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シナリオ詳細

信仰に捧げられしサクリファイス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夜半過ぎ、星空に浮かぶ月に雲が陰る。
 その林に小さく風が吹き、枝葉が触れ合ってかさかさと揺れていた。
 カサカサ、カサカサ……。
 だが、林から聞こえてくるのは、それだけではなかった。
「ラバダ様、儀式の準備が整っております」
「うむ」
 紫色の光に満たされた室内。
 そこには十数人の信者に囲まれたローブ姿の男が何やら儀式を行っていた。
 小さな祭壇の上に載せられていたのは、手足をきつく縛り付けられた子猫だ。
 愛らしい姿をしたその猫は、ぐったりと気を失っている。
 それが儀式のいけにえとなることは想像に難くない。
 床に血で描かれる魔法陣。周囲にいた2人の教団員もぶつぶつと怪しげな呪文を唱えて儀式を助ける。
 やがて、猫から完全に生気が無くなると、魔法陣が光り輝き、何かが登場する。
 ケ、ケケッ……。
 現れたのは、多数の小悪魔達。
 それを見た幹部の男が口元を吊り上げて。
「見たか、これぞ我らが信仰の力! フェルマーク様は我らに力を与えたもうたのだ!!」
「「おおおぉぉぉ……!」」
 うつろな表情の信者達。とてもじゃないが、彼らに自我があるようには見えない。
「さあ、唱和せよ、我等フェルマークの光を!」
「「我等フェルマークの光を!」」
 その声はしばらく、林の中へと小さく響いていたのだった。


 正義と理想を掲げる聖教国ネメシス。
 イレギュラーズの活躍により『煉獄篇冠位』ベアトリーチェ・ラ・レーテは倒されたのは記憶に新しい。
 傷痕癒えぬこの国はなおも慢性的な人手不足に苛まれており、国を救った立役者であるローレットへと新たに依頼を託すことになる。

 幻想、ローレットにて。
「ったく、混乱に乗じてこそこそと……」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が呆れながら語るのは、天義の国内で活動を始める小規模の邪教集団のこと。
 FEL教団を名乗るその集団は、『フェルマーク』なる存在を信仰の対象とし、少しずつ規模を大きくしているのだという。
 現状、天義からの意向で、FEL教団の幹部を捉えてほしいという依頼が届いている。教団の情報を聞き出したいからだ。
「幹部の男はサバトによって悪魔を呼び出しているそうだ。戦闘の用意は必須だよ」
 オリヴィアは張り出された依頼書と地図を、興味を抱いたイレギュラーズ達へと手渡す。
 そこには詳細な情報が記されていた。
 教会内部には10数人の教団関係者が詰めていることが確認されているが、一般信者は解放してあげたい。
 彼らは犠牲者であり、救済対象であるからだ。
「不気味な相手さ。油断するんじゃないよ」
 依頼に向かうイレギュラーズ達へ、オリヴィアは最後にそう念押し、手を振って見送るのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 現状、復興中の天義において、怪しげな邪教を広めようとする一団があることが分かりました。
 拡大の一途を見せておりますので、それを止める一手として拠点の制圧を願います。

●概要
 フェルマークという名の存在を神として信仰する新興宗教FELが天義内で活動していることが分かりました。
 まずは、手近な拠点を叩き、情報収集を行う形です。

●敵
◎FEL教団幹部ラバダ
 ローブを纏った怪しげな男性教団員です。人間種、魔種ではありません。
 呪いの力とサバトによる召喚術を駆使し、攻撃を仕掛けてきます。

○FEL教団員×2体
 こちらも男性教団員で幹部ラバダの補佐を行っており、この宗教の教えに共感した連中です。
 こちらは魔力弾や影を使って相手を束縛する術に長けております。

○FEL一般信者10人
 勧誘させられた一般人です。戦闘力は然程高くはありません。
 催眠状態となってラバダに従っており、メイスを使った殴打をメインに攻撃を仕掛けます。
 催眠状態はラバダを倒すことで解くことができます。

○下級悪魔×8体
 全身黒い肌の10歳前後くらいの身長の悪魔で、背に翼を生やしております。
 武器は持たずに肉弾戦で攻撃する他、黒い炎を使って遠近問わず攻めてくるようです。

○フェルマーク
 今回は登場しませんが、FELで神として崇められている存在との情報があります。
 魔種だということは分かっていますが、それ以外の情報は不明です。

○状況
 使用されていない小規模な教会を使い、FEL教団は勧誘を行って規模を拡大しようとしております。
 その教え、信仰など、詳しくは分からない部分も多い教団であり、情報を集める為にも末端員を捕まえて事情を聴き出したい状況です。
 現場は郊外にある林に囲まれた一軒家の教会です。正面に大きな入り口と、裏手に勝手口があります。
 2階建てで、2階を教団員が移住空間として利用しているようです。
 現状、拠点及び拠点周辺の林に教団関係者以外の出入りはない為、無関係な人に被害が及ぶ可能性はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 信仰に捧げられしサクリファイス完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月30日 22時12分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員

リプレイ


 天義某所。
 夜、とある林に1人、また1人と信者らしき者が入っていく。
 その中にある小さな教会には、とある新興宗教集団が活動を行っているという。
「フェルマーク……悪魔を呼び出していると噂の教団ね」
 天義出身の貴族の娘、『新たな道へ』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)がその様子を注視する。
「火事場泥棒ならぬ火事場布教とは、とんでもねぇ奴等っス」
 鉄帝出身、肘から先が機械となった小柄な鉄騎種女性、『遺跡調査員』キャナル・リルガール(p3p008601)も多少緩さは感じさせる態度だが、けしからんと感じていた様子。
「故郷でもこういう火事場騒動の後は、怪しい宗教の勧誘が増えたもんだ……」
 青年の姿をした「邪神憑き」、『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はキャナルの言葉を受け、傭兵をしていた元の世界のことを思い出す。
 そして、そういうのに限って、根付かせたら不味いものばかりなのは、どの世界にいても同じらしい。
「悪魔崇拝ってだけでも入ろうと思わないはずだが、一体どう勧誘してるんだか……」
「何に祈るかは、個人の事なので僕がどうこうは思わない……が、しかし、悪魔へと落ちてしまったか」
 国のために戦う天義出身の騎士、『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)は、道を外しかけて信者となった人々を救うことも自分達の仕事だと判断して。
「……いや、天義の騎士として、この国に生きる者達は救わねばならない」
 彼らがこれ以上道を踏み外さぬよう、正しく人々を導くべきだとカイトは考える。
 なお、『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は違った観点でこの事件を見ている。
「復興に紛れて洗脳による邪教の拡大なんて……」
 話による限りでは、洗脳されて無理矢理信者にされているといった印象を受けていたポテトは、彼らの洗脳を解いて元の生活に戻れるようにしたいと語る。
「謎の邪教が蔓延ると聞き、人の人生を破壊する邪教は撃破しなけりゃいけない、と思うわけだネ」
 土気色の肌をした眼帯着用の『劫掠のバアル・ペオル』岩倉・鈴音(p3p006119)もポテトに同意する。
 見えざるモノを視る魔眼を持つ『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)、青い6枚の翼を持つ少年のような容姿をした『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)も、それぞれ思うことがあってこの依頼に参加していたようだ。
「聖職者としても天義の貴族としても、放置するわけにはいかないよね」
 そういえばと、スティアは作戦に当たって用意してきた伊達眼鏡を装着する。
「備えあれば患いなし!」
 合わせて、普段と印象が変わるよう変えた髪型も彼女は少し気にかけていた。
「犠牲者を全員助けられるように頑張るつもりだよ!」
 気合いを入れるスティアへとポテトは大きく頷いて。
「その為にも、この邪教の目的や詳細を調べよう」
「さっそく、正面班として入門希望者装い潜入だー」
 鈴音もまた拳を突き上げ、新興宗教教団FEL教団の調査に乗り出すのである。


 イレギュラーズ達は2班に分かれて行動を開始することになる。
 まずは、正面からの、新規入信者を装っての潜入班。
 スティアが正面入り口付近に立っていた教団員へと声をかける。
「ここに来れば入信できると聞いて来たんだけど、大丈夫かな?」
 話を聞いて興味を持ったというスティア。
 そこへ、鈴音もまた信者とおぼしき女性と共に行動していて。
「フェルマークの教えに興味あるネ。見てみたい」
 郊外で口コミやチラシといった手段で勧誘を行っていた信者とうまく接触できた鈴音は、共に参列者として内部へと入っていく。
 なお、鈴音は儀式用の動物としてカピブタも連れていたが、大いに喜ばれていたようである。
 ほぼ同じタイミング、マカライトもまた新規入信者を装い、入り口付近の教団員へと声をかける。
「これはこれは、フェルマーク様もさぞ、お喜びになることでしょう……」
 ここにきて、数人が一気に増える状況に教団員も笑顔で受け入れてくれるが、その理由が気になったようでマカライトへと尋ねてきた。
「自分は傭兵として各地を回っていたのだが……」
 そこでマカライトは身の上話を行い、導きを求めに来たことを窺わせながら返答する。
「至る所で破壊だ、天災だと恐ろしい事が起こる。日に日に起こる事が大きくなってきていて、この先行きが不安になって……」
「ええ、必ずやフェルマーク様は貴方をお救いくださることでしょう……」
 そうマカライトへと告げ、教団員は彼を中へと招き入れる。
 すでに、中にはスティアや鈴音が潜入しており、信者を中心に会話していた。
 事前に聞いていた下級悪魔の姿はまだ確認できない。
「へー、なるほど! フェルマーク様のことをもっと教えて欲しいな!」
 ギフト「天真爛漫」によってスティアは一般信者に好感情を抱かせ、フェルマークの情報を引き出そうとする。
 鈴音はというと、何らかの魔法をかけられることを警戒し、精神耐性をスキルとして用意しながらも、効いた振りをして無駄口を叩くことなく周囲の様子を観察する。
 合間に、鈴音もまた、フェルマークの教えについて尋ねる。
 教えについては、信ずるものは救われるといった単純なもの。
 ただ、その成就には、代償がつきもの。何か頭の対価なしには救いはないとしているらしい。
「フェルマークは元天義の人なんか? 犠牲が高価な良いものであるほどスゴいヤツを召喚できるんか?」
 出来るだけ情報が集められればと鈴音はさらに問いかける。
「…………」
 マカライトも内部の把握に努め、幹部や教団員の位置を把握する。
「ようこそ皆さん、私がこの地の現場指揮に当たるラバダと申します……」
 そんなこの地のお偉いさん……ローブを纏った怪しげな男の話、宗教の成り立ちを聞いていたマカライトは聞き耳を立てて、後から裏手より来る仲間達の動きを待つ。
 なお、正面付近にはキャメルが控え、裏手側にはポテト、カイトといったメンバーの姿が。
「すまない精霊たち。調べたいことがあるんだけど、手伝ってくれないか?」
 裏口付近から情報収集に当たるポテトは精霊に手伝ってもらい、この施設に地下室が存在しないことを探る。
 さらに、建物内の隠し部屋がないことを確認し、ポテトはさらにここの人達が大切にしている者の在処も精霊達へと問いかける。
「このままだとこの国はまた争いと悲しみに包まれる。私たちはそれを防ぎたいんだ」
 ――だから、手を貸してほしい。
 ポテトの呼びかけに精霊達が応える。
 淡い光が示したのは、礼拝堂の奥にある禍々しい像。
 程なくして、教団の幹部らしきラバダが教団員の力を借り、いくつかの生き物を生贄に捧げて……この場は、イレギュラーを避けるべく、鈴音のカピブタは使用せずに子猫のみを使用して。
 合わせて、その手前に描かれていく魔法陣。ラバダを含むFEL教団員達の詠唱は、耐性のない一般信者達の意識を失わせて。
 子猫達の意識が途絶え、力尽きていく中、魔法陣からは禍々しい光が立ち上り始める。
「ケケッ……」
 そこからは多数の悪魔達の姿が現れる。
「見たか、これぞ我らが信仰の力! フェルマーク様は我らに力を与えたもうたのだ!!」
「「おおおぉぉぉ……!」」
 うっとりとした信者達に交じり、正気のままのイレギュラーズに、教団員達が注目して。
「むむ、この神聖なる聖堂に異教徒が紛れておるな……!?」
 自身の意のままにならぬイレギュラーズの存在に気付き、ラバダが叫ぶ。
 すると、一般信者がメイスを手にし、イレギュラーズへと虚ろな視線を向けてくる。
「さあ、我等フェルマークを侵す者に裁きを!」
「「我等フェルマークを侵す者に裁きを!!」」
 明らかに旗色が悪くなりだした状況の中、そこまでばれているならと鈴音がスピーカーボムを使って叫ぶ。
「そこまでばれているのなら、毒を食うは皿まで! ものども、であえであえ~」
 すると、裏手側から指示を出したアリシスを含め、ポテトとカイトが。
 合わせ、スティアが正体を現して戦闘態勢を取り、さらに、正面側からキャナルが飛び込む。
「一発〆るっスよ」
 キャナルは素早く拳銃「サンダーレプリカ」を抜いて発砲し、この場の教団員達を牽制する。
 ともあれ、イレギュラーズ達は教団関係者と対し、この場の制圧を目指すのだった。


 教団幹部ラバダは信者や使役する悪魔達へと告げる。
「さあ、この場の異教徒に、我等がフェルマークの力を見せてやるのだ」
 教団関係者が距離を詰めてくる中、裏口から入ってきたカイトはすぐさま名乗りを上げる。
「天義の騎士、カイト・C・ロストレイン……参る!」
 そうして、彼はラバダを補佐する教団員2名を含めて強く気を引く。
 メイスで殴り掛かり、魔力弾を飛ばしてくる相手の攻撃は、タンク役としてスティアが請け負う。
「皆の盾となれるよう頑張るね」
 彼女は合わせて、ラバダへと終焉をもたらす氷結の花を咲かせる。
 だが、呪いの力で自らの力を高めるラバダは、平然とした態度でこちらに視線を投げかけてくる。
 聖堂内では、イレギュラーズと教団関係者の戦いが繰り広げられる。
「ケケッ……」
 呼び出された悪魔は黒い炎を発して来ようとするが、そのうちの1体へとここまで信者の振りを続けていたマカライトが片刃機械剣を煌めかせ、敵の体をバッサリと切り捨てた。
「悪いな、俺は無神教だし……邪神に憑かれてるんだわ」
 一撃で屠れるほど小悪魔も弱くはなかったようだが、まだいたのかと言わんばかりに受けた一撃は決してダメージが小さくなかったようだ。
 乱戦になる中、鈴音が英雄を讃える詩をうたって。
 歌声と共に、魔力を漲らせる彼女は、奮闘する仲間に力を与えていく。
「フェルマークの野望も今宵限りよ!」
 そんな鈴音の顔が悪党面に見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
 なお、こちらは樹の精であるポテト。
 彼女は調和の力を持って、教団関係者達から受ける攻撃で傷つく仲間に調和の力によって癒しをもたらす。
「できるだけ、不殺で捕らえられるよう頑張ろう」
 悪魔は論外としても、それ以外は全員人間種。命まで奪うことは避けたい。
 キャナルも入り口傍に陣取り、拳銃「サンダーレプリカ」から対物ライフルの弾丸による精密射撃で悪魔を狙い撃つ。
「銃火器は便利っスけどねー、原則『加減がキかない』のが難点といえば難点スよねー」
 キャナルの銃の威力は非常に高く、敵を見事に爆破していく。
(一般信者を巻き込まないよう注意しないとッスね)
 ただ、キャナルはしっかりと抑えるべきところは抑え、悪魔の数を減らしにかかっていた。

 さて、聖堂奥側では裏側から突入したメンバーを中心に、ラバダらFEL教団員を攻め落とそうとしていて。
「ラバダ、やめるんだ!」
 カイトは教団員を叩きつつ、相手に生死を促す。
「ほう、すでに私のことまで……これはここでの布教は潮どきですかな?」
 相手はこの2階を住居として利用しているという情報もあった。
、この拠点はフェイクということか。それとも……。
「少し手荒だが、相手が悪魔だ、あまり手加減は出来なくてね」
 放つは、全身の力を魔力変換した一撃。
 教団員ごとカイトはなぎ払い、圧倒的なる破壊力を見せつける。
「どうか、生きてくれ、こんな傷つける真似しておいて、言えた柄ではないんだが……!!」
 道を外していても、天義の民。できるなら、守ってあげたい相手だ。
 そんなローレット勢の攻勢がさほど強くないことを悟ったラバダ。
 入り口と裏口にはイレギュラーズが立っている。ならばと彼は聖堂の壁に躊躇なく教団員に穴を開けさせて。
「さすがにうわさに聞くローレット……。今の私では分が悪い」
 身を躍らせ、ラバダはイレギュラーズから距離を取る。
「逃がさないよ!」
 スティアが近づこうとするが、悪魔どもを盾にしたラバダはそのまま外へと向かう。
 不味いと判断したキャナルが射撃で相手の体を撃ち抜くが、それでもラバダを戦闘不能に追い込むには至らない。
「では、皆さん、ごきげんよう」
 口元から血を流す彼は早々にこの拠点に見切りをつけ、去って行ってしまったのだった。


「「我等フェルマークの光を……」」
 そう言葉を繰り返すFEL教団一般信者も含めれば、敵の数は多い。
 ラバダを倒せば、信者は無力化するという情報もあったが、逃走したラバダを倒すことが敵わなくなったこともあり、信者は依然としてこちらに敵対の意思を示したままメイスで殴り掛かってくる。
 とはいえ、信者は一般人であり、正面から戦えば負ける相手ではない。
 悪魔もそれほど強い相手ではなく、回復を手厚く布陣したローレット勢は手堅く相手を倒していく。
「これ以上は逃がさないよ!」
 スティアは教団員を止める為、千差万別の術を発現させる。
 一直線に伸びる神聖なる裁きの光が悪魔達を焼き払っていく。
「ゲギャアアアッ!!」
 スティアとしては叫ぶ悪魔はついでであり、教団員を無力化させたいところなのだが。
 教団員達も、少しずつ逃げようと外を目指すが、スティアとカイトがそいつらの退路を断つように立ち回る。
 ただ、この場には外に出る場が3ヵ所あり、全てを塞ぐのが難しい。
 まして、信者も小悪魔もまだ数が残っている。
 とどめを刺すべき相手と刺したくない相手が混じるとキャナルもその対処に難儀することになる。
 その為、キャナルは基本的にはトドメを前線のメンバーに任せ、相手の足止めや体力削りに徹していたようだ。
 マカライトも前線で片刃機械剣での攻撃を繰り返し、敵が固まる場所には魔砲を撃ち込んで相手を弱らせていく。
 鈴音は仲間達の動きに柔軟に対処し、自らのエスプリによる支援化に仲間を置きながらも天使の歌を響かせる。
 ポテトもまた、前線で多くの信者や小悪魔から攻撃を受ける仲間へ、天使の歌声を響かせていた。
「この教団の目的はなんだ?」
 念の為、ポテトは教団員へと呼び掛ける。
 もうこちらの目的はほぼ筒抜けだ。残念ながら、精霊による探査ではこれといった情報は得られなかった。
 生活に関しては最低限の行いしかしておらず、ラバダも極力足がつかぬよう活動していたのだろう。
 ならば、できる範囲で情報を引き出しておきたい。
「規模やどの程度で他の支部はどこにある?」
「…………」
 回復に回りながら、ポテトは問う。リーディングも使っていたが、相手にしっかりとブロッキングされてしまう。信者も多くを知らぬ状況であったようだし、相当に情報統制されているらしい。
 回復が手厚い分、ローレット勢には攻撃の手数が圧倒的に足りない。
 それが残る教団員にも付け入る隙となってしまって。
「此処を白堊の国と知ってて脅かすか、貴様等の目的はなんだ」
 カイトが話の通じる教団員達2人へと呼び掛ける。彼もまたリーディングを働かせて問いかけを行っていたが、やはり相手を語ろうともせず、思考を読まれぬよう対策もされてしまっていた。
「まさか、悪魔が人々の救済とは言うまい」
 その時、教団員の1人が影を操り、カイトの体を縛り上げた。
 すぐに回復に当たるメンバーがその治癒に当たろうとするが、小悪魔達が若干速い。残っていた悪魔が彼目がけて炎を浴びせかけると、カイトはパンドラを使って堪えることとなる。
 ただ、その間に教団員が一気に外へと駆け出す。
 教団員もそれなりに疲弊はしており、耐えられるかは微妙と考えたスティアは千変万化を放つのを躊躇する。
 ここで再びキャナルが射撃で倒そうとするが、飛び掛かってきた悪魔に遮られてしまう。
 キャナルも目の前の悪魔は撃破したが、2体の教団員は側面に開いた穴から逃げ出してしまう。
 ローレット勢に打つ手はなく。3人のFEL教団員を逃がす羽目になってしまったのだった。


 その後、イレギュラーズ達は残る一般信者の命を奪わぬよう意識を奪い、悪魔達には配慮なしに攻撃を繰り返して。
 キャナルが自律自走式の爆弾を浴びせかけたところへ、マカライトが近距離から外三光で斬撃を叩き込んで悪魔を地に伏してしまうと、カイトが猟犬の如く食らいつく一撃で別の1体を仕留めてみせる。
 これで一通り、敵対勢力を無力化させた一行。
 信者は息を残し、悪魔は全て殲滅。一見すれば確かに上場の成果にも見える。
 しかし、スティアは目覚めた信者達へと問いかけると、何も覚えていないと皆口を揃える。
「そもそも、なんで私はこんなところに……?」
 どうやら、教会に来たことすらも記憶に齟齬があるらしい。
 そこで、マカライトが念の為と魔眼を使って情報を引き出そうとする。
 信者達はここ1,2週間ほどの間にFEL教団から勧誘されたことは覚えていたが、それから後、ここに連れてこられてからしばらくの記憶が抜けてしまっていた。
 その原因は、教会自体に何か仕掛けられているのか、あの召喚の儀式か、はたまたラバダの説教か……。
 何かに一般人を何らかの催眠状態にする効果があるはずだが、それを突き止めるための情報は圧倒的に足りない。
「ちょっと分からないことが多すぎるね……」
 スティアもこれにはお手上げと両手を上げてしまう。
 教会2階フロアを含め、ポテトは精霊を使役し、マカライトも看破を使ってあらゆる場所を探っていく。
 カイトもまたできる限りの情報収集をと儀式に使われた物品などを回収してはみるものの、有益とまではいかぬようだ。
 ポテトは悔しそうに歯噛みして。
「やっとここまで復興したんだ。皆の平和を、笑顔を奪わせてなるものか」
 天義の地で、新たな脅威が野放しになってしまった。
 その事実をイレギュラーズ達は突き付けられながらも、重い足取りで報告へと戻ることにしたのだった。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
大変申し訳ありませんが、以上のような顛末とさせていただきました。
ご参加、ありがとうございました。

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