シナリオ詳細
ぱんつの泉
オープニング
●泉の秘密は乙女の秘密
『幻想』の片田舎。おそらく、何の目的も無い者が訪れることもなければ、領有している貴族ですらもあまり気にしていないような小さな町である。
『そこ』が出来たのはかなり昔の事らしい。正確な年数も覚えていない程の過去、町の郊外に造られたのは、一見するとただの泉である。
いつの頃からか、その泉には「ある物」が投げ込まれるようになった。
その理由は、「『それ』を後ろ向きに投げ込めば願いが叶う」という噂が出来てからだ。
発祥はよくわからない。やけくそで後ろ向きに投げ入れたら願いが叶ったという話があり、曰く、「闇市でレリックデザイアを獲得できた」「お金が増えて金持ちになった」「手に入れたかったウス=異本がゲットできた」「彼女が百人出来ました」「お嬢様のへっちな場面を拝めました」などなど。
真偽の程はどうあれ、泉の噂を聞きつけてやってくる者達は少しずつ増え、今では知る人ぞ知る場所となった。
おかげで、泉を管理する側も恩恵に預かることとなったのだが、それはさておき。
その泉で願いを叶えたいのならば、次の事を遵守するべきという話だ。
投げ入れる物は自身にとってお気に入りの物か、勝負として使っている物である事。
後ろ向きに投げ入れる事。
投げ入れたら自分で取り戻すような真似はしない事。
『それ』の回収については、業者が責任をもって行なっているし、焼却処分をする事で頒布される事を防いでいるという。
だが、最近、『それ』の回収をしている業者が首を傾げる程に、数の少ない日が続いているという。
もしや、盗難されているのではないか。
疑念を抱いた業者が泉の管理人に報告。また、泉に投げ入れた者達より、翌日に残っているかどうか確認しに来ると無くなっていた事という証言も出た事で盗難が確定。
ならびに、近所の人から不審な人物を見かけた事があるという事で、調査の結果、少しばかり腕の立つ者達が何人か集まった窃盗グループと判明。
しかし、盗難された物が物だけに、密やかに取り返したい。
そういった思いが被害者達から訴えがあった事により、この件はローレットへと依頼が出される事となったのだった。
●『それ』の招待
集められたイレギュラーズは、依頼書を前にして頭を抱えている様子の情報屋の男をいの一番に見てしまった。
『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145) が、「どうしたの?」と尋ねた。
彼に呼ばれて集められた筈なのだが、当の本人が頭を抱えているという事は、頼める人間が限られるような依頼とかそういうものなのだろうか。
そんな事をイレギュラーズが考えている間に、男は彼らの姿を見てすぐに姿勢を正した。
一つ咳払いをして、男はイレギュラーズと向き合う。
「来てくれてありがとう。早速だけども、依頼の説明をしたいと思うよ」
そう言って彼が指し示した地図の場所は町の外れのようだ。人気は少ないが、大きな物音や騒音がすれば近隣の住人にもすぐ伝わる。民家との距離はそれぐらいの近さだった。
指し示した所には円形の絵と共に『泉』と書かれた字があった。
「今回の依頼は、この泉に投げ込まれた物を窃盗しているグループを懲らしめる事と、窃盗した物を取り返し、かつ、焼却してほしい、という物なんだ」
「焼却?」
窃盗ならば、大事な物を取り返したい筈なのでは。
疑問を口にするイレギュラーズに、男は「ごもっとも」と前置きした上で、泉について説明を始める。
「その泉へ後ろ向きに立ち、お気に入りの物もしくは勝負物を投げ入れると願いが叶うと言われているみたいでね。取り戻しても、再び泉に戻したら願いが叶わなくなりそうだから、戻さずに焼却してほしい、と。これが泉の管理人さんと被害者乙女の会からの依頼だよ」
「戻ってきたら願いが叶わなくなりそうなのは理解したけど、そう言わしめる程の『それ』って、何なの? っていうか『被害者乙女』?」
一人の質問に、情報屋は目を泳がせる。あ、これは嫌な予感がする。
「……ぱんつ……なんだよね……」
言いにくそうに、けれど言葉ははっきりと口にした情報屋。
「ぱんつを取り戻し、焼却してほしい。というか、個人的にも、乙女の秘密を持ち帰るような不躾な輩には制裁が必要だと思うんだよね。それはもう血で血を洗うような」
にこにこ笑ってはいるが、どう見ても目が笑っていない。こわい。
頼んだよ、と笑っている情報屋を前に、イレギュラーズは断ることも、踵を返すことも雰囲気的にできなくなっていた。
「あと、犯人達を成敗したらこう言っておいて。『月夜ばかりと思うなよ』と……」
「こわ」
後に、ほむらが他者に語った所によると、こう言ったそうだ。
だってこれ、背を向けたらガツンてやられない?
- ぱんつの泉完了
- GM名古里兎 握
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●個性的な面々。あるいは刺激の強い面々。
ぱんつの泉。
勝負ぱんつもしくはお気に入りのぱんつを投げ入れると願いが叶うと言われている泉である。
それが設置されているという町に到着した、『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145)を含むイレギュラーズ九名。
泉の周りを確認し、『また会えたね』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)の提案で置いても不自然にならないゴミ箱などを設置する。そうする事で各自の配置位置を決定した。
そして、住民達に通達した上で、彼らは夜を迎える事になった。
鳥だろうか。ほぅほぅと鳴く声がどこからか聞こえる。
月の無い夜は、イレギュラーズの姿を隠してくれた。もっとも、それは犯人達も同様だろうが。
不動 狂歌(p3p008820)は、泉に投げ込んだぱんつを盗むなどと言う非常識な輩に対し、憤りを見せる。
「不届きな奴らはとっちめないとな」
「はい。それにしても、ロマンチックな泉ですわね」
投げ込む物がぱんつでなければ。
内心で大きな溜息を零す『いつかの歌声』ソニア・ウェスタ(p3p008193)。
彼女はこの世界で頻繁に聞く「ぱんつ」という単語に呆れ、同時に、かつて父が母にされた罰ゲームの話を思い出す。彼女の父もまた、ぱんつにまつわる苦い思い出を持つ人物のようだ。
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は真面目な顔で泉について思いを馳せる。
「ぱんつを、ささげると、願いがかなう……まるで、ぱんつを贈ると、闇市運上昇依頼安全受理率向上その他諸々のご利益のある、伊砂顔のイケメンのようですの」
誰とは言わないが、ひどい言われようである。
「だとすれば……きっと、盗賊たちは、彼に、近づきたいのでしょう」
何がどうしてそうなった?
だが悲しいかな。誰もツッコミが居ない。不在なのだ。
「彼らを捕まえたら……語ってみせますの」
何やら使命を得たとばかりに決意するノリア。一体何を決意したんですか、あなた。
(乙女の純情な思いを汚すなんて許せない! ケツの穴に指突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたる!)
狂歌以上に怒りに満ちている『神ではない誰か』金枝 繁茂(p3p008917)。
立ち上る怒りのオーラを発する彼を、ほむらが宥めようとしている。
近くでは『己喰い』Luxuriaちゃん(p3p006468)が同情するような溜息を零していた。
「ぱんつ泥棒なんて悲しいわね……生で脱いでくれる相手がいないなんて寂しい人達……」
その言葉を受けて、『悦楽種』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)が賛同の意を首振りで示す。
「ぱんつを盗むだなんて寂しい事をなさいますのねえ。私で良ければ、ぱんつと言わずその中身を堪能させて差し上げますのに♪」
「そもそもメルトアイ君は穿いていないよね……?」
「うふふ♪」
Luxuriaのツッコミに対し、メルトアイは笑い声を零すだけ。
「どんな男が来るのかな。楽しみだねえ!」
興奮した様子で鼻息荒く呟くムスティスラーフ。初っぱなからテンションが高い。興奮もすごい。どこがとは言わないが。
周りの個性的な面々を見ていた『特異運命座標』一ノ瀬 由香(p3p009340)はちょっと困惑していた。
「結構、濃……個性的な人達なんだね……」
そんな事を呟く少女。この世界に来たばかりの少女には少々刺激の強い面々だったようだ。制裁の際にはどういう感想を抱くのか、今から心配でならない。
「ま、まぁ、下着を盗むならず者さん達、このまま放っておけないから、あたしも捕まえるの、協力する! これがあたしの初依頼だけど……頑張るね!」
あの、お嬢さん、本当にこれが初めての依頼受注で良かったんです?
●ぶっちゃけ戦力差がキツすぎてまともな戦闘になりませんでしたのでダイジェストでお伝えします伝われ
現れた窃盗集団。人数は三人。
泉に入った瞬間、ノリアが飛び出し、「皆様が、彼の霊験に、あやかりたい気持ちは、よくわかりますの……。でも、あの方の、司祭になるには、まだまだ、わけへだてない慈愛の心が、足りませんの」と発した事で呆気にとられる窃盗集団。突然の不審者にしか見えないよね、うん。
その隙をついて、繁茂が周囲の建造物を保護する結界を展開。これで泉は守られる。グッジョブだ、繁茂!
由香が衝術を用いて一人を吹き飛ばす。泉に突入! メリークリスマス!
続いて、Luxuriaによるおっぱいビンタが! ああ! ああ! ケツに!! 羨ましい!! っていうか凶器じゃん???
メルトアイの触手が一人を締め上げる。これもある意味ご褒美では? 報告書作成者は訝しんだ。
反対側からは狂歌が現れ、名乗りを上げて注意を引きつける。男らしさが凜々しいね!
その際にソニアが魔力を込めた弾を放ち、青年の体力を削っていく。控えめながらもしっかりした一撃、嫌いじゃないぜ。
それから、忘れてはいけない。ムスティスラーフも戦闘に参加だ。ただし、服を脱ぎ出すという謎所業付きだ。
いや、意味はある。何故ならそれは青年達の精神に重傷を食らわせる為の技なのだ。流石だぜおじいちゃん!
一応青年達も反撃はしているのだが、数の暴力には勝てないのだ。
無双していくイレギュラーズを見ながら、戦闘に参加する隙をつけないほむらが呟いた。
「これ、私、来る意味あった……?」
ごめんねほむら。
程なくして、窃盗集団はお縄(マジックロープ)につく事になったのだった。
●(彼らの)地獄は今ここに開かれる
捕らえられた犯人達へ笑顔で圧をかける繁茂とムスティスラーフ。
「今ここで制裁をしてもいいんだけど、それだと住民の迷惑になるよね」
「というわけで、君達のアジトに案内してもらうよ。大丈夫。手荒な事はしないからね」
やろうとしている事はアレだが、TPOをわきまえる辺りは常識的な繁茂。
ムスティスラーフも常識的な提案を示しているが、後半はやや不穏しか感じない。彼が言うと不安しか無いんですけど?!
何か良くない予感でもしたのか、泥棒青年達も若干青ざめてる気がしないでもない。気のせいだろう。うん。
大人しく従うとばかりに一生懸命頷く青年達。
かくして、彼らの案内により、アジトへと赴く事となった。
辿り着いたのは、郊外にある一軒家。古ぼけた造りをしている事、さほど手入れをしていない事から、空き家の物件を勝手に利用しているだけのように見えた。
念の為、家の持ち主を尋ねるが、「居なくなって、無人の家だ」と説明される。
近くにある家までの距離を確認する。かなりの距離があり、多少声を上げても届かないようだった。
この郊外の家は古い住民の物であったそうで、今では耳の遠い老人が僅かに残っている程度らしい。
つまり――――
「いくらでも制裁し放題、という事ですわね♪」
メルトアイが嬉々とした顔を見せる。心なしか、彼女の触手も楽しそうにうねっている……ように見えなくもない。
「ひっ」と短い悲鳴を上げる犯人達。
彼らの前に進み出るノリア。胸の前で両手を組み、微笑みを浮かべて口を開く。
「ご安心ください……。制裁の前に、あなた達へ、あの方への信仰というものを、ご説明させていただきましょう」
「何一つ安心できる要素がねえ?!」
戦いの最中でじじいのぱんつや男のぱんつを嗅がされる羽目になった原因に対して尻込みするのも無理はない。だが、彼らは逃げられない。なぜなら後ろには繁茂とむっちが控えている!
「それでは、説明を始めます」
「無視?!」
「抗議は、一切、受け付けません」
「シスターでももうちょっと慈悲あるぞ?!」
至極真っ当な青年達のツッコミをよそに、ノリアは淡々と語り出す。
「あの方にぱんつを贈る信仰」という内容を謳う彼女の弁を、窃盗組は聞かなかった振りをしたかった。でもできない。だって、隙を見せたら後ろから何かされそうで……。
「わかりましたか……?」
「あ、はい……」
力ない返事であったが、ノリアには関係ない。
正しい信仰を説く事が出来たという満足感に頷き、制裁を加える者達へとバトンタッチする。
迫ろうとする繁茂とムスティスラーフをよそに、狂歌が青年の肩を叩く。
振り返れば、笑顔の彼女。
「女物の下着を盗むんだから男なんかやめちまうか、あぁ」
絶句。
それはつまり、これからされる事は……。
そこへメルトアイが近づき、触手で青年達の体に触れる。
「どの殿方へいたしましょうか♪」
「ハンモはこの人にするんだよ」
「じゃあ、僕はこの人ね」
人数は三人。ちょうど制裁する人数も三人。
「交代制でやろっか。誰が一番多く制裁するか競争だよ!」
「いいね!」
「どうやって数えますの」
「数え方を尻に書いていけばいいと思うよ!」
「なるほど名案ですわ♪」
「『名案ですわ♪』じゃねええええええ?!」
ツッコミを入れる青年達だが、三人は意に介さない。物の用意をするなどして準備を始めていく。
今まで傍観者として見ていた由香。制裁って何をするのか、子供な彼女にはまだ分からない。わからなくていい。
ふと、泥棒青年の一人と目が合った。
「助けて」
明らかに目がそう訴えていた。
優しく微笑む由香。
期待に満ちた顔をする青年。
そっと、由香の視線が今見ている光景から外れ、空を見た。ヨゾラキレイダナー。
「薄情者ぉぉぉぉぉ!!!!」
あらん限りの声で叫ぶ男。
あぁ、恨むなかれ。彼女は仲間の制裁を妨害したくないだけなのだ。となれば、見て見ぬ振りしか出来ないのだ。
(ごめんね、泥棒さん。観念して制裁を受けてね)
心の中で合掌する由香の耳に「助けろぉぉぉぉ!!!!」とか叫ぶ聞こえた気がしたが、耳から耳へと流し、スルーした。
「子供には目の毒なので」
「ついでに聞いちゃいけないタイプだから、耳も塞ごう」
ほむらと狂歌が由香の両側に立ち、彼女の目と耳を塞いで外へ連れ出す。
Luxuriaとノリアとソニアが、ぱんつの山を分け合って運ぶ。
外に出る直前、ソニアは振り向いて青年達に笑顔で言葉をかける。情報屋から頼まれた言葉を伝えるために。
「月夜ばかりと思わないでくださいね」
少し考えてから意味を理解した青年達が、「ひっ」と声を上げた。
閉じられたドア。
残された青年達とイレギュラーズ三名。
メルトアイの触手が、一人の青年のズボンをまさぐる。
「ズボンの中の『槍』とか『穴』が大変な事になってしまうかもしれませんが……頑張ってくださいませね」
言いながら触手はズボンの裾から中へと侵入していく。
触手というシチュエーションになのか、自分が責められる側になるとは思っていなかったのか、青年の口から短い悲鳴が上がる。
笑いながらも触手が到達し、男の『槍』とか『穴』に絡みついていく。
その後どうなるかなど、一つしかないが、あえて明記しないでおこう。
別の青年二人にはムスティスラーフと繁茂が興奮した様子で迫っていた。
誤解無きように記しておくと、ムスティスラーフはいい男を前にしてのもので、繁茂は乙女の純情を踏みしてた事に対しての怒りによるものである。前者は誤解もなにもないような気がするが、気にしてはいけない。
二人がかりで青年達のズボンをぱんつごと脱がしていく。その上、ムスティスラーフはぱんつの匂いを嗅いで悦に入っているのだ。こんなの、相手からしたら恐怖以外の何物でも無い。
犯人達に叩きつけられる恐怖の底はまだ見えない。
なぜなら、二人はある瓶を取り出したのだ。それは一見何の変哲も無い小瓶に見えた。
すっかり無抵抗と化した青年達を前に、繁茂は押さえつけるまでも無いと判断し、近付く。蓋を取り、青年の一人に匂いを嗅がせた。
どうしてか、頭がくらくらするような匂いがした。
「今からキミは生まれ変わるんだ、お誕生日おめでとう!」
何が?!
ツッコミすら出来ないほどにくらくらする青年達。
もう一人の方へムスティスラーフが小瓶――――ラブポーションを持って近付いていく。
そしてそれを『穴』へ注ぎ入れた。えっ、どこの『穴』なのかですって? 健全な青少年を前には、とても言えたものではない、とだけ言っておこう。
「これね、ここから入れると効果てきめんなんだよ!」
香りがムスティスラーフの興奮度合いを加速させたようだ。
繁茂やメルトアイも似たような状態になっていた。
「どっちが多く制裁出来るか競争だぁ!」
「受けて立ちますわぁ♪」
「僕も!」
「いやぁぁぁぁぁ???!!!」
ラブポーションの効果を直に浴びてない最後の一人が情けない悲鳴を上げた。
かくして、地獄はここから始まったのだった。
その頃、盗まれたぱんつの供養組はというと。
「家に燃え移ってはいけませんから、ある程度離れましょう」
「そうだな。もう少し先の方に行こう」
ソニアと狂歌の提案により、離れていた。アジトから結構離れていく彼らの耳に、泥棒青年達の悲鳴とイケナイ声が聞こえなかったのは幸いである。
お焚き上げの最中、周りが炎を見つめる中で、ノリアだけは一生懸命に祈っていた。
(あの方に届きますように……)
灰になったぱんつが彼の元に届いたらどうなるのかなんて、神のみぞ知るというやつだ。
燃え上がるぱんつを見ながら、狂歌が呟く。
「願い事か……」
聞こえていた由香が尋ねる。
「狂歌さんの願い事はありますか?」
「あるよ。人を助ける為に今よりも強くなること」
「すごく良い願い事ですね」
「でも、俺の願いは俺自身で叶えてこそ意味があるから神頼みはするつもりはないぜ」
胸を張って言い切る狂歌を、「すごいなぁ」という尊敬の目で見つめる由香。
お焚き上げも終わり、談笑していた彼女達のもとに、普段よりツヤツヤした顔の繁茂とムスティスラーフ、メルトアイが戻ってきた。満足のいく制裁だったのだろう事は見てわかった。
朝になってから青年達を役人に突き出せば、事件はこれで終わりだ。
こうして、ぱんつ盗難事件は無事に幕を下ろしたのだった。
●ちょっとした余談
翌日の夜。ぱんつの泉に客人が訪れた。
結果だけ言えば、数人の来客が時間をずらして一人ずつ現れたのだが。
これは、そんな者達の内緒の時間の話である。
一人目。
その人影は辺りに人が居ないのを確認すると、人の気配を伺いながら泉に近付いた。
距離を測り、泉に対して後ろ向きに立つ。
腰のポーチから取り出したのは、白い可愛らしいぱんつ。
それを丸めて手の中に収めると、「えいっ」と可愛い声を上げて泉に投げ入れる。
成功した音が小さく聞こえた。
彼女の願いはたった一つ。
元の世界にて家出をした姉が今も無事で居る事。
(私も、願い、叶うかしら……)
叶いますように、と願って投げ入れた。あとは運次第。
二人目の人影は角の輪郭が浮かび上がっていた。
その人物は泉に対して後ろ向きに立つと袋からぱんつを取り出した。女性らしい小さなリボンがあしらわれたぱんつである。
彼女はそれを握りしめて投げる準備動作をして――は、止める。というような事を数回繰り返していた。
「いや、でも、こういうのに頼るのも……でも……」
しゃがんでは立ったり、投げようとするも止めてしゃがんだり、果てはウロウロしたり。
こう言っては何だが、不審者に誤解されそうな動きである。
結局、彼女が何を願い、そして投げ入れたかどうかは、彼女だけの秘密と言う事で。
袋を持った客人は、袋から下着を一枚取り出した。ちょっときわどい感じがセクシーだ。
泉に対して後ろ向きに立ち、それを投げ入れる。丸めて投げられた其れは小さな音を立てて泉に落ちる。
「どうかうちのキャバクラが託児所じゃなくなりますように」
そしてもう一度袋に手を突っ込む。
取り出した下着は可愛らしいフリルレースのものだ。
それを先程と同じように泉へ投げ入れる。
「それから闇市でレリックが引けますように」
袋にもう一度手を入れる。今度は紐しかないタイプだ。というか、ぱんつなのかそれは。
それも投げ入れていく。
「浪人と強火女子が結ばれますように」
他人の事まで願いだしたぞこの人。
次もまた袋に手を入れて、取り出したのは、小さな薔薇の刺繍が隅にあるちょっと可愛さを押し出したタイプのぱんつである。
「強火女子と観光客がラブラブになりますように」
気のせいだろうか。単語から先程の人物なのではないかと思ってしまうのは。
願い事を言い終えて満足したのか、客人は帰っていく。
忘れているかもしれないが、おさらいしておこう。
この泉、言い伝えによると「投げ入れる物は自身にとってお気に入りの物か、勝負として使っている物である事」なのだ。
つまり、今、客人が投げ入れた五枚全てはお気に入り又は勝負用という事になるのだが、今後大丈夫なのだろうか……。
結果は神のみぞ知るのである。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした! 皆様のプレイングでテンション上がった結果、こうなりました!
思わず後書きまでテンション爆上げだぜ!
GMコメント
何をとち狂ったかぱんつです。
願い事が叶う泉があったら良いよね、的な発想からぱんつの泉が生まれました。ありがとうございます。
内容をご覧頂くとわかりますが、本シナリオはぱんつ系コメディシナリオとなります。ご確認ください。
●達成条件
・窃盗団の捕縛と制裁(非死亡)
・ぱんつの回収と焼却
・(オプション)ぱんつの泉を傷つけない
●敵×複数名
・ならず者たち。屈強そうないかつい男達。
・防具は身軽に動く為、比較的軽装。
・ブラックジャックめいたものとか、棍棒とかの鈍器を持参。
・射撃武器としてはパチンコのような物を持っているようだ。(使用する弾について注意が必要です。戦ってから判明しますが、こしょう爆弾などの地味な攻撃をされます)
・基本的にぱんつを傷つけないようにする為の武器を装着している模様。
●戦闘場所
・幻想の首都から外れた地域。小さな町で、住宅街の外れに広場がる。泉はその場所。
・辺りは木々などの障害物が少なく、見晴らしは良い方。
・新月の夜中の為、辺りは真っ暗。住民達には説明済みの為、無関係の乱入者の危険性は無し。
・犯人達と遭遇するまで明かりを灯す事が出来ない。
・遭遇してからは明かりを使用可。
●ぱんつの泉
どこにでもあるような円形で、中央に水を湧き出している意匠がある泉。服を着た女性の形をしている。
後ろ向きにお気に入りのぱんつもしくは勝負ぱんつを投げ入れると願いが叶うと言われているが、真偽の程は不明。
盗難に遭っている事から現在は投げ入れられる数が少ない。
全てが盗まれている訳ではなく、どうやら犯人達の好みのぱんつが盗まれているようである。複数名による盗難の為、好みの法則は不明。
●同行NPC:暁月・ほむら
新米冒険者の為、基本的に支援程度の事しか出来ない。明かりを持つとかぐらい。
ナイフを持っていますが、戦闘に不慣れの為、傷つける事を躊躇う様子がある。
本日も元気に女装中。ボーイッシュ風の女装。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
全てが終わったら、後でこっそりぱんつを投げ入れたい人も居れば是非。効果の程は不明ですが。
それでは、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
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