PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ステイルメイト

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白の国

 白の国には十八歳になったばかりの女王様。
 先代の王が崩御してすぐに即位した彼女は父の死、そして何より戦争で傷ついた兵士や国民たちの姿に胸を痛めていた。
「姫……いや、女王様。どうかご決断を。このままでは、我が国は衰退するどころか……」
「爺や……分かっています。これは、私たちだけの戦いではない。私たちの先祖から続く、悲願の為。何より──国の永劫なる繁栄の為!」
 もう彼女は、力なき姫ではない。
 王冠と共に、代々伝わる白き大盾を賜ったのだ。
 己の代でこの不毛な戦争に決着をつける事を決意した女王が清らかな声で謳いあげる。絶対なる勝利を! 永久なる安寧を!

「愛する民よ、どうか私に力を貸してください! 永久の平和を築くために!」

●黒の国

 黒の国には余命幾ばくも無い大王様。
 白の国に妻を殺された。敵討ちだと自ら黒塗りの鎧を纏い、黒の大剣を振るい幾つもの武勇を打ち立てた王だったが、病の前に前のめりに倒れる事となった。
「王よ、最早これまで。ご決断下さい。貴方の命尽きる前に!」
「大臣、貴様に言われなくとも分かっている。奴らとの戦いは確かに我が国と民の為でもある。だが、何より──この俺と彼女の為でもある!」
 ──恐らく、これが己の最後の戦い。王は確信していた。
 己の最期を勝利で括りたい。王の号令は黒の国全てに轟いた!

「我が国最高の民よ、最後まで俺を信じて着いてこい。貴様らに絶対なる勝利を約束しようぞ!」

●ステイルメイト
 
 ──ある世界に、白の国と黒の国の二つがあった。
 隣国ではあるが互いに物資や鉱山を奪い合うなど小競り合いの果て、常に臨戦態勢を布く程に関係は悪化していった。
 もはや長き戦いの中で善悪というものは機能はしていない。
 どちらにも正義があり、どちらにも悪がある。

 戦力差は同一。拮抗した戦い。膠着状態のまま互いに疲労を隠せぬ両国。
 痺れを切らした両国は、奇しくも同日、最後の戦いに挑まんとしていた。
 数百年に及んだ、ステイルメイト戦役の終結。
 それに介入したのは──。

NMコメント

 りばくるです。
 ステイルメイトはいわゆる引き分けですが、当方は膠着状態と自己解釈しています。
 宜しくお願い致します。

●成功条件

 『黒の国』および『白の国』に介入し、どちらか一方の主導者を殺害する事。

●シチュエーション
 
 障害物の無い平原にて、両国の主力部隊がにらみ合っています。
 白の国と黒の国は互いに戦力差が無く、完全に拮抗しています。
 主導者を殺害すれば、敗残兵は放置しても勝手に逃げていきます。

 プレイングには【白】か【黒】、必ずどちらか一方を記載してください。
 参加者内で齟齬があった場合は多数決で決まります。

●エネミー

・【黒】ルート

 【白の女王】
 十八歳になったばかりの少女王。
 強力なアーティファクトアイテム・白き大盾を掲げて戦います。

・使用スキル
 【ホワイトレーザー】(神超貫:ダメージ大、【万能】)

・【白】ルート

 【黒の王】
 厳めしい黒鎧を纏う事から黒騎士王とも呼ばれています。
 戦いの中で磨かれた卓越した剣技で相手を圧倒します。

・使用スキル
 【黒輪斬】(物特レ:ダメージ大、【至範自分以外】)

 【共通エネミー】
 ・歩兵×100 使用スキル・なし マーク、ブロック多用
 ・騎馬兵×10 使用スキル・突撃(物中貫:【移】)
 ・僧兵×5 使用スキル・治癒(神中範:HP回復小【治癒】)
 ・戦車×2 使用スキル・砲撃(物遠範:【ショック】)

●味方NPC

 イレギュラーズの指示にはある程度従いますが、主導者の戦術傾向から大きく外れると混乱するようです。
 【白】は守りの戦い方を重視し、【黒】は攻めの戦い方を好みます。

 ・主導者(【白】なら【白の女王】。【黒】なら【黒の王】が共に戦います)
 ・歩兵×100(歩兵。攻撃手段は通常攻撃のみですが、ブロックが得意です)
 ・騎馬兵×10(突撃兵。【移】攻撃や【貫】攻撃で道を開きます)
 ・僧兵×5(司祭。範囲回復を行う)
 ・戦車×2(木造戦車。遠距離レンジより強力な砲撃で敵を薙ぎ払う。頑丈)

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • ステイルメイト完了
  • NM名りばくる
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月11日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
宮峰 死聖(p3p005112)
同人勇者
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

リプレイ

●オポジション
 
「皆様。私達の陣営に参戦してもらえる事、感謝します」
 白の女王が恭しく、イレギュラーズ達に頭を下げた。
「よろしくね」
『ふん、穢れを知らぬ娘と見える。本当にこちら側について良かったのか?』
『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が表情を変えぬまま返したあと、十字架がぴかぴかと光りながら悪態を吐いた。
「参ったなぁ。戦争なんて正義も悪も無いものに参加したくはなかったのだけど、こんなに気丈に振る舞う姫……おっと、女王様かな。そんな姿を見たら力を貸したくなっちゃうね」
 車椅子に深く座る『同人勇者』宮峰 死聖(p3p005112)は、自らのエゴの為に彼女の元に付くと決めた。
「戦後の平和と和解の世界には、他人の痛みをわかってくれる、弱い人たちのことを気に掛けてくれる指導者さんがいいと思ったんだ。ね、美咲さん?」
「そうね。負けた側を踏みつけるような指導者なら、後でまた来ることになるけれど──ま、貴女がそうならないことを願うわ」
 『咲く笑顔』ヒィロ=エヒト(p3p002503)と、『紫緋の一撃』美咲・マクスウェル(p3p005192)の言葉に、女王は大丈夫ですと力強く頷く。
「行きましょう。不幸だけしか生まないこの戦争を、私の代で終わらせます!」
 ──かくして、イレギュラーズは白の国陣営の中に立った。
 黒の陣営も時同じく、配置についている。
「進軍開始!」
 白と黒。盤上の戦いが今始まる。

●ツーク・ツワンク

 ぶつかり合う剣戟。響く金属音、踏み鳴らされる草。
 爆発音。うめき。叫び声。ここは戦場だ。流れる血に善も悪も、白も黒も無い。
 此処にいるのは全員、赤い血が流れる人間だというのに──。

 まずヒィロが動く。たん、たんとステップを踏み、宙を蹴るように空へ。
「ん、見つけた!」
「流石ね」
 彼女を追うように美咲も隣へ跳び並ぶ。
「後ろから撃ってれば安全だと思った? 残念、そこはボクの掌の上でーす!」
 砲撃支援を行う厄介な黒戦車を素早く察知。強力な代わりに動きが遅い戦車は、ヒィロと美咲が何をしてくるか推測できずにまごついていた。
「ボクが相手だあーっ!」
 すう──と息を吸い込み、叫ぶヒィロ。喧嘩を売られたと理解した戦車がごうごうと前へ進む。狙うは上空の少女。
「準備万端! 美咲さん、宜しくね」
「任せて」
 強固な絆で結ばれている二人の連携。ヒィロからのサポートを受け、美咲の動きと能力が最大限まで引き上げられていく。
 研ぎ澄まされた精神を昇華させ、美咲の魔眼が静かに発動した。
「ごめんなさいね。その射程じゃ私より狭いし……いくら頑丈でも、無意味なのよ」
 その言葉の意味を理解できた者はどれほど居ただろうか。
 彼女に『視』られた戦車は、もう二度と動かない。乗務員は中で全員『射抜かれ』たからだ。
「さあ、もう一台! やっちゃおう!」
「よし。行こうか」
 左翼に展開した戦車を撃破した二人は、そのままの勢いで右翼へと跳んだ。

 ──赤が咲いたあと、どう、と音を立てて兵士が倒れた。
「脆いね」
『所詮は雑兵か。遊びにもならんな』
 ティアは単独で遊撃を申し出た。薔薇の花弁振りまく美しき舞踏は兵士の動きを止め、そして、目を奪われた隙に奇襲の一撃を叩き込む。
「この戦いに意味があるのかな」
 血を吐き倒れ伏す兵士を見下ろして呟く。
『戦争はいつだって意見の相違や衝突、軋轢から始まるが、国やヒトそれぞれ価値観が異なる。一概にはどうも言えんな』
「ま──そんなものだよね」
 慈悲深き天使の憂いの吐息。
『──そら、また来るぞ』
 白国の騎馬隊が抑え込めなかった一騎の騎馬兵がティアに向かって突撃を繰り出す。
 ティアはそれをひらとかわすと、すれ違いざま背後に一撃を叩き込んだ。彼らの未来を奪う、天使の十字砲火。
「さよなら」

 死聖は自らハンドリムを回し、前線まで押し進んでいた。
「君たちは砦だ、此処で絶対に食い止めよう」
 ──オオ!!
 死聖はこの最前線で自らも囮として動きつつ、細かい命令を飛ばす軍師役を自ら買って出た。
「掛かってきたまえ、諸君! 僕の首を刎ねぬ事には、女王には一歩たりとも近づけぬと知れ!」
 死聖の口上に、一部の敵兵士が黒の王の命令を無視して、死聖を狙おうとする。狙い通り。
「おっと、失礼」
「ぎゃあ!」
 一人の兵士が、死聖に槍を突き出す。か弱き娘だと侮ったか。死聖は弱者などではない。
 火花が散るほどの高速轢殺。車椅子に座っているから動きは鈍い筈──そんな概念を根本から破壊するほどの恐ろしき高速戦闘に、敵兵士たちはぐんと指揮が下がっているように見えた。
だが、そこに──!

●チェック

「は。貴様らがそちらについて、完全に俺の戦術が狂ってしまったようだな」
 大地を踏みしめる音。のしかかる重圧。低い声。
「死ぬならば病ではなく戦場で──それこそが武人としての誇り。それこそが俺への手向け。最後に俺に一華持たせてくれまいか!」
 黒の王が吼える。白の国の兵士たちが竦みあがるほどの強烈な戦意だ。
「みんな、『黒の王』だ!」
 スピーカーボムで戦場に響き渡る、死聖の声。
 俯瞰して戦況を把握していた美咲がいち早く駆け付けた。
「状況は?」
「美咲さん、早いよー!」
 遅れてヒィロもやって来る。笑顔を絶やさぬ死聖の笑みが、少し引きつっていた。
「いや、凄いね」
 彼女たちが来る間に圧倒的優勢だった戦力差が盛り返されていた。たった一人、黒の王が前線に乗り込んできただけで、ある。
 王の激励と強烈なカリスマは黒国兵士の士気を上げ、その牙を突き立てている。
「おおおッ!」
 黒の王の強烈な回転斬りが白国兵士たちを無情に薙ぎ払っている様をイレギュラーズ達は見た。
「当たったら痛そうだね」
『痛いで済めば上等だな』
 合流したティアのつぶやきに、十字架はあきれたように言う。
「ボヤボヤしない! 行くよ!」
 美咲の放つ魔砲が黒国兵士を吹き飛ばし、道を強引にこじ開けようとする──が。
「駄目、少し足りない」
 根性か執念か。彼女の強力な術を受けてなおまばらに立ち上がる兵士たち。息を整える美咲の横に白の女王が立ち並んだ。
「皆さん、下がって! 白の盾よ、今奇跡を此処に!」
 女王が大盾を掲げると、聖なる光が一直線に王や兵士に向かっていく。イレギュラーズの進む道が開いた。
「よし、一気に行こう! 『僕達』は全力で、君と戦う!」
 青色のオーラを纏う死聖による超高速戦闘。
 強力な攻撃を受けてたたらを踏む王。そこにヒィロが一直線に突き進む。
「二つの国の明日のために、剣を向けさせてもらうよ。きっと将来、貴方の屍の上にできる一つの大きな国には、明るい笑顔がいーっぱい咲き誇るはずだから!」
 ヒィロと黒の王の剣舞。
 美咲は静かに、機を伺っていた。
 撃つタイミングは、ヒィロが整えてくれる。たった一瞬、彼に視線が通ればそれでいい。
 黒から赤に、赤から青に。代わる代わる光る眼。──今!
「暗帯」
 美咲の魔眼を浴びて動きが鈍る王。
「最期に贈るのは、白でも黒でもない。誰かの涙で咲いた赤の華」
 そこに舞う薔薇の花弁。ティアが放った、慈悲深き止めの一撃。
「……嗚呼、美しいな」
 黒剣が地に突き刺さったと同時に。
「見事。貴様らの、勝ちだ」
 勝敗は、決した。

 最早死に体の王が、血を吐きながら言葉を紡ぐ。
「聞け。鳥籠の女王よ。貴様ら白の国は、我が国に流れる川に毒を流し、民のみならず、俺の妻も、そして俺自身にも死を運んだ」
「……そんな。我が父が、そんな事を?」
 女王の震えた言葉に、王が強く頷く。
「全て事実よ。貴様の父は手段を選ばぬ悪魔であった。しかしな、俺とて同罪よ。復讐のために貴様らの国の民を斬った。だが、これ以上罪を重ねる前に死ねた。感謝するぞ」
 王の眼から、光が失われていく。
「俺も、彼女も。かつては平和な世を願っていた。善い国を、創れよ」
 
●チェックメイト

 王の死は瞬く間に兵士たちに伝わる。
 敗残兵たちは散り散りになって逃げていく。彼らはこれから、どうなるのだろうか。
「美咲さん、皆で幸せになるって難しいね」
「そうね」
 ヒィロの素直な言葉に、美咲は静かに目を伏せた。

 すべてが終わった後。
 美咲が女王に一枚のコインを見せた。
「女王さま。貴女が両国を隔てることなく統治、繁栄させることを願うわ。次も同じ面が出るとは、限らないものね?」
 美咲が爪ではじいたコインを高く舞わせ、ぱしりと掴んでみせた。
「かの国を支配しようなどとは思いません。きっと、貴女のお心に沿ってみせます」

 ヒィロが力強い瞳を女王に向けた。
「白の女王様。差し支えなければ、白の国も黒の国も無く皆を幸せにするって、黒の王様……だった人に誓ってもらえるとボクも安心できるかな」
「彼の死を決して無駄にはしません。私も、父が犯した罪を背負わねばならない。いくら時間が掛かろうと、私の命尽きようと、生涯を贖罪に費やす覚悟です」
 なら、よし! 美咲とヒィロが互いに笑いあった。

「あ、女王様」
 女王を呼び止める死聖。
「頑張ったご褒美として今度デートしてくれない? なんて、不敬だったね」
 ぼろぼろの身体にも拘わらず冗談を飛ばす死聖に、女王は口角をあげた。
「あなたのご希望に添えずすみません。でもまた、きっといらしてくださいね。次は争いのない国で、お茶会を致しましょう」
 じゃあそれを楽しみに。死聖は満足げに頷いた。

「これで一件落着かな」
 被害状況を確認し終わったティアが、皆と離れて一人呟いた。
『それはどうかな』
「どういう事?」
『知らんのか。チェスでは一度取った駒は二度と使えない』
「……」
 その言葉の真意を汲み取るのは、容易だ。
「白と黒が混じり合って灰色になる事は無い。人間は愚かなものだね。どこの世界でも」
 だからこそ醜く、穢く、美しい。
 びゅうと吹きすさぶ白色の風が、少女の髪をさらっていった。

成否

成功

状態異常

なし

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