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シナリオ詳細

Sadistic Strawberry
Sadistic Strawberry

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●The girl like a strawberry
 それは他愛ない少女の我儘から始まった。
「イチゴが食べたいの!」
 よくある癇癪。
 とても大好きな物を取り上げられて怒る。母親からすれば、「またか」としかならないその我儘。
「ママのいう事聞かなかったからでしょ。そんな悪い子にあげるイチゴはありません!」
「やだやだやだ! イチゴ食べたい! 食べたいの!」
「いい加減にしなさい! そんな悪い子には、もうイチゴを一つもあげませんからね!」
 母親の言葉に、少女の顔が絶望に満ちる。
 子供にとって母親の言葉は絶大だ。
 そして、好きな物を食べられない事もまた、絶望をもたらす以外には考えられなかった。
 子供ならばよくある事態だ。
 しかし、違うのは、その母親の言葉が少女の中の何かを押した事。
 少女は台所へと一直線に駆けると、何かを掴んで戻ってきた。
 彼女の手に持っている物を見て、母親は慌てふためく。
 少女が手に持っているのは、果物ナイフ。しまっていたはずの物を取り出して持ってきた彼女の目は、顔は、怒りに満ちていた。
「イチゴをくれないママなんて、しんじゃえ!」
 純粋な怒り、殺気。
 本気の様子に、母親の腰が抜ける。近付いてくる少女。
 そして刃は煌めく。
 怒りに任せた一撃が、赤い花を咲かせた。

●The girl in the alley
「緊急の依頼なのです。早急に人を探してほしいのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がイレギュラーズの面々に向かって、やや早口でまくしたてた。
 とりあえず落ち着け、早口だと、指摘すれば、彼女は一つ息をついて、呼吸を整える。
「依頼内容は、子供を探してほしいという依頼なのです。年齢は十歳程の女の子で、行方不明当日は赤いワンピースを着ていのだとか。父親が気付いた時には、もう子供は居なくて、既に何者かに殺害された母親しか居なかったそうなのです」
「気付いた時には?」
「はい。なんでも、帰宅してすぐに、床に広がる大量の血を見て失神してしまい、娘の存在の確認が出来なかったそうなのです。で、起きたら娘の姿がどこにもなく、家からは果物ナイフが無くなっていたと。誘拐されたのではないかという事で依頼がされたのです。ただ……」
「ただ?」
「行方不明になってから数日が経っているのですが、その間にも子供が行方不明になったという捜索依頼が増えているのです。行方不明になった状況はどれも似たようなもので、そして、それと時を同じくして、路地裏のストリートチルドレンの数と成人遺体の数が増えています」
 何か関連性があるのだろうか。
 子供達の集団、というのも、なかなかに厄介な案件と考えられる。
「目撃情報なのですが。ナイフを持ったワンピース姿の女の子が他の子供達と一緒に居た、と。保護する前に遺体を見つけた為、見失ってしまったという事で、今も行方不明なのです」
 ここ最近、怖い話が続く。
 まさか、幼女までもがそんな恐ろしい話に加わる事になろうとは。しかも、もし予想が当たっていれば、おそらく今回の相手は子供の集団だ。
「お願いします。早急に探し出して確保してほしいのです」
 内容が内容なだけに、これは早急に取り掛かった方が良さそうだ。
 もうそろそろ夜を迎える事になる。
 これ以上犠牲者を出さない為にも。

●Strawberry party
 なんてステキな気分なんだろう。
 それもこれもおいしいイチゴを食べられるようになったからだね。
 ママのイチゴはおいしかった。
 あのお兄ちゃんやおじちゃんたちのはおいしくなかったなぁ。
 今度のイチゴはおいしいかなぁ?

 路地裏にてイチゴが好きな少女が、笑いながらナイフについた血をふき取っている。
 上を見上げれば、少しずつ空は夕暮れから暗い色へと移り変わっていくところで。
 少女が居る路地裏は、少しぽっかりと空いた様な空間。そこには少女と同じように、ある種の悦楽を見出した子供達が五、六人集まっていて。
「次の獲物を探そうか」
 ここで出会った子供達。そのリーダーな少年が言う。
 賛成の声に混ざる少女の声。
 歩き出す仲間達についていくように、ナイフを持って少女は歩く。
 既に何で汚れたのかすら分からない赤いワンピースを着たまま。
 まるで楽団のように連れ添う子供達。
 楽器の代わりにそれぞれの得物を持って、五、六人程の子供達が歩いていく。

 Strawberryは潰しちゃえ。その方がよく飲めるでしょう?
 Strawberryは食べちゃおう。だって、とてもオイシイから。
 さぁ、今夜もStrawberryを探さなきゃ。

GMコメント

●情報確度
 B
 子供達はそれぞれ異なる武器を持っていると思われますが、どのような武器なのかは判明していません。
 様々な手を使って向かってくるだろうと思われますので、色々対抗手段を用意した方が良いかと思われます。

●マスターより
 タイトルにベリーサディスティックとか加えたかったです。
 血なまぐさいシナリオを一度はしてみたかったので、出してみました。
 というわけで、幼女達を探し、確保するシナリオです。
 狂った幼女とかおいしいですね。
 それでは、皆様とのご縁をお待ちしております。

  • Sadistic Strawberry完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月18日 21時15分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
濃紺に煌めく星
銀城 黒羽(p3p000505)
ド根性ヒューマン
紅劔 命(p3p000536)
天下絶剣一刀無双流
モルフェウス・エベノス(p3p001170)
堕眠
七鳥・天十里(p3p001668)
ガンスリンガー
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
XIII(p3p002594)
ewige Liebe
レン・ドレッドノート(p3p004972)

リプレイ

●路地裏探索隊
 時は夕暮れ。まだ日は傾き始めたばかりで、赤色が空に差し込んでいる所だ。
「この時間帯ならば違和感もあるまい」
 『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)はそう語り、烏を使役する。
 ウィッチクラフト――――動物との疎通や使役が出来るそのスキルを使用し、彼女は捜索の手助けを行なう。
 目標は集団の子供達。
「あとは、地道な聞き込みとしらみつぶしの捜索ぐらいか。他に何か出来そうな事あるか?」
 『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)は、他に出来そうな手段を口にし、他にどうやって探すかという事を他のイレギュラーズに尋ねる。
「はーい! お菓子を持って歩いてみたいかなって!」
「対象は子供ですから、お菓子を持って歩いてみるのはいいかもしれませんわね」
「匂いにつられて来てくれたら探す手間も省けますしね」
 七鳥・天十里(p3p001668)の提案は、『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)と『天下絶剣一刀無双流』紅劔 命(p3p000536)の賛同を得た事もあり、採用となった。
「血のついた武器を持ち歩いているなら、血の匂いとかしないかな?」
「他にも犠牲者が出ているのなら、あり得る話だな。それも手がかりとして調べてみるか」
「昨日はどこかで何か事件が無かったか聞いてみたりは出来ないか? そこから絞れないかとも思ったが」
「やってみる価値はあるな」
 匂いという単語で思いついた命からの提案と、『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)からの提案に、黒羽は頷く。
「こうしている間にも時間は過ぎます。すぐに聞き込みを開始してはどうでしょうか?」
 『ewige Liebe』XIII(p3p002594)は必要最低限の言葉を選び、進言する。
 三十分後に此処で、という約束を交わし、すぐに散るイレギュラーズ。
 聞き込みではなく屋根の上に登る事を選択した者達は、屋根の上から路地裏を見下ろす事で人を探す。集団らしき影を見つけたらすぐに報告するつもりだ。
 レン・ドレッドノート(p3p004972)は、仲間の聞き込みに同行しながら辺りを警戒する。
 最近の状況において、人々の理性が保たれていない事を感じ取っている彼は、深く考えそうになり、その思考を止めた。
(俺はしがない拳闘士だ。戦う場が変わっただけで、それは変わらない)
 自分の立場を改めて自覚する。
 子供であろうが、武器を持って人々を傷つけているのであれば、手加減など一切しない。
 その決意を抱き、少年は拳を強く握りしめた。

●路地裏への突入
 指定時間での集合にて、イレギュラーズはそれぞれの収穫を照らし合わせた。
 聞き込みでの結果、判明したのは以下の点だ。
・昨夜この近くで男性が一人殺されていた
・その男性にはボウガンの矢が刺さっていた
・お菓子食べたいと話す子供の集団の声が聞こえた
 三つの点を聞き、更に、屋根の上や烏からの情報を得たイレギュラーズからは、該当の者達と思われる集団を見つけたという報告があった。
「赤いワンピースが見えましたわ。おそらくは、その集団で間違いないでしょう」
 エリザベスの言葉に同意するように、XIIIが首を縦に振る。
「数は?」
「六名程」
 レンの質問に対し、エリザベスは口元の笑みを崩さずに答える。
「では、そちらへ行こう」
「案内はわたしに任せると良い。その二人は屋根の上を移動するようだし、ずっと頭上を伺いながら歩くのも首が疲れるだろう?」
 モルフェウスの提言により、彼女に先導を頼む事にした。
 ラノールより、「隊列は?」という質問があり、組み直す。
 最初の先頭は、案内役のモルフェウスと黒羽、あとりで行く事となった。お菓子の話題で注意を引きつける役目を負う為だ。
 戦闘になれば、あとりと命が位置を交代し、他のイレギュラーズもそれぞれが適した位置に移動する算段である。
 改めて、子供達は不殺で確保するのだという事を互いに確認し合い、イレギュラーズは路地裏へと足を踏み入れたのだった。

 空は徐々に赤から暗い青の色へとコーティングを変えていく。
 路地裏のを挟む建物、その屋根の上を走るXIIIとエリザベス。
 頭上では彼女達が、地上ではモルフェウスが案内を務める。
「全くもー、サーカスが来てから随分物騒になったよね」
「とはいえ、もしサーカスが原因だとしたら、その子供も狂気の被害者かもしれねぇんだ」
「そうかもしれないけどー。でも、ちょっと前まではただ賑やかで楽しい所ばっかりだったのになーって」
「……そこは、少しだけ同意はするが」
「まー仕方ない、ちゃちゃっと子供たちを見つけて捕まえるとしよう!」
 口をとがらせていた天十里が姿勢を改める様子に、黒羽は小さく肩を竦める。
 先頭のモルフェウスが後方を振り返り、口元に指を一本当てて静寂を促す。紫水晶のマニキュアを塗った指先が妖しく光る。
「この先だ。少し開いた場所になっているから、活動もしやすい筈だよ」
 イレギュラーズは顔を見合わせると、手筈通りの位置に陣取る。
 まずは天十里と黒羽が前に出て注意を引きつける。他のイレギュラーズには建物の陰に隠れてもらい、戦闘になれば出てきてもらう算段だ。
 呼吸を整え、天十里と黒羽が歩を進める。歩いて十メートルと少し。円形のように開けた場所に、子供達は居た。
 報告通りに六名。しかし、円形に纏まるでもなく、バラバラに点在している。
 二人の姿を見た子供達が一ヶ所に集まる。一人だけ背の高い少年に集まっていく様子からして、彼がリーダーなのだろう。
「アンタ達が行方不明の子供達か?」
「どういう扱いになっているかは分からないけど、此処に居る子達が家を出たのは確かだよ」
「君達の親御さん達に依頼されて、捜しに来たんだ。一緒にお菓子を食べて、それから帰らない?」
「……怒っていないのか?」
「誰が?」
「家族」
 短い言葉に、「そこまではわからない」という意を伝える二人。
「でも、ちゃんと謝れば……」
「ダメだ」
 遮り、彼はハッキリと告げる。
「あそこにはもう帰らない」
「そうだよ。僕の話を聞いてくれないパパもママもいらない!」
「イチゴが食べたかったのに聞いてくれなかったママもきらい!」
「おうちに帰りたくない!」
「だから、お家に帰そうとするおじさん達もきらい!」
「しんじゃえ! しんじゃえ!」
 子供達が叫ぶ。
 ぐにゃりと歪んだ顔は、怖いくらいに笑顔だった。
 子供の一人が持ったボウガンの矢が天十里に向けて発される。間一髪でそれを躱せたのは、出てきたラノールが彼女を引き寄せてくれたからだ。
「交渉は決裂か。まあ、分かり切った事だったな」
 同じく後方から出てきたレンが、バンテージを巻いた両手を打ち鳴らす。
 入れ違うように後ろへ下がる天十里。
 モルフェウスと命も前に出てきて、子供達と相対する。
「捕獲させてもらうわよ!」
 命の言葉を皮切りに、路地裏での捕物騒ぎが始まった。

●彼らを捕獲せよ
 近距離に対し、遠距離の手段を持つ子供達は厄介だ。その相手は同じ遠距離同士、屋根の上に居るXIIIやエリザべズに頼む事として、まずは捕獲しやすそうな子供達から向かう。
 とはいえ、武器を持っている事に変わりは無く、その中で最も気をつけなければならないのが斧を持った少年だ。木こりの子供か、もしくは薪割りに従事していたか、子供でも扱えるような大きさの斧を持っている。
「天下絶剣一刀無双流、紅劔命! 推して参る!」
 腹に力を入れ、声を張り上げ、斧を持つ子供へ肉薄する。
 大太刀は大きすぎてこの路地裏での戦闘には不向き。故に、彼女は拳闘という道を選択した。元々、不殺での捕獲を目標とした今回の依頼だ。拳闘で良いだろうという判断は正解と言える。
 力任せに振り回す少年。その斧の動き自体は決して早くは無く、躱しきれる。ステップするまでもなく、一歩一歩大きく後ろへ動けば躱せると判断てのものだ。そして子供相手故に、彼女はある点を狙って躱し続けていた。
 躱し続けて、暫く。命の身体は建物の壁にぶつかる。
 背後へ一瞬だけ視線をやり、それから前の子供へと注意を向ける。
 振り回し続けた事で息を切らし始めた少年は、命が逃げないのを訝しむ事もなく、深呼吸をして斧を振りかぶった。
「しんじゃえ!」
 振り下ろされた斧。
 勢いをつけて近付くそれに対し、命は半歩横に下がっただけだった。
 だが、それで十分。斧は建物の壁に刺さり、思わぬ動きに少年が踏鞴を踏む。
 反撃は此処から。命の手は少年の身体を正面から捉え、鳩尾を狙う。
 小さく呻く声だけ残し、少年の意識を刈り取る。
「一人確保っと」
 周りの様子を窺いつつ、少年を抱えて命は路地裏の道に入って仲間の様子を窺うのだった。

 ナイフを持つ少年に、モルフェウスは近付く。走るでもなく、ただ普通に歩く様に。
 対する少年は様子を窺うように彼女を注視している。
 蠱惑的な笑みを浮かべ、モルフェウスは少年に囁く。
「世の中など、往々にして気に食わない事が起きるのものだ。その度に凶器を振り回していいならば、路上のあちこちで物を振り回す大人で溢れかえるだろうさ。きみ達の親や親戚がそうだったら、恐ろしいだろう」
 ただ、少しばかり話が難しすぎたようだ。眉を顰める彼へ、彼女はもう少し噛み砕いた言葉で再度囁く。
「要するに、きみ達だけでなく親やおじさんおばさんもそんな物を持って人を傷つけたり、知らない人に傷つけられたりしたら恐ろしくはないか、という事だ」
「なんで?」
 逆に眉を顰めるモルフェウス。
 少年はその事がまだ理解できるような年齢ではないのか。それとも、狂っているせいで分からないのか。
 他にも様々な憶測が彼女の脳内を駆け巡る。しかし、どれ一つとして確証は無い。
 隙を突く、という事を諦めて、モルフェウスは捕獲へ切り替える事にした。
「残念だ。では、申し訳ないが、捕獲に移らせていただこう」
「やーだね!」
 翻す少年をモルフェウスは追う。歩幅の違う少年と大人。
 追いつかれると気付いた彼が振り向きざまにナイフを構え、返り討ちを狙うが、それは彼女も予想済み。
 伸びた長い足が少年の身体を捉える。全力に加えた【威嚇術】が少年を襲い、その体を地面に転がす。
 衝撃で手から離れたナイフを回収し、モルフェウスは少年を捕えようとして、暫く逡巡した後着ていたローブで巻く事にした。
 邪魔にならぬように隅へ移動し、残りの仲間達も無事に捕獲できるのか、動向を見守る。
 彼女が目を留め、動向を見守ったのは、黒羽達だった。

 黒羽は自分から攻撃はしない事を決めていた。だからこそ、近付きはするが、相手の攻撃のみを受ける事に追随する。
 とはいえ、彼が相手しているのは果物ナイフを持った少女だ。赤いワンピースの子供は、ただ出鱈目にそのナイフを振るう。
 しようと思えばその手を止める事も出来る。だが、手を無理に止めて暴れられるよりも、疲労を蓄積させる事を先とした。捕えた時に暴れる体力を奪う為だ。
 少女の動きには、格闘技と組み合わせるという手段は見当たらない。故に、彼はナイフの動きだけを目で追い、足を動かしてナイフの範囲から出来るだけ逸れた。
 少女から「かなわない」と思わせる目的で、時には釵でナイフを止めてみせたりもしたが、少女が止まる様子は無い。
(狂ったせいだとしたら、悲しいもんがあるな)
 次第に少女の動きが鈍ってくる。この分では自分から倒れるだろうと思った矢先、少女の爪先が舗装された道の隙間に引っかかり、身体が地面へダイブした。
 少女がこれ以上暴れる事がないよう、ロープで両手を縛り、奪い取った武器をザックへ入れる。
 ふぅ、と一息ついた後、彼は辺りを窺う。
 黒幕が居る可能性を考慮して、注意を払う彼。
 果たして、黒幕は居るのか居ないのか。

 天十里と少女は相対していた。
 片や銃、片やボウガン。どちらも飛距離を有する武器だ。
 少女は天十里の身体を狙うように狙いを定めて様子を窺っている。
 対して、天十里は少女の足元を狙うように銃を構えていた。
 自分を奮い立たせる為にかけたセイギの心が時間切れを訴える前に何としても距離を詰めたい所なのだが……。
 動けぬ両者へ助け舟を出したのは、乾いた音。
 それは上から下へ、少女の足元へ撃たれた鉛玉。
 二人が見上げれば、屋根の上に立つXIIIが大きな音を立ててリロードをする所で、そして間を置かずに再び発射した。着弾場所は少女の足元から変えずに。
 ここに来て、少女の武器に迷いが生じる。屋根の上か、目の前か、どちらが厄介なのか判断がつかない少女が忙しなく上へ前へとボウガンを移動させる。
 天十里の方へボウガンが向いた時、再び大きなリロード音が響く。
 間髪入れずに撃ち出された先程の事を思い出して反射で屋根の上を狙う少女。予想通りに少女の足元へ再三撃ち込まれる鉛玉。
 そのチャンスを逃さず、銃口をボウガンに向けて、込められた鉛玉を発射する天十里。
 短い音、すぐに響く衝撃音、そして少女の手からボウガンが落ちる。放たれた矢は頭上へと飛び、けれど銃弾によって軌道をずらされたそれはXIIIに当たる事は決してなかった。
 天十里のタックルしつつ抱え込むその動きに反応しきれなかった少女は、彼女の腕の中で暴れるが、降りてきたXIIIが銃口を向けた事によって大人しくなる。
「ありがとう、XIII」
「……どういたしまして」
 安堵したような溜息を零す天十里とは逆に、XIIIの表情は全く変わる事は無かった。
 固く縛られたのを確認すると、XIIIは再び屋根の上へと移動した。
 次の子供を捕縛する為に。

 少年のパチンコが、ラノールの戦槌に阻まれて肝心のラノール本体へ届かない。
 反射神経の良い彼なので、避けようと思えば避けられるはずだが、それをしないのは繊維の喪失を狙う為か。
 いや、違う。
 リロード音、それから、少年のすぐ横でする鉛の着弾音。発砲音と共に聞こえた、少年を狙う音に、少年は迂闊に動けない事を悟ったようだ。後ろに移動したいのに出来ないと、すり足気味に下がろうとして止まる足が物語る。
 撃ったのはエリザベス。彼女と機械的にリンクしたそのライフルは、ただ静かに、屋根の上から少年へと銃口を向ける。
 少年が身動きできないと悟るまでの時間を稼ぐ。それがラノールが今とっている選択だった。
 チャンスと知り、戦槌を置いて踏み込むラノール。
 次の玉をセットし、彼を狙う少年。
 今度はそれを避け、拳を少年の体に叩き込む。一歩下がった所へもう一方の拳でもう一撃。
 尻餅をついた少年を押し倒し、手からパチンコを取り上げる。
 組み敷き、エリザベスを呼べば、彼女に捕縛の手伝いを頼む。
「わかりましたわ」
 二人で少年を縛り上げ、一度息をつく。
「発狂させた原因があるはずでございますわね。少々その子を調べさせていただいても?」
「ああ、私ではわからないだろうから、よろしく頼む」
 乞われ、少年の身柄を引き渡す。
 暫く少年の周りを探っていた様子だったが、どうも見つからないようだ。首を横に振ったエリザベスを見て、「そうか」とだけ呟く。
「未来のある手だ。これ以上血で染めるのはもったいないな」
「そうでございますわね」
 けど、と、続けそうになった言葉を飲み込む。
 この先の人生をやり直せるのかどうかはわかりませんわ。
 きっと、その言葉は、誰の胸にもあるのだろうから。

 リーダーとおぼしき少年と、レンは格闘の構えで対峙する。
 サバイバルナイフを持った少年とレンが睨み合い、互いに踏み込む隙を窺う。
 少し離れた場所でした発砲音がゴング代わりに、二人の距離を詰めた。
 レンのナックルを嵌めた手が掌底の形となり、顎を狙う。かろうじて避けた少年が、サバイバルナイフを振りかぶる。
 空いた手で武器を持つ手を止め、一歩下がる。
 再び開いた距離を、今度は互いに時間も置かずに詰めた。
 蹴りを繰り出し、サバイバルナイフを突き出す少年に対し、蹴りと拳を用いて応戦するレン。
 だが、ただの一般人と、拳闘士では、その経験の差は明らか。
 すぐにレンの格闘技は少年の鳩尾を含む急所へ当てられ、くの字に降り曲がる身体へ意識を刈り取るトドメの一撃を落とした。
 サバイバルナイフが少年の手から落ちて地面を転がる。
 他の仲間達も無事に捕獲したのを見て、余ったロープを分けてもらうのだった。

●関わりはサーカス?
 意識を取り戻した一部の少年少女達へ、レンはある事を問いかけた。
「最近サーカスを見に行ったか?」
 すると、意外な事に誰もが首を横に振ったのだ。
 ただ、彼らが言うには「近所の子が見に行った」「親戚が見に行った」等と、身近な人物が行ったという。
 特に何かお土産のようなものを渡されたわけでも無い、という事も判明し、頭を悩ませるイレギュラーズ。
「これ以上はギルドでの調査待ちでございますわね」
「ああ、流石にこれらの情報から新たに得る事は難しいだろう」
 エリザベスとラノールの言葉に賛同の声が上がる。
 こうして子供達は無事にギルドへと連れ帰られた。
 しかし、罪を犯した子供達が今後どうなるのか。それは、その街が下す決断次第となった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ロープを持ってこられた方々のおかげでなんとか全員捕縛出来ました。
また、少年少女達を気遣ってくださった方々もありがとうございます。
彼らがどうなるのかは、今後何かあれば出してみたいとは思いますが、はてさて…。
何はともあれ、今回の捕縛劇、皆様お疲れ様でした。

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