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シナリオ詳細

神ヶ浜への通ひ路は

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 黄泉津、それは海を隔てた東方の島の名である。その中心に或るは黄金の穂揺れる豊穣郷カムイグラ。四季折々の姿を見せるその国には神々――ここに指すは八百万や帝ではない、『天におわす存在』だ――へと奉納の祭りを行う事がある。
 例年、ネオ・フロンティア海洋王国で行っていたサマーフェスティバルと同時期にカムイグラでも夏祭りが行われるという話を受け、本年はその文化を体感すべく、カムイグラでの『夏祭り』へとローレットも参加する、と天香や晴明との間で決まったと言う。
 ――どうして天香が了承したのかと問われたならば巫女姫様が俄然乗り気であったからに過ぎない。彼女が言うならば、天香も二つ返事で了承するのだ。

 その舞台となるは神ヶ浜。美しい海原臨むその場所には睦まじい夫婦岩が並び立つ。
 この場所の準備を、と口にしたのは八百万の男であった。
 中務卿――晴明の事である――と仕事をしていると言うならば、祭りの舞台となる浜辺の治安維持もそなたらの仕事だと、つまりは雑用を押し付けられたのだ。


「……暑ィ……」
 そうぼやいた『男子高校生』月原・亮(p3n000006)は汗でぐっしょりと濡れた自身の上着は適当に脱ぎ捨てて、神ヶ浜の雄大なる海を前に武器を手にする。
 神ヶ浜と呼ばれたその場所は神の通い路であると言われている。
 その場所に穢れが発生していると言うのは如何ともしがたい。
 その場所に怨霊が存在していると言うのは目も当てられない。
 ――しかも。

「ホッ」
 ぽん。
「ホッ」
 ぽん。

 蹴鞠をしていると言うのだから――

 ディスコで流れるクラブミュージックに合わせてイケイケな蹴鞠を楽しむ浜の怨霊的な鎧武者たち。テンションはビートと共にマッハだ。
 どうして。
 然し、それを見過ごせない。
 夏祭りが待って居るのだ。水着が、浴衣が。こんな蹴鞠パーリィに邪魔されて堪るか。
「――蹴鞠パーリィに勝利するんだ」
 亮は静かに言った。勿論、彼だって健全に生きている。水着も浴衣も見たい。
 正直言えば、「亮君の為だよ」って言われたい。言われるために此処に来た。
「流行にノって蹴鞠を楽しんでるらしい。
 なら、俺達だって俺達の文化で圧倒すればいいんだ……!」
 滅茶苦茶な理論だが、この蹴鞠パーリィはある神隠しに合った少女が持ち込んだ文化らしい。
 鎧武者はタピるし、チーズティーも飲む。
 映えも狙っている。
 だが、『中二病』には弱い筈だと亮は言った。
「俺達の全てを魅せ付けてやれ……!」

 ぽん。

 蹴鞠が宙を舞う。

 今、大蹴鞠大戦がはじまった――!!

GMコメント

 今年の夏のお祭りはカムイグラなのです。十五夜とかお盆ではないのです!
 夏あかねです。お祭りの前にいっちょ雑用熟しときましょう。

●成功条件
 蹴鞠パーリィに勝利して、浜の怨霊をどつき倒す

●浜の怨霊 *8
 神ヶ浜にたむろしてる一寸イケイケな鎧武者です。今時系鎧武者なので、パリピでウェーイな感じに蹴鞠を楽しんでます。その異文化は『神隠しに合った少女が持ち込んできた』そうですが……。
 蹴鞠パーリィ中ですが常駐されると祭りの準備が進みませんし、そもそも、彼らは『けがれ』なのでサクッと消してあげてください。

 蹴鞠パーリィに勝利すれば戦闘能力がガクッと下がります。
 蹴鞠パーリィに勝利して鎧武者の戦闘能力を下げた上で倒してください。エマージェンシー!
 蹴鞠パーリィを放棄して殴りかかると滅茶苦茶強いのです。

●蹴鞠パーリィ
 蹴鞠です。鎧武者がガシャガシャ鎧を言わしながら頑張っていらっしゃいます。
 尚、蹴鞠にもいろいろ技術が必要です。
 EXFで鞠を落とさないだとか、EXAでアクロバティック蹴鞠アクションを魅せ付けるとか。
 物理攻撃力、神秘攻撃、命中、回避、何でも役に立ちます。
 それこそこじつけです。こじつけが物を言います。
『何かカッコいい技名』とか『何かカッコいい称号』や『中二ポーズ』なんかで相手を圧倒するのも良いと思います(スキル/通常攻撃使用扱いです。)
 淡々と蹴鞠の技術を魅せ付けるのも良いと思います。
 尚、罰ゲームを用意しますとか提案すると鎧武者も喜びます。鞠を落としたら脱ぐ? あ、鎧武者は身軽になっちゃうね。
 蹴鞠って奥が深いなあ。

●月原・亮
 NPC。健全青少年。俺だってモテたいしみんなの水着が見たい!
 蹴鞠はそこそこに頑張ります。適当に遊んであげてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 神ヶ浜への通ひ路は完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

銀城 黒羽(p3p000505)
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
シグレ・ヴァンデリア(p3p006218)
紫灰簾の徒
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
鷹乃宮・紅椿(p3p008289)
秘技かっこいいポーズ

リプレイ


 はあ、と銀城 黒羽(p3p000505)が溜息を漏らしたのは仕方がないことであったのかもしれない。
 黄泉津、それは海を隔てた東方の島の名である。その中心に或るは黄金の穂揺れる豊穣郷カムイグラ。その文字列だけを見れば穏やかなる和風の荘厳なる世界が広がっている――そう、認識する筈だった、筈だったのだ!
「……何なんだよ、この怨霊は」
 頭が痛くなったのだ。黒羽とて、混沌大利肉には様々な存在が居る事は分かっている。最初にその情報を聞いたとき彼は己の今日の感情は封印していこうと思ったのだ。穢れであろうが怨霊であろうがどうでも良いが、この世為らざる物は寝ておけと蹴鞠パーリィ開催中の鎧武者にそう思った黒羽はスンッとしていた。ネガティブな感情などここにはない。もはや賢者のような顔立ちで、ゆっくりと神ヶ浜を進み続ける。
「蹴鞠とな? また懐かしいのう、昔勢いよく蹴ったら鞠が破裂して『姫はもうやらないで』と言われて以来じゃ……」
 どのような力だったのか。鷹乃宮・紅椿(p3p008289)は自身の身に宿された力をその時、認識したのかもしれない――だが、それでもいい。その(破壊的)蹴鞠技術が役に立つというならば協力は惜しまない。紅椿は蹴鞠パーリィには困惑していなかったが鎧武者の言葉遣いに困惑していた。
「……それはいいんじゃが『ばえ』とか『たぴる』とかよくわからん言語の方が問題じゃ……」
「良ければ飲む? そこの屋台に売ってるんだ、タピオカ」
 神使が観光に訪れることを狙っての商売展開なのであろう。神隠しに遭った者が持ち込んだ文化であろうタピオカを片手に今日は騎士モードではないラフな私服姿の『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)が紅椿へとタピオカを差し出した。
「これが……タピ?」
「僕からすれば蹴鞠、という方が異文化だけれど地域差かな。蹴鞠のルールとかはよく知らないんだ」
 カイトやシグレ・ヴァンデリア(p3p006218)からすれば蹴鞠の方が異文化だ。流石は海向こうの新たな土地ということであろうか。シグレは自身を『見ての通りのインドア派』であると認識している。涼しい室内で本を読んでくつろぐのも良いがたまには外で遊ぶのだって良いだろう。
「蹴鞠は初挑戦だけど、まぁ何とかなるでしょう。個人戦でも団体戦でも、どちらでも大丈夫よぉ」
「個人戦とか団体戦……? 似たような遊びは知ってるし、これなら大丈夫そうだ。蹴鞠ってのを思う存分やらせてもらおうか」
 特に、波打ち際のリズムに合わせび―とを刻む鎧武者(とうばつたいしょう)が相手ならば『風断ち』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)は容赦しない。容赦はしないが――神ヶ浜とはこんなにロックな場所だというのか!
「わ、わ、なんだか、楽しそうです、ね……。とても、ビーチが沸いてます……」
 耳をぴこりぴこりと揺らした『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)。羊の耳を揺らして蹴鞠パーリィに参加すべくおずおずと進みゆく。
 鎧武者達は新たなパーリィ参加者の訪れにぽん、と鞠を蹴り上げて挑発するような素振りを見せた。

●『豊穣劈き鳴り響く 隻眼の槍脚術』コラバポス 夏子(p3p000808)登場ソング
 ドゥッドゥッパ ドゥッドゥドゥッパ
 ♪――やって来たぜ今年も夏 やっと着るぜあの娘水着 わぁっとはしゃぐ波と飛沫

 この浜辺から思い出がスタート ココロ踊るトコロこの神集う浜神ヶ浜
 今年蹴鞠コレで決まり皆盛り上がってこう――♪

「Yeah鎧武者くん達キテる~? 折角のパーリィ楽しくヤろっぜ~!」
 サングラスをイケメンムーブで外した夏子の背後より漆黒の小太鼓がジャッ・ドン・ジャッ・ドンと鳴り響く。終末思想を謳うソレを無理矢理雅楽に落とし込んだが若干の失敗は否めない謎の曲をたたき上げるのは重苦しいマントを揺らした『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)。
 もはや二人は登場から蹴鞠パーリィに参加していた。無論、パーリィへと受け入れてもらうための努力を惜しまぬと言う事だ。
「む? 其処な移ろいたる御霊よ! これは久々……と言うには永過ぎるか?
 十……否や、百の億に近し刻の空白。
 解るぞ、解るぞ! 姿形が違えど、生物と言う鞘には納まり切らぬ其の白刃の魂。
 何人も触れること能わぬ空前と評すべき力は、未だ微塵も衰えておらぬな!」
 サングラスを彼方へ補折り投げて決めポーズを取った未散。突然、鎧武者からトスされた鞠を器用にぽん、と蹴り上げて挑発的な笑みを見せる乙女に夏子はヒュウと茶化す。
「々は仄暗く深い絶望の海を超え、この新天地馳せ参じた。
 組織の名はローレット――人呼んで、特異運命座標<イレギュラーズ>」
 リズムに乗った名乗り向上と共に堂々たる夏子。勢いよく飛び交う蹴鞠はルールさえ語る前に鎧武者が実力はかろうとしたからか、黒羽は鞠が落ちぬようにアクロバティックに鎧武者へと鞠を返す。その軌跡はとリッカーそのもの。跳躍バク転を見せ、鞠を返したその仕草に鎧武者達が「マ~~ジ?」と明るい声を上げた。
「映えるじゃん! 今のポーズ!」
 ――褒められた!
 紅椿は「映え……?」と首を傾げ、カイトがそっとその挙手をする。ゆっくりと「タイム」の仕草を取った後、鞠を手にし笑みを浮かべた。
「なあ、鎧武者たちよ。勝負は構わないが、罰ゲームは脱ぐという形でどうかな夏だしね。
 罰ゲームとしては無難で優しいし――……ほらこちとら女の子いるし僕も見たいし昂るし」
 こそり、と囁いた『後半の言葉』に鎧武者は大喜びである。その様子は異様だ。勿論、今回の参加者に女子が多いのは確かなのだ。鎧武者からすれば鎧を脱ぎ捨てれば自身を表す文字列が武者になって、最終的には『者』程度まで落ちる可能性があるが、昂ぶるのは確かなのだ。
「ここは丁度、8人対8人で、団体戦でどうかな。先鋒次鋒と、大将まで8人の紅白戦。勿論負けた方のチームが脱ぐがな」
 カイトの言葉に鎧武者は待てとストップをかける。イレギュラーズと混合チームになれば蹴鞠でキャッキャウフフできるのではと思ったのだ。しかし、カイトは首を振る。
「そしたら一斉に女の子脱げるかもじゃん? よいじゃん?」
 良い。非常に良かった。鎧武者はにまりと微笑んだのだ――微笑んでいるのかどうかは気配で認識して欲しい。実際の所、カイトは騎士として紳士としては女子の脱いでいる姿を見るのは良いことなのか。見たいような見たらソレはソレで尊厳が消えてなくなるような複雑な気持ちであった。
「あー……神よ、世知辛い世の中だ」
「世知辛い、ですか……?」
 首をかしいだメイメイへカイトは何もないと微笑んだ。何もない、尊厳はまだ失われていないのだ。
「ふむ……このボール? を落とさなければいいのです、ね」
 ざっくりとルール確認をするメイメイは団体戦になったと聞いて、足を引っ張らないように、と気丈に頷いた。パリピ怨霊とビーチを沸かせるならば最低限のルールと――自身の力<アビリティ>は把握しておきたいものだ。
「今、罰ゲームって聞こえたけどさ……」
 ちら、とニアが視線を送る。夏子はその言葉に大きく頷いて笑みを浮かべた。そう、やっぱり罰ゲームが必要なのだ。
「罰ゲームは脱衣。女性が脱ぐトコ見れるの役得じゃん。え? 中に着てるのは水着でした~……ばっかソレでもいーの。だって脱ぐんだよ? 見てるんだよ?」
 微笑んだ夏子はレザーを脱ぎ捨てて早速、名乗り向上が如くカイトと鎧武者が告げたルールをどう堂々と叫んだ。
「憐れな敗者が被る必罰は、神力封じる着装具を剥がされる事。耐えられぬならば立ち去るが良い……」
 ――うまいこと言ったものである!


 罰ゲームがあるのか、と黒羽はその言葉を聞いていた。しかし、女子が脱ぐだけで自身が脱いでも得は――ないはずであったが、熱視線を向けてくる鎧武者に『感情封印(こころをさとられぬ)』黒羽はスンッとした表情を返す。跳躍バク転や踵、つま先、足の甲、頭、胸、すべてを使って翻弄するように蹴鞠を開始する黒羽に熱視線の鎧武者が熱い視線を向け続ける。
「――……っと」
 黒羽のと巣を受け、ニアは鞠を落とさぬように会費と防技を生かして抜群のパフォーマンスを見せる。失敗を許さぬと堅実に超反射神経を生かせるニアは「根比べだな」と鎧武者に笑みを浮かべた。
「鞠が破裂するか、それとも着衣がなくなれば勝敗は付くだろう?」
 保護を施してあるから鞠は壊れないが雰囲気は上々だ。ニアはちら、と視線を向ける。言葉にはせぬように唇に僅かな『音』を乗せたのは風の精霊達への合図だ。流石に海を隔てた土地となればどれだけ自身の声に応えてくれるのだろうかという不安はあるがすぐに『ニア』と囁く声がした。
(――悪戯な風は盛り上がりに必要だろ?)
 はくりと唇を動かした。ニアが注目集めるように誘いの風で鞠を引き寄せ、蹴る仕草を見せた刹那、『悪戯な風』が大きく鞠をあ煽る。鎧武者は大慌てだ。落ちる場所が図れない。悪戯な風により鎧を一つ脱ぎ捨てた武者はどこか照れた様子でちら、とニアを見た。
「え? 照れてる?」
 照れてるのであった。ガシャガシャ鎧着て怨霊をしてる割には面白おかしく動いているのである。俗世に未練バリバリで蹴鞠をしているのだろうが、ニアにウィンクし続ける鎧武者をまじまじ見てから別の鎧武者が溜息をつきスンッとした黒羽を脱がすぞと言わんばかりのやる気を見せる。
「い、いきます……!」
 神攻でオーラを纏わせ蹴り上げる。召喚される鴉が鞠の隣をぐるりと周り――メイメイはその時点で『中二病とは黒き翼を持ちし闇の使者との相性が最高』であることをよくよく理解していた。練達で販売される黒魔術の本や月原君の貯蔵書には黒い鴉がやたらと出てくるのだ。
「(途轍もなく超絶かっこよすぎて聞くと悶死してしまう素晴らしい技名)!」
 メイメイは叫ばされた。叫ばずには居られなかった。超絶カッコイイ技名を叫び、そして鎧武者へと追撃かける、しかし――!
「(驚かんばかりに超絶かっこよすぎてイケメンムーブをし続けられる技名)!」
 鎧武者も負けては居られない。パリピ怨霊がドヤ顔をしている。「あっ」と声を漏らしたメイメイの前へと鞠がとん、とんと転がっている。
 罰ゲームだというようにドンドンピューヒャララと太鼓を鳴らしたパリピ怨霊にメイメイはぐ、と息を飲む。
「う……念のため、水着は、下に着てきました、けれど……ミスをしたのは、わたしの責任、ですし……」
 覚悟を決めていた――「……脱ぎ、ます」と故郷の装束があれこれ重ね着構成されている事で少しずつしか脱がないが鎧武者はだがそれが良いと言わんばかりに興奮していた。浜辺で水着というのには抵抗はないのだが、一枚脱ぐだけでこれほど喝采されるとどうにも照れが勝るものだ。
「依頼を受けてからコソ練した妾の蹴鞠テクニックを見よ!」
 ぽん。
「む、地味じゃと――ならばこれでどうじゃ!」
 ぽん。
 紅椿はチラリと着物を開けさせクイッとその美脚を晒す。ギリギリを攻めたそれは鞠を蹴り上げると共に「ああ~~もう少し~~」なラインを演出するのだ。
 ぽん。
 鎧武者達が次々と脱いでいく! 誰も期待していないのに!
「これで鎧武者どもも蹴鞠に集中できんじゃろう、ふふん。
 ――さあ、此でも食らえ! 天空蹴鞠落としじゃ! いや、鞠は落とさんけど。って、ああ!?」
 高く高く蹴り上げた鞠が宙を舞っている。ソレを視線で追いかけながら紅椿は罰ゲームの機器が頭に過った。高く蹴り上げると共に起こった鎧武者の歓声も凄まじく、自身の失敗を待ち望んでたといわんばかりの勢いだ。
「え? 本当に罰ゲームやるのか? え? 脱ぐ? ……少しじゃけじゃよ?」
 一応こっそり脱げる者を増やしておいたとアクセサリーを外す。だが! その仕草も扇情的に見えるのだ。夏の魔法である。すごいぞ。
 ちなみにこの下にはきちっと水着を着込んでいる。流石に下着を鎧武者に晒すのは遠慮したいところなのだ。
「然して、粛々たりし世に汝等の行い救い難し。其の心象を根絶せん……」
ぽん。
「彼の地、彼の者、其の者は神の刃と成りし永劫の調べ。行くぞ、此の速さについて来れるかな?
 戦闘詠唱術<ハイスピード・キャスト>!」
 未散は神秘的な<力>で蹴鞠を落とすべからずというように超絶イケメン的な技名を告げていた。その様子をまじまじと見つめる亮の肩をカイトはぽん、と叩く。
「亮くんも参加したまえ。僕は審判だ。
 鎧武者くんたち、僕は天義という厳かな国より参った。潔白の国で法や秩序を犯すのは御法度。
 つまりルールや、普段の顔見知りとは言えスポーツマンシップを損害して君たちに不利な判定を下すこともない……幸い、勝者の白黒も分かりやすいゲェムだ、問題ないだろうか?」
 脱ぐなら問題ないと一人の熱視線が来たがカイトは見ない振りをした。どうやら一人男性の裸に興味がある者が混ざっている。
「さあ、今、彼女の鞠に負けただろう? 脱げ。早く脱げ。さっさと脱げ。鎧を毟り取れ」
 カイトの言葉を聞きながらシグレは「よろい武者さん達に合わせて『一週間タピ活禁止』とかにしない?」と問いかける――だが、世論が! 世論がソレを許さないのだ。
 ローブを羽織り、水着を着用し、脱いでも特段問題にならないようにと準備を整えたシグレは世論には勝てなかったと蹴鞠を見つめた。
「蹴鞠って未経験だったんだけど、なかなか楽しいのね?」
 復帰に対する能力は高いのよ、と落ちかけた鞠を拾い上げていく。神秘の力を込めて蹴ったならば太陽で眩めと云う用に紅椿よろしく天空穿つ。
「ふふっ。私の必殺技、幻光落とし(ファントム・レイ・ドライブ)はどう?
 ……人は私を、渚の告死天使と呼ぶわ……!」
 ドヤ顔で眼鏡をクイッとして低音ボイスで煽ってみせるシグレに鎧武者はぐぬぬと唸った。ここまで来ると『中二心』が刺激されてくる。シグレ替え身を浮かべ、「ふふ」と笑みを浮かべたまま蹴鞠をしている様を眺め、亮は「カッケエ」と呟いた。
「あー、なんか楽しくなってきた!
 さぁ次は風神の祝福を受けた我が一撃、受けてみなさい!
 蹴り上がった鞠が風にあおられて相手は失敗する、とか……!」
 ぽん。
「……。そろそろ落ち着きましょうか」
 首を振ったシグレ。亮は「いやいや、もっと見せてくれよ! ファントム・レイ・ドライブ!」とはしゃいでいるがシグレは「落ち着いて!」と慌てたように返すだけだ。
 しかし――鎧武者に油断しない未散はまだまだそのワールドを崩しやしない。
「汝の影に孕みし邪悪。虚ろな瞳で刮目せよ。永遠に――……!」
 カッと目を見開いた。美しい青い鳥は脱ぐとなれば惜しみなくその体を晒してみせる。
 水着ならば何だって怖くない――ちなみに、「脚が推しです。ふふふん!」と胸を張るのだ。
 鎧武者達のバイブスもアゲアゲだ。穢れをないないしなくてはいけないと未散が仲間を振り仰ぐ。
 そろそろ蹴鞠による疲労(ダメージ)が蓄積されてきている。
「其の身、其の心、全てを禁ずる。言葉は不要。封印儀式<セレモニー・ザ・シール>!
 曰く、彼は等しき光を与えん。曰く、彼は等しく焼き払わん!」
 未散のその言葉に、夏子は息を飲んだ。そうだ、倒さねばならない。
 せっかくこうしてスポーツ(?)で交友を結んだというのに。
「え……戦闘要る? 満足して還らん? 解り逢えた俺達なのに戦闘したくなくない……?」
 鎧武者は切なげな表情を夏子に向けている。願うなら来年もこうしてパリィアゲイン↑していきたいものだ。
「望むなら再戦も赦そう。コンティニューは来年だがな」
「ああ。そうだ。それに……そんな鎧剥かれて醜態晒して――ねえ??」
 鎧武者は泣いた。泣いて、逃げた。カイトと夏子はソレを顔を見合わせて、見送ったのだった。
 未散はいそいそと衣服を脱ぎ捨てる。罰ゲーム用に水着だったのだ。問題はなかろう。
「そう! つまり! 皆様、御準備は宜しいでしょうか?
 いっせーのせでジャンプです。せーの、海だーー!!!!!」
 ――――夏だーーー!

成否

成功

MVP

散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士

状態異常

なし

あとがき

 一足先に、神ヶ浜!(サマフェス楽しみですね、お疲れ様です!)

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