PandoraPartyProject

シナリオ詳細

A story for you.

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その本は、ひとりで読まねばなりません。
 その本は、最期までひと息に読み切らねばなりません。

 読む間、本を動かしてはいけません。
 読む間、片時も本から目を離してはいけません。

 本はたったひとりに読まれたがっています。
 本は最初から最後まで読破してくれる人を探しています。

 だから、声をかけられたとしても興味を逸らさないで。


 『あなた』は上記を守ることができましたか?
 できたのなら、きっと──本に気に入られたことでしょう!



「図書館の掃除を手伝ってもらえないか?」
 イレギュラーズたちに依頼をしたのは他でもない──同じイレギュラーズである赤羽・大地 (p3p004151)だった。
 彼の住み着いた広い図書館はその実、広さに見合うだけの蔵書数ではない。空の書架も珍しいとは言えないくらいにある。それでも本と建物の両方に維持の時間と労力は割かねばならないのが現状であった。
 本来ならば訪れた者に寄贈を願うくらいなのだが、仕事の間ばかりはちょっと待って欲しい。
「もうすぐ雨季だからナ」
「その前に本を干したり、図書館の掃除をしたいんだ。持ち込みは構わないが、掃除の後にしてくれるとわかりやすくて助かる」
 仲間からとはいえ、依頼は依頼だ。報酬ならぬバイト代もきっちり出されるということで、集まった仲間たちに勿論否やはない。
「それでは、汚れても良い服装の方がよろしいでしょうか」
「ああ、その方が良イ」
「はい! 脚立はありますか!」
 夜乃 幻 (p3p000824)へ頷く赤羽にエル・ウッドランド (p3p006713)が挙手をする。図書館と言えば大きい書架。高い場所の本。必然的に書架の天辺はそれより高いわけで──小柄なこの身では、脚立がなければ届かないかもしれないのである。
「本を取るための台が確か……まあ、必要なら普通の脚立も出すさ」
「なければ僕が用意してご覧にいれましょう」
 ひと時のまぼろしは、けれど幻の手にかかればほんの少しばかり具現化される。この世界からの囁かな贈物(ギフト)だ。
 一方で、確か物置に諸々置いてあったようなと大地は考える。脚立はあったはずだし、他にもはたきや箒といった掃除用具の類もあったはずだ。皆に来てもらうより先、そのあたりを確認した方が良いかもしれない。
「本も、干すんだよね……きっとぽかぽかに……」
 とろりと金色の瞳が眠気に蕩けたニャムリ (p3p008365)は今にも寝てしまいそうだ。いや、先ほどからずっと眠そうではあったのだけれど──まあ、ちゃんと働いてくれると信じようではないか。
「では、いつ頃か相談しなくてはなりませんね」
「そうだね。1日がかりだろうし、予定の空いている日を話し合おうか」
 ダルタニア (p3p001301)の言葉にマリア・レイシス (p3p006685)が首肯する。朝から夕方の日が沈むまでは本を出来る限り干さなければならないし、その間と──もし終わらなければだが──その後も図書館の掃除は必要だ。
 こうして6名のイレギュラーズは予定を調整したうえで、幻想国内にある自由図書館へ赴いたのだった。



「改めて、よろしく頼む」
「いつもは静かニ、なんて言っちゃあいるガ。正直退屈なんダ、話しながら掃除しないカ?」
 埃の舞う中で会話なんて、と思うのであればマスクを付ければ良いのである。各々口元に布やマスクを当て、他愛もない話をぽつぽつと交わしながら作業を進めていった。
「次はこちらです」
「わかった……ふわぁ……」
 幻の運んできた蔵書をニャムリが受け取り。
「あ、やっぱり脚立必要です!」
「持ってくる、待っててくれ」
 エルの言葉に大地が動き。
「こちらも埃がいっぱいですね」
 ダルタニアは雑巾で棚を拭いて。
「本当だ。もしかしてあの棚も……」
 同じように雑巾を手にしていたマリアが別の棚へと向かっていく。
 そうして午前中が過ぎ、お昼休憩を取って、午後に入る。

 その本を取ったのは、一体誰だっただろうか。
 その本を開いたのは、一体誰だっただろうか。
 その本を読み終えたのは──誰だっただろうか。

 分厚い書物が歓喜に震える。
 嗚呼、嗚呼、やっとだ、やっと現れた!!!
 頁が嵩増しされ過ぎたがゆえに読破する者がめっきり減ってしまった本を『読みきった』。
 本から闇が溢れ、それは人の影を模して形をとっていく。その頃には異変を感じ取った仲間たちが全員駆けつけたところだった。
「あれは……!?」
「俺も知らない」
「紛れ込んでいたようだナ」
 本来であれば図書館で戦闘などもっての外──けれどこればかりはどうしようもなく、そして今回ばかりは幸いなことに虫干ししているおかげで周囲の棚に本はない。
 やるしかない。イレギュラーズたちは各々武器に手をかける。まさかこんなタイミングで使う機会があるとは思わなかったが──備えあれば憂いなし、というものであった。

GMコメント

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●成功条件
 人食い魔本の鎮静化

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。初見の相手ですので戦いながら見極める必要があります。

●人食い魔本『貴方の為の物語』
 とても分厚い本。中身は短編集でした。老若男女問わず、多くの人々の半生が綴られています。
 エネミーとして本性を現した魔本は人影(後述)を操り、今回の読者を食べてしまう心積もりのようです。
 この魔本は人影に隠れており、影をすべて倒さなければ倒すことができません。
 特殊抵抗と命中に長けており、防御技術は低めです。
 精神的なBS攻撃などを仕掛けてきますが全貌は見えません。

影隠れ:特殊スキル。人影が全滅するまであらゆる攻撃をガードします。

●人影×15
 真っ黒な影です。自我はなく、魔本に操られるがまま読者を倒して吸収させようとします。
 吸収されるのは1人ですが、もしそうなってしまった場合は同時に失敗となりますので、十分ご注意ください。言葉通りの帰らぬ人となります。
 これらは攻撃力とHPが長けており、特殊抵抗は低めです。
 影を伸ばして締め上げたり、槍のように鋭くさせて一突きする攻撃方法です。その際に異常状態になる可能性があります。

●フィールド
 自由図書館内。
 比較的広めですが、書架の間に入ってしまうと途端に視界・動作の制限がかかります。
 また大きく移動すると本が大量に移動された場所へ近づいてしまうため、ご注意ください。

●特殊ルール
 『読者』を1人決めてください。
 これは魔本を読破してしまった──お気に入りとなった人物になります。
 絶対に1人です。2人とかはダメです。大事なことは何度でも言う。1人です。

●ご挨拶
 リクエストありがとうございます! 愁です。
 図書館掃除のバイト中でしたが、武器は自分の一部なんだとか虫の知らせとか良い具合に理由をつけて武具・防具等を持っていたことになります。
 死亡判定ありなので頑張ってください。難易度としてはNormalです。ちゃんと頑張れば相応の結果がってくると思います。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • A story for you.完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月08日 22時10分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ダルタニア(p3p001301)
魔導神官戦士
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ニャムリ(p3p008365)
繋げる夢

リプレイ


 本を読んだのはだぁれ?
 1人で熱心に読んでくれたのはだぁれ?

 そう貴女。貴女だよ。

 これは貴女の為の物語。そしていつか誰かの為の物語。
 その糧となれ──マリア・レイシス!



 『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)は息を呑んで瞳にソレを映していた。読みきったそれから溢れ出した闇を。それが形作る人影を。数々の経験を積んだイレギュラーズたる彼女は確信めいた直感に閃く──このままではアレに取り込まれる、と。
「あれは……!?」
「まさかあんなものが現れるとは」
 『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)と『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)が駆けつけ武器を構える。互いに用意が良いことだと視線を交錯させるが、それも長くは続かない。
「まだ掃除が残っているんだからね」
 さっさと終わらせなきゃ、とエルは狙撃手の目で人影へ1発。立ち上るような人影に遮られ、そもそも元凶たる本には手が出せない。
「紛れ込んでいたようだナ」
 固まっている人影に黒き霧を放つ『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)は小さく唇を噛んだ。失態、図書館司書の名折れ。そんな言葉が脳裏をよぎる。あんな危険な本を書架に置いていたなんて、それに気付かなかったなてなんたることだ。
 しかしここで落ち込んでいれば、マリアが取り込まれてしまう。
「厄介な状況になったね! みんな!」
 素早く影を躱しながら雷撃を放つマリアは逃げ道を確保し、味方や書架を遮蔽物としながらも影から距離をとる。自らの闇へ雷撃を吸収するように消していった影はゆらり、と揺れてマリアの方へ動き始めた。
(これは……結構な仕事になりそうだね……?)
 眠たげな目をぱちり。『いつもすやすや』ニャムリ(p3p008365)はマリアへと伸ばされるような影の動きに立ちはだかる。思うようになどさせるものか。その後方から『魔導神官戦士』ダルタニア(p3p001301)の遠術が敵へと命中する。
「……人を喰らう、悪魔の書。魔本ですか」
 ダルタニアは武器を構えながら厳しい視線で魔本を見やる。マリアがその本へ手を伸ばす様を見かけていたが、何となく嫌な予感がしたのだ。当たらなければと思っていたが、不幸にも当たってしまったわけである。
 下手に事を構える必要がないと思っていただけに、完全な計算外というやつだった。
「壊してしまうのは大変惜しいですが、僕たちにはまだやらなければならないことが御座いますからね」
 まだ本の片付けも、虫干しも、掃除だって終わっていない。日が落ちてからでは遅いのだと幻は溜めていた力を瞬発力へ変えるかのように床を蹴る。その視線がちらりと捉えるのはあちらこちらに残されている本だ。
 本は知識を得るもの。
 本は誰かから誰かへと記した情報を伝えるもの。
 幻としては知識や情報が奇術の貴重なタネと成り得る。だからこそ壊すことは本意でない、が──だからといって仲間を渡すわけにはいかない。
「奇跡を起こしてみせましょう」
 青薔薇と羽を休める蝶のステッキを振れば、奇術が人影へと夢を魅せる。それらがどのような者たちであったのか、そもそも人間であったのかすら定かではないが──想わずにはいられないような夢を。立て続けに魅せた幻は敵が動く前にその身をはるか後方へと引かせる。
 不自然にうごめく人影はともすれば踊っているようにも見えるが、それは互いに体を打ち付けることもあればイレギュラーズへ──本を手にした、読者たるマリアへも影を伸ばす。ニャムリはそれに気付いて半分ほどしか開いていなかった目をさらに細めた。ひくひく、と猫ヒゲが震える。
「……『ぼく達を狙った攻撃』にしては、狙いに偏りがあるね……?」
「そうみたいだ! 私が妙に狙われているようだね!」
 ニャムリより後方へとやってきた人影へマリアは蹴りを放つ。紅雷をまとったそれはさらに神速の連続蹴りを見舞い、かの影を痛めつけた。
 人影が悲鳴をあげているのだろうが、その声はなく。何もかもがまるで闇に呑まれてしまったようである。
「それ以上は近づかないでもらいましょうか」
 数度の発砲音。勘の良い遠距離射撃で敵を阻害するエルへもまた、溢れんばかりの影が忍び寄る。影の突きに翻弄されたエルはその体制を崩すが──。
「……させないからね?」
 人影の思いどおりなどさせるものか、とニャムリがすかさず立て直し、傷を癒さんと支援する。ダルタニアも仲間の傷の具合を見てライトヒールを飛ばして。
「図書館のルールは守れるようだガ……それなら、大人しくもしてもらおうカ?」
 魔本の唸りこそ煩かったものの、影たちはうんともすんとも言いやしない。赤羽はノーモーションで衝術を放ち、マリアへ近づく人影を打ちのめした。集中攻撃を食らわされた人影はゆらりとひときわ大きく揺れたかと思えば空気に溶けて消えてしまう。
 少しずつ、しかし確実に数を減らす。その間にもダルタニアとニャムリが戦線維持し、なんとなしに集中しそうになるマリアへの攻撃を周囲がサポートしていなし、蹴散らしながら応戦する。敵の攻撃は重く、何らかに侵食されるような心地がするがニャムリの支援が頼もしい。
「私も命が惜しいんだ。そう易々と取り込まれるわけにはいかないよ!」
 マリアは複雑に絡み合う影を自らの運命力で切り開く。ここが自身の終わりじゃない。こんな場所で終わってたまるものか!
「……見て、魔本が……」
「ああ、……薄くなってる」
 ニャムリの言葉に大地が頷く。2人の視線は幾人かの人影を倒したことにより、少しずつ姿の見えてきた魔本へ注がれていた。
 1、2人ではわからなかっただろうが、半分にも到達しようという今ではすっかり減った頁がわかる。それでもまだ『薄い』というレベルではないのだが、確実に薄くなっていた。
「喰らった人がこの人影……ということですか」
「じゃあ私も取り込まれたらああなるわけだ。それはごめんだね!」
 ダルタニアは仲間の傷を癒しながらその様を見て呟く。マリアはなお迫りくる影から逃れながら雷撃を撃ち込んだ。かぶせるようにエルの射撃が入り、大地は回復手へ声をかけながら黒羽のペンで文字を描く。
 ──ぼとり。
 落ちたのは椿でも人の首でもなく、影。傷口など見つけようもない切り口ごと、影は図書館へ霧散していく。
「多くの人の人生を食べてきたツケを吐き出して頂きますよ」
 幻の魅せる奇跡の数々が敵を翻弄し、無に還し。立ちはだかっていた霧が晴れ、魔本が闇を纏って頁を揺らした。消えた人影から魔本へと標的を切り替えた幻は、なお止めどなく無数の青い蝶を操り覆いつくす。幾度となく纏わりつき、蜜を吸うように力を奪う蝶に魔本が地鳴りのような唸り声をあげた。
「煩いナ。ここではしずかにするべきだゾ」
 束ねられた其れは、今しがた解放された死者の怨念。血を吸ったかのような色が弧を描いて魔本へと飛んでいく。
「悪いが倒させてもらう!」
「ええ、全力でボロボロのガラクタにしてやりましょう!」
 マリアが雷を纏った攻撃を撃ち込み、エルのマグナム弾が追随する。数々の攻撃に翻弄されていく魔本の頁は裂かれ、破かれ、確実にその力は削がれていた。
 もうひと押し。そんな思いがダルタニアを攻勢へ導く。
「あとは、終わらせる方が先ですね」
 彼が攻撃へ撃って出たことで回復手はニャムリ1人となった。敵を食い止め味方の支援もしていた彼女は満身創痍であったが、ここで負けるわけにはいかない。最後まで踏ん張らなければと敵をひと時の夢へと誘っていく。
 ──うつらうつら。すてきなゆめへ。
 見る夢は彼女の力へ。敵から得た力でニャムリは味方を回復する。幻は誰もの射程範囲外から俊敏に近づいて、そのステッキを振った。
「──僕達のレイシス様は、渡しません」



 ぱさり。ソレが落ちた音は、驚くほどに小さかった。終わりを告げるその音は、戦いの重さに反して驚くほどに軽かった。
 ニャムリがそっと近づき、もう何も起きないことを確かめて薄くなった本を拾い上げる。薄っぺらい、絵本のようなページ数の本だ。
「大変なことに巻き込んですまなかった……」
 頭を下げるのはこの図書館の主たる大地だ。折角手伝いにきてもらったのに、まさかこのような事態になるとは。臨機応変に応戦し倒せたから良かったものの、もしも屈していたならば皆──特にマリアの命はなかっただろう。
 皆へのバイト代は用意してある。けれどこのようなことに巻き込んでしまっては、この代金だけではいさよならと言うわけにもいくまい。
「好きな本があれば持っていってくれ。危険なのはもう無い筈だ」
 予定外の”仕事”で皆疲れているだろう。帰っても良いと言う赤羽に皆はけれどと視線を向けた。
「戦闘をしたので、ここが散らばっていますし」
「本の片づけや虫干しも終わっていませんからね」
 ダルタニアの言葉に幻が頷き、早速と動き始める。おもいっきりやったからね、と後に続くのはエルだ。
 機動力を生かして幻がせかせかと本の出し入れをし、それらを他のメンバーが虫干ししたり積み上げたりと整理する。折角来ているのだ、今日中に終わらせてしまいたい。
「また魔本なのて出てきたら、流石に無理そうですが」
「もうないだろう。……恐らく、だが」
 渋面を浮かべる大地。けれども今しがたの前科があるだけに強くは言えない。そんな彼に小さく苦笑を浮かべた幻は本を数冊抱え込んだ。
「そうならないように祈りましょう。終わったら本を読んでもいいでしょうか?」
「それは勿論」
 気になる本があったのだろう。頷いて書架へ向かう幻を見送った大地は、ニャムリに声をかけられて振り返る。本の保管記録を見たいという言葉に、大地はしまってあった書類を引っ張り出した。
「これだな。見たいのは魔本の記録か」
 首肯したニャムリが視線を書類へ落とす。一覧を視線で追い、該当のものを見つけると本棚の凹み具合と見比べた。
 保管記録ではずっと前から1冊の本のみがここへ置かれていたことになっている。何かと配置を交換したという記録もない。だというのに──本棚についた僅かな凹みや傷は、明らかに複数の本が入れ替わりで置かれたように痕跡を残している。
「どんどん大きな本と、入れ替えたんじゃなくて……この本がどんどん大きくなっていったって事なんだろうね、やっぱり……」
 視線を向けた先にはテーブルがあり、その上に件の魔本が置かれている。薄っぺらくなったそれは大した重さにもならないだろうが、先ほどイレギュラーズへ牙を剥いてきたあの時は辞書のような分厚さだった。またあのようなことになっては大変だろう。
「俺のギフトで食べちまうのも憚られるが……」
 大地に食された本は消えてしまうし、このまま放置しておくよりは良いだろう。けれども魔本なる存在を『食べる』ことは流石に引けるものもある。大した栄養にならないどころか、毒にでもなるんじゃなかろうか。
 しかし。
「ならいっソ、燃やしちまう方が良いんじゃねえカ? 大地は乗り気じゃないようだがなァ」
 彼であり、彼でない言葉。赤羽の言葉通りに渋面を浮かべた彼は魔本を手に取る。いくらただの本でないとは言っても、本好きとしてはそれを燃やす行為自体が看過できるものではなかった。
 その本の名は『A story for you.』──貴方の為の物語。
 意を決して表紙を開いてみると、そこには白紙の頁しかない。あれだけ分厚かった中身は抜けてしまって、今や空っぽなのだ。

 まるで──これからを書いてくれと、言わんばかりに。

成否

成功

MVP

ニャムリ(p3p008365)
繋げる夢

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 初めて6名シナリオを担当させて頂いたため、ほんの少しばかり新鮮でした。

 それではまたのご縁をお待ちしております。この度はご発注ありがとうございました!

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