PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ゆめみるままに待ちいたり。

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 黒々とした翼は夢の色。藍の瞳は夜の色。肌の色は白く月光の色。
真っ白な巫女服は彼女が神に仕える者だということを視覚的に示すだろう。
上機嫌に箒を動かす姿にしばし見惚れて、立ち尽くす。
黒髪つややかに、振り返る彼女は男に微笑んだ。

「いらっしゃいませ、なのです? 夢現神社へようこそ。悪い夢を見たのですか?」


 ひらり、ふわりと蝶に誘われ。たどり着いたのは長い、長い石階段でした。
夢かと、思ったのです。夢なら何をしてもいいと思いまして。ええ、貴方のおっしゃられる通り。魅入られたようで少し、迷ったのですが。
結局私は歩みを進めたのです。青い、翼の大きい蝶がつねに私の隣をついてまわりました。今思うと見守られていたのでしょうね。神社はともかく、通り道は人の肉を食べるものとか、精を吸うものとか、そういう悪いものが居るそうなので。橙色の灯籠が等間隔にちかちかと灯っていて、それが何故かすごく安心して。歩いている途中だと言うのにうっかりするとうたたねしまいそうな、そんな感触でした。
 あとは、噂の通りです。階段の上には紺色の鳥居があって、真っ黒な羽をつけた巫女さんがおりました。
見た目、随分と若いように見えたけれども……酒を持ってったら随分喜んでましたから、本当はいくつなのか分かったもんではないですね。
晩酌をしながら、ちょっとだけ世間話? まあ私の身の上話に近かったですね。ともかく話しまして。
きっと良い夢が見れますよ、と後押しされて。はぁそうかい。それならいいんですがね、なんて返したらいつの間にか帰ってきていました。
へ? その後ですか? よく眠れましたよ。噂の通りですね。久しぶりに先に逝っちまった家内に会えました。まさに夢の神、ですね。
行き方は簡単ですとも。合言葉を唱えるんです、賀虹町の街角で。

 いあ・いあ、こぉす・ふたぐん――。

 貴方もどうです? なにか悩みごとや叶わない願いががあるのなら、きっと助けてくれますよ。


 「最近は随分とローレットも大騒ぎみたいね。眠れぬ夜を過ごす人も多いんじゃないかな?」

『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニの手には一冊の本。

「今日お願いしたいのはね。神社の参拝なの」

 ご利益は吉夢、そして快眠。貘の神が祀られているとされる山奥の神社だが、少しばかり不思議に寄りすぎた結果、とあるおまじない以外での物理的な通行路が途絶えてしまった。
その結果参拝客が減り、お賽銭が減り、ついでに信仰が減ってしまったらしい。このままだと忘れられて、本当に存在が消えてなくなってしまうかもしれないとか。

「お賽銭を供えてくれれば、あとは好きにしてくれていいわ。小さな睡蓮の咲く池とか、お茶を飲むための縁台なんかもあるみたいだから、のんびりしてもいいかもね」

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして、またお会いした方はお久しぶりです。
金華鉄仙と申します。
神社に参拝しに行って、良い夢を見るシナリオです。今回描写するのは神社での各々の過ごし方になります。基本個別描写になると思いますが、合わせた上でプレイングを書いてくださればご一緒に描写いたします。

●世界観
 基本的には日本と同一ですが、一般の人々から隠れるように、怪異や妖怪といったものが住んでいる世界になります。語られることにより噂が真実になったり、忘れられることによって人が消えたり。そんなことが起こる世界です。
 今回の舞台は『夢現神社』(むげんじんじゃ)と言われる小さな神社で、噂が怪談になり、こうしてこの世から隔離されるような事態になってしまいました。神社には巫女が1人居ます。
 切り取られた影響で、神社の中はずっと満月の夜のままです。

●巫女
 話しかける、何かをお土産で持っていくなどのアクションがあれば登場いたします。年の頃16程度の少女に見えますが、実は成人しています。見た目が若いだけです。
お酒と甘いものが大好きで、渡すと喜びます。おまじないが得意なのでもしかしたら悩みに応じたまじないを教えてくれるかもしれません。……本当に効くかどうかはわかりませんが。
 現状については自覚していますが特に深刻には思っていないようです。まあなんとかなるでしょ。みたいなスタンスです。

●目的
 神社を参拝すること。お賽銭はこちらの硬貨でもいいですし、金目のものでもいいですし、お供え物でもなんでもいいみたいです。
 終わった次の夜には皆さん良い夢が見られ、ぐっすり眠れます。

●書いていただきたいこと
 月夜の神社で何をするか。
もちろん参拝はしてほしいのですが、したことにしてスキップしていただいても大丈夫です。
酒盛りを始めるのも良し、神に願い事をするのもよし、夜道で思いを馳せるのも良し。
しっとりでもわいわいでも、精一杯書かせていただきます!

  • ゆめみるままに待ちいたり。完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月10日 22時35分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る想いは
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ


 今宵も、美しい月夜だった。
静謐に包まれた境内に、足音が今宵は4つ。
その中の一つが『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカーだ。黒衣に包まれた怪しい姿も、美しい褐色の肌も、正に夜に相応しい。

(はてさて、迷い込むは夢か現か。……どうあれ、不可思議な場所であることに違いはありませんね)

 ヴァイオレットには興味があった。巫女にだ。境遇が自分と重なって見えたからだ。人里を離れ、隔離された世界に生きる。もしかしたら『同じ』であるのかもしれない。
故に参拝が終わればすぐ、のんびりと箒で境内を掃除していた巫女を呼び止め、話に誘う。

「失礼お嬢さん、少し宜しいですか?」

「あ、はい……。ええっと、何か……?」

 巫女は訝しげに近寄る。まあ、ヴァイオレットの容姿は少しばかり胡散臭く、不信感を感じるのも無理はないが。

「……ヒヒヒ、いえ、怪しいものではありません。ほら、賽銭もちゃんと入れたでしょう。少し話を、と思いましてね」

「なるほ……な、なんと、賽銭が!? 嬉しいのです! お話ですか、構いませんよ!」

「尋常じゃない速さの掌返しですねぇ」

 あまりにも巫女は単純だった。ヴァイオレットは思わず薄布で隠された口を手で覆う。この能天気さはわりと才能かもしれない。
……気を取り直して。

「そうです。話をしてみたかったのですよ。鴉の羽を持つ……異界の巫女。貴方は人を何と考える?」

 ヴァイオレットは人間が嫌いだ。少なくとも、自分ではそう感じている。自らの欲望に溺れ、自分以外の他者へ害を及ぼす。それでいてそのことを省みることもなく、愛や、絆といったきれいな言葉で正当化する。

「だからこそ……人が墜ちていく様に、溜飲を下げるのです。自らの大きすぎる欲によって。そして、その様をワタクシは遠くから嗤う。貴方も、人の愚かさに嫌気が差して人里離れた斯様な場所にいるのではありませんか?」

 問いかけに困惑したような表情。巫女は少し迷ったように考え考え、言葉を口にする。

「別に気にしちゃいませんが、望んでこんな所に居るわけではないのです。人は好きですよ。こうして、貴方と言葉を交わすことも、楽しいです」

「……楽しい? 珍しい感性をお持ちの方ですね」

「そんな事ないと思いますけどねえ。うーん、皆さんは違うみたいなんですけど、此処に来る人ってだいたい何かを悩んでいるんですよ。それこそ貴方の言うように、黒いもやもやのようなものだったりもしますが」

それでも彼らは、現実にしないために。夢は夢であるように……。そう考えて、この神社に足を運ぶのだという。

「そんないじらしい人たちを嫌うことは私には出来ませんね。なんだかんだ占いなんてやってるのです。貴方もそうでしょ?」

何処かきどった口調の巫女に反論する気持ちは確かにヴァイオレットの中に存在した。けれどなんだか言葉にする気分になれなくて。知りたかった返答であるはずなのにもやがかった気持ちがするのであった。


 一頻りの談笑が終わった頃合いだろうか。美しい、軽やかな音色が風に乗って届いたのは。
同時に届いた甘い、柔らかな花の香も相まって二人は一瞬、話していたことすら忘却し魅入る。
そして互いに顔を見合わせ、誰ともなく音色の方向へ歩みを進めていった。

「……おや、他の方が釣られてしまいましたね」

 たどり着いたのは参道から少し離れた、開けた広場。
音色と匂いの元に居たのは『優響の音色』Lumilia=Sherwood。月の光に照らされて、銀糸のような髪も、もう一つの月のような金の瞳も輝いている。フルートから口を離し、ぱちぱちと瞬きをして、一先ず一礼。

「お邪魔していました。……失礼ながら巫女さん。こちらの神は音楽はお好きで?」

「いえ、ごゆっくりなのです。そうですね、嫌いではないと思いますよ」

「なら、よかった」

 再びリッププレートに唇を触れさせて、一吹き。ピッチを確かめ直して、もう一度演奏を続ける。
ただ、月夜の演奏会をしているわけではない。先程から彼女は何をしているのかと言うと、神の招聘である。
……其処まで大げさなことではないが。Lumiliaは夢見の神と出会ってみたいと感じていた。会って、話をしてみたい。異なる価値観を持つであろう相手と、語り合ってみたい。
そのために最適な手段として選んだのが、フルートだ。まずは立ち止まり、音楽を奏でる。対象に見つけてもらい、敵意のないことを理解してもらう。いわゆる相互理解の最初の一歩としての音楽は、絶大な効果を誇る。
やわらかい風が吹き始めている。……が、しかし。

(……届きませんか。これではただの演奏会ですね)

 少し残念そうに肩を下げる。特に誰か出てくるということはなさそうだ。
とはいえ、この神秘的な星空のもと、絶景を独占するのはいい気分だ。涼やかな音色が溶けて空へ消えていく。
ふと、満天の星空を見上げた。この世で会えなくなってしまった人は星となるという。
――あの中に、師はいらっしゃるでしょうか。



 こんな情景も悪くない。秘境っぽい感じもするし。
『貧乏籤』回言 世界は音に包まれた幻想的な風景に内心そんな感想を零す。そのような風景が失われていくことに同時に勿体なさも感じるが、神というのは人の信仰心から祭り上げられるものであり、不要であればいつか無くなるもの。神が居なければ神社は必要ないわけで、いわゆる諸行無常なのかもしれないと、青年は思う。
それでも礼は尽くさねばならない。持ってきたコインを賽銭箱の中へ。此処で使えるわけではないだろうけど、何処かの世界では価値が高いらしい。それにこういうのは気持ちが大事である。願い事も、簡素に吉夢を祈って。心を休めるための夜を、現実以外に煩わせられるわけにはいかないから。

「あとは……」

 準備はもう一つ。甘いモノが好きな巫女のための手土産をぶら下げ、人影を探した。薄い桃色の包み紙は桜の形に織り込まれ、中には色とりどりの菓子が仕込まれている。これならばきっと気にいるものもあるだろう。どうやら巫女は笛の音の元で、演奏会の観客として楽しんでいたようだ。近づけば世界に気づき、会釈をしながら挨拶をする。菓子折りを渡せば想像通り。音のじゃまにならないようにと声を殺しながらも嬉しそうに、謝意を伝えてくる。

「最近、ずっと甘いものなんて食べてなかったので……! 嬉しいです。大事に頂きますね?」

「そうしてくれ。……なあ、巫女さんよ。そのままでいいのか? あんまり健全な状態には思えないんだが。参拝客もロクに来てないんだろ」

「ゔ。痛いところを突きますね。週……月? に4,5人ぐらいでしょうか。まあでもなんとか……なるといいなあ、ええ」

「戻す方法は知らないし、か」

「知ってはいるんです。いわゆる此処がパワースポットになっているのがいけないので、現実にも存在するよーって伝えてくれればいいのです。ついでに噂は嘘っぱちだよって」

「はぁ……、普通不思議だから噂になるもんだろうに。順序が逆だろ」

「お気持ちも最もです。まあ、そんな感じですので。よろしければロビー活動にご協力くださいね?」

「……気が向いたらな」

 ふふ、ありがとうございます。お礼にこれを。と調子の良い巫女は先程の菓子折りを差し出してきた。
封を開けたのか、鮮やかな色彩が目に飛び込んでくる。青年は思わず手前の金平糖を1つつまんで、口へ。

「……甘い」

本当に甘いものだ。青年の態度も、甘味も。


 『狐です』長月・イナリは一息ついていた。何故であるかというと、巨大な酒樽をやっとこさ運び終えた直後だからである。その大きさ家一つ分。どうやって階段を登ったとかはご禁制だ。彼女からの、ひいては彼女の主神たる稲荷神からのお供え物である。味は甘露、一口飲めば夢のよう。きっと彼女も、神も気に入ることだろう。

(夢幻神社、あと吉夢のご利益だっけ。夢の神、というと知っている限りだと……大国主様とかかしらね。まあ神様なんて星の数だけいるのだけれど)

 だとしても酒が嫌いな神様は少ない。宴会に酒盛りはつきものだから。
取り敢えず一仕事終えたイナリであるが、あと一つ、大事な仕事が残っている。参拝だ。他神の領域に入るわけだから、恥にならぬよう、礼儀を尽くさなければならない。無垢なる混沌ではあまり知られては居ないが、こういう神社の参拝にもルールがあるものだ。イナリはそれを一つ一つこなしていく。参道は脇を避けて、まずは二礼、拍子を二拍、そしてまた一礼。イナリの一番親しみのある礼式を使用したが、それは正しかったらしい。
ふわりと暖かい風がイナリの狐耳をこそぐった。

「ご機嫌みたいね」

 少し微笑んで。人が集まっている場所へと歩みを進める。巫女と神と、3人で月見酒というのも一興だと思っていたのだが。

「巫女さん、皆さん! お酒をたっくさん持ってきたの。良かったら月を肴に……あら、甘味ね! 丁度いいわ、飲みましょう!」

「おや困りましたねえ。ワタクシ、未成年なのですが」

「……私もです」

「済まないが遠慮させてもらおう」

口々に申し訳無さそうな返答が帰ってくる。が、それに対して巫女がぽん、と手を合わせ。

「それなら甘酒がありますよ、キンキンに冷えた甘いの! 良ければお持ちしましょう。折角の夜なのですから」

 酒は一人より二人。二人より三人なのですから、ね? と笑って告げる巫女にイナリも微笑んで。笑い、集まり、賑やかに。宴会の始まりを告げる。盃の数は6つ。はしゃいで、騒いで……。嫌なことも、楽しいこともあるけれど。今日は疲れてお家に帰って、ゆっくりと眠れるように。


 巫女が地面に捧げられた盃が空っぽになっているのに気づいたのは、皆が帰り、片付けを始めたときだった。
残されたそれを拾い、ほかの杯と重ねながら。しみじみと一人つぶやいた。

「楽しかったようで、何よりですよ。どうか皆様よい夢を」

成否

成功

状態異常

なし

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