PandoraPartyProject

シナリオ詳細

美人画をくりゃれ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●美人画も寄越さずに頼み事とな!?
 穏やかに降り注ぐ梅雨の晴れ間。白露に輝く紫陽花が咲き誇る雅な庭園。ここはカムイグラの高天京、あるヤオロヨズのお屋敷。
 この家の旦那様、壱条少納言様は人遣いこそ荒いものの、それに見合った給金はきっちり払う。無茶ぶりに応じた分だけ払う。なので使用人の鬼人種からの評判は上々。
 しかしながら、屋敷の外ではまた違った声も聞かれる。なぜなら、この旦那様には一個だけちょっとクセの強い点があった。その一個が強すぎる。これが単なる趣味なら誰も文句は言わない。
 だが、どんな頼み事や取引にも、そうではない来客との会話にすらこの枕詞を付けるのだ。用意出来なかったらどうするんだ。

「美人画も寄越さずに頼み事とな!?」

「絵巻でくりゃれ!!」

●麻呂の頼み事
「あなたたち、暇かな?」
 間の抜けたような声で『いくさむすめ』ネリヤ・ヴィヒレア・レヴォントゥリ(p3n000141)が、すっとぼけたことを問いかける。

「すっごいしょうもない依頼が来てるんだ。これ正直後回しでもいいんだよね。賊退治とか妖怪退治みたいな危急の事件でもないし……皆、美人画のストックはあるかい?」
 海洋王国の到達した新天地、黄泉津大陸。向こうからの案件も既にローレットには入ってくる。
「美人画収集がとーっても大好きな貴族さんがいて、その人がこっちの美人画を欲しがってるんだって」
 こちら側にとっても新天地だが、あちらも未知の国家や文化に興味を示している者は多いということ。生活に余裕があり文化を楽しもうという富裕層は特にその動きも早いだろう。
 しかし美人画。下手なものを持って行って、お貴族様に突き返されないだろうかという不安も拭えないが……
「ちなみに貴族さん、外国の美人画に興味津々。美人画は何でもOK出すと思うよ」
 サムズアップをするネリヤ。外国の美人画に興味津々で夜も眠れなくなっているその貴族は、美人画なら全てが尊く何でも大好きなんだそうだ。

「あ」
 こちら側での美人画調達へ乗り出すイレギュラーズへ、ネリヤは一つ思い出して付け足す。
「今回会いに行く貴族さんには、そのまま絵を献上することになるから。秘蔵コレクションを見せたい人は複写を持ってってねー」


「美人画をくりゃれ!外つ国の!美人画をくりゃれ! どのようなうるわしきおなごが外つ国にはいるのかのう!?」
 大事なことなので二度言いました。

GMコメント

 画像も貼らずに(AA略)
 お世話になっております。瑠璃星です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●目的
『壱条少納言に美人画を献上する』
・内容は何でもOKです。少納言はとにかく美人画が大好きです。
・過去に納品されたイラストのURLをプレイングで記載してOKです!
 一行目に貼ってくださると瑠璃星も嬉しいです。ルリボシポイントもアップします。
・【参加者さんご自身が発注・同意したイラスト】なら種別は何でもあり。全身、BU、アイコン、ピンナップ、どれでも大丈夫です!
・持っていく美人画(納品イラスト)のアピールポイントを語って下さい!自慢トークでも自分語りでもOKです!
・美人画をお持ちでない方も、他の参加者さんの美人画のアピールを手伝って下さい。神プレゼンでオーディエンスを沸かせましょう!

●依頼人
 貴族『壱条少納言(いちじょうのしょうなごん)』
 麻呂です。
 ヤオヨロズ(カムイグラの精霊種)の貴族です。人遣いは荒いのですが給金が良く、使用人たちからは(金の面で)慕われています。
 が、取引相手や頼み事してきた相手、そうではない来客にまで美人画を要求する悪癖があるため家の外の人々からは変人扱いされています。

 誰も美人画を持ってこなかった場合。麻呂の絶望は有頂天となり、悲しみの雨がしとしとと降りしきる中で彼の葬儀がしめやかに執り行われますのでご参列下さい。
 当然、依頼は失敗となります。

●場所
『壱条少納言邸』
 雅なお屋敷です。壱条少納言やその使用人達(鬼人種が多いです)が住んでいます。
 皆さんが少納言と面会するのは来客用の大広間。手が空いている使用人達も興味津々に見に来ています。リアクション要員です。

  • 美人画をくりゃれ!完了
  • GM名瑠璃星らぴす
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年07月11日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
彼岸会 空観(p3p007169)
ソニア・ウェスタ(p3p008193)
いつかの歌声

リプレイ

●乗り込むイレギュラーズ、待ち構える麻呂
 8人の勇者が乗り込むは、雅が溢れる壱条少納言邸。
 梅雨の晴れ間、燦々と輝く太陽に照らされて。色鮮やかな紫陽花や、白く可憐な沙羅の花が雨の雫を飾って咲き誇っている。
 そんな絵になりそうな庭を通り抜けてたどり着くのは、これまた広く、柱や調度品まで計算されつくした大邸宅。

「美人画を見せないと、亡くなってしまうだなんて……なんという、プレッシャーでしょうか!」
「流石に悲しみで死なれたら困るし、喜んでもらいましょ!」
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は、依頼人である壱条氏の身を案じる。何せ美人画を拝めなかったら絶望が有頂天でショック死してしまうのだ。どんだけ美人画マニアなんだというレベルだが、美人画への愛がそれほどまでに深いということであろう。

「美人画が欲しいって気持ちも分からなくはないけれど……おにーさんは本物の方がんんっ、なんでもないよ」
『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)がぽつりと呟いた。縁があるのは魔種のおっかない女ばかり。ちょっとは本音も零れよう。

 案内の使用人の後について進むイレギュラーズの耳に入るのは謎の掛け声と、それに応える大勢の声。
「そりゃ、おじゃ!!」
「「「びーじんが! びーじんが! びーじんが!」」」
 広間の上座に座るのは壱条少納言ご本人様(麻呂過ぎるほど麻呂なので絶対本人だ間違いない)、そして広間の周囲を取り囲む使用人の皆様。

「か、変わり者の依頼主、って聞いてたけど……」
 雅な屋敷に鳴り響くコールに『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はちょっと引いた。
「癖はともかく、いい人? なのかしらねぇ。使用人とも盛り上がってるし」
 アーリアのフォローがあんまりフォローになってない。

 すっかり空気のできあがっている空間にどうにも入りづらい。しかし、その空気を打ち破るべく声を上げたのは『勇気は勝利のために』ソニア・ウェスタ(p3p008193)

「た、たのもー! です!」
「おじゃ!? おお! 待ってましたのじゃ皆々様!」
「きた! きたぞ!」
「異国の美人画キタコレ!」
 鏑矢のように響くソニアの声。イレギュラーズの到着に、元々高かったテンションがよりボルテージを上げる麻呂&使用人一同。
 宴が、はじまる。

●美人画コレクションinカムイグラ
「神使様がた、よくお越しになられたでおじゃ! この壱条と家中の者ども、神使様がありがたい絵を携えおいでになる今日この日、首をながぁ~くして待っておりましたぞ!」
 ろくろ首になるかと思いましたぞ! などと冗談めかして出迎える少納言だが、その眼付きは真剣(マジ)だ。美人画を見られなければ命がどうにかなりそうというナントカと紙一重のオーラを感じる。

「さ、さ、皆様お座りになってくりゃれ。遠路はるばるお疲れでごじゃろう。おーい、神使様にお茶をお出しするのじゃ!」
 待望の美人画を持ってきたイレギュラーズを、丁重にもてなす麻呂。氷室からわざわざ取り寄せた氷を浮かべた冷たいお茶と、ふかふかの座布団を用意していたことからもそれは窺える。

「じゃあ、皆さんもお待ちかねだと思うのでー。これはラサっていう砂漠の国で着た服ねぇ」
 先陣切るのはアーリア。彼女が持ってきたのは、自身のドレスアップスタイルの肖像画。そしてそれをプレゼンするアーリアは、パンツスーツにアップヘアのデキると評判の女スタイル。一瞬、美人画について一日の長を認める眼鏡のイケオジの幻影が後ろに見えた……気がした。
 かっちりとした真面目な仕事着の女人が風呂敷包みから取り出した一番槍の美人画は……
「なんと白妙の肌がこんなにも露わじゃ! 破廉恥じゃ! 破廉恥学寮じゃ! 有りでおじゃ!!」
 麻呂、笏を取り落としてキャーッと両手で顔を覆うも、指の隙間からバッチリとガン見している。そして、カムイグラではなかなか……いや、ほとんど見かけない露出度に、広間を取り囲むように黒山の人だかりを成していた使用人達がどよめく。

「日差しが強くて少し焼けてるし、髪色が変わってるのは私のギフト『酔染色』の効果ねぇ」
 交易が盛んなかの国の特徴は華やかな織りや色出しに綾取られた布地。手に持った布の裏地が熱砂の夜空が如き見事な色に染め上げられているのにもそれが現れている。そしてアーリアの髪もまた異国の夕焼けを思わせる色へと染め変えられている。
「ふふ、勢いで着たけど今見てもすごいわねぇ…下着はどうしてるかって? ……さぁ、どっちかしら?」
 この落差、まさに黒船。麻呂も今や目が釘付けである。アーリアを見て、美人画を見る。首の運動が止まらない。
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)と『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)の虚の方がここぞとばかりに追撃のプレゼンをぶちかます
「これぞまさに異国情緒。困り眉に猫目の少女らしさが大人の色香溢れる姿に映えて素敵だ!」
『これぞまさに異国美女! ちょっと目のやり場に困っちゃうぐらい色っぽ……いや素敵だなぁって思います』

 一枚目から広間は大盛り上がり。しかしショーは進まねばならない。
「つ、次、よろしいでしょう、か……?」
 玻璃のように透き通った尻尾の人魚姫、ノリアがそーっと手を挙げる。二番手の彼女がお出ししたのは花魁風の美女の肖像。正統派の美人画。が
「……境界案内人の、オハナさんですの!」
「おお、遊女の美人画でおじゃ? うむうむ、正統派もまた良いものでおじゃ。特にこの目付きがよろしいでおじゃ!」
 一目で遊女と分かる身なりながら、意志の強さを感じさせる美人画へは女性の使用人からの感嘆の声が多く聞こえてくる。
 彼女はカムイグラにどことなく似た空気の漂う『キョート』という国の花街に住んでいるそうだ。高楼立ち並ぶその国では権力者の闘争も止むことは無いそうだ。その中で強かに生きるのが、オハナという女性。
 胸元を開けたような扇情的な着こなしに、自信に溢れた強い眼差し。そう、彼女は強く美しいのだ。
 ルフナからは、ちょっと目のやり場に困るけど流し目が美しいというコメント。片方乱れた靴下がいい……アーリア、マニアック。

 そして出番は変わってヴォルペの持ってきた美人画、一枚目。出てきた瞬間に、麻呂と使用人一同が静まりかえった。
 そりゃそうだ、どーみても単にヴォルペが女物の服着てるだけなのだ。
「おのこでござろう? というか御前様でおじゃろう? なんかこう、あれじゃろ。余興とかでおのこが丈の短い女検非違使の衣纏うやつ。神使様のお国のそういうのでおじゃろ?」
「こっちみんな」
 少納言、即・答。非難がましい視線がヴォルペに刺さる。ルフナも何故かノーコメで目を逸らす。
しかし、二枚目で反応が変わる。勇ましいミステリアスクールビューティーの美人画である。使用人の皆様方もこれにはニッコリ。
「女の身であっても壁役として傷ついても立ち続ける素晴らしい絵だろ。あと胸を見て欲しい。でっかいだろ」
「女武者かおじゃ! うむうむ、戦うおなごの絵も定番でありつつ不朽の人気題材でおじゃ!」
 TSした自分自身だとは、口が裂けても言えなかった。

 お次は凛々しい美人、彼岸会 無量(p3p007169)のターン。もしかして本人の美人画かな? と予想を立てる観衆たち。だが、その予想はいい意味で裏切られる。
「こちら、とある令嬢の絵画です」
「おおこれは……画法も装束も当地とは趣を異にしておじゃるな。召し物は神使様のお国の、貴顕の婦女とお見受けするおじゃ」
 カムイグラの人々の想像する「美人画」とはだいぶ異なるが、描かれている少女の姿や気品に壱条少納言は深く心を動かされたよう。
 美人画慣れしている屋敷の人々も、初めて見る技法や装束の絵に興味深く見入っている。
「お姫様、だね。絹の肌に金糸の髪、赤い唇とまさにこっち側においての美しい少女の理想像だ」
 ルフナの言う通り、白い肌に金の髪が麗しい彼女は、美の理想。無量が己の絵姿よりも先に、あるツテで美術商より仕入れたという絵画である。
「如何でしょうか、壱条少納言様にはこの少女はどう映りましたか?」
「ふむ……麻呂としては高貴で可憐、清楚というところでおじゃ」
 笏を口元にやり考える少納言。

「実はこの絵画は彼女自身が画家に描かせた肖像画です」
「なんと。その姫御、相当な自信家でおじゃ!」
 ええ、と肯定し無量は続ける。
「私はこの絵画に二面性を見出しました。表は可憐さ、裏は高飛車さ」
 令嬢自身の依頼で描かせたと言われなければ画家や臣下たっての願い、彼女へ頼んでまで手掛けられた作品だと思うことだろう。
 しかし。そこには裏がある。彼女は自分が美しいと知っている。そこを踏まえてみると、目つきや口元にどことなく高飛車さが透けて見えてこないだろうか?
 殿方ってこういう目線好きでしょう? というアーリアの支援も飛んでくる。そう、単なる高慢さに留まらず、見方を変えればこれも美の個性。揺るぎない自信とも解釈できる。
 つまりこの肖像画を手掛けた画家は『受け取り手に依って相反する人間の表と裏』を絵筆だけで見事に表現しているのである。どちらの面が正解と言う事はない。可憐で清楚、高飛車で自信家、どちらも正しいのだ。
 想像と言う名の翼を広げ芸術の海を征く画家と言う存在が作品を生み出すにあたり追及する、一種の到達点。
 それはきっと、この絵だけでなく他の絵にも言えること。画家や絵師が文字通り命を削って作り上げたモノ。

「なるほど……まるで禅問答のように奥が深いでおじゃ」
「こちらを献上致します。私の話にほんの少しでも共感を頂けましたならば、以後は描いた画家の方々にも想いを馳せて頂けたらと思います」
 三つ指をついて一礼をする無量と、一瞬無音になる広間。そして、麻呂も例えたように禅問答を思わせる彼女のプレゼンへの万雷の拍手が響き渡るのだった。

「美人画……残念ながら私は、自分で美人と言えるほど、容姿に自信を持ってはいません」
「いやいや、そなたも十二分に愛くるしいでおじゃ」
 ソニアの言葉にマジツッコミしてしまう麻呂。
「ですが、美人画を持っていない、とは言っていませんよ」

 ダァーン! とソニアが掲げたのは、彼女とよく似た面立ちに同じライラック色の髪をした女性の肖像画。
「……これです! 私、四人姉妹の末っ子なのですが……こちら、私のお姉様……三女のソラお姉様の肖像なんです!」
「なるほど、姉君におじゃるか。よく似ておられるのう」
「ソラお姉様は凄いんです! 頭もとてもいいですし、私と違い、戦ってもとてもお強いですし! 好き嫌いは分かれてしまう方ですが、私にはとても優しくて、家出をしてしまったのもわた」
 ついつい始まるマシンガントーク。しかし、姉ではなく姉の肖像の話をしなくてはいけないんだった、と思い出してソニアは立ち止まる。

 アピールするのは姉の自信に満ちたかんばせ。美しくて凛々しい。そして纏う衣(そっくりのを頑張って自分で作っちゃった)に、脚線美のチラリズム。
「ちらりと覗いたおみ足も魅力的ですよね! 容姿そのものも相まってこれでは男の人が釘付けに……ああでもお姉様が素敵すぎてお姉様に見合う方がいらっしゃらない!! それではお姉様の血が絶えてしまう! それはダメ! お姉様が独身のまま生涯を終えるなんてそんなことがあっては!」
 マシンガンプレゼンをしながらびったんびったんと、陸に打ち上げられた鯉のように跳ねるソニア。
「麻呂は一人っ子でおじゃるからのう……姉妹愛、そういうのもいいものでおじゃ」
 個人的な憧れから、壱条少納言はソニアにうんうんと理解を示す。大丈夫?観客の皆さんちょっと引いてるけど。

「あら、ここは何してるところ? イベント会場?」
 先刻までのオーディエンスの盛り上がりの声を聞きつけて、興味津々で屋敷に上がり込んできたのはソニアの姉、ソラさんご本人。屋敷の人に見られても「あ、今日来ている神使様かな」くらいに思われて、うまい具合に不審がられない。
 そして、オーディエンスの使用人たちに紛れてこっそりと覗き込んだ視線の先には……自分の肖像画を手に、マシンガントークを繰り広げる妹。
「げぇっ! ソニア!」

 おねえさま は にげだした!

「あれ、お姉様? 気のせいでしょうか?」
 最愛のお姉様の声が聞こえたソニア。キノセイジャナイヨ。

 交代して順番はゼフィラに。
「ちょっと気恥ずかしいけど……流石に知り合いの絵を勝手に渡すわけにも行かないからなぁ」
 そう言って彼女が差し出したのは、冬の祝祭で着飾った自分の姿。異国のものだが、この服が盛装だというのは少納言にも使用人たちにも見て取れた。少しはにかんだ様子で葡萄酒の玻璃杯を傾ける、ぐらまぁな金髪美女である。
 己としては意外と気に入っている一枚だ。
「麗しいお嬢さんだ。自立した女性は美しいけど、エスコートさせてもらいたいのが男の性だよね」
「いつもの姿とのギャップ!キミもどうだい?なーんて!」
 ルフナとアーリアからの心強い援護射撃も飛んでくる。

「そなたでおじゃろう? よいよい、祭りで着飾ったおなごというのも風情あるものでおじゃ!」
「風景もステキだけど、神使様もステキ……」
 外見には気を使っているゼフィラ。それ故に麻呂からのご機嫌なコメントと、女性の観客からのコメントに笑顔がこぼれる。
「ところで少納言殿。少納言殿がお持ちの芸術作品って拝見できますか?」
「フム……普通の美人画であれば神使様にお見せもできよう。よいでおじゃ! 後ほどお見せするでおじゃ!」
 なんだかルンルンの麻呂。ゼフィラとしてはカムイグラの文化を学びたいだけなのだが、もしかして。同好の士と思われた……?

 そんでもって最後から二番目、稔と虚。
「美をお求めか。ならばこの俺を好きなだけ! 眺めることを許可してやらんでもな……何、おなごが良いと? はぁ、仕方ない」
『ちょ、この馬鹿ッ、お貴族様に対して無礼すぎる! 打首獄門とかハラキリの刑にされたらどーすんだよ!?』
 一つの体に二人の心。周囲の人々はわけわかめ……かと思いきや「ちょっと変わった神使様なのかな」とすんなり受け入れている。
 そして、自信満々に掲げるのは稔の妹、オリヴィアちゃんの美人画。選出基準は「男はレア物に弱い」だそうだが。
「天女様かや!?」
 天使、という単語に馴染みのないカムイグラの人々からは、口々に天女だ、飛天様だという言葉が漏れてくる。
 純情可憐、という言葉をヒトの形にしたかのような容姿に純白の翼、舞い散る花、品のある淡い緑のドレス。
「これはお兄さんもメロメロよねぇ~! 歌声も聞こえてきそう!」
「可憐な見た目ながらも弱きを守るために震えながら戦いの中に身を置く優しい子だよね!」
 愛らしさにノックアウトされる麻呂とオーディエンスへ、アーリア&ルフナの追撃が飛んでくる。
 そして虚のプレゼンがトドメとばかりに飛んでくる。
「このオリヴィアちゃんは秘境の森(深緑国)に住んでいる神人――うん、天女って考えてくれて構わない」
 天女の美人画、とどよめくオーディエンス。
 この絵は妖精や小鳥達と遊んでいる時の様子を描いた一枚。住まうのは此処から海を越えた遠国故に滅多に会えない。更に、オリヴィアは極度の恥ずかしがり屋。人前ではこれ程自然な笑顔は見られないだろう。
『ってことで、これマジで貴重な一枚ってわけ……良いだろ? 彼女はこの世で唯一、貴方の為だけに微笑んでくれるんだ』
「なんとそれ程までに貴重な天女様の美人画でおじゃるか! 頂戴するのが畏れ多いのう!」
 麻呂、この上ない笑顔。オリヴィアの絵に見とれる使用人達の中には、有難さ故か尊さ故か、涙ぐんで手を合わせる人まで出る始末。

 さて、最後はルフナ。彼の作戦はこうだ。精霊種である壱条少納言は言わば自然の化身。となればルフナの種族、幻想種らしい自然や獣と融和した姿を見せれば良い反応が得られるだろう、というもの。
「僕の持ってきた絵はこれだよ!」
 ルフナが自信ありげに差し出したのは、彼が巨大な猫に寄りかかって寝ているほのぼのとした絵。
「かわいいけど……」
「美人、画?」
 使用人達から戸惑いの声が漏れる。少年と猫の取り合わせは愛らしいけど、美人画とはちょっと違う。麻呂も首を傾げている。
「うーん、こうなったら……」
 繰り出されるのはルフナの秘蔵の隠し玉、二枚目の美人画。その内容は……褐色肌片目隠れ長耳ボンデージ弟属性ショタ(50代男性)(自画像)である。

 もう一度言おう。褐色肌片目隠れ長耳ボンデージ弟属性ショタ(50代男性)(自画像)である。

 カフェオレのような肌、紅顔の美少年であるが、流石に同性の「美人画」は、少納言でも「ない」と思われるが……? 案の定、麻呂は首を傾げる。だが、ある一人の識者を呼び寄せる。
「麻呂の『すとらいくぞぉん』から外れておるが……ばあや、ばあやはどう思うでおじゃ?」
「はい、ぼっちゃま。ばあやが参りましたよ。ほほほ、美人画は誠によいものですこと」
 ちょっとプルプルしている鬼人種の老婆――壱条大納言のばあや。オーディエンスの中からよろよろと杖を突いて進み出た彼女が、艶めかしい美少年の絵を一目見た瞬間。
 曲がった腰がシャッキリと伸び、身体の揺れが止まったのだ! なんということだろう。美少年は健康に良いのである!
「ぼっちゃま、有りです! 有りにございますよ!! うつくしき若衆の絵は幾ら見ても良きものにござります!」
「ということでおじゃる! 有りでおじゃ!!」
 使用人達も、沸いた。


 さて、祭りの後の壱条邸。
 この国の芸術を見せてもらうことになったゼフィラと、軽い気持ちでカムイグラのお酒を所望したら頂けることになったアーリア。それと、少納言にちょっとした取引を持ちかけたいヴォルペが屋敷に留まっていた。
 目的は三者三様。だが、此度の美人画のお礼として首尾よく事が進んだのは想像に難くない。

「カムイグラ最古の美人像……すっごい丸かった……」
「ふふふ、お米のお酒を瓶ごとゲットー」
「まずはツテ一個。縁って大事だよねえ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました!
 皆様にご持参いただいた美人画(複写)は無事に麻呂のコレクションへと加わり、麻呂は死なずに済みました。カムイグラの貴族社会からの評判もちょっぴりアップしたと思います。

 では、またご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
 

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