PandoraPartyProject

シナリオ詳細

勇者、村を焼く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●奇妙な村
「あはは、今日も村は幸せだねえ」

 ここは片田舎にあるインサーン村。
 のどかで平和な、どこにでもある田園風景が続いている。

「そうさ。村の掟を守っていれば、ここはいつまでも平和なんだよ」

 行き交う村人たちは、にこにこと微笑み、訪れた者たちを迎え入れる。

「はあ、落ち着く。オラたち初心者冒険者なんだけど……。正直冒険ってガラじゃなかったのかもなあ」

 出された正体不明の飲み物を啜り、農民上がりの戦士ダイムは本音を吐露した。

「いや、まったくでござるなぁ。ここはよいところでござるぅ」

 とろんとした目で、自称忍者のバコヤシも同意した。
 吹く風は済んでいて、日向は暖かい。
 田園風景は、争いとは無縁のようである。

「大体、勇者とかなんなんですかね。大したことできないくせに」
「そうだよなあ。女の子たち見捨ててスライムまみれにしちゃったし」

 パーティの自称勇者はスマホとかいう小さな板ばかりいじくっていて役に立たない。
 普段は弱虫の少年盗賊のショータと守りに関しては自信のあるタンク騎士ケインが愚痴を言い合う。

「まあまあ、外のことなんか忘れて、ず~っとゆっくりしていってくださいよ」

 村人たちが、謎の香草が乗った食事を彼らに差し出す。

「ああ、そろそろ“儀式”の時間ですんで。食べ終わったらあちらの小屋へどうぞ」

 インサーン村に迷い込んだ冒険者たちは、村人たちから歓待を受け、薪や藁が山ほど積まれた小屋へと案内される。
 小屋の傍らには、解読不能の文字が刻まれた奇妙な石碑があった。
 その小屋を取り囲むように、盛り土された土饅頭がいくつもある。

「さあて。豊作だなぁ」
「んだんだ。今度も獲物はなかなかだ」
「そんじゃあ、“儀式”を始めるとするべ」
「“シビト様”たちもお喜びになる」

 いい気になっている冒険者たちを見て、ささやき合う村人たち。その口元には、牙がちらりと見え、目も妖しげな光を放っている。
 冒険者たちを小屋へと案内すると、土饅頭から何かが這い出てくる気配がある。

「あ、あの村、焼かなくちゃ……!」

 謎の村に立ち寄り、すっかり骨抜きにされた仲間たちを見たスマホ勇者のホタローは、その様子を動画でこっそりと撮影していた。

●これから一緒に村を焼こう!
「あの村を焼かなくちゃあいけないんですよ!」

 ギルド・ローレットに訪れたスマホ勇者ホタローは力説する。
 彼が撮影した動画ファイルを撮影すると、仲間が押し込められた小屋を取り囲んで奇妙な踊りをする村人と、土饅頭から這い出てくる何かが映っていた。

「アンデッドってやつじゃないですかこれ!」

 動画を確認すると、人の形をした何かが蠢き、村人たちが石碑を崇拝している。
 異様で、邪悪なものの存在を感じさせる光景であった。

「あー。たぶんグールなのです、これ」

 『新米情報屋』ユーリカ・ユリカ(p3n000003)は動画に映っている“シビト様”と崇められるそれをそう識別した。どうも、ホタローの仲間たちはグールたちが死を崇めるインサーン村で、儀式の生贄に捧げられようとしているらしい。

「だろ? やっぱあの村、焼くしかないって!」

 仲間を助け出し、無害な村人を装うグールが行なう邪悪な儀式を阻止し、住処となっているインサーン村を根こそぎ焼いてしまいたい――。
 ホタローは再三そのように主張した。

「村を焼くかどうかはともかく、冒険者は助け出さなけれラならないのです」

GMコメント

■このシナリオについて
 皆さんこんちわ。解谷アキラです。
 邪悪な儀式を行なう村に迷い込んでしまった冒険者を救い出し、勇者とともに村を焼くかどうかを決めるシナリオです。

・インサーン村
 一見するとのどかで平和な村ですが、村人たちは迷い込んできた人間を油断させ、貪ろうとするグールたちです。
 “シビト様”という彼らの神を祀り、捧げものをする儀式をしています。

・グール
 人肉を貪るという怪物です。人間にも化けられます。全部で10体ほどでてきます。

・村の状況
 シビト様に捧げる儀式のために、生贄は小屋に放り込まれます。
 貪った後、火にかけて生贄とするようです。
 周辺には土饅頭があり、ゾンビやスケルトンといったアンデッドが埋まっています。
 土饅頭は30個ほどあります。

・シビト様
 グールが信仰対象とするトーテムです。
 死の礼賛を擬人化した神です。シナリオに登場するモンスターというわけではなく。あくまで信仰対象です。
 アンデッドは死の祝福を受けた対象であると解釈するこの村独自の教えがあります。

・生贄
農民上がりの戦士ダイム(♂ 18)
タンク騎士ケイン(♂ 20)
自称忍者バコヤシ(♂ 16)
弱虫若年盗賊ショータ(♂ 13)

 生贄候補は以上の4名で、いずれも初心者冒険者です。恍惚状態で小屋に放り込まれています。

・スマホ勇者ホタロー
 スマホを持ったウォーカーの勇者で、生贄は彼のパーティの仲間です。仲間と同じく初心者冒険者で、案内はしてくれますが役に立ちません。

・村を焼く
 戦闘終了後のオプションとなります。プレイングで送ってください。
 焼きながら戦闘をしても、描写は戦闘後となります。
 なお、村を焼かないという選択肢もありますが、相談で意思統一を行なってください。
 プレイングで統一の意思が確認できなかった場合、ホタローと一緒に焼きます。
 なお、この村には生贄にされる冒険者以外に人間はいません。全員グールかアンデッドです。

 それでは、よろしくお願いします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 勇者、村を焼く完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)
天翔鉱龍
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
糸杉・秋葉(p3p008533)
黄泉醜女
ヴァージニア・エメリー・イースデイル(p3p008559)
魔術令嬢

リプレイ

「村を燃やすってんで止めに来たが……なるほど、グールの村か」
「焼け焼けってずいぶんと短絡的な勇者ですねえ……ま、それがオーダーなら焼きますけど」

 丘の上から、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)と『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はその村を見下ろしていた。
 普段、利香)は放火魔を止める側である。
 それが、巡り巡って村を焼き払う側になるというのも不思議な縁である。

「でも、あの村ぜってえヤベえんですよ!!」

 ふたりの傍らでそう主張するのは、『自称スマホ勇者』のホタローである。
 一見すると、平和そうなインサーン村を焼き払ってしまおうと強硬に主張していた。
 そんなホタローに対し、アランの鋭い視線が向けられる。
 アランは、自身が勇者に相応しいとは微塵も思わない。
 しかし、この自称スマホ勇者は、先程からその称号を持つ者がしてはならない言動をしている。
 言いたいことはいろいろあるが、今は引っ込めていた。

「まあ、焼くとかいう前に確認しておくが、お前の仲間が捕まっているんだろ?」
「ええ、ダイム、バコヤシ、ケイン、ショータの4人っす。もう、俺の足ばっか引っ張るやつらなんすよ」

 これもまた、アランの気持ちをざわつかせた。
 終わった後に説教する点であろう。

「人を騙して生贄にしちゃうアンデットの村なんて放っておけないよね」

 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)も、は捕まった4人の救出が必要だと判断した。
 救出を終えれば、やはりこの村は焼かねばならないとも思っている。

「村を焼いても良いと聞いて、アカツキ・アマギ参上したのじゃ」

 一方、『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は燃やす気満々でやってきていた。
 陰惨で邪悪な村を、炎によって灰燼に帰さねばならない。なぜだか心躍るのである。

「そうなんですよ! 焼かないと!」
「任せよ。妾、こういう依頼を待っておったんじゃよな―――!」

 どこかうきうきしたようで、ホタローに答える。
 村を焼く、この甘美な言葉にWAKUWAKUが止まらない表情で進んでいった。

「人に化けて実害も出す邪教のグール、なんて放置できないよね……」

 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は、言い聞かせるように呟いた。

「人知れぬ秘境にでも隠れ潜んでいれば良い物を――という訳にはいかないんだろうね」

 おとなしくしていれば、グールであろうが放置はされたかもしれない。
 しかし、そうもいかぬ事情もあるのだろう。
 彼らは、食人鬼である。

「どの道、死を至上にする教義なんて相容れる訳もなし……憂いなく、完全に根絶やしにさせてもらおうかっ」

 こうして、焼き払わねばならないと自らに言い聞かせる。

「アンデッドの村とは……それも人に擬態するほどの力を持っているとなると……捨て置くわけにはいきませんね」

 『魔術令嬢』ヴァージニア・エメリー・イースデイル(p3p008559)も、やはりこの村を放置しておくわけにはいかないと燃やすつもりである。

「これ以上、被害が広がる前に早急に対処せねばならないですね……囚われた方々を助けるためにも、急ぎましょう」

 急襲せねばならないと、仲間たちにもその判断を伝えた。
 邪悪な村を焼き払うにしても、まずは捕らえられたホタローの仲間を救出しなくてはならない。
 助け出したなら、遠慮なく火をかけることができる。

「アンデッドの巣窟となると何が潜んでるかわかんないし、こりゃ確かに燃やすしかないか」

 『天晶鉱龍』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)も、村を燃やすしかないと決意した。
 信仰について、口出しするつもりはない。
 しかし、通りかかった人々を生贄に捧げるとなると話は別である。

「いやはや……グールが支配する村とか、生者にとってまったく安心できない村なんて作ってほしくないわね」

 勇者にして巫女、糸杉秋葉もまた村を焼かねばならぬと決意したひとりである。
 グールが支配し、生者を捧げものとするような邪悪な村は浄化するしかない。

「……あっ、でも決して村燃やすの愉しいって言う放火魔みたいなわけじゃないからね。そう、あくまで彼らの浄化の為に村を燃やそうぜ! ……な精神なんだからね! そこのところ、勘違いしないでよね!」

 誰かに言い訳するように呟いている秋葉であった。
 決して、村への放火が愉しそうと思っているわけではない、断じてないのだ。
 あくまでも、浄化のためなのである。

●仲間たちの救出
「隠れてないで出てくださいよ! リカちゃんと遊びましょ!」

 小屋の周辺ある土饅頭が並ぶ中で、利香が言い放った。
 助け出している最中に、アンデッドに襲撃させるよりはさきに片づけてしまおうという判断であった。
 すると、出るわ出るわ、どんどん土の中からゾンビ、スケルトンたちが湧き出してくる。

「妾一番乗り! ということで中の様子をちらっと……お、どうやら無事のようじゃな?」

 アマギが小屋の扉を開けると、惚けた表情の4人の冒険者たちが押し込められていた。

「……まだ無事そうだね」

 小屋の中に入ったカインが、ホタローの4人の仲間たちが捕らえられているという小屋を目指した。
 ェクセレリァスも、小屋の屋根に飛行能力で飛び乗った。
 このインサーン村の人々は一見すると人間と変わらないが、そっくりに化けられる能力を持っている。発見されると、かなり厄介なことになるだろう。
 小屋の中には、長テーブルが置いてあり、食器が並べられている。
 小屋の奥には藁人形でできた祭壇とくすんだ色の大きなまな板が置かれていることから、シビト様に捧げてから食すものと思われる。

「これは……早く助け出したほうがよろしいですね」

 ヴァージニアも、4人の様子にただならぬものを感じていた。彼らは、捧げられ、食われようとしていたようだ。
 外では、すでに利香がアンデッドたちをその身に集めている。

「魅力的な瘴気(かおり)でしょう? 何せ彷徨える魂を喰らう悪魔のフェロモンですからねえ…アンデッドにはたまらないはずですよ!」

 チャームによって集まったスケルトン、ゾンビたち。そしてグールまでもがやってくる。

「なんてことだ、シビト様に捧げる生贄がよそ者にっ!!」
「ああっ、不届き者がシビト様を愚弄しておる!」
「殺せ、殺せ……!」
「死の祝福を与えて浄化するのじゃ!」

 グールたちも、騒ぎに気づいて駆けつけてくる。
 手には包丁や農具を振り立て、のどかな村の村人という化けの皮を脱ぎ捨てて迫ってきた。

「出てきたね、グールたちも!」

 焔は、小屋を背にして、守るように戦う。
 緋燕、炎縛札と技を炎を出す技を交えながらアンデッドたちを斬り払う。

「よし、ギア・ゼロ――」

 アランは、自身のリミッターを外す。
 群がってくるゾンビ、スケルトンを相手に大剣を構え、振るった。

「ッし! 一刀だけでも案外イケるな…!」

 集まったアンデッドが、まとめて薙ぎ払われる。
 屋根の上に位置取ったェクセレリァスが、MFCFC・凍雷を使用した。
 無数の疑似使い魔が刃を発生させて群がっていく。
 中を確認したカインも、屋根に飛び乗って

「なるべく這い出てくる前に火葬したいところじゃのう……土饅頭から焼き饅頭へのジョブチェンジを斡旋じゃ」

 焼き饅頭――。
 土饅頭に埋まったアンデッドごと、盛大に火葬にしたいところであるが、アマギはまずチェインライトニングでその群れを鞭打った。

「ぐおっ!? お、おのれ……!」

 グールたちも、そのままやられてなるものかと、アンデッドを率いて押し寄せてくる。
 ダブルクリメーションによって、そのグールを狙い撃ちにして燃やす。
 ヴァージニアも、ライトニングでまとめて薙ぎ倒していった。

「お、おい、しっかりしろ! お前たちのために助けを呼んできたんだかんな!」
「う、ううん……。し、しあわせ……」
「目を覚ませ、ほらぁ!!」

 イレギュラーズが交戦し、アンデッドを食い止めている間にホタローは四人の頬を叩いて回った。
 小屋にいる4人は、朦朧としながらもなんとかホタローに連れ出される。

「げっ!? あ、あれは村の人々……」
「あいつらはお前らを騙したグールだったんだよ!」

 バコヤシ、ショータ、ダイム、ケインの4人もようやく正気に戻った。

「では、冥神“黄泉津伊邪那美”の巫女勇者、糸杉秋葉参る!」

 屋根の上に上った秋葉が名乗りを上げ、アンデッドの大群を惹きつけているうちに退散を始める。
 もう、小屋を中心に阿鼻叫喚の状況である。
 撃破しても撃破しても、数に物言わせて小屋の屋根に上っているイレギュラーズたちめがけて上ってくる。

「このっ!」

 登ってくるアンデッドを、カインはまず叩き落とした。
 そして狙うは、この村で旅人を招き寄せるほどの知性を持っているグールからだ。

「孤立して囲まれないよう注意を!」
「そうだね、数を減らしていこう」

 ヴァージニアとェクセレリァスは、まずは包囲を突きくすことで同意していた。
 飛行できるェクセレリァスが行なう攻撃は、まさに爆撃と言っていいものであった。
 群れを為すゾンビ、スケルトンも次々と破壊されていく。

「とうっ! 剣魔双撃!」

 小屋の上から、秋葉が飛び降りながら剣と魔法を織り交ぜた攻撃によって、奇襲した。
 薙ぎ倒されていく、邪悪なアンデッドたち。

「それじゃ、いくよ! ――烈火業炎撃!!」
「ぐぎゃあああああああっ!!」

 焔が繰り出したのは、闘気を火焔に変えて敵を撃つという範囲攻撃である。
 巻き上がった炎は、あっという間にアンデッドたちを炭化させていった。
 燃え盛る炎を見て思う、やはり邪悪な敵は焼いて一掃せねば、と。

「さぁさぁ! もっと来いや! 俺の英雄譚をまた一つ増やしてくれ!!」

 アランは吼え猛る。
 このアンデッドの村であるインサーン村から忌まわしい影を一掃しようと疑似聖剣の二刀を持って消し去っていった。

●村を焼く炎!!
「ホタロー、はいこれ」
「これは……? 火種ですね!」

 今まで、戦うイレギュラーズの背に回って避難していたホタローに、ェクセレリァスは縄に火をつけた火種を手渡した。
 油を染み込ませた布もある、藁屑も集まっているから盛大に焼き払えるだろう。

「さて、後始末じゃな。送り火ということで派手に行くとしよう」

 ここぞとばかり気合が入るアマギであった。
 アンデッドをひとしきり追い払ったが、やはりこの村ではすぐに湧いて出る。
 根本的に焼き払うしかない。

「もう囚われている人たちはいないね? 犠牲になった人たちの遺品も回収したし……」

 戦いの最中、カインは必要なものはなんとか回収していた。

「それに、こんなこともあろうと松明用の油も持ってきているから」
「おお、さすがじゃ!」

 油壷に入った油を撒けば、盛大にこの村は燃えるはずだ。
 さっそく、その辺に撒いて放火する。
 すると赤々とした火柱が上がり、4人が閉じ込められていた小屋がたちまち炎に包まれる。

「あああああっ!?、シビト様がぁぁぁぁぁっ!!」

 グールたちも絶叫した。
 彼らが崇めるシビト様の祭壇があったのだ。
 忌まわしい生贄の儀式が行われた痕跡ごと、炎は焼き清めていく。

「これがシビト様とかいうトーテムね!」

 インサーン村にある奇妙な祭壇や祠を、焔も焼き払っていく。
 今後、アンデッドが住み着いたりすることのないよう、念入りに。

「他にも火を放つのじゃ!」
「は、はいっ!」

 松明を持って駆け回るアマギに、ホタロー含む4人も続き、村にあるさまざな可燃物に着火していく。
 折からの風に煽られ、炎が一帯を包んでいく。

「汝等、どうか来世はもっとちゃんとした人生を送るがいい――」

 巫女勇者、“黄泉醜女”である秋葉は黒い炎が噴き上がる中で神楽舞を舞った。
 煌々と燃える照り返しを浴び、舞う姿は幻想的ですらあった。
 逃げ惑うアンデッドたちも、炎に巻かれて浄化されていく。

「焼きましょう。一般人がいれば憚られる行為ですが……残しておいてもまた新たなアンデッドの根城にされかねませんからね」

 ヴァージニアも、風上から油の染みた藁に火を放った。
 村を焼くとか許されない行為だが、ここはアンデッドたちの村である。
 気兼ねはいらなかった。

 ボッ! ボッ! ボッ……! インサーン村に次々と火の手が上がる。
 
「燃え盛れ、紅蓮の剣! 炎月輪!」

 利香もまた、家という家を炎に包んでいった。
 すべてを浄化し、火の粉を巻き上げて燃え上がる炎はどこか美しく、儚い。
 眺めているうちに、うっとりし始める利香であった。

「も、燃える。村が燃える……。アンデッドはこれで滅んだんだ。あはは……」

 丘の上に避難し、火の海に包まれたインサーン村を見てホタローが呟いている。

「てめェ、勇者なんだろ? 勇者なら『村を燃やす』なんざ死んでも口に出すんじゃねぇ!!」
「えっ? ええっ!? で、でも、アンデッドの邪悪な村っすよ……!」

 アランの説教に、不貞腐れるホタローであった。
 悪が滅んだのだから、自分は正しいことをしたと言いたげである。
 しかし、喜んで村を焼く勇者とかアランからしたらありえない。
 勇者というのは、人を助けるからこその称号であるはずなのだ。

「それよりまずは『仲間を助けなきゃ』だろうが!!!」
「そうかも知れないっすけど……」

 先輩勇者の言葉を、素直に聞けないホタローであった。
 今はまだ、ホタローも勇者という称号が意味するところを理解する時ではないかもしれない。
 アンデッドの村は、やがて燃やし尽くされて灰となる。
 そんな光景に背を向けて去っていくアランを、ホタローは見送るのだった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アラン・アークライト(p3p000365)[重傷]
太陽の勇者
糸杉・秋葉(p3p008533)[重傷]
黄泉醜女

あとがき

 お疲れさまです。村はきれいさっぱり焼けました。
 ホタローの仲間も無事、インサーン村は灰燼に帰しグールの被害に遭う人々もいなくなります。
 村を焼くという背徳的な雰囲気の依頼ですが、内容的にはアンデッド討伐です。
 それも無事成功です。お疲れ様でございました。
 それではまた、お会いしましょう。

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