PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<虹の架け橋>From one to eleven,from eleven to one

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●警戒の斜め上
「うわっ、何だこの鎧は!? ただ動いて襲いかかってくるだけじゃないのか!」
「こいつら、数が多い上にすばしっこいぞ!」
「だめだ、耐えきれ……うあああっ!」
「クンターっ!!」
 果てしない宇宙を思わせる闇の色に星々が瞬くのは、『大迷宮ヘイムダリオン』の領域の一つ。この領域の攻略を目指して足を踏み入れた冒険者達は、阿鼻叫喚の戦況に見舞われていた。
 冒険者達を待ち受けていたのは、動くフルプレートアーマーだった。迷宮にぽつんとフルプレートアーマーがある時点で、冒険者達はこの鎧が動いて襲いかかってくる所までは予想出来ていた。
 しかし、そのフルプレートアーマーは部位ごとに分離すると、自由自在に空を飛んで冒険者達にビームを浴びせかけてきたのだ。クンタと呼ばれた如何にも盾役の男が、味方の代わりに集中攻撃を受けて、瞬く間に倒される。
「くっ……ここは退くぞ!」
 盾役があっさり倒された上に、数で劣っていては危険だ。一行のリーダーが素早く撤退の判断を下すと、冒険者達はクンタの身体を引きずりながら、この領域から逃れようとする。結果、何人かが戦闘不能に陥りつつも、殿役を務めるリーダー以外はこの領域からの脱出に成功した。続いて自身も脱出しようとするリーダーの頭に、瞬く間にフルプレートアーマーの兜が被せられる。
「痛ッ!?」
 何が起きたかわかららず、ただ首筋の痛みに叫びを上げるリーダー。しかし、次の瞬間には兜はリーダーの頭から外れ、領域の奥へと消えていった。
「……来ない、のか?」
 追撃を警戒したもののその様子は無いと見たリーダーは、仲間達の後を追ってこの領域から離脱した。

●例え難敵だろうとも
「大迷宮ヘイムダリオンで、厄介な敵が出てきました」
 ローレットの一室で、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は眼前のイレギュラーズ達に告げた。
 妖精郷の門アーカンシェルの破壊に起因する、大迷宮ヘイムダリオンの攻略。それが妖精郷に帰れなくなった妖精達の、ローレットへの依頼だった。ローレットはこの依頼を受けて、大迷宮ヘイムダリオンの攻略を進めている。
 その途中で、勘蔵が言うように厄介な敵が出てきたというわけだ。
「敵は、パーツごとに分離してビームを撃ってくるフルプレートアーマーです。数が一気に増えるだけに避けにくく、集中攻撃を受けたら厄介でしょう。実際、それで先に挑んだパーティーは盾役を一人瞬殺されています」
 さらに厄介なことには、宇宙のように見える周囲だろう。浮遊しているように見えてなまじ足場はあるので、平衡感覚が狂って行動が阻害されるという。
「しかしながら、虹の宝珠はこのフルプレートアーマーを倒さねば得られない、と見られています。どうか、皆さんの力でこのフルプレートアーマーを倒してきて下さい
 勘蔵はそこで一息間を置いて、深く頭を下げる。
「皆さんなら勝てると信じていますので、よろしくお願いします」

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は<虹の架け橋>のシナリオをお送りします。
 パーツごとに分離と言って特撮が出てくるかロボットアニメが出てくるかで年代が分かれる気がしますが、とりあえずこのフルプレートアーマーは子安ボイスでしゃべったりはしません(--;)
 今回の難易度はNORMALですが、ロケーションも相まってHARD寄りになっているかと思います。ご参加頂く際は、その点にご注意下さい。

●成功条件
 動くフルプレートアーマーの撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 大迷宮ヘイムダリオンの領域の一つ。
 周囲は宇宙のようであり、広さや高さは無限です。
 しかし、地面とは認識出来ませんが地面はあり、重力もしっかり働いています。
 この状況がイレギュラーズ達の平衡感覚を狂わせるため、命中と回避に-10、FB値に+10のペナルティーが入ります。

●動くフルプレートアーマー ✕1
 この領域に来る者の行く手を阻むオートマタです。
 OPにもあったように、パーツ別に分離します。一方、人型の姿でも戦闘可能です。
 各パーツで固有のHPを持っていますが、人型の時に受けたダメージは後述する特定のパーツ狙いを行わない限り各パーツに均等に割り振られます。一方、各パーツを攻撃して撃破した場合、オーバーキル分のダメージは切り捨てられて他のパーツにダメージを与えたりはしません。
 分離/合体には副行動を消費します。
 
・人型状態
 フルプレートアーマーとして各部が組み合わさっている状態です。
 この状態で特定のパーツを狙うことも出来ますが、その場合は命中にペナルティーが入ります。元々金属である上に盾持ちであるため、防御技術は極めて高くなります。

 攻撃手段など
  ビームサーベル(通常攻撃) 神至単 【弱点】【追撃100】
   威力は高く、パーツによる砲撃数発分の威力はあります。
   左右の腕で確実に一撃ずつ行います。
  薙ぎ払い(アクティブスキル) 神至範 【弱点】
   左右の腕で周囲を一気にビームサーベルで薙ぎます。
  BS無効
  再生(回復量(大))

・分離状態
 頭、胴体、右上腕部、右手、左上腕部、左手、右大腿部、右足、左大腿部、左足、盾の11のパーツに分かれます。この状態では人型状態に比べ回避力が上昇し、防御技術が低下します。
 各パーツは同時に行動し、何個かが一人を狙って攻撃します。特殊ルールとして、一人に対しての攻撃は全部のパーツの分を一回で判定し、ダメージ適用も一回のみとします。
 
 攻撃手段など(共通)
  ビーム砲(アクティブスキル) 神遠単
   【万能】【移】【多重影N】【変幻10✕N】【邪道10✕N】
   N個のパーツで一人を攻撃します。ダメージはN倍となります。
  BS無効
  再生(回復量(小))
  飛行  

 攻撃手段など(頭のみ)
  検体採取(アクティブスキル) 神至単 【必中】【移】【無】【かばう無効】
   瞬間移動で標的の頭に被さり、血液や毛髪、細胞を採取します。
   瞬間移動であるため、この攻撃から味方をかばうことはできません。
   この攻撃を行った後は、全力で撤退します。
   その場合、頭を倒さなくても他を倒していれば成功条件は達成です。

 攻撃手段など(盾のみ)
  決死の盾
  ハイ・ウォール

●備考
 このシナリオではイレギュラーズの『血』『毛髪』『細胞』等が、敵に採取される可能性があります。

●判定について
 現在、『ゲームバランス調整予定のお知らせ』が出ております。
 このシナリオの判定に関しましては、現時点でのルールではなく判定時≒リプレイ執筆時のルールで行いますので、予めご承知おき下さい。
 なお、執筆は他のリプレイの執筆が予定より早く終わらない限り、出発から8~9日後になる予定です。

●EXプレイングの使用について
 本シナリオではEXプレイングを使用することが可能です。
 ただし、EXプレイングは『使用しなければならないわけではありません』。
 使用しなくても成功条件を満たすことは可能なはずですので、その上で使用するかどうかご判断下さい。

●EXプレイングについて
 EXプレイング機能は選択する事でそのシナリオにおけるキャラクターの獲得リソース(経験値・Gold)を130%にし、追加のプレイング字数、ないしは関係者登場プレイング(共に最大200字)をかける権利を得る機能です。

 EXプレイング機能は追加プレイングを書いたり、関係者登場を希望しある程度の希望内容を記載する事が出来ますが、描写量が増えたり、関係者の登場を確約するものではありません。EXプレイングで担保されるのは『リソース増加』であり、その時点で消費されるRC分の提供は完了している、と定義しています。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <虹の架け橋>From one to eleven,from eleven to one完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月21日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
那須 与一(p3p003103)
紫苑忠狼
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女

リプレイ

●攻撃手段はともかく外観は似てないはず
「深緑は僕ら幻想種の領域だと思ってたけど、
 こんなトンデモ空間が広がってるなんて思わなかったよ……
 妖精たちって、一体何なのさ」
 漆黒の闇の中に星々が瞬く、宇宙を思わせる領域の中に足を踏み入れた『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は、困惑したようにつぶやいた。だが、そうしてばかりもいられない。
 ガシャリ。領域の奥に置かれたフルプレートアーマーが、イレギュラーズ達の出現を感知したか動き出したからだ。

「……あー、うん……あのリビングアーマー、
 どこかで見たような造形してるのは気のせいではござらんよね……」
 遠い目をしながら、『はですこあ』那須 与一(p3p003103)が独り言ちる。きっと、冒険者稼業をやっていれば、フルプレートアーマーを目にする機会は十二分にあるから見たことがある気がするのだろう(すっとぼけ)。
「……とりあえず、許されるならリビングアーマーに
 某大将風にアテレコさせてほしいでござる……」
 ごめんなさいそれはリプレイがやばくなる奴なんで勘弁して下さい(土下座)。
「駄目でござるか。では、大人しくあきらめるでござる……」
 そうして頂けるとありがたいです、はい。
「分離してビームを撃ってくる敵、ですか。胸にXの傷とかついてたり……けほんこほん」
 与一と合わせるように、『魅惑のダンサー』津久見・弥恵(p3p005208)も独語する。
 いや確かに攻撃方法はその胸にXの傷がついてるロボットに似てるし、あまつさえ生体データとか取りに来るけど、このフルプレートアーマーには胸にXの傷も北斗七星のような傷も刻まれてはいない。いないんだってば。

「これはいわゆる、『割に合わない仕事』って奴ね。
 ……ま、いっか。やってやるわよ。
 長い長いヘイムダリオンも、もうすぐ踏破できるはず……はずだもの!」
「そうだね。どんな相手だろうと、突破しなければ先へ進めないならば壊して押し通るまで。
 妖精郷で助けを待つ妖精達のためにも、こんな所で足踏みしてはいられないからね!」
 ふぅ、とため息をついてから気合を入れなおした『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)の言葉に、『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)が頷きながら応じる。
 二人とも、妖精郷に辿り着くためにヘイムダリオンの様々な領域に挑んできた身である。これまでの苦労を思えば、多少割に合わなかろうともどんな敵が相手だろうとも、ここで躓いて足止めを食らってなどいられなかった。
 幾度もヘイムダリオンに挑んできたのはアルメリアとウィリアムだけではない。『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)も同様である。そのサイズだが、今回は普段と様子が違っていた。
「ふむ、俺みたいな生きた装備だと思ったが……
 鍛冶屋の観点から見てあれは錬金術製の鎧だ。
 今までの依頼から考えて……妖精郷を襲った魔種が作った魔物だな。
 あれは確実に妖精に害する存在だ、虹の宝珠関係なしでも倒す!」
 サイズは今までのヘイムダリオン攻略については、とにかく一刻でも早く虹の宝珠を入手することを目指してきた。しかし、今回は虹の宝珠とは関係なく、絶対に倒さねばならぬとばかりに激しい敵意をフルプレートアーマーに向けていた。

「今回は鎧タイプの敵かあ。この迷宮には、いろんな敵が居るんだなあ。
 一対多で立ち向かわないと、相手にならない敵ってのは、おっかないね」
「このデカブツ倒さないことに先に進めないってんじゃしょうがないよ。
 敵がおっかなかろうが、感覚が狂おうが、関係なく僕らは強い。
 みんな、油断せずに行こう!」
 フルプレートアーマーが近づいてくるのを見ながらも、何処かぼんやりとした様子でポツリと漏らしたのは『砂漠の冒険者』ロゼット=テイ(p3p004150)だ。ルフナはそんなロゼットを励ますかのように、後ろからポンと肩を叩いて励ました。
「うん、そうだね」
 もちろん、ロゼットとておっかないとは言いつつも臆しているつもりはない。自身の全力を尽くして、このフルプレートアーマーに立ち向かうつもりであった。

●戦端、開かれる
 すぐにイレギュラーズ達とフルプレートアーマーとの距離は縮まり、戦闘が始まった。
「私の舞いに見惚れるだけの精神があるかどうかはわかりませんが、いきますよ」
 最初に動いたのは、弥恵だ。フルプレートアーマーとの距離を瞬時に詰めると、ミドルキックを放つ。これは盾に受け止められてダメージを軽減されてしまったが、弥恵にとっては狙い通りだった。
『――用途不明のユニットが接続されました、直ちに使用を中止してください』
 サイズは砲撃用のユニットを鎌に装着すると、ユニットから発せられる警告の音声を無視してフルプレートアーマーを撃った。弥恵の蹴りを受け止めたためにフルプレートアーマーは盾での防御ができず、もろにビームを受けてしまう。
(アンタしか見ないなら、平衡感覚は関係ないわね。
 分離する前に、できるだけダメージを与えてやるわ)
 地面が見えずに平衡感覚が狂うこの領域であるが、視線を標的に集中していれば問題ないとしてアルメリアは魔法陣を描く。魔法陣から放たれた碧の光弾は、一本の長大な杭となりフルプレートアーマーに向かっていった。
 回避を試みて杭によるダメージを軽いものに留めたフルプレートアーマーだったが、アルメリアの攻勢にはまだ続きがあった。
「それで終わりと思ったの? もう一発行くわよ」
 再度、魔法陣から碧の光弾が放たれ、一本の杭となる。同じ攻撃が二度も続くとは思わなかったか、先に放たれた杭を避けた隙を衝かれたフルプレートアーマーは今度はズドン! と大きな音を立てて直撃を受け、サイズのビームを受けた場所を背中まで貫かれてしまう。
 ビームサーベルをぐっと握ったフルプレートアーマーは弥恵に斬りかかり、浅くはない傷を負わせた。
「――狙い撃つでござるよ」
 与一は『Hades03』による狙撃を遠距離から敢行するものの、これは弾丸をビームサーベルに払われてしまう。
「HAHAHA、フルプレートがなんだって?
 どう見たって、そんなものよりミーのボディの方が強そうだろうHAHAHA!
 ちょっとばかし戦いにくくはあるが、なに! ちょうど良いハンデってもんさHAHAHA!」
 鎧など惰弱な代物に過ぎない。そう言わんばかりに、『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)はフルプレートアーマーに接近。弥恵の反対側に回り込むと、ワンツーのコンビネーションを仕掛けようとする。
「Shit!」
 だが、ビームサーベルで上手く牽制され、防がれてしまった。
「どんなに硬くても、この術なら……」
 ウィリアムは空気を破壊の力に変換し、爆弾として発射する。鎧貫――よろいぬき――と名付けられたその術は、爆弾の着弾箇所から超振動を浸透させ全ての防御を無効とする。果たして、その名のとおり爆弾はフルプレートアーマーの右大腿部を穿ち貫いた。
「援護するよ、任せて」
 ロゼットは立て続けに言霊と化した号令を放ち、仲間達の気力の消耗を癒していく。中でも、大技を連続で放ったばかりのアルメリアには大いにこれが助けとなった。
「ありがとう。これで、次からも全力で魔法を撃てるわ」
 嬉しそうに礼を述べるアルメリアに、ロゼットはこくりと頷いた。
 一方ルフナは、ビームサーベルで斬られた弥恵の傷を故郷の森の魔力を用いて癒す。完全に回復とまではいかなかったものの、ほぼ無視出来るところまで傷は癒えた。
「ありがとうございます!」
 礼を述べる弥恵の声は、傷を感じさせないほどの活力を感じさせた。

 イレギュラーズ達の攻撃を受け、所々穴が穿たれたり装甲が凹んでいたりするフルプレートアーマーだったが、よくよく見ればその破損が少しずつ修復されている。修復は破損に追い付いてこそいないものの、これは長くなりそうだとイレギュラーズ達の誰もが感じていた。

●飽和的集中砲火!
 再び、弥恵が盾を封じるために牽制の蹴りを放つ。心なしか、弥恵の脚を受け止める盾が先ほどよりも力強さに欠けるように、弥恵には感じられた。
「皆様の攻撃が、効いていますよ! このまま、押し切ってしまいましょう!」
 その声に応えて、ウィリアムが再び鎧貫を放つ。破壊の爆弾はフルプレートアーマーに着弾すると、やすやすとその装甲を貫通していった。
「まだだよ! もう一度!」
 さらにウィリアムは重ねて空気を破壊の爆弾に変えて放つ。今度は直撃し、フルプレートアーマーにさらに大きな穴を穿っていった。
「勝負は今のうちね。ロゼットのおかげで気力は漲っているし、どんどん行くわよ!」
 ウィリアムに続いて、アルメリアが魔法陣を描く。魔法陣から二度碧の光弾が放たれると、それは二本の杭となって、フルプレートアーマーに突き刺さっていった。
「――妖精に仇成す存在は、許さない」
 畳みかけるようにサイズは魔力のビームを放ち、ウィリアムがフルプレートアーマーに穿った穴を大きく拡げていく。
「今度こそ、決めるでござる」
 与一は先程のリベンジとばかりに、慎重にフルプレートアーマーを狙う。
 そっと静かに『Hades03』の引き金を引くと、狙い澄ました一撃がズドン! と命中して貫通し、フルプレートアーマーにもう一つ大きな穴を穿った。
「ミーもリベンジと行こうか。今度は、ディフェンスなんてさせないさ」
 左右にステップを踏んでいた貴道は、与一の狙撃によって出来た隙を衝いてフルプレートアーマーの懐に入る。そこからのワンツーは、既に穴だらけになっているフルプレートアーマーをぐしゃりと大きくひしゃげさせた。
 ロゼットは再び言霊と化した号令を連続して放ち、味方の気力の消耗を回復させていった。

 目に見えてダメージが大きくなっているフルプレートアーマーだが、突如イレギュラーズ達の前で弾けた。否、正確に表現するならば、弾けるように分離した。
 そして、兜と胴体と盾以外がイレギュラーズ達の後衛を包囲するように飛行していく。次いで、盾以外の全ての部分が、アルメリアに向けて一斉にビームを浴びせかけた。
「耐えて、ハイ・フォースフィールド! ……うっ、ぐうっ……」
 アルメリアは緑の光からなる大盾を掲げて耐えようとするが、全方向から放たれるビームの全てをそれで受けきれるはずはない。側方や後背からのビームをまともに受けて、どさりと倒れた。
「……何よ、このくらい。私は、こんなところで倒れるわけにはいかないのよ。
 妖精郷で待ってくれてる友人が、いるんだから……!」
 しかし、アルメリアは運命を変える可能性の力を費やし、よろけながらも立ち上がる。ここまで来て領域の攻略に失敗してアルヴィオンに辿り着けなかったとあっては、その友人にどう顔向けが出来ようか――。

 アルメリアは立ち上がったものの、次を食らえば今度は戦闘からの脱落を避けられない。
(攻撃を担ってくれる仲間の脱落は避けたいよね。
 僕なら、パンドラ込みで二回……上手くいけば、三回はあの攻撃からの盾になれる)
 そう判断すると、ルフナはアルメリアをガードしに入った。
 問題は、全方位からの攻撃に対してどう盾になるかだが――。

●兜の体組織採取
 アルメリアが早々にパンドラを費やしたのを見て、イレギュラーズ達の間には緊張が走った。
 早く決着をつけないと、あの攻撃を何度も許してはジリ貧になりかねない、と。
 そして、イレギュラーズ達にはもう一つの懸念もあった。
「あの兜に気をつけて! 前にも見た事がある、こいつら体の一部を持っていくんだ。
 ――なんに使うのかは、知らないけどね」
 ロゼッタが注意を促したとおり、ヘイムダリオンにおいてはイレギュラーズ達の体の一部を奪っていくモンスターがいることが知られていた。そして、先にこの領域に挑んだパーティーの情報から、このフルプレートアーマーの兜がその役割を果たすことはイレギュラーズ達にはわかっていた。
 うかうかしていると、誰かがこの兜に体の一部――血液や髪など――を、奪われかねないのだ。

「行かせませんよ。貴方様は私とのダンスに付き合って頂きます」
 弥恵は盾に肉薄し、その自由な移動を封じた。のみならず、魔力を宿した踊るような格闘術で盾を翻弄する。他の部分と合体している時に半ば以上のダメージを受けていた盾は、次々と拳を、蹴りを叩きこまれて、糸が切れたようにガランと地面に落ちる。
「――こんなものですか。物足りませんね」
 盾だけにもっと耐久力に優れているのだろうと思っていた弥恵は、拍子抜けしたと言わんばかりに独り言ちた。もっとも、盾による他のパーツへの防御は厄介なだけに、早々に仕留められたことにその一方で胸をなでおろすのだった。
「邪魔者はいなくなった! 一つたりとも逃がしはしない!」
 盾が倒れたのは好機とばかりに、サイズは兜にビーム砲を撃つ。妖精に仇成す存在を許しておけないサイズとしては、ここで兜を取り逃がすわけにはいかないのだ。だが、分離したことで敏捷性が上がった兜は、ビームを受けこそしたものの直撃を回避する。
「ちょこまかと、小うるさい!」
 追撃のビームを放ったサイズは、再度攻撃を兜に命中させる。だが、今回も直撃には至らず、弱ってはいるものの兜は健在だった。
「ええい、くそっ!」
「任せておいて。これで仕留めるわ」
 悔しがるサイズに、アルメリアが安心させるように宥めながら、魔法を準備する。一度体の一部を奪われたことのあるアルメリアにとって、自身がもう一度やられるのも御免被る話であったし、誰かの一部を奪われるというのもぞっとしない話であった。
「吹っ飛ばしてやるわっ! ……えっ、消えた!?」
 渾身の滅殺術式が兜を捉えた! アルメリアがそう確信した瞬間、兜の姿がアルメリアの視界から消えた。

 突如、貴道の視界のほとんどが暗くなり、その首筋にチクリとした痛みが走る。アルメリアの雷撃が命中する瞬間、兜はテレポーテーションで貴道の頭に被さり、小さな針を突き刺して血液を吸い取ったのだ。
「Shit! ミーに来たか!」
 何が起きたかを貴道は一瞬で悟り、兜に手をかけようとする。だが、兜は貴道の手より早く頭からすぽっと脱げると、全速力で領域の奥へと消えていった。
「……郷田殿がアーマーヘッドの能力を受けたでござるか。
 ははは……これは厄介なことになりそうでござるね……」
「――HA! ミーのデータを持って行ったのなら、
 どんな使われ方をされるか予想するのはイージーさ。
 拳で殴りあって、ノックアウトすればノープロブレムというもの!」
 それを目の当たりにした与一が、力なく乾いた笑いを漏らす。だが、貴道はそれを杞憂とばかりに笑い飛ばした。自身のデータが用いられるとするなら、長所はタフネスと格闘戦闘力になるだろう。それがどれほどのレベルで反映されるかは未知数だが、そんな敵が出てくるならとにかく至近距離で殴りあって勝てばいいのだ。

「――危ない!」
 同時に、胴体と両手両足、両上腕部、両大腿部が再びアルメリアに砲口を向ける。その瞬間、ルフナはアルメリアに覆い被さるように、とっさにその体を押し倒した。
「くああああっ!」
 背中にビームを幾重にも浴びせられて、痛苦にうめくルフナ。全方位から放たれるビームからアルメリアを庇うには、こうするしかなかったのだ。
「ちょ、ちょっと。だいじょう……」
 そこまで言いかけて、アルメリアははっとした表情をする。
(えっ、これってもしかして、おねショタ、いえ、ショタおね――!?)
 戦闘中でありながら、むっつり故か一瞬そんな妄想に囚われるアルメリア。
「はぁ、はぁ。何とかパンドラは使わずに耐えきっ――!?」
 一方のルフナは荒い息をしながら起き上がろうとして、はっと顔を赤らめる。アルメリアの豊満なな体が、敵の攻撃からかばうためとは言え女性を押し倒してしまったことを、ルフナに認識させてしまったのだ。
 ――何とか「これは戦闘中のアクシデントだ」と己の心に言い聞かせつつ立ち上がる二人だったが、頬が赤く染まっていくのと何とも言いようのない気まずい空気が漂うのはどうしようもできなかった。

 貴道の血を奪われて兜に逃げられたイレギュラーズ達であったが、それで落胆してはいられない。まだ、戦闘は続いているのだ。
「逃げられてしまったものは仕方ないよ。気持ちを切り替えていこう。
 とりあえず、足から狙って潰していくよ」
「この者も、君に合わせるよ」
 ウィリアムは仲間達を励ますように声をかけながら、敵を穿つ破壊の弾丸を放つ。それに合わせて、ロゼットが右足に駆け寄りながら腰に光り輝く羽根を生やす。二人の攻撃を受けた右足が、カラカラと乾いた音を立てて不可視の地面の上を転がっていった。
「拙者が動きを止めるでござる。その隙に……」
「OK! ミーが仕留める!」
 左足に対しては、与一が敵の動きを縫い留める魔弾を放つ。魔弾は長く左足の動きを止めることはできなかったが、命中した衝撃で一瞬だけは左足の動きを止めた。そして、貴道にとってはそれで十分だった。
「HAHAHA、デストローイ!」
 貴道の拳が、左足に連続して叩きつけられる。殴られた勢いのまま吹き飛んだ左足は、右足同様に乾いた音を立てて不可視の地面の上を転がった。

●領域、攻略完了!
 この時点で、戦闘の趨勢は決まったと言っていい。手数で相手を翻弄するタイプがその半数を喪ったのだから、勝敗の行方は明らかだった。
 まず、胴体が弥恵、アルメリア、ウィリアムの集中攻撃を受けて倒される。左手はサイズと貴道に、右手はロゼットと与一に倒された。
 残る両上腕部、両大腿部はウィリアムを狙い強かにダメージを与えたものの、パンドラを費やさせるには至らない。そして、イレギュラーズ達による逆襲を受け、残らず殲滅された。

 フルプレートアーマーの頭を除く全ての部位が倒れたところで、胴体の一部が虹色の光を放ち球状へと変形していく。もしやと思ったイレギュラーズ達が手に取ると、領域の奥に新しく出口が現れた。イレギュラーズ達は、この領域の攻略を成し遂げたのだ。

成否

成功

MVP

アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女

状態異常

錫蘭 ルフナ(p3p004350)[重傷]
澱の森の仔
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)[重傷]
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)[重傷]
緑雷の魔女

あとがき

 シナリオへのご参加、どうも有難うございました。皆様のおかげでこの領域も無事に突破でき、ヘイムダリオン踏破へとまた一歩近づきました。

 MVPは、最初の2ターンでEXA判定が共に成功したという幸運も込みではあるものの、合体時のフルプレートアーマーに最大のダメージを与えたアルメリアさんにお送りします。
 あの合体時の強烈な削りが無ければ、もう少し戦闘が長引いてもっと苦戦を余儀なくされていたのではないかと思います。まぁ、その分フルプレートアーマーのヘイトを集めてパンドラを費やしたりハプニングに見舞われることになりましたが……。

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