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シナリオ詳細

SyN Energy pipeline窃盗組織について対策と抹殺

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●欲望と貧困とそのさきに生まれる死
 喧噪とジャズ演奏。酒と揚菓子のにおい。
 陽光のはいる昼間から続く賑やかな風景の奥に、彼の姿はあった。
 クリムゾン13(クリムゾンサーティーン)。ラサ幻想間に位置し休憩地点として活用されるごく小さな街を取り仕切る男であり、片腕を失った元傭兵であり、ローレットに極めて協力的な情報屋でもあった。
 彼の誘いをうけて来店し、カウンターに腰掛けたあなた。
 あなたに空のグラスをひとつ差し出すと、クリムゾン13は『注文を言いな。一杯目の代金はとらねえよ』と左右非対称に笑って言った。

「今回やってもらうのは犯罪組織の鎮圧だ。
 俺の調べでは、戦えるやつは七人程度で他は……まあ弾よけにすらならねえだろうな。この七人を処理できれば依頼は成功したと思っていいぜ。
 で、背景は聞いていくかい? いらねえなら、敵戦力の話をするまで寝ててもいいぜ」
 一杯目のグラスがあいたか空かないかといった頃合い。木製のメニューボードをカウンターへおもむろに立てて、あなたの顔を見た。
 追加の注文を求めている、ようだ。

 情報量がてらに注文をしてやると、後ろの女性スタッフにオーダーを通しつつクリムゾン13は語り始めた。
「今回の依頼主はSEEC――SyN Energy Exporting Countriesの警備部門だ。
 SEECはラサで流通してるSyNエネルギーの管理と運用を行う半公営団体だな。SyNって言葉になじみはねえか? ストーブだとか自動車だとかパイロニウムロケットだとか魔道浮遊装置だとか……まああの辺に使える便利な固形エネルギー資源だと思ってくれ。こういう世界だからな。電池でも石油でも似たようなことができるんだろうが、いろいろ効率がいいってんで常用してる奴も多いって話だ。
 企業面接じゃねえんだ。SEECの仕事内容はこの程度でいいだろ。
 重要なのはここの警備部門。SEECは毎年各国にSyNを輸送してるが、その輸送計画は極秘も極秘。俺でも手に入らねえ。なぜなら、計画が外に漏れればそれを襲撃してガメるやつが出てくるからな。
 けどそれを可能にした連中がいた。それがイデオレロス。ラサの犯罪者集団ってやつだ」

 『眠くなっちまったか?』といいながら塩を振ったピーナッツを銀の皿にのせて出してくるクリムゾン13。
「わりいな、こっからがあんたの知りたがる本題だ。
 イデオレロスってのは元々ラサの麻薬カルテルだったんだが、ザントマン事件の折にカノン派閥に与したことで活動がしづらくなったらしくてな、残った組織力をまるごとSyN窃盗に費やしたんだ。
 SEECにスパイを送り込んだり幹部を脅迫したりまあ色々やって輸送計画を手に入れ、でもって大量のSyNをガメてあちこちのエネルギースタンドやらに売りつけるっつー商売だ。
 今すぐ辞めさせてえがこいつらも生きるのに必死だからな。言葉だ交渉だって段階にはまず至れねえ。ってことはだ?
 ――ぶっ殺すしかねえよなあ?」

 意気揚々とクリムゾン13が取り出してきたのはイデオレロスの窃盗グループ。
 中でも戦闘がそこそこ可能なメンバーの構成である。
「編成はアタッカー、タンク、ヒーラーに分かれた7人。
 前衛CT型物理アタッカー
 後衛命中特化スナイパー
 高防御タンク
 回避タンク
 高HPタンク
 バフ&ヒーラー
 超長期戦型ヒーラー
 ――ってとこだ」
 こちらの編成や作戦にもよるが、イレギュラーズ前衛をおさえつけて続けながらスナイプするか、ヒーラーとスナイパーを保護しながら小規模な集中攻撃で一人ずつ削るかといった連携スタイルが考えられる。まず位置的にバフ&ヒーラーを中心とした陣形をとるのは確実だろう。
 そしてこれらをどう切り崩すかは、今回集まるローレットの顔ぶれで決まるはずだ。
「いい仲間が揃うことを祈ってるぜ。話し合いをするなら部屋を貸してやる。
 ……で、次の注文は?」

GMコメント

■今回の会議室:酒場『クリムゾンクラブ』
 情報をくれたクリムゾン13の経営する酒場。大きな馬倉をもち建物も広く、二階の小部屋で宿泊も可能。
 今回の会議は酒場スペースの奥にある10人用の個室席で行われる。
 余談だが代金はローレットもちらしいので、やり過ぎない程度にすきなものを注文して飲み食いしながら会議しよう。
 ロールプレイングもはかどり一石二鳥だ。

■オーダー
 偽の輸送計画を掴ませおびき出したイデオレロスを襲撃し、全員抹殺すること。
 依頼主のSEECは『全員抹殺』という言葉を使っているが、抹殺したかどうかの確証をとれないため実質的にはローレット・イレギュラーズに最終判断が任されているといっていい。
 少なからず、SEEC側は彼らをこれ以上看過するつもりはないようだ。
 余談だが、内部の機動部隊を用いずローレットに外注したのは内部スパイへの警戒のためであるらしい。

■シチュエーション
 SyNタンク輸送用の馬車(馬四頭編成の大型馬車)があるさびれた街を経由する。
 街は色々あって人がほとんど住んでおらず彼らもイデオレロスの身内が事前に買収かつ移住済。つまりはイデオレロスの作った巣にまんまと飛び込んでしまう……ように演じている。
 ローレット・イレギュラーズはタンクの中に潜んだり馬車の制御員等を装ったりして現地へ入り、わざと襲撃を受けることで彼らをおびき出す作戦だ。

 戦闘メンバーは戦術した通り。
 他にタンクの移動やその他雑用をこなす人間が数人いるはずだが、彼らは戦闘に関与しないだろう。するだけ命の無駄だということを理解しているらしい。

  • SyN Energy pipeline窃盗組織について対策と抹殺完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
トモエ・アストラルノヴァ(p3p008457)
執行者
ヴァローナ(p3p008520)
バーバヤーガ

リプレイ

●『クリムゾンクラブ』にて
 赤いグラデーションのかかったカーテンの奥。
 十人がけの円形テーブルの一角で、『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は肘をついて一人考え事をしていた。
(利便性の高いエネルギー資源が諍いの元となるのは、何処も同じだな。
 人の生活基盤に手を出し、暴利を貪る行為が如何に愚かな事であるか……)
「とはいえ、それは取り締まる人間がいて初めて成立する罪なのだろうがな」
 何気なく伸ばしたてが細切りするめをつかみ、煙草でも咥えるようにかじった。
「……?」
 考えを途中から口にしたことで、隣におとなしく座って銃のマガジンに弾を込めていたヴァローナ(p3p008520)が小さく首をかしげて振り返った。
「何の話?」
「Synエネルギーの話だ。石油泥棒にしろ霊脈泥棒にしろ、たどる末路とおこる事故は一緒ということだな」
「れいみゃくどろぼう……」
 聞き慣れない単語が連続したことで一旦考えるのをやめるヴァローナ。
「とにかく便利そうで、眉唾」
「便利すぎるものっていうのはね、三つに分かれるんだよ」
 『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)が煙草みたいにフライドポテトを指ではさむと、ニヒルに笑って口にくわえた。
「便利だけど危険。便利だけど高価。便利だけど、嘘」
「これは?」
「『危険』のほうじゃないかな」
 ヴォルペは汰磨羈の発言した『石油泥棒』にかけてそう述べた。
「運送計画を機密にするほど金になるけど、こうして盗んでさばくことができる。高すぎると買い手がつかなくてさばけないからね。
 少量ずつなら高くない値段で闇取引ができて、そのネットワークをもってるなら盗む価値があるってことじゃない? 専門業者が独占してるのは、扱いを間違うと爆発するとかそういうヤツじゃないかな。
 ま、今回はオイタが過ぎたってことで……」

「SEECから情報を抜き出した手並みは大したもんだがよ。
 いつまでも見過ごされる訳ゃあねえよなぁ。
 ラサで商売してるやつは舐められちゃあ生きていけねえ」
 大きな香草ソーセージとドライフルーツをつまみにラサ・ウィスキーをかたむける『黒狼』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)。
「だから、報復するなら徹底的にな。
 こんなリスクを冒してまで稼がにゃならなかったヤツには同情するが、やったことの責任は消えねえ」
「ほーゆーもんへふへー」
 ルカの皿からドライフルーツをシャッとひとつまみ奪ってその甘みでウィスキーを飲むウィズィニャラァム。
「そもそも私、SyNって聞いたことないんですけど。スマホの充電できます?」
「さあ? できるんじゃない? この世界ってそーゆーのルーズなんでしょ?」
 テーブルに突っ伏してごってごてのスマホで自撮りする『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)。
 その流れ(?)でルカからドライフルーツを盗み取ると、口に頬張ってもごもごした。
「ひげぼろふ」
「ん?」
「んぐ……イデオレロスってのに恨みは無いですが、これもお仕事なので!
 今月の家賃払わないとルカ先輩に追い出されるんですよ!! 宿無しにゃこは嫌です!」
「今すぐ追い出してもいいんだけどな? あァ?」
 ドライフルーツの皿が空になったことで眉間に皺を寄せるルカ。
 『ごめんなしゃいドヤ街は嫌ー!』といってじたばたするしにゃこ。
 彼らは一通りくつろいでから酒場を出ていった。

 酒場の前には四頭引きの大馬車がとめられている。
 偽装運送タンク車である。
 マントを被ってタンクの上に腰掛けていた『断罪のナイフ』トモエ・アストラルノヴァ(p3p008457)が、『クリムゾンクラブ』を見つめている。
 フルーツ味の携帯レーションをかじり、袋を握りつぶして手を払う。
「クリムゾン13ね。覚えたわ。面白い依頼をくれるのね」
「面白い、か」
 身なりの良い運転手に扮した『グロリアス・キャバルリー』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が帽子を目深に被った。
「要は、犯罪組織の撲滅だ。……確かに引き受けた、マスター」
 馬車の手配をしてくれたクリムゾン13に手を振って合図すると、店の奥で彼が二本指で敬礼のようなジェスチャーをして返してくれた。
 仲間達が店から出てきて、偽装タンクへと入っていく。
 隣にルカが座ったところで、鞭を手に取る。
「では、いこう。仕事の時間だ」
 帰ったら改めて酒を飲もう。マナガルムはそうつぶやいて馬を走らせた。

●命より高い勉強代
 静かな街。いや、静かすぎる街があった。
 道ばたを子供はおろか猫や犬でさえ通ることは無く、代わりに民家の隅や隙間にネズミや羽虫がたかっている。
 街がもはや街として機能していないことが、ゴミ集積場に野ざらしの生ゴミが積み上がりカラスすらも寄りついていないことが明らかにしていた。
 そんな街に、仮に売り物を大量に積んだ輸送車が停車したならば、御者は相当に危機管理ができていない人間か、どうしてもそうしなければいけない事情のある人間かのどちらかである。
「カモが来たか。情報通りだ。ヤツはボーナス確定だな」
 イデオレロスのリーダーらしき男は宿のベッドに座り、高級なワインをラッパ飲みしながら窓の外にとまる馬車を見下ろしていた。
 向かいにある一階建ての(元がなんだったのか判別しないほどに荒れた)店舗の屋根に、気配を遮断する効果のあるマントを羽織って飛行種のスナイパーが身をかがめている。
「――」
 親指を下げるシグナルを出すリーダーの男。
 シグナルを受けたスナイパーは頷き、ベースボールタイプの帽子を深く被り直した。
 一方で、ショットガンを構えて麻のマスクをした男が輸送車の御者二人に銃口をむけ『下りろ』と命じた。
 それなりに危険な積荷がすぐそばにあるのにむやみに発砲したくないという意図だが、何を言われているのかわからないといった風に御者のふたりはオロオロとして両手をあげたまま何か命乞いの言葉を述べていた。
 舌打ちし、仲間にタンクを調べるようにいう。
 木箱に腰掛けビールを飲んでいた別の仲間が嫌そうに立ち上がり、けだるい足取りでタンクのロックを外した――その時である。
「ようこそ私のスイートルームへ」
 汰磨羈の刀が、男の鼻先へと突きつけられた。

「飛んで火にいる夏の虫。時期的にもぴったりだな」
 咄嗟に汰磨羈の剣を回避した男に、二刀目を素早く繰り出す。逃げ道を塞ぐ巧みな剣術によって、わずかにかすっただけにもかかわらず激しい出血を起こした。
「罠だ! 下がれ!」
 男が叫んだと同時にスナイパーが動き出した。
 輸送車を走らせないために御者を狙ってボウガンを発射。
 鋼の矢はまっすぐに御者の側頭部へ突き刺さ――る直前で、御者もといマナガルムによってキャッチされた。
「狙撃位置とタイミングが安易すぎだ。それでは、『撃ってくれ』と言っているようなものだぞ」
 タンクが内側からパカンと開き、既に狙撃姿勢に入っていたしにゃことヴァローナが、先ほどのスナイパーへと集中攻撃を開始した。
 かわいらしい日傘の先端部が外れ、持ち手に仕込まれた折りたたみ式のトリガーが姿を見せる。
「SyNだと思った!? 残念、可愛い可愛いsnykでした!!」
 しゃにこはスナイパーの頭を狙って射撃。
 咄嗟に飛び退いたことでスナイパーは直撃をさけたが、動いた先を予測していたヴァローナが黒いアサルトライフルの銃口をぴくりと動かした。
 サイトスコープ越しに、魔道演算によって予測されたシグナルが表示され、わずかに軌道修正を行ったヴァローナが的確なタイミングで発砲。
 その場から離脱しようとしていたスナイパーの足を銃弾が抜けていく。
「かわいそーに。死んだわアイツ!」
 きゃっきゃと笑うしゃにこ。
 御者にばけていたルカが邪魔な服を一瞬で脱ぎ捨て、『それおにーさんの十八番!』と叫ぶヴォルペをよそに御者席から飛び上がった。
「社会をナメたツケを取り立てにきたぜイデオレロス! もう逃がさねえ!」
 ルカが黒犬レプリカを豪快にぶん回すと、スナイパーのいたエリアへ斬撃が飛び、屋根瓦の一部を破壊しながら飛んでいった。
 破壊したのはなにも屋根だけではない。
 斬撃はスナイパーの足を切断。足を失ったことでスナイパーはごろごろと家屋の向こうへと転げ落ちていく。
「仕留めろ。ぶっ殺せ!」
 屋根の淵へ捕まってよじ登り、追いかけ始めるルカ。
 ヴァローナもしにゃこを引っ張りつつ屋根へと飛び乗り、スナイパーへの追撃を始めた。
「俺はあっちへ行く! お前は――」
 走り出した鎧の男。
 一方で汰磨羈と戦闘状態にあった男は円月刀を取り出し汰磨羈のとめどない連続攻撃をなんとかいなし、『勝手にしろ!』と怒鳴り返した。
「生憎、素早い手合いとの勝負はラド・バウで慣れていてな」
「さぁ、Step on it!! そっちのペースではやらせませんよ!」
 ウィズィニャラァムが『ハーロヴィット・トゥユー』の投擲体制をとり、それを察した男が撃ちはじく動きを見せる――も、連携状態にあった汰磨羈の刀が円月刀を強制的に打ち落としウィズィニャラァムの巨大ナイフを腹へと直撃させた。
「連撃はあくまで布石だ。貴様、さては戦い慣れていないな?」

 建物の中から半裸の巨漢が現れ、数人の仲間を連れてスレッジハンマーをかつぎあげる。
「クソッ! トラップを掴まされたってのかよ! お前等も来い、全員ぶち殺すぞ!」
「『ぶち殺す』……?」
 馬車の上に堂々と立ったトモエが、砂混じりの風に髪とマントをなびかせながら目を細めた。
「それを決めるのは、あなたじゃないわ」
「ああ!? 誰だってんだ」
 その問いかけに、トモエは言葉で答えない。
 天空高くを指さし、首をかしげる。
「どうやら『ぶっ殺される』べきは、あなたたちの方らしいけど、ね」
「ぬかせ――!」
 突撃をしかける巨漢。
 馬車から飛ぶトモエ。
 ハンマーの強烈な打撃が、トモエを見事に迎撃――するかに見えたその時。
「やあ、一緒に遊ぼうか」
 横からあまりにも唐突に割り込んできたヴォルペが、ハンマーの打撃を自らの頭でうけた。
 『がむ!?』と叫んで回転し、馬車へと激突していくヴォルペ。
 常人なら死んでいてもおかしくない打撃……だが、なぜだかヴォルペには傷一つ無い。
「『障壁持ち』かよクソッ!」
 もう一人の男がヴォルペへ組み付こうとしたところで、ようやくトモエの攻撃が開始された。
 わざわざ堂々と立っていたのも、会話に応じたのもこのための布石である。
 具現化魔術によって馬車のパーツからスクラップナイフを形成すると、巨漢めがけて逆手に振り下ろす。
 それに対し咄嗟に反応した巨漢は腕をかざして防御。太い腕にトモエのナイフは止められた――かに見えたが。
(彼はきっと、天罰を下すべき相手なのでしょうね。理由は僕にとってそれだけで十分よ。存分に天罰方式に乗っ取って、迷える罪の魂を神の元へ送り届けましょう)
 ナイフの先端部分が突如として破裂。赤い火花を散らし男の腕を吹き飛ばした。
 ここへきてようやくイデオレロスは理解する。
 自分たちが『勝てない戦い』に巻き込まれてしまったことに。
「お前達はやり過ぎた──悪いが、仕事でな。覚悟して貰う」
 立ち上がり、服を早脱ぎするマナガルム。また『おにーさんの十八番ォ!』と叫ぶヴォルペをスルーして、マナガルムは黒いマントをなびかせた。
「俺達はローレットの者だ。ある者の依頼により、お前達を抹殺する」

●生殺与奪と罪と罰
 戦闘は主に三つのブロックに分かれることになった。
 輸送車の前と後ろに分かれた二箇所。そして建物の裏へ移ったもう一箇所。
 車両後方では汰磨羈とウィズィニャラァムが円月刀使いを相手に戦い、前方ではトモエ、マナガルム、ヴォルペが巨漢と二人のヒーラーを相手に戦っている。
 そして建物裏ではしにゃこ、ヴァローナ、ルカがスナイパーとそのフォローに回った高防御タンクと戦っている。
 そんな中、占領した宿二階の窓から様子を眺めていたイデオレロスのリーダーは判断を迫られていた。
 どのブロックへ加勢に入るか。もしくは全員を見捨てて逃げるか。

「重要資源に手を出した割には、杜撰なリスクヘッジだったな」
 血を流し続ける男へと踊るように連続攻撃を仕掛ける汰磨羈。
 相手の回避能力もなかなかのもので、汰磨羈の攻撃をなんとか受け流せる程度にはしのげていたが、彼単体では『しのぐ』ことは出来ても『勝つ』ことはできない。
「そう心配するな。内部スパイとやらも、後で仲良く後を追わせてやるからな?」
 言葉でも煽りをかけていく汰磨羈。
 男が悪態をつき、なんとか逃げる道を探ろうとした……ところで、ウィズィニャラァムの巨大ナイフが男の足を膝部分からすっぱりと切断してしまった。
「今、逃げようとしましたね? 負けるんですよ。そういう人は」
 傾く身体、捕まれる襟首。
 汰磨羈は剣を握った手で無理矢理男の襟首を引っ張ると、きわめて無表情に男の首をはねた。

「逃がしませんよー! ホレホレ! 狩る側もいずれは狩られる側に回るっていうアレですね。しにゃは狩られる側は一生ごめんですけど!!」
 片膝立ちの姿勢でライフルを撃ちまくるしにゃこ。
 鎧の男が銃撃を防ぎ、その後ろから息も絶え絶えのスナイパーが無理矢理射撃を返してくる。
 が、しにゃこはバッと広げた傘のエーテルコートによって銃弾を防御。
「ハイ逃げるのやめたー! ハイ死んだー!」
 『詰みデス!』といって親指を下げるしゃにこ。
 高所から狙いをつけていたヴァローナは徹底的な射撃によって鎧の男をその場に縫い付けにかかる。
 簡単に動けない。しかし防御に徹し自己回復につとめればあるいはその場をしのげるかもしれない。そんな希望を……あえて持たせた。
「お前さん方にも理由はあるんだろうが、そいつぁ誰にだって同じだ。悪ぃが…死んで貰うぜ!」
 ルカの繰り出す強烈な横一文字斬りが、鎧男の肉体を鎧ごと切断。返す刀で放った斬撃が剣をぶくぶくと膨張させ、巨大な獣の顎のごとくガパリと開くと鎧男の上半身をかみ砕いてしまった。
「あ――」
 こういう時、気の利いた台詞を言えぬものだろうか。
 しかし何か言う暇を与えずに、ヴァローナは。
「さようなら」
 無慈悲にスナイパーの頭を打ち抜いた。

「ははっ! やっとこのタイミングが来たァ!」
 ヴォルペは上着にグッと手をかけると、一瞬で上半身の服を脱ぎ捨てた。
「おいでおいで、遊んであげる!」
 笑うヴォルペ。彼の障壁を無理矢理破壊していく巨漢の男。
 それに対して神秘魔術による援護射撃を加えマギ・ペンタグラムの展開を強要していく後ろのヒーラーたち。
 ヴォルペはついに障壁をはるエネルギーが尽き、やっと服も脱ぎ捨てたというわけである。
 彼についてよく知っている方ならもうおわかりだろう。
 ここからが――
「ここからが本番!!」
 フルスイングされる防御無視の強烈なハンマークラッシュをボディで受け、血を吐きながら吹き飛ばされるヴォルペ。
 汚らしい宿の壁に激突し、さらなる打撃を受けて屋内へと転がり込む。
 粗末な服をきた女性が悲鳴を上げて逃げ出すが、ヴォルペはあははと笑って身体を起こした。
「楽しくなってきたね。もう一発いくかい?」
 笑うヴォルペの頭へめがけ、ハンマーを叩き下ろす男。
「これで終わりだ!」
 男は怒りにまかせてそう叫んだが、それは。
「あなたもね」
 無数のスローイングダガーが男の周囲に現れ、その全てが男に突き刺さっていく。
 最後の一本。金色の十字短剣を男の首に突き立ててトドメを刺すと、トモエは吹き上がる血にため息をついた。
「早くシャワーが浴びたいわ」

 さて、話を一旦戻してイデオレロスのリーダー。
 彼は第四の選択肢……つまり『全員を見捨てて逃げる』ことを選んでいた。
 金目のものを鞄に詰め込み、ドサクサ紛れに裏口から外へ出る。
 そして大事そうに鞄を握りしめると近くにとめた馬に乗って走り出――
 身体を槍が貫いた。
「俺は知っている」
 槍を投げた姿勢を解き、マナガルムが建物の影から白馬にのって現れた。
 身体に槍が刺さったまま、必死に馬を走らせようとするリーダーの男へ先回りすると、身体に刺さった槍を掴んで強引に馬から引きずり下ろす。
「金のためにプライドを捨てた人間。金のために他人を踏みつける人間。そういう人間は、金のために仲間も捨てる」
「や、やめてくれ」
 ひゅうひゅうと息をきらせ、血塗れの手を伸ばす男。
 マナガルムはそれを、無表情に見下ろしていた。
「かぞくが、いるんだ」
「そうか」
 槍を身体から抜き、地面に突き立てる。
 いいのか? そんな顔をして、男は傷ついた身体を引きずりながら走って
 いや。
 走ることなど叶わなかった。
 足を誰かの銃弾が撃ち抜いていき、首を誰かの斬撃が切り取っていく。
 身体に再び誰かの槍が突き刺さり、さらなる銃撃が身体の重さを増やしていく。
 マナガルムは深くため息をつき、マントを掴んで背を向ける。
「金のために全てを捨てた男は、自分の命も失うものだ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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