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シナリオ詳細

<虹の架け橋>筋肉で突破するヘイムダリオン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●暴力は良くないので〇〇で解決
 難敵、トラップ、不思議な仕掛け。この摩訶不思議な大迷宮の踏破も、だいぶ進んできた頃か。
 先んじて挑んでいたある集団が辿り着いたのは、パステルブルーの空に七色の虹、豊かな緑に花が咲き乱れ、虹色を映す泉がこんこんと沸く場所。小鳥のさえずりが聞こえてくる。魔物や驚異の気配は、欠片も感じられない。
「な、なんていうか……」
「平和だな……」
 何もない地点なのだろうか。しかし、何があるか分からない場所だ。慎重に探索を進める。開けた視界の向こうには、なめらかな大理石のようなもので作られた妖精の石像があり、のびのびと躍動感のあるポーズで鎮座している。どうやら、彼女の奥に次のエリアへの扉があるらしい。
「普通に考えるに、あの石像が護ってるんだろうなあ」
「おう。気を引き締めていくぜ!」
 つい先ほど、かなりの難敵を屠った精鋭たちである。一体だけなら、恐れる事などない。

「――え」

 妖精像が口を開く。彼女が言うには『この場には特殊なルールがあり、ルールを守らずしての通過は敵わない』との事。
 まどろっこしいルールだと、彼女の言葉を聞いたうち一人が毒づいて。
「面倒くせぇ! テメーを壊して先に進むぜ!」
 メンバーの中で最も精強な戦士の一人が、ハンマーを持って妖精像の破壊にかかるが――

●肉体は生涯のズッ友
「すくわっと、って、きちんとやると、すっごくたいへん、なのです!」
 伝統的な鍛錬方法である屈伸運動を指導の下できっちり行い、ユリーカが脚を生まれたての小鹿みたいにぷるぷるさせている。
 今回、迷宮の情報をもたらしたのはタイタン桜沢という旅人で、ユリーカの傍らで指導を行ったのもまた彼だ。ユニフォームらしきものを身にまとい、異世界に疎い者でも「なんかのスポーツしてそう」というオーラが感じ取れるだろう。

 そんな彼が言うに『運動しないと突破できない部屋』が、行く手を阻んだとか。
「野球しようぜ! ……と言いたいところだけど、混沌ではあんまメジャーじゃないかな……ルールも慣れないと難しいし、トレーニングメインでもいいぜ!」
 運動をせず強引に突破を図った者は全身が破裂して生死の境を彷徨い、運動の際に少しカウントを盛って不正を働いた者は、命に別状はないものの利き腕が変な方向に曲がったと、唯一無事だった桜沢が語る。

「ですが、ですが……私のように、運動が苦手な者はどうすれば?」
 傍らに居た情報屋見習い、元・楽園のプルサティラが問う。彼女同様、身体能力に難を抱えた者は少なくない。そういった者はおおむね神秘方面に秀でており、肉体派とは別の領域で活躍しているのだが、今回はどうだろうか。
「そこに誤解があるんだけど、トレーニングって難しくないんだぜ! その人に合った方法と強さで、その人に出来る精いっぱいをやればいいんだ!」
 そして、その頑張りに肉体は必ず答えてくれる! 桜沢はそう力強く言い切って、鍛えた二の腕で力こぶを作って見せる。この腕から放たれるスイングは、さぞ力強い事だろう。
「そうなのですね。初めて、初めて知りました……しかし、そういった感じの鍛錬をしたら、その……必要以上に、体格が良くなってしまうのでは?」
「いやいや、甘いぜお姉さん! 女の人はそうムキムキにはならない! ……それに、多少筋肉が付いてた方が、締まって見えるから美容? にもお得だぜ!」
「なるほど……深い、深いのです」

 曰く、その場所は花が咲き乱れる、話に聞く妖精郷のような場所らしい。こんこんと沸く泉の水はほんのりと甘く、口に含めば身体に染みわたる。事が終わったら、のんびりするのも良いかも知れない。
 この機会に、いい汗を流してみるのもどうだろうか。勿論、請ける請けないはあなた次第だが――

GMコメント

背中に羽根とか生えてる人って、肩甲骨が凝りそうですよね。

●目標とご注意
運動をして宝珠を完成させること
※今回、相談期間が少しだけ短くなっております(5日)。ご注意ください。

●ロケーションなど
話に聞く妖精郷のような、うららかな常春の空間。
丈夫な蔓やぶら下がれる木、重い丸太など、運動に使えそうなモノも色々あります。
寝転がっても草が柔らかく受け止めてくれるので、必要以上に身体を痛める心配はありません。
現場近くの泉の水はほんのり甘く、ピクニックにも良さそうな場所です。


●敵(?)

 〇空の宝珠
  ガーディアンの頭上に浮かんでいます。一見無色透明なガラス玉ですが、
  元々は何らかの理由で力を失った虹の宝珠です。
 『運動』するほど虹色の輝きを取り戻していき、完全に力を取り戻すと
  ガーディアンが扉を開けてくれます。

 〇ガーディアン×1
 妖精を象った大理石の像で、この区画の守護者です。柔軟なポーズで待ち構えています。
  本人(?)は出口の前に立っており、攻撃などをしてくる事はありませんが、
  ルール違反やズルには物凄く厳しいようです。


★特殊ルール:運動をしよう!(詳細)
主/副行動を使って行います。
重いものの上げ下げ、走り込み、何らかのスポーツやストレッチ、フィットネスetc、
直接の戦闘以外で身体に負荷をかけ、宝珠にエネルギーを貯めてください。
負荷相応のエネルギーが宝珠に溜まり、運動した人のHP・APに割合ダメージが発生します。

宝珠が完成するまでは、貯めたエネルギーは毎ターン一定数減少していきます。
かと言って一気に強い負荷をかけると損耗が大きくなるので、計画的にいきましょう。
ズルは推奨されませんが、ご自分の状態に合わせての工夫や強度調整はOKです。
運動内容については下記、友軍の桜沢さんの項もご参照ください。

フィジカルが大事に思えますが、実はメンタル(折れぬ心)こそが重要です。
テクニックがあれば身体を痛めにくく、キャパシティは潜在的な伸びしろです。

★特殊ルール:休憩と水分もとりなよ!
運動を連続で行っていると、運動によるダメージが徐々に大きくなります。
主行動を1回消費する事で、近くにある泉の水を飲む事ができ、
HP・APが少し回復すると共に、3ターンの間、運動によるダメージを大きく軽減してくれます。

パンドラ・EXF復活とも有効ですが、復活の度にEXF値が20ずつ下がっていきます。
限界を見極めていきましょう。

★特殊ルール:声出していこう!
気合注入から阿鼻叫喚まで、色々なかけ声・台詞を書いていただけると
色々な威力がアップします。声援だって無駄ではありません。


●友軍:タイタン桜沢
レッド・ミハリル・アストルフォーンさん(p3p000395)と共に『パルスちゃんファンクラブ』に所属している旅人です。得意なのはバッティングと盗塁だそう。
一緒に運動してくれ、運動内容にお悩みの方にはアドバイスもくれるそうです。

運動メニューをそのまま書きにくい方は「桜沢さんに教えてもらった」形にしたり、
何していいか分からない場合「身体のこの辺を重点的に鍛えたい」「運動初心者」
「自分をとことん追い込みたい」「ウェストを引き締めたい」「脂肪を燃やしたい」
「ほどほどに頑張りたい」「バストアップしたい」など、大まかな希望を
プレイングに書いていただければ、彼がお任せでメニューを組んでくれます。

●情報精度:A
場所のルールに従う限りでは、想定外の事態は絶対に起こりません。
基本的な敵は自分自身で、それなりの『頑張り』は必要になります。

  • <虹の架け橋>筋肉で突破するヘイムダリオン完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月21日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
レッド(p3p000395)
赤々靴
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

リプレイ

●やさしいせかい
「さて今回の仕事は迷宮の踏破、のはずだったんだが、なぜかトレーニングをする事になった」
 自分でも何を言っているか分からない、といった顔で『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が訥々と語る。
「ふむふむ、運動して、そのエネルギーが虹の宝珠にたまって虹の宝珠が完成すると……」
「運動しないといけない試練なんて初めてっす」
 異世界からやって来た『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は改めて、混沌の広さを実感していた。
「うう、また運動なのね……」
 依頼でのスクワット地獄を切り抜けた経験のある『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は、当時の阿鼻叫喚を思い出すと未だに脚が震えてしまう。
「うんうん、筋肉で解決だね! わかったよ!」
 かたや、幼馴染の『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の方は至ってやる気だ。
「今日は癒しの力を捨てて、気合のメンタルをもって本気で筋肉と向き合うよ!」
 彼女の右手にはアスリート魂、左手にはゴリラ魂、心臓には己と戦う覚悟。その腕は非力なれど、その胸には夢がある。
「なにせあたし伸びしろしかないからね。伸びしろがあるはず。あるよねアルちゃん!?」
「! もちろんよフラン。アンタも私もまだまだこれから成長期よ」
 そう、彼女の『胸には夢がある』。胸筋を鍛えると大きくなる、そう聞いたらやるしかない。幼馴染のようなボリュームになれる可能性(パンドラ)だって、きっとこの胸の何処かにある。
「そうね。私も頑張らなきゃだわ!」
 対するアルメリアは逆に、良過ぎる肉付きが気掛りだった。お互いないものに憧れて、お互い尊敬し励まし合う。美しい友情がそこにある。
「私の身体、引き締めてあげようじゃないの!」

「この迷宮本当に何でもあるな。……いや、どんな人にもチャンスがあるというか、色々な方向から守ってるのかな」
 それも良いかも、と『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は、理想郷のような景色を眺め思う。
「運動すれば開いてくれるなんて、中々面白い仕掛けじゃないカ」
 今回最高齢、本人曰くおじいちゃんの『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)は普段から運動をしており、いつも通り回せば良い、と余裕を見せる。
「何にせよ、それが依頼というならやるだけではある」
『飢獣』恋屍・愛無(p3p007296)本来の構造は人体と大きく異なる。今の姿は暗黒物質で筋組織状のものを作り、見よう見まねでヒトに近く整えたものだ。
(ぷーちゃんくんには久しぶりに会ったが、人のいう事をすぐに信じるというか、相変わらず、すぐ悪い男に騙されそうだな)
 出発前。知り合いの情報屋は砂漠を渡った事があり、足腰に自信を持っていたが、腕を上げただけのスクワットで全身をくまなく破壊されていた。
(割と心配だが、さて)
 愛無の目標は精神鍛錬。限界まで追い込み、それを超えること。目的意識があると無いとでは、鍛錬の成果が全く違う。こと混沌ではそれが顕著だ。

「いやー、しかし綺麗な景色っす! わくわくするっす」
 どこまでも続いていく柔らかな草原に、足下の花は色彩豊か。瑞々しい果実がぶら下がる樹。レッド――の憑依している少女は元々、外を知らぬ病弱な子だった。またひとつ新しい景色をともに見て、喜びを分かち合う。

 やがて終点、大きな扉と、番人の前に辿り着く。番人は生身のようなしなやかなポーズを取りながら、冒険者の脳内に『運動せよ』と語り掛ける。
「た、体力付けられるように頑張ってみるっす!」
「僕も体力にはあんまり自信が無いけど、筋肉はいいなぁって思うし……頑張ってみようかな!」
 レッドとウィリアムが袖を捲る。
「妖精郷にたどり着くためなら、運動はいくらでもやろう」
 妖精の魔鎌の性か、妖精と聞けば黙っていられない。どんな試練だって超えていこう。

「よーし! まずは練達ラジオ体操第一から!」
 フランの元気な声が、死闘の開始を告げた。

●敵は己の内にあり
「へえ。こっちにもラジオ体操が伝わってんだな」
 動き易い服装に着替えた義弘が、子供の頃から慣れ親しんだ音楽に合わせて身体を動かす。
「これ、ダイナミックストレッチって言うのよね」
 元気よく筋肉を動かして身体を暖める事は、効率アップや怪我防止に効く。ラジオ体操とやらはその辺りをよく考えて作ってあるなと、経験者のアルメリアが感心しつつ大きく腕を振る。
「はじめの準備運動は大切さナ」
 ジュルナットは準備運動初心者だが、その動きのキレは初心者離れしている。
「いちにー、さんしー……」
 見よう見まねで身体を動かすレッド。慣れるとだんだん楽しくなってくる、その頃合い。
「……も、もうヘトヘトっす!」
 少し動いただけなのに、どうした事か。額に滝のような汗が滲む。
「レッドさん、だいじょぶ? 基礎的な運動も、しっかりやると疲れるよね」
「フ、フランさんありがとっす! 基本はしっかりやらないとっす!」
「そうそう!」
「うんうん、ちょっとずつ。無理のない範囲で、動かしていこう……っと」
 ウィリアムも、義弘の慣れた動きを真似て動いてみる。身体を痛めそうなら無理には伸ばさない。己の可動範囲をしっかり見極めるのは、意外と高度なテクニックだ。
愛無も動体ストレッチで身体を温め、義弘は泉の水を飲む。事前の補給も重要だ。
「さて、無理せず自分のペースでやるとしよう」
 愛無は場所を変え、近くの森林で走り込みを始めた。
(ふむ。確かに、意識すると効いてくるな)
 足場が悪くてもペースとフォームは絶対に崩さない。この意識があると無いとで、負荷は大きく変わる。普段何気なく動かしている地球外筋肉的なものが、早くも熱を持ち始めた。

 サイズのやる事はいつも通り。鍛冶道具のハンマーを振るう事だが、さらにもうひと工夫。
「おー、豪華な重りだネ」
 細い両腕にと背中には、シュペルのインゴットが固定されている。結構な貴重品だ。手に入れるまでの苦労を思い、ジュルナットが感心する。
「よーし……」
 大きく息を吸い、腕は勿論、腹部や脚にも力を込めてまずひと振り。ハンマーのような重武器を振るう時は、腕以外の踏ん張りも重要だ。しっかりとした支えや軸が無ければ、その一撃は空回りしてしまう。
 そのハンマーも、無目的に振るっている訳ではない。
 木製のダンベル、重りにもなる水筒。ひと振りごとに、そういったアイテムが次々と出来上がっていく。
「これはいいね。借りていくよ」
「ああ、おじいちゃんも借りるとしようカ」
 ウィリアムとジュルナットが、それぞれ自分に合ったアイテムを持って行く。頑張って、と、サイズはハンマーを振るいながら声援を送った。
「さてさて。取り敢えず筋トレ一式からかナ?」
 ジュルナットのメニューは、一定の比率で行う腹筋と腕立て伏せだ。更に、いつものメニューにサイズ謹製の重りをチョイ足し。
「おじいちゃんはおじいちゃんだから、無理はしないヨ。でも、負荷をかけるのも忘れずに……ネ! ああ、これは効くなァ」
 少しのウェイトで負荷がガラリと変わる。やり過ぎに気を付けながら、ジュルナットは重りの負荷を楽しんだ。

「迷ったらまずはスクワット!」
 アルメリアが選んだのは伝統的な屈伸運動。屈伸だけと思うなかれ、実はかなり広範囲の筋肉を使う。迷ったらまずこれ、というのは割と正しい。
「息を吸いながら曲げてぇー……伸ばしながら吐くぅ……っ」
 呼吸を止めない事も肝要だ。ペースの緩急も織り交ぜながら、かなりの回数をこなしていった。
「おむねには腕立て伏せが一番!」
 フランは呼吸をゆっくりと整え、己の筋肉に意識を集中する。
「ふんぬー……」
 これもまた、意外と広範囲の筋力を要する。基礎筋力に不安はあれど、今日の彼女はゴリラ。
「筋肉は、裏切らない!」
 母の教えを胸に、1回、2回。自分のペースで回数を重ねる。
「僕は……お腹周りを亘理みたいにしたい!」
 ウィリアムは桜沢から教わった『プランク』に挑む。腕立て伏せのような姿勢をとり、この状態をキープ。フランと違い、キープなら何とかなりそうだ。

「……などと思っていた頃が僕にもありました」

 腹筋と背筋を同時に鍛えられる非常に効率の良いメニューなのだが、鍛える部位が多いという事は物凄くキツい、という事でもある。ぺしゃりと潰れたウィリアムは、他の皆が動いているうち水を飲みに行った。
「でも折角もらったメニュー……絶対にこなしてもみせる……!」
 全身破壊の感覚を味わいつつも、強靭なメンタルを持って戦場へ復帰する。
「んー……!」
 レッドも桜沢から教わった腹筋に挑戦してみる。寝そべった状態から上体を起こしつつ膝を曲げ、膝を胸に近づける。このやり方の方が色々なところに効くとの事だが、なかなか上体を起こすまでに至らず、よろめいたまさにその時。
「諦めたらそこでパンドラ終了だよ!」
 フランからの熱い声援が届く。
「そっすよね……元気があれば……なんだってできるっす!」
 ついに一回、されど一回。正しいフォームで身体を起こしきった。頭上の宝玉がそれを祝福するように輝く。

「よし、桜沢。キャッチボールといくか」
「おう! 望むところだ!」
 久しぶりにボールを握り、義弘は感慨に耽る。
「亘理さんはやったことがあるんっすね?」
 レッドが興味深そうに二者を見つめる。桜沢とレッドは志(ぱっるすちゃーん)を同じくする仲間だ。
「ああ。……ガキの頃はよ、ボールとバットがあるだけでくたくたになるまで野球やれたよなあ」
「分かる分かる! でも、野球に年齢制限は無いぜ!」
 投げて取って投げ返す、シンプルな動作にはたくさんの思い出。童心に返れば、自然とペースが上がる。
「それ行けっ!」
 メンタル面に不安を感じていた義弘だったが、普段から鍛えている者はやはり強く、投球のキレも衰え知らず。楽しそうな様子に「ボクもやってみたいっす」と、レッドは腹筋をぷるぷるさせながら思った。

「お、お水は大事、お水は大事……」
 アルメリアは、少し張り切り過ぎただろうか。まだ頑張る親友を横目に、ふらふらと泉へ向かう。ほんのり甘くひんやりとした水が喉を潤し、心肺へのダメージをも和らげた。
「おー、これはなかなかいいペースだネ」
 ジュルナットも、泉で一息吐きながら宝珠の状態を伺う。溜まった輝きはまだ3割ほど。
 ここからが踏ん張りどころだ。

●自分を追い込んで行こう
 サイズのストイックなハンマー振りは、宝珠へ確実にエネルギーを送り続けている。途中、もふもふのパンと泉の水で効率よくエネルギーの補給も行った。
 単調な作業の繰り返しだが何という事はない、いつもやっているようにやれば良い。
「鍛冶技術に上限無し……っと!」
 技術の向上にもなって、一石二鳥だ。

 走り込みを終え、水分補給を行った愛無が挑むのはいよいよ本格的なフィットネスだ。
「腕立て、バイシクルクランチ、バーピーを各20ずつ1セット、か」
 腕、腹筋、下半身を均等に鍛えるメニューであり、いずれも負荷が高い。セット毎に挟む休憩や、水分補給も忘れない。地球外静物にしては、あまりに計画的なトレーニングだ。物凄い事前学習を行ったのかも知れない。
 そのストイックさに、宝玉の輝きは増すばかり。

「キツくても辛くない! キツくて楽しいっす!!」
 レッドは笑顔を貼り付け叫ぶ。その腹筋は崩壊寸前。
「愛無チャンもレッドクンも、頑張るねぇ。おじいちゃんはゆるゆるいくヨ」
 ジュルナットもローテーションを続ける。一式終わったタイミングで給水しながら、仲間を励ます。

「大丈夫大丈夫君ならできるヨ! そうそういい感じいい感じその調子で続けていこウ! 諦めちゃ駄目だヨほらイワシもピチピチッて頑張ってるんだからサ!」
 突然火が付いたように一息で叫んだジュルナットに、全員の視線が集まる。

「はーいみんな一緒ニ!」
 そうだ、敵は己自身でも頑張るのは皆一緒。腕を引きつらせながら、フランも大きく息を吸って。

「もっト! 熱ク! なれヨオォォォォォ!!!」
「もっと熱くなれよー!!」
 大いなる声援(スーパーアンコール)を全員へ送った。

「……な、何だか身体が物凄い熱いわ!」
 その声援は、ジョギング行っていたアルメリアに火を付けた。これは、確実に脂肪が燃えている! 今がボーナスタイムだと、ペースを上げる。汗で前髪が張り付いても大丈夫。この汗は燃えている証だ。
「ボクももっと! もっと熱くなるっす!」
 レッドも闘志を燃やし、深い場所にある筋肉と可能性を燃やして身を起こす。しかし、彼本人の意志とは違う――本能が危険だと悲鳴を上げる。何しろ、可能性まで薪にくべたのだ。
「こ、ここはいったん休憩っす! ちょっと後お願いするっす!」
 仲間に託して泉へと駆けて行き、頭から突っ込んでクールダウン。
「あぁ……い、生き返るっす……!」
 頑張った後の冷たい水。涼やかで甘美なそののど越しは、努力した者のみが味わえる至福だ。

「野球の時間だー!」
 フランが桜沢に提案したのは千本ノック。野球と聞いて当然快諾。華奢な彼女を気遣って、まずは小手調べ的な球を送る。フランはそれを何なくキャッチ。
「あたし、お仕事で混沌ハムファイヤーズの8番キャッチャーやったんだー」
「え、マジ!? あの混沌ハムの!」
 そうと聞けば、手加減する方が失礼か。桜沢は黄金に輝く四番バッターとしての力を開放し、混沌の『守り手』に思い切り放つ。
「う、うおおおしびれるぅぅ!!」
 ラド・パウのランクをも有するホームラン打者の一撃は、フランの身体ごと吹き飛ばしてしまうと思われたが――
「頑張れ頑張れ! 筋肉も喜んでるよ!」
(そうだ。筋肉が、あたしにもっと輝けと囁いている――!)
 ウィリアムの声援と諦めないメンタルが、潜在的なキャパシティを呼び覚ます。その可能性ごと全身を燃やし、その剛球を受けきった。
「うん! まだまだいけるよ!」

「それじゃあボクはボール拾いをするっす!」
 レッドも元気よく参戦。拾うだけなら、残りの体力でも何とかなるだろう。

「……そう思っていた時期が、ボクにもあったっす……」

 ノックは千本。拾うだけでも腕は震え、走る度に身体が軋む。それでも、桜沢とフランの両者には手加減も慈悲もない。
「僕も……野球する……ノック取る……」
 ひと通り身体を動かした後、ウィリアムが球を追いに走る。手足に重りを付けて木の上、森の中を跳ね回っていたジュルナットもそれを見つけ、面白そうだとグランドへ降り立つ。音も無いスマートな着地は、優れたバランス感覚と強靭な足腰の成せる業だ。
「ジュルナット君!」
 球を拾ったウィリアムが、ジュルナットへと送球する。ジュルナットは軽いジャンプで難なくキャッチ。
「いやー、スポーツって良いネ!」
「そうだね! 走るの大好きさ!」
 最高齢の二人が、息も絶え絶えに笑い合った。

●筋肉が喜んでるよ
 さて、アルメリアが最大の敵と定めたのはお腹である。
 脂肪が真っ先に付くのも、最後に燃やされるのも此処であり、いわばラスボスだ。
 草の絨毯に寝そべり、揃えた両足を持ち上げてキープ。
「レッグレイズ!」
 人前でやるとちょっぴり恥ずかしいが、これも妖精郷へ辿り着く為。
「今の私、キレてる! キレてるわよ!」
「もう少し! 後少し!」
 休憩に入ったウィリアムの声援。諦めないその気持ちに、筋肉は応えてくれるはず――!

「俺も基本に戻ってみるか」
 休憩を終えた義弘がスクワットを行う。
(膝が前に出ないように……膝をしっかり落として……と)
「な、なんて仕上がったスクワット……最っ高よ!」
 膝の位置や落とし方は、やってみると意外と難しい。それを良く知るアルメリアが、負けられないと闘志を燃やす。
「腹筋ちぎりパン!」
 義弘の腹にも力が篭もり、ちぎれそうな程割れた腹筋に、フランが惜しみない声援を送った。
「こ、このちぎりパンは傷だらけだと思うぞ?」
 刺されたり撃たれたりは、どの世界でも日常茶飯事。
「細かくちぎれて、食べ易くっていいと思う!」
「お、おう?」
 筋肉が固まってきたら、伸ばして柔らかく。さあ、もうひと踏ん張り。

(珍しく『疲れている』が)
 愛無は孤独な戦いを続ける。リズミカルな呼吸。意識はひたすら内へ、裡へ。喰らうべき敵の姿が、内観の向こうに視える。追い込み、喰らうのは己自身。
 往け、その向こう側へ――
 宝珠が凄まじい光を放つ。

●可能性と希望と展望と
 ようやく終わった。ハンマーを止めたサイズのもとに、大きな宝珠が降りてくる。
「先に行く前に……景色もいいし、本格的に休憩するか」
 義弘が持参したサンドイッチを広げる。運動後の水もまた格別。
(おむね…おむねおっきくなれ……!)
 間髪を入れずプロテインを煽るフラン。一番効くタイミングを逃すまいと、腰に手を当て一気に飲み干す。
「かなり効いたな。これからも地道にアレ、やってみようかな」
 草の中にダウンしたウィリアムは、水筒の水を飲みながら『脱ぐとすごい』を夢想した。

「あ、虹が、見えるっす……」
 同じくダウンしたレッドの頭上、宝珠があった場所はなないろに輝いていた。

成否

成功

MVP

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳

状態異常

レッド(p3p000395)[重傷]
赤々靴
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)[重傷]
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)[重傷]
緑雷の魔女
恋屍・愛無(p3p007296)[重傷]
愛を知らぬ者

あとがき

桜沢「お疲れ様! 皆、トレーニング詳しいんだなあ! ちょっと驚いたぜ!」

頑張り過ぎて筋肉痛(重症)になった方も、マイペースを保ったり工夫したりで走り続けた方も、
皆さんの運動ひとつひとつがすっごく輝いておりました!!
MVPは非常に美しいスクワットを見せてくれた義弘さんへお送りします。スクワットは基本!

この度はご参加、本当にありがとうございました。
これからどんどん暑くなってくるので、水分はきちんととってくださいね!


私事ですが、当方プランクと腕立てが最近まで一回も出来ませんでした。
一週間ぐらい頑張ったら出来るようになって、その時はホント嬉しかったですね!

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