一端なれば……!」
数多の剣を統率せし才知が反射の如くの反撃を可能とするのだ。
緋色の小剣が空を斬り裂き敵へと着弾せん。武者の動きに合わせ、それは紡がれる。
同時に狙うのは腕だ。愛女神の抱擁たる、慈愛の剣閃が敵を討ち――
「これもある意味で"活人剣"っていうのかしらね?」
更にそこへ小夜の一閃も加わった。
殺人の刃。しかし効率よく人を殺す為の術は『そこへ次なる刀を』とばかりに死の筋を刻む。
狙えば更なる深き一撃と成ろう。人を生かす――否、人を『活』かす活人剣。
ああ。これもまた文字通りの意味かと、ふと思えば死線の最中に口端に笑みが。
狙う。狙う。総力をもって本体を。
それこそが恐らく最善なのだ。本体さえ倒せば残る分身体も消える。
奴めに挑んだ者達の無念もそれで晴れよう。ああしかし、全く。
「生きてる内に、少々、食って……いや会ってみたかったが、あくまでこれは意思を継いでここにいるのみ。誰ぞ彼その敵討ちなどというのは――趣味ではない」
分身体を引きつける愛無は多くの傷を負いながらも、依然として健在であった。
優れた防の構えがそう易々とは崩れぬのだ。
残像の様に影を展開し、その一撃を致命に至らぬ様に躱し続ければ。
「だが、彼らの護りたかったモノくらいは護るとしよう。それが手向けとなるのであれば」
「ああ。罪も無い庶民を、非戦闘員を刀で虐殺とは……許される事ではない。暴虐はここまでだ」
そしてモカもまた鎧武者の本体へとマークし。
「消え失せろ怪異よ。その罪を数えながらな」
毒蜂が如くの一撃を――奴へと叩き込んでやった。
●
戦況はさて――優位と言うべきか不利と言うべきか些か悩ましい所であった。
一部で引き寄せ、その間に本体を討つ。
それ自体は決して間違いではない所か、本体の能力が低下している間を狙う有効な策であるとも言えるだろう。しかし、これの大前提は分身体の多くを常に引き寄せ続ける必要がある。八体の分身体を、極力多くだ。
攻めている間は良いが、洩れて攻められる形となった際に本体へ攻勢をかけている者達の後ろが取られる事の危険性も含んでいたのだ。そして実際――
「くっ……流石に甘くはありませんか!」
イスナーンへと分身体の一体による斬撃が放たれるのだ。
暗黒の剣によって対抗し、再び後方へと吹き飛ばすべく衝術も駆使するが――こうなれば本体への攻勢は若干衰える。だがまだだ。この程度でいきなり形勢が悪くなるほど、イレギュラーズ達は脆弱に非ず!
「数で優位を作り斬り捨てる……貴様の戦法をそっくりそのまま返してやろう!
因果応報の紡ぎを知るがいい!!」
依然としてブレンダは覇気と共に本体へと攻勢を。
腕を狙い、手甲を避け。防御を突き抜けダメージを通すのだ。奴の攻撃は刀が主体……ならばそれを持つ腕そのものに疲労が蓄積すれば、攻撃の手も緩もう。
「暗い場所での戦闘になると聞いたからな、夜目が効く目薬とやらを使ってみたが――なかなかいいなこれは。はっきりとではないが敵味方の区別はつく」
そして霊水と希少な薬草を元にして作られた目薬を用いていたモカの眼に敵はしかと映っている。闇夜を薙ぐ刀の筋も確かに――だ。眼前、高速で薙がれる死の一閃を前にすれば、成程只人なら臆しそうなものだが。
「恐れは足を止めよう。悪いが、怪異如きに止めてやる足はない」
「ええ。進みましょう、さぁ――更に行くわよ?」
小夜と共に死の中へと踏み込んだ。
身を低くし剣閃を潜る。刹那の中に見た鎧武者の蒼き焔――
ああこの輝きを消さねばならない。無辜の民の明日を護るために。
モカの蹴撃が武者の顎を打ち上げ、無防備を晒したその腹を小夜の一閃が薙いだ。
「――■■!!」
されば咆哮。武者の焔が猛りを得て。
益々にその剣撃に激しさを灯らせる――
ああ何故死なぬのだ貴様らは。大人しくこの刀の錆びになるがよいとばかりに。
「はーなんだかハッスルし始めたわねー。
お湯を掛ければもっと増えそうなわかめ武者の癖に」
その様子を秋奈は見ながら剣を振るう。分身体共へ、牡丹の花を散らす如くの一撃を。
どれを見ても同一。どれを見てもわかめだわかめ。或いは金太郎飴か?
まぁ刀の腕はそれなりにあるもの。相手にとって不足はないのであれば――
「さぁ大盤振る舞いと行くわよ! あれだけはしゃぎ始めたなら、終わりも近いという事でしょ!」
「ああ全くその通りだろうな。やれ、ここまで受け止め続けた甲斐もあったというものだ」
秋奈は鼻歌と共に全力を紡ぐ。崋山の刀に戦神ノ刀――彼女の至高の二刀を、至高の二閃を奴らへ。
怒りによって向かってくる武者を切り伏せ踊ろう。
愛無もまたあと一息とばかりに更なる集中を。無数の剣撃が襲い掛かかってくる、が。
「僕は勝てると思った勝負で負けるのが死ぬほど嫌いだ。必ず勝つ。そして守る」
弾く。防御に意思を、少しでも生き延びるべく生の道を模索する。
一時でも長く引き付け本体への道を閉ざさない事。
それが己の役目なのだ。寝てるわけにも、負けるわけにもいかない。
この鎧武者も何がしか理由を持って怪異となり、この世に留まっている哀れなる存在かも知れないが――それでも。
約束したのだ必ず奴を討ち果たすと。無念はこちらが引き継ぐと。
ああ――出来ぬ約束は決してしない主義で。
「やるべき事をやる……ああそうだよな。全く、怨霊退治ってのも骨が折れるもんだ!」
そこへ誠司の射撃が瞬く間に。
分身体共を一気に纏めて――御国式砲術で吹き飛ばしてやるのだ。
それは剣術や武術が古より発達した様に、大砲運用術歴史の結晶。
蒼い炎を伴った砲弾が闇夜を駆ける。
青き焔を纏った武者の総てを――掻き消す様に。
「さぁ――耐えれるかな、この一撃を!!」
狙った敵が、斃れるまで。
連中の一部を吹っ飛ばしてやる。
直撃、炸裂。激しい衝撃が分身体へ、更に駄目押しとばかりに蜂の如き弾幕攻撃を。
幾つもの音が鳴り響き、その度に彼の意思が高々と。
吹き飛べ消えろ。あの世へと帰るがいい、怪異よ。
「ふふっ。戦の経験なんて……ああ、いつぶりだったかな」
その最中。煙を掻き分けユンは往く。
刀はもう十分に交わせた。そなたの刀は十分見た。
ならばもうよかろう。市民の皆の平和な暮らしを護りたいから――己はここに来たのだから。
「砕けろ」
その瞳に闘気が籠る。
怪異よ。罪なき者達をただただ怖がらせる不要の者よ。
「僕は領域を踏み荒らし、平和を乱し、危害を加える悪が大嫌いなんだ」
お前は要らぬ。この街に、この世に決して。
――さあ、倒れてくれ。
武者の迎撃。幾度も見た、その剣の薙ぎ……故に躱せる。
拍をずらし踏み込んで。ユンの構えは大上段。武者の横薙ぎに対し紡がれるは天上からの――
一刀両断。
その兜から全てを――叩き割り。
『ォ、ォォォォ、ガアアアア――ッ!!』
直後。蒼き焔を宿した鎧武者が天へと吠えた。
それは断末魔。生を弄んだ辻斬りが終わる証左の一声。
「貴様の太刀筋は確かに優れていた。だが囲んで叩くような戦法は好かんのだ」
それは己の知ったる剣士の有り様ではないとブレンダは言い。
「――消えろ。永久に、この現から去るが良い」
残った鎧も砕く様に剣を振り下ろした。
破砕音。されば更にして最期の咆哮を怪異は紡ぎ。
しかし一拍の後――死する様に、力なくその身が地へと倒れれば残った分身体もやがて砂の様にその身を散らす。愛無や秋奈の周囲に寄っていた彼ら――その消失を確かに確認すれば。
「It was a good fight! 蒼き焔を宿す鎧武者、良き戦いでした!
さーてと! 帰りにみんなでコンビニ寄ってアイス買ってこー?」
「ええ? いやいやいやこの平安時代っぽい場所にコンビニとかないでしょ!?」
軽快なる言の葉を紡ぐ秋奈に対し。え、もしかしてある!? と誠司は驚く口調を。
さてさて、甘味場があるかはともかく。これにて鎧武者の辻斬りは確かに滅んだ。
「亡霊や怪異の類、か……増えているらしいけれど、何か原因があるのかしらね?」
地へと。もはや何の力もなく転げている武者の鎧に軽く小夜は触れ。
馳せらせる想いは己と同様なモノであったかもしれない存在へと。
カムイグラ。和の国にして未だ全容分からぬこの地にて……妖怪怪異悪鬼羅刹。
まだ見ぬモノらがいるのだろうかと――思考を巡らせていた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
これにて武者の怪異は討伐されました。街にもまた平穏が戻りましょう……
MVPは引き付けにおいて多くの意思を感じた貴方へと。
それではありがとうございました!!
GMコメント
カムイグラ。和の国……その中での依頼です。
それではよろしくお願いします!
■勝利条件
蒼き焔を宿す鎧武者の撃破
■戦場
神威神楽のとある街中の大通りです。
時刻は夜中。出現場所は分かっているので、先回り出来るものとします。
ただし、例えば狭い路地裏などに誘導したい場合はある程度策を練る必要があるかもしれません。また、一般人は鎧武者を恐れて外には出ていません。家の中に持ち込まれたりしない限り、あまり心配する必要はないでしょう。
■蒼き焔の鎧武者
亡霊、もしくは悪鬼怪異の類。
それなりに刀の腕に優れ、接近戦に優れています。
遠距離攻撃の類は無い、と思われますが詳細は不明です。
蒼い炎を宿す提灯を持っています。
ぼんやりと明るく、夜中でもそれなりに目立ちますが……あくまで敵が持っているモノなので、他に光源があった方が足元などが見やすくなるかもしれません。
特殊能力として『自らの分身』を生み出す力を持っている様です。この分身体は一定のHPと、本体とほぼ同等のステータス(若干弱い程度)を所有します。
ただし、分身を数多く生み出せば生み出す程に本体のHPとAPを除くステータスが低下していくようです。本体の弱体化に伴って、全分身も弱くなります。最大で『八体』の分身が生み出されるようですが、最初は一体も存在していません。
また、分身が減る毎に統括する本体の負担が減って本体が強くなります。(厳密には本体が元の力を取り戻していきます)
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